全13件 (13件中 1-13件目)
1
恒例の南郷ジャズフェスティバルを観に行った。今年はにわか雨が少しあったが、概ね曇り空で、鑑賞するには悪くない環境だった。いつもなら芝生席の最前列で観るのだが、今年は初めてコンクリートの座席での鑑賞。本当は椅子席がいいのだが、狭いところでずっといるのが耐えられそうもないので断念した。芝生席だとコンクリートの座席の人たちや、通行人が邪魔になってステージが見えないことがよくあるが、今回は視覚を遮るものがなくその点では快適な環境だった。ところが、事前に席を決めていたわけではないので、座布団を用意していないため、お尻が痛くなるのには参った。今回は30周年だったが、特別な企画はなかった。サポーター募集のチラシが入っていたので、運営が難しくなってきていることが分かる。収入源はチケット代とプログラムの広告収入が殆どとのことなので、観客が昨年だと1700人で、低落傾向であることには変わらない。共催に八戸市も名を連ねているが、文化的に意義のある催し物なので、実質的な資金の援助が欲しいところだ。外人ミュージシャンも招聘されていないのも魅力に欠ける。マシューズは外人とはいえ、八戸市民だったこともあり、特に新鮮味はない。かつては絶大な集客力を誇った渡辺貞夫も、年を取りすぎた。例によってオープニングは地元の団体の演奏。小学校が7名、中学校が14名と最近の少子化を反映したしたせいか、少し寂しい。中学校は小学校のあとに聞いたせいもあるかもしれないが、いい音を出していた。八戸ジャズ楽団とスイングべリー・ジャズ・オーケストラはさすがに大人のバンドで安定したサウンド。八戸ではトランペットの女子中学生が「ララバイ・オブ・バードランド」でヴォーカルも披露していて、なかなか楽しませてくれた。さながら、南郷のアンドレア・モティスだろうか。「コンファーメーション」では女子高生のフルート・ソロがあり、かなりうまかった。後半の3曲ではマシューズも参加し、自作とスタンダードではヴォーカルも入っていた。スイング・べリー・ジャズ・オーケストラでは十和田市在住のシンガーソングライターである桜田マコトという方が入っていて後半は彼をフィーチャーしたプログラム。カーネギーホールでのコンサートに出演(2018)というのが売りらしいが、特別うまいわけではなく、バンドの音楽がもっと聴きたかった。第1部は中路英明の率いるOBATARA SEGUNDの演奏。本来は6人編成なのだが、パーカッションのかたは病気のため欠席。基本ラテンバンドなのだがそれほどパンチのある音楽ではなかった。気になったのはドラムスが短パンだということ。ステージではありえない服装ではないだろうか。ラテンバンドのテイストはあまり感じられず、むしろメインストリーム系の「AM」やギターの鈴木の「The Agreement」が印象に残った。「AM」でのピアノやギターソロが熱かった。「缶無料、瓶10円」というダジャレも使い古しの感じ。ラストの「OBATARA」では聴衆に立ち上がるように促していたが、立ち上がるほどの盛り上がりとは感じられなかった。第2部は伊藤君子のステージ。当ブログはCDで聴いたことはあるが、実演は初めて。伊奈かっぺい作詞による近作の「津軽弁ジャズ〜」や「Kimiko sings HIBARI」からセレクト。「津軽弁ジャズ〜」はスタンダードを津軽弁で歌うというもの。当ブログは寡聞にしてこれらのアルバムは全く知らなかった。「津軽弁ジャズ〜収録曲が腹絶倒の大傑作。歌詞のインパクトがありすぎてそちらに耳目が集中してしまうが、まっとうなジャズであることは確かで、ジャズの可能性が広がっていることを感じる。美空ひばりの「愛燦燦」はジャズ・ヴォーカルとは言えないかもしれないが、心に沁み入る歌唱だった。このブログを書くために調べたら生まれが何と1946年7月11日。今回は73歳になったばかりのステージだったことになるが、現在もジャズヴォーカルの重鎮として重きをなしていることが感じられる、堂々たるステージだった。第3部はデビッド・マシューズのスペシャル・バンドの演奏。最初は自称東京トリオと称するトリオでの演奏で自作の「Sir」昨年リリースされたコメズ、ガッドとのアルバムのタイトルチューン。ベースの音がなかなか良かった。次からは特別メンバーが一人ずつフィーチャーされる構成。宅間善之のヴァイブを加えての「ジャンゴ」アンディ・ウルフのアルトを加えた「Smile」類家新平のトランペットを加えた「Meaning of The Blues」佐々木優花のフルートを加えた「Beautiful Love」と続く。最後に「八戸小唄」が全員で演奏された。類家新平のトランペットは何度か聴いているが、彼のプレイは一見モダン風だが、ニューオーリンズの影響が強いことが初めて分かった。佐々木優花は奥州市在住で、太いサウンドでなかなか聞かせる。マシューズの演奏は特に印象に残るところはなかった。ただ、足がかなり弱っていたし、立ち振る舞いもかなり危なっかしい。花束を受け取った後で類家新平らがインタビューを受けている間も立ちんぼで、彼らのインタビューが終わってしばらくしてからスタッフの介添えで退場していったのは、あまりにも可哀そうだった。もう少し配慮が欲しかった。最後は渡辺貞夫カルテット2019近年渡辺貞夫の演奏を聞く機会が多い。そのたびに、あと何回聴けるかと不謹慎ながら思ってしまう。最初の曲を聴いた時に、フレーズが思い通りに出てこないもどかしさを感じてしまった。演奏が進むにつれて調子は良くなったようだが、何しろ1933年生まれの86歳なので、むしろその年でこれだけの演奏ができる方が奇蹟的なのかもしれない。曲目紹介は殆どないため曲目の詳細は余りよく分からない。時間を気にしていたようなので、そのせいかもしれない。「Song Is You」、「No More Blues」というスタンダードが演奏されたのは珍しい。音は出ているが、速いパッセージの切れはなく、生気に乏しい。背中が丸まっていて、演奏の合間に左手を腰のあたりに置いているのも気になった。サイドメンでは武村一哲のドラムスとンジャセ・ニャンのパーカッションが強力。何曲かで彼らをフィーチャーしていたが、その凄まじい演奏には息をのむばかりだった。林正樹の抒情的なピアノも光っていた。一夜明けるとカッコーやほかの野鳥が盛大に鳴くのも、この会場のいつもならではの風景。こういう野鳥の声が聞こえる会場なんて他にあるんだろうか。第30回南郷サマージャズフェスティバルオープニング1.西園小学校ジャズバンド2.中沢中学校ジャズバンド部3.八戸ジャズ楽団4.スイングべリー・ジャズ・オーケストラ第1部OBATALA SEGUND1.中路英明:中路英明:Conquistador2.中路英明:AM3.すずきよしひさ:The Agreement4.中路英明:OBATARA第2部若井優也トリオ1.ショパン 練習曲作品10-6伊藤君子 with 若井優也トリオ2.Fly Me To The Moon3.Come Rain Come Shine4.A sog for You5.愛燦燦6.ラストダンスは私に第3部David Matthews Nango Super Session1.Sir2.ジャンゴ3.Meaning of The Blues4.Beautiful Love5.リンゴ追分6.八戸小唄第4部渡辺貞夫クインテット2019ALALAKEI thought about youWaiting SongSong Is YouNo More Blues花は咲く他オリジナル数曲ジャムセッションパーカー:ビリーズ・バウンス2019年7月27日 八戸市南郷区カッコーの森エコーランド野外ステージ にて鑑賞
2019年07月30日
コメント(0)
今年初めて人参を植えた。栽培が結構むずかしいという話だったので、種の袋に書かれた手順を守りながら、種を畑に直播。人参はポッドでは育たないのだという。発芽すれば成功ということだったので、朝、他の野菜の水やりのときに、人参の状態もチェックしていた。結構時間がかかったが、小さい芽がでてきた。人参は発芽すれば成功と言われるようなので、これで一安心。間引き、追肥もしっかり行なった。最近土から出ている肩の部分が大きくなってきたので、ためしに大きいものを一本抜いた。中々抜けなくて大変だったが、移植べらを使ってなんとか収穫した。予想より大きく、調子に乗って他にも4本ほどを収穫。2本縦に割れていた。原因としては、収穫時期の遅れ、栽培中の水分の急激な変化、在圃性の低い品種などが考えられるようだ。収穫時期の遅れはなく、品種は不明だが、どうも度々雨が多量に降ったので、その影響と思っている。妻曰くスーパーで¥250くらいと言われた。食費を浮かせるためにやっているわけではないが、真面目に答えられると、がっくりしてしまった。まあ、農業用資材や肥料などのコストを考えれば、買った方が安いことははっきりしている。毎日の水やりや追肥など手間がかかるが、そこが自分で野菜を作る楽しみにつながる。まして、今年のように植えたことのない野菜がうまく出来た時の嬉しさは、格別だ。今年は大根にも挑戦した。1回目はトンネルを作ったのだが、芽が出てからの冷え込みで殆ど全滅だった。めげずにもう一度種を蒔いたら、その後は順調に育って、いまは大きさをみながら収穫している。今年は、野菜に手をかけすぎていて、庭木の剪定もほとんど出来ていない。早いとこかたずけなければならないが、悩みのタネだ。
2019年07月28日
コメント(0)
ダラス・ウインズの昨年の新譜を聴く。この団体の新譜は最近あまり出なくなって久しい。昨年久しぶりに出た新譜をハイレゾで買おうとしたが、このレーベルの価格が高く、今迄買わなかったが。ところが、Prostudiomastersで、このレーベルのセールが行われていて、その中に吹奏楽のアルバムが含まれていた。価格はなんと$12.59で通常$24ほどすることを考えると、破格の値付けだ。もう一枚これも保留していた「ワインダーク・シー」のアルバムと一緒に購入した。このレコード会社のフォーマットは88.2kHzFlacとサンプリング周波数がwavの2倍と少し物足りないが、例によって192kHzにアップコンバートしてNASに入れた。ジョン・ウイリアムズの映画音楽作品集は映画音楽の作曲家の作品集としては断トツに多いと思う。原因は印象的なメロディーが多い上に、オーケストレーションがダイナミックで華麗なところが受けるのだろう。当ブログも、いろいろな演奏をきいて、不思議にまたかとは思はない。お馴染みのスターウォーズのテーマも耳タコだが、何回聴いてもわくわくする。今回は珍しく吹奏楽での演奏で、スケールではオケにはかなわないという意識があった。何回かアクティブ・スピーカーで聴いていてい、やはりオケのスケールには及ばないと思っていた。ところが、コンポで聴いたらまるで印象が変わってしまった。スケールはオケとほぼ同等。吹奏楽で聴く時のサウンドの貧弱さは、殆ど感じられない。この類の音楽としてはオケを含めて最上級の部類に入るだろう。サウンドが分厚く、ソロも上手く、聴いていてゴージャスな気分になる。ウイリアムズの音楽の特徴である金管のパワフルでパリッとしたサウンドも、オケ並み(以上?)の強力さだ。曲では、オケではあまり演奏されない「カウボーイ」やスター・ウォーズ・エピソード7の「Xウイングのためのスケルツォ」が楽しめた。有名どころでは「未知との遭遇」組曲の鮮烈な表現や「ET:地上の冒険」の後半の感動的な盛り上がりなど大変すばらしかった。ところで、クレジットにニューヨーク・フィルの首席トランペットのクリストファー・マーチンがクレジットされている。アレンジも「トランペットとウインド・アンサンブルのために」編曲されているようだが、特にトランぺットをフィーチャーした曲は「JFKのテーマ」くらいなもので、このクレジットが何を意味しているかは不明。録音は見通しが良く広がりのある音場で、吹奏楽でこれほど音がいい録音もそうはないと思う。特にパーカッションが鮮烈だ。ということで、ダラス・ウインドの実力がいかんなく発揮された、従来の吹奏楽のサウンドとは一桁も二桁もレベルが違うゴージャスなサウンドを味わうことが出来るのは間違いない。吹奏楽ファンの皆様には是非お聞き頂きたい。Dallas Winds & Jerry Junkin:John Williams at the Movies(Reference Recording RR-142SACD)24bit 88.2kHz Flac1.Olympic Fanfare and Theme (arr. J. Bocook for trumpet and wind ensemble)2.The Cowboys (arr. J. Bocook for trumpet and wind ensemble): Overture3.Superman: Theme (arr. P. Lavender for trumpet and wind ensemble): March4.Close Encounters of The Third Kind (arr. S. Bulla for trumpet and wind ensemble): Themes5.Lincoln: Main Theme (arr. P. Lavender for trumpet and wind ensemble): With Malice Toward None6.Star Wars: Theme (arr. S. Bulla for trumpet and wind ensemble): Main Title Theme7.Imperial March (From "Star Wars Episode V: Imperial March8.Scherzo for X Wings (From "Star Wars Episode VII: Scherzo for X Wings9.The Jedi Steps & Finale (From "Star Wars Episode VII: The Jedi Steps & Finale10.JFK: Main Theme (arr. P. Lavender for trumpet and wind ensemble): Theme11.E.T. (Extra-Terrestrial) (arr. P. Lavender for trumpet and wind ensemble): Adventures on Earth12.1941: March (arr. P. Lavender for trumpet and wind ensemble): March13.Star Spangled Rhythm (arr. for trumpet and wind ensemble): The Star-Spangled BannerCHRISTOPHER MARTIN(tp)DALLAS WINDSJERRY JUNKIN(cond)
2019年07月25日
コメント(0)
今年の高校野球は大船渡がらみで、見る機会が多い。準準決勝まではIATでのみ中継している。民放の場合、レギュラー番組が優先なので、いいところで中断もしくは終了してしまうことがよくある。高校野球の場合も第2試合が昼頃に始まることが多く、IATではその時間帯は報道番組が放送されているので、報道番組が終わった後でないと、野球にならない。ところが、今回か何故かネットで全試合中継されることになった。この試みは他県では行われていなくて、IATの英断に拍手を送りたい。大船渡の佐々木投手の全国的な人気が背中を押したようで、まさに佐々木投手さまさまだ。営業的にはスタッフも倍まではいかなくても、それなりに頭数を増やさなければならないだろうし、もしかしたら赤字の可能性すらある。ただ、試み自体はテレビの視聴者を含めて、否定する人はいないだろう。ネット中継を知ったのは、大船渡の最初の試合の後で、きっかけはどうだったか忘れたが何かの偶然だったと思う。実際見ると、大変良く出来たコンテンツだと思う。何しろ全会場の全試合がリアルタイムで完全にみられるというのが、これほど素晴らしいことだとは思わなかった。最近はBSのスポーツ番組などではサブ・チャンネルでの視聴が可能な番組も多くなったが、その制約がないのはネットならではだろう。大げさな言い方かもしれないが、テレビの制約がネットによって破られた画期的な事象の一つだろう。画像も鮮明で、サイズが違うとはいえ、当ブログのテレビの画像より数段素晴らしい。これだったら、パソコンの映像をファイアTVなどで大画面テレビにつないでみる方が、通常のテレビ鑑賞よりはるかにユーザーの満足度は高くなると思う。勿論どこでも見られることも大きい。これは高校野球のように需要が多いコンテンツでは、重要な強みだ。ダイジェストがアップされているのも嬉しい。ただ、初めての試みだけに、問題がないわけではない。当ブログがイラっと来るのは、球場を切り替えると、その都度コマーシャルが入ったり、一旦他のページに移って、またこのページに移った時も、コマーシャルが入ることだ。まあ、ユーザーがどうするか分からない状態では何ともならないことはわかるが、少なくとも球場を代えた時はコマーシャルを入れないような配慮は必要だろう。また、大船渡対一戸戦では実況のヴォリュームが低く、会場の音に埋もれているという不具合があった。さすがに電話はしなかったが、最後まで直らなかったのは問題がある。あとは、アクセスが集中したのか、大船渡対久慈戦ではエラーが発生して通信が遮断してしまった。それに、システム上何ともならないかも入れないが、テレビ中継よりは20,30秒遅れるのも気になった。ここら辺は改善の余地ありで、準決勝以降はアクセスも増えるので、そういうことのないように改善していただきたい。それにしても、こういう試みが岩手発でされたことはとても嬉しいことだ。ところで、このネット中継は地上波ではPRしているのだろうか。していないとすれば、もったいないことで、すぐにでもPRするべきだろう。ということで絶賛してしまったが、これを書いているうちに、オリンピックでも全試合完全中継はできないかと思ってしまった。これもお金とスタッフの問題になるが、少なくとも人気種目だけでもやってもらえると、オリンピックが何倍にも楽しめると思う。まあ、プロは当然そんなことは考えていると思うが。。。。
2019年07月22日
コメント(0)
ユダヤ人作曲家によるキャバレーソングをもとにした作品集。spotifyで試聴してなかなか面白かったのでeclassicalから入手。小粒な作品ばかりだが、なかなかしゃれた味わいがいい。ここで演奏しているエルサレム弦楽四重奏団は去年リリースされたハルミニア・ムンディのドビュッシーとラヴェルのCDで名前を知ったばかりだったが、1993年の創立でかなり有名なイスラエルの団体だそうだ。全体にクールな雰囲気で、ユダヤ音楽の鬱陶しさが薄まっているのは、評価が分かれるところだろう。各奏者の力量が高く、各パートのバランスがいい。決して重厚ではないが、その透明で艶やかなサウンドは大変魅力的だ。このアルバムが作られたいきさつは、「ちょっと変わっていながら、聴き手の興味をひくものに挑戦してみては?」とハルモニア・ムンディから勧められて実現したルーツ捜し音楽集とのこと。殆どが聞いたことのない音楽だったが、つまらない音楽は一つもなく楽しく聴けた。ただ、キャバレー音楽を感じさせるのは委嘱作品であるデシャトニコフ作の「イディッシュ」(世界初録音)のみ。ちょっと上品すぎるし、ユダヤ音楽特有の癖もあまり感じられない。こういう個性的な作品には適不適があるだろうが、もう少しえげつなく?演ってもらいたかった。旋律そのものが柔和なものばかりというのも、物足りなく感じる理由だ。その中ではタンゴ風の「Yosl un Sore-Dvoshe」がなかなか気取っている。最後の「Ikh vel shoyn mer nit ganvenen」のバックコーラスのすっとぼけた味わいも面白い。この曲で共演しているイスラエル出身のソプラノのHila Baggeo(ヒラ・バッジオ)は表現がストレートすぎて、味わいに欠ける。こういう歌は人生を知り尽くした年増の歌手に限る?他の作品は「イディッシュ」の縁取りを明瞭にするために選ばれたもので、ナチによって退廃音楽と認定された作品。コルンゴルトは彼が映画音楽の仕事で初めてアメリカに渡った年の作品。ウイーンの香りが感じられ、特にワルツは聴いていると、聴衆の心をくすぐる技を発揮していてニヤリとさせられる。エルサレム弦楽四重奏団の演奏はそれほど濃厚ではなく、今の時代に相応しいすっきりとした表現。チェコの作曲家エルヴィン・シュルホフの「弦楽四重奏のための5つの小品」は3つの作品の中では最も真面目?な音楽。シュルホフの音楽は第一次世界大戦の前後で大きく異なり、大戦前はブラームス、シュトラウス、ドビュッシーなどの影響があり、大戦後はヨーロッパで初めてジャズを取り入れたり、ダダイズムに影響された作品なども作曲している。「弦楽四重奏のための5つの小品」は第一次世界大戦後の作品で」バロック時代の舞曲の型式による小品集。雰囲気は暗いが、バラエティに富んで飽きさせない。第4曲のAlla Tango milonga (andante)は題名通りタンゴの一種としてのミロンガ風の作品でエキゾチックなムードが心地よい。ということで、当ブログとしては珍重すべき録音だと思うが、一般受けするとは思えない。Jerusalem Quartet:The Yiddish Cabaret(Harmonia Mundi 902631DI)24bit 96kHz Flac1.Korngold: String Quartet No. 2, Op. 265.Schulhoff: Five Pieces for String Quartet10.Desyatnikov: Yiddish- 5 Songs for Voice and String Quartet ** World Premiere RecordingHila Baggio (s track 10-14)Jerusalem QuartetRecorded December 2018, Teldex Studio Berlin
2019年07月20日
コメント(0)
フレッド・ハーシュがドイツのWDR(Westdeutschen Rundfunks)ビッグバンドと共演した「Begin Again」を聴く。ハイレゾが出るのがだいぶ遅くなってしまって、すっかり忘れてしまっていたが、例によってHDtracksのバーゲンで$17.98の20%オフで入手。フレッド・ハーシュは作風からしてビッグバンドは合わないと思っていた。ところが本人は過去にもビッグバンドと録音した(「Concerto Pour Harmonica」(TCB 993)があり、嫌いではないのだろう。今回はなんと言ってもヴィンス・メンドーサをアレンジャーとして起用したことが成功した要因だろう。通常のビッグ・バンドのサウンドもあるが、クラリネットやフルートを多様して、ハーシュの優しい音楽がダイレクトに伝わってくるのが嬉しい。金管もミュートが多用されたり、フリューゲルが使われたりして、とても深みのあるサウンドになっている。このバンドはエレキベースを使ったりして、ビッグ・バンドというよりもポピュラー系のバンドという認識だったが、ここでは正統的なビッグバンド・サウンドが出ているのが嬉しい。ハーシュのピアノがフィーチャーされている曲は多いが、全面的にフィーチャーされているわけではなく、あくまでも控えめなのは妥当なところ。彼の作風から行って、通常のビッグ・バンドのようにブラス・セクションが大音量で迫ってくることは殆どないが、独特なまろやかなサウンドが何とも魅力的だ。ビッグ・バンドらしい曲では「The Big Band Easy」のジョージ・ラッセルを思わせるサウンドやのハーシュ色に染められたラテンの「Havana」が面白い。ローベルト。・シューマンにインスパイアされた「Pastorale」はピアノが前面にフィーチャーされた清冽で無垢な心が感じられる逸品。最初はビッグバンドでやる意味があるのかと思っていた。ところが、後半のフルートなどの木管がコラール風な旋律を吹くところ(3:40付近)が限りなく美しく、続くアンサンブルの高揚感も感動的だった。ここを聴いただけでも取り上げられた価値があるというものだ。「Out Semeplace (Blues For Matthew Shepard)」は同性愛者であるがために殺害されたMatthew Shepard(1976-1998)に捧げられた作品。この事件を機にヘイトクライムを禁じた「マシュー・シェパード法」が2009年に成立した。wiki前衛的なサウンドから始まり、ピアノやバス・クラ、クラリネットの短いソロが続く。普通のビッグバンドとは全く違う音楽だが、同性愛者であるハーシュの共感が強く表れている。クライマックスでのトランペットの叫びには心が痛まずにはいられない。クールな「Rain Waltz」でのフリューゲルのような柔らかいサウンドのトランペット・ソロとブレンドされた木管アンサンブルのサウンドが実に美しい。例によって、ブックレットはついていないため、ソロイスト等全く不明。ソロイストでは「SongWithout Words」や「Havana」「Rain Waltz」の肉厚のサウンドのアルト・ソロが圧巻。最後は長年のパートナーであるスコット・モーガンに捧げられた「The Orb (For Scott)」で感動的に締めくくられる。ところで、一緒に購入したノラジョーンズの新作が同じタイトルで、ネットワーク・プレーヤーのアルバム検索で同じアルバムとみなされてしまうのには面食らった。アルバム・タイトルにアーティスト名を入れないと区別できない。そう思いつつ、未だやっていない。最近何をやるにしても、すぐやれないというか、やる気になるまで、時間が経ってしまう。どうも、着実に老人化がすすんでいるようだ。Fred Hersch:Begin Again(Palmetto+)24bit 44.1KkHz Flac1.Begin Again2.Song Without Words No. 2:Ballad3.Havana4Out Semeplace (Blues For Matthew Shepard) 5.Pastorale6.Rain Waltz7.The Big Easy8.Forward Motion9.The Orb (For Scott)All Composed by Fred HerschJohan Hörlen(as)Karolina Strassmeyer(as)Olivier Peters(ts)Paul Heller(ts)Jens Neufang(bs)Ludwig Nuss(tb)Andrea Andreoli(tb)Andy Hunter(tb)Mattis Cederberg(b-tb, tuba)Wim Both(tp) Rob Bruynen(tp)Andy Haderer(tp)Ruud Breuls(tp)Fred Hersch(p)Paul Shigihara(g)John Goldsby(b)Hans Decker(ds)Recorded January 28, 2019 - February 4, 2018, WDR Studio 4, Cologne
2019年07月18日
コメント(0)
今日は花巻球場に大船渡高校の野球を観に行ってきた。勿論佐々木投手を見るためだ。うっかり美容院を予約していたのだが、試合が2試合目で、美容院が終わっても30分の余裕があり楽々セーフ。家が球場から近いので自転車で10分かからない。駐車場の心配をする必要もない。大船渡が3塁側だったので、3塁側の内野席で観戦。スターティングメンバーの発表で佐々木投手の名前が呼ばれた時は大きな拍手。皆さんの期待を裏切らなかった大船渡の監督にも拍手をしたい。佐々木投手は他のメンバーより頭の分だけ高いが、細身でそれほど大きさを感じさせない。至近距離で見たが、端正な顔をしていて、人気があるだろうなと思ってしまった。球速はMAX147kmでそれほど速いという感じはしなかったが、切れがあったと思う。まあ、それほど力を入れている感じはしなかったので、これから徐々にエンジンをかけていくのだろう。「手を抜くな」という声がバックネット裏から聞こえた。対戦相手に失礼がないようにと思っての発言だったのだろうが、今時の高校野球はいろいろ問題があるので、先を見据えての投球だったと思う。相手のピッチャーがせいぜい120kmくらいなので、余計早く見えたかもしれない。3塁側なのに遠野緑峰のプレーに何故か温かい声援が送られている。遠野緑峰にエラーが続き、試合がだらけてしまったのは少し残念だった。2回を終わって10対0となり、3回の打席にピンチヒッターが出たので、すぐ席を立った。内野が満杯になったため、ピンチヒッターが出る前に外野席が解放されたが、外野に入場した人は拍子抜けだっただろう。大船渡は花巻球場の7/18の第1試合で一戸と対戦するようなので、また観に行きたい。今度は入場料の元を取れるくらい一戸に頑張ってほしい。
2019年07月16日
コメント(0)
浜松国際ピアノ・コンクールで優勝したトルコのジャン・チャクムルの優勝記念の日本ツアーで秋田のアトリオン音楽ホールに来ることを知り聴きにいった。デビュー・アルバムはハイレゾで発売当初に入手していて、何回か聴いていたが、ブログに書くまでには至っていなかった。今回のプログラムに含まれていたのは、後半の2曲とアンコールのサイの「BlackEarth」のみ。ステージに出てきたときに凄く背が高くてびっくりした。イメージとしては小柄な感じがしたので、そんなに背が高いとは思わなかった。因みに、帰りがけにスタッフに身長を聞いたら、180cmくらいという答えだった。とても細身で、彫りの深い優しい顔をしている。トルコ人はイケメンが多いらしいので、なるほどと勝手に納得してしまった。挨拶するときも、成人男性に対しての形容として適当ではないかもしれないが、愛くるしい仕草で、女性には好かれるタイプだろう。実際開場前には結構な人が並んでいた。肝心の演奏だが、技術的にはほぼ完ぺきだろう。一流と思われるピアニストでも疲れたりするとミスをするものだが、殆どミスは聞かれなかった。大変なところでも、テンポが崩れたりすることがなく、ほとんど表情を変えずに、すいすい進んでいく。それに、前半から最後までむらのない安定した演奏だった。音はとても美しい。音自体丸みを帯びていて、弱音でも痩せない。強い音でも美しさは保たれているのは驚くべきことだ。ピアノは浜松のコンクールでも使用した、カワイの最高級フルコンを持ち込んでいた。解釈自体は特にダイナミックスに変化を付けたり、テンポを変化させたりという通常のピアニストの常套手段はあまり使わないし、テンポもとても適切だ。ところが、どの曲もスケールが大きく、音楽がとても豊かになったように感じる。つまらないと思っていた曲が、これほど生き生きと聞こえることもあまり経験したことがない。これは何故だろうか。「自分の伝えたい音楽が明確で、演奏技術に裏打ちされた新解釈を説得力をもって挑戦、披露してくれた」という浜松で審査委員長だった小川典子のコメントがその理由なのだろうが、当ブログには分からない。曲はすべてアタッカのようにつなげて弾いているのは珍しい。前半はフェリックス・メンデルスゾーンの幻想曲 嬰ヘ短調「スコットランド・ソナタ」初めて聞いた曲と思ったら、メジューエワのメンデルスゾーン集(DENON)で聴いていたことに気が付いたが、曲についての記憶はまるでない。ハッとするほど弱音がとても美しい。透明な湖を覗き込んだら、薄日が差した水の中に多数の魚が泳いでいるような光景が思い浮かぶ。線が太いのに透明な響きは珍しい。参考までに件のメジューエワの演奏を聞いてみた。メジューエワの演奏も悪くはないが、プレストは何か忙しない感じがする。チャクムルの演奏はおそらく、メジューエワよりも速いと思われるが、忙しない感じは全くしなかった。恐らく技術に余裕があるからだろう。バッハの「イギリス組曲」第6番はそれほど期待していなかった。ところが豊かな響きがバッハの音楽に潤いを与えている。バッハといえば真面目腐った角張った音楽というイメージが強いが、チャクルムの演奏ではそれが全く感じられない。ピアノでいうとシフの演奏(再録)を聞いている感じだろうか。それにもまして「ジーグ」がこれほど圧倒的な迫力で迫ってくる演奏は聞いたことがない。後半はデビューアルバムで聴いていたので、その時の印象は多少はあるが、実演のほうがはるかにすごかった。曲の深みがまるで違っていて、2曲ともこれほど豊かな音楽だったとは思えなかった。シューベルトは後期のピアノ・ソナタと違って平易な楽想が感じられる。最近ではこのような初期のソナタでも、悪く言えば手練手管を駆使して演奏されることが多い。チャクルムはそういうことは全く考えていないのだろう。この曲生き生きとした表情が魅力的で、余計なことを考えないですむので、曲の良さがダイレクトに伝わってくる。いままでの常識を軽々と飛び越えた、ある種の爽快さ、さえ感じられる。まあこう思ったのも、内田光子の演奏(DECCA)を参考に聴いたからということもあるだろう。当ブログには内田の演奏は音楽をこねくり回して、かえって難しくしているような気がするのだ。バルトークも録音よりの数段スケールがアップしていて、バルトークの打楽器的なフレーズもインパクトがあった。一方「夜の音楽」に聞かれるバルトーク特有の深い闇のアプローチも抜かりはなかった。最後の「狩」は速めのテンポでぐいぐいと迫ってくる。民族色は薄く、野蛮さも薄れているが迫力が凄いという珍しい演奏。アンコールの一曲目はファジル・サイの「Black Earth」鍵盤を弾きながら弦をはじくという内部奏法が特徴的な曲。録音を聴いた時は中近東風の面白い曲としか思わなかった。ところが中間部の甘い旋律が切々と訴えかけてきて、後半の感情の発露の凄いこと。思わずウルウルとなってしまった。残念なことに、弱音で終わった後で、図ったように?携帯の呼び出し音が鳴りだした。チャクムルは苦笑いしていたが、畜生と思ったことだろう。もう一曲はシューベルト リスト編の「水車小屋の男と小川」?腰を割ったじっくりとしたテンポが、この曲の内面的な美しさをしみじみと伝えてくれた。全体を通して録音よりも数段素晴らしい演奏で、参考に聞いた音源よりもスケールが大きいことにとても驚いた。ピアニストとしてのポテンシャルが普通のピア二ストとは断然違うのだろう。それは彼の肉体的な能力にもかなり関係していると思う。肥大しているわけではなく、これが本当の等身大という奴だろう。彼は22歳だが、必ずや数年後には世界的なピアニストとして名を馳せることだろう。これが¥2000で聴けるとは、有難いものだ。ジャン・チャクムル ピアノ・リサイタル前半1.F.メンデルスゾーン:幻想曲 嬰へ短調「スコットランド・ソナタ」Op.282.J.S.バッハ:イギリス組曲 第6番 ニ短調 BWV811後半 1.F.シューベルト:ピアノ・ソナタ 第7番 変ホ長調 D.5682.B.バルトーク:戸外にてアンコールファジル・サイ:Black Earthシューベルト(リスト編):水車小屋の男と小川?ジャン・チャクムル(p)2019年7月13日アトリオン音楽ホール D25で鑑賞
2019年07月14日
コメント(0)
うっかり見逃すところだった歌川広重(「1797-1858)の展覧会を岩手県立美術館で観てきた。これは確か昨年東京で開催されていた展覧会と内容は同じではなかっただろうか。昨年は子供が観に行くということで、図録を頼んだのだが買い忘れてしまっていたので、今回買えて良かった。あと一週間になったので混んでいるかと思ったら、まずまずの入り。鑑賞に差し支えるほど混んでいるわけではなかったので多少遠慮しつつではあるが、じっくりと観ることが出来た。多分2時間ほどかかったと思う。点数が多いことは確かだが。これほど長い時間かけて観たこともない。懇切丁寧な解説で、それを読むだけで時間がかかるのだが、とても有難かった。版画の保存状態が凄くよく、退色してはいるだろうが、当時からそれほどは違っていないと思う。広重といえば東海道五十三次が有名だが、最も有名な版元の名前を取った「保永堂版」、画の中に書かれた短冊の字が行書体であることからつけられた行書版、画中に書かれた「東海道」の文字が隷書体の「隷書版」、当時はやった狂歌が書かれている「狂歌入」など、いくつもの種類があることを初めて知った。また、人物を大きく書いた「人物東海道」、縦型画面に書いた「縦絵東海道」などもあり、東海道の風景画の種類が多彩だ。同じような風景を描いたものでも、細部で違っていたりして、観ていて飽きない。また、宿場風景に美人立ち姿を描いた「美人東海道」というシリーズもあった。広重の美人画は初めて見たが、端正で細部まで書かれていて見事なものだ。風景画に登場する人物は殆どが簡略化されているのに比べて大きな違いがある。広重の版画を見ていると北斎ほどのスケール感はないが、ぬくもりの感じられる画風に惹かれる。特に雪景色の何とも言えない暖かさが印象的だった。勿論プルシアン・ブルー(通称ベロ藍と呼ばれる深い藍色)の美しさは際立っている。今回特に印象に残ったのは、近江八景のシリーズの中の「唐崎夜雨」激しく降りしきる雨の中からぼんやりと浮かび上がる松林のシルエット。その場にいるような臨場感が感じられた。なお、晩年の傑作「名所江戸百景」(1856-1858)から10点が高浜市やきものの里かわら美術館から特別に出品されていた。ゴッホが模写したことで有名な「亀戸梅屋舗」「大はしあたけの夕立」は一緒にゴッホの模写の写真も陳列されていて比較できるようになっていたのは嬉しかった。そのほか私の好きな亀が描かれている「深川万年橋」など、晩年の円熟した広重の世界を覗くことが出来た。このシリーズは全部で120点で、全点を見る機会があればぜひ観に行きたい。図録は小型で横長のもの。大きさの割には\2160と少し高めだったが、細かい解説がついていて、とても読みやすい。広重-雨、雪、夜 岩手県立美術館 2019年7月7日 鑑賞
2019年07月11日
コメント(0)
藤倉大の新作「ZAWAZAWA」を聴く。今回は、製作元のminabel経由new focus Recordingというところから買おうと思ったのだが、作曲者からメールがきて、ここからは買えないということだった。仕方がないのでHDtracksからリリースされるのを待っていた。ほどなくリリースされて、おまけに新作のセールだったので20%オフの$14.38で購入。e-onkyoではflac 96kHz/24bitで¥2,600とSACD(\3200)の価格を考えると、かなりリーズナブルだったが、やはりHDtracksのほうが圧倒的に安かった。HDtracksではminabelレーベルの音源は日本からでも買えるので、ハイレゾ環境をお持ちの方には、HDtracksからダウンロードすることをお勧めする。最初spotifyで試聴したので、主なところはその時の感想。ハイレゾだと空気感がまるで違っていて、その曲も細部がよくわかる。今回の場合は粗が見えることはなく、ハイレゾに堪えうる演奏なのだろう。いつもは混濁する合唱も透明感が失われることがなく、豊かな響きで、合唱の録音として、かなりの水準だろう。今回の目玉は合唱のための「ZAWAZAWA」と「SAWASAWA」2曲合わせると30分を要する大曲で聴きごたえ十分。藤倉が東京混声合唱団のコンポーザー・イン・レジデンス(座付き作曲家)になってから初めて書いた曲だそうだ。「SAWASAWA」は「ZAWAZAWA」パート2という副題がついていて、作詞を担当したハリー・ロスのマリンバが後半にフィーチャーされている。普段は控え目な男声が結構聞こえるのが嬉しい。チューバ協奏曲はノルウェー出身のオイスタイン・ボーズヴィーク(Øystein Baadsvik 1966-)のソロ。チューバが最初に出たときに柔らかいサウンドでユーフォニアムかと思った。写真を見ると小ぶりの楽器を使っているようで、サウンドは軽め。ただ、細かいフレーズだと軽快さより鈍重さが目立つ。前半はソロのモノローグ的な部分で、バックとのかかわりはあまりない。後半テンポがあがり、協奏曲らしくなるが、バックは目立つ旋律もなくあくまでも伴奏的な存在。ただ、ハーモニーや短いフレーズが効果的。最後チューバが2つの音符をミニマル・ミュージック風に延々と繰り返す。演奏している方は酸欠になりそうで、さぞや大変だっただろう。芸劇ウインド・オーケストラ・アカデミー という聞きなれない団体がバックで東京佼成と共に演奏している。東京芸術劇場が2014年度から開始した、次世代のプロフェッショナル演奏家を育成するプロジェクトで40名ほどの編成。因みに東京佼成はこのバンドの指導を行っていて、昨年この曲を定期で演奏したときにも共演しているコンサートホール自体がこういうプロジェクトをするのは日本では珍しいと思う。いつまでもつか分からないが、今後の活躍が楽しみだ。 指揮のシズオ・Z・クワハラ(1976-)は日本生まれでアメリカで学んでいる。現在国内外で活躍しているようだ。最初の「きいて」は無伴奏ソプラノのための曲でシアター・ピース的な感じがする。2分に満たない曲だが、かなりインパクトがある。「聞いて」という言葉が早口で繰り返される前半と「聞いて」に「私の声や思い」などの言葉が続く、メロディーを伴った歌の二つの部分に分かれている。前半の話す部分もアクセントをつける部分が変わる。前半部分は歌手の生理を無視していて、息継ぎするのも大変そうだ。循環呼吸後半はテンポが遅くなり、普通の歌になるが、けた違いに高い音があり、ここも一筋縄ではいかない。現代音楽好きにはこたえられない曲だろう。無伴奏コントラバスのための小品が二曲あり、委嘱者?の佐藤洋嗣が演奏している。どちらもバルトークピチカートが多く取り入れられていて、何か日本風に感じられる。「ES」はテンポが速く舞曲の様な曲。「BIS」はゆったりとしたテンポで日本的な間が感じられる。バルトークピチカートもこの曲のほうが効果的に聞こえる。エンディングの細かい高い音を弾くところでは、一瞬何が起こったかと思わせるような狂気が感じられる。コントラバスとは思えないような、フットワークとエッジの聴いたサウンドが大変面白い。「ゆらゆら~ホルンと弦楽四重奏のための」は副題がホルン協奏曲第2番のカデンツアとなっている。ホルンは終止ハーフ・バルブでの演奏で、そこに刺激的だが透明な弦のハーモニーが加わるというもの。ホルンが尺八思わせるサウンドなのに対して、弦が透明だが刺激的な高音を出す。そのコントラストが大変面白い。原曲のホルン協奏曲は聞いたことがないので、機会があれば聴いてみたいところだ。「はらはら」は今までのホルンのための作品のなかではまともな方だが、相変わらず旋律らしきフレーズはなく、フラッター・タンギングとゲシュトップ、それに細かい音符が続く。ゲシュトップの有無が頻繁に変わり、それもフラッター・タンギングで吹かなければならない。テンポも速く、吹くはなかなか大変だろう。後半、ゆったりとしてメロディックなフレーズが一瞬だけ出るが、再び忙しない音楽が再開される。最後は前述のメロディックなフレーズが再現され締めくくられる。なかなか珍妙な音楽で、演奏家の了解が得られないと、こういう作品はできないだろう。どうやって演奏しているのか分からないが、立ってゲシュトップを素早く切り替えるのは結構大変な気がする。最後は宗教的な気分が感じられる美しい旋律の「ニュー・ハウス」で締めくくられ、ほっとする。今作もこれまで同様、藤倉自身が編集・ミックス、マスタリングまで手掛け、作曲者の理想とする響きが追及されている。 本職が手掛けてどう変わるかも聴いてみたいところだ。zawazawaの初演(2016)の一部藤倉大:ざわざわ(minabel) 24bit 96kHz Flac01.きいて~ソプラノのための02.ざわざわ~混声合唱のための03.さわさわ(ざわざわ パート2)~混声合唱とマリンバのための04.チューバ協奏曲~チューバとウィンドオーケストラのための05.ゴー(第5楽章)~ソロ・クラリネットのための06.BIS~コントラバスのための07.ゆらゆら~ホルンと弦楽四重奏のための08.ES~コントラバスのための09.はらはら~ホルンのための10.ニュー・ハウス~混声合唱のための小林沙羅(s track1)東京混声合唱団, 山田和樹(track2,3,10)Harry Loss(marinba)Øystein Baadsvik(tuba), 芸劇ウインド・オーケストラ・アカデミー , 東京佼成ウインドオーケストラ, シズオ・Z・クワハラ(track4)吉田誠(cl track5)佐藤洋嗣(cb track6,8)福川伸陽(hr track7,9)
2019年07月08日
コメント(0)
山中千尋の新作を聴く。当初ハイレゾを購入しようと思ってリリースを待っていた。最近やっとハイレゾがリリースされたので配信サイトをのぞいたら、なんと4千円以上する。仕方がないのでCDで我慢した。この間の寺久保はCDと同じような値付けで、お得感があったのだが、今回の値付けには驚いた。CDではあるが、SMHM-CD仕様で管理人はDSD5.6Mと24bit 192kHzFlacにアップ・コンバートしているので、音質的にはそれほど遜色はないと思う。両者の違いは僅かで、DSDのほうが多少引き締まった感じがする程度。今回はブルーノート80周年とミッシェル・ペトルチアーニへのオマージュというコンセプトらしい。ニューヨーク・トリオのレギュラーであるヨシ・ワキとジョン・デイビスにロバート・グラスパー・トリオのヴィセンテ・アーチャーとダミオン・リードという2組のリズムセクションが参加。レギュラーは従来の路線でオーソドックスな仕上がり。後者は山中の音楽に今までにないテイストを加えていて、今回の聴きものは断然後者メンバー。1曲目の「Gennarino」は中山のオリジナル。リズミックだが哀愁を帯びたメロディーが心地よい。「Pasolini」はイタリアのドラマーアルド・ロマーノの作品。これも軽快な曲で、ペトルチアーニも録音している(ESTATE)。3曲目も中山のオリジナル。リリカルさが勝っているが、グルーブ感も出ているが、構成が単純であまり面白くない。「Never」も中山のオリジナルで、ビル・エヴァンスばりの軽快なワルツ。ジョン・デイビスのベース・ソロがいい音で光っている。「チェロキー」はいつもの短いフレーズを執拗に繰り返すパターンがちらっと出てきて、一挙にげんなりしてしまう。山中のスタンダードは独自の解釈でいつも楽しませてくれる。今回はウッディー・ショーの「Sweet Love Of Mine」とソニー・クラークの「ブルー・マイナー」が楽しめた。どちらもハーモンド・オルガンを使っているが、曲想にマッチした山中ワールドが堪らなく魅力的だ。ダミオン・リードの手数の多いドラムスが合わないかと思っていたが、意外にあっている。確かに手数が多くせわしない感じはするが、グルーブ感が出ていて、さすがにビリー・ヒギンズの弟子。ペトルチアーニの「Looking up」は聴いたことのない曲だったが、知らないで聴いたら、山中の曲といわれてもおかしくないテイストが感じられる。「Solitude~C jam blues」の前半はエリントンではなく山中の作品。フリーフォームに近いダークなサウンドでぐいぐいと迫ってくる。アルバム随一の聴きもの。いったんフェイドアウトしてから「C jam blues」に変わるが、テーマの一部がちょろっと出るだけですぐ終わってしまう。最後のタイトル・チューンはリリックなメロディーにリードの細かいリズムがかぶさってくる。そのコントラストが面白い。不思議にドラムスがうざいとは感じられない。ただ、途中から別の曲が始まったような感じで、ちょっと中途半端だし、最後フェイドアウトしていて、物足りない。この曲では2組のリズム・セクションがクレジットされている。何故だろうと思っていたが、途中でちょん切れているところでメンバーが変わったことに気が付いた。全体にきれいではあるが、いまいちインパクトに欠ける。山中には黒ビールみたいな苦みとコクのある?濃い演奏をしてほしい。山中千尋:Prims Del Tramonto(Blue NoteUCJ-2167)01.Chihiro Yamanaka:Gennarino02.Aldo Romano:Pasolini03.Chihiro Yamanaka:Thinking Of You04.Chihiro Yamanaka:Never05.Ray Noble:Cherokee06.Woody Shaw:Sweet Love Of Mine07.Michel Petrucciani:Looking up08.Sonny Clark:Blue Minor09.Chihiro Yamanaka / Duke Ellington:Solitude~C jam blues10.Chihiro Yamanaka:Prima DEl TramontoChihiro Yamanaka(P, Fender Rhodes, Hammond B-3 Organ)Yoshi Waki(b,e.b track1, 2, 3, 4, 5, 7, 10)John Davis(ds track 1, 2, 3, 4, 5, 7, 10)Vicente Archer(b,e.b 6, 8, 9, 10)Damiion Reid(ds 6, 8, 9, 10)Recorded April,2019 at Boomtown Studio Brooklyn,NY
2019年07月06日
コメント(0)
山田和樹が2016年にモンテカルロ管弦楽団に転出したため、スイス・ロマンドとのレコーディングは終わりかと思っていた。モンテカルロとの録音も出たし、あきらめていたのだが、思いがけず彼らの新譜が出た。それに、モンテカルロとの録音が2017年5月で今回の録音が8月なので、今後の新譜も期待できるかもしれない。今回はオルガンをフィーチャーしたフランス人作曲家3人の作品集。山田はポピュラー名曲の指揮がうまく、管理人がひいきしているのもそのためだ。取り立てて新しいことをやろうとしてないのだが、アプローチがまっとうで、説得力があるというのは現代では珍しい部類だろう。管理人も具体的にどうだということはうまく言えない。やはりフレージングやアゴーギグが自然で作為的な仕事の跡が見えにくいことが大きいと思う。まあ、それだけ職人的な技術が高いということも言える。サンサーンスの交響曲第3番は、たくさんの録音があるが、技術的に難しいとは思えないし、曲自体もそれほど魅力的とは思えない。なので、特徴を出しにくい曲かもしれない。管理人の期待するのは第1楽章前半のアレグロモデラートの畳みかけるような楽想の部分。このスペクタクルな部分がこの曲で最も魅力のあるところと思う。この部分の魅力が理解できたのはミュンシュの演奏でだった。今回はそれほど激烈な演奏ではないが、その部分の魅力は程々出ていたと思う。続くポーコ・アダージョの部分はテンポを落としてじっくりと歌っている。クラリネットとチューバのユニゾンでテーマが演奏されるところでは、チューバがあまり表に出ないところがセンスの良さを感じる。弦主体の音作りで、金管がもう少し出て欲しいところもあるが、悪くない。木管は美しいが、フルートがちょっと大きすぎるところがある。第2楽章前半で聴きなれないフレーズがピッコロから聞こえることがあるのが耳新しい。オルガンは控えめだが、ピアノが結構はっきり聞こえるのも珍しい。wikiによるとピアノについても彼自身の名人芸的なピアノの楽句が盛り込まれているというから、ピアノ・パートも結構力を入れていたことを初めて知った。管理人はピアノは装飾音要員?としか思っていなかったので、この記述は目から鱗だった。第2楽章の後半は、あまり重くならず、日本人らしい?仕上がり。参考まで聴いたマルティノンのやりすぎの感じはするが、力感に溢れた演奏に比べると、肩の力が抜けたすっきりとした演奏。マルティノンは今となっては時代がかって聞こえるほどだ。プーランクのオルガン協奏曲はあまりなじみのある曲ではない。「オルガン、弦楽とティンパニのための協奏曲 」といわれたほうがピンとくる。デュトアの演奏は持っているがあまり聴きこんでいない。大体がこの曲に管楽器が使われていないことをwikiで初めて知ったくらいで、常日頃いかにぼおっとして聴いているかがばれてしまう。管楽器を使わなかったのはオルガンのストップでカバーできると考えたためとのこと。当ブログがあまり馴染めないのは最初の主題が威圧的に聞こえるからだ。また、この曲の位置づけが当ブログの中ではプーランクの宗教曲のような暗い曲という印象が強いこともある。それでも、何回か聴いているうちにプーランクのコケティッシュな魅力や美しいメロディーがあることに気が付いた。特に急速調の「アレグロ・ジョコーソ」のアニメの1シーンを思わせるような音楽が面白い。参考までに聴いたデュトア指揮ハーフォードのオルガン版ではこの楽章が速いテンポで疾走するのだが、少し重すぎる。それに比べると山田盤はやや微温的すぎるかもしれないが程よい軽さがある。終結部の「ラルゴ」でのチェロのソロがハッとするほど美しかったのも収穫の一つ。レコード店の餌箱で掘り出し物を見つけた時のような気分になる。そういえば、最近はリアル店舗に行くことは、ほとんどなくなってしまった。近場にないということもあるが、たまに東京に行ってもあまり行くことがない。ネットですべて完結してしまうのだが、リアル店舗での浮き浮き感と、時間が経つとじわじわとくる足の裏の痛さはネットでは味わえないものだ。ところで、この稿を書くため調べ物をしていて、プーランクが今年の1月7日に生誕120周年だったことを知った。お目出度いことではあるが、特に記念のリリースはないようで、プーラン・クフリークの一人としては少し寂しい。シャルル=マリー・ウィドール(1834-1937)の作品はお初にお耳にかかった。彼はフランス・オルガン界の大家で、オルガン交響曲は10曲あるそうだ、今回はおまけみたいなもので、曲自体あまり面白くない。クリストファー・ジェイコブソンはアメリカのイリノイ州出身の若手のオルガニスト。現在アメリカのノースカロライナ州にあるデューク大学でオルガニストを務めている。ペンタトーンで2枚のCDをリリースしていて、今回が3枚目。余り自己主張が強くないため、静かな部分の演奏はとても心地よい。ただ、曲によってはもう少し出てきてほしい部分があった。スイス・ロマンドの演奏ではいつもの色彩豊かな管楽器ではなく、弦楽器のブレンドされた、まろやかなサウンドが印象に残った。Kazuki Yamada:Saint-Saëns,Poulenc,Widor(Penta Tone PTC5186638)24bit 96kH Flac1.Camille Saint-Saëns (1835-1921):Symphony No. 3 in C Minor, Op. 78 (1886)5.Francis Poulenc (1899-1963):Concerto for Organ, Strings and Timpani in G Minor (1938)9.Charles-Marie Widor (1844-1937):Symphony for Organ No. 5 (1879)  V. ToccataChristopher Jacobson(org)Orchestre de la Suisse RomandeKazuki YamadaRecorded at Victory Hall, Geneva in August 2017
2019年07月03日
コメント(0)
コンサートでの演奏が気に入って、纐纈歩美のディスクを聴くことがたびたびある。今のところレンタル専門でCDを買うまでには至っていない。「O Pat」もレンタル開始直後から狙っていたのだが、以前レンタルの予約直後に何故かレンタルできなくなって、あきらめていた。ある時ふと思い出してチェックしたら、またリストに載っているのを発見して即予約した。出来はまあまあだが、期待したほどではなかった。おそらく小野リサがプロデュースしているので、玄人好みの選曲になったのだろう。普通ジャズメンが取り上げるボサノヴァとは一味違った選曲で勉強になった。ブラジル音楽通の方々の中ではポピュラーな曲が並んでいるようだが、当ブログにはあまり刺激のない演奏に聞こえた。刺激のない退屈な演奏と言ったら言い過ぎだろうか。原因は纐纈のアドリブ・ソロが少ないことだ。1曲目はMPB(ブラジリアン・ポピュラー・ミュージック)の歴史的名盤であるジャヴァ「Luz」の中の一曲。小野リサのスキャット入りで爽やかな仕上がり。スキャットはこの一曲だけのようだが、ヴォーカルも含めて、もっとフィーチャーしても良かったような気がする。纐纈のソロは時折アート・ペッパーのレージングを思い起こさせる。タイトルチューンの「o pat」がリズミックで最も活きがいい演奏。ただ、パーカッションがドラムスだけなのが、いかにも貧弱。纐纈のソロで最も満足できたのはスタンダードの「For Heaven's Sake」だったのは、ボサノヴァ特集のアルバムとしては、何とも皮肉。ジョビンの曲は雰囲気豊かに演奏されている。最後の曲はヴィラ=ロボス:のブラジル風バッハ 第2番のトッカータ[カイピラの小さな汽車]。原曲がごつごつした感じなのに対して、アドリブ・ソロはなく、メロディーが淡々と流れていくだけなので、あまり面白くない。ドラムスのバス・ドラムとスネアのブラッシュ・ワークが汽車の走る情景をわずかに感じさせる程度。全体を通してフェビアン・レザ・パネ(1961-)のシンプルなピアノがいい味を出している。他のメンバーもいい音を出しているが、あまり表に出てこないのが残念。佐藤慎一のどっしりとしたベースや馬場孝喜のエレクトリック・ギターはもう少し聞きたい。プロデュースが小野リサなので、基本シンプルなサウンド志向だろう。なので、ジャズ・ファンには少し物足りない。また、パーカッションがドラムスのみなので、いかにも寂しい。ブラジリアン・パーカッションが入ると大分違った感じになっていたと思うのだが、好みの問題かもしれない。全体が渡辺貞夫のブラジル音楽の演奏を聞いているような雰囲気だが、ジャズらしいアドリブの面白さを楽しむというよりは、ポップス的な演奏になっているのは物足りない。ただ、このジャンルでの渡辺貞夫の後継者?として資格充分とみた。纐纈歩美:O Pat(ポニーキャニオン MYCJ.30661)1.Djavan:Capim2.A.C.Jobim:Corcovado3.Garoto/Jose Vasconcellos:Nick Bar4.Jerome Brainim:The Night Has a Thousand Eyes5.Marcos Valle:Summer Samba6.Pixinguinha:Rosa7.Jayme Silva/Neuza Teixeira:O Pato8.Don Meyer/Elise Bretton:For Heaven's Sake ()9.A.C.Jobim:Wave10.Villa Lobos:O Trenzinho Caipia 纐纈歩美(as)フェビアン・レザ・パネ(p) 馬場孝喜(e.g track 1,2,3,4,8,10)佐藤慎一(b) 藤井摂(ds)小野リサ(a.g,scatt 1,5,7,9,10)
2019年07月01日
コメント(0)
全13件 (13件中 1-13件目)
1