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婚姻前の子女である雛女(ひめ)を集め、次期妃育成を行う雛宮(すうぐう)。 ここへ入内を許されるのは、東領を司る藍家、西領を司る金家、北領を司る玄家、 南領を司る朱家、直轄領を司る黄家の五家と縁のある女のみ。 五家から送り込まれた5人の姫君が、皇后と4夫人の座を巡って競い合います。 その中で、誰の目にも次期皇后にふさわしいとされていたのが、15歳の黄玲琳。 病弱でありながらも純真さを保つ玲琳は、現在の皇后・黄絹秀の姪であり、 皇太子・尭明(ぎょうめい)にとっても従兄妹に当たる関係。 周囲からは、『殿下の胡蝶』と呼ばれる存在でした。一方、朱慧月は、4夫人の中で最も権威のある朱貴妃が後見する雛女でありながら、上位者にはおもねり、下位者にはきつく当たるとの評判。周囲から最も軽蔑すべき人物とされ、「雛宮のどぶネズミ」とあだ名される有様で、尭明に焦がれる彼女は、玲琳のことをひどく妬んでいました。そして、乞巧節(たなばた)の夜、玲琳は慧月に乞巧楼から突き落とされてしまい、目覚めるとそこは牢の中、体は慧月のものと入れ替わっていました。慧月の道術により引き起こされたこの突然の事態に、健康体を得た玲琳は自分らしく対処。「獣尋の儀」を乗切り、荒地を楽園に変え、中元節の儀に備え、徹夜弓を引きます。その中で、鷲官長・辰宇に疑念を生じさせ、女官・莉莉の心を掴んでいき、玲琳付の筆頭女官・黄冬雪も、入れ替わりの事実に気付いたのでした。 ***今巻の中で、最も印象に残ったのが、次の台詞。 「死んでしまうまでは、生きているということでございます。 同じく、噛まれるまでは、噛まれていないということ。 噛まれる前から痛がっていては、体力が持ちませんでしょう?」(p.038)まさに、「尋常でない数の死の危機を回避しつづけてきた、鋼の精神を持つ女」です。
2023.07.30
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先日、『52ヘルツのクジラたち』を読みましたが、 今回も、タイトルに「クジラ」が付された作品を読むことに。 ただし、今回の作品は、「クジラ」そのものとは全く関係がなく、 次に記されている通り、あくまでも「クジラ頭の王様」のお話なのです。 都内の動物園に、男三人で来ていた。 僕と池野内議員は背広姿、小沢ヒジリは爽やかなジーンズ姿で、 ハシビロコウのいる場所の前で長いこと立っている。 プレートに説明書きがあり、この鳥の和名と英名が並び、学名も記されていた。 ラテン語で「クジラ頭の王様」という意味らしい。(p.427)この男三人が、このお話のメインキャラクター。8年前、金沢のホテルで火事に遭遇した三人が、夢の中で共に戦い、そこで勝利すると、現実世界のトラブルを回避できることに次第に気付いていきます。そして、お話の舞台は一気に15年後へと移り、これまでにない試練に立ち向かうことに。 *** ニュースや話題になるのは、物事の実際の重要性や危険性よりも、 多くの人たちの感情が優先される。 不快なものは不快、理屈を飛び越える。 その気持ちは僕も分からないでもない。 あの動物は狩って食べてもいいが、この動物を獲るなんて残酷! といったことはよくあるし、有名人の不倫でも、大目に見られる人もいれば、 世の秩序を乱す大悪党さながらに糾弾される人もいる。 重要な外交問題そっちのけで、変わった飛び方をするムササビがテレビで話題になる。 情報操作や誘導にかかわらず多くの人は、感情に正直なだけなのだ。(p.14)伊坂さんの作品を読んでいて心地良いのは、お話の流れとは直接深く関わらないようなところで、強く共感できることが、サラッと書いてあるところ。感性が似ているのだろうな、と感じます。 人間を動かすのは、理屈や論理よりも、感情だ。(p.430)これなんかは、ズバリ一言。まさに、直球ですね。 「自動車メーカーも小説家も、喫茶店経営者も、自分たちの首を絞めるものに対しては、 それがいかに世の中を良くするものだとしても、反対しますよ。 少なくとも賛成はしません。 自分は不利益を被ってもいいからみんなのために、なんて言える人は貴重です」(p.103)これもスゴイですね。「真理」です。 何度か、「大丈夫?」と訊ね、彼女は、「全然平気」と答えるが、 だからといって本当に平気かどうかは誰にも分からないのだ。(p.180)これは、『シーソーモンスター』でも、同じようなことが書いてありましたね。本当に、そうだと思います。 手に余るほどの忙しさではなかったが、 それなりに仕事が積まれていたのはありがたかった。 暇になると人は心配事に溺れてしまう。 忙しい間は、天が落ちてくる心配をしなくてもいい。(p.345)これもイイですね。強く頷きながら、読んでいました。 ***作家・川原礫さんによる巻末「解説」では、「ゲーム小説」について述べられており、そこには岡嶋二人さんの『クラインの壺』の名も登場しています。また、本著第4章で登場する「パスカ」についても触れられていました。「パスカ」は、同じく近未来を舞台とした『スピンモンスター』でも登場していますね。
2023.07.30
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優莉匡太元死刑囚の6女にして、友里佐知子によるステロイド実験の産物、 そして、日暮里高校1年生の杠葉瑠那に、重要計画を2度も潰されたEL累次体。 尾原文科大臣、国立大教授の築添、政権与党シンクタンク勤務の菜嶋は、 瑠那が参加する夏季巫女学校に、杢子神宮の巫女・松崎真里沙を送り込みます。 彼らは、真里沙に「維天急進派と関係の深いEL累次体の名簿一覧」を持たせ、 瑠那と相思相愛の関係になることを命じると共に、 彼女のバックアップとして、指定暴力団組長を父とし、女子刑務所服役中の世暮藪美と、 さらにそのバックアップとして、築添の娘を送り込み、瑠那を排除しようとします。 *** 握りこんだ豆のすべてを、サイドスローの姿勢で大きく振りかぶり、 満身の力をこめ鬼に投げつけた。 胎児のころからのステロイド注射により、瑠那の筋肉は本質的に異常なほど発達している。 至近距離から投げつけた豆でも秒速四百メートルに達する。 その威力は散弾銃に匹敵した。 けたたましい音とともに、鬼の全身に無数の豆が深々と食いこんだ。(p.89)実際、散弾銃の初速は秒速400m程だそうです。これは、時速換算すると1440km。 その一瞬を逃さず、瑠那は右手に握ったナイフの尖端を、 左手で保持した弾の薬莢の底、雷管に突き刺した。 一ミリのずれも許されない、まさにミクロな対象物を、 しかも満身の力をこめ瞬時に突いた。 銃もないのに発砲音が轟き、瑠那のてのひらに燃えるような熱がひろがった。 薬莢から打ちだされた弾丸が、藪美の眉間を貫いた。(p.244)結衣の横浜ランドマークタワーや、火星20号のエピソードも驚きましたが、今回の瑠那のこの二つのエピソードは、それを凌駕する勢い。もはや、人間業ではありません。
2023.07.30
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2017年にデビューした町田そのこさんは、 2021年に、本作で本屋大賞を受賞しました。 ちなみに、その時2位となったのは、青山さんの『お探し物は図書室まで』。 町田さんは、翌2022年にも『星を掬う』で本屋大賞10位となっています。 ***三島貴瑚は、高校卒業後、全国的に名の知られる製菓会社への就職が内定していましたが、母親の命により、就職せず、ALSを発症した義父の介護に明け暮れることに。 その後、義父が緊急入院した際、母親が放った心無い言葉に追い詰められてしまいますが、高校時代の友人・美晴と、彼女が働く会社の先輩・アンさんが、救い出してくれました。その後、貴瑚は就職した会社の専務・新名主税(ちから)との交際を始めますが、彼には正式な婚約者がおり、貴瑚には愛人であり続けることを求めてきます。そのことが契機となって、アンさんが自ら命を絶ってしまったため、貴瑚は、柳刃包丁を手にした末、主税と揉み合いとなり、腹部を刺されてしまったのでした。貴瑚は、主税の父親からの示談金を元にして、かつて東京で芸妓をしていた祖母が、60歳の頃に移り住んだ家を、母親から譲り受け、ひとり引っ越してきます。そこは、昔は大いににぎわっていたものの、現在は過疎化が進む大分の漁師町でした。貴瑚は、家の修繕をお願いした業者で、貴瑚に想いを寄せることになる村中や、何かと口やかましいおばあさんたち、元中学校校長で老人会会長の品城(しなぎ)、その娘で『めし処よし屋』で働く、村中の同級生・琴美らと出会います。そしてある夜、その琴美の息子が、母親から虐待を受け、貴瑚の家に逃げ込んできたのでした。貴瑚は、少年を世話してくれる可能性のある彼の祖母に会うため、美晴らと共に小倉へ向かいますが、祖母はすでに交通事故で亡くなっていました。そして、大分に戻ると、貴瑚は少年を誘拐したことになっていましたが、村中とその祖母の力添えで騒動は一段落、そして、貴瑚はある決意を固めます。その後、貴瑚と少年は、彼の叔母のいる別府へと向かったのでした。 ***愛(いとし)の祖母・昌子が、貴瑚と孫に対して示した考えは、とても納得のいくものでした。しかしながら、愛の成長を感じさせるエピソードとして、急激に認知症が進んでしまった品城を、村中家のバーベキューに乱入させたことについては、何かしら引っかかるものが残ってしまいました。
2023.07.23
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著者は、1994年に朝日新聞社に入社し、 2010年に39歳で政治部次長(デスク)、2012年には特別報道部デスクとなり、 2013年に「手抜き除染」報道で新聞協会賞を受賞した鮫島浩氏。 しかし、2014年には福島原発事故を巡る「吉田調書」報道で解任されている。 本著は、鮫島氏が京大法学部の学生として就活に励んでいた時期から、 朝日新聞入社後、つくば支局、水戸支局を経て浦和支局に異動して政治部記者となり、 与野党の大物議員や官僚と接していった頃の様子や、 政治部、経済部、社会部等、朝日新聞社内で繰り広げられていた勢力争いが描かれている。本著を読み進めながら、「新聞記者」の仕事については、知っていそうで実はあまり知らなかったのだと、気付かされることになった。また、社内の派閥争いや権力闘争は、どこの企業でも多かれ少なかれ見られるものだろうが、極端な「手のひら返し」には、朝日新聞社特有の空気を感じてしまった。 *** ある外交官は「外交に『決着』はないんです。どんな合意をしても必ず課題は残る。 外交は『決裂』か『継続』のどちらかなのです。『決裂』したら国交断絶か戦争になる。 これは外交の失敗です。『継続』さえしていれば、国交断絶や戦争は避けられる。 『継続』こそ外交の成功なんです」と言った。(p.72)本著で、最も心に残った部分。まさに、です。
2023.07.19
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青山さんの小説家デビュー作『木曜日にはココアを』の続編。 東京と京都を舞台とした1月から12月までの12の連作短篇集。 『木曜日にはココアを』に登場したキャラクターたちはもちろん、 『猫のお告げは樹の下で』で登場したキャラクターたちも登場します。 ***偶然マーブル・カフェのイベントに訪れた、携帯ショップで働くマフラーの女性妻・理沙との記憶が合致しないときがあることに悩む夫・ひろゆきメディアでも取り上げられる人気ランジェリーショップ「p-bird」を営む尋子1週間前に雄介との婚約を破棄し、ライブ活動を続けることにした佐知京都の和菓子屋・橋野屋の娘で、様々な場所で「紙芝居」を披露している光都長男が夫の跡を継いだ後、店の事業から一切手を引き、孫の面倒を見てきた橋野タヅ右が黄色で左が青いオッドアイの白い野良猫10年前に脱サラして古書店経営を始めた吉原生まれて初めてできた彼女・千景にわずか1カ月であっさり振られた大学生・孝晴マスターと長年のビジネスパートナーで、シドニーでインテリアの仕事をしているマーク画家である父・テルヤの出張が増え、家にシッターのはなえが来るようになった小学生・拓海京都の老舗茶問屋・福居堂の一人息子で、東京支店を任された吉平 ***『木曜日にはココアを』と同様、これらの人々が、12の短篇の中で様々に関わり合いながら、物語が紡がれていきます。既刊に登場したキャラクターたちのその後や、新たな一面を知ることが出来る嬉しい構成で、海堂さんの「桜宮サーガ」のように、青山さんも自らの創作世界を築きつつあります。
2023.07.17
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優莉家の四女・凜香と六女・杠葉瑠那がメインとなる新シリーズ第2弾。 今回は、凜香と瑠那が通う日暮里高校の体育祭が舞台。 冒頭は、蓮實庄司が雲英亜樹凪の危機を救うシーンからスタート。 蓮實は亜樹凪を護ることに全力を傾け、心を奪われていくことになります。 一方、瑠那の机上に置かれていた赤い封筒には、切手大のメモリーカードが。 PCのスロットに挿入し起動させると、ブックメーカーのサイトに繋がり、 そこでは、日暮里高校の体育祭が賭博の対象になっていました。 一番人気は凜香で、瑠那は最下位、そして瑠那のスマホに非通知番号から着信が。瑠那は、危機に見舞われながらも、ブックメーカーについて情報収集を進めていき、蓮實から、”Killer Deeper"という存在について知らされます。体育祭当日、文部科学大臣・尾原輝男が訪問視察に訪れる中、その”Killer Deeper"が張っていたのは、”All students died”という項目でした。女子100m予選で圧勝した凜香以上に、観客の目を引いたのは400m予選に出場した亜樹凪。しかし、途中負傷した凜香の代走として出場した瑠那は、亜樹凪を圧倒します。そして、クラス対抗リレーで瑠那がスターターの合図を待っている時に事件は発生。銃声が鳴り響き、日暮里高校は週末まで休校となりました。亜樹凪は、父の遺品である戦術中性子爆弾DBT19を用いて、仲築間を壊滅させるべく、蓮實の元婚約者の桜宮詩乃を人質とし、彼にその時限装置を起動させようとします。蓮實はDBT19を奪い、モーターボートに載せると、全速力で海上を飛ばしますが、そこに水上バイクに乗った瑠那が、姿を現したのでした。 ***最後は、もちろん瑠那の思惑通りに展開し、亜樹凪の企ては失敗に終わります。ただ、瑠那が亜樹凪に放ったのも、恐らく「血糊弾」だったのでしょう。凜香と結衣が、2人で言葉を交わすシーンがとっても良いですね。きっとまた、結衣が大活躍するシーンが見られるはずです。
2023.07.15
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副題は「政府のやりたい放題から身を守る方法」。 マイナンバー、コロナ、脱炭素等の問題について、 報道ではあまり知らされることのない裏事情を明らかにしていきます。 著者は、国際ジャーナリストの堤未果さん。 *** ショック・ドクトリンとは、テロや戦争、クーデターに自然災害、 パンデミックや金融危機、食糧不足に気候変動など、ショッキングな事件が起きたとき、 国民がパニックで思考停止している隙に、通常なら炎上するような新自由主義政策 (規制緩和、民営化、社会保障切り捨ての三本柱)を猛烈なスピードでねじ込んで、 国や国民の大事な資産を合法的に略奪し、政府とお友達企業群が大儲けする手法です。 (p.37)著者は、9・11同時多発テロ後に起こったアメリカの変化に強い違和感を抱き始め、やがて、それがフリードマン教授とお友達一派によって、1973年にチリで引き起こされたあのショック・ドクトリンと同じものであると気付きます。そして、アメリカ国民への取材を開始、『ルポ 貧困大国アメリカ』へとまとめていくのです。 自民党に1億円献金したNTTが1000億円分のマイナンバー事業を受注し、 ワクチンメーカーの日本法人執行役員が 子どもたちの予防接種を担当する教育委員に就任し、 再エネ事業を展開する企業関係者が買取価格を決める委員会に入り、 総理に脱ガソリン車政策を進言する参与のもう一つの顔が、EV車メーカーの社外取締役。 まるで韓流ドラマバリの相関図、 しかも同じ役者が配役を変えてあちこち登場する始末です。(p.261)本著では、マイナ保険証の危うさや世界のマイナンバー事情、個人情報がすべて紐づけられ、デジタル化が進んだ先に待つ世界について、たっぷり紙幅を割いて、丁寧に説明がなされていくため、目から鱗の連続です。また、コロナ対応や脱炭素に向けての動きについても同様で、その背景に潜む企業権益の大きさには驚かされるばかりです。そして、次の記述も大いに頷けるものでした。各誌・各局が競って一つの問題だけを大きく取り上げている時は、要注意ですね。 ショック・ドクトリンの戦略の一つは、都合の悪いことは極力隠蔽、が基本。 メディアで取り上げさせないだけでなく、 人々の意識の中にも入れないようにしないといけません。 そのため、肝心なときには、芸能人のニュースを横並びで一斉に流させるなど、 あの手この手を使って関心をそらし、 国民の「忘却力」を活性化させてくるのです。(p.263)
2023.07.15
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「心の病」がどうして生じるのか、どこまで研究が進んでいるのかを、 脳科学から精神疾患の解明や治療法の開発を目指す研究者たちが解説。 第1部では、「心の病」が脳のどこで不具合を起こし発症するのかについて、 「シナプス」「ゲノム」「脳回路と認知の仕組み」の3つの観点から説明。 第2部では、「うつ病」「ASD」「ADHD」などで見られる脳の変化について、 最新研究から明らかになりつつある事柄を、 そして、第3部では、対処療法でしのぐしかなかった精神疾患治療が、 薬物療法以外にも、新たな技術研究が進んでいる様子を紹介していきます。 *** 脳の変化はうつ病の患者さんでも起きていて、 海馬と前頭前野の一部(内側前頭前野)の体積が縮小しているという報告があります。 脳体積の縮小は、細胞死以外に、樹状突起の退縮やシナプスの現象によっても起きます。 うつ病の患者さんで縮小がみられる内側前頭前野は、 扁桃体を制御しているといわれています。(中略) 危険な状況では扁桃体が活性化して適切な行動をとる必要がありますが、 理由もないのに日常的に扁桃体が活性化していると、 理由がないのに不安感が続いたり、 目の前の出来事から逃げ出したりする無気力な行動(うつ様行動)が現れます。(中略) 内側前頭前野の神経細胞の樹状突起が退縮してしまうと、 扁桃体を制御する働きが弱まってしまい、うつ様行動が現れるのでしょう。(p.85)これ以外にも、「こんなことまで分かって来ているんだ」という記述が目白押し。精神疾患についても、日進月歩で研究が進んでいることに、本当に驚かされました。ただし、本著はブルーバックスの一冊なので、なかなか手強い一冊であることも事実。高校で学んだ「生物」や「化学」の知識を総動員しても、そう易々と読み進めることは出来ませんでした。
2023.07.13
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『満月珈琲店の星詠み』シリーズの第2弾。 今回も、猫たちが星占いで、迷える人々を導ていきます。 *** 市原聡美は、渋谷にある広告代理店に勤務するイベントプランナー。 もうすぐ交際7年目になる筑波大講師の諒から、クリスマスイブに会いたいと言われますが、 都内に住み現在の職場で仕事を続けたいため、その日に求婚されることを恐れていました。 そんな時、兄の娘で小学1年生の愛由を東京の街に案内し、1泊2日を共に過ごすことに。派遣先の広告代理店で、市原聡美の下で働く鈴宮小雪は、8歳で交通事故で父を亡くし、16歳で新しい父が来て、18歳で弟がいて、専門学校進学時に一人暮らしを始めた22歳。満月珈琲店で実の父から事故死の真相や、母や新しい父について聞かされた小雪は、クリスマスケーキを手に、父と母と弟がいる実家へと向かったのでした。市原純子は、大学生の時に昭和気質の古い価値観を持つ父と絶縁、そのため、実家で飼っていた愛犬・リンの死に立ち会うことが出来ませんでした。そんな父が病に倒れ入院、純子は娘の愛由と共に父の見舞いに鎌倉へ行くことに。そこには、父と絶縁していた弟・次郎とその婚約者・中山明里も姿を見たのでした。 ***愛由が夢中になっている人気番組『流星エンジェル』。この脚本家として芹川瑞希、プロデューサーとして中山明里の名前が登場し、そこから、市原純子の弟が、どうやらスタイリスト・次郎らしいと気付かせてからの、二人そろって登場という、いかにも望月さんらしいサービス精神に溢れた展開でした。
2023.07.12
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副題は「テクノロジー×薬剤師による薬局業界の生き残り戦略」。 帯には「大手通販ネットショップの業界参入により 薬局はかつてない淘汰の危機に直面する!」の文字が踊ります。 著者は、2019年に日本初のロボット薬局を大阪梅田で開発した渡部正之さん。 *** その一方で、国による医薬分業推進の波に乗って薬局の数は増え続けてきました。 厚生労働省によると、2019年時点で日本全国にある薬局の数は約6万に上ります。 1989年時点の薬局数は約3万7000なので、 30年間でおよそ1.6倍に増えたことになります。(p.19)『図解即戦力 医薬品業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』のChapter7「調剤薬局とドラッグストアの行く末」にも、この数字は登場しており、その成長は打ち止めで、過当競争の環境になるとの記述もありました。そこへもってきて、次のようなことが起こっています。 調剤報酬改定による調剤報酬点数の低下や、 新型コロナウイルスの影響による患者の受診控えなどにより 薬局業界は苦しい状況におかれています。 そして、将来処方せん枚数が頭打ちになると業界はさらに追い込まれていくはずです。 このような状況のなかで、薬局は新たな問題にも直面しています。 それは海の向こうからやってくるAmazonです。(p.23)著者は、Amazon台頭により本屋が市場から姿を消しつつあることに触れながら、Amazon の次のターゲットは薬局業界であり、その参入は電子処方せん導入のタイミングであろうとしています。その脅威に立ち向かうために「テクノロジー×薬剤師業務の分化」が必要と唱えます。 薬局ビジョンの根幹をなす考え方のうちの1つとして、 薬局・薬剤師の専門性やコミュニケーション能力の向上を図り、 調剤などの対物中心の業務から対人業務へのシフトを目指すという 「対物業務から対人業務へ」が挙げられます。 なお、残りの2つの考え方は「立地から機能へ」「バラバラから1つへ」です。(p.72)「薬局ビジョン」とは、2015年に厚生労働省がまとめた「患者のための薬局ビジョン」のこと。「対物業務から対人業務へ」は、現在、薬剤師にとって最大の課題となっています。「処方せんに書かれた医薬品を薬棚から取り出して取り揃える」だけの単純作業ではなく、専門性を求められる対人業務へのシフトが、強く求められているのです。 今は対物業務から対人業務への過渡期にあるといえ、 どの業務を効率化すべきか、どの業務に薬剤師が注力すべきかを 手探りで探している状態ということもできます。 一方で、薬局や薬剤師に期待される役割は大きくなるばかりです。 健康サポート薬局や地域連携薬局、専門医療機関連携薬局、トレーシングレポート、 調剤後のフォローアップ、リファイル処方など新たな業務が目白押しです。(p.116)この後、薬剤師が専門性を生かした業務へとシフトしてけるよう、単純作業をいかにロボット化、ICT化していくかが記されていきます。そこでは、著者がその実現に向けて取り組んできたことや、その成果が紹介されています。薬局業界の今後の道筋が示された、素晴らしい一冊でした。
2023.07.09
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伊坂さんの呼びかけで始まった「螺旋プロジェクト」。 8人の作家さんたちが、「海族」vs.「山族」の対立を描いたり、 共通キャラクター、シーン、象徴モチーフを登場させるなど、 ルールを踏まえながら 原始から未来までの歴史物語を一斉に描いています。 伊坂さんは、本著表題作の『シーソーモンスター』で昭和後期を、 もう一つのお話の『スピンモンスター』で近未来のパートを担当。 ***『シーソーモンスター』は、北山家の嫁・宮子と姑・セツの対立を軸としながら、義父の死に疑問を抱いた元情報員の宮子が、その真相を追う様が描かれていきます。最後は思いもよらぬ展開で、さらに『スピンモンスター』にも影響が及ぶのですが、後から振り返れば、なぜ気付けなかったのだろうという悔しさも残ったお話でした。一方、『スピンモンスター』は、見知らぬ男から一通の手紙を託された配達人の水戸が、その男の友人・中尊寺と共に、その男の死と人工知能・ウェレカセリの闇に迫るお話で、水戸にとって因縁の相手である檜山が、その都度水戸の前に立ちはだかります。ただし、全てが解明されてのエンディングではないため、「?」感は拭えません。 *** 「それでもなかなか嫌とは言えないものだよ。 面白いことに、人はね、『大丈夫?』と訊かれれば、 『大丈夫』とうなずいてしまうものなんだよ。 決まり文句だ。 大丈夫じゃない時にも、病気が悪くなっている時にも、大丈夫、と答えてしまう。 不思議なものだね」(p.11)「確かに、そうだなぁ」と、感心させられたところ。「このことは、常に頭に置いておかねば」と、改めて思いました。 「おかげで私も興味が出たんだ。 教科書に載っている歴史上の人物が、年表のような薄っぺらいものじゃなくて、 地面の上でちゃんと生活していた、自分たちと同じ人間だと感じられたんだ。 聖武天皇にも頼朝にも物語はある。」(p.61)「自分たちと同じ人間だと感じられた」こんな風に思ってもらえるような教え方が出来れば、もう最高です。
2023.07.09
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カイドウはルフィの手で地中深く殴り飛ばされ、 落下する「鬼ヶ島」は巨大な龍となったモモの助が「焔雲」で受け止めた。 オロチの悪政も、カイドウにおびえる日々も終わりを告げ、 「ワノ国」は、光月モモの助が統治する国に、そして勝利の宴。 四皇カイドウ、四皇ビッグ・マム敗北のニュースが世界を駆け巡る。 モンキー・D・ルフィは、 ユースタス・C・キッド、トラファルガー・ローと共に、 政府から”30億ベリー”という破格の懸賞金を懸けられ、 赤髪のシャンクス、千両道化のバギー、”黒ひげ”ティーチと並んで四皇に加えられることに。一方、古代兵器「プルトン」の謎を追うロビンは、ローと共に光月スキヤキに導かれ、海底に眠るかつてのワノ国へ。そこで、3つ目のロード”歴史の本文(ポーネグリフ)”を目にすると共に、開国とは国の防御癖を破壊し、古代兵器を解放することを意味すると知らされる。その頃、海軍本部大将・緑牛(アラマキ)が、サカズキに制止されているにもかかわらず、ルフィの首を取るべくワノ国に乗り込む。ヤマト、モモの助による想定以上の応戦に、アラマキが本気でその力を発揮しようとすると、そこにシャンクスの覇気が襲い掛かったのだった。 ***海軍本部のシーンでは、菅原文太さん(赤犬・サカズキ)、田中邦衛さん(黄猿・ボルサリーノ)、勝新太郎さん(藤虎・イッショウ)、小林旭さん(黒馬・テンセイ)等々豪華メンバーが登場。松田優作さん(青雉・クザン)の姿は見えませんでしたが、ワノ国では、原田芳雄さん(緑牛・アラマキ)が姿を見せてくれました。革命軍参謀総長・炎帝サボが、アラバスタ王国国王・コブラを殺害し、王女・ビビが失踪したとのニュースが流れているのが気になりますね。
2023.07.02
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「この世の喜びよ」で第168回芥川賞を受賞した井戸川射子さんが、 第43回野間文芸新人賞を、史上初の選考委員満場一致で受賞した表題作と、 小説家としてのデビュー作である「膨張」とを合わせて収録したもので、 紙面に添えられた最後の頁番号が’162’というコンパクトな一冊。 しかしながら、「この世の喜びよ」と同様、 読み進めるのには、想像以上にかなりの労力を要しました。 ***表題作は、近所を淀川が流れている児童養護施設で暮らす小学5年生の集が、日々の様子を、淡々と関西弁で語っていくという形で展開していくのですが、私は関西弁を聞いたり話したりすることは、普段から当たり前のようにしている状況なので、そこがネックとなって、読み進めるのが困難ということにはならないはず……それでも、関西弁を活字として拾い上げ、理解するとなると、また、違った難しさが生じてしまうからなのかとも考えましたが、阪神タイガースの岡田監督の囲み取材でのやりとりを、そのまま活字として掲載した記事を読むのに、苦労したことはただの一度もありません。そして、アドレスホッパーについて、標準的な日本語で描写した「膨張」を読み始めても、読み進めるのに要する労力は、ほとんど変わりませんでした。これは、やはり関西弁がネックになっていたわけではないと悟った私は、改めて、本書のページを最初から捲り直し、あることに気付いたのです。井戸川さんの書く文章は、一つ一つはそれ程長いわけではないけれど、改行が極端に少ない。そのため、見開き2頁に渡り、ぎっしりと活字が詰め込まれた状態になっていることが多く、読み手は、息継ぎのタイミングが上手くつかめないまま、読み続けなければならない。その結果、息苦しくなり、次第に疲れがたまり、読み進めるペースが遅くなってしまう……井戸川さんが描き出す世界観は独特のものがあり、読む者に強烈なインパクトを与えます。だからこそ、数々の賞を受賞し、今注目される作家となっておられるのです。そして、それを支えている一つの要素として、このような個性的な文体があるのでしょう。今後の井戸川さんの作品が楽しみです。
2023.07.02
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西洋占星術をモチーフにした作品を書きたいと思っていたに望月麻衣さんが、 SNSで桜田千尋さんのイラストを目にしたことをきっかけに、 大阪で開かれた同人イベントに出向いて名刺交換をしたことから、 出版の運びとなったのが、この『満月珈琲店の星詠み』シリーズです。 『京都寺町三条のホームズ』シリーズや『わが家は祇園の拝み屋さん』シリーズのラブコメとは趣が異なり、私がよく読んでいる作家さんで言うと、青山さんの作品群と近い感じがしました。「西洋占星術」については、『わが家は祇園の拝み屋さん』でも取り上げていましたね。 ***シナリオ・ライター・芹川瑞希は、大学卒業後に小学校の非常勤講師として勤務するも、20代でゴールデンタイムの脚本を手掛けるヒットメーカーとなったため教職を退く。しかし、30代半ばになると視聴率が取れなくなり、現在はワンルームマンション暮らし。ソーシャルゲームのシナリオ募集に応募し、それを仕事につなげながら細々とやっている。テレビ制作会社のディレクター・中山明里は、広告代理店の営業・塚田巧が、既婚であることを伏せたままアプローチしてくるが、スマホのディスプレイに表示された妊娠中の妻からのメッセージでそれと気付く。現在は、オネエ言葉を使う40代前半のスタイリスト・次郎のことが気になっている。20代半ばの女優・鮎川沙月は、つい先日、既婚者俳優と不倫していた記事が週刊誌に載ったばかり。大学時代に友人の安田雄一と共にIT会社の経営を始めた水本隆は、2か月ほど前に小学校で一緒の登下校班だった3歳年上の早川恵美に出会い、恵美からの依頼で、伏見桃山の理美容室を訪ねる。安田が手掛けていた女性向けソーシャルゲームのシナリオを瑞希が手掛けていたことが発覚。明里の幼馴染の美容師・早川恵美は、勤務していた梅田の店を辞め、両親の営む理美容室へ。フリーになったのを機に、自分のウェブサイトを作成しようと水本隆に相談する。 ***芹川瑞希が勤務し、下校時に付き添っていた小学校の登下校班には、6年生で班長の中山明里と同級生の早川恵美、年下の鮎川沙月、3年生の水本隆がいました。ある日、児童公園で下校班を解散する際、瑞希は、いつも聞こえてくるピアノの音が聞こえてこないことに気付きます。やがて、瀟洒な洋館に住む老紳士が、病気で寝込み動けなくなっていることが判明しますが、約1月後に老紳士は亡くなり、飼っていた猫たちは保健所行きになりかけます。そんな時、工務店を営む両親を説得し、里親が見つかるまで預かったのが水本でした。そして、あの登下校班にいたメンバーたちが、次々に満月珈琲店に招かれた……のでしょう。
2023.07.01
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『サル化する世界』で本著の存在を知り、読んでみました。 著者は、文芸評論家の加藤典弘さん。 本著は、ポイントポイントで「小見出し」としての要約文が掲げられ、 そこから丁寧に説明がなされていく構成となっています。 そして、この要約文を追っていくと、憲法9条誕生とマッカーサーとの関りが、 想像以上に大きなものだったと気付かされるのです。 *** アメリカは日本占領において特権的な地位を確立しようとしますが、 当初、他の国はそれを認めませんでした(p.042) 以後、日本占領の権限をめぐる、 アメリカとその他の連合国の対立が深まっていきました(p.061)日本の占領に当たっては、スタートからアメリカ優位の状況であったものの、その特権的地位を、他国がいつまでも簡単に許してくれるはずもなく、イギリス、ソ連、中華民国、オーストラリア等、連合国間で、激しい綱引きが行われていくことになります。そんな中、マッカーサーは連合国最高司令官として、占領の最前線で、他の連合国だけでなく、アメリカ大統領府や国務省を相手に、自分の思惑を実現すべく、憲法改正へと突き進んでいくのです。 マッカーサーは戦争中から、 すでに有力な大統領候補になっていました(p.048) 加えて有力な大統領候補であるマッカーサーと、アメリカ本国の対立も激化します これら二つの対立の中で起こったのが、 「密室での憲法草案の作成」という異常事態でした(p.065) 1945年12月末から、突如、憲法改正がGHQの最重要課題に浮上します 理由は同月27日に、翌年2月末に極東委員会の活動がスタートしたあとは、 憲法改正の権限がアメリカとGHQの手から離れることが、 正式に決まったからでした(p.097)敵国であった日本に自ら乗り込み、占領統治を行うことになったマッカーサーは、日本にとって天皇がどのような存在であるかを、自らの肌で強く感じ取り、統治に際し、それを利用しない手はないと考え始めます。 昭和天皇の戦争責任は免れ得ないが、彼が戦争に反対していたことも事実である しかもその免罪の功利的価値は絶大だと、 マッカーサーの軍事秘書フェラーズは考えていました(p.081) 昭和天皇はマッカーサーの占領統治にとって、絶対に必要な存在でした しかし、その免罪のためには、 きわめて高いハードルを超えなければなりませんでした(p.071) 側近たちによる免罪工作は、「昭和天皇独白録」や「イギリス国王宛の新書」 の作成など、さまざまな形で続いていきました(p.088)そして、天皇免罪を確かなものとするための手段として「戦争放棄」を思いつき、それを憲法に反映していくことになるのです。 憲法9条という「戦争放棄条項」も、昭和天皇の免罪を 各国(連合国諸国)に認めさせるためにつくられたものでした(p.075) 「人間宣言」の成功を受けて、天皇免罪のための決定打として新たに構想されたのが、 天皇から性j権力を奪い(第1条)、軍事力も放棄(第9条)する、 新しい憲法の制定でした(p.91)しかし、この憲法第9条は、世界に類を見ない特別なものでした。 9条は、単なる戦争放棄の条項ではありません それは「軍事力を一切もたない」「日本だけが世界に先駆けて実行する」 特別の戦争放棄なのです(p.131) 同じ敗戦国であるドイツとイタリアの憲法にはあった 「相互主義の原則」が、日本の憲法9条には存在しませんでした(p.159) 「ただの戦争放棄」ではない、「特別の戦争放棄」の発案者は、 まちがいなくマッカーサーでした。(p.149)そして、マッカーサーが「特別の戦争放棄」を発案したのには、大きな理由がありました。そして、日本側にも、それを進んで受け入れるだけの大きな理由があったのです。 次期大統領選をも視野に入れた、マッカーサーの個人的野望が、 強引な憲法草案の作成と、その「押しつけ」を生みました(p.135) かつての敵国に、理想主義的な「精神的リーダーシップ」を与えた偉大な指導者 それこそが、大統領をめざすマッカーサーが求めた崇高な自己イメージでした(p.168) 9条のもつ「特別な光輝」は、天皇が失った道義的な 空白を埋めるものだったのではないでしょうか(p.175)しかしながら、マッカーサーの「特別の戦争放棄」には、さらなる思惑があったようです。ただし、それはマッカーサーが大統領になれなかったため、実現しませんでした。 マッカーサーがアメリカ大統領になっていれば、 「特別の戦争放棄」(マッカーサー・ノート)と 「ただの戦争放棄」(ケーディス執筆の9条)は、 国連の集団安全保障体制のもとに統合されていたはずです(p.174) 9条は国連の集団安全保障体制、 つまり国連軍を前提に書かれたものでした(p.175) 「国連軍」というキーワードを加えてみると、 9条のもつ「光輝」も「非現実性」も姿を消し、 ただ現実的な国際的安全保障の理想形が浮かび上がってきます(p.279)もし、マッカーサーが大統領になっていれば、憲法9条は、違う意味を持つものになっていたのかもしれません。
2023.07.01
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