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ベルリンのフィルハーモニーで行われているJazz at Berlin Philharmonicというジャズ・フェスティバルのライブ録音を聴く。2013年からはじまているそうで、今年は第9回目。全く知らないイベントだったが、HDtracksの新譜にリリースされていたので、spotifyで早速チェック。結構いい感じだったので、20%オフで購入。リリース元はドイツのACT MUSIC.この会社はジークフリート・ロッホ によって1992年に設立されたジャズやブルースを扱うドイツのレコードレーベル。このコンサートはモンクやパーカーのパトロンとして有名な、キャスリーン・アニー・パノニカ(1913-1988)、いわゆるニカ男爵夫人に関わりのあるミュージシャンの作品を特集したもの。今年は彼女の没後30年にあたり、企画の良さが光る一枚。パノニカといえばモンクとの関係が有名だが、パーカーが亡くなったのは彼女のアパートで、27年後にモンクが死んだのも彼女のアパートだったとは知らなかった。このブログを書く上で、調べものをしていたら、パノニカが銀行家の富豪シャルル・ロスチャイルド(1877 - 1923)の娘として、1913年にパリで生まれた、という記述にぶつかった。何しろ彼は初代ロスチャイルド男爵ナサニエル・メイヤー・ロスチャイルドの次男だ。金は腐るほどあったろうし、パトロンとしてはこれ以上は望めないクラスだ。メンバーはこのフェスティバルに最初から関わっているフィンランド出身のピアニストであるイーロ・ランタナ(1970- )を中心としたクインテットにヴォーカルが加わるというもの。白人が多いので白っぽいジャズかと思っていたのだが、これが結構濃い演奏で掘り出し物を見つけた気分になった。一番関わりの深かったモンクの作品が多いが、ホレス・シルバー、パウエルの作品もある。「Poor Butterfly」ではレイモンド・ハベルと共にソニー・ロリンズのクレジットがついているが、詳しいところはわからない。知らない曲もあったが、どの曲も演奏が熱気を帯びていて、ライブならでは興奮が伝わってくる。全曲スカなしだが、特にシルバーの「ニカの夢」はラテン・タッチのノリノリの演奏で一番楽しめた。「'Round Midnight 」と「Panonika」ではヴォーカルがフィーチャーされている。歌っているのはニューヨークのブルックリン生まれのチャレニー・ウェイド。2000年代から活躍していて、デビュー・アルバムは2010年にリリースされている。ジャズ、ソウル、R&Bなどを歌い、ここでもソウルっぽい歌がなかなかいい。サラ・ボーンの語り口に似ていると思ったら、初期のころサラ・ボーンとベティー・カーターの影響を受けているそうだ。2曲ともスロー・ナンバーだが、情感たっぷりに歌っていて余裕しゃくしゃく。ホーンではアーニー・ワッツのテナーがさすがに貫禄十分だが、もう少し引き締まった演奏を聴きたかった。ポーランド出身の女性アルト・サックス奏者Angelika Niescier(アンゲリカ・イェスアイエル?)は女性とは思えない太い音と、ファンキー時々フリーの尖がったプレイで、コンサートで一番光っていた。ステージの写真を見ると、細身で結構背が高いので、音が出ると外観との落差に驚く。特に「バルー・ボリヴァー・バルーズ・アー」での長尺のソロが聴きごたえ十分。エンディングでのワッツとのバトルでもワッツを圧倒している。彼女はオーネット・コールマンを思い出させるフリー・ジャズのアルバムを何枚かリリースしていて、これがなかなか面白い。ちなみにこの曲名はニューヨークのセントラルパーク西230にあったボリバールホテルのことで、当時パノニカが滞在していたとか。(出典:http://fracture.air-nifty.com/power_to_believe/2012/01/ba-l.htmlイーロ・ランタナのピアノはグルーヴィーだが、線が少し細い。ベースのダン・バーグランドもスウェーデン出身で、いい音で存在感がある。ノルウェー生まれのアントン・エガーのドラムスもタイトで切れのあるドラミングが心地よい。パウエルの「Celia」はピアノ・トリオでの演奏。4分ほどの演奏だが、テンポがかなり速く、ぐいぐい進む。スリリングでスピード感がたまらない。ランタナのピアノ・ソロも快調だ。後半のドラムスのあおりも半端でない。最後はモンクの「Straight No Chaser」チャレニー・ウェイドのサラ・ボーンばりのスキャットから始まる。アルトのAngelika Niescierはこの曲でも切れきれのソロを展開している。最後はジャズ・フェスティバルらしくサックス・バトルで大いに盛り上がっていた。このフェスティバルのライブは1回目から全てリリースされていて、ハイレゾも含まれている。軽く聞いて見たが、どれも興味深い内容なので、じっくりと検討したい。ところで、ネットをチェックしていたら、モンクとパノニカの関わり合いについて書かれたサイトを見つけた。とても興味深い内容で参考になる。この中で言及されているBBCのドキュメンタリー「The Jazz Baronnes」はDVD(廃盤)で発売されていたがyoutubeで視聴ができる。ただし、日本語字幕はついていない。時間をとって、じっくりと視聴したい。久しぶりにジャズの歴史に触れたが、ジャズの歴史はいつでも面白い。社会のアウトサイダーであるジャズマンの赤裸々な姿が現れるからだろうか。 Jazz at Berlin Philharmonic IX / Pannonica(ACT MUSIC ACT9889)24bit48kHz Flac1.Thelonious Monk: 'Round Midnight 2.Thelonious Monk: Boliviar Blues 3.Raymond Hubbell & Sonny Rollins:Poor Butterfly 4. Horace Silver:Nica's Dream5. Bud Powell:Celia6.Thelonious Monk / Jon Hendricks: Little Butterfly (Pannonica)7. Thelonious Monk / Sally Swisher:Get It StraightIiro Rantala (p, leader)Dan Berglund (b)Anton Eger (ds)Angelika Niescier (as)Ernie Watts (ts)Charenée Wade (vo)Recorded live in concert by Klaus Scheuermann, at the Berlin Philharmonie (KMS), February 6, 2019
2019年08月30日
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長らく録音をしていなかったポゴレリッチのソニー移籍第一弾が発売された。ハイレゾで配信されていたのでHDtracksから20%オフの$14.4で入手。ポゴレリッチはあまり聞いたことがないピアニストで、CDはないくせに、なぜかDVDだけ持っていた。特異な才能と波乱に満ちた経歴などから、気になるピアニストではあった。1996年の妻の死以来長い低迷期に入っていたことまでは記憶にある。ところが2006年に復活し、最近日本にも定期的に訪れていることは全く知らなかった。このレコーディングはショパンの「スケルツォ」(1998DGG)以来21年ぶりの録音ということで、大きなニュースになっているらしい。曲目はベートーヴェンとラフマニノフのピアノ・ソナタでともに初レコーディングの作曲家だそうだ。ジャケ写では髪を短く刈り込んで、黄色いシャツを着ていたので、なんとなくタイあたりの仏教の僧侶を思い出してしまった。サウンドが極めて明晰で濁りがなくシャープ。これほど明晰な音を聴くのことも珍しい。バスはここぞというところでしか響かせていない。ベートーヴェンは22番と24番「テレーズ」という小ぶりなソナタだが、ポゴレリッチの演奏はスケールが大きい。どちらも他のピアニストに比べると多少遅い感じはする。特に刺激的な表現は聴かれなかった。参考までに、シフの新盤や小菅優、ポリーニなども聴いてみた。シフのように安定感のある(安定しすぎている?)表現ではなく、小菅のような考え抜かれた、言い換えると小細工の目立つ表現でもない。適度にエッジのきいたサウンドが心地よい。アコーギグが独特だが、嫌みを感じさせるようなやりすぎ感はなく、ピリッと来るくらいだ。激しいところはそれなりに激しくメリハリがついている。なので、演奏に身を任せるという演奏ではなく、従来の演奏とは一味違った曲の側面が感じられる。「テレーゼ」の第一楽章はシフと比べると1分半ほど長い。小菅に比べると2分も遅い。全体的にモノローグみたいな思索的な感じで、ポゴレリッチの感情が伝わってきそうだ。ピアノの軽やかで繊細なタッチが素晴らしい。第2楽章の旋律はもともと流麗なものではないが、ポゴレリッチの場合はごつごつ感が目立つ。演奏時間もシフに比べると20秒ほど長い。3分30秒ほどの曲でこの違いは結構大きいが、これは主題の休符を長くとっているためだろう。ラフマニノフは1931年の改訂版を使用。この曲はそれほど聞き込んでいないのだが、しばらく前に、多分グリモーの演奏だったと思うが、第2楽章中間部の息苦しくなるようなロマンティックな表現に気づき、少し気になる曲になりつつある。ポゴレリッチの演奏はことさら強調しているわけではないが、巧まずしてラフマニノフのロマン性が現れている。ただし、暑苦しくはなく、あくまでも透明だ。第2楽章についていえば二楽章が11分程。参考までに聞いたアシュケナージは9分半ほどで、この開きは大きいが、遅いとは感じられない。ここでも思索的で詩的な表現が曲の精髄を表しているかのようだ。第1楽章もアシュケナージに比べて1分10秒ほど長い。あまり遅いとは感じられず、表現の弛緩も皆無。第3楽章もアシュケナージに比べると40秒ほど長い。第3楽章は音の粒立ちがはっきりしていて、アシュケナージよりもスケールが大きい。曲自体は力業で押し切った感があり、表面的でいまいち盛り上がらないのはポゴレリッチでも同じだった。ディストリビューターによると、ポゴレリッチは昔ソニーの盛田昭夫氏から最新リマスタリングされたラフマニノフのCDセットを贈られていて、このセットには今回のピアノ・ソナタも含まれていて、この不思議なご縁をとてもうれしく思っているとのこと。2020年2月に来日が予定されているので、都合がつけば、是非生で観たいものだ。Ivo Pogorelich Beethoven:Piano Sonatas opp. 54 & 78 Rchmaninov Piano Sonata No. 2 op. 36(Sony Classical)24bit 96kHz Flac 1. Piano Sonata No. 22 in F Major, Op. 54 / I. In Tempo d'un Menuetto 2. Piano Sonata No. 22 in F Major, Op. 54 / II. Allegretto 3. Piano Sonata No. 24 in F-Sharp Major, Op. 78, "A Thérèse" / I. Adagio cantabile - Allegro ma non troppo 4. Piano Sonata No. 24 in F-Sharp Major, Op. 78, "A Thérèse" / II. Allegro vivace 5. Piano Sonata No. 2 in B-Flat Minor, Op. 36 / I. Allegro agitato 6. Piano Sonata No. 2 in B-Flat Minor, Op. 36 / II. Non allegro - Lento 7. Piano Sonata No. 2 in B-Flat Minor, Op. 36 / III. Allegro moltoIvo Pogorelich(p)Recorded Schloß Elmau, Germany, September 2016(Beethoven)Liszt-Hall Raiding, Austria, September 2018(Rachmaninov)
2019年08月28日
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だいぶ遅れてしまったが、ブラッド・メルドーの新作について一言。HMVのメールでCDのリリースを知り、HDtracksから速攻でダウンロード。最近、新作がCDとほぼ同じか先行してリリースされることが多くなり、ハイレゾ志向の当ブログとしてはハイレゾがいつ出るか絶えずチェックしする必要ないのは精神衛生的に助かる。すべてがスタジオ内で完結できる配信のほうが原理的には速くできるはずなのだが、そうもいかない事情があるのかもしれない。タイトルのガブリエルは、『旧約聖書『ダニエル書』にその名があらわれる天使。ユダヤ教からキリスト教、イスラム教へと引き継がれ、キリスト教ではミカエル、ラファエルと共に三大天使の一人で、キリスト教美術の主題の一つ「受胎告知」などの西洋美術において、彼は優美な青年で描かれる。最後の審判のときにラッパを鳴らし、死者を甦らせる天使』(wiki)タイトルからわかるように旧約聖書からインスパイアされた作品で、宗教的な癒しと、現代の最先端のヒップホップやエロクトロニカが融合した作品。シンセのOB-6とマーク・ジュリアナのドラムから楽曲を得たという。一聴パット・メセニー・グループのサウンドに近いと思ったが、似ているのはサウンドだけ。ジャズ色は希薄で、もっと広範囲な領域の音楽を志向しているような感じがする。ユダヤ教やキリスト教に理解があれば、このアルバムを深く理解できるだろうが、宗教に無縁な当ブログには想像の域を出ないのが悔しい。「The Prophet Is a Fool」のように子供と大人の会話が入ったプロテスト色の高いナンバーもあるが、全体的には宗教的な清冽な曲が多い。そこにジャズ、エレクトロニクスなどが混じっていて、トリップ・ミュージックのような妖しい音楽になっている。当初メルドーとジュリアナのデュオかなと思っていたが、出入りはあるにしても、ミュージシャンが入れ替わり立ち替わり参加しているので、当初の予想とはいい意味でだいぶ違ってしまった。ヴォイスが参加しているトラック(track 1,3,5,7,8,9)が何ともすさまじい迫力。迫力だけでなく癒しが感じられるのもヴォーカル入りのトラック。このアルバムを聴いて以来、この肉声がなぜ癒しに感じられるかを考えている。楽器の音ではそう思うことはないのに、肉声だと違う。人間の発する音が余計な居雑物なしに伝わるからかと思うが、現時点では納得のできる結論には至っていない。ヴォイスの歌うメロディーが賛美歌のような清らかなメロディーなことも、この感想になった一因ではある。track1,6に参加しているアンブローズ・アキンムシーレのトランペット・ソロも切れる寸前といった感じでかなり説得力がある。「The Garden」のサックス・ソリも切れる寸前のような凶器が感じられ、かなり危ない世界だ。「The Prophet Is a Fool」のMichael Thomasのアルト・ソロもほとんど狂気の世界だ。この中では「Proverb of Ashes」がかなり風変わり。速いテンポで、Snorts" Malibuが演説のような言葉を発している。SOIL & PINMPSのアジテータのような感じだ。後半のメルドーの一人二重唱はスケールが大きく印象に残る。「Prophet Is a Fool」はホーンが複数入っていて最もジャズ色の濃い作品だが、一風変わっている。大勢の人たちのシュプレヒコールと子供と大人の会話、続く中近東風の音楽。木管のソリ、プッツンしそうなテナーソロ。脈絡のないような音楽だが、単調なピアノの和音とせわしないドラムスやホーンの音楽は聴き手の心をざわつかせる。このアルバム中随一の聞き物だろう。タイトル・チューンでも冒頭語りが入るが、これはメルドーの声。このトラックではメルドー単独の演奏。ヴォイス、ピアノなど9種類のパート(何とドラムスまで!)を担当して、独特の世界を創っている。技術が発達しているとはいえ、これだけ壮大な世界を単独で創っていることには驚きしかない。ただしメロディーは月並み。「Born to Trouble」もメルドー単独の演奏で、コーラスが実に清冽で感動的だ。短いトラックだが、癒しを感じさせる作品。「Make it All Go Away」はメルドーとジュリアナのほかにはベッカ・スティーブンスとカート・エリングのヴォイスのみ。カート・エリングが大きくフィーチャーされている。穏やかな音楽だが、温くてアルバムの中では平凡な出来。それにしても、この年代の多くのミュージシャンがそろそろ過去の遺産で食っていこうとしているときに、これほどの挑戦を続けている姿には限りない共感を覚えるものだ。ある種難解な音楽であり、拒絶反応があることを承知のうえで、是非多くのジャズ・ファンの方にお聞き頂きたい。ディストリビューターのコピー『コーラスを効果的に使用し繰り広げられる壮大な一大スペクタクル・サウンドがここに!』はちょっと軽い気がするが、あながち大げさではない。この作品から新曲「The Garden」のミュージックビデオが公開されている。アニメ仕立てで青空に雲や車が浮いていて、天使ガブリエルが飛んでいるというなかなかシュールな作品。最近プロモーションでyoutubeにアップされることが多いが、内容もセッションの風景だけだったり、せいぜいインタビューが追加されるぐらいなものが多い中、ここまでこったものもなかなかない。ノンサッチの力の入れ具合が分かるというものだ。ブックレットに全部ではないがトラックごとにインスパイアされた旧約聖書の言葉が書かれているので、参照していただければと思う。Brad Mehldau:Finding Gabriel(Nonesuch )24bit 88.2kHz Flac1. The Garden2. Born to Trouble3. Striving After Wind4. O Ephraim5. St. Mark Is Howling in the City of Night6. The Prophet Is a Fool7. Make It All Go Away8. Deep Water9. Proverb of Ashes10. Finding GabrielRecorded at Bunker Studios,Brooklyn, between March 2017 and October 2018
2019年08月26日
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昨日、新聞の折り込み広告を見たら、近くのレコードショップの閉店セールのチラシが入っていた。ここは、小型の百貨店みたいなところで、食品から洋服、文具や雑貨まで売られている。その一つがレコードショップで、ここができてから数年後の開店なので、かなり長い間営業していたことになる。当ブログも当初はよく利用していた。家から歩いて数分であり、ポイントが付くのが魅力だった。通販を利用することが多くなってからは、あまり利用していないが、国内盤を購入するときは時々利用していた。時々セールがあるのも有り難かった。閉店理由は、同じフロアの文房具売り場の拡張ということだったが、売り上げが少なくなっていることが大きかったと思う。子供がバイトをしていたことがあり、話しを聞くこともあった。午前中のお客さんは主にお年寄りで、誰それのCDが欲しいとか、いろいろ相談されることが多かったそうだ。お年寄りはネット通販を利用するのは難しいだろうし、こういうところがなくなると、CDを入手する事ができなくなる。この大型店がなくなると、CDを買いたい時は、小さな楽器店に頼むしかなくなる。もちろん陳列されたCDを見る楽しみもなくなる。彼らにとっては大問題に違いない。こうなると頼みはネット配信しかなくなるが、お年寄り向けの歌謡曲などは期待できないし、そもそもリクエストする仕組みにはなっていない。前提となるネット配信を聞くことができるようになることもハードルが高い。音源がいつまであるかも配信元やレコード会社の都合次第で、自分が主体的にできる範囲が限られている。閑話休題閉店セールが40%から60%オフだったので、開店直後に行って見た。開店直後とはいえ、結構混んでいた。新譜は勿論割引の対象ではないので、お目当のチックコリアのtrilogy2も当然割引ではなかった。それでも廉価版を6枚購入した。¥1200-¥1500だったが、会計が税込で何と¥1800程。一枚あたり約¥300程と激安。こんなに安くていいのかと思いつつ、支払いを済ませた。念のため注文はこれからもできるかと聞いたら「当然出来ません」という回答。聞いた方も間抜けだが、わかり切ったことを聞くなという店員の怒りが伝わってきて、何とも寂しかった。映画のサウンドトラックをチェックしなかったので、明日も見に行こうと思うが、あまり期待はしないほうがよさそうだ。何はともあれ、長い間の営業お疲れ様でした。
2019年08月23日
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ベルギー生まれのクラリネット奏者アンネリエン・ヴァン・ヴァウヴェの2枚目のアルバムを聴く。2012年にミュンヘン国際音楽コンクールで優勝後、英BBC選出の“新生代アーティスト” やボルレッティ=ブイトーニ財団アワード2018を受賞するなど、イギリスを中心として活躍が目覚ましいクラリネット奏者だそうだ。今回はpentatoneとの専属契約の第一弾でクラリネットと管弦楽が組み合わされ楽曲が集められている。技術的に無理を感じさせるところはなく、完全にコントロールされている。この上もう少し渋い音色を望むのは欲張りすぎかもしれない。聴いたことのない曲がならんでいるが、どの曲も魅力的だ。注目は、ドイツ人作曲家のマンフレート・トロヤーン(1949-)のラプソディ(世界初録音)だろうか。彼はカール・ハインツ・ツェラーにフルートを、ジョルジュ・リゲティらに作曲を学んでいる。「ラプソディ~クラリネットとオーケストラのための」はフランス音楽へのオマージュで、協奏曲より軽いイメージで作曲したとのこと。「Reverie」(夢想)、「Intermedeavec valseamusette」(ヴァルス・ミュゼットの間奏曲)、および「Caprice」(奇想曲)の3つの部分で構成されている。バルス・ミュゼットはフランスのアコーディオン中心のバンドで演奏される活発なワルツの一種だそうだ。フランス音楽へのオマージュなので、ドイツ音楽ほど固くはないが、生真面目な感じは残る。「Reverie」は3つの中では一番シリアス調だが、なかなか面白い音楽だ。「Intermede avec valse a la musette」はかなり遅いテンポの中でクラリネットが歌う。ミュゼットの音楽が不協和音で入ってくるところから俄然面白くなる。「Caprice」はかなりテンポの速い曲で、クラリネットの妙技が楽しめる。金管のミュートやホルンのゲシュトップなどが使われていて、結構刺激的な音楽。後半はテンポが遅くなり、クラリネットと他の木管との二重奏が楽器を変えながら続く。この部分ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」の夢幻的な気分を思い起こさせる。エンディングはテンポが速まり短く終わる。個人的に最も注目していたのはブラームスのクラリネットソナタ第1番。ピアノ・パートをべリオがどのようにオケ用に編曲しているかに興味があった。以前マーラーの「若き日の歌」のベリオの管弦楽伴奏版で聞いたときに、べリオの編曲のすばらしさが印象に残っていたからだ。この曲はあまりなじみがないが、ブラームス最晩年の枯れた心境が反映された作品という認識だった。ところが以外にもべリオの編曲によって、その諦観した気分がだいぶ後退しているような感じがする。たとえて言えば、晩秋の茶色と黄色の交じり合った枯葉の色から、急に季節が逆戻りしたような若々しさが感じられるのだ。ブラームスの「セレナード」を聴いているときに似た気分になった。原曲が難渋で深刻になりがちなところが、だいぶやわらげられて、親しみやすくなっている。これがいいかどうかは議論の余地があるが、少なくともこの曲を深く理解するのにとても役立つ編曲と思う。当ブログとしては、第2、第3楽章の美しい歌と柔らかい感触が気に入った。シャルル=マリー・ヴィドール(1844-1937)はシャルル=マリー・ジャン・オベール・ヴィドールはフランスのオルガン奏者・作曲家だそうだ。「序奏とロンド Op.72」(1989)はパリ音楽院の試験曲として委嘱された作品。ベルギーのフルーティストで、作曲家のイエーレ・タジンズ(Jelle Tassyns 1979-)の管弦楽編曲版はふんわりと柔らかく、しゃれていて、冒頭のフルートの旋律から引き付けられる。曲自体もストーリー性があり、とても楽しめる。同じタジンズ編曲のピエルネの「カンツォネッタ」(小歌曲)は3分余りの小品。旋律がしゃれていて、クラリネットの歌謡性と甘さが発揮されている。ここでのタジンズの編曲もおとぎの世界のような雰囲気で実にセンスがいい。1曲目のドビュッシーの「第1狂詩曲」(1910)も「序奏とロンド」と同様に委嘱作品だった。この曲の従来の印象はちょっときつい感じの曲というもの。この演奏では、速いパッセージも滑らかそのもので、高音域も完全になりきっている。とても自然な演奏で、従来のイメージを抜け出している。アレクサンドル・ブロック指揮のリール国立管弦楽団は、ソロを優しく包み込むようなサポートが素晴らしい。リール国立管弦楽団が時折聞かせる古のフレンチ・サウンドもなんとも懐かしい。ということで、クラリネットと管弦楽の珍しい作品が集められたアルバムだったが、クラリネット業界の人たち以外の一般のクラシック・ファンの方たち楽しめる、しゃれたアルバムだ。Annelien van Wauwe:Belle époque(pentatone PTC5186808)DSF 2.8MHzClaude Debussy (1862-1918)1.Première Rhapsodie (1910/1912)Manfred Trojahn (1949)2.Rhapsodie pour clarinette et orchestre (2002) (world-premiere recording) I. Rêverie II. Intermède avec valse à musette III. CapriceGabriel Pierné (1863-1937) (arr. Jelle Tassyns)5.Canzonetta (1907)Johannes Brahms (1833-1897) (arr. Luciano Berio)Clarinet Sonata No. 1, Op. 120 in F Minor (1894) I. Allegro appassionato II. Andante un poco adagio III. Allegretto grazioso IV. VivaceCharles-Marie Widor (1844-1937) (arr. Jelle Tassyns)10 Introduction et Rondo, op. 72 (1898)Total playing time:Annelien Van Wauwe(cl)Orchestre National de LilleConducted by Alexandre Bloch(cond)Recorded December 2018,the Auditorium of Le Nouveau Siecle, in Lille
2019年08月22日
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先週HNKFMでジャズ・マイルスという番組が8月13日から8月17日まで5日間にわたって放送された。放送が0時からなので、リアルタイムで聞く根性はなく、今までらじる★らじるの録音をしたことがないので、いい機会なので試してみた。最初はどがらじをインストールしたのだが、番組表が出てこなくて、あっさり断念。次に試したのは「Radikool」というもの。音を出したくなかったが、方法が分からないので、PCのサウンドをミュートして録音。何とか録音はできたのだが、最初に信号音みたいなのが録音されていて、興ざめ。この部分を切断したいのだが、サウンドを加工するソフトを入れなければならないので、今のところ後回しになっている。準備が遅かったので、後半の3回分しか録音できなかった。気になるのは予約時間の前にPCがスリープしたときに、録音時間が6:45:47と表示された回があった。理由は不明で、Flacへの変換もできなかった。何かのトラブルなのだろう。ちゃんと聞いていないが、ジャズの部分は取り立てて目新しいところはない。ところが、マイルスに影響を与えた他の分野のポピュラー音楽が紹介されていて、それがなかなか興味深そうなので、これから注意深く聞いてみることにしたい。音楽ジャーナリスト?の小川隆夫がMCを担当してたが、声がいまいち明瞭さに欠ける。話も冗長だ。故油井正一や児山紀芳の歯切れのよいDJが懐かしい。音自体はあまりよくないが、こんなもんだろう。アンプを通さないPCの音がふさわしい。聞き逃した最初の2回が聴けるか探したが、ラインナップには載っていなかった。残念。
2019年08月20日
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いつぞや聴いて以来ぞっこんのカラブリア・フォーティの2年ぶりの新作を聴く。今回も期待を裏切らないというか、現時点での最高傑作だろう。ピアノ・トリオのほかにギターやトロンボーンなどが加わる。ホルンを含む木管、ハープが加わったストリングスまでが入っているという豪華な布陣。ホルン吹きとしては、ホルンが4本揃えられているのが嬉しい。フォーティのヴォーカルは今までと同じムーディーなシルキーヴォイス。それだけでうっとりとしてしまうヴォーカルのほかに彼女自身の作品が1曲、アレンジは共作を含め5曲。ほとんどがスロー・バラードだが、演奏はもちろん、編曲が優れている。フィーチャーされるソロも粒よりで、彼女のヴォーカルを支えている。最初のエリントンの「Prelude To A Kiss」から実にムーディー。バックも羽毛のような柔らかいサウンドで、夢心地の気分。夫君のボブ・マクチェスニーのトロンボーン・ソロも柔らかいサウンドで実に心地よい。ミュージカル「マイ・フェア・レディ」からのナンバー「君住む町で」はバックがピアノ・トリオ。軽快なテンポで、中間部で珍しくスキャットも聴かれる。このスキャットが実に滑らかで、もっと聴きたくなる。エヴァンスの「Waltz for Debby」が取り上げられることは珍しい。早めのテンポで、さらっと歌っている。「Goodby」はカラブリア自身の作品。他の重厚な曲とは違って、ラテン・パーカッションが入った、明るく軽快な曲。「The Man With The Horn」はたぶん聞いたことのない曲だが、実にしっとりしていい。マクチェスニーはここでもツボにはまったトロンボーン・ソロを聞かせてくれる。「It's The Mood That I'm In」はジョン・ピザレリがギターの弾き語りで共演している。エンディングでハモルところはなかなかしゃれているので、ハモル部分がもっと多かったらと思わずにはいられない。ロジャー・ケラウェイのピアノはしっとりとして、カラブリアのバックとして誠にふさわしい。「 Backyard Medley 」はスイング・ナンバーのメドレーを軽快なテンポで歌っている。カラブリアの趣味の良い編曲で、昔のヒット曲が蘇っている。エンディングの「I'm Home」は原曲がアーロン・コープランドの「Letter from Home」(1944)母の死を悼んで書かれた管弦楽曲で、ひなびた田舎の風景も感じられる。カントリー風のフェイクが入るが、淡々とした歌唱とロジャー・ケラウェイの端正なピアノが静かな感動を呼ぶ。track1とtrack10でヴァイオリン・ソロが聴けるが、なんとカラブリアが弾いている。録音するぐらいなので、腕には自信があるのだろうが、ヴォーカルとヴァイオリンの二刀流とは珍しい。track10はアドリブのようだが、スインギーで余技とは思えないほどだ。彼女のサイトにPVがアップされているが、今までのジャケ写のイメージよりも老けていて、少しがっかりしてしまった。化粧濃すぎ。Calabria Foti:Prelude To A Kiss(MoCo Record MoCo 23-06)1. Duke Ellington(arr. Bob McChesney):Prelude To A Kiss2. Richard Fote:I Had To Fall In Love With You3. Alan Jay Lerner/Frederic Low(arr. Calabria Foti):On The Street Where You Live4. Bill Evans/Gene Lees(arr. Calabria Foti):Waltz For Debby5. When I Look In Your Eyes6. Calabria Foti(arr. Bob McChesney):Goodbye7.Jack Jenney/Bonnie Lake/Edie DE Lange(arr. Jorge Calandelli): The Man With The Horn8. Backyard Medley(arr. Calabria Foti) Al Jolson/Bily Rose/Dave Dreyer:Back In Your Own Blackyard(1928) Rube Bloom/Harry Ruby:Give Me The Simple Life(1945) Luis Hirsch/Otto Harbach:The Love Nest(1920)9. Jerome Kern(arr. Jeremy Lubbock)The Folks Who Live On The Hill10. Aber Silver/Al Sharman:It's The Mood That I'm In11. Michael Deets(~Letter from Home by Aaron Copland arr. Bob McChesney):I'm Home Calabria Foti (vocal, violin solos Track 1, 10)with Strings OrchestraRoger Kellaway (p)Trey Henry (b)Peter Erskin (ds)Larry Koons (g, Tracks 2,4,10)Bob McChesney (tb, Tracks 1,5,7)George Doering (g, Track 6)Luis Conte (perc, Track 2, 6)John Pizzarelli (vo, g, Track10)
2019年08月18日
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ウイントン・マルサリスのヴァイオリンのための作品集が、なんとDECCAからリリースされた。ヴァイオリンはスコットランド出身の二コラ・ベネディッティで、協奏曲は彼女のために書き下ろされたとのこと。マルサリスのクラシック作品なんて、びっくりしてしまった。作曲で後世に名を遺すということを考えているのだろうか。演奏の記録では百年もたないことを考えると、作曲のほうが残る可能性が高いので、そう考えてもおかしくない。あくまでも当ブログの推測だが。。。。ヴァイオリン協奏曲は純粋にクラシックの作品で40分を超す大作。ところどころにジャズの香りはするが、ビッグバンドに聞かれる粗暴といってもいいような、黒っぽさはあまり感じられない。他のジャンルの人間が作曲したときに感じられる様式上の違和感や、技術的な未熟さも全く感じられない。そういう意味では、スタイルは決して新しくはないが、一流作曲家のクラシック作品に引けをとらないし、かなり洗練された作品だと思う。ヴァイオリン協奏曲の冒頭はコルンゴルドを思わせる濃厚な雰囲気が感じられる。全体的にはバックは控えめで、多彩なテクニックを交えた、艶やかなヴァイオリンが活躍する趣味のいい作品だ。マルサリスのジャズ作品の特徴である、ニューオーリンズの香りはあまり強くない。また、古き良きアメリカの雰囲気が感じられるが、決してノスタルジックには陥らない。第2楽章はケルトの音楽の濃厚な雰囲気が漂っている。第3楽章はタイトル通りブルースの気分が濃厚だが、ここでも、どっぷりとブルースに漬かっているいるという気分ではなく、あくまでも爽やか。時々、トランペットのアップグリスのフレーズが入って、ミンガス風になるところは、ジャズファンなら思わずにゃっとする瞬間だ。ガーシュインを聴いているような、おしゃれな部分も垣間見られる。第4楽章の「フーテナニー」は「観客参加型のコンサート」」という意味だそうだ。「フーテナニー」といえば吹奏楽関係者なら一度は演奏したことのあるのがハロルド・ワルターズの作品。youtubeで確認したら、いろいろな音楽がごちゃ混ぜになった、アメリカのノスタルジックな気分が味わえる曲だったことを思い出した。マルサリスの作品は楽しさはあるが、クラシックらしく、節度のあるはじけ方だった。全体に軽い仕上がりだが、いわゆるライト・クラシックではなく、ヴァイオリンの魅力が詰まった曲で、聞き終えた後は爽快な気分になる。ウイットにも富んでいる。バックの涼やかなサウンドも魅力的だ。難しいところはなく、頭を空っぽにして聞くのがいいと思う。フィドル・ダンス組曲は無伴奏ヴァイオリンのための5曲からなる組曲。スコットランドの雰囲気が濃厚で、古くから伝わるフィドル奏法を生かした作品。ブックレットにはマルサリスの曲目解説が載っていて、それによると第3曲の「Jones' Jig」の「Jones」とはジャズ・ドラマーのエルビン・ジョーンズのことだそうだ。アイルランドのジグ、アフリカの6/8ベルパターン、ジャズのシャッフル&リズム、などを駆使したエルビンのプレイスタイルにヒントを得た作品。最後の「Bye Bye Breakdown」は土曜日に行われる納屋の踊りの情景を描いている。エンディングの足を踏み鳴らして音はダンサーの靴の音だろう。この組曲全体がリズム的に大変難しい曲のように感じられるが、ベネディッティはそれを全く感じさせず、生き生きとした音楽を作り上げている。ディストリビューターのコメントでは「ジャズ・ファンにもクラシック・ファンにも新たな世界を提示するクロス・ジャンル、クロス・カルチャーの新作」と持ち上げているが、先入観なしに聞いてほしい。早急な評価は控えなければならないが、アメリカ人が好きそうな音楽で、グラミー賞を受賞してもおかしくない作品だろう。Nicola Benedett:WYNTON MARSALIS Violin Concerto & Fiddle Dance Suite(DECCA )24bit 96kHz FlacWynton Marsalis (1961-):1.Violin Concerto in D Major Rhapsody Rondo Burlesque Blues Hootenanny5.Fiddle Dance Suite Sidestep Reel As the Wind goes Jones' Jig Nicola's Strathspey Bye-Bye BreakdownNicola Benedetti(vn)Philadelphia Orchestra, Christian Măcelaru(track 1-4)Recorded: 2017-11-04Recording Venue: Kimmel Center for the Performing Arts Verizon Hall, Philadelphia(track 1-4)The Menuhin Hall, Stoke D’Abernon, Surrey, 27 March 2019(Track 5-9)
2019年08月16日
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大西順子の新作ライブを聴く。前作の「Ⅻ」のハイレゾのリリースをずっと待っている。ロスレスは先月末にやっとリリースされたが、ハイレゾはいまだにリリースされない。そんな時に、JAZZ JAPANを見たら、ライブアルバムがリリースされることを知った。最近の彼女のアルバムはDIWレーベルからリリースされているので、このアルバムもハイレゾがいつ出るかわからない。moraに問い合わせたら、新譜のリリース情報を見ろという木で鼻をくくったような回答が来た。新譜情報なるものを見たが、そこには載っていない。所詮は問い合わせ窓口なのでそんなものかもしれないが、具体的に出る出ないを教えてほしかった。それによっては、こちらの印象も全く違うものになっていただろう。moraがそうかわからないが、問い合わせ窓口が外注されていることも多いので、そんなものかもしれない。まあ、業務の目的が多数のユーザーの問い合わせをスピーディにこなすことだろうから、仕事の評価としてはそれでいいかもしれないが、やっつけ仕事としか思えない。おかげでmoraの印象が一気に悪くなってしまった。閑話休題今回のアルバムはデトロイト出身のカリーム・リギンスとロバート・ハーストとの共演。なずけて「JATROIT」と称している。「JATROIT」はJAPANとDETROITから作られたカリーム・リギンスによる造語。カリーム・リギンスとはアルバム「『フラジャイル』やライブで共演経験があるが、ロバート・ハーストとの共演は初めて。大西が共演を熱望していたとのこと。大西自身のメッセージがブルーノート東京のサイトに載っている。「どんなことがあってもぜひ世界最高峰のリズムを体感してください!これが最後のチャンスと思って!!」ミュージシャンがここまで言うのは、めったにあることではないので、今回の演奏にいかに自信を持ているかが分かる。オープニングとクロージングはカリーム作の「Harpsichord Session」が使われている。本来はハープシコードを使うらしいが今回はピアノ。イントロがオーストラリアの作曲家グレインジャーの「ガム・サッカーズ・マーチ」という吹奏楽曲にそっくり。他の曲とは異質で、あまり面白くないし、もっと短くてもよかった。次はミンガスの代表作の一つである「メディテーションズ」大西はミンガス・フリークで、この曲も「バロック」で取り上げられていた。ロバート・ハーストによるピチカート・ソロからアルコでのメロディーが続く。アルコ・ソロのピッチがよく、ミンガスの作品としてはソフィストケートされた印象。大西のピアノは頑張っているが、細身のサウンドで往年のダイナミズムは失われた感じがする。自身が語っているように、年のせいだろうか。大西の前作「Ⅻ」に参加していたトランぺッターの広瀬未来がこのアルバムのために書き下ろした「Morning Haze」は抒情的なイントロに始まるが、テーマがシンコペーションのリズムで、なかなか曲者だ。ピアノ・ソロでは次第に高揚していく部分は素晴らしく、ピアノソロにおける大西の高度なテクニックも聞きものだ。ただ、他の強烈な作品の陰に隠れて少し影が薄い。大西の「The Threepenny Opera」は「バロック」でも演奏されていた曲。これも昔の強烈なドライブ感が薄れ、ソフィストケイトされた感じがする。いつものお約束の盛り上げパターンも入っている。後半のストライド・ピアノ風のソロは、なかなか楽しませてくれる。「Very Special」は2017年にリリースされた同名のアルバムでも演奏されていた。今回のアルバムでは唯一のバラードで一息つける。モノローグ風のピアノ・ソロが味わい深い。ただし、少し感傷的でべたべたしている感じがする。当ブログとしては、もう少し乾いた感じに仕上げてくれると嬉しい。菊地成孔の「GL/JM」は大西の「Tea Times」(2016)で取り上げられていた曲。今回のアルバム随一の力演。中間部のピアノ・ソロのバックで繰り広げられるカリーム・リギンスのドラムスの目の覚めるようなプレイも素晴らしい。ベースとドラムスは大西が激賞するまでもなく、申し分のない出来。録音はS/Nが良く、会場ノイズも少ないが、もう少しオンマイクで録って欲しかった。低音域も物足りない。NOVOLによるカバーアートは、トリオの熱気がダイレクトに伝わって来るような、一度見たら忘れられない強烈な印象を与える。ところで、アマゾンのレビューで一つ星のレビューがあった。タイトルが「上原ひろみになれない……………」『デビューから一貫して………。まあ、パチモンですわ。』と書かれている。聴きなれない言葉だが、パチモンとは偽物のことだそうだ。上原ひろみの偽物というのだったら、まったく的が外れている。そもそも芸風が全く違うし、大西のキャリアが上原よりもずっと長いことはジャズ・ファンなら当然知っていることだ。レビューアーの意見とはいえ、久しぶりにむかついた。JUNKO ONISHI presents JATROIT Live at BLUE NOTE TOKYO featuring ROBERT HURST & KARRIEM RIGGINS(SOMETHN' COOL SCOL-1034)1.カリーム・リギンス:Harpsichord Session -Opening2.チャールズ・ミンガス:Meditation (For A Pair Of Wire Cutters) 3.広瀬未来:Morning Haze4.大西順子:The Threepenny Opera5.大西順子:Very Special6.菊地成孔:GL/JM7.カリーム・リギンス:Harpsichord Session -Closing大西順子(p)ロバート・ハースト(b)カリーム・リギンス(ds)2019年2月ブルーノート東京でのライブ
2019年08月13日
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eclassicalで日替わりで実施されている半額セールで購入した一枚。ベルリン・フィルの木管5重奏団による演奏で2004年と2006年の録音。有名なプーランクのピアノと木管5重奏のための「6重奏曲」のほかにジョリベ、トマジ、それにクロード・ポール・タファネルの5重奏というフランス人作曲家の作品が集められている。プーランク以外は聴いたことのない曲だったが、耳になじみやすい曲ばかりで、とても楽しめた。クロード・ポール・タファネル Claude Paul Taffanel(1844-1908)という方はフランスのフルート奏者で作曲家、フルートのフランス楽派の創始者とのこと。結構近代的で、最近作られた作品といってもおかしくない。ウォームなサウンドと明快な曲想で、とても聴きやすい。アンリ・トマジ(1901-1971)の「世俗と神聖な5つの踊り」は5曲の2分から3分の短い曲集。力の抜けたフランス人らしい軽妙な語り口が嬉しい。プーランクとのサウンドの近似性も感じられる。時として近代的な響きが感じられるのがモダンだ。第5曲の「Danse guerriere」では珍しくファゴットが目立っている。アンドレ・ジョリヴェ(1905-1974)の「セレナード」(1945)は原曲がオーボエとピアノのために書かれていて、のちにピアノのパートをフルート、クラリネット、ホルン、ファゴット用に書き直された。他の曲とは少し毛色が違っていて、都会的なクールな雰囲気がする。オーボエが主役とはいえ、他の楽器のカラフルなサウンドも聞きものだ。プーランクの6重奏はスティーヴン・ハフのピアノとの共演。この曲の場合、鋭い表現をする演奏もあるが、この団体の演奏はいい意味で刺激が少なく、練られたサウンドが楽しめる。ともすればホルンが突出しがちになるが、今回は他の楽器とのバランスがよく、余計なことを考える必要がないのが、精神衛生上とてもいい。ハフのピアノもアンサンブルに溶け込んでいて、申し分ない。ベルリン・フィルのアンサンブルの団体は数多くあるが、今回の団体はベルリン・フィルの歴史上初めての定常的なアンサンブルで、1988年に創設されたそうだ。アンサンブルがまとまっていて、一つの楽器が突出することもなく、アンサンブルを聴く楽しみとしては最適な団体だろう。競合する演奏がどのくらいあるかはわからないが、プーランクを含め十分満足できる演奏だった。Berlin Philharmonic Wind Quintet:Danses et Divertissements(BIS-1532 SACD) 24bit 96kHz Flac1.Claude Paul Taffanel:Quintette en sol mineur pour instruments à vent 4.Francis Poulenc:Sextuor pour Piano et quintette à vent 7.André Jolivet:Sérénade pour quintette à vent avec hautbois principal 11.Henri Tomasi:Cinq Danses Profanes et Sacrées pour quintette à vent Stephen Hough(p track 4-6)Berlin Philharmonic Wind QuintetMichael Hasel(fl)Andreas Wittman(ob)Walter Seyfarth(cl)Furgus McWilliam(hr)Henning Trog(bsson)Rcoded December 2004(Poulenc),May 2006(Other Works) at The Kammermusiksaal,Philharmonie Berlin,Germany
2019年08月10日
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最近ウイントン・マルサリス率いるリンカーン・センター・オーケストラのCDが定期的に出ている。音源はコンサートのライブでレーベルはこのバンドの自主レーベルであるBlue Enine Records昨年後半にもサルサの巨匠ルーベン・ブラデスとの共演版をリリースしていた。メジャー・レーベルからのリリースではないので露出は少ないが、当ブログは以前から気が付いたときに購入している。話題には上がらないが、技術的には最高水準であり、あとは楽しめるかどうかだ。かつてのウイントンの音楽と同じように評価が分かれるだろうが、今回は素晴らしい演奏で、多くの方に評価される内容だろう。今回のリリースは、8/2に出たばかりで、出来立てのほやほや。Prostudiomater(加)から税込み$16.26で購入した。カナダドルなので約\1300と激安。CDしかない時代だったら、苦労して集めたものが、今では本国で発売と同時に安く買えるというのは、本当にいい時代になったものだ。コレクターは希少品を苦労して探して探して手に入れるというのも一種の楽しみだろうが、今となってはレア物以外はその苦労が懐かしく感じられる時代になってしまった。今回の演奏はラテン+ニューオーリンズ・ジャズ+エリントンみたいな感じの、最近の彼らの追及している音楽の一つだが、わかりやすい音楽でとても楽しめる。テーマは作曲家がアメリカで活躍した画家たちの絵にインスパイアされた曲を集めたもの。当ブログは知っている画家はロメール・ベアデンくらいなものだ。ブランフォード・マルサリスが「Romare Bearden Revealed」というアルバムでトリビュートしていたので覚えている。インスパイアされた画家は、以下の5人。Stuart Davis(1892–1964)Sam Gilliam(1933-)Romare Bearden (1911–1988)Wifredo Lam (1902-1982)Winslow Homer (1836-1910) Piet Mondrian1872-1944)Norman Lewis(1909-1979) CDではどうなっているかわからないが、インスパイアされた作品がなんであるかが分かると、有難かった。どの絵が該当するかはわからないが、ネットで検索すると沢山ヒットするので、是非参照していただきたい。メンバーのソロはばらつきがなく高水準。最初の「Stuart Davis for the Masses」は3曲からなる組曲。第1曲はラテン色がかなり強いが、ヴィンセント・ガードナーのトロンボーン・ソロが強力。「New York For Stuart Davis 」はダン・ニマーのピアノのソロがフィーチャーされているが、存在感が薄く、ホーンに負けている。「Blue Twirl For Sam Gilliam」がエリントン色が濃く、エリントン風の分厚いハーモニーと黒人の体臭が感じられる。「Bearden (The Block)」の後半で歌っているのはウイントンだろうか。「Air, Earth, Fire, Water」はパカッションがフィーチャーされたエリントンのジャングル・スタイルの曲。他の曲とはちょっと毛色が違い、シリアス調。個人的には、あまりあまり面白くなかった。ウイントンのジャングル・スタイルのトランペットが炸裂する。ギタリストのビル・フリーゼルの「Homer’s Waltz」は、アメリカ写実主義の代表的な画家のひとりであるウィンスロー・ホーマーにささげられたワルツで、まったりとした雰囲気とエリントン風の分厚いハーモニーが心地よい。ビル・フリーゼルはマッカートニーやポールサイモンなどの録音セッションでウイントンとは共演しているようだが、ジャズ畑での共演はあるのだろうか。同じくフリーゼルの「Homer’s Blues」での速いフレーズのテクニカルなソリは聴きもの。Walter Blandingのテナーの音がバスクラみたいな太い音を出していて面白い。「The Repose in All Things」は穏やかなイントロから始まり、途中からスピーディーな展開になる。リズミックなテーマが印象的で、このアルバムでは最もビッグバンドらしい作風の曲。アルトとトランペットのソロも軽快だ。最後のノーマン・ルイスにささげられた「Twilight Sounds」 はニューヨークの喧騒を思わせるような掛け合いにはじまり、近代的な都市としてのニューヨークの冷たい肌触りや、ジャングル・スタイルまでで出てくる。さしずめジャングルのような混沌とした都市ということであろうか。ビクター・ゴインズのバスクラ・ソロがいい。なお、スペシャル・ゲストの中に佐渡岩男という方の名前がクレジットされていた。バタ・ドラムス(Bata drums )というキューバの両面太鼓の担当の一人で、こういうところで日本人の名前を見つけるのはとて嬉しい。 The Jazz at Lincoln Center Orchestra with Wynton Marsalis :JAZZ AND ART(Blue Enine Records)24bit 96kHz Flac 1. Doug Wamble :Stuart Davis for the Masses: The Mellow Pad For Stuart Davis Solo: Vincent Gardner (tb) 2. Doug Wamble:Stuart Davis for the Masses: Garage Lights For Stuart Davis Solo: Marcus Printup (tp), Sherman Irby (as) 3. Doug Wamble:Stuart Davis for the Masses: New York For Stuart Davis Solo: Dan Nimmer (p) 4. Vincent Gardner:Blue Twirl For Sam Gilliam Solo: Wynton Marsalis (tp), Ted Nash (as), Elliot Mason (tb) 5. Chris Crenshaw:Bearden (The Block) For Romare Bearden Solo: Dan Nimmer (p), Victor Goines (ts) 6. Papo Vasquez :Air, Earth, Fire, Water (Orisha Medley) For Wifredo Lam Solo: Papo Vazquez (tb), Wynton Marsalis (tp) 7. Bill Frisell(arr. Andy Farber) :Winslow Homer: Homer’s Waltz For Winslow Homer Solo: Walter Blanding (ts) 8. Bill Frisell(arr. Andy Farber) :Winslow Homer: Homer’s Blues For Winslow Homer Solo: Wynton Marsalis (tp), Walter Blanding (ts), Dan Nimmer (p) 9. Tim Armacost :The Repose in All Things For Piet Mondrian Solo: Sherman Irby (as), Ryan Kisor (tp) 10. Sherman Irby :Twilight Sounds For Norman Lewis Solo: Victor Goines (bass cl), Wynton Marsalis (tp) THE JAZZ AT LINCOLN CENTER ORCHESTRA WITH WYNTON MARSALIS SPECIAL GUESTS: Papo Vazquez(tb) Iwao Sado, Xavier Rivera,Anthony Carrillo( Bata drums)
2019年08月06日
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少し前にミュージック・ストア・ジェイピーで恒例のバーゲンを行っていたので、何枚か買おうと思っていた。目星をつけたCDを念のため他のサイトでチェックしたらずっと安かったので他のサイトから購入した一枚。一枚といってもCD相当のダウンロード音源。いつものPresto Classicalでダウンロード音源があったのでプレストから購入。価格は\1340でブックレットが付かないとはいえ、ミュージックストアジェイピーよりも\700ほど安い。ただ、hafabraミュージックのサイトではプロモーション価格とはいえCDが€4.14と激安。待っても構わないときは、こちらのほうがお得。ガーシュインの「ガール・クレージー」は華やかで、ブリッジもウイットに富んでいて、吹奏楽臭くないところが嬉しい。当ブログとしてはポピュラー音楽の吹奏楽へのアレンジは、あまり真面目腐らないで、ショーマンシップに溢れたアレンジがいい。マンシーニの「ポップスコンサートへの序曲」は格調が高く、コンサートを期待する聴衆のワクワク感が充満したとてもいい曲だ。ボストンポップス創立100年を記念して1985年に作曲されたそうだ。こんないい曲をマンシーニが作っているとは思わなかった。データをチェックしようとしたら、作曲者がロイヤル・フィル・ポップス・オーケストラと録音した画像が出てきて、昔よく聞いていたCDに含まれた曲だった。(Premire Pops DENON)シュトラウスの「ティル・・・」は期待していなかったが、ソロ・ホルンはじめメンバーの力量が高く、オケの演奏と対等に勝負できる演奏だった。吹奏楽ならではの貧弱さもほとんど感じられないし、吹奏楽編曲版では随一の演奏と編曲だろう。もう少しサウンドにエッジが立っていればと思うが、管楽器なのでそこまで要求するのは酷なことだろう。フランスのアレクサンドル・コスミッキ(1987- )の「Movements freneques」はなかなかオシャレな曲。ところどころユーモアが感じられ、後半のダイナミックな盛り上がりもあり、とても楽しめる。以前ギーデの録音で「悪魔のダンス」が録音されているが未聴だったので、聴いてみたい。タイトルのアダムゴーブの「パイクス・ピーク」は北アメリカ大陸・ロッキー山脈にある山のひとつ「パイクスピーク」を通っている”世界一高い登山鉄道”と言われるパイクス・ピーク・コグ鉄道をテーマに書かれた作品。勾配を上る鉄道、生い茂る森林を抜け、車窓に迫る巨大な岩肌、見渡す限りの空が広がる山頂などが3曲からなる組曲で描かれている。最初の曲のリズムが「汽車ぽっぽ」の~なんだ坂こんな坂~のくだりのリズムにそっくりで、イギリス人もそう感じるというのは新しい発見だった。イギリスのライト・ミュージックの作曲家として名高いエリック・コーツの「Calling All Workers」は「全労働者諸君」という勇ましいタイトルだが軽快で、昔の吹奏楽の様さがあ味わえる。ただ、一部乱れた部分があるのがなんとも不可思議。以前NAXOSから彼の吹奏楽のための作品集がロイヤル・アーティレリー・バンドの演奏で出ていて、発売当時よく聞いたものだが、その演奏と比べると、ずいぶんと華やかで軽快な演奏だ。オランダの作曲家ハーディ・メルテンス(1960-)の「Requiem for a future war」物騒なタイトルだが、昨年の3月15日にニュージーランドのクライストチャーチのモスクで発生した、銃乱射事件を題材にしたレクイエム。ドラマチックで悲劇的なイントロから始まり、暗く躍動的なリズムが支配する前半、銃撃の描写だと思われる激しく荒々しい中間部、後半次第に明るさが見え、祈りに満ちた旋律が現れ、高揚するかにみえるが、突然銃声が響き、残るのは沈黙のみ、みたいな展開になる。さらに、エンディングはダメ押しのように銃の音を模したムチのぱちぱちとした音が鳴り響き突然終わってしまう。youtubeには詩がついているが、この曲との関係は不明。あまりにも生々しく、遺族にとってはたまらない音楽だろう。最後のJohannes Stertの「Wer ist Elise?」は「エリーゼのために」のパロディーだろうが重々しい部分が足を引っ張っているし、風刺がいまいちで、あまり面白くない。アレンジ作品の編曲はジョゼ・シンス José SCHYNS(1959-)。彼はベルギーで最も優れたトロンボーン奏者の一人だそうだ。センスが良く、どの曲も楽しめる編曲だ。録音はダークなサウンドだが、お団子状態で各楽器の分離がいまいち。なので、アップコンバートしてもあまりいい音にはならなかった。試しにDSF5.6Mに変換してみたが、あまり変わらなかったのは残念!The Royal Symphonic Band of the Belgian Guides:Pikes Peak(Hafabra Music 89157-2)16bit 44.1kHz Flac1.I Henry Mancini(arr. José Schyns):Overture to a pops concert MANCINI Henry 2.Richard Strauss:Till Eulenspiegel STRAUSS Richard SCHYNS José 3.Kosmicki Alexandre:Mouvements frénétiques4.Adam Gorb:Pikes Peak Cog railroad Climb dance Summit7.Eric Coats(arr. José Schyns):Calling all workers 8.Hardy Mertens: Requiem for a future war9.Johannes Stert:Wer ist Elise? 10.George Gerschwin(arr. José Schyns):Crazy for you overtureThe Royal Symphonic Band of the Belgian GuidesYves Segers(cond)
2019年08月04日
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今年はオッフェンバック(1819 - 188)の生誕200周年だそうだ。それに因んで、ベルギーのソプラノジョディ・ドヴォがオッフェンバックのアリアを歌ったCDをアルファからリリースした。何故か興味がわいて、HDtracksから25%オフで購入。2014年にパリのコミック座のアカデミーの公演に参加したのを皮切りに、内外のオペラやコンサートに出演している、旬の歌手。黒人系の女性で、昔一世を風靡したキャスリーン・バトルに風貌も性質も似ている。とても軽い声で、高音域を軽々と謳うところが魅力的だ。何しろ華があるのがいい。ただ、高音がぴたりと決まりすぎて、何回も聴いていると、きんきん声が耳についてしまうのは仕方がない。まあ、コロラチューラの技巧を見せつける選曲なので、曲を楽しむというよりは、テクニックに耳が向けられるのは仕方のないところ。声を張り上げる場面はなく、テクニック的には抜群だ。表現もかなりこなれている。声の状態がいいうちに、集中して録音をしてほしい歌手だ。気に入ったのは、ホフマン物語第一幕のオランピアのアリア「生垣に小鳥たちが」のふんわりとした感触が何とも心地よかった。同じ「ホフマン物語」の舟歌ではAdèle Charvetというアフリカ系フランス人?の歌手が付き合っているが、低音が楽に出ているようで気持ちがいい。全く名前を知らなかった「ロビンソン・クルーソー」という喜歌劇からの「エドヴィグのワルツ」はウイーンを思い起こさせるようなしゃれたワルツで聴いていると浮き浮きしてしまった。漫画映画の一場面みたいな喜歌劇「羊飼いたち」の序曲を含め殆ど知らない曲ばかりだったが、エスプリに富んだ曲が多くとても楽しめた。最初、フランス物でドイツの楽団とはと思ったのだが、サウンドが柔らかで、華やかなところあり、重厚なところありと、なかなかはまっていた。よく考えるとオッフェンバックはドイツ系ユダヤ人なので、考えられたキャスティングなのだろう。オッフェンバックの音楽は、ほとんど聴く機会がなかったが、彼の音楽の面白さを知ることが出来て、このアルバムがリリースされたことに感謝したい。ただ不満があるのはジャケ写で、ドーランを塗りたくったような顔が少しキモイ。実物は普通に美人なので、これで本人がOKしたとは信じられない。Jodie Devos: Offenbach Colorature (ALPHA 437)24bit 96kHz Flac 01.Boule de neige, Acte I Scène 2: Couplet de la dompteuse "Je suis du pays vermeil"02.Vert-Vert, Acte II Scènes 7B & C: Air de la Corilla "Les plus beaux vers sont toujours fades"03.Orphée aux Enfers: Invocation à la mort "La mort m'apparaît souriante"04.Un mari à la porte: Valse tyrolienne de Rosita "J'entends ma belle"05.Fantasio: Air d'Elsbeth "Cachons l'ennui de mon âme"06.Les Bavards, Acte I Scène 3: Air d'Inès "Ce sont détranges personnages"07.Mesdames de la halle: Rondo de Ciboulette "Quel bruit et quel tapage"08.Le Roi Carotte: Romance des Fleurs "Le voilà c'est bien lui"09.Les bergers: Ouverture10.Fantasio: Romance d'Elsbeth "Voilà toute la ville en fête"11.Les Contes d'Hoffmann: Couplets de la poupée "Les oiseaux dans la charmille"12.Robinson Crusoë, Acte II, 2ème tableau, Scène 14C: Valse d'Edwige "Conduisez-moi vers celui que j'adore"13.Boule de Neige, Acte I Scène 3: Romance des souvenirs d'Olga "Souvenance"14.Boule de Neige, Acte II Scène 14: Chanson d'Olga "Allons, couchez"15.Les Contes d'Hoffmann: Prélude & Barcarolle "Belle nuit, Ô nuit d'amour"16.Le voyage dans la lune, Acte III Scène 21: Ariette de Fantasia "Je suis nerveuse"Jodie Devos (s)Adèle Charvet(ms) track 15)Münchner RundfunkorchesterLaurent CampelloneRecorded in july 2018 at bayerischer rundfunk , studio 1 (munich )
2019年08月02日
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