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spotifyに1曲だけリリースされていたのを聴いてよかったデセイのアルバムがリリースされた。spotifyでチェック後、HDtracksから20%オフで購入。フランスの生んだ偉大な歌手で作詞作曲も手掛けたクロード・ヌガロ(1929-2004)を特集したアルバム。デセイは最近このようなポピュラー寄りの作品をリリースすることが目立っている。「冬の旅」で味噌をつけてしまったわけではないだろうが、今回のアルバムは、個人的には、とても好ましい転向?ぶりだ。完全にポピュラー歌手の歌い方で、ポピュラー畑でも十分に活躍できることが伺える。ビブラートはあまりかけないし、感情の表出度合いはポピュラーのそれ、になっている。彼女の特徴であるディクションの美しさも十分に表れている。ヌガロはジャズに傾倒していたので、ジャズっぽい曲やブルーベックの「トルコ風ブルーロンド」なども入っている。「トルコ風ブルーロンド」に歌詞をつけて「勝手にしやがれ」と改題されている。デセイは速いテンポに、よくついていっている。残念なのはヌガロ版では大きく息継ぎをする部分が何箇所かあり、原曲を知るものとしては違和感が残った。ヌガロの歌う勝手にしやがれトゥーツ・シールマンスの「tendre」は聞いたことがなかったが、悲しみを帯びて心温まる曲だ。彼の曲はこじんまりとしているが、佳曲が多い。ルグランの「Le Sinema」も前半部分が美しい。ジャズ風な曲では、ルグランの「Tiens-toi bien à mon Coeur」の疾走感がたまらない。バックはピアノトリオが主体で、曲によってはホーンやストリングが加わっている。ベースのローラン・ヴェルネレイとドラムスのアンドレ・チェッカレリはヌガロのオリジナル・メンバーだそうだ。時折入るクロード・エジェアのミュート・トランペットがなかなか印象的だ。「Dansez sur moi(ガールトーク)」など立派なジャズボーカルになっている。当ブログはクラシックの歌い手が歌うポピュラー音楽については、否定的だ。理由は歌い手と曲の距離が離れていて、一体感が感じられないからだ。ところが、今回のアルバムは、特に「クラッシックの・・・」というような余計な修辞は必要ない。立派なポピュラー音楽として通用するし、出来がとてもいい。何といっても、フランスのエスプリが効いていて、すごくしゃれている。この味わいは、フランス人でなければ出ないだろう。出来れば、デセイを知らないポピュラー音楽愛好家に聞いてほしいくらいだ。イヴァン・カッサールによる編曲が抜群で、この編曲がなかったら、成功はなかっただろう。バラエティに富んだ編曲で、各々がツボに嵌っている。イヴァン・カッサールは長年クロード・ヌガロのステージとスタジオのコラボレーターで、彼ほどこの仕事に相応しい方もいないだろう。ということで、選曲、演奏とも抜群の出来で、デセイのポピュラー系のアルバムの最高傑作として、是非お聴きいただきたい。Nougaro : Sur L'ecran Noir De Mes Nuits Blanches(warner )24bit 44.1kHz Flac1. Claude Nougaro / Michel Legrand:Le Cinéma2. Claude Nougaro / Jacques datin:Chanson pour Marilyn3. bobby troup / Neal Hefti:Dansez sur moi4. Claude Nougaro / Michel Legrand:Tiens-toi bien à mon Coeur5. Claude Nougaro / Maurice Vander:Le coq et la pendule6. Claude Nougaro / Michel Legrand:Serge et Nathalie7. dave brubeck:à bout de souffle8. Claude Nougaro:La vie en noir9. Claude Nougaro / Hubert giraud):Regarde-moi10. Claude Nougaro:Déjeuner sur l’herbe11. Claude Nougaro:La pluie fait des claquettes 12. Claude Nougaro / toots thielemans:Tendre13. Claude Nougaro / Michel Legrand:Sa maison14. Claude Nougaro :ToulouseNatalie dessay(s)Yvan Cassar(p,arr.)Laurent Vernerey(b track14)、André Céccarelli (ds track 3,4)Pierre-François dufour(vc track 5, 6, 7, 9)Raphael Chassin(ds track 1, 2, 5, 7, 8, 9, 11, 12, 13)Nicolas Montazaud(pec. track 5,6,10,12)Claude Egea(tp track 1, 4, 11)Sylvain Gontard(tp,bugle track 2,3,8)Denis Leloup(tb track 1, 4, 11)Pierre Bertrand(sax,fl track 1, 4, 11)Stephane Guillaume(sax,cl track 1,4,11)Odile Abrell(harp track 1, 2, 3, 10, 12, 13)Odyssey Symphony Orchestra
2019年11月29日
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キース・ジャレットの初期のソロピアノ「Facing You」の192kHzのFlacの内容を見ていたら、隣にキース・ジャレットのインパルス時代の「Fort Yawuh」もハイレゾ化されていたことを知った。リリースは2015年とだいぶ前。24bit192kHzのFlacで価格がなんと¥1460円でPresto ClassicalあらためPresto Musicでリリースされていた。HDtracksでは$24.98とかなり高めで20%オフでもPrestoに比べるとかなり高い。このアルバムは当ブログが買った初めてのキースのアルバム(もちろんLP)。当時はあまりレコードを持っていなかったので、繰り返し聞いた覚えがある。演奏はアメリカン・カルテットの初期の1973年で、キースの才能に満ち溢れたフレッシュなプレイが聴ける。とかく評判のあまりよくなかったデューイ・レッドマンのテナーも今聞くと悪くない。このカルテットの傑作である「死と花」や「残氓 」のプレイを聴くと、この頃から、首尾一貫していることが分かる。ここでの演奏ではチャーリー・ヘイデンの圧倒的なベース・プレイが目立つ。当ブログの彼に対するイメージはこのアルバムでかたまったようなもので、堅牢で重心の低い、硬質な音が圧倒的な存在感を持っている。モチアンのドラムスは、かなり暴れまくっている様子が分かる。このアルバムを聴くといつも思うのだが、「Still Life, Still Life」がヘイデンのソロの途中でフェイドアウトしてしまうのが返す返すも残念。テープは回っているはずなので、できれば最後まで聞きたい。いずれ完全版を出してほしいが、何とかならないだろうかインパルスさん。。。音は大変にいい。全体にさっぱりとしているので、ヴィレッジ・バンガードでのライブの埃っぽさが全く感じられない。ダニー・ジョンソンのパーカッションもビビッドで、一部にうるさいという意見があるが、このバージョンではそんなことは全く感じられない。Keith Jarrett:Fort Yawuh(impulse)24bit192kHz FlacJarrett, K: (If The) Misfits (Wear It)Jarrett, K: Fort YawuhJarrett, K: De DrumsJarrett, K: Still Life, Still LifeKeith Jarrett; Dewey Redman(ts,cl);Charlie Haden(b);Paul Motian(ds);Danny Johnson(perc)Recorded: 1973-02-24、New York City, NY
2019年11月27日
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つい最近amazon music とmora qualitasでハイレゾの配信が始まった。amazonは端末で聴くことが出来るが、mora qualitasは取りあえずブラウザからの試聴のみ。各々無料試聴期間が設けられていて、あの手この手の涙ぐましい努力が感じられる。当ブログはipadで聴くのが常なので、PCをDACにつないで聴くのは面倒で,今のところmoraは端末でのオペレーションができるまでは様子待ちのつもり。料金はamazonがHD(ロスレス)とULTR HD(24bit 96kHzまで)の二つに分かれている。mora qualitasは一つだけで、amazonのULTRA HDと同じ月額\1800。Net Audioの最新号で、従来のサービスであるqobs,tidal,spotifyにamazonとmora qualitas(テスト版)を比較して山之内正氏と土方久明氏の二人のテスターが評価をつけていた。それによると音質に関してはmoraが優位に立っているようだ。管理人も取りあえずamazonを試聴してみた。うっかりすると課金されるので、登録直後に解約したが、プライム会員のためか、何故か2月までは無料で聴くことが出来るようだ。印象だが、ユーザー・インターフェースがこなれていないので、全部が直感で操作できるわけではなく、ある程度の慣れが必要なようだ。ハイレゾの曲はそれほど多くなく、ロスレスだとさすがに痩せて聞こえる。面白いのは、曲を再生しているときにULTRA HDやHDのロゴをクリックすると楽曲の最大音質、端末の性能、再生中の音質が確認できることで、自分の環境が分かり改善のヒントになることだ。一般の方にはあまり関係ないかもしれないが、オーディオに関心がある方にとってはなかなか有益な情報だ。また、ネットの接続状況によって、標準音質(AAC?)からハイレゾまでコロコロ変わり、興ざめする。これを改善するには、ひと工夫必要な感じがする。管理人にとって一番重要なのは聴きたい曲があるかどうかで、残念ながらタイトル数が不十分と感じられた。管理人のジャンルがクラシックやジャズの知らない曲やアルバムの試聴なので、仕方がないかもしれないが、spotifyに比べるとレパートリーが貧弱だと感じられた。またJ-POPが少ないのも問題で、国内での契約がまだ煮詰まっていないのだろうが、大多数のリスナーはポップスを聴かれる方が多いだろうから、まだそこら辺のジャンルの方々にはアピールできていないと思う。何故か乃木坂49のタイトルが沢山ラインナップされているのは、やる気が感じられた。またspotifyのように曲ごとのクレジットや歌詞の情報がないのも物足りない。歌ものなら歌詞は必須のはずだが。。。。ということで、管理人にとっては音質もさることながら、タイトルの充実が求められる。まあ、こういうサービスにつきものの永遠の課題?ではあるが。。。。あまり期待していなかったが以外にいい音だったことは確かで、そのうちダイレクトにDACにつないでの試聴もやってみたい。
2019年11月25日
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盛岡吹奏楽団の定期を聴きに行った。今回は長生淳に注目していた。四部作の四季連禱を再構成して短縮し、交響曲としたものを演奏するからだ。四部作と同じくヤマハの委嘱によるもの。楽譜は出版されていないようで、ヤマハの承諾を得て定期に組み入れたという。曲順は秋→冬→春→夏になっている。30分ほどの曲で、スタミナも必要だ。これらの曲はあまりメロディックではないので、初めて聞く人にはなかなか辛いものがあると思う。盛吹の演奏は大きな傷はなく整っていたが、全体的に平板で、長生の特徴であるダイナミックな部分では、もう少し盛り上がって欲しかった。ソプラノサックスとイングリッシュホルンが美しいサウンドで目立っていた。他の木管も充実していた。前半の2曲目のヴォーン・ウイリアムズのチューバ協奏曲は実演では初めて聴いた。ヴォーン・ウイリアムズらしいイギリスの民謡を使った親しみやすい作風だ。山形交響楽団の久保和憲氏は柔らかく豊かなサウンドで、技巧的にも危なげない。ただ、バックと溶け合いすぎているのか、バックが厚すぎるのかわからないが、ソロの細部が聞こえないことがあったのは残念。アンコールにチューバをフィーチャーした「The Leader of a Big-Time Band」が金管5重奏で演奏された。久保氏はインタビューで、エンパイヤ・ブラスのチューバ奏者サム・ピラフィアンの演奏を聴いてチューバを志したそうで、この選曲はそのつながりのようだ。演奏は、バックがずれるところがあり、少し残念だった。後半はタイトルが「神秘の森の音物語」副題が「エルフたちのサウンドチェイス」というもの。エルフとは北欧神話に搭乗する小さな妖精のことだそうだ。このタイトルと曲があっているかどうかは、よく分からない。全体に古い曲が多く、あまり楽しめなかった。チューバをフィーチャーしたスパークの「Song For Ina」はいい曲だったが、他の曲の間に入ると違和感がある。この時の編成はフレンチ・ホルンを除きブラス・バンド仕様という凝ったもの。フレンチ・ホルンはやはり異質なので、テナーホーンで聴きたかった。ところで、MCがつくためか、インタビューが回数、時間共に長い。これで印象を悪くしているのはもったいない。盛岡吹奏楽団第51回定期演奏会1部1.建部知弘:テイクオフⅡ2.ヴォーン・ウイリアムズ:チューバ協奏曲3.長生淳:交響曲第3番「四季連濤」第2部1.スーザ(岩井直溥編)スーザ・マーチ・カーニバル2.モライス・モレイラ(波田野直彦編):恋のカーニバル3.スパーク:Song For Ina4.岩井直溥編:アメリカングラフィティⅦアンコールDon't say that again久保和憲(tuba)盛岡吹奏楽団建部知弘2019年11月23日盛岡市民文化ホール2階L6で鑑賞
2019年11月23日
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新国立劇場のドン・パスクワーレを観る。新国立劇場はオネーギンが中止になったので、今シーズンは今回が初めて。昨日風邪をひいてしまって、無理かと思ったが、なんとか回復したので、電車を遅らせて観に行った。ドン・パスクワーレは全く聴いたことがなかったので、spotifyのライブラリーからフレー二がノリーナを歌ったムーティの全曲盤(warner)で概要を把握して臨んだので、すんなりと入ることができた。本当はダニエル・ド・ニースが目当てだったのだが、出演していなくてがっかりした。1、2幕は続けて演奏された。場面転換では自動で大道具が動く仕掛けで、今どきの方法なのだろうか。まあ、人手がいないわけではないはずだし、少し時間がかかったが、スピーディーに変えるためにはいい手段だと思う。歌手、指揮者とも知らない人たち。もっとも良かったのはタイトルロールを歌ったロベルト・スカンディヴィウッツィ。当ブログは全く知らなかったが、イタリアの名バス歌手だそうだ。朗々とした声が実に立派なのだが、役柄から行くと声が立派すぎたかもしれない。演技はうまい。医師のマラテスタ役のビアジオ・ピッツーティも豊かな声と確かな演技が光っていた。ノリーナ役のハスミック・トロシャンは第一幕で出て来たときに巨大な胸に圧倒されてしまってて、歌よりも胸のほうに注意が向かいがちになってしまった。ポートレートはシャープな感じの人なのだが、年齢とともに横方向に成長したようだ。役どころとしてはドン・パウクワーレの甥のダメ男のエルネストに釣り合った感じで悪くない。これがポートレートみたいにシャープだと全く釣り合わないことになってしまう。声は細い方だが、透明度がイマイチで、声量もそれほどない。ただ、ちょっとした仕草などコケティッシュな演技がうまかった。歌も進むにつれて良くなったように感じた。第二幕は修道女のようなきっちりした服装で歌に集中できたのは我ながら恥ずかしい。ところが第3幕になるとまた胸が露出され、今度は締め付けられているので、呼吸をすると胸が膨らんでしまって、いったん気が付くと気になってしょうがなかった。エルネスト役のマキシム・ミロノフ(1981-)は長身の優男で、役柄にぴったりの姿かたちなのだが、声が細身でそれも透明度がいまいちで、耳に触った。歌自体はうまいので、声のコンディションがよくなかったのだろうか。ステファノ・ヴィツィオーリの演出はミラノ・スカラ座で初演されたプロダクション。全体にシンプルで清潔感があった。第3幕の合唱の場面は料理人たちが忙しく働くシーンになっていた。長いテーブルが下手から、吊るされた食材が上から移動して、視覚的にはなかなかの見もの。一人バック転を何度も繰り返していた男がいた。面白かったが、あれは何だったのだろうか?なお、昨年のスカラ座での演出は異なっていた。ついでに言うと、1994年のムーティ指揮の公演では、今回と同じ演出だったので、少なくとも一つ前の演出ということになる。東フィルはドニゼッティには似つかわしくないグラマラスなサウンド。管が優勢なのに対して、弦がもう少し前に出て来てもいいような感じがした。コンラッド・ロヴァーリスの指揮は特に表現が強調されることもなく、初めて聞くオペラとしては悪い刷り込みがないので助かる。また、アリアの大仰な引き延ばしや、歌った後の拍手を手短に辞めさせるところなど、気落ちがいい。資料があまりないが、欧米の有名な歌劇場でイタリアオペラを中心に、しばしば指揮をしているようだ。3幕でのトランペットの長いソロは危うさを感じたものの、イタリア風の細い音が、曲にマッチしていた。2管編成なのだが、コントラバスが何故か3人しかいなかったのは珍しい。突発事故でもあったのだろうか。3人とはいえ、低音がずんと響いてきていたし、テュッティでもしっかり聞こえていて、存在感はかなりあった。第2幕や3幕の早口の場面はオケは少しもたついている感じで、できれば、もう少しシャープな感じを出してほしかった。最初からブラボーが沢山出たり、おばさん連中の下品な笑い声が聞こえたりで、聴衆があまりお上品ではなかったが、このオペラにふさわしい?反応だったのかもしれない。今回、日本語と英語の字幕が付いていたが、英語のほうが気になってしまった。日本語訳のニュアンス豊かな表現に比べると、英語訳は素っ気ない訳で、あれでは細かなニュアンスまではわからないだろう。最近YouTubeにアップされた対訳が音楽(ケルテス指揮ウイーンシュターツオーパー)とともに流れて、理解するのに非常に役に立つ。これがなんと全曲で、原語と対訳を目で追うことがなく、まさに画期的。また、舞台がない分、音楽と歌詞がシッカリと理解できる。アップ主は、当ブログもお世話になっているオペラ対訳プロジェクトだが、絶大な効果を発揮している。単に音楽に合わせて対訳を流しているのではなく、フォントの種類やサイズを変えたり、スクロールさせたりと、昔の無声映画に出てくる字幕を見ているような気分になってくる。DECCAの録音も生々しい。音源の利用に関する契約など困難な仕事があると思うが、これをボランティアで行っているのは、頭が下がる。この試みは、まだ始まったばかりなようだが、今後もぜひ続けて欲しい。新国立劇場公演ダイジェストドニゼッティ:ドン・パスクワーレ指揮:コッラード・ロヴァーリス演出:ステファノ・ヴィツィオーリドン・パスクワーレ:ロベルト・スカンディウッツイマラテスタ:ビアジオ・ピッツーティエルネスト:マキシム・ミロノフノリーナ:ハスミック・トロシャン公証人:千葉裕一新国立劇場合唱団東京フィルハーモニー交響楽団2019年11月17日 新国立劇場オペラパレス 1階17列32番いて鑑賞
2019年11月21日
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ゴードン・ジェンキンスのビッグ・ファット・バンドが久しぶりに新作をリリースした。現在メディアとしてはCD-Rでの流通のみで、CDになるかどうかは未定らしい。このアルバムを知ったのはspotifyをチェックしていた時で、配信が先行したことになる。このバンドは久しぶりに聞いたが、昨今ビッグバンドの経営がますます困難になったにも関わらず頑張っている姿を見られたのは嬉しい。一聴、トランペットのこれでもかという、キレかかったプレイが目立つ。その中で、気に入ったのは「The Buddy Complex」タイトルからうかがえるように、バディ・リッチへのオマージュ的作品。彼のビッグ・バンドで演奏された曲をいくつか集めたもので、最初と最後に「チャンネル・スイート」のフレーズが断片的に使われている。また最後にバディー・リッチ風のドラム・ソロがあるのも粋な計らいだ。正攻法の演奏で、とても楽しめる。当ブログの希望としては、この曲の中間部のゆったりした部分を聴きたかったが、そこがなかったのは少し残念だった。サマー・タイム以外はグッドウインの手になるナンバーで、いい曲がそろっている。一曲目の「T.O.P. Adjacent」はバリバリのファンクナンバー。速いテンポで、驀進する。エレキベースとベース・ドラムが少しうるさい。特にベースドラムはほかの曲でもバランスが悪く、ウザい。タイトルチューンの「The Gordian Knot」(ゴルディアスの結び目)はドラマの音楽みたいな感じで、ミステリー風で、ユーモラスでもあり、ありなかなか面白い曲だ。「ゴルディアスの結び目」は有名な神話で、長年だれも解けなかったゴルディアスの結び目をマケドニア王アレクサンドロス3世が剣で一刀両断にしたという話。(wiki)オーソドックスなビッグバンドナンバーで他の曲がフュージョン方面に傾いているのに比べると、安心して聴くことが出来る。ストーリーに基づいて作曲されたのかは不明だが、ストーリーを感じさせる音楽で、ビッグバンドとしては異色ながら、すぐれた作品だと思う。「Lost in Thought」はミディアムテンポで、静かではないが、ぐいぐいと迫ってこないのが救われる。少しうるさいが、都会の夜のしじまを感じさせる音楽。アンサンブル主体のアレンジだが、ハーモニーが分厚く、少し押しつけがましい感じはする。ソプラノやフリューゲルのソロは優れていて、ピアノもアコースティックなのがいい。「The Incredible」はディズニー映画「Mr.インクレディブル」の音楽。この映画は彼がアレンジを担当していて、2006年のグラミー賞最優秀器楽編曲賞を受賞しているそうだ。この映画は見ているが、音楽は全く印象に残っていなかった。サスペンスとユーモアを感じさせる音楽で、なかなか面白い。トランペットのハイノートが炸裂する。「Sometimes I Rush」は急激にアチェレランドする場面が何回もあり、ちょっと煽りすぎの感じがして、あまりいい印象ではない。ソロはファンキー色が強いが、どれも優れていて、メンバーの水準の高さがうかがえる。一曲だけボーカルナンバーがあり、バンジー・ガンという白人の女性歌手が歌っている。スタートレック・ビヨンドやスターウォーズ・ローグワンなどに参加しているようだ。ソウルっぽい歌で、アドリブはなし。テンポの速い曲が多いので、こういうゆったりした曲があると、一息つけるのがありがたい。グッドウインのピアノ・ソロから始まる「Sunset and Vine」はピアノ・トリオ主体の演奏。これもサスペンス調ではあるが、軽快なメロディーと軽妙なフレーズで、なかなかしゃれた味わい。トロンボーン・ソロも優れている。但しここでもバスドラムの音がうるさいのが惜しい。「Deja Moo」はエレキ・ギターが大きくフィーチャーされている。コミカルなメロディーで、西部劇時代のアメリカ南部の雰囲気が味わえる。シンセでヴァイオリンの音を模しているところもな、かなか気が利いている。こういう曲は、他のバンドでは聞けないものだろう。当ブログのようなこだわりがなければ、エンターテインメントに徹した優れた音楽であることは間違いない。録音はだいぶ加工されていて、ビッグバンド本来のサウンドからは、かけ離れている。昨今のビッグバンドのサウンドは多かれ少なかれ、こういう傾向のサウンドが中心的だが、出来れば生音に近い音で、聴きたかった。理由はわからないが、解放された気分になれないのだ。この項を書いていて調べたら、グラミー賞は数年前からチャンス・ザ・ラッパーなどの活躍により、ストリーミング配信限定の楽曲やアルバムも対象になっているようだ。そうすると、軽量級とはいえ、グラミー賞にノミネートされてもおかしくない。Gordon Goodwin's Big Phat Band:The Gordian Knot(Wingood Music Productions MOC101819)24bit 96kHz flac1.Gordon Goodwin:T.O.P. Adjacent2.Gordon Goodwin:Don't Blink3.Gordon Goodwin:The Gordian Knot4.Gordon Goodwin:Kneel Before Zod5.Gordon Goodwin:Lost in Thought6.Michael Giacchino(arr. Gordon Goodwin):The Incredibles7.Gordon Goodwin:Sometimes I Rush8.George Gershwin(arr. Gordon Goodwin):Summertime9.Gordon Goodwin:Sunset and Vine10.Gordon Goodwin:Deja Moo11.Gordon Goodwin:The Buddy ComplexGordon Goodwin (ts,ss)Eric Marienthal, Sal Lozano, Brian Scanlon, Jeff Driskill, Kevin Garren, Jay Mason(ww)Wayne Bergeron, Dan Fornero, Mike Rocha (trk 3-6,8,10), Willie Murillo (trk1,2,7,9,11), Dan Savant(tp)Andy Martin, Charlie Morillas, Francisco Torres, Craig Gosnell(tb)Rhythm: Andrew Synowiec (g)Kevin Axt (b)Ray Brinker (ds)Joey DeLeon (perc)Vangie Gunn(vo)
2019年11月19日
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ビッグ・バンド作品以来のマイケル・デイヴィスの新作を聴く。今回は本来のブラス・アンサンブルでのアルバム。目新しいのは、息子のCole Davisの作品を取り上げていること。親子とはいえ、似たような作品を書くところが面白い。気に入ったのはコールの「Sam (for Sam Pilafian)」タイトルのサム・ピラフィアン(1949−2019)はエンパイア・ブラスのチューバ奏者。2分足らずの曲だが、ピラフィアンを追悼する心温まる作品。演奏は、刺激的なサウンドは皆無で、良くブレンドしたサウンドが何とも心地よい。決してシャープなサウンドではないが、暖かみのある音質で統一されていて、とても気持ちがいい。このサウンドこそ当ブログが長年フォローしている理由だ。また、カリフォルニアの青い空を思い出させるような、カラット乾いた空気感もいい。HIP-BONE MUSICのサイトにセッションのときの動画が4本載っている。購入の参考にご覧になっていただきたい。Michael Davis:5(HIP-BONE MUSIC M1014)1.Cole Davis:Incantations2.Michael Davis:Blue Blood3.Michael Davis:Bone Man Walking4.arr. Bill Reichenbach:Back To The Faire5.Michael Davis:Longhorn6.Cole Davis:The Rating Complex7.Michael Davis:Clydesdale8.Michael Davis:August9.Michael Davis:Gotham10.Cole Davis:Sam (for Sam Pilafian)Michael Davis(tb)Tony Kadleck(tp)Chris Gekker(tp)Chris Komer(hr)Marcus Rojas(tub)
2019年11月17日
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ECMが今年で創立50周年になったお祝いにPresto Classicalでセールを行っていた。その中から、3点ほど入手したが、なぜか3点ともブレイ・ファミリー?のアルバムだった。本当は「エスカレーター・・・」が欲しかったのだが、残念ながらバーゲン対象にはなっていなかった。いずれもロスレスで、意外に音がよかったポール・ブレイ(1932 - 2016)の「When Will The Blues Leave」についてひとこと。1999年3月にスイスのルガーノで行われたコンサートをスイス放送協会の協力のもとにECMがCD化。当ブログが入手したのはロスレスのflacでなんと\890というバーゲン価格。例によって24bit192kHzのflacに変換して聴いている。ピアノは少し固い感じだが透明感があり、ピーコックのベースの音がずしんと体に響くのが心地よい。ドラムスも楽器の質感がよくとらえられている。最新録音といってもおかしくないサウンドで大満足。ブレイは時々刺激的なプレイをして、予想していたとはいえ、やってくれる。ブレイの「Mazatran」やコールマンのタイトル・チューンは曲というよりは簡単なメロディーなので、アドリブ一発で曲が成り立っているようなもの。ブレイのプレイはインパルス時代のキース・ジャレットのような、才気ばしっている感じがする。1932年生まれなので録音当時67歳なのに、年を感じさせない勢いが感じられるのはキースとはだいぶ違う。楽しめたのは、意外にもバラード。自作の「Flame」の心に染み入るメロディーと刺激的なアドリブ、共作の「Dialogue Amour」の耽美な美しさなど、ブレイらしいプレイに満ちている。「Dialogue Amour」の後半、テンポを少し速め、ブレイの個性的なソロが続く。硬質な叙情とでも言うべきだろうか。最後のガーシュインの「I Loves You Porgy」はソロ・ピアノでアンコールだったのかもしれない。最初はトリッキーな始まり方だったが、途中からはテンポを落として、じっくりとアドリブを展開している。バラードらしくないアプローチがなかなか面白い。最後に弦をじゃらんと鳴らしているのが、いかにもブレイらしく、しゃれている。ピーコック作の「Moor」はフリーっぽい曲で、前半のピーコックのロング・ソロが楽しめる。ベースの豊かなサウンドも聴きもの。ジャズには珍しくブックレットが付いていて、とても有難い。同じメンバーによるスタジオ録音の「Paul Bley With Gary Peacock」 (1998)とのダブりは「When Will The Blues Leave」のみ。残念ながら「Paul Bley With Gary Peacock」 はセール対象ではなかった。セールは12/2までで、まだ余裕があるので、ご興味のある方は是非ご覧になっていただきたい。https://www.prestomusic.com/jazz/promotions/ecmPaul Bley;Gary Peacock;Paul Motian:When Will The Blues Leave(ECM)16bit 44.1kHz Flac1.Paul Bley:Mazatlan2.Paul Bley:Flame3.Paul Bley:Told You So4.Gary Peacock:Moor5.Paul Bley:Longer6.Paul Bley, Gary Peacock:Dialogue Amour7.Ornette Coleman:When Will The Blues Leave8.George Gershwin:I Loves You PorgyConcert recording by RSI, March 1999Aula Magna STS, LuganoAn ECM Production in collaboration withRSI Radiotelevisione svizzera, Lugano
2019年11月14日
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家猫がワクチンの接種をしていなかったので、昨日動物病院に行って来た。そのときに、以前から気になっていた目の白濁について聞いてみた。この病院の前の獣医師もこの病状についてよく分からないと言っていたので、結局ほったらかしにしてしまっていたのだ。新しい獣医師もよくわからないと言ったが、県内に唯一ある眼科の専門医を教えてくれた。岩手どうぶつ治療センターという水沢にある病院で、動物病院にしてはスタッフが多く、けっこう大きい病院のようだった。事前に調べたら、白内障の疑いがあり、最悪失明の可能性があることもあり、急遽今日診てもらいに行った。来院者が多く、30分ほど待たされた。見てくれたのは院長だったが、頭の毛をてっぺんまで半分刈り上げた、変わった髪型をしていた。診察と検査を行った結果、白内障ではなく猫ヘルペスウイルスに感染したため、角膜が厚くなって、光の当たる角度によって白濁している、という。治療は出来ないので、一種の個性として付き合って下さいとのことだった。猫ヘルペスウイルスは風邪によって感染するもので、近所の方が、この猫の小さい時のことを知っていて、話を聞いていたので、なるほどと納得してしまった。その話とは、この猫はもともと家猫だったのが、飼い主が引越しした際に捨てられて、その時にぶるぶる震えていたのを見たことがあるというものだった。これらのことから、ようやく全体像を理解することが出来た。風邪に注意する必要はあるが、白内障で失明するようなことがないことがわかり、やっと安心できた。当ブログとしても、手遅れにならないかと危惧していたので、やっと安心できて、何よりだった。今日は缶ビールを少し増やしてお祝いしたいと思う。猫は病院でチュールを食べていたが、家でも食べさせることにしたい。本人はその理由が何のことか全くわからない筈だが。。。
2019年11月13日
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以前から生を見たいと思っていた河村尚子のピアノ・リサイタルを聴く。最近リリースされた熱情などのプログラムを中心にするのかと思ったら、ベートーヴェン・プロジェクトの最終回の最後のピアノ・ソナタ3曲という直球勝負だった。当ブログは後期のピアノ・ソナタはあまりなじみがないので、あらかじめ小菅優の全集から予習をしたが、時間切れで途中までで終わってしまった。20分ほど余裕があったが、会場近くの駐車場がどこも埋まっている。クラシックのリサイタルで曲目が渋いのに、混んでいる理由が分からず、しょうがなくいつもの金田一に駐車。会場に入ったら理由が分かった。大ホールで太田裕美のコンサートがあったからだったのだ。さすがにポップスのコンサートは動員力が違う。閑話休題コスチュームは 銀の下地に黒っぽいランダム形状の模様が施されたドレスに、銀の靴というなかなかシックな装い。どちらもスパンコールが付いていて、照明できらきら光っていた。プログラムが渋いので、それに合わせたのかもしれない。今どきの日本人ピアニストは温厚で、まっとうな演奏をする人が多いが、この方はそういう普通のピアニストはちょっと違う。CDを聴いていても、時々そこまでするかという野蛮な表現をすることがあったが、生を聴くとそのことが強く感じられた。エキセントリックというと語弊があるが、いい意味で思いがけないところで聴衆を刺激することがあるのだ。例えていえば、アルゲリッチに似たようなテンペラメントの持ち主と思う。テクニックは完成されていて、音楽の流れも自然だ。ダイナミックスも十分だが、今回は曲が曲だけにそれほど鳴らしているわけではない。第30番の最初の2楽章はアタッカでつながれていた。普通だと澄んだ、平易な感じの演奏が多いが、河村の演奏はそういう要素は少なく、低音をごりごり鳴らしたり、メリハリの付いた表情付けが特徴的だった。第2楽章は楽譜通り(プレスティッシモ)とはいえ、かなり速い感じがした。3楽章の変奏曲は普通のテンポでじっくりと演奏されていた。第31番は第2楽章のテーマがぎくしゃくした感じで、面白い解釈。第3楽章の嘆きの歌の部分はことさら哀切を強調するわけではなく、透明感のある情感が感じられた。弾き終わった終わった後で、ランランみたいにのけぞっていた。日本人にしては?珍しいパフォーマンスだ。第32番の第2楽章は各変奏がくっきりと弾き分けられていて、とても分かりやすかった。特に6つに分かれている第4変奏は違いがよく分かった。また、第2楽章のリステッソ・テンポの躍動するような旋律では、顔を振りながら嬉しそうに演奏している様子が印象的だった。子供っぽいというか天衣無縫というか、日本人には珍しい光景だった。時折プログラムを見ながら聞いていたのだが、平野昭氏の詳しい解説がとても役に立った。河村はアンコールの前にマイクをもって話をされた。盛岡を訪れたのは初めてで、父親の仕事の都合でデュッセルドルフに移住し、そこで出会った日本人のピアノの先生(こまばやしせんせいと仰っていた)が、もしピアニストになったら盛岡でリサイタルをしてほしいと言われ、やっと30年来の約束を果たせたということだった。小学校4年の時の話なので、そうすると年は40歳近いのかなと思ったら、1981年生まれなのでぴったり符合した。もっと若いのかと思っていたので、意外だった。普通のコンサートに比べると少し短いコンサートで、すべて難渋な曲目だったが、最後の話を含め、爽やかな気持ちで会場を後にした。河村尚子 ピアノリサイタルベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第30番ホ長調 作品109ピアノ・ソナタ 第31番変イ長調 作品110ピアノ・ソナタ 第32番ハ短調 作品111アンコールベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第30番ホ長調 作品109第3楽章変奏Ⅵと主題の回想河村尚子(p)2019年11月11日 岩手県民会館 中ホール 3列6番で鑑賞
2019年11月11日
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eclassicalの新譜案内で知り、例によってspotifyでチェックして、購入した音源。聞いたことのない作曲家の作品が多く、そういう意味では、とても貴重な機会を与えていただいた気がする。ドイツとギリシャの作曲家の作品が集められているが、ご存命の作曲家はいない。おそらく、このような企画のアルバムは殆どないだろう。選曲と演奏がよく、知らない作曲家たちを知ることができる絶好のアルバムだ。全体的にひんやりとした雰囲気、それが何故か心地よい。ギリシャのアテネ生まれのファニー・アントネルー(Fanie Antonelou 1979-)は2005年のマリアカラス国際コンクールのオラトリオと歌曲の部門でグランプリを受賞している。クルレンチスの「フィガロの結婚」でスザンナ役を歌っているのを覚えている方もいるだろう。現在はシュツットガルト歌劇場を中心に、世界各地で活躍されている。背景を考えると、今回のアルバムは彼女にふさわしい企画だろう。声は透明で、大柄で顔もあまり優しそうではないが、可愛い声をしているのが意外。殆どの曲はお初にお耳にかかるものだった。独特の雰囲気を持つ世界だが、耳に馴染みやすい曲が多く、楽しめた。知っているのはドイツ人以外はミトロプーロスのみ。ミトロプーロスはニューヨーク・フィルのバーンスタインの前任として有名だが、作曲をしているとは知らなかった。ミトロプーロスは無調に理解を示していた指揮者だが「船員の死」はロマンティックで、バラードのように劇的だ。「アフロディーテ」は無調だが、冷たくはなく、どこか親しみやすい。ヤニス・コンスタンティニディスの『ギリシャ人の20の歌』からの抜粋は東洋的なエキゾチックな音楽で、とても興味深い。マノリス・カロミリス(1883-1962)はオスマン帝国のスミルナに生まれ、後年アテネで活躍した。ワーグナーとリムスキー=コルサコフの賛美者で、後期ロマン派音楽の作曲家。豊かな和声法と管弦楽法、複雑な対位法、息の長い東洋的な旋律、ギリシャの民族音楽のリズムの多用が特徴的とのこと。wiki「雌ジカ」は冒頭のピアノのアルペジオが不思議な空間を作り出し、東洋的な雰囲気も強い、一風変わった曲。ピアノが重要な働きをしている。「妖精」は少しコミカルで、「Rumeliótissa」も平易な楽想で楽しめる。シェーンベルクは初期と後期の作品が1曲ずつ。作品2の第1曲「期待」はこのアルバムの中では、さすがに浪漫的で、フーゴー・ウォルフのように聞こえる。フィリップ・ヤルナッハはフランス生まれで、1920年代にベルリンで働く。1949年にハンブルク音楽大学を創立し1970年まで教えた。教え子の中にはクルト・ワイルやベルント・アロイス・ツィンマーマンがいる。wikiドイツの作曲家アントン・ベーア=ヴァルブルンの「マリアの憧れ」は静かなギリシャの雰囲気が感じられるオーストリアの作曲家ルートヴィヒ・トゥイレの「3つの女性の歌 Op. 5の第1曲嘆き」は感情ががダイレクトに伝わってくる、なかなかの名品。ドミトリス・リャリオスはトゥイレの弟子で、ギリシャで初めて近代的な室内楽を作曲したそうだ。4つの歌 Op. 7 - 第1曲 Es erklingt wie Liebestoneはギリシャの雰囲気が色濃い作品。ということで、地味なアルバムではあるが、どの曲も味わい深く、秋の夜長にじっくりと耳を傾けるのに相応しいアルバムとしてお勧めする。ファニー・アントネルー:ギリシャとドイツの芸術にまつわる歌曲集(BIS BISSA2349)24bit 96kHz flacヤニス・コンスタンティニディス(1903-1984):1.「ギリシャ人の20の歌」よりアレクサンダー・ツェムリンスキー(1871-1942): 5.「乙女の嘆き」 6.お嬢さん、僕と一緒に踊りに行かないかい? 7.湖はいま不安にゆれている8.マノリス・カロミリス(1883-1962):5つの歌から第4曲 I neraidoparmeni (Enchanted by the Fairies)アルノルト・シェーンベルク(1874-1951): 9.4つの歌 Op. 2 - 第1曲 期待 10.3つの歌 Op. 48 - 第3曲 乙女の歌ディミトリ・ミトロプーロス(1896-1960): 11.「船員の死」 12.「アプロディーテーへ」クルト・ヴァイル(1900-1950): 13.「別れの手紙」 14.「Klops Lied」15.フィリップ・ヤルナッハ(1892-1982):5つの歌 Op. 15 - 第2曲 子供の不思議な角笛16.ニコス・スカルコッタス(1904-1949):雌ジカ AK 8617.アントン・ベーア=ヴァルブルン(1864-1929):アイヒェンドルフの詩による宗教的な歌 Op. 59 - 第5曲 マリアの憧れエミリオス・リアディス(1880-1935):『9 つの短いギリシャの歌』より 18.「Magissa」 19.「Missiriotissa」マノリス・カロミリス20.妖精21.Rumeliótissa22.ルートヴィヒ・トゥイレ(1861-1907):3つの女性の歌 Op. 5 - 第1曲 嘆き23.ドミトリス・リャリオス(1869-1940):4つの歌 Op. 7 - 第1曲 Es erklingt wie Liebestoneファニー・アントネルー(s)ケルスティン・モルク(p)録音:2017年8月/ライツターデル、ノイマルクト(ドイツ)
2019年11月09日
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※リンクはHDtracksCDがリリースされて大分経って、今月のはじめにハイレゾがやっとリリースされた。暫くハイレゾのリリースを待っていたが、モノであまり録音が良く無いこともあり、ハイレゾのリリースがないものとみてCDを買ってしまったのは2ヶ月ほど前。今回はDSDでの配信もあるのだが、とにかく高いので、いつも使っているサイトを比較して、HighresAudioからDSD2.8Mhzを$14.9で購入した。出来れば5.6MHzが欲しかったが、このサイトでは売っていないので、仕方がない。他のサイトは軒並み高く、HDtracksでは96kHz flacでも$27だった。国内は96kHz flacでも\3800ほどでだいぶ差がある。2×HDは日本からでも買えるので、こちらを利用されてもいいかもしれない。HighresAudioではvpn接続でドイツなどにつながないと買えないし、支払いも最近厳しくなり、同じ国で発行されたカードかpaypalを使うことに限定されている。まあ、当ブログみたいに、とにかく安くと思っている方はチャレンジされてはいかがだろうか。CD(当ブログは192kHz flacにアップコンバート)で聞いたときは音がやせていて、輪郭がはっきりしていない印象が強かった。ノイズも結構気になった。DSDで聴くとノイズ成分が減り、かなり見通しが良くなった。それに伴い、音の輪郭も鮮明度を増している。例えてみれば、薄暗い埃っぽいところでのプレイから、普通のジャズクラブでのプレイに近い印象になった。会場ノイズも減っているが、どのような処理をしているのか興味がある。当ブログのように、できるだけ安く、なおかつ高音質を求めるのであれば、HighresAudioのDSDが最もリーズナブルな選択だろう。CDとハイレゾでは編集が異なり、ハイレゾでは演奏の前の拍手が収録されている。好みの問題ではあるが、当ブログは演奏前の拍手があるほうが臨場感が増してくると思う。音楽のみを聴くか、ライブとして楽しむかによって評価は変わると思う。ただ何回も聴いているとその拍手が煩わしくなる可能性はある。なお、マスターテープに起因する音の故障が数か所あるが、気にするほどのものではない。2×HDはジャズには珍しくブックレットが付いているが、今回もCDの34頁には劣るが、12ページのpdfが付いていて、有難い。同じレゾナンスの「Some Other Time」のような驚きはないが、このメンバーでのトリオの結成間もない「Live at Top of the Gate」から1年後の3者の練度を増した演奏は、アグレッシブでなかなか楽しめる。ただ、殆どがミディアムテンポで、スロー・ナンバーも欲しかった。Bill Evans In England(Resonance Records→2×HD)DSD2.8MHz1.George & Ira Gershwin:Our Love Is Here to Stay;Bill Evans2.Bill Evans:Sugar Plum;Bill Evans3.Victor Young:Stella by Starlight;Bill Evans4.Victor Young:My Foolish Heart;Bill Evans5.Victor Young:Waltz for Debby;Bill Evans6.Thelonious Monk:Round Midnight;Bill Evans7.Bill Evans:The Two Lonely People;Bill Evans8.Leslie Bricusse:Who Can I Turn to (When Nobody Needs Me);Bill Evans9.Earl Zindars:Elsa;Bill Evans10.Michel Legrand:What Are You Doing the Rest of Your Life?;Bill Evans11.Bill Evans:Turn Out the Stars;Bill Evans12.Bill Evans:Re: Person I Knew;Bill Evans13.G. Jenkins:Goodbye;Bill Evans14.Harold Arlen:Come Rain or Come Shine;Bill Evans15.Bill Evans:Very Early;Bill Evans16.Miles Davis:So What;Bill Evans17.Joe Zawinul:Midnight Mood;Bill Evans18.Jimmy Van Heusen:Polka Dots and Moonbeams;Bill EvansBill Evans(p)Eddy Gomez(b)Marty Morell(ds)Recorded live at Ronnie Scott's in London, England. December 1969
2019年11月07日
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以前聴いた時の感激が忘れられず、東京まで聴きに行った演奏会。席が4列目で、以前耳を患ったものとして、耳へのダメージを心配したが、全く問題なかった。理由はよくわからないが、ステージに近い列は、最前列がステージと同じ高さで、当ブログの四列目までは下がって、以降上がっていくという配列も関係しているかもしれない。もちろん木を多く使った建築であることも大きいと思う。とにかく響きが柔らかく、ブレンドされていてテュッティでも、まったくうるさくない。以前北上で聴いた時はこれほどまろやかな音ではなかった。何しろアンコールのケルト民謡で管のほとんどのメンバーがステージ最前列で演奏しても、まったくうるさくないのには驚いた。今まで経験したことのない現象だった。ステージが狭いためか、少しごちゃごちゃしている感じだったが、それも良かったのかもしれない。ブラスの曲はすべて知らない曲。その中では、グレアムの交響詩「ダイナスティ」が素晴らしかった。この曲は今年の全英オープン選手権の課題曲で、父が指揮者で、二人の弟もコルネット奏者というコルネット奏で指揮者として高名なハーリー・モーティマー(1902-1992)の家族を王朝(ダイナスティ)に例えて描いた大作。ブラス・バンドの定番の速いテンポで超絶技巧を見せつけるところは少なく、雄大なスケールで描かれていた。最後まで悠揚迫らず堂々としていて、実に感動的な作品だった。同じ作曲者の「キャット・テイルズ」はエルマー・バーンスタイン(1922 - 2004)、ヘンリー・マンシーニ(1924 - 1994)、ソニー・ロリンズ(1930-)という三人の作曲家に捧げられたもので、軽快でクールな作品。3楽章の「Scat!」はテナー・サックスのロリンズの作品である「エアジン」がモチーフとして使われていた。ソリスト・ショーケースではブレッド・ベイカーのトロンボーンの音のむらのない柔らかい音が印象に残った。それから、ケビン・セイナーのユーモアあふれるチューバ・ソロも面白かった。聴く前はなぜオリジナルではないのだと思っていた「ローマの松」聞いてみるとこれが30名ほどの音かと思うくらいすごい演奏だった。吹奏楽編曲版はおろか、オケ版に匹敵(以上?)するくらいの大迫力。まいりましたとしか言えないような演奏だった。なお、このコンサートが一週間あまりの日本ツアーの最終回で、指揮者のニコラス・チャイルドのブラック・ダイクでの1,000回目という記念すべきコンサートだった。この記念すべき日に、聴衆の一員として参加できたことを心から喜びたい。ブラック・ダイク・バンド演奏会前半1.スーザ:自由の鐘 2.ヴェルディ(ローリマン編):歌劇《ナブッコ》序曲3.カムジー:メロディー・オブ・ザ・ハート(*コルネットソロ:リチャード・マーシャル)4.グレイアム:キャッツ・テイルズより “カタロニア”、“キャット・ウォーク”、“スキャット”5.ハーパー:ケルティック・プロミス(テナーホーンソロ:シボーン・ベイツ)6.グレイアム:交響詩《ダイナスティ》後半1.ロヴァット=クーパー:ホライズンーソリスト・ショーケースー2.プライアー(ウィルキンソン編):愛の想い(トロンボーンソロ:ブレット・ベイカー)3.ニューサム:舞踏室のバス(チューバソロ:ゲヴィン・セイナー)4.マンティア(チャイルズ編):春の日の花と輝く(ユーフォニアムソロ:ダニエル・トーマス)ーブラックダイク・アット・ザ・ムービーズー5.ジョン・ウィリアムズ(ダンカン編):映画「ハリー・ポッター」シリーズより6.ビル・コンティ他(バリー編)/映画「007 ユア・アイズ・オンリー」より (フューチャリング:ゾイ・ロヴァット=クーパー、シボーン・ベイツ、アリソン・チャイルズ、サミー・ラトゥス、カトリーナ・マーゼラ)7.バデルト他(ロバーツ編):映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」より8.レスピーギ(スネル編):交響詩《ローマの松》より“ボルゲーゼ荘の松”、“アッピア街道の松”ニコラス・チャイルズ(指揮)ブラック・ダイク・バンド朝岡聡(司会)2019年11月2日すみだトリフォニーホール 1階4列36番で鑑賞
2019年11月05日
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ブラックダイクのコンサートを見るついでに、面白そうなコンサートがないか探した結果見つけたコンサート。以前から狭間美帆の生を聴きたいと思っていて、飛びついたのだが、直前になって、リー・リトナー、デイブ・グルーシン・グループとのダブルビルであることを知り、テンションが下がってしまった。BBC Proms in Japanのコンサートに何故アメリカのジャズが入っているのかは全く不明。サテライト会場にポピュラー系のミュージシャンが大勢出演しているので、浮いているわけではないが、どうもこのイベントの趣旨が分からない。狭間のm_unitは弦が入った13人編成のバンドで近作の「Dancer in Nowhere」の曲を演奏した。トランペットとドラムスがアメリカ人の他は日本人。レコーディングに参加しているのは庵原(ts)、パウエル(tp)、吉田(va)ら。ホーンが1本ずつでトロンボーンがないのが珍しい編成。ダブル・リードがあればと思った。サックスの活躍が目覚ましく、アドリブも前衛的な土井のアルトやテナーとは思えないメロウなサウンドと過激なアドリブの落差が面白い庵原、竹村の味わい深いバスクラが印象に残った。ジョナサン・パウエルのトランペットはパワーが不足していて、最初は消えていた。しかし、次第に調子を取り戻し、マジャール・ダンスのロング・ソロは力演だった。ジェアード・ショニグのドラムスはやたらに掛け声を出すが、シャープさに欠けていて、あまり感心しなかった。弦はマイクアレンジの問題かサウンドがブレンドせず、鋭角的な響きになっていたのは惜しまれる。弦のソロではマジャール・ダンスでの吉田のヴィオラ・ソロが落ち着いたプレイで、スイング感もありなかなか良かった。それにしても、ジャズでヴィオラのソロを聴けるなんて、なかなかないことだと思う。「The Cyclic Number」冒頭のベース・ソロは、いつもながらの井上陽介の安定したプレイが光っていた。曲も面白く、今回のベストパフォーマンスだろう。これで終わりかと思ったら、リー・リトナーとデイブ・グルーシンが登場して、2曲演奏された。2曲目はデイブ・グルーシンがGRPビッグバンド用に編曲したホレスシルバーの「シスター・セイディ」を演奏した。ところがあとでdiscogをチェックしたら、編曲者はMichael Abeneとある。どちらが本当なんだろう?第2部はセッティング上のトラブルで10分ほど遅れてスタート。最初はカルテットの演奏で数曲。リトナーは元気だが、グルーシンがいまいち精彩がない。お馴染みの曲なのだろうが、当ブログにはあまり刺激の少ない温い演奏としか感じなかった。ベースは健康上の理由からエイブラハム・ラボリエルからメルヴィン・デイヴィス(Melvin Lee Davis)に変更になった。デイヴィスとドラムスのウェス・リトナー(wasley Ritenour) のプレイはなかなか強力。特にデイヴィスは存在感のある(ありすぎ?!)プレイで楽しませてくれた。途中からスペシャル・ゲストの小野リサが登場して2曲を演奏。最初のジョビンの「フェリシダージ」はグルーシンのピアノとのデュオで、かなり遅いテンポ。他はスキャットの曲だった。「フェリシダージ」は音程が悪く、声も出ていない。リハーサル不足では無いだろうか。彼女としては不本意な出来だっただろう。小野の後にお待ちかねのイヴァン・リンスが登場。最初ボソボソ歌っていたが、次第に調子を上げて、最後は素晴らしい声だった。74歳という年なので、多くは期待できないが、これからも元気で活躍してほしい。当ブログは初期の名作「Somos Todos Iguais Nesta Noite」を聴いた音がある程度。だいぶ遅くなったが、少し勉強してみたい。JAZZ from America前半1.Run(?)2.Dancer in Nowhere3.Paradiso del Blues4.Magyar Dance5.The Cyclic Number挾間美帆 “m_unit” 挾間美帆(ジャズ/作・編曲、指揮) 土井徳浩(as,ss,fl) 庵原良司(tn,cl、fl) 竹村直哉(bs,bcl) ジョナサン・パウエル(tp) 林育宏(Hr) 金子飛鳥(vn) 沖増菜摘(vn) 吉田篤貴(va) 島津由美(vc) 香取良彦(vib) 佐藤浩一(p) 井上陽介(b) ジェアード・ショニグ(ds)後半Lee Ritener & Dave Grusin Dream Band featuring Ivan Lins リー・リトナー(g) デイヴ・グルーシン(p) メルヴィン・デイヴィス(b) ウェス・リトナー(ds) イヴァン・リンス(vo,key) 小野リサ(vo,g)2019年11月1日 Bunkamura オーチャードホール 1階 33列33番にて鑑賞
2019年11月03日
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