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2016.10.31
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カテゴリ: カテゴリ未分類
図書館で『発火点:桐野夏生対論集』という本を手にしたのです。
報道では女性の地位が先進国のなかで日本が最下位あたりに低迷しているそうです。
2009年発刊のこの本でも、それを喝破しているわけで・・・・なるほど作家の感性はだいたい5~10年先を見ているのか♪


【発火点:桐野夏生対論集】
桐野

桐野夏生著、文藝春秋、2009年刊

<「BOOK」データベース>より
時代に挑み続けるキリノ。直木賞受賞から現在まで、識者十二人との刺激的な論考。
【目次】
剥き出しの生、生々しい性(松浦理英子)/悪意を小説で昇華させたい(皆川博子)/女は怪物?それとも鬼?(林真理子)/想像は現実である(斎藤環)/いまそこにある危機・ニッポンの男と女(重松清)/極私的オトコ論(小池真理子)/残酷な想像力の果て(柳美里)/星野智幸による「快楽主義者の伝記」(星野智幸)/「見えない貧困」がこの国を蝕む(佐藤優)/座して死を待たず(坂東眞砂子)/象徴天皇制の「オモテ」と「オク」(原武史)/フィクションに潜む真実(西川美和)

<大使寸評>
報道では女性の地位が先進国のなかで日本が最下位あたりに低迷しているそうです。
2009年発刊のこの本でも、それを喝破しているわけで・・・・なるほど作家の感性はだいたい5~10年先を見ているのか♪

rakuten 発火点:桐野夏生対論集


イタリアから高知に帰ってきた坂東真砂子さんとの対談を見てみましょう。
「異境に暮らす」とか、「地方の独立」が語られています。
p196~207
<座して死を待たず>
桐野: 坂東さんはミラノやタヒチで、いわゆる「異境に暮らす」ということを実践してこられた。そういう営みをする人は現在の日本の作家ではあまりいないと思うんです。異境で暮らしたいという、坂東さんの気持ちはどこから生まれてきたんですか?

坂東: 私はこの高知県の生まれで、しかも村社会というべき狭い人間関係のなかで育ったんです。中学生くらいのときから、あまりに窮屈な人間関係とか、閉塞感のある小さな共同体から逃げだしたいという気持ちを持っていました。

桐野: だから、外国へ飛び出したのですね。東京や大阪という都市は、坂東さんにとって異境にはならなかったんですか?

坂東: そうなんです。やっぱり同じ日本人が目の前にいれば、異境にいる気分にはならない。
(中略)

坂東: たとえばイタリアの場合は、すでに都市生活が営まれているんです。東京や大阪、日本の大都市とそんなに変わらない。だから、私が求めていた異境、エキゾチシズムみたいなものは、なかった。

 じゃ、タヒチに行けばもう少しエキゾチックかなと思ったら、今度は生まれ育った高知の原風景のような感じがして(笑)。

桐野: 逆に、タヒチでノスタルジアを感じたわけですね。

坂東: そう。そうなんです。
 最近高知に戻ってきて思うのは、いまの高知の山間部に住んでいる人たちというのはまさにエキゾチックだということ。つまり、現代社会に慣れ親しんだ私にとって、高知の山間部で野良仕事をしながら暮らしているお年寄りたちの精神性や日々の行動こそが、最も異境だったんです。

桐野: 異境を求めて世界を巡って、故郷に異境を発見したということですか。坂東さんが、中学生時代、閉塞感から抜け出したいと感じたきっかけはあったのですか?

坂東: 公務員の娘だったということが大きいですね。教師の娘だったんです。小さい村の中だったから、「真砂子ちゃん、将来何になりたいの? お父さんとかお母さんみたいに先生になるの?」とか、選択肢を与えられる以前に・・・・。

桐野: 決まってしまっている。

坂東: 教師の娘として優等生であれ、という期待を村中から受けていた。人徳者である教師の娘はハメを外せない。

桐野: それはたしかに窮屈かもしれません。作家になって、直木賞をとられて、何か変わったことはありましたか?

坂東: 変わりましたね。一度外国にいって、作家という社会的地位を得てしまうと、あまりごちゃごちゃ言われなくなるんですね。「坂東先生の娘」から脱却できたということです。そうじゃなければ、田舎の閉塞性のほうが強くて、エキゾティシズムを感じる余裕は生まれなかったかもしれません。

桐野: 海外で異境を発見できなかったのに、坂東さんご自身が異境化して帰ってきたんですね。

坂東: まさにその通りですね(笑)。

桐野: お話をうかがっていて、対照的だなと思いました。私はサラリーマンの娘で父は転勤族でしたから、地方で暮らしていても最後は東京に戻ってくると感じていました。じゃあ東京に帰属しているかというと、それも違うんです。どこにも帰属していない。フワフワした都市生活者というんでしょうか。

坂東: 自らの意思とは別に、知らない土地で暮らすというのはどんな感覚なんでしょう。

桐野: 子供だった私にとって、それこそが異境でした。いじめられたりはしないんだけれども、カルチャーショックを受けることが多かった。
(中略)

<ボーダーの向こう側>
坂東: 桐野さんは、以前、自分の居場所を確認するために辺境に行くとおっしゃっていました。

桐野: そうなんです。私は、ボーダーラインを訪ねるのが好きです。国境マニアというのでしょうか。線が引かれた場所を見たいというだけで、じゃあ自分がそこに身を置いて暮らそうとか、ボーダーを越えてどこかへいこうとか、そういう発想はまったく持っていない。

 なぜかというと、子供の時に「異境」で苦労しているからでしょうね。どこの共同体にも属せなかった。ボーダーラインに行って、「私は異境に行かないぞ」「何の共同体も関係ないぞ」という自分を発見して帰ってくるんです。

坂東: 他者である以上、どこにいっても結局は入りこむことはできないんだとわかっているんです。ただ、やっぱりそこに行って暮らして、異なるものに包まれる感覚というのに、ゾクゾクするんですね。

桐野: それはどういうときに実感するんですか。

坂東: たとえば、家の近くを一人で歩いていた、周りを見渡せばみんなイタリア人だった、というような。そうするとまるで自分がイタアリアの一部であるかのように、一瞬錯覚を覚えます。私も彼らの一人であるみたいな気分が味わえる。けれども、同時にそうではないこともわかる。そういった不確かな自己認識が好きなのかもしれない。

桐野: 私が国境を外から眺めている自己認識にちょっと近いのかもしれないですね。
 坂東さんは高知新聞に『やっちゃれ、やっちゃれ! 高知独立宣言』という小説を連載されています。高知の独立というテーマは面白いですね。

坂東: 日本に戻ってくると、地方が置かれた悲惨な状況を実感するんです。そこで、地方が元気になるテーマはないだろうかと探していたら、以前、高知新聞で「時の方舟」という県独立をシミュレーションする企画があったんです。それがなかなか面白かった。

 高知出身の人間の一人として、それを引き継ぐ形で小説化したんです。特集記事の終りが、住民投票をこれから始めます、というものだった。

桐野: だから、小説の冒頭のシーンが住民投票なんですね。

坂東: 桐野さんの最近の作品に特徴的なのは、あくまでも、何処かから来た人間が他者として地方に住み着く、というものですね。いま「週刊文春」に連載中の『ポリティコン』もそうですね。

 私の場合は、高知の人間が独立に立ち上がる。桐野さんは、よそ者が山形という地で律そう国家を作るという。そのへんのアプローチの違いが、さっき話していた立脚点の差異につながりますね。

桐野: たしかにそうかもしれません。独立論の場合だと、沖縄がよく語られますが、私は地域の土着の人間がいかに独立していくか、という視点はあまり持ちえないんです。『ポリティコン』は主人公の高波東一が、山形の農村を舞台に、「唯腕村」という愛のない共同体を構築する、というものなんですが、この構想段階で、実は高知を舞台にしようかかと考えていたこともあったんです。

坂東: えっ、高知県をですか?

桐野: その時点での構想では、「満州国」を母胎とした人工国家が今でも存在していて、そこで国民を募って、集まった人たちが新しい国づくりに参加すればどうなるか、ということを考えていました。

 舞台としてイメージしていたのが、高知県の東洋町だった。あのあたりは孤島感がありますし、サーファーが集まるとも聞いていたから、一個の独立国とすると面白いんじゃないかと編集者と話していたんです。

坂東: 室戸岬の先の東洋町? 私も先日、『やっちゃれ、やっちゃれ!』でも、サーファーたちを登場させるから、サーフィンのメッカである東洋町を取材にいったところです。
(中略)

坂東: 舞台となっている唯腕村は、過疎化と高齢化という日本の田舎が抱えている問題に直面しています。

桐野: 日本の土俗から逃れるために作った一つの砦のような共同体が、実はそれこそグローバリズムとか新自由主義というか、アメリカを中心とした資本主義に取り込まれ、市場原理主義にやられていくなかで、たった一人で奮闘する主人公・東一がどう戦うのか。たぶん敗北する可能性のほうが大きいんですけれどね。

坂東: コミュニティーと言ったときに、今、あんまり希望が感じられない。

桐野: ないでしょう。

坂東: 高知を国家としての独立という表現にしたのも、小さな国であれば、頭があり、手足があるというようなある程度まとまった小さな形というのが必用となる。ところが、コミュニティーというと、手だけ、足だけとかいうイメージがあり、小説を書いていても無理だという実感がある。

桐野: 立ちゆかないと思いますね。私の描いている東一の大きな間違いは、頭の部分があるというふうに思っていること。けれども、手足がないから、やっぱりボロボロになってくる。

坂東: 間違いとおっしゃったけれども、得てしてこれまでの日本人がやりたがってきたことだし今もやっていることでしょう。オウムなんかでもやっぱり頭の部分だけでやろうとした。

桐野: そう思いますね。その意味では、『やっちゃれ、やっちゃれ!』の高知は何処に行くのかなって、すごい興味があります。

坂東: あれはね、どこにも行けないんじゃないかな(笑)。

桐野: それはたぶん『ポリティコン』も同じかもしれません。

坂東: とはいえ、人間の営みというのは常に、破滅にしろ成功にしろ、どこかに行かなければならない。
 私が書きたいのは、座して死を待つなんていうようなことをするよりは、ジタバタしてでも何でもやってみればいいんではないかということです。


大使はたまたま、お二人の『やっちゃれ、やっちゃれ!』と『ポリティコン』を読んでいたので、この2作品の執筆途中のお話が興味深いのです。


【やっちゃれ、やっちゃれ!】
やっちゃれ

坂東眞砂子著、文藝春秋、2010年刊

<「BOOK」データベース>より
このまま衰弱死するがやったら、高知は日本から独立するしかないろうが!直木賞作家が本気で描いた、迫真の地方独立小説。

<大使寸評>
住民投票で土佐黒潮共和国を誕生させる。それもキューバを参考にして自給自足をめざすという・・・明るくて大胆な構想が、いかにも土佐のはちきんなんですね♪
50代で早世したが、惜しい人を亡くしたものである。
沖縄県には独立の気運がなくはないが、その次に独立の話がもちあがっても不思議でないのが高知県である・・・・
この小説のラストでは、貿易交渉のため小さな漁船でフィリピン目指して航行するシーンとなっています。
いかにも現代版の海援隊であるが、地産地消というか明るくていいではないか♪

単なる実験小説と笑っている場合でない面白さがあるなぁ(笑)

amazon やっちゃれ、やっちゃれ!



【ポリティコン】
ポリティコン
桐野夏生著、文藝春秋、2011年刊

<「BOOK」データベースより>
 大正時代、東北の寒村に芸術家たちが創ったユートピア「唯腕村」。1997年3月、村の後継者・東一はこの村で美少女マヤと出会った。父親は失踪、母親は中国で行方不明になったマヤは、母親の恋人だった北田という謎の人物の「娘」として、外国人妻とともにこの村に流れ着いたのだった。自らの王国「唯腕村」に囚われた男と、家族もなく国と国の狭間からこぼれ落ちた女は、愛し合い憎み合い、運命を交錯させる。過疎、高齢化、農業破綻、食品偽装、外国人妻、脱北者、国境…東アジアをこの十数年間に襲った波は、いやおうなく日本の片隅の村を呑み込んでいった。ユートピアはいつしかディストピアへ。今の日本のありのままの姿を、著者が5年の歳月をかけて猫き尽くした渾身の長編小説。

<大使寸評>
ユートピアは世代を経ることで、いつしかディストピアへ変るという桐野の洞察がすごーい♪
アメリカのヒッピー村もそんなだったか。

Amazon ポリティコン



お二人の対談の最後のあたりを見てみましょう。
p213~214
桐野: 坂東さんが、さっきおっしゃっていたのを聞いて、改めて認識したんですが、私は小説を書くことで、何か幻想を砕きたいんでしょうね。高邁なものと言われているものの幻想を砕いて、「現実を見ろよ」って、突きつけたいんでしょう。

坂東: 『ポリティコン』にも、理想郷から暗黒郷へという章がありました。ユートピアは絶対引っ繰り返ると。

桐野: ディストピアですね。坂東さんは、生きているのか!と問いかけているとおっしゃったけど、私はやっぱりむごい現実を見て考え直せじゃないけども、ちょっと目を覚ませ、と問いかけたい。
 そのあと、じゃ、どうするかとまでは言わないですよ。だって、教養小説を書いているわけじゃないから。

坂東: アプローチの仕方は違うけれども、私たちは二人とも、「現実を見ろよ」ということを読者に突きつけたいんでしょうね。


『発火点:桐野夏生対論集』1
『発火点:桐野夏生対論集』2






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Last updated  2016.10.31 00:03:34
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