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2023.05.16
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『タイワニーズ』という本を、手にしたのです。
温又柔、余貴美子、陳舜臣、蓮舫など、この本が取り上げている在日台湾人がええわけです。




野嶋剛著、小学館、2018年刊

<「BOOK」データベース>より
日本は台湾を二度も捨てた。それでも彼らがいたから、強く、深くつながり続けた。在日台湾人のファミリーヒストリー。

<読む前の大使寸評>
温又柔、余貴美子、陳舜臣、蓮舫など、この本が取り上げている在日台湾人がええわけです。

rakuten タイワニーズ



この本ではコラム頁が充実していて興味深いのだが、そのうちの一つを見てみましょう。
p140~142
<台湾人と日本語文学>
 台湾には「日本語文学」の伝統がある。台湾人の筆によって生み出された日本語によって成り立つ文学のことである。
 日本文学、台湾文学のどちらにも属しながら、属していないような存在で、台湾と日本との間に生まれたまさにハイブリッド文学である。

 日本は台湾を1895年から統治した。日本語教育を受けた台湾人作家から日本語文学が生み出されたのは、統治から30年以上が経過してからだった。

 台湾人にとっては、本来は外国語であるはずの日本語が、日本統治という歴史によって母語化され、ぶんがくを生み出したのである。一方で、台湾には、中国語の文学も生み出されており、文学において台湾は分裂の状態にあった。

 1932年には日本語を中心とする文学同人誌「フォルモサ」が発刊。日本の文芸誌でも人選する楊キ(1905-1985)のような作家も現れる。
 楊キの著した『新聞配達夫』はプロレタリア文学の名作との評価も高い。台湾・台南出身の葉石濤(1925-2008)は遅咲きの日本語文学作家であるが、これらの作家は基本的に日本の台湾統治への反発をエネルギーとする文学運動の担い手たちだった。

(中略)
 日本統治は1945年をもって終結したが、日本が台湾に残した言葉は生き続け、台湾文学において複雑なプリズムを作り出した。
 日本語でしか表現できない作家たちが、中国語を母国語とする国民党政府の新体制で表現活動に取り組まなければならない事態である。

 その状況が解消されるのは、中華民国体制の中国語教育が定着する1970年ごろまで待たなければならず、その間は、主に外省人作家がその中枢を担っていくことになる。
 しかし、日本語で表現する台湾人の作家がいなくなったわけではない。その過渡期ともいえる時期に出現した作家が、第五章で述べる邱永漢や陳舜臣だったのである。

 邱永漢の作品を台湾文学と分類するかどうかはなお議論が分かれている。ただし、邱永漢は台湾の血統を持ち、日本語を母語として、台湾のテーマを日本語で書き続けた。

 すでに体制は日本から中華民国に変わっていたとはいえ、邱永漢もまた、台湾における日本語教育が産み出した「台湾の日本語文学」の担い手の系譜に位置していると見るべきである。

 一方陳舜臣になると日本統治下の台湾で育ったわけではないので、少し状況は複雑だ。
 陳舜臣も、台湾から日本に渡った家族の一員であり、日本の教育を大学まで受けた。だが、教育を受けた場所が台湾と日本で違っているだけで本質的には邱永漢と変わらない。

 邱永漢、陳舜臣は広い意味で、日本統治時代のなかで「日本人」として日本語と日本人の教養を身につけた「日本語世代」だった。
 李登輝・元台湾総統もそうだが、日本人以上に日本語に親しみながら、中華文化の素養も身につけ、同時に台湾的土着性も失わない。日台の歴史の産み落とした特異な才能だった。

 なお、邱永漢や陳舜臣が「植民地」を背負った作家であるとすれば、第二章で取り上げた東山彰良と温又柔の二人は「戦後」を背負った作家である。
 東山も温又柔も日本に外国人として渡った一家の系譜にあるので、その本質は移住先の国における多元的な背景を持った人々が作り出す「移民文学」であろう。

 複数の場所を移動し、異なる文化やアイデンティティに触れることによって生じる葛藤や対立をテーマにすることが多い移民文学の存在感は、21世紀に入って進んだグローバル化とともにますます高まる方向にある。


『タイワニーズ』3 :陳舜臣(続き)
『タイワニーズ』2 :陳舜臣
『タイワニーズ』1 :温又柔





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Last updated  2023.05.16 00:04:53
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