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2021.02.23
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カテゴリ: 歴史
図書館で『コロンブスの図書館』という本を、手にしたのです。
先日『図書館超活用術』を読んだばっかりで、この本のタイトルに反応したわけです。






エドワード ウィルソン リー著、柏書房、2020年刊

<「BOOK」データベース>より
1539年、スペイン・セビーリャー世界最高の図書館をつくりあげたのはコロンブスの息子だった。あらゆる分野におよぶ蔵書は、ヨーロッパ一の規模を誇り、さらにその図書館には驚くべき“仕掛け”があったー。持ち主の名はエルナンド・コロン、コロンブスの私生児である。15世紀半ばのグーテンベルクの印刷革命から100年足らず、ルネサンス、宗教改革、大航海時代の最前線で世界のありとあらゆる情報を集めて目録化しようと試みた書物狂の知られざる物語。

<読む前の大使寸評>
先日『図書館超活用術』を読んだばっかりで、この本のタイトルに反応したわけです。

rakuten コロンブスの図書館

サンタ・マリア号


エルナンド・コロンの幼少期を、見てみましょう。
p23~26
<第1部第1章 太洋からの帰還>
 記録に残るエルナンド・コロンの最初の記憶は、じつに正確だ。
 1493年9月25日水曜日、夜明けの1時間前。エルナンドは異母兄ディゴの横でカディスの港を眺めていた。水面に星座のごとく浮かび上がるランプの灯りが、きらきらと踊っている。海上では17隻の船が錨を上げ、出航の時を待っていた。彼らの父親が初上陸を果してからまだ1年もたたない西の島々へ向けての、二度目の航海である。

 クリストファー・コロンブスはいまや“太洋の提督”の称号と名声を手に入れ、5歳のエルナンドの目の前で繰り広げられるこの光景を、年代記編者たちが克明に記録していた。

 船隊はスペイン北部カンタブリアで調達された多くの軽量船と、速度では劣るが耐久性にすぐれたカラベル船で編成され、総勢1300人の乗組員のなかには、コロンブスが語った驚くべき無限の富が目当ての職人や人夫に加え、仕事よりも冒険を求めて志願した上流階級の紳士たちもいた。

 ほどよい追い風が吹き、町の空が白みはじめると、点々とともる灯りの間隙を埋めるように、ランプにが取り付けられた船室やマスト、索具などの形が徐々に浮かび上がる。その光景といい、雰囲気といい、すべてが輝かしい勝利に満ちあふれていた。

 舷側にはタペストリーが掛けられ、太綱に三角旗がはためき、船尾にはカトリック両王の王室旗が掲げられている。アラゴン王フェルナンドとカスティーリャ女王イサベル…この偉大な統治者どうしの結婚により、分裂していたスペインは統合された。

 船出を祝い、オーボエやバグパイプ、トランペット、クラリオンが奏でるけたたましいファンファーレ。その音はセイレーンや海の精霊たちを驚かせ、響き渡る大砲の音は海底にまで届いたと伝えられる。港の入り口では、交易の任務を終えてブリテン諸島から帰ってきたヴェネツィアの船団が、こちらも祝砲をとどろかせながら、コロンブスがどのような航路をたどるのか途中までついていってみようと待ちかまえていた。

 エルナンドがのちに、この記憶よりもさかのぼり、その年の三月に父親が最初の大西洋横断の旅から帰還したときのことを思い出したかどうかは定かでないが、それはこの華々しい船出とはだいぶ様相が異なっていた。

 1492年8月3日、コロンブスは三隻の船で最初の航海に出発したが、帰還したのはそのうちの一隻だけだった。旗艦サンタ・マリア号はクリスマスイブにエスパニョーラ島沖で座礁し、ピンタ号は帰港の途中、嵐のさなかにアゾレス諸島の近くで姿を消した。また、もともと90人余りいた乗組員のうち39人は、大西洋のかなたエスパニョーラ島に残された。
 島の首長グァカナグァリの助けを借り、サンタ・マリア号の廃材を使って築かれた砦は、建設に着手した日がクリスマスイブだったことから、スペイン語でクリスマスを意味するラ・ナビダッドと名づけられた。
(中略)

 エルナンドの幼少期が普通の子どもとは異なる、おそらく前例のないものであったのは、ごく幼いころから、父親に関する自身の思い出と、そのころ広く出回っていたコロンブスの偉業を伝える文書とが競合していたせいかもしれない。三月にコルドバの大聖堂で父親の書簡が読み上げられたとき、エルナンドもその場にいたのだろうか。

 コロンブスの新発見を世に知らしめたその書簡は、最初にバルセロナで印刷され、その後もいくつか異なる版が刷られ、のちにエルナンドはそれらを大切な記念品として自身の図書館に保管している。彼の世界図書館では、まさにこの種の安価な印刷物が重要な蒐集物となるが、そのきっかけとなったのはコロンブスの旅の報告書だったのかもしれない。


『コロンブスの図書館』1
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Last updated  2021.02.23 15:22:38
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