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2015.05.29
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カテゴリ: アート
図書館で『小さな星通信』という本を手にしたが、これは旅行記か?♪・・・
ヨーロッパやアメリカの地図、写真がやたら多い本である。

とにかく、奈良美智についてもっと知りたいということで、この本を借りたわけです。



奈良

奈良美智著、ロッキング オン、2004年刊

<商品説明>より
日本を代表する世界的アーティスト、奈良美智の書き下ろし自叙伝が完成。青森県弘前市に生まれた幼少時代から、東京、名古屋での学生時代、そして単身ドイツへと渡ってアーティスト・デビューを果たし、日本における現代アート・ブームの牽引者となった現在まで。その足跡を作家自ら書き記したノンフィクション。また未公開絵画も含め、各時代毎の貴重な絵画もふんだんに掲載。秘蔵写真や過去の住居の間取り図など、普段うかがい知る機会の少ない現代アーティストのプライバシーも知れる1冊です。

<読む前の大使寸評>
奈良美智の個人史ということだが、2004年刊行の本にしては、気のきいた装丁の本である。そして、こんなにきれいで若々しい個人史は、初めて見るような気がするのです。

rakuten 小さな星通信


それにしても、なんでドイツ留学だったのか?ということで読んでみましょう。

p40~42
 そして1987年、3度目のヨーロッパ旅行に出る。今回の目的ははっきりしていて、5年に一度のサイクルでドイツのカッセルという町で開催される『ドクメンタ』という国際美術展を観に行くことだった。ドクメンタでは現代美術の最前線に触れることができるし、毎回展覧会を構成する人(キュレーターといいます)が変わり、その人なりのテーマが見えて面白いというのもあるのです。

 ドクメンタを観た後、僕は愛知の大学卒業後に大学院には行かずにドイツに行った同級生の小林君を訪ねた。彼はデュッセルドルフという町に住み制作していた。学校に入るでもなく、バイトしながら屋根裏のちっぽけな部屋で毎日絵を描いていた。

 彼のところにしばらく居候して、学生時代の思い出話から今制作し考えていることをお互い語ったのだけど、ドクメンタというたくさんのアーティストが集う大きな展覧会を観た後でありながらも、ひとりぼっちで異国に住みバイトしながら制作する彼の姿勢は、等身大のリアルさで僕の心を感動させたのだ。彼と一緒に美術学校ものぞいてみたのだが、学生たちの作品は日本の学生に比べて個性こそあれ、技術的にはたいしたことはなかった。

(中略)
 「そうだ! 僕は今アーティストになりたいわけじゃない。まだまだ道を探す学生でありたいんだ! 本当の意味での学生に!」という結論を導き出させた。

 帰国後、そんな思いは僕にドイツへの留学を決意させた。予備校の生徒たちが美術を学ぶべく美大に進学するように、僕も初めて学ぶという気持ちを持ってドイツに行こうと決意したのだ。1988年5月、僕は生徒たちが見送る名古屋駅のホームに立っていた。


p54~57
<1988-1994>
 思い出深い屋根裏に住んで3年目に、僕はもっと家賃の安い学生寮に引っ越した。その学生寮はキリスト教の団体が経営していて月額1万5千円という安さで、寮生にはドイツ人はもとより東欧やベトナムから来た若者たちもいて、特にベトナム人たちはみんな難民(ボートピープル)としてドイツに来た人たちだった。

 みんな学校も専攻もいろいろだったのだけども、ベトナム人は卒業後すぐに職につける電気技師養成学校に通う人が多かった。彼らと話すことで、僕にとってのベトナム戦争はより現実味を帯びたが、ドイツという国でこうしてベトナム戦争を肌で知っている人たちと接するとは思ってもいなかった。彼らはよくベトナム人同士で集まっていたけども、同じアジア人だからか、僕もその集まりによく呼ばれた。

 そこには戦争中にアメリカ軍のナパーム弾によって顔を焼かれ、SFXの怪物のような顔をした人もいた。彼の顔を初めて見た時、正直なところ本当にモンスターの仮面をかぶっているみたいで、そう思うことで冷静に見れたのを思い出す。彼はドイツの自動車会社で営業をやっているのだが、客に好印象を与えなければいけない日本の会社では、もし入社できたとしても決して営業なんてさせてはもらえないだろうと思う。そして、彼らから僕がかつて見たベトナム戦争の有名な報道写真のナパーム弾を背に受けて、両手をあげて泣き叫ぶ少女、その少女の行方も知ることができた。その女の子はドイツに送られ、皮膚移植を受けて回復し、将来は自分も医師になって人々を救う夢を持ったが、医師にはなれず、しかし看護士として現在は病院で働いているという。
(中略)

 僕は学生寮にいる間、そこで知り合ったハンガリー人と一緒に彼の里帰りに便乗しハンガリーに行ったり、ポーランド人と一緒にポーランドを巡ったりすることができた。その旅行が、外国人が一人で行くことでは経験できなかったであろう旅になったのは言うまでもなく、彼らに感謝しているし、それも学生寮という世界があって初めてそういうチャンスが僕に与えられたんだろうと思う。


この本が発刊された2004年には世界的なメジャーになっていたわけだが・・・
早すぎるような個人史かも♪
p138~140
<2003年秋 アメリカ巡回個展>
 パリで迎えた2003年は、以前にもまして外国での展覧会の多い年になっていた。アメリカでは『マンガ世代の現代日本美術』的な展覧会への参加が数箇所の美術館であったし、それ以外でも『子ども』というキーワードでくくられたり、『戦争』や『悲惨』という観点から構成されたヨーロッパ各国の美術館での展覧会にも出品した。

 自分の作品だけが、なんだか急に一人歩きをしていっているような感じではあったけども、冷静に振り返るとすべてはケルン時代から始まっていたのだった。一人ドイツにやって来て、アカデミーで学び、いろんな人に出会い、少しずつ外に向かって広がっていった自分の世界が、それを知った人たちによって自分の手の届かないところにまで行ってしまっていたのだ。

 その数年間で、僕個人も予期せぬぼくの作品の愛好者たちを獲得していた。それは、たとえばステージの下から見あげていた大好きなミュージシャンだったり、銀幕でしか見ることのできなかった俳優や、文筆家、そして名も知らない一般の人々だった。そして、秋にはアメリカ国内の美術館を巡回する個展も開催されることになるのだけど、それは僕の作品を真剣に観ていてくれた美術館の人々によるものなのだろう。

 僕の初めてのアメリカでの美術館巡回個展は、五大湖の一つエリー湖のほとり、オハイオ州のクリーブランドから始まる。クリーブランドは、あの『ROCK AND ROLL』という言葉の発祥の地でもある。それはクリーブランドのあるラジオ局のDJが放った言葉だった。そして今や『ROCK AND ROLL』は、世界の若者の共通言語だ。僕は、自分のアメリカ初の巡回展が、そんな町から始まることに感動せずにはいられなかった。








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Last updated  2015.05.29 22:26:53
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