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2023.06.27
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カテゴリ: 歴史
図書館で『室町は今日もハードボイルド』という本を、手にしたのです。
この本の副題が「日本中世のアナーキーな世界」となっているが・・・・面白そうなのでチョイスしたのです。




清水克行著、新潮社、2021年刊

<「BOOK」データベース>より
僧侶は武士を呪い殺し、農民は合戦を繰り広げ、浮気された妻は相手の女を襲撃するー。あなたたち、本当にご先祖様ですか?数々の仰天エピソードから浮かび上がる中世の日本人像は実は凶暴でアナーキーだった!想像の斜め上を行く驚愕の日本史エッセイ。

<読む前の大使寸評>
この本の副題が「日本中世のアナーキーな世界」となっているが・・・・面白そうなのでチョイスしたのです。

rakuten 室町は今日もハードボイルド

北条政子(「鎌倉殿の13人」より)

「第3部 中世人、その愛のかたち」で中世人の恋愛が語られているので、見てみましょう。
p129~137
<第9話 婚姻のはなし>
■女たちの復讐
「みなさんは“うわなり打ち”って聞いたことありますか?」 
 この問いかけで始まる授業を、私はもう何年繰り返しただろう。大学の教壇に立ってかれこれ10年以上になるが、毎年、大教室の講義で話題にすると妙に盛り上がるのが、このネタである。漢字で「後妻打ち」と書いて、「うわなりうち」と読む。その内容を簡単に説明すれば、こういうことになる。

 妻になる男性が別の女性に浮気をする。というのは、好ましいことではないにせよ、現代でも時おり耳にする話である。しかし、これが「浮気」でなく「本気」になってしまったとき、悲劇は起こる。夫が現在の妻を捨てて、べつの新しい女性のもとに走る。そんな信じがたい事実に直面したとき、現代の女性たちならどうするだろうか?
 ただ悲嘆に暮れて泣き明かす?証拠を揃えて裁判の準備?週刊誌に告発?あまい、あまい。そんなとき、過去の日本女性たちは、女友達を大勢呼び集めて、夫を奪った憎い女の家を襲撃して徹底的に破壊、ときには相手の女の命を奪うことすら辞さなかったのである。
 これが平安中期から江戸前期にかけてわが国に実在した、うわなり打ちという恐るべき慣習である。
(中略)

■“女傑”北条政子
 うわなり打ちを行った人物として、おそらく史上最も有名なのは、北条政子(1157~1225)だろう。源頼朝(1147~99)の“糟糠の妻”として鎌倉幕府の創業を陰で支え、頼朝死後は“尼将軍”として幕府に君臨した、いわずと知れた女傑である。

 まだ頼朝が平家を滅ぼす以前の話。頼朝と政子は親の反対を押し切って駆け落ちのすえゴールインしたとされる相思相愛の夫婦だったのだが、ただひとつ、頼朝には浮気性の悪癖があった。頼朝は政子という妻がいながら、かねて亀の前という名の女性を愛人にして、彼女の身を密かに家来のもとに預けていたのである。不遇時代を政子に支えてもらった義理もあって、頼朝は政子には生涯、頭が上がらなかった。
 そこで彼の浮気は隠密裏に進められていたのであるが、ちょうど政子が出産のために別の屋敷に移ったこともあって、頼朝の動きは公然となった。鎌倉幕府の歴史書『吾妻鏡』によれば、亀の前は「*1」とされるから、“女傑”政子とは正反対のタイプの女性だったのかも知れない。

 ところが、この浮気の事実が出産を終えた政子の耳に入ってしまったから、大変である。怒った政子は、寿永元年(1182)11月、牧宗親という配下の者に命じて、亀の前を庇護している伏見広剛の屋敷を襲撃させる。驚いた伏見は亀の前を連れて、命からがら大多和義久という同僚の屋敷に逃げ込むことになる。このとき、もし伏見の機転が利かなかったら、亀の前はさきの上原郷の下女のように殺されてしまったかも知れない。

 この事件を聞いて顔面蒼白となったのは、他ならぬ頼朝である。浮気がばれた・・・。しかも政子、すごく怒っている・・・。さいわい愛人の命が無事だというのは救いだ。とはいえ、政子の手前、すぐに駆けつけるわけにもいかない・・・。

 震えて眠る夜を二晩過ごし、頼朝は翌々日を待って、亀の前が匿(かくま)われている大多和の屋敷に、いそいそと駆けつける。しかし、このとき頼朝は一計を案じ、実行犯である牧宗親を騙して大多和屋敷まで同行させることを忘れなかった。
 そうとは知らず、頼朝にノコノコついていった牧は、大多和の屋敷で伏見と不意の対面をさせられる。唖然となって言葉を失う牧に向かって、頼朝は、烈火のごとく怒って、こう言い放つ。
「政子を大事にするのは大変けっこうなことだ。ただ、政子の命令に従うにしても、こういう場合は、どうして内々に私に教えてくれなかったんだ!」
(中略)

 恐懼(きょうく)して地べたに頭を擦りつけて謝る牧に対して、頼朝の怒りはなおも収まらず、ついにみずからの手で牧のマゲをつかんで、切り落としてしまう。当時の人々にとってマゲを切られるのは最大級の屈辱である。気の毒にも牧は泣きながら、その場を逃げ去ったという。なんとも頼朝の器の小ささがうかがえる、みっともないエピソードである。

*1:亀の前の説明が載っていたのだが、この本を図書館に返却してしまったので、もう分かりません(汗)

『清水克行さん「室町は今日もハードボイルド」インタビュー 自粛しない人々の正義感 がお奨めの書評です。

『室町は今日もハードボイルド』1 :悪口のはなし





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Last updated  2023.06.27 00:30:51
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