それ以来、一度も途切れることなくパスポートを更新し続けてきた。数えたことはないけれど通算十数冊目であるはずの私のパスポートの表紙には「中華民國 REPUBLIC OF CHINA」と金色の文字が記されている。真ん中あたり(日本のパスポートなら菊の紋章に該当する位置)には、太陽の形のマークが描かれてある。 これは中国国民党の党章を基本とした「中華民國」の「国章」だそう。国章の下側には「TAIWAN護照PASSPORT」とある。以前は「TAIWAN」の表記はなかった。それが記されるようになってからまだ十年も経っていない。 (中略)
中華民国(=台湾)外務省の発行したパスポート。表紙に「REPUBLIC OF CHINA」と「TAIWAN」が同時に並ぶパスポート。台湾(=中華民国)じたいが、「中国(CHINA)」と「台湾(TAIWAN)」の間で揺らいでいる。
「再入国記録」の国籍蘭には、「Nationality as shown on passport」という英文が添えられている。ただ「国籍」というのであれば「Nationality」だけでいいはずだ。何故「as shown on passport」と続くのだろう。パスポートを持たない人は、どうすればよいのだろう。もちろんそんなことはありえない。「再入国記録」の記入は、(渡航先がどこであろうと)日本からの出国を前提とした行為なのだ。そして、出国には、パスポートの掲示が不可欠なのである。