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2024年6月刊夢中文庫アレッタ著者:永野水貴さん“相続した多額の遺産金で夫を買おうとしている成金悪女”と噂のリリアン。実際は、とある過去からお金の力を痛いほどわからされた孤独の令嬢。幸せな結婚を目指すリリアンは、自分を裏切らない人を伴侶にしたいと、たびたび孤児を引き取っては理想の夫に育てようとしていたのだ。しかし最終的に、何不自由なく育てられた彼らはみな華々しく巣立ち、リリアンはそれを見送っていたのだった。そんなリリアンに仕える執事のアルフレッドもまた孤児の一人。彼だけは離れずにずっと側にいてくれるけれど、夫候補育成には非協力的。ある日、どうしても伴侶がほしいリリアンは夜会への参加を決めるも、なぜかアルフレッドに付き添われることになって? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 リリアン=失恋後に莫大な遺産を受け取ったことで大金持ちになった女性。 理想の夫を自ら育てるという野望を持っている。アルフレッド=リリアンの養い子の一人。成長して執事役を務める。 ポーリーン=リリアンの友人で行き遅れ仲間。 ビーター=リリアンの元カレ。貧乏育ちのリリアンは、婚約者が金持ち女を選んだことで大失恋。そのショックが冷めやらないうちに両親が相次いで亡くなると言う不幸に見舞われた。父も母も金があれば死なずに済んだし、元カレのピーターも豪商の娘に走らなかっただろう。悔しさをこらえ孤独に生きていた彼女は、ある時父方の親戚が遺した莫大な遺産を受け取ることに。以降、リリアンの生活は180度変わり、人生最大のモテ期がやって来た。が、箱を開けてみれば誰もが彼女の金目当てで、早々に虚しくなってしまった。そんなことが続いて、ふと思った。そうだ、理想の夫を自分で育てればいいのではと。聊か不純な動機ではあるものの、孤児院で引き取り手が無い男児を屋敷に呼び寄せ、高度な教育を施し、才能があるならそれを伸ばす手伝いを惜しまなかった。しかしながら、誰も彼女との結婚を望む者はおらず、ある程度の年齢になるとリリアンの元を巣立って行く。残ったのは養い子の中でも古株のアルフレッドのみ。引き取った当初は、何かしでかしそうな危険な雰囲気の少年だったが、衣食住が保証され勉強していくうちにすっかりまともになって今では屋敷の執事を務められるまで成長した。その優雅で洗練された物腰に憧れる令嬢も多いと聞く。今日は絵の才能があり、早くもパトロンが付いた新人画家のボブが巣立って行った。それを笑顔で見送った後、リリアンはソファに突っ伏して悔し泣き。どうして誰もが残って私との結婚を望まないの!?理想の夫を自分の手で育てると言う野望は、今のところ全く叶っていないではないか。皆、彼女に感謝こそすれ、異性としては見てくれなかった。これではただの慈善事業家だ。でも、理想の夫という割に女の子も多数引き取ってたよね?と、アルに突っ込まれれば、あの子たちの場合は可哀そうな子猫を引き取った感覚だったと言う。やっぱりただの慈善事業家じゃないかと辛辣に言われ言葉に詰まるリリアン。これほどの金額を使っても、まだまだ財産は有り余るほどある。それを妬み、リリアンを成金悪女と揶揄する貴族令嬢も多いが、アルからしてみれば彼女は女神さまのような人だ。巣立った者たちもリリアンを敬愛し、慕っている。それに彼らが出て行ったのは偏にアルの本懐を遂げさせるため。とはいえ、まだ時ではない。嘆くリリアンを宥めながらアルフレッドはその機会を窺がっていた。そんな最中、行き遅れ仲間であるポーリーンから、結婚が決まったと報告を受けてリリアンは愕然。そんな、彼女まで私を置いて行くの?のんびりおっとりした友人は、焦るリリアンが責める言葉を並べようが意に介さず、ぽつりと案外あなたの近くに理想の人が居るのではなくて?と宣った。はぁ?そんなのがいるなら苦労はしないのよ、と帰って行った。数日後、悪いと思ったのかポーリーンからパーティーの招待状が送られて来たので、たまには社交の場でお相手を探そうと決意した。エスコートは不本意ながらアルフレッドに頼んだ。スーツを誂え、髪型を変えるとあらビックリ。なかなか様になってる。せっかくの友人の好意、無にするのも悪いかと思い参加したが、リリアンに声をかけて来る猛者は嫌味三昧の令嬢達ばかり。男性陣には遠巻きにされてて、やはり来なければ良かったかと後悔。やたらと人気があったのはアルフレッドの方で、虫の居所の悪い彼女は帰りの馬車の中でつい彼に当たってしまった。気不味い中、気晴らしに一人で買い物に出掛けた彼女は、偶然ピーターと再会。5歳上だったからまだ31歳のはずだが随分老け込んだように思う。よせばいいのに近況を尋ねれば、妻の実家家業が傾き苦労しているらしい。元々、リリアンを捨てることになったのは当時借金苦だった家業を救うため。両親を相次いで亡くしたリリアンのことを気遣い長らく差し入れをして助けてくたのは罪悪感からだったのかもしれない。前のように贅沢は出来ないけれど、何とか生活はできているからと苦笑いする彼に、つい援助を申し出そうになったが何とか飲み込み、妻の誕生日プレゼントの下見に来たんだという彼に、そういう時は花束でいいのよ、とアドバイス。この一件で、彼女は色々吹っ切れた気がした。アルに謝ろう、そう決意して屋敷に帰ると、彼は暇を貰いたいと言い出し・・・。女版光源氏みたいなモットーで理想の夫を育てようと躍起になっていたヒロイン・リリアン。でも、皆感謝しつつも私の元を去っていく、失意に暮れる彼女を見守り、愛していたアルフレッド。ポーリーンも、彼の気持ちには気が付いていてさらっと身近におるやん、と教えてたのにリリアンはなんのこっちゃ状態。でも彼から出て行くと言われた時は激しく動揺して、引き留めるも意志が固いと知るや寂しい気持ちを押し殺して送り出します。そしてようやく自分の気持ちに気付くのでした。でも、数日後、アルフレッドが訪ねて来て友人達と起業したと報告。それに合わせてリリアンにプロポーズ。あなたのお金には興味がありません、欲しいのはあなた自身です。それはまさしく望んでいた言葉。リリアンはアルフレッドの求婚を受け結婚。成金と謗られつつも、養い子たちは皆彼女の味方。それぞれ大成していたので、いつか恩を返そうと考えていました。それでも、結婚してからは成金悪女という揶揄は消え始めていました。どうやらアルフレッドが名誉棄損だと悪評を立てた令嬢達を訴えたらしいと聞き、彼らは爆笑。昔からあいつはリリアン一筋だったしと盛り上がり、俺らも彼女のおかげで一廉の者になれたんだから、今後は彼女の慧眼ぶりを世間に知らせようと決意を固める場面で物語は幕。聊か不純な動機で始めた行動がとんでもない善行で、後にリリアンの評判は覆されるんだろうな、っていう余韻を持たせた終わり方が本当に良いです。唐突なラブシーンがないのも好印象。良作だと思います。評価:★★★★★
2024.09.20
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2024年7月刊夢中文庫クリスタル著者:玉紀直さん男の人は苦手、なんなら恐い──幼少期のトラウマを抱える男性恐怖症の保育士・紫苑。そんな彼女がお見合いで出逢ったのは、10歳年上のイケメンドクターの大悟。しかし彼は“超”強面。なんとかお断りの言葉を残してその場から逃走した……はずなのに、お見合いは続行!? どうして? と不思議に思うけれど、本当の彼は柔らかで頼もしい小児科医だと知って信頼感が高まり、なにより紫苑への思いやりが溢れていて……。俺とつきあって、男性への恐怖心を克服しませんか?──大悟から提案に紫苑は勇気を出して交際スタートさせれば、彼に惹かれていく気持ちが止まらない! しかし、トラウマを思い起こさせる事態が発生して!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 望月紫苑=過去のトラウマから男性恐怖症になった保育士。 麻倉大悟=紫苑の見合い相手の小児科医。大人の男性が苦手で、恐怖心がある紫苑は勤続2年目の保育士。そんな娘を見守っていた両親だったが、このままでは一生独身なのではと心配になったらしい。父が懇意にしている病院長の息子と会うだけでもいいからとお見合いをセッティングされてしまった。しかし、16年に及ぶ恐怖症。両親が思っている以上に根は深い。いくら大好きな父の頼みでも受け入れられないことだってあるのだ。お相手には悪いけど、この話は無かったことに、と謝って帰ろう。目を合わすことも苦痛なので、ちらっと見た程度ではあるが、お相手の男性は結構なハンサムだったように思う。そんな彼は開口一番に紫苑から断られたので流石に癪に障ったのか「はぁ!?」と不機嫌そうな声を発したので、紫苑はかなりビビっていた。なまじ造形が整っているからか、怒った顔は超怖い。ごめんなさいっ平謝りしながら料亭を後にした紫苑は、すぐに捕まったタクシーに感謝した。逃げるように帰宅した娘に、両親は色々察したらしい。父にも謝罪されて本当に申し訳ないが、こればっかりはどうしようもない。翌日、同期の保育士・一葉からもどうだった?と聞かれたが、怖くてダメだったと言えば、予想はしていたようで、まぁまだ22だから焦らず行こうと慰められた。紫苑は幼稚園の頃、そっち趣味の男にストーカーされた挙句、襲われた。幸い未遂であったものの、その経験から父以外の大人の男性に恐怖心を抱くように。保育士になったのも、子供なら男でも大丈夫だったし、素直に可愛いと思えるから。とはいえ、送迎をするのは母親だけではない。当然父兄もいるので、その時は一葉が対応してくれている。だが、彼女のいない隙を狙って紫苑にアプローチしてくる猛者もいた。甥だと言う2歳児を送り迎えしている糸田はしつこく紫苑を誘いべたべた触って来る。保育士を底辺とバカにしてくる態度も腹が立つし、今日は誘いを断れば暴言を吐かれた。一葉が慌ててやって来て間に入ってくれたので事なきを得たが、糸田はあまりにも悪質。園長に相談した結果、夕方には保育士への個人的接近はご遠慮くださいと保護者に向けてメールが一斉送信されていた。そんなある日のこと、紫苑の受け持ちクラスの年長者が親切心から飛ばされた帽子を取ろうと木に登り、降りられなくなると言う事件が起きた。思ったより高い位置にいて消防に連絡する?と焦っていると耐え切れずにその子が落ちてしまい肝を冷やした。が、間一髪白衣姿の男性が受け止めてくれて、怪我も無く済んだ。お礼を言おうと男性を見ると、何と彼は先日お断りした見合い相手ではないか。確か麻倉大悟さん。往診の帰りだったと言う大悟は近道でこの公園を突っ切ろうとしたら騒ぎに遭遇したらしい。間に合って良かったとほっとした顔をしていた。お礼を言うと、実は話があるんだと大悟に頼まれ、流石に断れずに就業後に会う約束をした。病院に立ち寄った紫苑にココアを出し、あの日のことを話す彼は事前に男性恐怖症のことは聞き及んでいたのだそうだ。でも、会話する前にお断りされた挙句速攻帰られたので実は結構ショックだったと語られ、本当に悪いことをしてしまったと紫苑は猛省。本人も本当はこんなんじゃいけない事は判っていた。できれば克服したいと思う。そう話すと、なら俺を練習台にして苦手意識を払拭しようと彼が提案。実は緊張すると怒ったような表情になってしまうんだと言う大悟は、お見合いの日も相当緊張していたらしい。そのせいで余計に怖がらせてしまったのでは、と気にしていたようだ。父同士も友人関係でもあるし、協力するよと言われた紫苑は克服したい気持ちも大きく、大悟の手を借りることにした。小児科医をしている彼は話してみると穏やかな人だった。でも、緊張すると強面になるのでたまに子供をビビらせ難儀しているんだと笑っていた。大悟の先輩が経営しているというバーでカクテルを飲み、気持ちが大きくなったのかあの事件のことを語る紫苑。富裕層御用達の幼稚園に通っていた彼女は、制服の可愛さも相俟って悪質なストーカー被害に遭っていた。送迎は両親のどちらかが行っていたので無事ではあったのだが、病欠していた友人の見舞いに行った帰り、閑静な住宅街だったことが災いしてストーカーに襲われてしまったのだ。幸いそばを通りがかった高校生らしき少年に救われたのだが、その少年は所謂ヤンキーだった。ストーカーを変態と罵りぼこぼこにする彼の強面が怖くて、実は暴行されかかったことよりその少年の言動が怖かった。話を聞いていた大悟は何とも言えない顔をしていたのが気になったが、他人に事件の話をしたのは初めてだ。一葉も詳しくは知らないので、自分でも進歩したと思う。それだけ彼に気を許しているのかと自分でも驚いたけど、きっとこれは良い変化だ。素直に受け入れよう。そんな最中、お達しのせいで紫苑に声を掛けられなくなった糸田が、帰宅地中に彼女を待ち伏せ。どこかに連れ込もうとしたので必死に抵抗していると大悟に助けられた。が、糸田と彼は顔見知りの様で、お前麻倉か?と驚いていた。糸田から、こいつは地元で手の付けられないヤンキーだったんだぜと言われ、紫苑はビックリ。でも高1の時に外交官の娘を変態から助けて表彰されたら急に真面目になって、今は医者やってるんだって?とベラベラ喋る糸田を大悟は一喝。彼女は俺の婚約者だと脅すと糸田は逃げて行った。バーで紫苑の話を聞いて何とも言えない顔をしていた意味が分かった。彼があの時私を助けてくれた人。そして、根深い恐怖心を植え付けた人でもある。混乱した紫苑は、今後のお付き合いは考えさせてほしい、そう告げるとその場を逃げ出し・・・。まぁ、あの過去バナで強面というワードから本文を読んだ人はすぐに恩人が大悟だと気付いたと思います。それにしても変態より助けてくれた不良少年の方が怖くてトラウマだったって、そりゃあ大悟もショックですよね。でも、彼にとっては人生の転機でもありました。紫苑の両親は事件後すぐに彼にお礼に行っていて、父親の方とは以降コンタクトを取っていました。男性恐怖症のことも聞き及んでいて、事件の被害者だもんなと気にかけていました。時が経って紫苑も大人になり、一度彼女と会って話したいと望月氏に頼むとなぜかお見合いにされていて、大悟は緊張。おかげで強面になって紫苑をビビらせ早々に逃げられてしまったのでした。しかし、当時も可愛かったけど今は物凄く美人だ。紫苑に一目惚れした彼は、恐怖症克服を持ち掛け、警戒心も解けた頃に衝撃の真相を知ったわけです。そういえば、女の子を守らねばとあの時ガラにもなく緊張していつもより強面になっていたかもしれない。俺のせいだったのかと大悟は思い悩むも、結局、紫苑の方も彼への気持ちが恋だと気付きその思いを語ります。避け続けたせいで男性に対して無神経すぎたと話す彼女の言葉を受け、大悟も自分の気持ちを語り、結婚を前提に二人が交際をスタートして物語は幕。保育園の子供たちが可愛くて作中の癒しでもありました。評価:★★★★★130ページほどの短い内容ですが面白かったです。
2024.09.10
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2024年7月刊夢中文庫クリスタル著者:田崎くるみさん強烈シスコンの兄によって恋愛フラグが立つ前にへし折られ続け、今まで彼氏どころか男友達もいない果歩。唯一、兄の親友である剣心だけが家族以外で交流のある男性。「……私だって誰かと恋して、結婚もしたい」そんな本音を剣心に零したら──「それなら俺と恋愛をしないか?」と疑似彼氏になるのを提案され、果歩は受け入れる。まさに理想の王子様でハイスぺ社長の剣心と一緒の時間はときめきばかりで、本気の恋に落ちるしかなくて……。けれど、完璧に見える彼にもとある秘密が!? おためし恋愛からはじまる、執着系スパダリとの甘々溺愛生活! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 塚本果歩=シスコンな兄のせいで恋と無縁になってしまったOL 雲母剣心=イベント会社社長。長らく絵美に片思いしている。 塚本大和=消防士。シスコンを拗らせ、妹の恋路を悉く邪魔していた。 岩原絵美=果歩の同期で友人。大和に想いを寄せている。果歩は、25歳になった今でも一度も恋愛をしたことが無いのが悩み。それというのも、2歳上の兄・大和が度を越したシスコンで、彼女の恋愛フラグをバキバキにへし折っていたからだった。今日も会社の同僚(男)に映画に誘われただけだと言うのに、大和が先回りしてその同僚を取っつ構えて「妹に気安く近づくな」と恫喝したらしい。消防士をしている兄は長身で筋肉質。威圧感マシマシな大和にすっかりビビった同僚は、待ち合わせ場所に現れた果歩に、開口一番絶縁宣言をして逃げるように帰って行った。もしやと思い、周りを見回すと案の定物陰でこちらを伺う兄の姿が。同僚に関しては本当にただの友人関係だったのに、大和のせいで絶縁までされてしまった。一体どんな脅し方をしたのやら。妹を溺愛する大和はとにかく果歩に彼氏や男友達ができることを嫌った。子供時代からそんな感じなので、おかげで彼氏いない歴=年齢という、由々しき事態になっている。毎度のことながら果歩にお説教されている大和の姿を見て、近くを通りかかったという雲母剣心が腹を抱えて笑っていた。彼は大和の高校時代からの友人で、その縁で果歩も親しくしてもらっている。兄も黙っていればイケメンなのだが、剣心はそれに輪をかけてカッコイイ。しかも国立大学に進んで在学中に企業。今はイベント会社社長をしているエリートだ。未だにどうして変人の大和と気が合うのか不思議でならないが、彼にはよく勉強も見てもらったので、そこだけは兄に感謝している。剣心から、大和はいつも妹の恋路を邪魔ばかりしているくせに、自分はそこそこ女遊びしてるんだぜ。と聞かされた果歩は怒り心頭。機嫌直しに飲みに行こうと誘われ、追いすがる兄を置いて剣心おススメのバーへ。ほろ酔いになって、つい今日の話を愚痴り、私だって恋したいのに、溢す果歩。すると、剣心から「それなら俺と恋愛しよう」と真顔で告げられ、思わず一瞬で酔いが醒めた。お試しというか疑似恋愛かな、と彼は言い、果歩もそこまで重く考える必要はないのかもと思い直した。それに剣心なら安心できる。現在、彼には恋人はいないと言う。それならお願いしてもいいか。「私に恋を教えてください」そう言って果歩は頭を下げた。お試し恋愛が始まって、早くも彼女は剣心のスパダリぶりに目を回していた。彼は外見だけでなく頭も良い、加えて会社の経営者。おまけに料理上手なんて、果歩が一時期思い描いていた理想の旦那様像そのもの。大和に想いを寄せる友人の絵美まで、彼にキャーキャー言っていて、聊か複雑に。これってまさか嫉妬ってやつ?疑似恋愛というのは伏せて剣心と交際すると報告した果歩に、大和は怒り狂っていたが、後に彼と二人で何やら話し合っていた兄はコロりと態度を変えた。どうやら、果歩に悪い虫が付かないよう、虫除けで彼氏のフリをするだけだと言ったら単純な兄はあっさり信じたらしい。それでも「らしく」見えるよう手を繋いでいたら射殺しそうな目で剣心を睨んでいたので呆れてしまう。そうこうしているうちに、果歩は剣心を意識するように。とにかく彼の言動一つ一つにドキドキして、ある時、そうかこれが恋かと納得。その日、自分の気持ちを打ち明け、お試しではなく本当の恋人同士になった二人。雰囲気が変わった果歩を見て、大和にも虫除けどころか本気恋愛だとバレてしまった。しかし、妹が変な男に引っかかって失恋して泣くより、剣心に嫁に行く方が、と思い直したらしい。それなら善は急げと、早々に一線を越えて来いと発破をかけて来た。いや、流石に気が早いからと兄を宥めつつ、結婚についても夢を馳せ始めた果歩。たまには私が料理を作ると休日、彼の部屋を訪れ得意のカレーを振舞った。残念なことにトラブルがあったと、剣心が会社に呼び出され数時間留守番をすることになった果歩は、間違えて足を踏み入れたことのない部屋を開け彼女は絶句。6畳ほどの部屋の一角には所狭しと果歩の写真が飾られていて・・・。彼の秘密部屋を見て果歩は思わず家に逃げ帰ってしまうんですが、帰宅してコレクションがバレたと知った剣心も、これは絶対に嫌われたと落ち込んでいました。昔からモテモテだった彼は、色目を使う女が大嫌い。そんな最中に大和と出会い、家に招待された際に果歩を紹介されます。しかし、彼女は他の女性達とは違い、兄が重度のシスコンで変人なこと。本当に友人関係を続ける気ですか?と聞いて来たのでビックリ。こんな反応が初めてだと、果歩に興味を持ちます。そのうち、頼まれて勉強を教えているうちにこれが恋だと気付き、兄には言わないが、剣心にならと誰それに告白されただの男の子たちを含めて遊びに行く等、果歩は報告していました。情報を強いれた彼は、大和を焚き付けてフラグをへし折っていたのです。果歩の恋愛を邪魔していた指示役は剣心だったんですね。そして、彼女の悩みに乗っかり、疑似彼氏に立候補。そのうち本物の恋人にと目論んでいました。今回のヒーロー、腹黒過ぎる。でも、起業したのも料理上手になったのも、果歩の理想の旦那様の条件を聞いたから。写真コレクションは大和に頼んで焼きまして貰ったもので、古くは赤ちゃんの頃のものまで網羅。幼児期、パンツ一枚のものもあったので、果歩も恥ずかしくなって部屋を飛び出してしまったわけですが、どん引きはしていませんでした。裸の写真ははがして欲しいけど、なんだかうれしい。話を聞いた絵美の方が引いていて、やっぱりそういう所は兄のシスコンによる言動に慣れ切っていたのかも。結局、その後剣心と話し、裸の写真は外すという約束で秘密部屋については不問にする果歩。ずっと君のことだけが好きだったんだと告白した彼は、後日結婚を前提に交際していると果歩の両親にも挨拶。やはり妹を渡したくないと、しょっちゅう大和に邪魔されながら、順調にデートを重ねる二人の様子が描かれて物語は幕。ラストにちらっとお兄さんの幸せについても触れられていたけど、絵美ちゃんとのお話もあるんでしょうかね?終始コメディ調で面白かったです。クールに見えて執着系のヒーローって良いですね評価:★★★★★
2024.09.06
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2024年6月刊夢中文庫セレナイト著者:高遠すばるさん『悪役令嬢アンジェリカ』──推しだった『侯爵令息ギデオン』の義理の姉に転生するなんて、なんの冗談!? 前世で嵌まった乙女ゲームの世界でギデオン(推し)を撫でまわしたいけれど、アンジェリカは義弟である彼を虐める立場。でもやっぱりギデオンには幸せなエンドを迎えてほしい。そうだ、悪役令嬢をやり切って彼が傷つきすぎない程度に意地悪しよう! ゲームヒロインとギデオンの恋のフラグを折らない程度に。……そうして頑張ってきたのに、彼の様子がなんだかおかしい!?「離れる気でいるんですか。僕から」──ハピエン目指して虐めてきたはずなのに、最推しギデオンが豹変!? 束縛執愛をあらわに迫ってきて……!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 アンジェリカ=ゲームの悪役令嬢キャラだが、前世の記憶があり最推しのギデオ ンの幸せのために奮闘する。 ギデオン=ゲーム攻略キャラの一人でアンジェリカの義弟。 セリカ=ゲームのヒロイン。 ゴールディ=王太子。ゲームの攻略キャラの一人でギデオンの友人。乙女ゲーム「メルティ・ラブ~真実の愛をあなたへ~」にドはまりしていた女子大生の主人公は攻略キャラの一人であるギデオンに惚れこんでいた。そんな彼女が若くして死亡し、気が付くとメルラブの悪役令嬢・アンジェリカに転生。寄りにも寄って何でこいつなの!?彼女は運命を呪ったが、アンジェリカはギデオンの義姉で彼の成長を間近で見て一つ屋根の下で一緒に暮らせるのだ。とはいえ、表向き父の隠し子という触れ込みのギデオンを彼女は苛め抜いていたわけだが。前世の記憶を思い出したのも彼への虐めの延長で失敗し海に落ちたのがきっかけで、我ながらそのやらかしには呆れた。でも、これからは今までのようにギデオンをいびるなんてできそうもない。急に優しくなっても不審に思われそうなので適当に嫌味を言いつつ、後でフォローを入れる。ルートに余計な横やりを入れない為にも自分は悪役令嬢で居続けなければならない。今までの経歴でそうそうに印象も変わらないだろうから、ちゃんと最後は帳尻を合わせてヒロインのセリカに意地悪をして私を断罪されるよう持って行く。そう決意したアンジェリカだったが、実際の彼女は元々誤解されやすいだけの根は優しい少女で、ギデオンもそんな義姉に対して一方ならぬ想いを寄せていた。実はギデオンは先代国王のご落胤で、王宮の侍女を務めていた母は早々に飽きられて捨てられ、親子二人市井で暮らしていた所、母の病死後、アンジェリカの父・カルセドニー侯爵に引き取られた。先代国王の非道に心を痛めた当時の王太子(現王)からの依頼によるものだそうで、表向きは侯爵の隠し子として屋敷やって来た彼は使用人たちから反感を買っていた。市井での暮らしで少々人間不信だったギデオンはここでも孤独かと思っていたのだが、義姉のアンジェリカだけは違った。傍で聞けばただの嫌味にしか聞こえない言葉が毎回正論で遠回しにアドバイスをしてくれていると気付くのにそう時間はかからず、叱責は励ましだったり全くもって悪意を感じない。影で彼に嫌がらせをしてくる使用人を自分の我儘に見せかけて解雇したりと、周りにどういう目で見られようとこいつを虐めていいのは自分だけというスタンスを貫いた。ここまでされて惚れないわけがない。特に不注意で海に落ちてからはフォローまでしてくるようになったのもあり、義父である侯爵にはいずれ彼女と結婚したいと打診し、王家には継承権の辞退を申し出ていた。ギデオンの希望は先日受理され、代わりに公爵位を貰えるそうなので外堀は埋まりつつある。アンジェリカをイメージして品種改良した薔薇を育てたり、今イチ惚れられている自覚が無い彼女にヤキモキしながら、アンジェリカ付きの侍女マリーの力を借りてアプローチを重ねていたのだった。数年後、学園に入学した二人はメルラブのヒロイン・セリカと遭遇。元は平民で男爵家の養女になった少女。境遇が似ているということでギデオンと親しくなっていくのだが、当然ながらアンジェリカ以外には無関心の彼はセリカに見向きもしない。しかも、無自覚なお人好しであるアンジェリカはセリカに慕われてしまい、微妙な関係に。ストーリーの影響で攻略キャラ筆頭の王太子・ゴールディとも親しくなったセリカが他の令嬢達に妬まれて嫌がらせされたり罵詈雑言を浴びせられたりしているのを見かねてつい助けてしまったのがいけないのかもしれない。拙い、ここは虐めの主導者になってとことん嫌われないといけないのに。いっそ自分がやったと言うべきか。しかし、自ら罪を被ろうとしてもセリカとギデオンにはお見通しで騙されてくれない。だが、周囲は違った。他の攻略キャラ達3人がアンジェリカを虫の如く嫌い、近々ある卒業記念パーティーで彼女を断罪するべく計画していて・・・。よくある悪役令嬢ものですが、シンプルな展開故に面白かったです。人が好すぎて悪役になり切れないヒロインは、そもそもが誤解されやすく根は良い子。だから彼女を慕う者も実は少なくない。ヒロインからも慕われ友人になったらギデオンはセリカにも嫉妬メラメラ。お互い牽制し合うようになり、外堀は埋めたのに肝心の恋愛は進展しないまま。嫌われてはいないはずなので、卒業パーティーで求婚するつもりが、他の攻略キャラ3人からアンジェリカが今までの悪行について裁かれようとしている。その様子に激怒したのは彼らから見れば虐められていたはずの愛しいヒロインのセリカ。彼女にしてみれば彼ら等アンジェリカの方が大事だし、私を虐めてたのは違う令嬢達ですけどと暴露。寧ろ、アンジェリカはいつも自分を助けてくれたのだと証言したことで、彼女の無実は証明され、唖然とするアンジェリカにすかさずギデオンがプロポーズ。ずっと好きだったと告白された彼女は、戸惑いつつもギデオンの求婚を受け入れるのでした。まぁ、最推しだったのだし、彼のために奮闘してて、その幸せになる方法が自分との結婚なら受け入れないはずもないと言うことで。5年後、女性は爵位を継げないので、王族のギデオンのために用意されたのはカルセドニー侯爵でありサフィール公爵という地位。一人娘のアンジェリカと結婚した彼が侯爵家の当主も務める形に。二人の子宝に恵まれた家族の様子が描かれて幕。王太子ゴールディについてはもう少し二人への関りがあるのですが(ギデオンの歳の近い甥に当たる人なので)この辺は敢えて割愛しています。アンジェリカ付きの侍女・マリーのことも。オーソドックスな悪役令嬢ものが好きな方におススメなお話です。評価:★★★★★
2024.07.13
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2024年1月刊夢中文庫セレナイト著者:糸加さん没落した華族、八重雲家の長女・璃央子は継母と異母妹に使用人同然に扱われていた。その上、父の抱える莫大な借金の肩代わりに三十歳も年上の成金に嫁がされることに。絶望する璃央子だったが、行き倒れの青年・暁臣を助けたことで運命が変わる。「こんなところに置いておけない」ーー看病の末目覚めた暁臣は、自分は貿易会社の社長だと明かし、璃央子にある提案を持ちかけた。数日後、璃央子は自分と成金の婚約が立ち消え、代わりに暁臣のもとへ嫁ぐことを知る。この結婚はただの看病への恩返し……そう思うのに、彼との日々は初めて知る幸せな事ばかり。だが、璃央子の新しい生活を阻むように黒い思いが「淀み」となって現れて……? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 八重雲璃央子=八重雲子爵家の長女。 継母達から虐げられ使用人扱いされていた。 司暁臣=伯爵家の次男で商会を営む実業家。 八重雲春菜=璃央子の異母妹。 八重雲万里乃=璃央子の継母。子爵家の長女として産まれながら、継母と異母妹との折り合いが悪く、使用人扱いされている璃央子。12歳の時に亡くなった実母の形見は悉く処分され、これだけはと隠し持っていたオルゴールも見つかり、継母の万里乃によって叩き壊されてしまった。部品すら持つのも許さないと全て竈にくべられたと聞いたが、見かねた古参の使用人のキヨが万里乃の目を盗んでオルゴールの中にあった青い石を拾い、璃央子に渡してくれた。クビを覚悟の行動だったようで、これを機に親戚の元に身を寄せると言うキヨは、その親戚から子爵家の窮状を知らされたらしい。そして、残される璃央子を心配し、幸せになる機会を見つけたら迷わず飛び込めとアドバイスして屋敷を去ったのだった。数日後、夫から多額の借金を負ったと聞かされて万里乃は激怒していた。しかもその借金をチャラにするために成金の笹坂という男に春菜を嫁がせると言い、異母妹は嫌だと泣き喚いている。お茶を持って行った璃央子はその状況に驚いたが、そんな姉の姿を見て、春菜は子爵家の娘がいいならお姉さまでいいじゃないと父に進言。万里乃も良い案だと焚き付けると、それもいいかと父も賛同したことで璃央子は30も年上の艶福家に嫁ぐことが決まった。逆らっても味方はいない唯々諾々と従った彼女はせめて輿入れする前に母の墓に結婚の報告をしたいと頼むと万里乃は渋々ながら許してくれた。その日、雨の中、久しぶりに訪れた墓前に結婚の報告を済ませた帰り道、一人の青年が行倒れているのを見つけて、出入りの庭師二人に頼んで屋敷に運び込んだ璃央子は父の帰りを待っていた。勝手に医師を呼ぶわけにはいかないので父の許可を取る必要があるからだ。だが、騒ぎを聞きつけた春菜がやって来て、輿入れ前に男を連れ込むなんてと嫌味三昧。倒れていたから介抱しただけと言っても聞く耳持たない妹に内心でため息を吐いていると、春菜の言動が段々おかしくなってきて「どうせあんたも私を馬鹿にしてるんでしょう」と怒鳴り、青年の為に置いていた水のコップを割ると自らの喉元に当てたので慌てて止めた。すると、寝ていた青年が起き上がって妹を取り押さえると、彼女は意識を失い倒れ、使用人達によって運び出されて行った。青年は後に帰宅した万里乃に司暁臣と名乗り、璃央子にも世話になったと礼を述べた。最初は行き倒れていたと聞いて眉をひそめていた継母も暁臣が貿易会社の社長と知って手のひらを返し、介抱代まで取ろうとした時は呆れたが、止める璃央子にお茶をぶっかけ、二人の会話中に彼女があの笹坂に嫁ぐと聞いた暁臣は驚くべき発言をした。僕が彼女と結婚したいと。あんなじじいより僕と結婚した方があなたは幸せになれる。借金のカタとのことなら僕が肩代わりしますし、支度金も弾みます。聞けば彼は藍鷹伯爵家の次男なのだと言う。家を継ぐのは長男で彼は分家扱いになるそうだが、その夜帰宅した父は目の色を変えて、その申し出を受け入れると璃央子に暁臣に嫁ぐよう命じた。暁臣は璃央子に一目惚れし、命の恩人だと感謝もしていた。幼い頃から、この国の端々に巣くう「淀み」が見える彼は、自発的にそれを祓っていた。その日も2件ほど片づけたのだが本業の忙しさもあって疲労で倒れていた所を彼女に助けられたのだった。知らんふりする者も多いのに天使かと思う程璃央子は美しく優しい。そんな彼女が家では継母と異母妹に虐められ続けた挙句借金のカタに成金じじいに売られるなんて酷過ぎる。でも自分なら助けられると名乗りを上げた。案の定、実家の名を出せば二つ返事で了承してきたので気が変わらぬうちに彼女を両親に会わせたら、二人は璃央子を大層気に入り、変わり者の次男に漸く嫁がと喜んでいた。早々に式を挙げ京橋にある司邸で暮らし始めた二人。だが、暁臣はこれは恩返しでもある結婚なので、君には触れないし3年で離縁しようと思っていると初夜の時に言われた璃央子はがっかり。実はこの結婚、これこそがキヨの言っていたチャンスだと思っていたし、彼女も暁臣に好意を持っていたから。でもそれが彼の望みならと承諾し、せめて夫婦でいるうちは彼に尽くそうと決めた。通いの使用人の須磨に習って洋食の作り方を覚え、彼の好物を作り、甲斐甲斐しい璃央子の姿を見て、暁臣は後悔していた。なぜあんなことを言ってしまったのか。従兄弟で副社長の時透に散々馬鹿にされたが、離婚については本心では無かったと後で撤回すれば済む話だとアドバイスされてその線で行くかと覚悟を決めた。本当は一目惚れだったから結婚したんだと告げようと。そんな矢先のこと、春菜は父から笹坂に嫁ぐよう命じられ絶望していた。才能もないのに株の投機で失敗しまた借金を作ったと聞いて万里乃も唖然。だが、金額は前回よりも少ない。なら春菜をやらなくてもと渋ったが、あの時は額が額だから公家華族の血を引く璃央子が相応しかったが春菜ならこの額でもと話す父こそが自分と母を心底馬鹿にしているのだと気付き・・・。この縁談話を出先で春菜の級友から聞いた璃央子は妹を心配していました。この子、本当にいい子だなぁ。暁臣も義父も僕に相談してくれればと言いつつ、こうなることは判っていたようでした。何故なら八重雲子爵家には殊更濃い「淀み」があるから。あの日春菜が突然錯乱したのもその影響で、子爵と万里乃はかなり影響されている。借金を繰り返しているのもそのせいだろうとも。一先ず自分が出向いて祓えるだけ祓うと言い、約束を取り付けて子爵家に向かうと結婚の挨拶に来た時よりもはるかに濃くなっていて大変なことになっていました。結婚を嫌がり蔵に閉じ込められていた春菜を救出し、母屋に向かった彼が見たのは「淀み」に侵食された義父の姿。そこに暁臣だけに危険な真似はさせられないとやって来た璃央子の持っていた青い石の力が発動。巣くっていた「淀み」を一掃します。子爵は浄化と共に命を落とし、憑き物が落ちたかのような万里乃と春菜は、璃央子への仕打ちを謝罪し、彼女の母の実家・久次良家が営む寺院に身を寄せることに。あの度を越した虐めも「淀み」のせいだったんですね。なのに璃央子が屋敷に居ても影響を受けなかったのは偏にオルゴールの中にあったあの石のおかげ。亡き母の心尽くしのお守りだったというオチ。事件後、暁臣の告白により離婚しなくていいと知った璃央子は大喜び。仲睦まじい夫婦となって浅草デートを楽しむ二人の様子が描かれて幕。ほぼ璃央子目線で描かれている今作、モノローグによる彼女のツッコミが面白く、コメディ要素もありました。ただこの語り口調が苦手、と思う方もいそうなので好き嫌い分かれるかも。お話そのものは凄く良かったと思います。評価:★★★★★
2024.07.09
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2024年1月刊夢中文庫プランセ著者:小山内慧夢さん懐事情が厳しい伯爵家の令嬢・マリエッタのもとに破格の好条件で縁談が舞い込んだ。相手は『最悪の金貸し』と呼ばれる色欲旺盛で高齢のベルントソン子爵。家のため、何より可愛い弟の助けになりたいと嫁ぐ覚悟を決めたマリエッタが子爵邸に到着したその日──夫となる予定の男が天に召された!? 新当主ルーカスとの急展開な政略結婚に不安はあったけれど、夫となった男は魅力的すぎた。彼のなにもかもに胸がときめくマリエッタ。ルーカスの独占欲もむくむく育ち、気づけばふたりの新婚生活は溺愛で埋められ──「こんなに可愛らしく淫らに花開くとは」ルーカスの色気に圧倒されたマリエッタは初夜から甘い快楽に蕩けきって……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 マリエッタ=没落貴族の娘。 家族の為に祖父程歳の違うトーマスに嫁ぐ決意をした。 ルーカス=トーマスの息子。父の死により爵位とマリエッタを譲り受ける。 アビゲイル=ルーカスの同僚の女騎士。 トーマス=故人。「最悪の金貸し」と呼ばれる子爵家当主。 ハンネス=マリエッタの幼馴染の男爵家令息。お人好しの曾祖父が作った借金が元で、伯爵でありながら貧乏生活を余儀なくされて来たバーリ家。そうした経緯で長女のマリエッタは社交の場に出ることも無く、家計を助けるために日中は身分を偽って町のパン屋で働いている。皆の努力の甲斐あって、借金も大分減っては来ていたものの、10歳になる跡継ぎ・イーヴァルの進学費用がどうにも捻出できない。頭の良い長男のためにもそれなりの学校に行かせてやりたい。金策に頭を悩ませていたある日のこと、マリエッタに縁談が持ち込まれた。お相手は「最悪の金貸し」と悪名高いトーマス・ベルントソン子爵。晩年を共に過ごす後添えとしてマリエッタを迎えたいと言う。子爵の年齢を聞けば亡き祖父と同年代で、マリエッタより年上の息子もいるらしい。応じてくれるならば持参金も不要、支度金として金貨4500枚を払い、伯爵家の借金も肩代わりしてくれるそうだ。両親は断っても良いんだと言ってくれたけれど、借金を肩代わりしてくれる上に金貨4500枚あれば弟の学費どころか暫くは楽に生活ができる。一晩よく考えた末に、マリエッタは子爵家に嫁ぐと両親に告げた。療養中だという子爵は領地の屋敷に住んでいるそうで、迎えに来た馬車で数日かけてベルントソン邸に赴いたマリエッタは子爵の長男・ルーカスの同僚だという女騎士・アビゲイルと玄関先で遭遇。遠路はるばる花嫁がやって来たと言うのに出迎えも無しとは、もしや歓迎されていないのでは、と不安に思っていると、アビゲイルは間に合わなかったか、と呟いていた。どういうことかと不審に思っていると執事らしき男性が彼女の声に気付いたようで慌てて出迎えに現れるとアビゲイル共々、当主の部屋に通された。寝台の周りには使用人数名と長身でガタイの良いハンサムな青年。彼はアビゲイルに気付くとつい先ほど逝ったよと告げ、そこで初めて隣にいたマリエッタに気付いた様だった。執事がマリエッタを子爵家の新しい女主人になられる方です、と紹介すると王都から呼ばれていた婚姻未届け人がいて徐に婚姻の書類を差し出した。生前のトーマスから自分の死後は次の子爵がマリエッタを娶るよう遺言に残していたそうで、彼女は長男のルーカスの妻になるのだと言う。両名共に寝耳に水のことで激しく動揺したが、旦那様のたっての希望なので受け入れて欲しいと執事からも頼まれ、時期を見て離婚すればよいかと促されるまま署名をすることに。騎士をしていると言うだけあって改めて見るとルーカスは本当にカッコイイ。こんな人が一時的とはいえ私の夫だなんて。内心ドキドキしつつも、ルーカスの方も美しいマリエッタに一目惚れしていた。アビゲイルからは離婚などせずともこのまま添い遂げればいいだろうと茶化されたが、父の希望でもあるしそれもいいかもしれない。トーマスの為に馬車の中でわざわざひざ掛けを編んでいたりなど、外見だけでなく気立ても申し分ない。彼女が了承してくれるなら、自分を支えて欲しいとルーカスは考え始めていた。それとなく聞いてみると彼女もまんざらでは無い様で、このまま子爵夫人として留まることを約束してくれた。執事から伯爵家の窮状を聞き、継続して彼女の実家を援助するよう指示し、支度金もあれじゃ安すぎると上乗せ。義弟になるイーヴァルにも書きやすいペンとインクを送った。務めもあるので葬式後は王都に戻ると話す彼に妻として一緒に行くことになった彼女は、タウンハウスに着いてからも使用人たちから歓迎され、トーマスとルーカスがどれだけ彼らから慕われていたのかを知った。ルーカスとも最初はお互い意識し過ぎてギクシャクしていたものの、とあるきっかけで本音を話す機会があって誤解があったことが判り、以降は仲良く暮らしている。借金を肩代わりしてもらっただけでもありがたいのに、支度金を上乗せしてくれただけでなく継続的に金銭援助までしてくれると聞いて驚いたが、そのうち家族を呼んで顔合わせも兼ねたパーティーをしようと提案されてマリエッタは大喜び。機たる日に備えて使用人たちと張り切って準備をしていると、屋敷に来客が。先触れも無くやって来たのは幼馴染のハンネスで・・・。祖父程歳の違う男に嫁ぐことになったマリエッタ。しかし、領地に到着早々、夫になるべく人は病により死去。遺言によって息子のルーカスに子爵位とマリエッタを譲渡され、悶着の末に彼との結婚が決まります。当初は誤解もあってすれ違いの日々でしたが、次第に心を通わせ合う二人。お互い一目惚れだったことが判って仲睦まじく暮らしていると、お邪魔虫が襲来。トーマスの死を知らないハンネスがマリエッタを取り戻そうと騒動を起こし、有難迷惑だと彼女も困惑。紆余曲折はあったけど、今はルーカスと幸せだからと話しも聞く耳持たずで、ハンネスの行動はエスカレート。勝手に男爵家の財産を処分してルーカスにこれで彼女と離婚しろと迫るも、家宅侵入に器物破損、勝手に男爵家の財産に手を出したとして横領の罪に問われてハンネスは御用。勘違い男の行動は一層二人の絆を強くした、って感じで本編は幕。おまけの番外編は、世間の悪評とは全く違うトーマスが息子のために画策したこの結婚話について執事とすり合わせをしているエピソードでした。評価:★★★★☆
2024.07.04
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2024年5月刊夢中文庫著者:にしのムラサキさん「はは、逃げるなよ佐奈。余計盛るだろ?」──家庭の事情で幼少期に突然引っ越した佐奈。大人になり、仕事の都合で久々に地元に戻ることになったのだが、手違いで住む場所がないという憂き目に遭ってしまう。しかし初恋相手で幼馴染の秀弥と十年以上ぶりに再会。なんと彼からの提案で佐奈に新居が見つかるまでの同棲生活が始まる。昔と変わらず王子様のように優しく甘い秀弥に再び惹かれていくけれど……。彼の同僚からとんでもない話を聞かされた佐奈が激しくショックを受け家を出ると伝えると、秀弥は眼鏡を外し態度を豹変させて──「死ぬまで大切にする、もう逃がさない」その瞳に執着を宿し、欲を何度も奥に吐き出して……? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 津川佐奈=お人好しの会社員。10年ぶりに再会した幼馴染の秀弥とルームシェ アをすることになった。 徳澤秀弥=IT会社の社長で佐奈の幼馴染。 妹尾=秀弥の高校時代からの友人。 貴田麻央=社長令嬢。秀弥のことが好きでアタックし続けている。勤め先が借り上げた社宅に移り住むことになった佐奈は、不動産の手違いで契約がダブルブッキングとなり、指定された部屋に入居できないと聞いて困り果てていた。IT会社に吸収合併されるまではブラック企業だった会社がいきなり福利厚生をしっかりし出したのにも驚いたが、こんな高そうなレジデンスを社宅にしてくれたなんて、と感動していた。とはいえ、もう一人の相手も困っていることだろう。誤り倒す不動産屋を宥める眼鏡の青年を見ると、どこかで見たような。失礼と思いながらガン見していると思い当たった人物は、2歳上の幼馴染・秀弥ではないか。幼稚園から中学生になるまで面倒を見てくれた近所のお兄ちゃん。彼の方も気付いたようで、偶然の再会を喜ぶと、秀弥はとんでもないことを言いだした。新しい部屋が見つかるまでここで一緒に住まないか、と。夕方には佐奈の荷物がここに届いてしまうし、幼馴染なんだからルームシェアしようと。昔から人を疑わない性格の彼女は、その申し出を何ら不審に思うことなく、ありがたいと受け入れた。よくよく思えば、こんなブッキング、不動産屋がしでかすはずがない。ほくそ笑む秀弥の表情に全く気付かず、届いた荷物の荷ほどきを始めた佐奈であった。その夜、彼の手料理で改めて再会を祝った二人。借金により夜逃げ同然で引っ越した津川家を秀弥は随分心配してくれていたようだ。離れてからのことを請われるまま話すと、彼は当時の自分は何の力にもなれなかったと悔いていた。同居のルールも、普段はリモートなんだという彼が家事のほとんどを引き受けてくれて、佐奈は休日頑張ることを約束。しかし、いざ休日になると秀弥は彼女をあちこち遊びに連れ出すので、結局全て彼任せなのが申し訳ない。同居から暫く経ったある日、会社近くのレストランで友人らしき男性と食事をしている秀弥を見かけた佐奈は、普段の彼とは全く違う雰囲気にビックリ。後日、彼の友人・妹尾に呼び止められた佐奈。秀弥の普段の様子を聞かれ素直に答えると、妹尾が言うには実際の彼はとんでもない腹黒で女癖の悪い男なのだそうだ。なのに、あんな面倒なことしてまで君と同棲したかったなんて、と聞いてショックを受けた彼女は帰宅して秀弥を問い詰めた。すると彼女の前では物静かで優しいエリート風だった彼は豹変。秀弥は佐奈に子供の時から執着していたこと、そんな彼女が家族と夜逃げしたことでずっと探していたことを告げた。起業した会社が当たり、金を掛けたおかげで転々としていた津川家が漸く見つかった。しかし、佐奈の勤め先がとんでもないブラック企業だったので、全く業種が違うのに買い上げて子会社化。福利厚生を徹底させ、問題のある重役たちは全て解雇した。社宅にも絶対に飛びつくと思っていたからと色々手を回して同居に漕ぎ着けたと言う秀弥の執着っぷりが怖かった。ここまで大事に思ってくれているのは嬉しい。だがさすがに詐欺みたいなやり口は見過ごせず、出て行くと告げると押し倒され、結局関係を持ってしまった。以降の秀弥はエリートを装うことは無かったものの、佐奈が戸惑う程彼女を溺愛。何だかんだと絆されてると思わないでもないが、結局自分も彼のことが好きなんだろう。そんなある日、合同プロジェクトで組むことになった同業職種の担当・貴田が、長年秀弥に想いを寄せていたのを知り・・・。タイトル通りの内容です。幼馴染のお兄ちゃんから、想像以上に愛されていたら?今回のヒーロー・秀弥はとにかく幼馴染の佐奈が大好きで執着しており、目の前からいなくなってからというもの必死に探していました。なので、見つかったが最後。佐奈は掴まり暑苦しいほど溺愛されることに。でも、日が経つにつれ慣れもあるのか彼の想いを疑うことも無くなっていた佐奈の前に恋のライバルが現れます。社長令嬢でグラマーな美人。どこにも勝てる要素が無いけれど、彼が愛しているのは私だけだし、あなたにはあげないと宣言。この発言は秀弥を死ぬほど喜ばせ、令嬢は敗北するも、彼女にはずっと妹尾が思いを寄せていたこともあってそちらはそちらで纏まります。妹尾さんも根は良い人なので、個人的に人となりはこちらの方がタイプ。1年後、相変わらず佐奈LOVEな秀弥は見事結婚に漕ぎ着け、ベタながらハワイで夢の挙式を挙げて物語は〆全編通してコメディ調なお話でしたが、ヒーローの溺愛ぶりに絆されて行くヒロインの心境の変化が丁寧に描写されているお話だったと思います。とにかく、ヒーローの愛が重い。評価:★★★★☆
2024.07.02
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2024年3月刊夢中文庫プランセ著者:天衣サキさん今この瞬間だけは、あなたは私のもの──聖女だった母から蔑ろにされ、妹の第二王女には婚約者を奪われ、諦念を抱き生きてきた第一王女のセシリア。ある日、身を寄せていた教会で破滅的な影を纏った謎の男・ヴィルと出逢い、諦めるだけの人生だったセシリアは初めての愛に目覚めていく。けれど王女である以上、彼と寄り添える未来はない。そんなセシリアにある日縁談が持ち上がった。王族の義務から逃れられないセシリアはある決断を下してヴィルを誘惑する。震えるセシリアをヴィルは狂おしいほどの情欲で貫き快楽で蕩かしていくのだが……たとえ与えられるものが恐怖でも痛みでも、あなたからなら構わない── ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 セシリア=両親と妹から虐げられていた第一王女。ヴィルヘルム=帝国の第二皇子。正体を隠してセシリアと知り合う。 ロイガール=セシリア付きの護衛騎士。 ロージー=セシリアの3歳下の妹。我儘で傲慢な性格。 ルドヴィカ=故人。元聖女で娘のセシリアを嫌っていた。パヴィエール王国第一王女・セシリアは、王妃・ルドヴィカを筆頭に父王と妹姫のロージーから虐げられて育った。父は聖女だった母にベタ惚れで盲目的に従っていただけのようだが、ロージーは苛烈な性格のルドヴィカそっくりで、とにかく姉を虐めるのが楽しくて仕方ないらしい。数々の嫌がらせをされてきたものの、婚約者のヘンリーまで奪われるとは思わなかった。申し訳なさそうに婚約解消を告げるヘンリーに心苦しくなったが、もはや決定事項なのだから仕方ないと割り切った。以前はロージーの我儘を父が度々諫めていたので本来なら姉の婚約者を奪うなど許さなかったであろう。だが、去年王妃が病気で崩御して以来、政務も放り出し放蕩に明け暮れていると聞く。父の目が無いことで一層ロージーがやりたい放題ぶりが悪目立ちしているので、家臣たちも眉をひそめていた。それにしてもなぜ母はこんなにも私を嫌ったのだろう。物心ついた頃には既に邪険にされており、たまに顔を合わせれば憎まれ口ばかり。母に似たロージーばかりを可愛がっていた。長い事こんな状況では諦めてしまう癖が身に付いてしまったが、流石に精神が疲弊しきってしまった。正直、耳障りな妹の声を聞いているのも苦痛で体調不良と称して国境にある別荘に行くことにした。そこはルドヴィカの故郷でハリアットという街。父が母の為に建てた別荘があり、そこに身を寄せることになったセシリアはルドヴィカの日記を携えていた。人の日記を見るのは気が引けたもののどうしても母の本心が知りたかったから。しかし、日記には聖女の術がかかっており開くことができない。諦めかけていた頃、妙な夢を見たセシリアは翌朝突然聖女の力に目覚めていた。恐る恐る日記に手をかざすと術が解除されてページが開き、驚愕の事実を知った。ルドヴィカは愛する夫との第一子であるセシリアの誕生を心待ちにしていて妊娠発覚から暫くは喜びの言葉で溢れていた。だが、いざ産まれて数か月経つとルドヴィカの聖女の力は薄れていき、セシリアに神聖力が溢れていることが判った。娘が次代の聖女と知り、母は力が使えるうちにセシリアの神聖力を封じていたという。喜びと幸せの文章から一気に娘を呪う言葉ばかりになって彼女は日記を閉じた。本来聖女の力は遺伝しない。だが次の聖女が現れると当代の聖女は力を失う。聖女であることに誇りを持っていた母は赤の他人ならともかくそれが娘だと言うことで余計に思う所があったのだろう。理由は判ったがこんな理不尽なことで嫌われていたのだと思うとやりきれない。でも、後々面倒なことになりそうなので自分が聖女だと言うのは当面隠しておいた方が良さそうだと漠然と思った。それから暫く経って、懇意にしていた女性神官からパヴィエールと隣国・カサンドロ帝国が戦争になりそうだと聞いた。そして国境にあるこの街から早く離れるよう忠告もされた。どうやら、父が未だに政務を放り出しているおかげで過激派の高官たちが呪術師を使い帝国に徒なそうと目論んでいるらしく、それが当の帝国の耳に入ったようだ。帝国の怒りは尤もで、攻め込まれればこの国はひとたまりもない。結局どこに逃げても同じだとセシリアはこの地に留まることを決めた。そんなある日、彼女は雨宿りさせてもらった教会で一人の青年と出会った。彼はヴィルと名乗り、一見近づきにくい印象であったが話してみると気さくで、少し変わった受け答えをするセシリアを気に入ったようだった。その後、街中で度々ヴィルと遭遇。会話しているうちに彼が帝国人だと判った。そしてヴィルもあの神官と同じく彼女に避難を薦めていた。固辞し続けているとそのうち説得を諦めたヴィルはハリアットから姿を消していた。数日後、護衛騎士のロイガールから王都で襲撃事件があったこと、その際、呪術師とその雇い主の貴族達が全員惨殺されたと報告を受けたセシリア。指揮を執っていたのは帝国の第二皇子らしい。カサンドロに悪さをする前に乗り込んで全て粛清したということはこれで戦争は回避されたとも言える。勿論、パヴィエールは相当の賠償を要求されるだろうが、直接王都に乗り込んでくれたおかげで結局一番危険視されていたこの街の民は救われたのだ。ほっとしたのも束の間、セシリアの元に怪我を負い更に呪詛を掛けられて弱っていたヴィルが訪れた。彼に心惹かれていた彼女は死なせまいと封じていた聖女の力を発揮しヴィルを救うと倒れ、目覚めた彼に聖女であることがバレてしまった。その後、すっかり距離が縮まった二人はロイガールが止めるのも聞かず仲睦まじく暮らしていたが、彼女宛に王宮からの書簡が届いた。そこには協議の結果、パヴィエールが帝国の属国化が決定したこと、忠義の証としてセシリアが皇帝に献上される旨が記載されていて・・・。一応、聖女ものになるんですかね?お互いの素性を知らず恋に落ちたセシリアとヴィルヘルム。ヴィルは彼女がいるハリアットを戦場にしないために直接呪術師をせん滅することで戦争回避させることに成功するも、呪詛を受け死にかけた所、セシリアの神聖力によって救われ、一層彼女に惚れるのでした。そのうちにセシリアが王女と知り、ロイガールから彼女の境遇を聞くと怒りに燃え、先ず国王とロージーの抹殺を心に誓います。そんな折、彼女が皇帝の側室になることが決まり、せっかく結ばれたというのにセシリアは彼に別れを告げ王都に帰還。その間、ヴィルは手をこまねいているわけはなく、父である皇帝に呪術師を一掃した褒賞として第一王女は俺が貰うと談判し、皇子妃にする許しを得たのでした。セシリアは、処女でない事を理由に後宮入りを辞退する覚悟だったものの、迎えに来たのがヴィルでビックリ。ちゃんと皇帝には筋は通したと笑う彼が自分の夫になると判って嬉し泣き。国王は政務の放棄で国を危険に晒したこと、ロージーは国費の使い込みによる贅沢三昧と使用人たちへの傷害など数々の罪に問われて王籍剥奪の上処刑が決まった時はスッキリしました。あの妹が歪んだのは過分に両親のせいではあるんでしょうけど、善悪分別つかない年でもないんだからその後の悪事は完全に自己責任だと思います。とはいえ、極刑になるようヴィルが手を回したようなので、妻を虐げた連中に慈悲など要らんという徹底ぶりが凄い。それだけに諸悪の根源であるルドヴィカが逃げるように早死にしてるのがモヤりますが。王位は王が侍女に産ませた王子・ジョージが継ぐことになるんですが。この子はセシリアと仲が良かったことでヴィルからも可愛がられていることがおまけの後日談で語られていました。お話自体は貴族TLとして割と王道展開だったと思います。評価:★★★★★
2024.05.19
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2022年9月刊夢中文庫プランセ著者:ととりとわさん心優しい彼との新婚生活は、私にはじめて訪れた幸せ──親友に巻き込まれ異世界へきてしまった瑠衣は、ならず者に追われていたところを黒衣の騎士に助けられる。しかし彼こそ『異界人』を捕らえる命を受けた騎士団長・ギドゥだった。素性を隠しながら働く瑠衣は逞しく優しいギドゥに強く惹かれていくのだが、ある日突然彼から求婚されて……。『何があっても君を必ず守ってみせる。命が尽きるまで一緒だ』 ギドゥの与えてくれる甘く深い愛情にとかされながらも、抱える秘密の重さに悩み続ける日々。そこへ、瑠衣がこの世界にやってくる原因となった親友そっくりな女性が現れて……!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 榊瑠衣=親友と共に異世界トリップして来た日本人女性。 ギドゥ=王国騎士団長。ワケありの瑠衣を匿う。志田真莉奈=瑠衣の親友。 ローセ=ギドゥの育ての親で旅籠の女将。その夜、マンションの屋上で瑠衣は、恋人が心変わりしたのはお前のせいだと親友の真莉奈に責められた挙句、自殺をほのめかされ必死に宥めていた。しかし、興奮している親友は耳を貸さず、瑠衣を巻き込み身を投げた。死を覚悟した彼女に衝撃は訪れず、それどころか柔らかい草の上に落ちていて茫然。おまけに何故か真っ裸。近くにいたならず者に追いかけられ死に物狂いで逃げていた瑠衣はガタイの良い黒衣の青年に助けられた。彼はギドゥと名乗り、王国騎士団長だと言う。王国?騎士団長?一体なんのこっちゃとパニ来る彼女に外套を掛け、旅籠に連れて行くと女将のローセに瑠衣を預けた。彼が立ち去り、ローセに話を聞くとギドゥは見るからにワケありな者を一先ずここに連れて来て結構な額を預けて世話を頼むのだそうだ。養い親の自分を信頼し頼りにしてくれてるのは嬉しいんだけどねと女将は笑っていたが、瑠衣のことも色々察しているようだが敢えて尋ねずに、誰にも自分の素性を明かしてはいけないと告げた。でないととんでもないことになるからと。あれから瑠衣は考えた。状況的にこれが俗に言う異世界トリップというやつなのかと。帰れる方法も無いのならここで生きて行かなければならない。ローセの忠告もあって瑠衣は「ルイゼ」と名を変え旅籠の従業員として働いていた。このアルダノア王国はたまに現れる異界人に対して良い印象を持っていない。なんでも、その昔やって来た異界の男が当時の王妃を誑かし王位簒奪を目論んだらしい。ローセによれば若干盛って伝わっている話だと言っていたが、今でも続く異界人狩りを思えば王妃と異界人が恋仲になったのは事実で王家の恨みを買ったのだろうとのこと。そして、ギドゥ率いる騎士団の主な仕事が異界人狩りであった。彼はあれ以来、度々訪れては瑠衣と話をして行く。見かけによらず穏やかなギドゥに心を寄せていた彼女は胸を痛めた。ローセが口を酸っぱくして素性を明かすなと言っていた意味が分かったから。それから暫く経って、瑠衣がこの世界にやって来て半年が過ぎた頃、彼女はギドゥからプロポーズをされた。実は一目惚れだったと聞いて嬉しかったけれど、彼に素性を偽らなければいけない事が心苦しくもあった。王国には明確な貴族制度は無く、何かしらの才があれば重用されると言う。孤児だったギドゥが腕っぷしだけでのし上がり今の地位に付き、一城の主と聞いて嫁いで来た瑠衣はその居城の大きさに驚くばかり。彼は使用人たちからも慕われており、その妻になった瑠衣も歓迎された。特に専属侍女となったダァヤとは歳も近いので仲良くなって穏やかな日々を過ごしていた。一方、ギドゥは今日またもや現れた異界人の少女を匿い、ローセの元に預けた。今回の出動は近隣住民からの通報だったが、異界人は何故か全裸で出現するので見つかればすぐにバレる。だが、動物を彼らと見間違えた誤報も多いので今回も上には小型の熊だったと報告書を出すことにした。宰相のガーダスはあれほど定期的に現れていた異界人の捕縛が無くなったので訝しんでいるようだったが、いつまで昔話に踊らされて罪のない彼らを処罰するのか。無能と罵られたが甘んじて受け入れ愛しい妻の待つ城へと帰ろうとすれば、最近やけにガーダスから薦められる名家カルージアの令嬢・アルミナからしつこく迫られ辟易としていた。自分はもう結婚しているのでと断っても、騎士団長なら愛人の一人や二人囲って当然とありがた迷惑極まりない。ギドゥが剣の指南をしている国王ソックが諫めてくれているがどうすれば諦めてくれるやら。だが、今日は本当にしつこい。腹に据えかねてきっぱり拒絶したら、ルイゼを害すると仄めかされて慌てて帰城すると、使用人たちが大騒ぎしていた。ルイゼが行方不明になったと聞き、宰相を問い詰めるべく王宮へ逆戻りするギドゥだったが、その頃、瑠衣は王宮の地下牢でかつての親友・真莉奈と再会していて・・・。異世界トリップしたヒロインがそこで出会ったヒーローと恋に落ち結ばれるという、タイトル通りの内容です。瑠衣(ルイザ)の素性などギドゥは出会った当初から気付いていました。他の国では異界人を迫害などせずに受け入れて共存しているようなのに、いつまでもこの国は変わらないまま。国王のソックもギドゥの考えに賛同しておりこのルイザの誘拐事件を機に改革に乗り出します。一方、瑠衣はかつての親友もやはり同じく転移していたことを知り再会を喜んでいましたが、奴隷商人に捕まったと話す真莉奈は壮絶な体験していて一層卑屈になっていました。でも、カルージア家の当主に取り入ってまんまとその養女に収まってアルミナと名を変え、ギドゥのの妻の座を狙っていた。なのに、瑠衣が彼と結婚してしておりその目論見もパァ。前の世界と同じく、あんたは目障り極まりないと理不尽な恨みをぶつけられて瑠衣は戸惑います。とはいえ、恋人が瑠衣に惚れて真莉奈が捨てられたと言うけども、それって彼女のせいじゃないからなぁ。この直後、助けに来たギドゥの姿を見て逆上した真莉奈に刺されて瑠衣は重傷を負うも、一命をとりとめ、現行犯で捕まった真莉奈は罪を問われることに。彼女の逮捕で宰相とカルージア家も騎士団長夫人の誘拐に手を貸したとして芋づる式に捕まり、異界人狩りを推奨していた過激派は瓦解。ソックの宣言の元、異界人への迫害は禁止となるのでした。それからまた少し時が経ち、瑠衣も素性を偽る必要は無くなり、ギドゥとの子を妊娠したと報告したところで幕。正直、設定が設定なので、数回あったラブシーンを1回削ってでもその分補完して欲しい所がチラホラあったのが少し残念。内容自体は面白かったと思います。評価:★★★★☆
2024.05.18
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2024年3月刊夢中文庫プランセ著者:宇奈月香さん「今度こそ誰にも渡さない」ーー婚約者に浮気され一方的に婚約破棄を言い渡されただけでなく、彼らの悪巧みで悪女に仕立て上げられた子爵令嬢エレーヌ。以来、周囲から白い目で見られる中、エレーヌは完璧と名高いサルヴェール公爵が育てたという特別なバラの苗を手に入れるため、バラの品評会に訪れた。しかし、そこでも元婚約者と遭遇し、いわれのない誹りを受けてしまう。公爵のバラも手に入りそうになく、諦めて帰ろうとしたそのときーー「八年八ヶ月と二十三日前に助けていただいたあなたの一番の愛玩なめくじもどきのダンズです。エレーヌ、私と結婚しましょう」大勢の前で、突然かの公爵に跪かれ、おかしな求婚をされたのですが!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 エレーヌ=婚約破棄された翌日に皇弟のルカから求婚された子爵令嬢。 ルカ=公爵位を持つ皇弟。フェリックス=エレーヌの元婚約者。 レイラ=豪商の娘でエレーヌの従妹。婚約者の母から厳しい淑女教育を受け、今では立派な淑女に成長したエレーヌ。だが、そんな彼女を婚約者・フェリックスは何の面白みも無い女と卑下し、剰えエレーヌの従妹のレイラと浮気。そのレイラが妊娠したから婚約破棄すると宣言。この婚約自体、フェリックスの祖父の悲願でもあったため、孫が勝手に取りやめたら前伯爵はさぞ嘆いている事だろう。無駄かと思いつつ指摘してみたものの、故人の意向より今生きている者の意思だろうと尤もらしいことを言ってくる。彼の横には勝ち誇った笑みを浮かべる従妹。現状、フェリックスから性悪だの嫉妬深いだのエレーヌが悪し様に罵られているのは、どうやらある事ない事レイラから吹き込まれたらしい。それにしても婚約破棄するにしたって、帝国で一番人気のパティスリーでする会話ではない。聞き耳を立てる令嬢方の多い事。おかげでエレーヌの悪評は数日のうちには社交界に出回ることだろう。どうでも良くなって婚約破棄について承諾すると、今度は本当に可愛気が無い女だと悪態をつかれる始末。盛り上がっている本人達を他所に、この婚約破棄に関しては両家に波紋を呼んだ。エレーヌの家族は激怒し、レイラの実家が営むアドラー商会へ抗議の末、援助も打ち切ると勧告。フェリックスのバーム伯爵家へは抗議と慰謝料を請求することになった。どちらも不服として子爵家に怒鳴り込んで来たが、常識を考えれば当然の措置である。この騒動によりエレーヌは暫くは公の場には出ない方が賢明と、屋敷に引き籠るつもりだったのだが、天才肌故に友人が出来ず表に出たがらなくなっていた弟・ミケルからの頼みで、バラの品評会に出掛けることに。ミケルによれば、皇弟・サルベール公爵が品種改良した三色のバラが展示されるらしく、その苗を購入して来て欲しいという。いや、そんなバラは高位貴族でないと分けてもらえないんじゃ、とも思ったけれど、可愛い弟の頼み。研究に使いたいらしいから頼むだけ頼んでみよう。意気込んで出かけたのはいいものの、会場でデート中のフェリックスたちとバッタリ。一人で参加したエレーヌを馬鹿にし難癖を付けて来る。いい加減腹が立って来た頃、会場の警備に参加していた兄・ジュストが現れると彼らは逃げて行った。近衛騎士団副団長を務める兄に、ルカ・サルベール公爵とコンタクトを取りたいと頼み、例のバラを見に行くと美しさもさることながら見事な品種改良ぶりに生物オタクであるエレーヌは歓喜。褒めちぎっていると公爵が現れ恐縮する彼女に彼は膝をつき、なんといきなりのプロポーズ。その口上によると公爵はエレーヌに大恩があるらしい。いや、でも私たち初対面ですよね?しかし、8年8ヶ月と23日前ぶりの再会とはまた随分具体的な。それに彼はなめくじもどきのダンズと名乗っていた。騒然とする場内を他所に、その日は早々に退散したが、あの求婚は嘘ではなく3日後になると屋敷にはあのバラの苗と共に正式な求婚状、エレーヌ宛に公爵邸への招待状が届けられた。婚約破棄されたばかりなのもあり、両親はいくら皇族からでもこの結婚話に渋っていたが、エレーヌの方はダンズと名乗った彼が気になって仕方ない。招待に応じ、公爵邸に赴くと出迎えてくれたルカに徐にあなたがダンズってどういうことかと尋ねた。ダンズとは正にルカが言っていた8年8ヶ月ほど前にエレーヌが保護して暫く子爵邸で世話していた不思議な生物だった。どの図鑑にも載っておらず全身黒くて紫の一つ目、腕のような触手がありナメクジのように移動する不可思議な生き物。強烈な悪臭を放つ口には参ったが、エレーヌはダンズと名付け可愛がっていた。だが、暫くするとダンズは異国の島に住む珍獣であり、輸送途中で逃げ出したと飼い主が引き取りに来て本来の居場所へと戻って行った。ルカの話す状況はさも当事者のようで、彼女の記憶とも合致する。でも、彼の珍しい紫色の瞳は確かにダンズと同じもの。間違いない、ルカは本当にダンズなのだ。だが、彼は何故あんな姿だったんだろう。ルカの話によれば呪いに掛けられたのだという。帝位継承争いで兄の一派が魔術師を雇いルカに呪いをかけた。当時8歳だった彼はあのなめくじもどきとなり、離宮に引き籠っていたものの、数年経っても戻る気配は無く誰もががその不気味な姿と放つ異臭を嫌い世話をしたがらなくなった。自暴自棄になったルカは馬車に張り付いて家出を決行するも、落ちた沼付近に遊びに来ていたエレーヌに拾われたのだった。その後、子爵が妙な生き物を娘が飼っているとの話を聞きつけ、王家が探りを入れルカと判明。侍従長が飼い主と偽り彼を連れ帰ったのだそうだ。しかし、すっかりエレーヌに惚れこんでいたルカは彼女に会いたくて堪らず泣き暮らしていた。するとある朝目覚めると本来の彼の姿に戻っていたのだと。何故呪いが突然解けたのかは不明だけれど、これでエレーヌと恋ができる。婚約者がいたので悩んでいたら、運良くあちらから破棄してくれたので、チャンスを逃してなるものかとプロポーズしたらしい。身分差がどうこう言われるなら爵位を返上するとまで言われたのには驚いたが、あの可愛いダンズがルカだったってだけで好感度は爆上がりだった。両親にも彼を信じているから結婚したいと伝えると渋々ながら許可を得て、晴れて二人は婚約。ルカは彼女の為にと貯めていた金を湯水のように使い貢いで来るには困ったけれど、生物観察が好きなエレーヌの為にあの沼へと連れて行き、泥んこになるまで遊んだりもした。そんなある日、ルカと皇家主催の競馬大会に出掛けたエレーヌはまたもやフェリックスと遭遇。二人きりで話したいと請われ、嫌々ながら応じると、レイラと伯爵夫人の折り合いが悪い事。レイラにやる気が無いことなど愚痴を捲し立てると、エレーヌと復縁したいと言い出して・・・。呪いに掛けられた第二皇子が自分を助けた令嬢に恩義と恋心を抱くのは至極当然。彼女が婚約破棄されたのは気の毒だけどこれで自分にもチャンスが。当初、エレーヌは身分差で彼との結婚を悩んでいましたが、ルカがダンズと知ってからはその想いを受け入れる決心をします。その矢先、あの最低男の復縁要請ですよ。どの面下げて。おまけにエレーヌのお相手が皇族だって判って言ってるのか。それ以前に色々承知の上でレイラと婚約したくせに愚痴るとかさぁ。そこを指摘されるとまたもや逆切れ。暴力を振るわれそうになった彼女を救ったのは勿論ルカ。この時の伯爵家は婚約破棄の時の慰謝料始め、伯爵の女遊びと借金のせいで火の車。エレーヌとよりを戻し、慰謝料免除を目論んでいたようですが思惑通りに行くはずがない。大体、エレーヌと結婚してもレイラは愛人として囲うとかアホなこと言ってる時点でね。予想通りに破滅の道を辿っていく伯爵家の様子にルカはほくそ笑んでいました。勿論、レイラの方も援助打ち切りで四苦八苦。大分駆け足でしたが見事にザマァされててスッキリ。実はルーヴィエ子爵家の面々は代々多岐にわたる分野の天才を輩出しており、帝国を支えていました。ジュストは剣術、ミケルは知能が高く謀略に長け、エレーヌは生物学の天才。フェリックスの祖父も建前を付けて子爵家の者と縁を結びたかったのはこうした事情もあったようですが、ホント、逃した魚は大きいね。エレーヌが結婚後に出すらしい生物学の本は凄いものになりそう。評価:★★★★★
2024.04.05
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2024年2月刊夢中文庫セレナイト著者:朝陽ゆりねさん王国最南端のド田舎の領主の娘・伯爵令嬢アンティエンヌはある日、領地内の山で怪我をした青年・レイを助ける。彼の秀麗で洗練された雰囲気からどこかの高位貴族だと確信したが、正体を明かしたくない様子のレイに深入りしないと決め、屋敷で面倒を見ることにした。ともに過ごすにつれ、互いに惹かれ合う二人。そして、怪我が完治したレイに「一緒に王都に来てほしい」とアンティエンヌは乞われた。しかし生まれ育った愛する地を離れる決心はすぐにはつかない。そんなアンティエンヌに「僕は、実はとても頑固で、あきらめが悪いんだ。今は無理でも、きっと願いをかなえるつもりだ」と告げたレイの求愛はまさかの展開で……!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 アンティエンヌ=地方領主を務める伯爵家の長女。 怪我をした青年・レイを助け恋仲になる。 レイ=正体不明の青年。アンティエンヌとの結婚を望んでいた。 ラグナス=リゼイン伯爵家の住み込みの使用人。 ラメリア=王太子妃。王都から遠く離れたド田舎クレハロッズ州の領主・リゼイン伯爵の長女アンティエンヌは明るく飾らない性格で領民たちから好かれていた。伯爵とは言っても、元々リゼイン家は平民で昔国王に気に入られて爵位を賜ったという所謂新興貴族だ。一度王都に出向いた際、名ばかり貴族と揶揄されて以来、自嘲のように名ばかりですが、と名乗っている。でも彼女はこの地と民たちが大好きだったし、ここを離れるくらいなら一生独身だってかまわない。もうすぐ成人する娘がそんな調子なので父は頭を抱えていた。ある日、人手が足りないという知人宅の畑仕事を手伝っていたアンティエンヌは帰宅途中、診察所の前で怪我をした青年が診察を受けられず難儀している所に遭遇。どうやら間の悪いことに医師が往診に出ていて暫く帰らないと聞いて絶望していたようだ。見ると応急手当を受けたらしい添え木をあてられた足。観光客だと話す彼はレイと名乗り、雲海を見に山を訪れ帰り道で滑落。酷く足を捻ったらしい。幸い、近くを通りかかった領民にここまで連れて来てもらったものの、医師は留守で痛みは増すばかり。事情を聴いて見かねたアンティエンヌは医師が常駐しているからと、彼を馬に乗せ屋敷に連れ帰った。素性の知れぬ男を連れ込んだと父には叱られたが、身形や所作からして恐らくレイは貴族だ。それもかなり高位の。知らんふりして後で問題になっても、と宥めると、父は渋々レイの滞在を許可した。どちらにせよ、酷い捻挫と診断された彼は歩くのもままならない。完治までひと月はかかると言われていた。レイは博識で話し上手、母や兄弟たちもすぐに彼を気に入り、療養中は仲良く過ごした。特にアンティエンヌとは馬が合い、時に議論も交えこの領地に必要な事も判って来た。ただここが好きなだけではダメ。もっと色々勉強しなければ。そもそも次の領主は兄のカルディなのだが、生涯この地で過ごし補佐とまで行かずとも知識があるに越したことは無い。レイに王都に来ないかと誘われたが頑なに断っている。それから暫く経って足も完治し、いよいよレイも帰ることになった日、その頃には両想いになっていた彼らは離れ難く、一線を越えた。指輪も貰ってプロポーズもされたのに、やはりどれだけ請われてもアンティエンヌはここを離れたくないとレイからの誘いも固辞。これ以上滞在は伸ばせず、渋々とレイは王都へ帰ったが、別れ際、彼はアンティエンヌに僕は諦めが悪いからと何やら意味深な言葉を口にしていた。レイと離れて2ヶ月ほど経った頃、アンティエンヌは人知れず虚無感に苛まれていた。彼より故郷を選んでしまった。我ながら馬鹿かと思ったけれど、でも王都はどうにも性に合わないのだからしょうがない。そんなある日、王家から招待状が。第二王子・レイゼットの誕生日祝いとお妃候補選出を兼ねた舞踏会が開催されるらしい。独身で適齢期の子女は全員出席するように記載されていたが、王都は遠い。ドレスを作るにも日にち的に間に合わないし、それに出席してもまた貴族達から田舎者と蔑まれるだけ。執事から絶対に行くべきと叱られたが結局欠席してしまったアンティエンヌ。だが、そのひと月後、王家から直々にリゼンヌ家全員王宮に来るよう命令書が届いて・・・。読者からすれば名前からしてレイが第二王子だとすぐ判るんですけど、鈍いアンティエンヌは全く気付かず。全員出席の言葉を無視してバックレたからお怒りなのかもと父も蒼白。だから出席しなさいと言ったのに、結局娘の自由意志に任せてしまったと後悔しても後の祭り。一体どんな罰がと戦々恐々としていると、待っていたのはなんとレイゼットとアンティエンヌの結婚話。どうしても彼女と結婚したいのだと息子から頼まれて国王夫妻も折れたという。先日の舞踏会で二人の婚約を発表するはずだったと苦い顔で告げられ、アンティエンヌも茫然。いや、まさかレイだと思わなかったし。その後、改めて求婚されたものの、彼女は相変わらず頷かない。ここまで来ると意地というのも判っている。だがそれ以前に自分などが王子妃とか無理だと悩む彼女を後押ししたのは幼馴染で使用人のラグナスでした。あなたが王子妃になれば、クレハロッズもその恩恵を受けることになると。外からでも故郷に出来ることは沢山あるはず、幼馴染からの言葉は目から鱗で漸くアンティエンヌは求婚に応じると決めるのでした。その後、レイの義姉・ラメリア王太子妃から悩みを打ち明けられたことを切欠に意気投合したり。最後はレイと結婚して終わっています。ヒロインが快活で良い子と好感は持てるんですが、あの偏った思考についてはちょっと。子供時代、王宮で貴族達から悪し様に馬鹿にされたのがトラウマになったというのも判るものの、あれほど好きな人からの求婚を断るほどでもないような。そもそも王子妃にそんな悪口を面と向かって言う人もいないでしょ。それこそ陰口に耳を貸す必要も無いわけだし。あと、ラグナスとラメリアによるアンティエンヌへの説得エピがとんでもないセリフ量で読んでて少し辟易(^_^;)好きな作家さんだけど、こんなにくどい事書く方だったっけ。評価:★★★★☆単純なストーリーではあるのでもう少し簡潔でも良かった気が。
2024.03.17
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2023年12月刊夢中文庫セレナイト著者:伊月ジュイさん「早く元気になって、この家から出ていってください。でないと襲ってしまいますよ」ーー買われるような形で結婚し、無感情の虚しい日々を過ごしていた美詩(みこと)は、ある日の火災で夫を亡くす。その火災に巻き込まれて入院中の美詩のもとには、夫の顧問弁護士・暁規(あかつき)が頻繁に訪れていた。彼は、生前の夫との契約により、美詩の後見人という役目を負っているらしい。自立できるまで彼の手を借りることにした美詩だったが、暁規の世話は驚くほど献身的で心が落ち着かない。非情な仕事人間だと思っていた彼に毎日甘やかされて美詩の心は溶けていくも、こんなに優しいのは契約に則った仕事だから……そう言い聞かせていたけれど? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 安座間美詩=資産家の未亡人。火事で建物の倒壊に巻き込まれて重症を負い長期 間入院していた。 暁槻縁士=安座間家の顧問弁護士。退院した美詩の後見人を務める。 雪平凛子=暁槻の弁護士事務所の事務剣アシスタント。 安座間岳有=故人。美詩の夫で無類の美術品コレクター。 安座間豪生=岳有の弟。資産家の末っ子として産まれた美詩は、大学卒業と同時に親ほどの年齢の安座間岳有に嫁がされた。実家はもうずいぶん前から金に困っていたようで、所有していた土地をもかなり手放していたらしい。姉達も皆少しでも羽振りの良い家に身売り同然で結婚していたのを見るに、美詩もこうなることは予想が付いていた。夫は美術品や骨とう品に目が無い、相当な資産家だった。美詩が娶られたのも美しいからであり、妻としてではなくあくまでコレクションの一つとして愛でていた。そのせいか、穢れないことこそ価値があるとばかりに同衾することも無い。暴言や暴力とは無縁だったし、用意された衣服は全て極上品。しかし、人形のような扱いは数カ月もすれば心を疲弊させる。そんな生活が5年も続いた。美詩が27歳になったある日、屋敷の離れで火災が発生。よりによって岳有がそこにいることを思い出し、助けに向かった彼女は建物の倒壊に巻き込まれて救急搬送された。目覚めるとあの火災の日から3ヶ月経っており、頭を強打した美詩はその間昏睡状態にあったようだ。傍には安座間家の顧問弁護士・暁槻の姿が。その時はすぐにまた意識を失ってしまったがそれから一ヶ月も経つと、身体を起こすこともできるまでに回復。幸いにも火傷はしていなかったが、長らく寝たきりだったのでリハビリは必須の上、頭部を怪我したせいで眩暈などの後遺症は残るだろうとのこと。夫の岳有は離れにて遺体で発見されたと聞く。暁槻が訪れていたのは今後のことを説明するためであったが、何だかんだとしょっちゅう見舞いに来ており、慰めになればと犬と熊のぬいぐるみをプレゼントまでしてくれた。やがて、静養を条件に退院許可が下りた美詩に、暁槻は岳有からの遺言を伝えた。元々歳の離れた妻の為に色々考えてはいてくれたようだ。金融資産のほとんどは美詩に譲られ、残りは岳有の親族に。そして、焼失を免れた母屋にある美術品の一部は美詩の実家に譲渡すると言う。どうやら、結婚の際に援助と遺産の一部を譲ると約束していたらしい。その代わりに一切美詩には関わらないという念書迄作成していたというから驚きだ。道理であの強欲な両親が病院に押しかけて来なかったわけだ。正直、妻としての役目を碌に果たしていないのに夫の遺産で悠々自適に暮らすのは気が引ける。静養しながら資格取得の勉強をして自立したい。そう暁槻に話すと遺言にはまだ続きがあるようで、今後の美詩の面倒は後見人として彼が面倒を見るという。そのための費用は預かっているそうだ。何とも過保護過ぎる遺言だが、人形のように扱っていたことに対する岳有の償いだと思えばいいと諭され渋々納得。どちらにせよ、医師からは静養することを厳命されているし、少なくとも1年は働くなど無理と言われていた。住居は暁槻が用意してくれると言うので退院した日に行ってみると、何と彼の事務所の2階にある住居スペースで暫くは暁槻と同居と言うから驚いた。頻繁に目が回るし、昏倒する危険性も否めないため誰か介助できる人と暮らした方が良いとは言われたが、後見人ってそこまでするもの?しかし、相手は海千山千のやり手弁護士。世間知らずのお嬢様は上手く言い含められてしまった。彼との同居は緊張し切りかと思いきや思いがけずに快適で、素の暁槻と接するうちに段々心惹かれていく美詩。ふとしたきっかけで事務所にも出入りするようにもなり、事務の凛子とは随分打ち解けた。最初は彼との仲を疑ったりしてもやもやしたものの、凛子は暁槻の同僚の弁護士・野々上に気があると知ってホッとしていた。やがて、暇を持て余した美詩はお菓子作りに精を出し、その腕前から暁槻にパティシエの資格を取るかカフェの経営をしたらどうかと薦められ俄然やる気に。そんな日々が続いた頃、岳有の弟である豪生が事務所を訪れて、美詩を引き取りたいと申し出て・・・。義弟の登場で事務所は騒然。遺産目当て?かと思いきや、豪生さんは生前の兄に対して思う所があったよう。娘ほどの年齢の妻を迎え、着飾らせて客に見せびらかすなど人形と変わらない。だから遺産の大半が美詩のものになったのも彼は納得していました。事故の後遺症で無理のできない体になった彼女を引き取り世話をしてやりたいと話す豪生は暁槻のことも良く思っていませんでした。兄の遺品整理をしていて見つけた一枚の契約書の写し、それは美詩を暁槻に譲ると言うものだったのでビックリ。こいつは義姉と共に遺産を好き放題するつもりなのではと。勿論これは豪生さんの早とちりで、そもそも美術品に目が無い岳有さんは欲しいものを手に入れるために犯罪すれすれの手も使ってきて敵も多かった。残される美詩の今後を思い、自分が死んだら兼ねてより彼女を自由にしてやれと憤る暁槻に譲ると約束していたのです。この契約は美詩の実家が手を出せない様するためでもあり、岳有の死後連れ戻されて他の資産家に売られる可能性が高いから。偏に暁槻を見込んでの計画でしたが、夫としてはクズだったけどそれなりの見返りは考えてたんだなと。暁槻から岳有との約束が全て語られ、彼の側にいたいと美詩が望んだことから豪生も納得。その後、二人は晴れて恋人関係になって終わっています。プロポーズもしていたから、きっとあの後入籍したんでしょうね。旦那が異常偏愛な人で美詩も相当な苦労したみたいだけど、初めて好きになった人と結ばれて本当に良かった。ぶっちゃけ悪人というか嫌な奴?は美詩の両親くらいだったし、モヤモヤ度はかなり少な目。その辺は安心して読めるお話です。評価:★★★★★
2024.03.16
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2023年9月刊夢中文庫プランセ著者:西篠六花さん国を滅ぼされ十一歳で後宮に入り、六年のあいだ皇帝に捨て置かれたリアーヌ。ある夜、薬草園で端整な顔立ちをした青年と出会い、後宮の誰かと逢引きしているのかと問いかけるも彼は否定しなかった。翌日その青年が、リアーヌの前に再び現れる。彼は皇帝の弟・ラウルで、生粋の軍人である彼は領土拡大に尽力した褒美にリアーヌを貰い受けたいと申し出、下賜されることが決定した。なぜラウルが自分を所望したのか分からぬまま始まった新婚生活で、リアーヌは甘やかに抱かれるたび、彼には逢瀬を重ねた想い人がいる事実に胸を痛める。誰かに必要とされたい、自分だけを愛して欲しい──皇弟の深愛はそんなリアーヌの心を開いていって…… ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 リアーヌ=元大公女。長らく皇帝の側室の一人として後宮にいた。 ラウル=皇帝の弟。後宮でも忘れ去られていたリアーヌを妻に迎える。 イザベル=皇帝の寵姫。 アシル=ヴァロン帝国の皇帝。11歳の時、ヴァロン帝国の新皇帝・アシルの侵略戦争によって故郷を滅ぼされた大公女・リアーヌ。城に攻め込まれた際に家族も全員亡くなり、母のたっての願いで侍女と共に逃亡を図ったが、敢無く捉えられ、今は帝国の後宮で暮らしている。薬草と薬学が盛んだった公国出身なこともあって、後宮の庭に薬草園を作りひっそりと日々を過ごして6年。子供だったことが幸いして一度も皇帝の渡が無いのは助かった。そもそも彼は美人で名を馳せた寵姫・イザベルに夢中で15番目の側室の存在など忘れているのだろうから。そんなある日、リアーヌは自分の離宮近くで一人の青年と出会った。皇帝以外は男子禁制の後宮に堂々と立ち入る彼に呆れつつ、騒動になる前に早々に出て行けと忠告したものの、彼はその後も度々後宮を訪れ、リアーヌと言葉を交わした。彼は捨て置かれたような境遇の彼女を心配し、その名を聞いて驚いていた。この会話の後、青年は顔を見せることは無くなったのだが、暫く経って側室も全員参加の論功賞の祝いの場で彼の姿を見つけた。そして青年が皇帝の異母弟・ラウルと知って驚愕。数々の武功を挙げたラウルは華やかな場が苦手らしく、そんな彼が珍しく参加したことから注目を集めていた。そして、あろうことか褒賞としてリアーヌを妃にしたいと申し出たのだ。アシルも意外な返答に驚いていたが、存在すら忘れていた敗戦国の姫ということもあってあっさりと許可をした。善は急げとばかりに、翌日早々にリアーヌはラウルのアデラール公爵家に嫁ぎ、その屋敷で暮らすことに。使用人たちも皆気の好い者ばかりで、ラウルも庭の一角に薬草園を作りたいとダメもとで頼んだら二つ返事で快諾してくれた。しかも、庭師に混じって土を耕す手伝いまでしてくれて申し訳ないやら。天涯孤独でひっそり生きていた彼女にとって、公爵家での暮らしは穏やかで幸せな日々だった。皇弟の妃になったことで、社交界にも顔を出す機会も増えたが、何故だかイザベルからの風当たりが強いような。明らかな嫌がらせを受けたのもあって、彼女は確信した。実は少し前、ラウルとイザベルが意味深な会話を交わしていたのを目撃して以来、その内容から二人の関係を疑っていたのだ。その後、実はイザベルがラウルの元婚約者だったこと。アシルたっての希望で無理矢理婚約破棄され、彼女は側室にされたと知った時は衝撃を受けた。まさか後宮で初めて会った時も彼はイザベルに会いに来ていたのではないかと。妄想で勝手に落ち込むリアーヌを心配するラウルだったが、後に彼女がとんでもない誤解をしていると知って・・・。慌てた彼によって懇切丁寧に説明された結果、イザベルとの関係の誤解は解けるんですが、この時更にラウルがリアーヌを妃に迎えた理由を語ります。6年前、即位したばかりで血気盛んな兄を止めることができず、戦争に参加してリアーヌの故郷を亡ぼしたことをラウルはずっと後悔していました。彼女を捕虜として連れて行ったのも彼で、侍女の為に命を投げ出そうとしていたリアーヌを見守っていました。そして、後宮に通っていたのも目当ての女がいたとか浮ついた理由ではなく、亡き前皇帝の遺言書を探すため。血筋的に、皇后の子であるラウルが次期皇帝になるはずが、平民出の側室の子のアシルが皇位を継いだので当時は大騒動になったと言う話を聞いて、リアーヌも疑問を持ちます。アシルが優秀なら遺言書でそう書くのは間違いないが、正直、聡明で優秀なのは誰が見てもラウルの方。しかもアシルは侵略戦争に躍起になって、税も上がるばかりで国民の不満は爆発寸前となっている。流石にこれは看過できないと、本物の遺言書を探しラウルが皇帝になるべく行動していたのでした。が、この作戦はアシルにバレ、ラウルは謀反の嫌疑をかけられ、リアーヌも囚われの身に。イザベルが彼女だけは逃がそうと協力してくれるも、逃げ隠れはしないとリアーヌはアシルと対峙し。終盤まではこんな感じの展開です。悪いことはできないもので、本物の遺言書が発見されアシルは御用。ラウルは皇帝となりリアーヌは皇后にってラストでした。個人的にイザベルさんが思ってたよりいい人でちょっとびっくりしました。あの嫌がらせは地味に傷付くものだったし、何こいつ💢となることしばしば。でも、ラウルとの仲もイザベルの独りよがりだったとはいえ、この人も境遇を思うとかなり気の毒。アシルが彼女を欲しがらなきゃ、あのまま初恋のラウルと結婚出来てたかもしれないのにと思うと切ない。後日談にて良い人に見初められたようで良かった。リアーヌもだけど、あんなクソ男のせいで奪われた6年なんて忘れて幸せになってほしいこの作家さんの貴族TLは初めて読みましたが、面白かったです。評価:★★★★★
2023.11.08
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2023年9月刊夢中文庫セレナイト著者:橘柚葉さん「俺と同じ気持ちになるように、めちゃくちゃかわいがるから」──見合い話を突然持ち掛けられた美琴は、相手がどんな男性なのかも知らされないまま断り切れずその日を迎えた。ろくに顔も見られずに見合いは終わり、先方からきっとお断りが入るはず、そう思って安堵していたのに。まさかの縁談続行、美琴の塩対応が逆に彼の気持ちに火をつけてしまった!? 大人の魅力あふれる完璧イケメン小児科医の宗佑から結婚前提の交際を迫られ、恋人同士のようなスキンシップに恋愛初心者の美琴はドキドキさせられっぱなし。「美琴を逃がすつもりはない。覚悟して」 宗佑の独占欲全開な猛アプローチに美琴は圧倒されて!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 浦松美琴=私立幼稚園に勤める管理栄養士。 八雲宗佑=総合病院勤務の小児科医。幼稚園で管理栄養士をしている美琴は、ある日園長から見合いを勧められた。この園には独身の先生が何人もいると言うのに何で私? 思わず尋ねるとどうやら先方からのご指名らしい。と言うことは、園の関係者?でも、女子校育ちで職場も女性ばかりな環境の美琴は男性とは縁が薄い。いきなり見合いはハードルが高すぎる。出来ればお断りしたいのが本音だが、園長の顔を潰すのは申し訳ない。会うだけ会えば向こうから断ってくるだろう。そして迎えた見合いの日。指定された老舗料亭の個室には男性が一人だけ。緊張しない様若い者たち二人だけで、とは聞かされていたが、緊張しないはずがなく下を向きっぱなしになってしまった。しかも慣れない正座で足が痛くて気もそぞろ。相手の大きな手に視線が行った時、彼は電話で呼び出しを受けて謝罪の言葉を継げると早々に退出してしまった。茫然としつつも支払いは済んでいるいると聞き、美味しい料理を堪能したが、これって見合いと呼べるのか。でもまぁ、義理は果たした。明日にでも断りの連絡が入るに違いない。だが、美琴の予想を裏切り、先方からまた会いたいと園長から告げられ心底驚いた。次の休日、贈られてきたプレミアチケットを持って映画館の前で待ち合わせた所、やって来たのは塩顔のイケメン。あの日は碌に顔も見てなかったと今更ながらに気付いたが、自分とは縁遠いタイプだとも思った。そんな考えが顔や態度に出ていたのか、彼は美琴のそういう所が新鮮で気に入ったのだと言う。改めて八雲宗佑と名乗った彼は現在総合病院の小児科勤務で、いずれは親の小児科院を継ぐ予定だそう。八雲小児科医院と聞いて漸く、園の健康診断を担当してくれてる病院と知り納得。その縁での見合いだったのか。一人納得する美琴が全く自分に興味を示さない。それこそが宗佑の求める女性像だった。この外見と開業医の息子と言うことで異常に彼はモテた。だが、フランス料理より焼肉や大衆食堂を好む宗佑に勝手に女性は離れていく。おかげで恋愛から遠のいて来たのだが、美琴は何よりがっついてないのが良い。そう話す宗佑は、何が何でも美琴と結婚したいと告げ、絶対に振り向かせてみせると意気込んだ。当の美琴は、今日のデートでさすがにもうさよならと思っていただけに、宗佑の決意表明に慄いた。宣言通りにこの日からグイグイと外堀まで埋められて段々逃げ道を塞がれていく。そもそも本当にこんな地味子で宗佑は良いんだろうか。そんな最中、甥っ子が虫垂炎になり、彼のおかげで早期発見できたと言う出来事が。やはり頼りになるお医者さんだと好感度も爆上がり。チョロいと思いつつも宗佑との将来を考え始めていた美琴だったが、幼馴染だと言う美人女医と楽し気に話す彼の姿を見てから、美琴は言い様の無い不安に苛まれ・・・・。この一件で、嫉妬心から宗佑に酷い言葉を投げかけてしまった美琴は自己嫌悪に陥り、彼も彼女に嫌われてしまったのではとギクシャク。宗佑が多忙なのも相俟って十日ほど疎遠に。お互い猛省する中、とあるトラブルがきっかけになり、二人は仲直り。美琴の両親に正式に結婚の許しを貰って〆スレていない美琴に惚れこんだ宗佑。しばらく恋愛は懲り懲りと思わせる程、元カノたちは性質が悪いのが多かったんでしょうね。まぁ、開業医の息子ってだけで目の色変えられるだろうし、加えて外見も良ければ想像に難くない。美琴も本当に良い子で、初恋に戸惑いつつも宗佑に惹かれていることに気付きます。でも、傍にあんな美人がいるのに自分なんかと結婚しなくても、と心無い言葉で彼を傷付けてしまったわけですが、後にあの幼馴染は兄嫁だと判明して仲直り。うん、多分そういうオチだと思ってましたwこのレーベルにしてはキスシーンだけでそれ以上の描写は無し。だが、それがいい。ページ数を思うと、丁度良い塩梅に思います。評価:★★★★☆
2023.10.07
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2023年7月刊夢中文庫プランセ著者:天衣サキさんもしも人生をやり直せるのなら、私は決して彼らを赦さない──婚約者に捨てられ、すべてを踏みにじられて最期を迎えたはずの伯爵令嬢・クリスティン。しかし目覚めると八歳のころに時が巻き戻っていた。与えられたこの二度目の生、全力で運命に抗おうーーそう覚悟を決め従兄である第二王子ジルベールに協力を願うと、彼が対価として求めたのは意外にもクリスティン自身だった。目的のためと割り切った関係であるはずが、甘い官能に喘がされれば固く閉ざした感情が突き動かされ溢れそうになって──。もっと……もっとあなたをください……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 クリスティン=伯爵家の長女。一度死に戻っており、自分を死に追いやった義母 と義妹、婚約者に復讐を誓う。 ジルベール=王国の第二王子。 クリスティンの従兄弟でもあり、彼女の復讐に力を貸す。ルクレイツィア=クリスティンの義妹。 アレイシア=クリスティンの義母。 ランドルフ=伯爵家の嫡子でクリスティアンの婚約者。タイトル通りのお話です。死に戻り令嬢の復讐劇。一度目の人生にて、義母と義妹の企みにより命を落としたクリスティン。しかし、死んだはずなのに何故か目覚めて、8歳の頃に時間が巻き戻っていた。それは父が亡くなり、義母が本性を現してクリスティンを虐げ始めていた頃。義母の行動はエスカレートし、いずれは彼女を使用人の様にこき使いだすはずだ。でも、一度目の人生の記憶を持つクリスティンは同じ轍は踏むまいと、地味と質素を心がけ、目立たぬよう暮らしていると、腹いせに殴られることはあっても前世のような使用人扱いをされることはなかった。義妹のルクレイツィアはクリスティンの婚約者・ランドルフに横恋慕した挙句、クリスティンの殺害の片棒を担がせる悪女。外面が良く姉想いを装った義妹への恨みは特に凄まじく、義母共々地獄に落とさねば気が済まない。ランドルフは唆されただけなのは理解しているものの、裏切られたという思いが強くどうにも許せそうもない。当然、彼との婚約は解消に持ち込むつもりだが、義妹たちへの復讐含めて手を貸してくれる存在が必要だ。考えた末、クリスティンは従兄弟に当たる第二王子・ジルベールの力を借りることに。彼女の亡き母はジルベールの母である第二王妃の腹違いの妹で、婚外子であった。そのせいで二人は折り合いが悪かったそうなのだが、ジルベールはクリスティンを従妹と認め、彼女の計画に乗ってくれた。しかし、それには条件があり、彼の相手をすること。こうして奇妙な関係が続く中、クリスティンは着実に義母たちを追い詰め、ランドルフとの婚約も解消に至った。しかも、義母は法に触れることをいくつもしており、厳罰に処されることとなったのだが、義母が自供の際、クリスティンの母の死に第二王妃の関りを示唆しており・・・。どうして、ヒロインが死に戻ったのか、その辺のからくりは語られずでしたが、亡くなった彼女の両親の願いとかだったらいいなぁ。一度目の人生があまりにも不憫すぎですもん。義母と義妹は人として破綻していて、よくもまぁあんなにひどいことが出来ると呆れを通り越してドン引きの域。義妹は長年ヒロインに薬を盛り続け、そんな義妹に上手く乗せられた婚約者は彼女を邪魔に思いヒロインの殺害計画に手を貸す。この婚約者も正直全く擁護できなくて、彼の顛末は義母と義妹に比べれば聊かマシではあったけど、没落に近い憂き目に合っていたのでいい気味。悪役はちゃんと裁かれ報いを受けたザマァ展開は読んでてスッキリしました。でも、復讐劇は物語の半分くらいまでで、後半はヒロインとヒーロー(第二王子)とのお話になってまして、これはこれで凄く良かった。復讐を完遂したヒロインがとある理由から姿を消したあと、3年間彼女を探し続けたヒーロー。タイトルの如く本当に執愛で、SAMARTOONの復讐ものを完結話まで読み終わった気分。ので、現在SAMARTOONにハマっている、って方におススメのお話です。評価:★★★★★このページ数でよくぞここまで収めたって内容でした。
2023.09.03
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2023年4月刊夢中文庫プランセ著者:朧月あきさん「愛している。君なしでは生きていけない。もう手放さない」──子爵家の令嬢でありながら使用人と変わらぬ生活を強いられていたジルは、森で倒れていた竜を助けたことをきっかけに、竜と竜人の王国・ネイサールで暮らし始める。かつて人間によって乱獲された過去を持つ竜人たちはジルを冷遇するが、そんな中で国王ディオンだけがジルを優しく見守ってくれた。傷だらけのジルの心に温もりを与えてくれた彼はやがて、ジルにとって何よりも特別な存在になっていくのだが……人間と竜人はまったくの別種であり、互いに恋愛感情を抱くことはない。さらに竜人は人間よりも遥かに長い時を生きる。二人は決して結ばれることのない運命にあった── ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 ジル=子爵家の一人娘。父母を事故で亡くしてから叔父一家に屋敷を乗っ取 られ使用人としてこき使われていた。 ディオン=竜王国の王。ジルを王国に連れ帰る。 クロード=エルダン王国の第二王子。カトリーヌ=ジルの叔母 ニーナ=ジルの従妹レティシア=魔女。ディオンにある呪いをかけた。不遇ヒロインのシンデレラストーリーなのですが、このヒロインの人生、波乱万丈過ぎる(^_^;)詳しく書くと長くなるので、ざっくりと。竜と人間の争いから、双方忌み嫌い続けていた時代、怪我をした黒竜を助けたジルは、人型に変わった竜・ディオンによって竜王国へと連れ変えられ、そこで淑女としての教育を受けながら美しく成長していきます。叔父一家に虐げられ、不遇な少女時代を過ごしていた彼女は、人間と言うことで竜王国でも、遠巻きにされるも、清らかな心を持つ者にしか扱えないと言う羽毛種の竜・ビッケに懐かれたことと、偏見を持たない竜人の女性・ティモシーと友人になったことで周りの態度も軟化。それ以降、彼女を白い目で見る者は無くなり、心穏やかに暮らしていました。ジルが竜王国に来て6年。19歳となった彼女に、ディオンは適齢期になったのだからと人間の世界に戻すと決め、エルダンよりもまだ竜への偏見が少ないジャメル国の伯爵家にジルを預けます。一年後、美しいジルはエルダン王国の第二王子・クロードに見初められ、執拗なアプローチと求婚を受けるも、どう断ろうかと難儀していました。彼女の心にはいつまでもディオンがおり、彼以外の人との結婚なんて絶対に嫌。しかし、竜王国でも奴隷扱いされていると思っていた叔母カトリーヌと従妹のニーナは、伯爵家の養女になり王子妃になりそうなジルを妬み、彼女をならず者に襲わせます。顔に大けがを負った彼女をディオンが助け、一生跡が残ると言われた傷を治すため、竜の体液を使うことを決断。竜と人間の戦争も、どんな怪我も病気も治す万能薬とされる、竜の体液を欲したエルダン国が発端だったのです。お互い両想いだった彼らは結ばれ、おかげで無事にジルの傷も完治。それから蜜月を過ごしたが、ジルを襲った落とし前を付けにカトリーヌとニーナを殺害したディオンがジルを浚ったと勘違いしたクロードが竜王国を襲い・・・。叔母と従妹についてはまぁ、ザマァされるんだろうなと思ってたんですが、ディオンの怒りが相当だったので、その非情ぶりにビックリ。王子のクロードもちょっと危ない人で、ジルを奪われた腹いせでカトリーヌとニーナ殺害の罪、と言う大義名分にて竜王国を強襲。そのうえジルを浚い塔に幽閉。2年近く閉じ込めると言う暴挙に。ジルがあっさり攫われたのも、竜には致命傷な毒を使ってのものでディオンが死にかけてたからなんですが、浚っておいて拒まれてるうちに飽きて放ったらかしって、叔母たち以上に陰湿だった。そんな彼も、優秀な兄によって身分と権限を剥奪された挙句、ジルを取り返しに来たディオンの攻撃にビビって落馬して死亡と言う情けない最期を遂げます。なんかもう悪役にはとことん容赦ないお話でしたよ。ジルとディオンは遺伝子的な問題で、子供は出来ないと言われてたけれど、奇跡が起きて彼女の妊娠が発覚。後に世継ぎとなる王子を産み、家族3人幸せに暮らしましたと言う〆ディオンがかけられていた呪いは男だったら辛いなぁなもので、元々女嫌いだったのもあり不便は感じていなかったのが、ジルにだけはなぜか反応してしまう。彼女に手を出しそうになるのを抑え、人間の国へ行かせたものの、偏執的な王子に付き纏われてるわ叔母と従妹には妬まれてるわで、そりゃこんなとこにジルを置いとけないと思うよね。呪いのこともあったし、竜は同族から番を見つけなければ後に身体的なペナルティもあるとのことで、二人が結ばれるのは難しくもあった。そして、致命的なのは異種族ものにはセオリーである寿命問題。それを踏まえてのディオンの選択とそのラストにちょっと泣けました。評価:★★★★★TL要素ももちろんありましたが、ラノベとしても良作だと思います。
2023.08.20
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2023年7月刊夢中文庫クリスタル著者:朝陽ゆりねさん同期の圭介くんに惚れている牧瀬琴子は、彼をよく叱りつけている隣の課のエリート課長・伊東聖也を敵対視していた。ある夜遅くまで残業をしていると、奥さんの待つ家に帰宅したはずの伊東が現れる。優しく手を貸してくれた彼のおかげで仕事は終わり、その流れでご飯に行くことに。しかし伊東にバレたらマズい話題を振られた琴子は、ごまかすかのようにお酒を飲み……気がつくとラブホテルのベッドの上!? 離れたソファで目を覚ました伊東は、琴子を見るや否や「こんなの我慢できるわけがないじゃないか!」と切羽詰まった様子で迫ってきてーー? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 牧瀬琴子=大手ファッションメーカーに勤める会社員。 思い込みの激しい性格で課内のムードメーカー。 伊東聖也=琴子の隣の課の課長。 牧瀬愛子=琴子の母。 豊田和行=聖也の悪友で琴子たちが勤める会社の御曹司。社内恋愛ものです。可愛らしい外見とからかい甲斐のある性格で職場でもムードメーカーである琴子は、母に呆れられるくらい男を見る目が無かった。そんな彼女が恋心を抱いているのは隣の課所属で同期の瀬川圭介くん。イケメンでちょっとダメ男っぽい雰囲気が琴子の好みのタイプにドストライクで、こっそり盗み見てはニヤニヤしていた。だが、圭介は雰囲気だけでなく本当に仕事のできない奴で、何かと上司の伊東にお小言を食らっており、先輩たちが言うように何度もミスを繰り返す圭介が悪いと判っていながら、琴子は伊東を逆恨み。私の可愛い圭介くんをガミガミ叱らないでよ、と一人敵意を燃やしていた。そんなある日、ふとした偶然から伊東の帰宅現場と遭遇。その際、綺麗な女性と同じ家に入っていく様を目撃した琴子は、社内でも正統派イケメンで人気のある彼の秘密を掴んでやったとほくそ笑んだ。既婚者のくせに、指輪もせずに独身のフリをしているなんて。何かのネタに使えるかも。しかし、後日圭介の尻拭いで残業する羽目になった琴子は、様子を見に来た伊東のおかげで何とか仕事を終わらせることが出来た。しかも部下の不始末のせいだからと食事まで奢ってもらい、伊東の印象が琴子の中でガラリと変わった。だが、驕りということで普段飲めない酒をがぶ飲みした彼女は酔いつぶれ、琴子の自宅が判らない伊東は止む無く近くのラブホへ彼女を運び込んだ。そして、以前から琴子に好印象を抱いていた彼は酔いもあって無意識な彼女からの誘惑に勝てず、その夜一線を越えてしまうのだった。翌日、正気に戻った琴子は不倫をしてしまったと大ショック。一方伊東は、順序が逆になったが彼女に交際を申し込むべくチャンスを狙っていた。誤解もあってなかなか受け入れてもらえない状況だったものの、気の無い素振りだった圭介が琴子に粉を掛けてきたことから、その本性を知って幻滅したことで漸く彼女も本当の気持ちに気付き伊東と向き合うことに。結局、件の美女は伊東の3歳下の妹であることが判り、無事交際することになった二人。だが、思い込みの激しい琴子は、この恋は会社の誰にも知られてはならない極秘事項であると、二人の関係をオープンにすることを断固拒否し・・・。この作家さんなので、エロ寄りのコメディといった感じ。元々前編後編っぽい作りのお話を一冊にまとめたもののようです。前半は二人が誤解しつつもくっつくまでのエピソードで、後半は伊東の悪友の登場から、とある原因で破局の危機に。伊東との交際を秘密にしてるせいで、恋人がいないならと数合わせで来てくれと同期からの合コンの誘いを断れなかったってのがトラブルの発端なんですけど、今時社内恋愛禁止ってとこは少ないと思う。結局、その心配も琴子の杞憂に終わり、豊田からの策略で伊東との交際は皆に知れ渡ることになり、後に二人は結婚。エピローグに描かれていた琴子の母・愛子さん目線のお話が何だか読んでてじんわり来ました。ヒロイン・琴子の性格と言うか考え方がとにかく独特で、鬱陶しいと思う所も少々あったけど、何か憎めない子といった印象。伊東はその琴子にメロメロなのですが、きっと心の琴線に来るものがあったんでしょうね。評価:★★★★★
2023.08.12
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2020年6月刊夢中文庫セレナイト著者:未華空央さん婚約者に振られた夜、バーでひとり眠ってしまった紬。翌朝、目を覚ますとそこはホテルの一室だった。誰かと一夜を共にしてしまったことに気付いた紬は慌てて部屋を出ようとするが、そこに現れたのは10年以上会うことのなかった年下の幼なじみ、玲。昨夜の出来事を玲に目撃されていたと知り、逃げるようにその場を去った紬だったが、二人は職場の病院で再会。そしてーー紬は振られて傷ついた心を癒すため、玲は舞い込む見合い話を断るために、二人は恋人のフリをすることになり……「俺が、別れた男のこと、忘れさせてあげるよ」ーー玲からの甘い言葉に、突然のキス。偽物の恋人としての行動だと知っていても、紬の胸は高鳴ってしまい……? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 五十嵐紬=大学附属病院に勤める医療事務。 門脇玲=消化器外科のドクターで紬の幼馴染。渡辺みのり=紬の後輩で友人。結婚間近の婚約者にフラれてバーで酔いつぶれてしまった紬は、その日、幼馴染の玲と再会。眠ってしまった彼女をホテルで介抱してくれたらしい彼に感謝しかないが、あの場にいたということは、あの愁嘆場も見られていたと言うことか。フラれた理由を尋ねる玲に、今となっては思い当たる節を話すと、彼も思う所があったようだ。一先ず世話になった礼を言い、その日は別れた。が、翌日出勤した紬は、病院内で玲とバッタリ。どうやら事務の子達が騒いでいた新任のイケメンドクターとは彼のことだったようだ。この10年全く会うことのなかった彼と、こうして立て続けに顔を合わせることになるとは。何故か向こうはやけに嬉しそうだけど、年上の幼馴染との再会ってそんなに嬉しいもの?再会のお祝いと称して、その夜食事に誘われた紬は、玲から思いがけない提案をされた。何と、恋人のフリをして欲しいと言うのだ。どうやら、最近やたらと縁談を薦められ迷惑しているようで、結婚を前提にした恋人がいると言えば向こうも納得するだろうと。まぁ、幼馴染のたっての願いだし、引き受けるのも吝かでないが、こんなおばさんに頼まないでも。だが、彼はどうしても紬が良いらしい。玲の思惑通り、以降ピッタリお見合い攻撃は収まったようだが、彼は紬と本当の恋人のように振舞い、彼女を溺愛。失恋の痛手も消え、改めて玲と向き合った紬は段々彼を意識し始めて・・・。グイグイ来る玲に絆されていた紬でしたが、ある日現れた自称・彼の婚約者なる女性に罵倒され、紬は意気消沈。自分が30過ぎということで引け目を感じ身を引こうとするも、みのりの協力もあり、玲と話したことで彼の本当の気持ちを知り、二人は恋人になって終わっています。玲にしてみれば、憧れのお姉さんだった紬に長らく想いを寄せており、この再会から何としても彼女に告白すると決心。恋人のフリ云々は勿論建前で、彼なりに努力し続けていたと言うオチ。100ページくらいの短い内容なので、ライバルキャラも現れたと思ったらあっさり退場したり、じれじれ度はかなり少な目。さらっと読めるお話です。評価:★★★★☆
2023.07.21
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2023年2月刊夢中文庫セレナイト著者:佐倉伊織さん「全部、俺のせいにして」ーー製薬会社で営業事務を務める美波は、ひそかに社内恋愛中だった彼氏から同課の後輩を妊娠させたと告げられ、突然振られてしまった。何も知らない様子の後輩は彼の隣で幸せそうに結婚報告をする。そこは私の居場所だったのに……。美波の涙を目撃した営業部エースで御曹司の幸之助は、吐き出せない苦しみごと包むように強引に口づけてくる。ただの慰めだと分かっていても、差し伸べられる彼の手を突き放すことはできなくて……? ーー俺がこんなに昂るのは美波のせいだ ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 岩崎美波=製薬会社の営業事務。 交際中の恋人に二股を掛けられた挙句にフラれた。沢井幸之助=美波の先輩社員で営業部のエース。 木村武=美波の元カレ。製薬会社の営業事務をしている美波は、ある日突然、恋人の木村武から別れを告げられた。彼にしては歯切れの悪い物言いから単語を繋げるに、どうやら美波という存在がありながら、同じ営業事務の後輩・伊達に手を出していたらしい。しかも、彼女は妊娠してしまったのだとか。つい先日も部屋にやって来て自分と寝た癖に、ショックより怒りと呆れの気持ちの方が先に立ったが、どちらにせよ、彼は自分と別れて伊達さんとの結婚を決めたのだ。その場はあっさり承諾したけれど、いざ実感すると悔しさと悲しみが湧き上がり、つい涙をこぼしてしまった美波に気付き、声を掛けてくれた人物がいた。営業部のエースでその外見から女子社員達にも大人気な沢井幸之助は、社内の廊下で泣いている彼女の姿に驚き、のっぴきならない状況を察したらしい。失恋したんだと思わず吐露し心配げな彼に大丈夫と告げてその日は平静を保っていたが、翌日更に衝撃の出来事が。何と、木村と伊達の結婚報告がされ、何も知らない部内はお祝いムード一色に。そりゃ妊娠させたんだし結婚するとも聞いていた。でもオープンにする直前に別れ話を切り出していたなんて馬鹿にするにも程がある。落ち込む彼女に、何故か沢井が急接近。実は美波と木村の交際を彼は薄々勘付いていたらしい。失恋の痛手を癒すため、俺のせいにしていいからと美波に甘く迫る沢井。彼は明るく気さくで、更に仕事も出来て将来有望な青年だ。沢井の言う通りに気持ちを切り替えるのも良いかもしれない。本音を言えば、木村がいかに自分勝手な浮気野郎かと暴露してやりたい気持ちもあったが、沢井に癒され段々立ち直っていく美波。あちこち出掛けたり食事したりをしているうちに、実は彼が勤め先の会社の御曹司だと判明するも、順風満帆な人生に見えて、沢井がこれまで幾度も後悔や挫折を繰り返していたことを知り・・・。失恋から始まる恋、という内容です。元カレが最低野郎で、二股かけるわあれは火遊びだったからと復縁を迫ったりと碌な事をしません。でも、沢井のおかげで本来の自分を取り戻した美波は当然そんな申し出に応じるはずもなく突っぱね、元カレを諭します。その祭、沢井が身分を明かし、あんまりふざけたこと言ってると飛ばすぞ、的な脅しも効いたのか、漸く元カレも思い直して伊達さんと向き合うように。まぁ、これで考え直せなきゃ人として終りよな。なのに、美波との仲が伊達さんにバレて一騒動起きそうになったり、最後まで色々あったお話でしたが、美波は諸々経た結果、沢井と想いを確かめ合い、後に交際に発展。最後は婚約して終わっています。捨てる神あれば拾う神あり。沢井は正に拾う神だったわけですが、実は結構長い事美波に片思いしていて、彼女の失恋は降ってわいたチャンスでもありました。最初の言葉通り、付け込む体を取りながらも、決して追い込むことはない彼の付かず離れずの態度がまた良いのです。あと、レーベルの特性か、ベリーズとかよりラブシーンはかなり多めで濃厚。それはそうと、今更ですがこの作家さんの別名義を今回初めて知って驚きました。朝日奈希夜さんだったなんてっ。「死神の初恋」の最新作は8月発売だそうです。評価:★★★★★
2023.07.14
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2023年5月刊夢中文庫セレナイト著者:織原深雪さん伯爵家の末娘アリスには前世の記憶がある。漫画やラノベ、乙女ゲームにどっぷり浸かっていた人生はある日あっけなく幕を閉じ、かつてプレイしていた乙女ゲームの世界に転生していることに気づいた5歳の時から、アリスはモブキャラとして第二の人生を謳歌すべく自由に過ごしていた。そして19歳になった今年、社交シーズンのはじめに王妃様主催のお茶会が開かれ、ヒロインである公爵令嬢レミリアがメインヒーローの第二王子に見初められることで、いよいよゲームはスタートする。しかし、そのお茶会を前にレミリアは王太子殿下と婚約! さらにお茶会当日、第二王子のシュタルク殿下はなぜかアリスに猛アプローチを仕掛けてきて……!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 アリス=伯爵家の次女。第二王子に見初められる。シュタルク=王国の第二王子。 レミリア=アリスの友人の公爵令嬢。伯爵家の次女であるアリスには前世の記憶があった。ライトなオタクだった彼女はアニメやゲームが大好きで、今回生を受けたのが生前プレイしていた乙女ゲームの世界だと気付いたのは5歳の時、ヒロイン・レミリアと出会ってから。以来、友人として仲良くしていたけれど、よくよく思えば自分は飽く迄ヒロインの友人というモブキャラ。どう生きようとさして影響は無いはず。生前は不慮の事故で早死にしてしまって、恋もせぬまま終わってしまった。せめて今世は自由気ままに生きよう。そう決意したアリスは、優しい家族の元伸び伸びと育ち、19歳を迎えた。姉が優秀な婿を迎えて後継者問題もクリアしていたので、アリスには煩く言うことも無く好きにさせていた両親だったが、さすがに結婚適齢期ともなるとそうはいかない。今年の社交シーズンで良いお相手が見つかるようにと張り切って準備している家人たちを見て、げんなり。ゲームの時系列では、この年、レミリアはメインヒーロー・シュタルクに見初められて婚約する。今日は王妃主催のお茶会で、王太子のリカルドとシュタルクのお相手探しの場でもあった。モブの自分はどなたか適当な方が見つかればいい、と暢気に構えていたら、直前にレミリアから打ち明けられた話では、彼女はリカルドとの婚約が既に決まっているらしい。攻略キャラが変わっていると言うことは、もしやこの世界は裏ルート?どちらにせよ、友人のおめでたい話は嬉しい。だが、あぶれたメインヒーロー・シュタルクはどうして自分の隣に座っているのか。熱烈な眼差しに、歯の浮くようなセリフでの猛アピール。もしかしなくても、彼はアリスを気に入ったようで・・・。正にタイトル通りの内容のお話です。モブキャラだからこそ気楽に生きられるかと思いきや、第二王子に惚れられその強引さにタジタジ。王子妃なんかになったら、好きな乗馬もやりにくくなってしまう。何かと理由を付けては誘いを断っていたものの、相手はとにかくめげない。そして狡猾だった。隣国に嫁いだ叔母の元に身を寄せても、追いかけて来る執着ぶり。結局、ヒロインが折れる形で二人の婚約は成るんですが、今更彼女を妬む輩が現れちょっとした騒動になったりもします。乙女ゲームの世界なだけあって、展開も本当にセオリー通り。ヒロインの溌溂とした暮らしぶりを偶然目にして以来、彼女と会う機会を待っていたというヒーロー。とにかくグイグイ迫ってヒロインを根負けさせた何だか凄い人でした。ページ数の都合か、TL要素はほぼ無し。このレーベルでは珍しいお話。評価:★★★★☆
2023.07.10
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2023年4月刊夢中文庫セレナイト著者:田崎くるみさん癒しを求めていつものように猫カフェを訪れた葉山波香は、目を奪われるほどイケメンな男性がほとんどの猫たちを魅了しているのに驚く。ついその姿を目で追っていると、男性が会計時にお財布を忘れて困っていて……。また猫たちのためにカフェに通ってくれれば、と波香は彼の分も支払った。すると後日、波香の職場にその男性の姿が。異動してきたエリート課長の生垣一海だった。波香をさりげなくフォローしてくれるし、猫好きでそのほかの好みもとても似ていて。一緒に過ごすと心地よくて、彼のことを知るたびに胸は高鳴って、そしてこの距離感が少し苦しい。けれど気持ちを伝える勇気が持てなくて……。運命的な恋は、重なる偶然から──。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 葉山波香=大手食品メーカーに勤める会社員。 生垣一海=波香の新しい上司。 星場薫=波香の先輩社員。大手食品メーカーの販売促進部に勤める波香は、忙しい毎日を送っていた。そんな彼女の癒しは保護猫カフェで、お気に入りの猫・メイと戯れること。その日、久しぶりに店を訪れた波香は、猫たちにモテモテな青年を見て驚いた。おまけに凄いイケメン。猫もイケメン好きなんだろうかとオーナーと談笑しつつ、メイからたっぷり癒しを貰った彼女は、丁度同じく会計に来たあの青年が財布を忘れたのに気付き、難儀しているのを見て思わず立て替えてやっていた。恐縮しきりの青年に、お金は返さなくていいから猫たちの保護費用の為にもできるだけ店に通ってやってほしいと言い置き、店を後にした。だが、翌朝のミーティングにて昨日の青年が新しい課長として赴任して来たからびっくり。まさかこんな偶然があるとは。彼は生垣一海と言い、まだ29歳だそうだ。随分優秀なんだなと考えていると、先輩社員の星場にいきなりの仕事を押し付けられて途方に暮れた。この先輩、1年ほど前にプレゼンで波香に負けたことを根に持っているのか、何かと無理難題を押し付けてくるのでほとほと困っている。おまけに星場は専務の娘ということもあり、口出し出来る者はおらず手助けも期待できそうにない。だが、星場とのやり取りを見ていたのか生垣が協力を買って出てくれて、おかげで何とか無事終えることが出来た。彼は、波香に昨日カフェで助けてくれた人ですよね?と確認を取り、改めてお礼を言われ、金を返したいからと仕事終わりに店で待ち合わせることに。そこでの会話で同じく動物好きなこと、おまけに趣味や好きなバンドなど共通点も多く、随分と盛り上がった。しかも、ご近所さん住まいとは。後日、友人の麻美に事の次第を話すと、これはかつてないチャンスだと後押ししてくれているものの、あんなハイスペ男子に自分など相手にされるはずがない。後から聞いた話だが、先日の仕事の押し付けについて、生垣と部長から星場はきつく叱責されたらしい。以降、嫌がらせめいたことはされていないので相当堪えたのだろう。プライドも傷付いたのではと思っていたら、あの日から星場は生垣に付き纏っており、カフェで会った際、彼も困っていると溢していた。同じく付き纏われるにしても葉山さんなら困るどころか嬉しいのにと、何やら意味深な事を呟いていたが、聞き直す勇気も無くてつい聞こえないふりをしてしまった。でも、都合よく解釈しても良いのだろうか?繁忙期が終り、漸く行われた生垣の歓迎会の夜、波香は生垣が星場と二人で繁華街に消えていく姿を目にし・・・。この後に、生垣目線のエピソードが入るので、完全に彼の本心及び、その後に起こったことなどが語られます。まあ当然星場と交際する、なんてことはなく。本人的には割と分かり易いアプローチをしていたにもかかわらず、恋愛経験ゼロの波香にスルーされ、どうにも要領を得ない。なのに、まさか星場との仲を疑われてたとは思わず、波香には距離を置かれる始末。なんだか読んでて気の毒になりました。でもその後、あるトラブルがきっかけで誤解も解け、お互いの想いを打ち明け合った二人は恋人同士に。順調に交際後、結婚して終わっています。保護猫のメイちゃんも、波香たちに引き取られることになって良かった。ヒーロー側の心境も判ったのでじれじれも特に無く、ほっこりした気分になれるお話でした。ページ数もさらっと読むには丁度良い内容かと。評価:★★★★★私は好きな話です。
2023.06.04
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2023年2月刊夢中文庫セレナイト著者:小山内彗夢さん生まれつき身体が弱く『死にかけ令嬢』と呼ばれ、箱入り状態で育った侯爵令嬢のカーリン。しかしある程度体力もつき結婚適齢期を迎えたころ、父からお見合い話を持ち掛けられる。若い男性とのふれあいが皆無だったカーリンはその話に食いつくが、お相手は騎士団長の父の部下であるゲラルド。彼は『鋼鉄の定規』と呼ばれ騎士には珍しく頭脳派で硬派な男。なにより女嫌い!──「では、殿方が好きということですか。奇遇ですね、わたしもです!」 それを斜め上方向にポジティブな理解をしてしまったカーリンはゲラルドとともに『理想の殿方』探しを始めるけれど……!? ちょっとずれた勘違いから始まるラブコメディ! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 カーリン=侯爵家の一人娘。 虚弱体質で世間では「死にかけ令嬢」と呼ばれている。 ゲラルド=子爵家の長男で騎士。 リンファ=カーリンの主治医。 ニコラス=第二騎士団副団長。王国騎士団長を務めるセラス侯爵の一人娘のカーリンは生まれつきの虚弱体質で長くは生きられないと言われていた。医師も匙を投げる程で、侯爵夫妻は絶望したが、ダメもとで招いた流れ者の女医の手によりカーリンは持ち直し、処方された薬によって生きながらえることが出来たのだった。女医はリンファと名乗り、その後屋敷の離れを与えられてカーリンの主治医となった。それから20年近くの時が流れ、カーリンも結婚適齢期を迎えたのだが、娘の成長は嬉しいもののとある打診により侯爵夫妻は頭を悩ませていた。王家の忠臣である侯爵にしてみれば、この話は非常に名誉なこと。でも、死を免れたとはいえ娘は未だに体が弱く社交界デビューもしていない箱入りだった。苦労は目に見えている。だが、当のカーリンは使用人たちの恋バナを数多く耳したおかげで、年頃の異性に対して興味津々。この話を二つ返事で受けかねない。そこで、侯爵は考えた末に堅物な人物として有名な騎士・ゲラルドとカーリンを見合いさせることに。ゲラルドは筋金入りの女嫌いとも聞く、間違ってもカーリンに変な気は起こさないだろう。そう高を括っていた侯爵の目論見は娘の予想外の反応で脆くも崩れ去った。二人きりの会話にて、ゲラルドが女嫌いだと聞いたカーリンは、素直すぎる思考から彼は男好きで自分と同じく理想の男性を探していると勘違い。お互い協力して素敵な男性を見つけましょう、と意気込む彼女にゲラルドは唖然。何の因果で男色家だと思われたのだろう。内心首をかしげながらも変にスレておらず素直な彼女のペースに乗せられ、理想の男性探しと言う名のデートをすることになった二人。碌に外に出たことが無いカーリンには何もかもが珍しく、ゲラルドの生真面目な性格も気に入った。後日、彼が男好きというのは訂正されたので、今はカーリンの理想の相手を探している。でも、二人の外出が何回も続くとお互いが気になって来るのは至極当然。女と言えば性格の悪い自らの母と姉という印象しかなかったゲラルドは、カーリンに接するうちに女性を一括りにして見てはいけないと思い直し、彼女との時間を楽しみにしていた。何かとゲラルドに突っかかる騎士団副長のニコラスがカーリンに一目惚れし、そのアプローチに嫉妬した彼は漸く彼女への気持ちに気付いた矢先、侯爵からこの見合いの意図を聞かされた。実は王家からカーリンに第二王子との婚姻の打診があったらしい。現状はあくまで候補の一人の段階ではあるが、家柄と言い騎士団長の娘ということでカーリンに決まる可能性が非常に高い。しかし、第二王子・ヘイルトは女性にだらしなく既に婚外子も数人いるという。そんな男に嫁ぐなんて虚弱なカーリンの命を縮めるようなもの。打開策として、他の候補に決まるよう、慌てて見合いをさせてカーリンは婚約寸前と噂になるよう仕向けたのだった。ゲラルドを相手に選んだのは偏にその性格から。出来れば、彼女と正式に交際をと考えていただけにゲラルドも大ショック。その頃、カーリンはゲラルドに会うたびにドキドキしていたことからそのの恋心をついに自覚して・・・。先月刊行のお話なので、この後の展開は敢えて詳しくは記載しませんが、ちゃんとハッピーエンドです。お互い両想いですしね。ヒーローとヒロインに親ばかな侯爵始め、とにかく良いキャラばかり。あらすじにもラブコメとあるように、終始面白おかしく進行していき、ラブシーンが入らなかったのには驚きました。なので、TLと言うよりは、かなりラノベ寄り。個人的に、少ないページ数の中、そこにページを割くくらいならなくてもいい派なのでこれは英断だと思います。100ページちょっとの内容ならホントその分エピソードに回してくれって感じ。(勿論、他作品のラブシーンが全くの無駄だと言ってるわけではないですよ)おまけの番外編では謎だった主治医・リンファがこの国に流れ着いた経緯が語られています。評価:★★★★★ストレスなく読める良作。
2023.03.11
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2021年2月刊夢中文庫プランセ著者:高久ややこさん金持成美、21歳。名前と真逆にド貧乏人生。両親を亡くし天涯孤独。不運に背負った借金を返済し続けている。やっと好条件で正社員採用されたはずが、初出勤日に失業の憂き目。そんな成美の前に奇妙な求人広告が……!? 『急募! 健康な成人女性! 履歴書不要、人柄重視! 週休二日賞与有り、衣食住完備! 退職金は10億円!』 あまりに現実味がないと思いつつ魔が差してアクセスしたら──そこは異世界!? 高飛車な美少年トゥールが現われ、彼の子供を産むことが仕事内容だという。お金のために子供を産むなんて無理!と辞退したい成美だったが、トゥールとの暮らしが居心地よくなってきて……!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 金持成美=多額の借金を抱える苦労人。 トゥール=異世界の魔術師。資産家の家に産まれた成美は高校2年生までお嬢様だった。4年前、人の好い父が友人の借金の保証人となり、お決まりのパターンでその友人は雲隠れ。不運は重なり借入先が闇金だったことから法外な利息が付いて借金は莫大な金額であった。その返済で金持家は資産のほとんどを失った。借金の件で家族は疲弊し、弁護士にも相談していた両親はその打ち合わせに出掛けた際事故死。ショックで倒れた成美が入院している間に、自称親戚によって僅かながら残っていた遺産をかすめ取られ、挙句に葬式代と称して1千万の借用書が。以来、がむしゃらに働いて毎月かなりの額を返済しているものの、払えているのは利息分だけで元金は一向に減らない。高校も中退しており、資格も持ってないからバイトを掛け持ちするしかなく、ちょっとでも風邪をひいて休もうものなら家賃も払えない。そんな生活を4年も続けている。闇金の担当者・下山口は愛人斡旋業もしており、そっちに行けばもう少し生活が楽になるのではと言われたが、やはり抵抗感があって踏ん切りがつかない。えり好みしている場合では無いとは判っているけれど。でも、こんな自分でも正社員で雇ってくれる会社があって、ボーナスも出るし、これからは返済額も増やせるはず。おまけに社員寮まで完備なんて。今日は初出勤日、ルンルン気分で社屋ビルに赴くと、玄関前に人だかり。信じられない事に、会社は倒産していたのだった。給料未払いで騒動になっているらしくあまりの出来事に唖然。自分は何て不運なんだ。シェアハウスも家賃が払えなくて追い出されたばかりだし、今日は野宿か安いネカフェかと歩いていると目に留まったのは、これって詐欺じゃ?と思えるほどの高収入の求人広告。で、退職金が10億。疑いはしたけれど、背に腹は代えられない。広告に記載されていたQRコードを読み込むと、眩い光に包まれ、気付くと成美は洋館の一室にいた。そこには10歳くらいの銀髪の美少年。彼はトゥールと名乗り、ここが異世界のディズニランドール国で、成美は募集の条件に合致したことからここに召喚されたのだと言う。これが巷で流行りの異世界召喚。しかし、ここで働くって何を?との彼女の疑問に、やがて来る脱皮の後に青年に成長する自分の子供を産んで欲しいのだそうだ。この国には人間種が希少で、年頃の女となれば現状はゼロ。トゥールは更に優秀な魔術師で血を絶やすことは避けねばならない。そこで、異世界から呼んででも人間の女性を必要としていたわけだった。無論、役目を全うすれば10億相当の金の延べ棒を払うとトゥールは自信満々だったが、それ以前にこんな子供と子作りはちょっと。道徳的観念はまともな成美には受け入れがたい案件だ。10億は欲しいけど、愛人業にも躊躇する自分にはハードルが高い。しかし、色々と言いくるめられ、結局引き受ける羽目になってしまった。まぁ、実際にする時は大人になってると言うのだけが救いか。とはいえ、トゥールとの生活は非常に楽しく、見た目は子供でも実は同い年だったと判ってからは、成美も段々と絆されていくように。そして、この国の魔術師としての役割を知った時、トゥールへの想いを自覚した成美は・・・。印象としては、微エロのファンタジー小説って感じですね。結局、二人は両想いとなり、脱皮して青年の姿となったトゥールと結婚して終わっています。彼からの報酬で借金も無事返せたし、ラストには二人の間に子供も出来て後継者問題も解決。両親も他界してるし、世知辛い元の世界より異世界で暮らすことを選んだ成美。それまでは金運と共に男運も悪かった彼女が異世界での出会いで人生一発逆転したというお話でした。結構面白い内容だったけど、終盤がかなり駆け足だったので、そこだけが残念。ラブシーンを削ってでもエピソード足してほしかった気が。因みに、表紙のトゥールは青年バージョンですね。評価:★★★★☆
2023.03.06
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2022年10月刊夢中文庫セレナイト著者:橘柚葉さん俺にだけ弱さを見せてくれるのが好きだから。甘やかすのはやめられないな──完璧クールビューティと名高い冴島小梅は、二つ年下で指導係を担当した鴻上北斗と社内恋愛中。出来のいい彼はあっという間に小梅と同じレベルに到達、気づけば立場が逆転。仕事に淡々と勤しみ、たまに男の色気をみせる北斗につぎつぎ女性は近づくけれど塩対応。けれどプライベートでは肩肘はって働く小梅を優しく甘々に包み込んでくれる。オンオフどちらも幸せな毎日だけど……未来を考える小梅には迷いや不安があって──!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 冴島小梅=カフェ事業部で働く会社員。 クールな雰囲気で男性社員に人気がある。 鴻上北斗=小梅の恋人。関東西エリアのチーフ。 日向=小梅の上司。関東東エリアのチーフ。 鴻上光葉=北斗の妹。冴島小梅は入社8年目の30歳。クール系の美人で男性社員達からは高嶺の花扱いされており、年齢も相俟って結婚を前提に告白されることも増え、戸惑うばかり。何故なら彼女には4月にチーフに就任した年下の彼氏・鴻上北斗がいるのだから。社内恋愛は禁じられていないため、北斗の希望で二人の交際は公言され、今では公認カップルだ。なのに、恋人がいるのを分かってて告白してくる輩は一体どういうつもりなのか。そのせいか、今回のような忘年会などの集いでは小梅以上にクールで塩対応キャラな北斗が、彼女を甘やかし可愛がる様を周囲に見せつけ牽制する始末。北斗もハンサムで仕事ができることから人気が高く、小梅も女性社員達から嫉妬メラメラな視線を受けてはいるのだが、彼がこうした態度を取るのが自分にだけと思うと嬉しい。しかし、年が明けると事業部は大忙し。年度末に人事異動の発表も控えているし、北斗も毎日忙しそうだ。彼との縁は、小梅が北斗の指導係で休憩時の会話でお互い大のパン好きと判明し、パン屋巡りやパン作りに出掛けているうちに親しくなり、彼の方から告白されてのことだった。付き合い始めてそろそろ2年。結婚が全てではないが、そういうそぶりを一切北斗が見せないので、少々気にはなっている。その頃、北斗は部下から小梅があちこちから狙われているから、結婚を考えているなら早々に決断した方が良いとお節介めいたことを言われ、考え込んでいた。勿論、本人としては結婚を前衛に交際しているつもりなのだが、言い出せないのは実は小梅の昇進を待ってのことだった。次の人事で東のチーフ日向がチーフマネージャーに昇進し、空いたチーフの座に彼女が決まりそうだと漏れ聞いている。優秀な小梅が昇進したがっていたのを知っている身としては、そのお祝いと共にプロポーズする計画だった。北斗の実家では結婚を急かされているけれど、そんな腹積もりを聞かせたら早晩小梅の耳に入るに決まっている。だが、その態度をふがいないと思ったのか、北斗の妹の光葉が小梅を呼び出し、兄は全く結婚を考えていないようだから別れた方が良いと進言され・・・。なまじお互いモテるだけに周囲の方がヤキモキしちゃって要らんことを騒ぎ立てるものだから、結局二人とも無用な不安に苛まれることになります。小梅は憧れの先輩・日向に関西エリアに栄転する際付いてきて欲しいとプロポーズされ、それが後日北斗の耳に入って、かつてないほど彼を焦らせます。結局、日向の告白は速攻で断っていたのだけど、小梅もまた北斗の本心が判らずモヤモヤしていたことを告げると、彼の方から漸くプロポーズ作戦のあらましを聞き、無事チーフへの昇格が決まった小梅と北斗は婚約。まだまだやっかみの声が多いものの、北斗の塩対応ぶりで黙らせ、後は数か月後の式を待つばかりって感じで終わっています。100ページちょっとの内容なのでお話自体は非常にシンプル。正直、交際して2年で結婚の話が出なけりゃ女の方からどういうつもりなのかその旨聞いていいと思う。待っても3年かと。結婚が全てではないとヒロインは思ってはいても、やっぱりそんな素振りを欠片も出されなかったので不安に思ってたし、実際、別れることも視野に入れてましたからね。ヒーロー側目線のエピソードが無かったら、最後の種明かしまで、なんなのこいつ、になってたろうな。でもまぁ、他には塩でもヒロインにだけは溺甘っていう属性は良いですね。評価:★★★★☆
2023.02.07
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2018年3月刊夢中文庫クリスタル著者:玉紀直さん毎日、自宅で「彼」が私を癒してくれる──コールセンターに勤める美聡は、ハードワーク気味。気遣ってくれる友人から、「毎日の疲れなんて吹き飛ぶよ」と渡されたシチュエーションCD。どんなに疲れて帰っても、その優しい「彼」の声に包まれることで美聡は日々癒され、いつしか声の主に恋に近い気持ちを抱きはじめていた。仕事の準備のため、取引先の社長である佑基からの直々のレクチャーを受けに定期的に通う美聡であったが、佑基の低くて威圧感ある声は苦手に感じて緊張するばかり。そんなある日、オーバーワークのせいで美聡は倒れてしまう。意識を失う前に耳にしたのは、あの恋い焦がれた声。声の主はこの会社の誰か…!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 小堀美聴=コールセンター代行勤務の会社員。 崎野佑基=漢方薬会社・清風堂の社長。1冊読み終わらなかったので、短めの電子書籍です。コールセンター代行会社に勤める美聴は仕事柄ストレスが多い。商品の使用方法の問い合わせより、クレームの方が遥かに多いからだ。同僚が担当している輸入雑貨に不良品があったらしく、その対応に追われている姿を気の毒に思いつつ帰宅した美聴は、早速ここ最近の癒しであるCDをセットした。癒しと言いつつ、ヒーリング系ではなく所謂シチュエーションものと言うこのCDを友人から貰って初めて聞いた時はビックリしたものだ。声優だろうか、イイ声の男性が働く女性を労って甘やかしてくれるそれに、美聴はハマった。「コールセンターで働くあなたに」とピンポイントなシチュなだけに、痒い所に手が届くセリフの数々は既に何百回と聞いて覚えてしまっているけれど、これを聞かないと一日が終わらない。今となってはルーティーンとして欠かせないものになっていた。どうやら調べてみると、このシリーズは一般流通には乗らない同人系の販売のみらしい。それで声優さんも偽名と言うかイニシャル表記なのかな。NOとのみ書かれたその男性の声に、美聴は恋心に似たものを抱くようになっていたのだった。自分は声フェチなのだろうかと思いつつ、現実でもちょっと気になる人物が一人。26歳の時に起業して、良い品物を扱っていると評判で人気の漢方薬会社社長・崎野である。彼もまたNOとは違うが良い声をしていて、当初は威圧感があって苦手だった。商品のレクチャーをして貰っている時も思わずビクビクしてしまう。これで外見も整っていているのだから、世の中は不公平だ。でも、漸く慣れて来て彼の為人も判って来る。実は結構良い人なのでは。意識し出すと気になるものだが、新商品のレクチャーも今日で終わり。暫くは会う機会も無いだろう。風邪気味で少しフラフラするものの、今日無理して出て来たのは彼に会いたいから。だが、帰り際我慢の限界か倒れた美聴の耳に聞こえたのはNOの声で・・・。シチュCDの発売元が同人系ってことで、まぁ正体はそうだろうなと思ってたら案の定。当初は崎野の会社の従業員の誰かかと、美聴は勘違いするものの、焦れて本人の方が種明かし。元々登場人物も少ない内容ですし、消去法使うべくも無かった。理由については本人が説明してるので、気になる方は読んでみてください。こんな偶然ってあるもの?と多少ツッコミ入れたい気もありますが、世の中は狭いってことで。崎野は元々、美聴に好意を持っており、この出来事を切欠に告白。二人は交際をスタート。エピローグにて既に同棲中、結婚も間近って感じで終わっています。100ページくらいの短編なので読み易いですしお話自体も非常にシンプル。サラーっと読みたい方におススメです。評価:★★★★☆
2023.01.02
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2022年10月刊夢中文庫セレナイト著者:花音莉亜さん会えない間、恋しくて抱きしめたくて、堪らない──空港の免税店で働く萌音は離発着する飛行機を眺めながら、胸に秘めた夢に思いを馳せている。ある日、国際線で活躍中の皆が注目するイケメンパイロットの郁翔から思いがけず声をかけられ、急接近! 憧れの存在だった郁翔がいつも萌音のことばかりを思って大事に甘やかしてくれる。どんどん勢いが増していく郁翔の独占欲露わな溺愛に、蕩けるほど幸せな毎日。なのに、萌音が高校時代に苦手だった同級生がCAになって現れて……!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 村中萌音=空港の免税店勤務の契約社員。 浜野郁翔=CAに大人気の副操縦士。 笹山篤紀=郁翔の先輩で機長。 井関美沙=CA。萌音の高校時代の同級生。萌音は海外とアロマ好きの販売員。空港の免税店で働きながら金を貯め、いずれはアロマ関連の店を持ちたいと思っていた。飛び立っていく飛行機を眺めるのも好きで、終業後にぼんやり滑走路を眺めるのが日課になっていたある日、CAに大人気の副操縦士・浜野郁翔に声を掛けられ驚く萌音。どうやら、操縦席からだと萌音の姿は丸見えらしい。しょっちゅう見かけるので、気になって声を掛けてしまったと言う郁翔に、密かに彼に憧れていた萌音もドギマギ。その場は自己紹介と少々会話した程度で別れたが、3日後、免税店前を通った郁翔に手を振られて、先輩販売員のカレンに根掘り葉掘りどういうことなのかと詰め寄られてしまった。渋々あの日のことを話すと、絶対萌音に気があるに違いないとカレンは太鼓判を押してくれたものの、それを真に受ける程夢見がちなわけでもない。それから暫くは彼と会うことは無かったのだが、あれから2週間後にこれまた終業後にバッタリ。その日は郁翔に誘われて夕食へ。別れ際、郁翔から友達から始めたいと言われ、萌音も快く受けたのもつかの間、数日後には正式に交際を申し込まれた。彼の部屋の合鍵も預かり、お付き合いも順調。郁翔は思いの外嫉妬深くて内心驚いたものの、大事にされているのは自覚している。多忙な彼のために、せめて休んでくれとつい気遣ってしまう萌音がいい子過ぎてストレスになってやしないかと逆に郁翔は心配していた。それからまた暫く経った頃、郁翔達がペアリングするCAが萌音の高校時代の同級生の美沙と知り、嫌な予感が。詠みは当たって、美沙は郁翔に相応しいのは自分だと宣戦布告して来て・・・。この同級生が結構な性悪で、萌音を一々挑発してくるんですけど、様子のおかしい彼女に気付いて事情を聞いた郁翔が激怒。迫って来る美沙を思い切りフってたのにはスッキリ。ぶっちゃけ、本文を読んでれば判るんですけど、そもそも郁翔は萌音にベタ惚れで他の女は眼中にないからなぁ。同僚から呆れられるほど萌音LOVEなのが態度に出てるのに、何故、自分の方が相応しいとか言ってたんだろ、あの人。機長の笹山さんの過去バナが少々気の毒でしたが、郁翔には良い教訓になったようで、同じような轍を踏むことは無さそうなのは何より。萌音も大人しそうに見えて実は芯の強い子なのが判明して、美沙の挑発にも乗らずドンとしてたのは好印象。もうね、わざわざ勘違い相手のペースに乗ってしまうと碌なことないから。作中それなりにラブシーンは多かったものの、毎回数行で終わってるのは良いですね。評価:★★★★☆面白いけど割と淡々とした内容かな。
2022.12.05
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2019年9月刊夢中文庫クリスタル著者:長曽根モヒートさん本社から異動して早々『王子』と呼ばれ、女子社員の憧れの的であるエリート社員の芦屋。経理部で働く美音は、ある日故障したエレベーターに彼と二人で閉じ込められてしまう。思わずパニックになる美音は落ち着かせようと声を掛けてきた芦屋にわずかな興味を抱く……。ところが彼がアパートの隣人として引っ越してきたことで、偶然真の姿を見てしまう。外では猫を被っていたのだ。本性を知られたことを警戒し家に乗り込んでくる芦屋に、興味ない! と言い返してしまう美音。意地悪でひねくれ者だと思っていたのに、時々見せる不器用な優しさや寂しげな表情が気になってしまいーー猫被りに隠された彼の本当の思いとは……? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 冬野美音=経理部勤務の会社員。 偶然に社内の王子様である雅隆の本性を知ってしまう。 芦屋雅隆=営業部のエリート社員。爽やか系のイケメンで女性社員に大人気。 チヨの甥で、転勤を機に叔母のアパートに引っ越してきた。 金井チヨ=美音の暮らすアパートの大家で、雅隆の叔母。kindleもまた溜まって来てるので、電子書籍が続きます。美音は上京して来て以来、世話になっているアパートの大家・チヨに頼まれ、今度彼女の甥が引っ越して来るので、困ってたら手を貸してやって欲しいと頼まれます。間の悪いことに、夫を亡くして以来一人暮らしのチヨは転倒して足を骨折。現在入院中だったため、見舞いに訪れた美音に頼んだのだった。その程度のことならと気安く引き受けた美音は、チヨの甥っ子とはどんな人物だろうと興味津々。しかし、自分の田舎ならともかく今は越してきても挨拶しに来ないのが常。ごみ捨ての時くらいに顔を合わせる程度かもしれない。貴方の叔母さんに頼まれたのと、自ら挨拶に行くのも何か違う。まあ、叔母さんが入院してるのは知ってるようだし、判らない事は隣室の美音に聞けとは言ってあるらしいから、何かあれば向こうから来るだろう。そう思っていた矢先、部屋に入ろうとしていた美音は隣室が騒々しいことに気付き固まっていると、出て来たのは見るからにデリバリー系の女生と半裸の男性。何やらもめているようで、男の方が女性を追い出していた。女性は悪態をついて早々に去って行ったのだが、チヨの甥が引っ越し早々にあの手の女性を呼んでいたことにビックリ。しかも、どこかで見たことがあると思いきや、先日本社から移動して来た営業部の芦屋雅隆ではないか。爽やかイケメンで王子様みたいだと女性社員達が大騒ぎで、美音もエレベーターで助けてもらった。しかし、人当たりが良く親切というのはどうも表向きで、本性はかなりヤンチャなようだ。エレベーターの時は助かったし、良い所もあるんだろうけど、親しくはならないかも。美音はチヨから頼まれたこと以外は彼とは関わらないよう決めた。雅隆は自分の本性を見たはずの美音が、そのことを全く周囲に吹聴していないことに驚き、ついに気になって尋ねると、別に興味ないからと返されたことで美音に興味を持ち始めます。そんなある日、美音の部屋の水道管が破損。部屋は水浸しで、その上大掛かりな改修工事が必要となり、チヨからの提案でその間、ファミリータイプ仕様の雅隆の部屋に厄介になることに。鍵のかかる個室もあるし、手も出さないと言う彼を一応信じ、奇妙な同居生活を始める二人。一緒に過ごすうちに、美音も雅隆の不器用な為人を知り、段々心惹かれて行くのを感じていた頃、酔っぱらった彼からしょっぱい初恋話と、その相手に今度同窓会で再会すると聞いて・・・。お互い想い合ってるくせに、とある誤解からただの隣人に戻りそうになったりもするんですが、何だかんだと上手く行きます。序盤のデリバリー系の女性については、一応事情があり、性的な意味で呼んだわけではないようです。この辺の事情は本人が語ってるので、気になる方は読んでみてください。それにしても、雅隆の恋人になり、美音が女性社員達から恨まれそうな状態で終わってるのが気の毒。評価:★★★★☆
2022.11.30
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2022年9月刊夢中文庫プランセ著者:犬咲さん気がつくと、魔法陣の中心に座りこんでいたリサ。腕の中には愛犬コットン、そして背後には闇色の長い髪と真紅に輝く瞳、渦巻き状の角を持った男──魔王がいた。召喚と同時に魔王とエンカウントなんて……。魔王を打ち倒す聖女として召喚されたことを魔王本人から聞かされたリサは、コットンだけでも助けてもらえるよう懇願する。しかし彼が告げたのは「ここに……私のそばにいてくれ」──魔王・スピロと城で暮らすことになったリサを待っていたのは拍子抜けするほど平和な毎日。さらに「あなたの特別になりたい」と乞われ、彼と“特別”な関係を結ぶと、翌朝から彼の態度が甘々恋人モードに切り替わって──こんなの想定外なんですけど……!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 リサ=プチブラック企業に勤める会社員。ある日、愛犬・コットンと共に聖女 として異世界召喚される。 スピロ=異世界召喚されたリサが初めて出会った人物で、その性質から「滅びの 魔王」の異名を持つ。コットン=リサの唯一の家族でメスのポメラニアン。異世界召喚という、ファンタジー寄りのTL小説です。タイトルや表紙からしてほのぼの系と思いきや?リサはブラックすれすれの企業に勤める会社員。学生時代に両親を亡くし、家族と呼べるのは飼い犬のコットンだけ。そのコットンは現在妊娠中で、休日を利用してかかりつけの動物病院で定期健診を受けてきたところだ。産まれる子犬は3匹だと言う。実はこの妊娠は繁殖目的とかではなく不慮の事故だった。ある意味人為的な。天涯孤独のリサは理由はどうあれ、出来れば子犬も自宅で飼いたかったが、如何せん薄給の身ではコットンだけで手いっぱい。犬好き繋がりで信用できる仲間に声掛けし、何とか2匹の引き取り手は現れた。残るは後1匹。でももし、最後まで貰い手が無ければ自分が責任を持ってコットンと一緒に育てて行こう。生活は多少厳しくなるけれど・・・。ため息をこぼしつつ、昨夜読んだ恋愛小説の主人公みたいに、御曹司とかとエンカウントしないかしら。石油王でも良い。それこそ、犬を4匹どころか何十匹とか飼っても屁でもないような。非現実的な妄想をしていたその時、リサは眩しい光に包まれ意識を失った。目覚めるとそこは、映画とかで見た中世的な一室だった。見下ろすと魔法陣らしきものが。まさか、これは流行りの異世界召喚ってやつ?幸いにもコットンは腕に抱いたままで無事。もしここが異世界でもこの子が一緒なら現世に未練も無い。人の気配を感じ目を向けると、黒い長髪の青年が佇んでいた。その美しさもさることながら頭部にある2本の羊の様な角から彼が普通の人間でない事が判る。取り敢えず状況を尋ねるリサに彼は、予想通りの答えを返した。やはり、ここは異世界で自分は「聖女」として喚ばれたらしい。青年は「滅びの魔王」と呼ばれており、生物の命を吸う者として恐れられていた。魔王を恐れた人間が唯一彼を亡ぼす力を持つ「聖女」を召喚したが、魔王が先手を打って彼女を手元に転送したのだと言う。まさか、殺される前に自分を始末するため?とリサは慄いたが、せめてコットンだけは助けてくれと懇願すると彼はこの世界の理から外れるリサとコットンの命は奪えないので、その気はないとのこと。なるほど、異世界人だから魔王の力は作用しないということか。一先ず命の危険が無いのは良かったが、コットンは身重。もうすぐ子犬も産まれる。残忍そうには見えないが、相手は魔王。人里の方が安全だろう。彼が目を離した隙に、コットンと共に早速城を抜け出し、最寄りの村を訪れると身なりや、やって来た方角から村人たちからは奇異の目で見られ、さっさと出て行けとばかりに剣呑な雰囲気。しかも、あの魔王についての恨み言が出るわ出るわ。彼から聞いていた通り、やはり魔王には生物の命を吸う力があるようで、城に近いこの村での被害は多い様だ。でも、魔王本人は、その力を疎んじてる感があった。多くの犠牲を出した村人の怒りも判るけれど、彼にも事情があるのではと思うと、何だか腹立だしくなってリサは城へと戻るのだった。コットンの散歩と用足しで少し出ていたと言って戻ると、魔王は泣いていて驚いてしまう。よくよく話を聞くに、彼はもう4百年もの間一人で暮らしていたようで、いるのは身の回りの世話をする使い魔の石像達のみ。どうにも寂しくて、漸くこの忌まわしい力の影響を受けない者が現れたのに出て行ってしまったと寂しくて泣いていたと聞いて唖然。魔王・スピロは不老不死で絶大な力を持ちながらも、寂しがりやな青年だったのだ。これは何かもう放って置けない。飼育放棄されてボロボロだったコットンを引き取った時の感情と少し似ている。リサとコットンはこのまま人里へは行かずに、この城に止まることを決心。この城に住み始めて早1ヶ月。その間、コットンも無事に出産を終え、3匹の子犬も元気に育っている。リサとスピロはコットンの出産を機に一気に距離を縮めて、ある日一線を越えます。何と言うか、彼に絆されてしまっていたから。スピロはリサを大切にし、彼女も愛犬たちと自由に伸び伸び暮らせる生活を満喫。今までで一番充実した日々だった。しかし、ある時、リサは体調不良を覚え、妊娠が発覚。異種族同士でも子を授かれることに驚いたが、これで自分が寿命を迎えても彼は孤独にならない。やはり、それが何よりも気掛かりだったから。だが、以前、母親の為に金品を欲して城に忍び込んだ少年に金の延べ棒をこっそり渡したことが徒となって村人たちがリサを人質に城に眠る宝を要求し・・・。勿論、リサはスピロによって救出され事なきを得ますが、ホント、この村人たちがクソ。スピロの力の巻き添えで多数の死者や家畜の被害が出たのは気の毒ですが、身重の女性に石を投げつけたりしたら温和なスピロも怒りますわ。結局この件でまた大勢失くなってしまったものの、後にリサに語られたスピロの身の上話を聞いたら何とも読んでて切ない内容。そしてリサの召喚理由にもまだもう少し裏があって驚きました。もうホントにそんな破滅的な考えは捨てて幸せにならないとダメよ、スピロ。でも、例え動物を可愛がっても、自分が近寄るだけで死んでしまうって辛いですよね。「フェアリーテイル」のゼレフみたいな力かな、多分イメージ的に。その後、二人の子供も産まれ、仲睦まじく暮らしていくのですが、リサやコットンの寿命問題は解決したとしてあの厄介な力は無くならないので、内心密かにある決意をする彼女。ハッピーエンドながら、メリーバッドエンドっぽくもある、何だか考えさせられるお話でした。評価:★★★★★コットンの過去とか読んでて胸が痛いけど、かなりの良作です。
2022.11.23
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2020年6月刊夢中文庫クリスタル著者:北野ふゆさん千穂は、元カレに騙されてしまったことが原因で恋に臆病。ある日、千穂が店長を務めるアパレルショップに新任のMDがやってくる。美形なわりに気取らず、人懐っこくしかも有能と一見完璧な宮葉は、何故か最初から千穂に好意的。甘い言葉と視線に警戒心を抱いた千穂は、公私をきっちり分けて彼と接しようとするが、宮葉の方が一枚上手で気づけばプライベートでも連絡先を交換することに。『千穂さんも、僕を好きになって下さい』ーー無邪気にぶつけられる彼の熱い気持ちに、頑なだった千穂の心は次第にとかされはじめる。そんな宮葉の猛アタックには、実は理由があって……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 柊千穂=セレクトショップの店長。元カレとの別れが原因で聊か男性不信気味。 宮葉貴史=新しく千穂の店の担当になったマーチャンダイザー。 出会って早々に千穂に好意を示す。 関谷皆美=千穂の高校時代からの親友。男運の無いヒロインとそんな彼女を一途に愛するスパダリなヒーローとの恋物語です。130ページ弱なお話なので主要人物も少な目。千穂はセレクトショップの店長として忙しい毎日を送っていた。でもその方が気が紛れる。千穂は手酷い失恋のせいで、あれから暫く経つと言うのに心にはポッカリと穴が空いたままだ。美人でグラマーな彼女は遊び慣れていると思われるのか、セフレ紛いに扱う男の多い事。親友の皆美には、こんなにいい子なのに寄って来るのがクズ男ばかりなんて神様は意地悪過ぎると我がことのように嘆いてくれた。それもそのはず、ついこの間まで付き合っていた男は地味で平凡な男性だったから今度こそ、と思っていたのに、蓋を開けてみればいつも盛っていていたし、しまいには既婚者だったと判明。奥さんが妊娠したから別れたいと一方的に話して去って行った。こいつも結局、今までの彼氏同様に自分をタダでやらせてくれる女と思っていたわけか。決してお堅いとは思ってはいないけれど、千穂は元来働き者で真面目な性格だ。その為人も見ていればすぐ判りそうなものなのに、皆美に言わせると「色っぽい雰囲気」がその手の輩を引き寄せてしまうのか。意図せず不倫の片棒を担がされて以来、恋をするのも億劫になって来た。だが、そんな彼女に新たな出会いが。マーチャンダイザーとしてやって来た宮葉は、清潔感もあってふいに見せる所作が何とも綺麗な青年だった。前任者がどうにもいけ好かない人物だったので、少し身構えていたのだけれど、仕事熱心だし、作業の手伝いも率先して行う気配りも気に入った。見た所、千穂より少し下と言う印象はやはり当たっており、26歳だと言う。彼の手伝いで作業も早く済み、お礼に食事に誘ってみたら、帰り際の彼からもっとあなたの事を知りたいと言われて戸惑ってしまった。皆美に相談すると、これはチャンスだと発破をかけられた。もうアラサーなんだから、2歳下なんて気にせず付き合ってみれば?と薦められたものの、最低男とばかり交際してただけに、彼にも裏の顔があったらと思うと踏み切れない。一先ず、宮葉にあの言葉の意味を問い質して見ることにした。後日店を訪れた彼に休憩時間を狙って、意図を尋ねてみたら、言葉通りの意味だと言う。千穂に一目惚れで出来れば交際したいと。でも、その気になれるまで彼氏候補として考えてくれればいいと告げられ、聊か気持ちは軽くなったが、宮葉は本当に答えを急かさなかった。あれから数か月、何だかんだと食事やデートに誘われたものの、彼は手すら握らない。季節は変わり、あんなに一緒に行動しててまだ付き合っていないのかと皆美に呆れられたが、さすがにもう宮葉の為人は理解している。初デートの日にまさかの戸籍謄本まで見せられて面食らったくらい、彼は生真面目人間だった。だが、まるで千穂が元カレに不倫相手にされてたことを知っているみたいに身綺麗さをアピールしてきたことがどうにも引っ掛かるのだ。皆美の言葉を借りれば、まるで千穂の傷が判っているみたいだと。まさか心が読めるエスパー? 二人で荒唐無稽な想像迄してしまう位のスパダリ。普段の言葉遣いや洗練された所作などどことなくいい所のお坊ちゃまっぽい雰囲気の彼が、そもそも自分のどこに惚れたんだろう。意を決して、彼に尋ねようと思っていたその日、宮葉と出掛けた流行りのショッピングモールで、元カレと遭遇してしまい・・・。この後、元カレに対してサラリと意趣返しした千穂。宮葉のおかげで吹っ切れた感があってスカッとした。そして、彼が千穂に惚れた理由が語られるんですが、そういうわけかーと思わず納得。宮葉は本来、女性の好みに煩く、それれはもうそんな人に出会える確率は低いんじゃ、と思う程。それ以前にだらしない同性にはもっと厳しい。家族からも呆れられるくらいの潔癖人間が、ある意味クズ男に振り回されていた千穂に目を奪われてしまったのでした。千穂との出会いの経緯については是非実際に読んで確かめてください。タイトルにある「一途」もまあ、そうなんですけど、どっちかっていうと執着に近いかも。結局、彼に絆されてその想いを受け入れた千穂。後に宮葉が大手不動産グループの御曹司と判って、やっぱり無理、となりかけるも、僕は跡取りじゃないからと言いくるめられて結婚を前提に交際することになり、2年後に結婚。エピローグでは第一子を授かった千穂への過保護ぶりが周囲に呆れられるほど、妻馬鹿になっている宮葉の様子が描かれています。評価:★★★★☆
2022.10.16
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2022年4月刊夢中文庫クリスタル著者:長曾根モヒートさん「これで、あなたは私のものね」──裕福な家庭に生まれた礼香がお嬢様と呼ばれ育てられたのは11歳までのこと。父親が起訴されたことをきっかけに今では一般的な庶民の生活を送っていた。しかし突然会社をクビになり、長年住み続けたアパートも立ち退きを言い渡され、立て続けに何もかもを失ってしまう。友人の紹介でとある会社の面接を受けに行くと、そこに現れたのは名前を変えたかつての使用人・棗(なつめ)だった。「お久しぶりですね。お嬢様」──礼香は棗の策に嵌まり、住み込みのハウスキーパーとして働くことになるのだが……「かつてあなたが俺にしたように、プライドも、尊厳も何もかもを奪い、あなたを俺のものにするためですよ」 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 椎名礼香=不運が重なって無職となり現在職探し中の元会社員。11歳までは貿易商の社長令嬢 だった。 東藤正行=旧姓名:牟呂棗。IT企業の社長で礼香の昔馴染み。神屋ミサト=礼香の小学校時代の同級生で大手企業の令嬢。何かと礼香と張り合っていた。 牟呂渚=棗の父方の従姉妹。棗に片思いしており、礼香を敵視する。 真希=礼香の大学時代からの友人。礼香は誰もが羨むお嬢様として育った。母は躾に厳しい人だったが、それも娘の将来の為。父の部下の息子である棗を自分付きの使用人の様にこき使い、それなりに満たされた日々だった。だが、11歳になったある日、あっけなくそんな生活は崩れ去った。曾祖父の代から続いた貿易会社は才覚の無い父のせいで倒産の憂き目に合い、おまけに立て直しを図るためのとある取引が違法すれすれの上詐欺の疑いがあるとかで、父は事情聴取まで受けることに。有名企業だったことから当時その事件は連日報道されたほど。母はあっさり父に見切りをつけ、差し押さえされる前に貴金属等金目の物を持ち出し、礼香を連れて家を出た。以降、女手一つで礼香を育て、母は数年前に資産家と再婚。義父は子供嫌いな事もあり礼香は母の結婚と共にアパートで独り暮らしをしている。それでも大学まで出してもらえたのだから感謝しなければ。卒業後は中堅の会社で事務員をしながら堅実に暮らしていたのだが、先月いきなり解雇されてしまった。真面目に働いていたつもりではあったがこのご時世、どこも不景気なのだろう。解雇理由についてはあまり深くは考えていなかったものの、不運と言うものは重なるもので、アパートも建て直すので早々に退去して欲しいと大家さんに告げられて正直困っている。幾つか面接も受けてみたけれど届くのは不採用通知ばかり。そんな時、友人の真希の勤務先の取引会社が事務員を募集しているらいく、礼香のことを頼んでくれたという。持つべきものはやはり友人と、早速そこを尋ねるとかなりの大会社。しかも、社長直々の面接とあって緊張して待っていると、現れたのは14年前に別れた棗ではないか。でも、東藤正行と名乗っていたのに。まさか他人の空似?思わずじろじろ見ていたら、彼の方から棗で間違いないと告げた。あれから彼にも色々あったようで、改名したのもそれに関係しているのだろう。棗は申し訳ないが事務員はもう決まってしまったので、自宅の住み込みのハウスキーパーとしてなら雇用してもいいと言う。礼香は内心、棗が昔の仕返しを目論んでいるのをすぐに察し、断ろうとするも提示される給料の額を見て考えが揺らいだ。それに住み込みならアパート探しも働きながらゆっくり探せるではないか。意趣返しをしたいなら好きにすればいい。こんな大きな会社の社長なら相当稼いでいるっぽいし、立場逆転でマウントを取りたいだけなら付き合ってやろう。そしてある程度金を貯めたら出て行けばいいのだ。上手く乗せられて早まったと思っても後の祭り。棗は当時の自分が命じられたことをしっかり覚えていて、礼香に再現させた。子供だったとはいえ、何で体まで洗わせてたんだと激しく後悔したものの、棗はそうレパートリーがあるとも言えない彼女の料理に喜び嬉しそうだった。おまけに話の流れで元カレの話題になった時は随分と機嫌が悪そうで、まさか嫉妬してる?元々、あの頃の礼香は棗を気に入っていたから傍に置いていたのだ。子供故の不器用な束縛だったのだけれど、突然自分がいなくなって棗はどう思ったんだろう。売り言葉に買い言葉で多少の言い合いはしたものの、二人の同居生活は思ったより楽しく、礼香は何かと昔を思い出してしまう。そんな折、小学校時代の同級生ミサトと再会し、後日誕生パーティーに誘われた。昔は何かと張り合っていた仲だけど、仲良くしたいと言われ、クラブを貸し切っての催しと聞いて興味が湧いた。棗はいい顔をしなかったが、その理由はすぐに判明。招待客に当時の彼女を覚えている物がいて、礼香はイイ話のネタにされたのだった。加えて薬迄盛られて貞操の危機に陥った彼女を救ったのは棗。この出来事から、二人の関係が徐々に変化し・・・。ミサトは意地悪で招待したのかと思いきや、彼女は本当に善意で招待しただけで、ただ招待客の民度が低かったと言う。ただこれが元で、礼香は自分の気持ちに気付きます。棗も彼女が好きなのは明白なので、お互い一歩踏み出せばいいのに、邪魔してくるのが棗の従姉妹・渚。棗の父が既に鬼籍に入っている事、その死の原因が礼香の母に借金を押し付けられたことによる自殺だったと聞いて身を引く決意をします。ミサトが実は根はいい子だったけど、大人しそうな渚がとんでもない腹黒だったのは予想外。でもまあ、結局当時の真相も判って、棗は承知の上で礼香と一緒になりたいと告白。色々と障害はありそうだけど、お互いの執着愛に勝るものなしって感じでお終い。このレーベルさんにしては少々厚めなので、読みごたえがありました。ヒーローとヒロインどっちもお互い以外どうでもいいってスタンスなのが潔くて良いです。特にヒーローがかなりの拗らせ系なので、ヒロインが手に入るなら湯水のように金も使うし、ここ最近のヒロインに降りかかった不運も実は?だったりします。そんな彼をしょうもない奴と思いつつ、あなたは私のものだからと言ってのけるヒロイン。それと読んでて思ったんですが、作中一番の悪党はヒロインの母親だと思う。これもまぁ一応事情があるんで興味がある方は読んでみてください。評価:★★★★☆
2022.10.14
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2021年10月刊夢中文庫セレナイト著者:柊 一葉さん獣人の国で、お城のメイドに採用されたリリは、洗濯物を運んでいると何かにぶつかる。それはやけに首回りがすっきりとした……全裸の王子様!? そして突然、オオカミ獣人の王子、フィルの「番」に認定されてしまう。「ずっと君に会えるのを待っていた。君のためなら、死ねる」ーーいきなり重い!! まったく気乗りしないが、弟に諭され「妃候補」としてお城に滞在することになってしまったリリ。番が感じられないリリは、自身のことを知らずに愛を告げ、溺愛するフィルの言動が理解できずにいたが、彼の優しさに触れ、絆され始めていることを自覚する……。だが彼女には番を拒む理由が他にあり……?ーーリリのことは、私が必ず幸せにする。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 リリ=王宮の新人メイド。初出勤日にフィルネスの番に認定された。フィルネス=ブライズ王国の王太子。番になったリリを溺愛し、王宮の一室に軟禁する。 ユト=リリの3歳下の弟。 ジウ=フィルネス付きの補佐官。人間と獣人が共存する世界。獣人の国・ブライズ王国の王宮のメイドとして働くことになったリリは、初出勤日に運命的な出会いをした。洗濯物を運んでいる最中にぶつかった裸の青年から番認定され、あれよあれよという間に豪華な部屋に通されたリリは面食らうばかり。しかも、青年はこの国の王太子・フィルネスだという。番を見つけられる獣人は3割にも満たない。でも、運よく巡り会って契りを交わせば能力が格段にアップするらしい。故にこの王国の王位継承の条件は番を見つけることであった。フィルネスも自分に見合った番を探し続け、既に5回もの見合いを敢行している。今日もその見合いの日であったのだが、彼は漸くリリと言う番を得たのだった。城は喜びに包まれ、侍女たちもリリを既に妃殿下扱いだ。混血種の上に平民のリリを差別する者はいない。一つ文句があるとするなら、この宛がわれた部屋に軟禁状態と言うこと。逃亡の危険性があるからと思われてのことであろうが、それもそのはずリリはフィルネスの求愛を受けながらも王子妃になるのを渋っているからだった。彼女は一先ず弟と話をさせて欲しいとユトを呼んでもらった。母が亡くなって以来8年間、貧しいながら姉弟手を取り合って生きて来た。この事態に冷静な弟の意見も聞いてみたかったのだが、当のユトはこんなに望まれているんだから番になってあげれば?と他人事。どうやら、リリに面会する前にフィルネスと話し、その誠実さに嘘はなく姉を任せられると思ったらしい。ユトのお眼鏡に叶ったのなら人柄は申し分ないのだろうけれど、リリは番と言う存在に一方ならぬ偏見があった。獣人は番を見つけられない場合が非常に多い。大抵は恋愛なり見合いなり相応の相手と結婚するのが常で、リリとユトの両親は恋愛結婚であった。両親は仲睦まじかったが、ある日、父は出会ってしまったのだ自分の番に。番を見つけた獣人はその人の事しか考えられなくなる。父は家族を捨てて番と駆け落ちしてしまい、残された母は二人の子供を抱えて随分苦労した。そのうち母は精神を病んで自ら命を絶ち、まだ子供だった姉弟が残されたのだった。フィルネスの自分への態度を見るに父もきっとこんな気持ちだったんだろうと思う。とは言え、家族まで捨てるなんて。ユトは2歳だったので父が出て行った時の記憶に無いという。母の恨み節を後に聞いてしょうもない親父と言う印象があるだけ。だが、5歳だったリリは父への怒りと恨みを未だに忘れられずにいる。フィルネスがいくら尽くし、贅沢な暮らしをさせてくれてもこの蟠りは容易に消えそうもない。ユトからリリの家庭事情を聞いたのか、フィルネスも色々考えてくれているようだ。番の件だけは了承して欲しいとのことだが、正直それが一番のネックなので、相容れない気がする。それでも、1ヶ月近く傍に居れば絆されても来る。彼の家族もリリを大歓迎し、ジウに至っては外堀を埋めるべく奔走中。番になるのは御免だけど、フィルネスに恋をするのは吝かではない。父親に対しての恨みもここまで来ると筋金入りで、こんなに性格が悪くては純粋で誠実なフィルネスの相手として自分は相応しくない。悶々と悩んでいたある日、リリの身上調査をしていたジウから、行方知らずだった父を見つけたと報告があり・・・。生き別れの家族が後になって、王子妃の肉親だと金をせびりに来られても困る。そういう理由もあって口止めのためジウは蒸発した彼女の父親を捜索していたんですが、結局、父親は病死していたのが判明します。しかも父は番の女性には自分に家族がいたことを隠していたらしく、リリはショックを受けます。何もかも話して承知の上で逃げたのなら、二人はずっと後味の悪い思いをしていたろうと少しは溜飲も下がったのに。この父親、正直最低以外の何ものでもないですね。それに、そうさせてしまう番と言う習性もロマンチックなようで怖いものだと判りました。ふさぎ込むリリを包み込むフィルネスがここに来てヒーローの本領発揮。無理矢理彼女に襲い掛からない様、キツい抑制剤まで飲んでいたことをジウから聞いて、リリは漸く彼との将来を考えることに。この後、王族に嫁ぐことで厳しい掟があることが判り、やっぱり結婚なんてしないと騒動になりかけるんですが、ジウとユトの策略によって事なきを得ます。何だかんだと外堀埋められていたせいで、二進も三進も行かなくなるリリは1ヶ月後、フィルネスと結婚してお終い。総じて周囲の人達に悪人が一人もいない分、モヤモヤ度も少な目。ヒロイン一人がグルグル悩んでたって印象です。番と言う厄介な習性がテーマなのでこの手のジャンルが好きな方は楽しめるんじゃないかと。評価:★★★★☆
2022.10.13
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2022年8月刊夢中文庫ペアーレ著者:宇奈月香さん「お前が見るのは俺だけ。俺しか見るな」ーーとある事件をきっかけに、由愛に尽くすようになった幼馴染みの潤。由愛は御曹司である彼の未来を守るため、自らが悪女として振る舞うことで、彼の行き過ぎた従順さを覆い隠してきた。しかし、……自分の存在は彼の枷でしかない。そう思った由愛は、大学卒業と共に彼の前から去ると決め、最後に媚薬の力で潤に抱かれる。伝えられない想いと本能で求め合った夜を忘れられないまま、誰も知らない田舎町でひっそりと暮らしていたのだがーー「由愛を探してた」由愛の前に突然潤が現れて……? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 川島由愛=とある事件を切欠に自分に尽くすようになった幼馴染を解放するために、都会を去っ て田舎町へ移り住む。パン屋の後継者として修業中。 相沢潤=製薬会社社長の長男。小学生の頃に自らが提案したゲームのせいで事件被害にあった 由愛に責任を感じ、ひたすら尽くしていた。 陽子=元検事のパン職人。 佐久間=パン屋の常連の会社員。新刊が出ると買ってしまう作者さんの一人、宇奈月香さんの最新作(多分)です。16年前、小学校低学年だった由愛は切り付け犯によって重傷を負った。当時、世間を賑わせたこの事件により、幼かった彼女は外出と家族以外の人間を怖がって引き籠りとなってしまった。そんな由愛に心から謝罪し、これからは自分が守ると、3歳年上の幼馴染の潤は誓った。何故なら、自分が提案したくだらない鬼ごっこのせいで由愛が目を付けられて襲われたのだから。両家の両親に土下座してまで由愛の傍でずっと守らせてほしいと頼み込んだ潤の願いは聞き入れられ、以降15年もの間それは続いた。彼は周りにどれだけからかわれようと気にすることはなく、とにかく由愛に甲斐甲斐しかった。由愛と一緒にいるために高校をわざと留年した時は驚いたが、彼の両親が激怒してもどこ吹く風。さすがに由愛も心苦しく、そんなことまでしなくていいと潤を幾度も説得したが聞き入れられない。傍から見れば由愛至上主義の潤の言動をさぞ異常に見えるだろう。そこで、由愛が思い付いたのは自分が悪女として振舞うことだった。昔の事件の被害者としていつまでも潤を束縛する性悪女。彼に対する陰口はやがて下火になり、代わりに由愛の悪評で持ちきりだ。だが、そんな二人の関係も漸く終わりを告げたのは由愛が大学4年のある日。潤の母親からいい加減息子を解放してほしいと頼まれた。潤はいずれ会社を継ぐ身。実は婚約者もいると言う。タダでとは言わないと相当な額の小切手も手渡され、いよいよ決断するべきだと由愛は腹をくくった。ここ数年と言うもの、従順に見えた潤が嫌々従っているように見えて仕方なく、不機嫌な時も多い。きっともう離れたくて仕方ないのだろう。好きな人にそんな顔をさせ続けたくない。そう、由愛はずっと潤が好きだった。別れを決意し、彼の前から消える算段も終え、せめてもと潤に媚薬を盛って一晩だけ関係を持った。連絡手段を全て経ち、身を寄せる場として目に留まったのはとある記事。田舎町のパン屋の後継者を探しているというものだった。由愛と何の接点の無い土地だし、パン屋にも興味がある。潤に知られない様連絡を取り、店主である陽子の店舗兼自宅に居候の傍ら修行することになったのだった。あれから1年。漸くパンも何種類かは店に出せるものが出来るようになった。でもふとした折に思い出すのは潤の事。15年もの間四六時中ベッタリだったのだ、彼の為に身を引いたとは言えやっぱり寂しい。修業は楽ではないけれど、パン生地をこねていると良いストレス解消になる。陽子がこの土地を離れるまであとわずか、外国でコーヒー農園をやっている恋人の元へ行くという彼女が羨ましいが、代替わりしたらパン屋の店主として頑張らなければ。しかし、現在由愛はある客の態度に困っていた。近所の建築会社に勤める佐久間と言う男がとにかくしつこい。軽薄そうな言動も鼻について正直大嫌いなタイプなのだが、相手は客。そう邪険にも出来ずにいたら状況を察したのか陽子がさり気なく助けてくれていた。今はまだしも、彼女がいなくなったら一人で対処しないといけないと思うと気が重い。ある日、陽子に頼まれコーヒー豆を買いに出かけた由愛は潤にそっくりな後姿を見たせいで気もそぞろ。彼はきっともう婚約者と結婚しているはず。思わず、心配してくれた陽子に潤とのことを話してしまった。全てを聞き終えて、陽子に後悔していないのかと聞かれたが、していないと即答したものの本音としては未練たらたらだ。それから数日後、陽子は町内会の温泉旅行に出掛け、家と店には由愛一人きり。パンの配達のため、車で出かけようと思ったら、タイヤが3本もパンクしており、なぜだか佐久間が配達なら送ると言って現れた。タイミングの良い登場に恐怖心しかなく、思わず身構えていると彼女を庇うように潤が二人の間に入って来て・・・。まあこれはお察しの通りパンクは佐久間の仕業で、車に由愛を連れ込んでコトに及ぶつもりだったらしく、間一髪でした。潤は潤で、由愛を探し回り、興信所に頼んでやっと由愛を発見。あの似た後姿もおそらく潤本人です。彼は周りが何と言おうと由愛から離れる気は無く、あの従順ぶりも単に彼女は俺のものと知らしめるためだったという。要は由愛は知らずに外堀埋められてたわけで、事情を知らない潤の母の介入で拗れてしまった。彼は会社の後継についても根回ししていて、弟に後継者の座を譲り自分は得意分野のシステム構築の会社を興す予定らしい。潤の本心と考えを知った由愛は、パン屋を営みながら彼と生きていくことを決心して終わり。110ページ弱と言う短いお話だったので、ちょっと端折られてる感はあったものの、潤の腹黒っぷりがある意味ホラー(^_^;)陽子と顔見知りだったことも終盤判るんですが、一体いつから由愛の状況知ってたんだよ、と思うと怖い。佐久間もキモかっかけど、潤に比べたら可愛いものです。執着していたのは自分だけと思いきや、それ以上の執着をされていたというオチ。再会してからの潤の言動が、この人おかしいよばりに気持ち悪いので好き嫌い分かれる話かもしれません。評価:★★★★☆
2022.10.06
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2022年6月刊夢中文庫プランセ著者:悠月彩香さん「別に俺は、おまえがいればいい」「そりゃ、私はずっと坊ちゃんにお仕えしますけれど」マラスカーナ伯爵家に仕える侍女リィンは、嫡男ラーヴィルに舞い込んだ婚約話を断るための偽恋人役を、『推しの舞台切符』に釣られて引き受けてしまった。ーー婚約は白紙に戻り、無事任務完了!……のはずが、なぜかラーヴィルは恋人のフリをやめず、リィンを『婚約者』と紹介しはじめた!? 嘘がバレるのではとひやひやするリィンだがーー「おまえのことが好きなのに、どこまでつれないんだ。鈍感女」主人からの突然のキスで、初めて彼の甘ーい言動の数々に気がつきはじめ……? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 リィン=マラスカーナ伯爵家に仕える侍女。 舞台俳優・ラファエルに熱を上げており、桟敷席のチケットと引き 換えにラーヴィルの恋人役を引き受ける。 ラーヴィル=伯爵家の跡取り。父の引退が決まり家督を譲られると共に縁談を持 ちこまれ、断るために長年想いを寄せていたリィンに恋人役を頼む アルナ=伯爵家にやって来た新人メイド。 フローラ=ラーヴィルの縁談相手。未亡人で彼とは30歳以上年上。 ラファエル=王国で人気を博している舞台俳優。 アーデンル=ラファエロの後援者の伯爵夫人。kindleの本棚を減らそうシリーズもそろそろ終わりそうです。多分。こちらも割と新しめのお話ですね。自分への好意に鈍すぎるヒロインに苦戦させられる次期伯爵の苦労が描かれています。騎士隊を率いるラーヴィルは今年で21歳。父が母と二人のんびりと領地で暮らしたいということで、近々家督を譲られることになった。だが、このマラスカーナ家にはラーヴィル一人しか子がいない。両親は家督を継ぐと同時に身を固めなさいと告げた。そして、見せられた絵姿は美人だけれどどう見ても母と同年代の女性。恐々尋ねると52歳の未亡人だという。しかも、母の友人だそうで、早くに夫を亡くして子供もおらず長らく独り身だったらしい。若くして家を継ぐのならこれくらいしっかりした人が好ましい。と両親は大真面目に語っているが、年齢や外見はともかくとして、彼には子供の頃から思い続けている女性がいた。添い遂げるなら彼女が良い。お互い適齢期になっていつ告白しようと思っていたというのに、まさかの事態に唖然。乗り気らしい相手の方には悪いが何としても破談にしなければ。ラーヴィルは父に長年仕えていた騎士の娘・リィンがずっと好きだった。父親が亡くなり、母親と共にこの屋敷にやってきた彼女に一目惚れして以来、この子と将来結婚するのだと決めていた。そんなリィンが自分付きの侍女になり、大分距離も近付いたように思う。遠回しにアプローチしているのだが如何せん彼女は鈍かった。やはり、恋愛対象として見られていないのか。そこで考え付いたのは、彼女に意識させるのと、縁談を断るための芝居にリィンを巻き込むことだった。彼女が熱を上げている俳優・ラファエルの舞台の桟敷席チケットを報酬に、ラーヴィルの恋人役を演じて欲しいと頼まれたリィン。庶民には立見席しか買えないのに、舞台に超近い桟敷席なんて一生縁が無いかもしれない。飛びついた彼女にしてやったりとほくそ笑み、ドレスは間に合わず、母の若い頃のものになったが、その代わり少々値の張るネックレスを贈った。夜会に庶民丸出しの服装では入れないからと。貴族令嬢っぽく見えるよう礼儀作法とダンスを付け焼刃で叩き込み、いよいよ、フローラと対面。リィンを恋人と紹介し遠回しに縁談を断ったが、夫人は気分を害した風も無く納得してくれたようだ。年齢的に纏まらないだろうとは思っていたらしい。それよりもと相談されたのは昨今、巷を賑わせている怪盗のこと。貴族の屋敷ばかり狙われて、独り身では恐ろしいと。騎士隊も警備を強化しているが、未だに尻尾を掴めない。必ず捕まえると約束し、その場は別れた。数日後、ラファエルの舞台を見に来た二人はフローラと再会。彼女はラファエルの後援者の一人だそうで、もうすぐ外国へ行ってしまう彼の晴れ姿を見に来たのだとか。同担と判って、リィンとフローラは意気投合。桟敷席で見る舞台は素晴らしく、フローラのおかげでラファエルにも会わせてもらえてリィンはホクホクだ。貧乏くさいと思われそうだが、手作りのバラの精油も渡せた。フローラには感謝し切れないが元はと言えばラーヴィルがプラチナチケットを取ってくれたおかげ。おまけに、フローラは千秋楽のチケット迄譲ってくれるという。二人で推しを愛でようということで、楽しみがまた出来た。喜ぶ彼女にラーヴィルは面白くなくて、つい彼女の頬にキスをし、告白。リィンは驚いたが、何故か嫌じゃない。以降、急激にラーヴィルを意識しだし、仕事もミスを連発。いよいよ、千秋楽の日、ラーヴィルの元にフローラの屋敷に泥棒が入り、根こそぎ宝石を盗まれたとの一報が。見ると綺麗に宝飾品の類が無くなっている。だが、現場にかすかに残る香りはリィンが作っていたあの製油のもので・・・。怪盗の正体はもうご想像つくでしょうが、はいその人です。リィンもあの身に着けてたネックレスのせいで、狙われるんですが、間一髪のところでラーヴィルに救われます。そして、リィンも誰が本当に好きなのかに気付き、ラーヴィルの想いに応え結ばれます。身分違いで反対されるかと思いきや、両親は大喜び。実は息子の長年の片思いに気付いており、嘘の縁談を持ちこみ決心を促したというオチ。身分差の問題はリィンがフローラの養女になることで解消します。中盤のヒロインの危機や、ヒーローの両親たちの思惑などは、興味があったら読んでみてください。うん、ヒーローがヒロイン好きなのは皆知ってるよって使用人たちの会話が可笑しかったです。知らぬは本人ばかりなりって言うw評価:★★★★★会話のテンポも良いし、面白いお話でした。
2022.09.23
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2022年7月刊夢中文庫プランセ著者:椋本梨戸さん高瀬香澄は夫に大切にされてるーー優しくて仕事もできて、ちょっと心配性な夫の千歌との新婚生活は、情熱的に甘く蕩かされ愛し合う、かけがえのない幸せが詰まった毎日。けれど香澄は千歌に心配をかけたくなくて、とある悩みを打ち明けられずにいる。「俺をもっと頼ってくれ。必ず守るから」 本当の自分を見せ合って、もっと深く愛し合いたい──千歌も香澄のために秘かな努力を続け、最愛の妻にもっと甘えられる男になろうと頑張っていた。そんななか、二人が生活する古民家の売却を親族から迫られるようになって……!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 高瀬香澄=中堅電子メーカーに勤める会社員。幼少期からのトラウマにより男性 が苦手だったが、千歌の猛アタックに絆されて交際。結婚した。 高瀬千歌=外資系証券会社のシニアマネージャーで香澄の夫。粗暴な男が苦手な 香澄の為に彼女の前では猫を被っているが、本来はかなり喧嘩っ早く 荒っぽい性格。 水谷正輝=香澄が勤める会社の取引先の担当。家庭のウサを弱い者虐めで晴らす タイプのようで、香澄の前任者を精神的に追い詰めて退職させるなど 問題行動が多い。 牧野=香澄の上司。 谷山沙織=香澄の同期で友人。香澄と千歌の出会いの場に同席していた。 篠崎=香澄の父。娘一人を置いて失踪していた。kindleの本棚を減らそうシリーズ。こちらも割と最近のお話ですね。夫がとんでもないセレブとかではなく、飽く迄一般人な会社員夫婦が、お互いの身内や仕事関連で悩みながらも、本当の夫婦になっていくというお話。短めのエピソードながら問題はてんこ盛り。香澄は優しく穏やかな夫・千歌と結婚出来て本当に幸せだと思っている。香澄の母は彼女が5歳の頃、過労死した。碌に働かない父に代わり家計を支えるため働き通しだったせいだ。さすがに暫くは父も大人しかったものの、母親を恋しがって泣く香澄にイラつくようになり、殴られこそしなかったが、その代わり物に当たり散らしては、幼い彼女を煩いと怒鳴りつけたものだ。その恐怖心が根強く心に残り、香澄は泣き出すと止まらない。そして男性が苦手になっていた。そんな父も、彼女が高3の時にフラりと姿を消しそのまま帰らなかった。父は自分が結婚したことさえ知らないだろう。連絡する術も無いのだから当然ではあるが。その分、千歌の実家は大家族で、天涯孤独に近い香澄を歓迎してくれている。5人兄弟と言う男ばかりの家で育った割に、随分と穏やかな性格の千歌には驚くけれど、誰もがテンプレ通りに育つわけでもないかと、香澄は疑問に思わなかった。夫婦生活自体は順風満帆だったが、今現在香澄はある悩みを抱えていた。それはお得意様の担当者による嫌がらせである。大手電機メーカーの課長・水谷は俗に言うクレーマー気質の様で何かにつけては文句を付けてくる。毎日のようにクレームばりの電話を寄越し、会社に赴けば嫌味のオンパレード。前任者が精神的に追いやられて退社したのも記憶に新しい。男性の大声が苦手な香澄には水谷の相手が苦痛で仕方ない。でもなんとなく仕事の愚痴を千歌に話すのはためらわれた。それにはまず自分の生い立ちまで話すことになりそうで。香澄が精神的にまいっているのには千歌も気付いていた。とある切欠で知り合い、美人な彼女に一目惚れして猛アタックの末こうして結婚できたものの、まだまだ一線を引かれている気がする。交際している間に香澄は男性と言うか、粗暴な男に恐怖心があることにはすぐに判った。物の壊れる音にも敏感だし、恐らく蒸発してしまったとだけ聞いている彼女の父に原因があるのではと思う。本来、5人兄弟の末っ子の千歌は正義感は強いが、かなり粗野な性格である。素を出して接したら香澄にはドン引きされるどころか、別れを切り出されそうで、それが怖くて猫を被っているのが現状だ。出来れば、今抱えているトラブルと一緒に自分に全て話してほしい。そう願っていた矢先、千歌自身の方にも遺産分けで貰った祖父の家と土地を巡って叔父夫婦とのトラブルが起こり・・・。大好きだった祖父の残した土地家屋が再開発区域らしく、紹介手数料欲しさに叔父夫婦がしつこく千歌を訪ね、彼はキレる寸前。でも、本性を香澄に知られるわけにはいかずストレスだけ溜まっていく状況に追い込まれるも、状況を察した香澄に助け舟を出され、何とか問題は解決。叔父夫婦とは疎遠になりそうだったけれど、それ以前に付き合いたくない臣籍と無理に付き合う必要無いですしね。香澄の方は、水谷の嫌がらせが更にエスカレート。貞操の危機にまでなりますが、千歌によって救出されて事なきを得ます。その際、彼は荒っぽい本性がバレることになるのですが、勿論嫌われなどせず、香澄が長らく抱えていた家庭の事情を打ち明ける切欠となったのでした。水谷関連で香澄が悩んでる間、千歌の元に香澄の父が現れて金を無心したり等あったものの、夫婦二人で立ち向かうことを決めてお終い。香澄の父の性根は治りそうもないんで、金を渡すのは逆効果。アパートの保証人とか生活支援なら喜んでしますって返しは、さすが。どうせ、金なんて渡したって酒とギャンブルに使っちゃうんだし。千歌の叔父夫婦も目先の小銭に目がくらんで随分迷惑かけてたけど、困ったった身内や親戚って縁切ろうにも難しいのが困ると思う。おまけに、身内でもない赤の他人の迷惑はもう普通に抵抗していいんじゃないかな。取引先の会社の上司に告発位しても良かったですよねぇ。読んでて何だか妙にリアリティのあるお話でした。評価:★★★★☆新婚夫婦のほのぼの話かと思ってたら読んでびっくり。
2022.09.21
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2022年5月刊夢中文庫プランセ著者:小山内慧夢さんわたくしが天誅食らわせてやる!──前世の記憶を持つリースベットは、少々型破りながらも勇ましく正義感に溢れる伯爵令嬢。彼女は親しい令嬢が傷つけられたと聞き、義侠心を燃やす。勢いよく鉄拳制裁を浴びせたその相手は、眉目秀麗で紳士の中の紳士と名高い近衛騎士マリウス。しかしそれは早とちりで!? その経緯を面白がる国王に命じられふたりは婚約するが、マリウスは不本意だろうと後ろめたさを感じるリースベット。一方、貴族女性には珍しく感情を露わにするリースベットに心を奪われていくマリウス。「……君は罪深い」 どんな彼女も自分が独占したいマリウスは、初心なリースベットを溺愛するようになって!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 リースベット=アンデル伯爵令嬢。前世は日本人だった。 正義感が強く、とあるトラブルを切欠にマリウスと出会う。 マリウス=王家の傍系・ノルデンソン辺境伯の次男で近衛騎士。 婚約者となったリースベットを溺愛する。カルネウス侯爵夫人 =夫がいながら多くの男性と浮名を流す恋多き女性。 マリウスの婚約者になったリースベットを目の敵にする。 アレクセイ=王太子。マリウスとリースベットが知り合う切欠を作った人物。 ヨナーシュ=リースベットの兄。kindleの本棚を減らそうシリーズ。それでも割と新しめのお話ですね。前世の記憶を持つ伯爵令嬢と近衛騎士との恋物語。伯爵令嬢・リースベットは前世の記憶がある。ヤンキーっぽいけど正義感の強い兄が大好きだった日本人の少女。その影響もあってか彼女は曲がったことが大嫌い。今日も夜会でしつこく迫って着た挙句汚い言葉で罵って来た青年貴族に一発食らわせてやったところだ。活発で快活、姉御肌なリースベットは貴族令嬢達からも慕われており、男をノックアウトして会場に戻ろうとしていた彼女は、親しくしているミカエラが泣いているのを目にし、何事かと尋ねた。どうやら、一目惚れした男性に勇気を出して声を掛けたら手酷い言葉を投げつけられたらしい。誘いに気が乗らないのは仕方ないが、もう少し言いようがあるだろう。許せない。青年の特徴を聞いたリースベットはその後を追いかけ、その横っ面を殴り飛ばしたのだった。が、その後が拙かった。ミカエラを侮辱したのは何とお忍びで夜会に参加していた王太子・アレクセイで、変装の為金髪のかつらをつけていた。もう帰るのでかつらを脱ぎ元の髪色になっており、彼の護衛に付いていた金髪の騎士の方を人違いで殴ってしまったと言う。やらかしにしたってこれはかなりヤバイ状況だ。謝り倒すリースベットに、王太子も自分もミカエラに失礼な態度だったと詫び、この件は不問にすると言ってくれたのだが、護衛の近衛騎士・マリウスの方はそれでは気が収まらないだろう。思わず彼に自分で出来ることなら何でもすると言い募る彼女に、いつか自分の願いを叶えるために力を貸してくれとだけ言い置いて帰って行った。翌日、見事に紫色になった頬をした従甥の顔を見た国王は事のあらましを聞き、リースベットの事をかなり気に入ったようだった。事もあろうにマリウスにリースベットと結婚しろと言う。寝耳に水な話ではあるが、彼自身も勇敢で正義感が強く友人思いな彼女を好ましく思っている。善は急げと王はアンデル伯爵にマリウスとリースベットの婚約を打診。王命とも取れる申し出に断ると言う選択肢は無く、数日後改めて二人の顔合わせが執り行われ、二人の婚約が決まった。リースベットは令嬢達の憧れの人であるマリウスとの婚約が嬉しくないわけではないものの、初めて言葉を交わしたのがアレだっただけに複雑だ。でも、多忙ながらマリウスは足繁く彼女の元にご機嫌窺いにやって来て、そのエスコートぶりにドキドキしっぱなし。そして、マリウスの方も新たに彼女の為人を知る毎に愛しさを募らせ、可愛すぎて辛いと度々溢しては同僚に呆れられる始末。思いの外、彼はリースベットにハマっていた。お付き合いは順調で、その後の夜会にて正式に二人の婚約が発表されたのだが、リースベットは一部の女性達の妬みの対象となっていた。まぁ、王家の親戚でハンサム、辺境伯の次男と言う優良物件なのだから、婚約が決まった時点である程度の批判は覚悟していた。それでも、表立ってあれこれ言ってくる気概の有る者はいなかったのだが、カルネウス侯爵夫人だけは違った。夫がありながら男遊びの激しい恋多き女はマリウスがお気に入りだったらしく、伯爵家より身分も上な事からあからさまな悪意をぶつけて来る。しかも夫人から事もあろうに彼とは深い関係だったと仄めかされ、リースベットも心穏やかではない。今ではすっかりマリウスにこいしていた彼女は、この夜会以降、夫人と彼との関係を疑うように。そして、それが原因で仲違いし、マリウスを怒らせてしまったと勘違いしたリースベットはもし婚約破棄されたら修道院に行くしかないと身辺整理を始め・・・。まぁ、これは夫人が妬んで嘘を吹き込んだだけで、本人知らぬ間にマリウスは道ならぬ恋に身を焦がす騎士に仕立て上げられていたと言うオチ。後に彼が事実無根と釈明し、リースベットと一線超えたことで二人は元鞘に戻り、翌年国の行事並みの盛大な式を挙げて結婚します。夫人は性質の悪い嘘を彼女に吹き込んだのがバレてマリウスか国王の怒りを買ったのか、火遊びのし過ぎもあって社交界から姿を消します。騒動の原因にはなったものの、やらかし度合いとしてはこの辺が落としどころでしょうかね。実質表舞台から追放されたようなものだし。この作家さんなので会話のテンポもよくお話も面白いんですけど、果たして前世の記憶がある設定って必要だったのか(^_^;)型破り=令嬢らしからぬ行動をする由来として入れ込んだのかなとは思いますが、如何せんページ数が少ないので別にその設定自体無くても良かった気はします。ただ、これは飽く迄個人的な意見なので、読む人によって感じ方は違うかも。マリウスの願い云々も釈明の時に判明するので、終盤の詳しい展開含めて気になる方は読んでみてください。評価:★★★★★
2022.09.17
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2021年6月刊夢中文庫プランセ著者:北條三日月さん目覚めたら、夢中でプレイしていた乙女ゲームの悪役令嬢・アデルに転生!? どの攻略対象、どのルートでもバッドエンドを迎えるキャラだ。最悪、死亡エンド。それだけは避けたい、誰とも結ばれなくていい、悲惨な結末だけは回避したい! 今はヒロイン降臨前、まだなんとかなる! 穏便に過ごそうと必死なアデルだったが──「私から逃れられるなんて思わないことだ」 我儘だったアデルが急に大人しくなったら、攻略対象で婚約者の王太子・ノアが急接近! ヒロインの邪魔をすれば、破滅がーー。悪役令嬢のままでいるわけにいかないのに、独占欲を隠そうともしないノアから愛され求められると、アデルも幸せになりたくなってしまって…… ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 アデル=乙女ゲーム「溺惑のエフェメラル」のヒロインのライバルキャラ。 自己中で我儘、そして傲慢と言う美人だが性格ブスな悪役令嬢でどのル ートでも必ず破滅してしまう。 『私』=ごく普通の会社員。「溺惑のエフェメラル」のヘビーユーザーだったが 交通事故死し、アデルに転生した。 ノア=王太子でゲームのメイン攻略キャラ。正規ルートではヒロインと恋仲に なり、ヒロインを虐めていたアデルを断罪する。クラウス=ノアの従者で攻略キャラの一人。 カール=ノアの護衛の騎士。攻略キャラの一人。片瀬百合=ゲームのヒロイン。 異世界召喚でグランツ王国にやって来た「聖なる乙女」リュミエリス =最高神官の一人。アデルに興味を持ち、祝福を与える。悪役令嬢ものです。死亡回避のために努力していたら、王太子に執着されてってお話。コンセプト的には「はめふら」に近いかな。(内容やシチュは大分違います)アデル(アーデルハイド)はヴァルトシュタイン侯爵家の一人娘。蝶よ花よと育てられ、すっかり勘違いなアホ娘になってしまった。正にテンプレな悪役令嬢キャラなのだが、ヒロインを引き立てるためか、どのルートでもその末路は悲惨。一番マシに思われた王太子・ノアのトゥルーエンドは神殿に幽閉止まりで済むものの、その後神殿が魔物に襲われ、アデルも巻き込まれて死んでしまう。まさか、よりにもよってそんなキャラに転生するなんて!『私』は内心頭を抱えた。自分の推しであるノアに断罪されるのは辛いし、それ以前にアデルって性格は褒められたものではないけれど、実際死ななければいけないことなど作中でもしていないと言うのに。そもそも、金持ちな娘が甘やかれまくって育てば、多少DQNな性格になっても致し方ない。ましてやノアルートでヒロインを虐めたと言うのも、単に粗相を繰り返した彼女を叱っただけ。しかし、断罪の場では、その時の目撃者もいたはずなのに誰もアデルを庇わなかった。あれだけ自分を甘やかしていた両親さえも。あの子ならばやりかねないと。現に、アデルは選民意識も強く、屋敷の使用人たちにも当たりはキツい。おかげで専属侍女のメアリーにまで裏切られて窮地に追い込まれ破滅、なんてルートもあったっけ。悲嘆に暮れても仕方ない。幸いにも、ヒロインが異世界召喚されるまでまだ時間はある。その間にアデルは人が変わったのだと周囲に知らしめなければ。それこそ使用人たちにも優しくし、貴族令嬢として模範になるくらいに。あと、生き抜くためにも攻略キャラ達とは関わらない様、ひっそりと暮らすのだ。推しキャラであるノアに会えないのは寂しいけれど、信号無視のトラックに撥ねられて死んだ挙句、転生してまで不幸な死なんてまっぴら。アデルは破滅回避のために、必死の努力を始めたのだった。努力の甲斐あって、徐々にアデルの評判が変わっていった。物腰柔らかく勤勉、使用人たちにも優しく声を掛け、勉強の為図書館で歴史書等を読む姿を多くの者たちが目撃していた。そして、あれほど追いかけまわしていたノアの事も興味が失せたとばかりに、ご機嫌窺いすらしていない。流石にこの点は不振に思われたのか、ノアの側近であるカールやクラウスが本を読むアデルの元を訪れ、探りを入れて来た。まるで別人のような受け答えをする彼女に驚き、彼らから報告が行ったのかノアまでアデルに会いに来たのは驚いたが、出来ればお近づきになりたくないので、今までのように自分を無視していて欲しい。でもやっぱり、最推しはカッコイイ。内心の葛藤と戦いつつその場は何とか逃れたが、この行動がノアの関心を引いてしまったようで、以降何かと理由を付けては彼女の前に現れる。おまけにクラウスやカールの態度も軟化。勉強の成果か歴史やこの国の特産物に詳しくなったせいで、特にクラウスには国が抱えている案件に少しアドバイスして以来、かなり好意的だ。しかも、最高神官のリュミエリスまで彼女に興味を示し、滅多に授かれない祝福まで貰ってしまった。アデルのモテモテぶりにノアは嫉妬心を剥き出し、猛アプローチを開始。彼はアデルへの好意を隠そうともせず、キスを仕掛けて来て以来、性的な触れ合いが増え、ついには彼がゴリ押して正式に婚約者となった二人。内心では推しキャラにここまで惚れこまれて嬉しいけれど、ヒロインの百合が召喚されたら自分への興味も失せ捨てられるかもしれない。そう思うと本心を告げられなかった。そして、運命の日。百合が召喚された。不思議なことに、彼らは一切百合に興味を示さず、ノアはアデルにベッタリ。自分の努力がゲームの本筋にかなり影響してしまっているようだ。百合は誰のルートにも入れないなんておかしいと、諸悪の根源とばかりにアデルを責めた。話を聞いて、アデルはこの百合もまた転生者ではないかと確信し・・・。このお話のテーマが「幸せになりたいなら相応の努力せよ」(意訳)アデルは第二の人生の破滅回避のために精一杯の努力をし、幸せを勝ち取ったのですが、百合はゲームのルートを知っているからと高を括って何の努力もせず、上手く行かないからと腹を立てるばかり。どちらが報われるべきかは丸わかりなわけで、追い詰められた百合によって殺されかけたアデルはノア達によって救われます。その後一気に5,6年時間が経ってて、ノアは国王、アデルは王妃になっており第一王女・クラウディアも産まれています。そこで、百合の結末もぼかして語られているんですけど、この辺ははっきりさせてほしかったかも。エッチシーンが長い分、本編を削ってる感が少々感じられたのが残念。内容自体は面白いんですが。終盤の展開は敢えて書いていません。160ページほどのお話なので、興味がある方は読んでみてください。評価:★★★★☆
2022.09.15
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2018年4月刊夢中文庫セレナイト著者:田崎くるみさん社内で『ツン100%女子』と陰で囁かれてしまうほど周囲に自分の感情をさらけ出せない南々帆。本当はみんなと一緒に会話に混ざりたい、笑いたい…。しかし、悲しい過去を抱えた南々帆は気持ちと裏腹な態度をとってしまい、そのたびに自己嫌悪に陥り資料保管室に籠ってひとり反省する日々。ある日、南々帆がひそかに一目ぼれして憧れていた先輩、氷室と偶然二人きりになるのだが、やはり相変わらずのツンぶりをみせてしまう。しかし、そこから何故か氷室は南々帆に急接近!! 憧れの氷室がなぜ自分に…? と、戸惑いを隠せない南々帆は氷室のあらゆるアプローチにもツンな態度をとり続け、もう振り回されたくないと突き放してしまうのだが…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 神楽南々帆=大手電機メーカー広報部に勤める会社員。とある理由から感情を表 に出すことが大の苦手。おかげで誤解されたまま付いた渾名は「ツ ン100%女子」 氷室隼人=営業部のエースで、端正な外見から女性社員達からの人気も高い。 南々帆に興味を持ちプロポーズする。 松浦理世=南々帆の先輩社員。広報部のムードメーカーであり、分け隔ての無 い性格から人付き合いが下手な南々帆とも仲が良い。南々帆のおじ=南々帆が成人するまで世話になっていた遠縁。小さな町工場の経営 に行き詰まり南々帆名義の遺産と保険金を使い込んでいた。kindleの本棚に入れっぱなしだった作品感想もどんどん上げていきます。大好きな田崎くるみさんのお話ですが、これはもう読んでて泣けました。登場人物が皆優しくて。南々帆は奨学金で大学卒業後、大手家電メーカーに就職。研修期間を経て現在は広報部に所属している。部署唯一の新人と言うこともあってか、皆親切にしてくれたがそれも最初だけ。真面目だが、表情も硬くニコリともしない彼女は扱いに困るのか今では遠巻きにされている。なまじ顔立ちが整っているだけに余計に近寄りがたい雰囲気なのかもしれない。そんな空気をものともせず広報課のムードメーカで明るい先輩社員・松浦だけは、南々帆に何かと話しかけ、孤立している彼女とお昼も共に採っている。今日も今日とて、社内食堂でイケメン談義を始める松浦。素っ気ない態度しながら、南々帆は話題に上っている営業部の氷室の姿をこっそり眺め、今日もカッコイイと思っていた。今では社内で評判の「ツン100%女子」なる渾名で呼ばれる南々帆だが、それは飽く迄表向きの姿であり、中身は人並みに恋に憧れもあるごくごく普通の女子であった。南々帆は3歳の時に交通事故によって両親を亡くした。自身は二人に庇われたおかげで命拾いをしたが、祖父母も既に無く施設で暫く過ごした後、漸く見つかった遠縁に引き取られたのだった。遠縁の家では彼女は明らかに厄介者であり、虐待などは無かったけれど扱いに困っている風なのは子供ながらすぐに判った。おかげでいつしか感情を表に出すのが苦手となり、独り立ちした今もそれは変わらない。もう22歳になるのだし、友人も作りたいし行く行くは恋もしたい。なのに、あんなに良くしてくれている松浦にさえいつも素っ気なくしてしまって反省しきりだ。終業後、人気のない資料室で、ブツブツと声に出して今日の反省点、みんなと仲良くしたい等を呟いて聊かスッキリした南々帆は誰も待っていないオンボロ社員寮へと帰宅したのだった。そんなある日、突然氷室に話しかけられて驚く南々帆。彼は何故か彼女を気安く「ナナ」と呼び、馴れ馴れしい態度で戸惑うばかり。とは言え、相手は憧れの人、嬉しくないわけはないのだが、人気者なだけに南々帆は女性社員達に妬まれた。聞こえよがしな悪口は流石に凹む。悪意と言うものは向けられると疲弊が激しいのだと初めて知った。氷室もどうせあまり見ないタイプの女子だから構っているだけだろう。心は痛むし、惜しい気持ちもあるが一ヶ月ほど経ったある日、ついに耐えかねて迷惑だから話しかけないで欲しいとキッパリと彼に言ってしまった。氷室は思ってもみなかった言葉にあっけに取られていたけれど、これでもう懲りただろう。その日、憧れの人との交流の機会を自ら潰してしまった南々帆は地の底まで落ち込んだ。だが、翌日氷室に呼び出された彼女は、彼にプロポーズされて唖然。今までモテすぎて自分に夢中になる女たちに辟易していた彼は、南々帆の対応が気に入ったらしい。要は塩対応の彼女ならば、煩わしさとは無縁な関係を続けられる。氷室にしてみれば万々歳と言うわけだった。勿論、生活も不自由はさせないし大事にすると言う。悪い話ではないだろうと得意げだが、南々帆にしてみれば複雑以外何ものでもない。「ツン100%女子」部分だけを気に入られたとて、実際の性格は正反対。交際してるうちに早晩バレるだろう。冗談ではないと、一応自分はそんなあっさりした性格ではないし、普通に好きな人には溺れる性分なので、と遠回しに断ったのだが彼は諦めなかった。初恋の人にプロポーズまでされて内心では天にも昇る気持ちなれど、彼が求めているのは飽く迄恋にも冷静で動じない女。陰口は一層酷くなるし、松浦始め、室長迄彼女を心配してくれていた。考えすぎて心労が祟ったのか、あんなに室長がもっと周りを頼れとアドバイスしてくれたのに、南々帆は体調崩して熱を出し・・・。この件で、心配して付き添ってくれた氷室と関係が近づき、気弱になったせいなのか南々帆は自らの生い立ちを語ります。折しも、おじが借金を頼みに寮に現れ、事情を知られてしまったのもあるのですが、ここだけ見るとおじの自分勝手さに読んで💢っ。以前に彼女名義の遺産と保険金迄使い込んでたくせに、更に金を借りに来るって。でも、そのやり取りを見ていた氷室が南々帆に内緒でおじに金を貸し、返済はしなくていいから、金以外のことで彼女のことを気遣ってやって欲しいと頼んでいました。プロポーズしてきた時の理由がアレだったので、いけ好かない奴かと思いきや、実際は彼女にぞっこんだったんですね。それにしたって工場の立て直し資金なんて最低でも何百万であろうに、ポンと出しちゃうなんて、実は氷室はどこぞの御曹司なのだろうか。いくら大手家電メーカーの営業だって、20代の会社員ですもんね。実家が金持ちなのか、FXとかで儲けてるのか・・・。と要らぬことばかり考えてしまいましたけど、氷室が南々帆に惚れたのは、実は資料室での呟きを何度も耳にしていたからでした。「ツン100%女子」が内心そんなこと思ってたなんて、ギャップ萌えもあったんでしょうね。プロポーズの理由も、正攻法より普段の彼女にはこう言った方が響くかと思ったかららしい。ぶっちゃけ、分かり難いよっ。後日おじから氷室の話を聞き、おじもまた南々帆を邪魔にはしていなかったことを知ります。遺産に手を付けてしまった事で後ろめたくどう接していいか判らなかったからだと。この辺のやり取りはかなりキました。おじさん、根は良い人で善人なだけに罪悪感を持ってたとか、そんなん聞いたら泣いてまうやろ。その後、氷室に素直に気持ちを打ち明けた南々帆。二人は結婚を前提に交際を始めて、幕。前述の通り、陰口叩いてた女どもはともかく、それ以外は皆良い人達ばかりでほっこり。氷室の上司の丸井さんは結構な存在感だったので、スピンオフもありそうですね。ってか、読んでるくせに憶えてないパターンかも(^_^;)それか本編を後回しにしてるか。取り敢えず、いいお話でした。評価:★★★★★
2022.09.07
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2020年8月刊夢中文庫プランセ著者:ちろりんさんメイドのフローレンスが仕えるアルベインは、自信過剰で自己中心的、他人を思いやれない困ったご主人様。彼は自分に相応しい結婚相手を見つけるためデートを重ねているのだが、その俺様な性格と理想の高さゆえ振られてばかり。見かねたフローレンスは姉の助言を受け、疑似デートをしてみることに。的確なアドバイスをするためのデートだったはずが、なぜかアルベインは次のデートの約束とキスを迫ってきてーー!? 「地位も学も金も俺が持っている。別に今さら必要ない。俺が欲しいのは、お前が持っていて、俺が持ちえないものだ」ーーアルベインは猛烈なアプローチを仕掛けるが、フローレンスにはその申し出を受けられない理由があって……? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 フローレンス=ジャイルズ家の当主付きメイド。 酒乱だった父の影響で男性不信になった。 アルベイン=投資の才があり、一代で財を成した資産家。美青年でかなりの優 良物件だが自信過剰の上、自己中な性格からか女性にモテない。 アマーリエ=フローレンスの姉で唯一の肉親。既に結婚し、一児の母。 妹の男性不信を憂いている。 ランドルフ=アマーリエの夫。 ハミルトン=アマーリエとランドルフの息子。フローレンスが仕えるジャイルズ家の当主・アルベインはこの国でも有数の資産家で、外見もハンサム。年齢も27歳と、独身女性から見ればかなりの優良物件だ。だが、性格に難がありデートに漕ぎ着けてもフラれてばかり。当初は女の方に見る目が無いと散々言っていたけれど、さすがにこうも立て続けにフラれていると思う所があったのか、フローレンスに自分の何がいけないのかと尋ねた。そりゃ、どう考えてもその思考と性格のせいですよ。3年も側仕えをしていると気心も知れている。アルベインは主人としては良い人物だったこともあって、正直に言っても支障はないだろうと思いついたままを忖度無しに答えた。先ず、その自己中心的な考え方と自信過剰な態度を改めなければ一生モテませんよ、と。余りに容赦ない言葉にショックを受けたようだったが、以降デートが決まる度に女目線からどうしたら相手に喜ばれるか彼女にアドバイスを求めた。以前に比べれば大分マシにはなってきたものの、やはり早々人間の本質は変わらない。それでもアドバイスのおかげと努力の甲斐あって、今回のデートはいつもより帰りが遅い。と言うことは漸く上手く行って次回のデートの約束を取り付けたのかと思いきや、良い女性だったけれど次の約束はしなかったと言うアルベイン。どうやら、思う所があったようだが、いくらフローレンスが理由を尋ねても頑なに彼は話してくれなかった。数日後、休暇を取って姉夫婦の家を訪れたフローレンスは、姉・アマーリエにアルベインの事を話していた。姉はそんなに気になるなら二人で疑似デートをして、体験してみればいいとアドバイス。元々、フローレンス自身が恋愛未経験で人様に教える程の知識など持っていないのだ。飽く迄女性目線でどういう態度がいけないのかを話しているだけ。確かに、実際に目にしなければいくらこうした方が良いと告げたって机上の空論のようなものだ。アマーニエの言うことも尤もかと帰ったらアルベインに話してみることにした。そんな妹の姿を見て、アマーニエは複雑な心境だった。母と姉妹二人、ろくでなしの父のせいで随分苦労した。酒乱の上賭け事にハマってお決まりの転落パターンと言えばそれまでだが、おかげでフローレンスは見事に男性不信だ。街でも評判の美人姉妹と言われ、引く手あまただったのにフローレンスは一切靡かず、このままでは一生独身かもしれない。今は両親とも亡くなって唯一の肉親であるアマーニエが結婚してから、姉とその家族こそが生き甲斐と迄言って憚らない。でも、日に日に増えるアルベインの話に最近「おや?」と思うことしばしば。彼の態度も気になるし、もしかしてと疑似と前置いてのデートを薦めてみた。自分の勘が外れていなければきっと良いきっかけになるはず。そんなわけで、アマーニエの提案を実行に移した二人。アルベインはやけに乗り気で、フローレンスに当日着る用のドレスや靴、帽子に至るまで一式贈った。一介の使用人にかける金額ではないと焦ったが、デートなのだから自分好みの服装をしてもらいたいと言えば断れない。いざ、迎えたデート当日。確かに世の女性たちがお気に召さない態度も少々あったものの、デートコースは完璧。特にフラれる面も見当たらない。難を言えばズケズケとした物言いだろうか。まだ交際もしていない相手に女性の立ち居振る舞いはこうあるべきとか言われれば相手もカチンと来るだろう。とは言え、それは彼をよく知らない人物ならの話。アルベインは口煩いが、言っていることは正論だ。資産家の自分を支える妻になる女性の理想が高いのも致し方ないのかもしれない。そうだ、彼は結婚相手を求めているのだ。何故だかモヤモヤした気分になっていたフローレンスに、アルベインは次の約束をしたいと告げた。彼は思いの外フローレンスとのデートが気に入ったらしい。予想外の申し出に驚いたが、彼女も内心嫌がっていないことにも気付いていた。しかし、どうしても拭い去れない男性への不信感。しかも、アルベインはフローレンスを妻にしたいとまで言ってくれたのに、出た言葉は自分は結婚に向いていないので考えられないと。だが、アルベインは決してあきらめず、以降フローレンスに猛アプローチを仕掛けます。そんな折、ランドルフからアマーニエが体調を崩して寝込んでいると聞きつけ、姉家族が住む家へ向かったフローレンス。医師に診てもらった所、乳飲み子を抱え、内職で家計を支えていた姉は重度の過労だった。暫くの安静が必要の上、ランドルフは仕事で一ヶ月近くの出張が決まっており、フローレンスが休暇を取って姉と甥の面倒を見ることになったのだが、彼女の不在にアルベインが爆発し・・・。アルベインは、よく気が利いて働き者、しかも頭の良く美しいフローレンスを大層気に入っていて、デートに漕ぎ着けた女性と彼女を比べるようになっていました。それに最近気づき、あの疑似デートで恋心を確信。妻にするならフローレンスしかいないとプロポーズしたものの、色よい返事は貰えない。猛アプローチの末、段々意識してくれるようになったのに、彼女の姉が体調不良になった上、その夫は長期出張に行く予定でおまけに乳飲み子がいると言う。おかげで彼女は長い休暇を取り姉の家に泊まり込みで世話をしている。アルベインは早々にその状況に耐えられず、姉とその息子を夫が帰るまで屋敷でで面倒を見ると提案。フローレンスが帰って来て上機嫌の彼は、アマーニエたちの息子・ハミルトンを可愛がって、世話まで焼く姿に、頑なだったフローレンスも段々アルベインに絆されていきます。姉も復調し、出張から戻ったランドルフと共に帰宅した後、再びデートをした二人は想いを確かめ合い、結婚。アルベインは、アマーニエ達とも仲が良く和気藹々としたやり取りが描かれてお終い。ヒーローは多少性格に難ありの人物でしたが、決して悪人ではなく根は優しく誠実。父のせいで男性不信だったヒロインから過去バナを聞いて、自分は下戸だから酒乱には成り得ないと冗談めかして話していたシーンが、ヒロインの心情と相俟ってちょっと泣けました。(また泣いてる・笑)冒頭でのヒーローは、こりゃ厄介な性格だなと思ってたんですけど、段々点数が上がって来る感じが良い。ヒロインもタイトルにあるほど毒舌ではないかな。苦労してる分、玉の輿に乗れて何より。お姉さんとその夫も好感持てる人達だし、じれじれ展開も無い。読んで幸せになれるお話でした。評価:★★★★★
2022.08.14
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2017年8月刊夢中文庫クリスタル著者:若菜モモさん親会社の黒瀬エンジニアリングの御曹司・佳貴は、スマートでエリートで、女子社員たちの憧れの的。美桜はそんな佳貴と秘密の交際を続けている。しかしながら心はいつも不安でいっぱいだった。なぜならあまりにも佳貴はハイスペックで、平凡なOLの美桜には釣り合わないと思うから。そんなある日、親会社の常務の娘と佳貴との縁談が進んでいると聞いてしまう! 激しいショックを受けるが、佳貴の将来を思えばこれは良縁。なんの後ろ盾もない自分では、きっと……。ここは潔く身を引くべきーーそう思った矢先、佳貴からプロポーズされてしまい!? 振り子のように揺れる美桜の心。どうすればいいの? 愛しているからこそ身を引こうとしたのにーー。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 北原美桜=旅行会社勤務の会社員。 親会社の御曹司・黒瀬と秘密の恋をしている。 黒瀬佳貴=大手旅行会社・黒瀬エンジニアリングの御曹司で専務取締役。 小暮恭子=美桜の一年後輩の同僚。友人関係でもある。阿部エリカ=美桜の後輩。父が本社の常務取締役のため縁故入社した。短編小説並みにページ数も少な目のお話。既に出来上がっている恋人たちのエピソードで、二股疑惑と格差婚に悩むヒロインが一人グルグルと悩む展開になります。ので、中盤以降は結構じれじれしてます。大手エンジニアリング会社の傘下である旅行会社に勤めて3年目のヒロイン・美桜。仕事も優秀な上、人当たりの良い彼女は、本人は無自覚ながら、男性社員にも人気があった。後輩で友人の恭子からはこんな美人なのに彼氏がいないなんて勿体ないと常々残念そうに言ってくれるが、実際のところ、美桜には会社では大っぴらに言えない恋人がいた。親会社の黒瀬エンジニアリングの御曹司・黒瀬佳貴だ。本社には徒歩で行ける距離の為、書類の確認等のため出向くこともままある。3年前、入社して数か月だった美桜は、たまたま、佳貴の印鑑が必要になり本社を訪れ、そこで彼に会ったのだった。どんな幸運だったのか、美桜は彼に見初められて交際に至った。仕事柄、出張の多い人なので3年目とは言え中々会えない。今日は半年ぶりにドバイから彼が帰って来ることもあり、メールで到着時間を知らせてくれていた。大抵会うのは彼の定宿である高級ホテルのセミスイート。しっかり恋人時間を堪能し、明日の土曜日はドライブしようと誘われた。久々のデートにウキウキしていたら、翌朝早くに急に大阪出張が入ったとかで連絡が来て結局ドタキャン。忙しいのは理解してるけどやっぱり寂しい。しかも、また近日中に海外出張が入ってるようで期間を見ると約3週間。その間に自分の誕生日があるのだけど、彼が誕生日に居た試しが無い。でも後日ちゃんとプレゼントも貰っているし、忘れられてるわけではないだけに文句も言えない。何となく悶々としていたある日、入社一年目で常務の娘のエリカが、彼女の姉が佳貴と結婚するのだと自慢込みで話していたのを聞いて驚愕。どうも、エリカの実家・阿部家と黒瀬家は家族ぐるみの付き合いがあるらしい。よくよく聞くと縁談になりそうだ、程度の話っぽいが、元々子供時代から両家でそんなやりとりをしていたようで、まさか相手が決まっていたのに彼は自分と付き合っていたの?都合の良い女扱いで二股だったんじゃ。佳貴の性格を考えれば有り得ないのはすぐ判るはずなのに、美桜の思考はぐるぐる。彼女は事故により既に両親はおらず、頼れる親戚もいない。しかも親の残した借金を細々と返済していた身だ。付き合い初めに話したので彼も事情を知ってるし、構わないとは言ってくれているけれど、佳貴の両親はどう思うのか。格差婚は上手く行かないとも聞く。彼の為を思うなら自分は身を引くべきかもしれない。そんな彼女の悩みを知ってか知らずか佳貴はある日、美桜にエンゲージリングを贈り、プロポーズして来た。だが、身を引く決意をしていた彼女は佳貴に別れを切り出し・・・。二股疑惑はともかくとして、エリカの姉との縁談は阿部家が勝手に盛り上がっていただけと言うオチ。佳貴は既に美桜と結婚したい旨両親に話しており、承諾も取っていました。結局、恭子からのアドバイスもあって彼と向き合うことを決めた美桜。でも、彼が過労で倒れたと聞き、病院に駆けつけこれまでの態度を謝罪。見舞いに来ていた彼の両親にも会えて、本当の親だと思って欲しいと言われて感動する傍ら、佳貴がいかに自分との結婚を真剣に考えてくれていたかを知り、改めてプロポーズを承諾してお終い。正直、ヒーローが倒れたのは過労だったこともあり出張のし過ぎではとも思いましたが、近いうちに副社長への昇進が決まっているので出張もグンと減るようで良かった。この人達に足りないのは、明らかに会話の時間だよねぇ。今後は晴れて彼の婚約者扱いだから、美桜に粉掛けてた独身社員たちは諦めることでしょう。常務の娘は全然嫌な子じゃないのが予想外。序盤にヒロインに仕事押し付けてたりしたから、この子がヒーローにアタックするのかと(^_^;)評価:★★★★☆短いお話でしたがヒーローがブレないのが良い。
2022.08.05
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2022年6月刊夢中文庫プランセ著者:天衣なつさんあなたに睨まれてドキドキしてます──完璧貴公子と名高いレイノルドと婚約した伯爵令嬢のセシリー。五年経っても彼と心を通わせられていないが、貴族同士の結婚と割り切っていた。しかしある日、怪我を負ったレイノルドに異変が……。「今すぐ私の前から消え失せろ!」悪夢を見るようになったレイノルドは強くセシリーを憎むようになり、婚約解消を宣言。初めて彼が見せる激しい拒絶、冷酷で野性味ある素顔に──皮肉にもセシリーは恋に落ちてしまった。邪神に魅入られたレイノルドを悪夢から救うため、彼の心に強く入り込みたいセシリーは身を捧げる覚悟をして……!? 切実な思いは果たしてレイノルドに届くのか── ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 セシリー=辺境生まれの貴族令嬢。婚約者であるレイノルドに苦手意識を持っ ていたが、ある日突然態度が豹変した彼に破談を告げられる。 レイノルド=王族・アトレー公爵家の跡取り。狩猟祭にて事故に遭い、態度が一 変。未来の二人を見て傷付き、セシリーとの結婚を断念した。 リシャ=セシリーの姉。病弱ながら妹命の重度のシスコン。 クレイ=リシャの夫。以前はセシリーに想いを寄せていた。 タユラ=セシリー付きの侍女・ネルの祖母。王侯貴族の覚えも目出度い腕利 きの拝み屋で、セシリーからの要請でレイノルドを診に来た。その手のシーンはしっかりあるけれど、内容的にはファンタジー小説寄りのお話でした。邪神に魅入られたヒーローと、彼を救おうと奮闘するヒロイン。頭を打って性格が豹変、って言うから単に打ち所が悪かった故の一時的な症状かと思いきや、蓋を開けてみればヒーローの先祖にまで話が遡って、神様たちの戦いとか関わってきます。ノリとしては往年のホワイトハート文庫でよくあったような内容かな。なので、160ページ弱ながら、情報量はかなり多め。ざっくり行きます。婚約者のレイノルドが狩猟祭で事故に遭い、担ぎ込まれたと聞いて大慌てで彼の屋敷に駆け付けたセシリー。彼は痛々しい頭の包帯以外はこれと言って大きな怪我は無さそうで一先ずホッとしていると、レイノルドは彼女を苦々しそうに見つめ、この婚約は破談だと激昂。顔も見たくないと吐き捨てた。婚約者とは言えどこか余所余所しく完璧な貴公子の彼のことは正直苦手ではあったが、まるで汚らわしい物でも見るような態度をされるようなことをしたかしら。それにレイノルドはそんな言動をする人でも無かった。破談と言うワードに結構なショックを受けながらも、何故かセシリーはときめいていた。貴公子な彼には毛ほども興味も持てなかったけれど今のレイノルドは素敵。彼女は今になって彼に恋してしまったのだ。とは言え、知り合って5年。今更恋心を自覚したって下手をするとこのままでは破談になってしまう。この先彼ほどの男性にはもう会えないかもしれない。だとすれば何としてでも逃がしてはならない。そこで、セシリーは怪我の完治まで彼のお世話をしたいのだと、レイノルドの両親に頼み、アトレー公爵邸に泊まり込むことに。その夜、取り敢えず、何故破談にしたいのか詳しく理由を尋ねると、どうやら事故に遭った際、彼は自分が死ぬまでの人生を追体験して未来を見たらしいのだ。この国には度々不思議な力を持つ者が産まれると言う。レイノルドもそう言う力の持ち主かもしれないが、続く彼の話す内容によると、未来のセシリーは彼を手酷く裏切り深く傷つけてしまうようだ。レイノルドは大層ショックを受け、そんな思いをするならば今のうちに破談にすればいいのではと考えた。その結果が、あの爆弾発言と言うわけか。成程、一応理由は分かった。でも、セシリーにしてみればまだやらかしてもいないことを責められてのことだと思うと納得いかない。裏切りと言う位だから不倫でもするのだろうか。問いかけると口を濁すのを見るに当たりの様だ。まあ、確かにあの面白みのないレイノルドのままなら、夫婦仲も微妙となり、もしかして魔が差すとかあるかもしれない。俄かには信じがたい話だが。おまけに不倫相手は姉の夫のクレイと聞いて更に驚愕。5年以上前だが、クレイはセシリーに想いを寄せており告白された事があった。当時はそういう対象で見れなかったのできちんとお断りしたし、自分の婚約が決まってすぐにクレイは姉と婚約し、もう結婚してオペル家の次期当主だ。フった相手、ましてや姉の夫との不倫なんて、そんなことをしでかす女になると言うのか。セシリーは頭を抱えた。いや、よくよく思えば未来なんて現状では確定していない。今の自分はすっかり彼に惚れているし、良い妻になれるはず。ならば、なんとしても彼に思い直してもらわねば。セシリーは、レイノルドにある賭けを申し出た。彼がどうしてもセシリーを好きにならなければセシリーの負け。自分が勝てば大人しく結婚すること。と言うもの。期限は一週間。レイノルドは俄然有利な条件で勝つ気満々のようだが、セシリーとて無策で賭けを提案したわけではない。未来視を信じ込んでる以上レイノルドは考えを曲げないだろう。おまけに、彼はあれ以降悪夢に悩まされているのが気になる。どう考えても良くない傾向だ。自分付きの侍女・ネルから彼女の祖母が腕利きの拝み屋と聞きつけ、その協力を仰ぐことになった。二日後、やって来た拝み屋タユラはレイノルドを一目見て、厄介な存在に魅入られているようだと告げた。それも邪神の可能性が高いとも。悪霊の類なら祓える可能性も高いが神ともなると解呪はほぼ無理。彼が邪神に取り込まれる前に、現世でレイノルドが執着できるものを見つけさせることが出来れば打ち勝つことも可能と聞いて・・・。この後のセシリーの献身が健気で良いんです。レイノルドの先祖である初代国王は英雄と呼ばれた人物だったが、力を得るために女神と契約し超人並みの人間になったが荒々しい気性になってしまった。その後、王族には稀に先祖返りのような存在が産まれるとのこと。正にレイノルドが初代の王と似た気性の持ち主であり、小さい頃は暴れん坊で手が付けられなかったらしい。叔父からに修練によって平常心を保つことに成功したものの、彼は後にセシリーに一目惚れ。あの気性がぶり返し激しく執着していました。でも彼女を怖がらせてはいけないと己を律し、セシリーから見たら面白みのない男を装っていた。だが、邪神の呪いによって数ある未来の一つの可能性(セシリーの不倫と離婚)を延々と見せられ、彼女の人間性を疑ってしまったのでした。その本性が邪神に気に入られた原因だったものの、彼女の捨て身の夜這いによって解呪が成功。セシリーの早とちりで、その後少し拗れるも、結果破談にはならず、ラストは結婚して終わり。妹命のお姉さんがこの破談騒ぎに大層腹を立てて、レイノルドに激怒してたり、タユラさんや邪神、セシリーの守り神の白狼とか皆良いキャラしてました。中盤からかなりファンタジー色が濃くなるので、そっち系が好きな方はハマるかも。評価:★★★★☆お話そのものは凄く面白い。
2022.08.04
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2022年7月刊夢中文庫クリスタル著者:涼川凛さん生産管理部で働く真理の日課は、一日15分、最推しの上司・名倉課長を観察すること。自他ともに認める存在感の薄さをフル活用して、彼の姿をじっくりと目に焼き付けーー毎晩、趣味で書いているTL小説に活かしていた。真理の描くヒーローのモデルは、名倉課長。モブ女子として、こっそり観察できるだけで幸せ!ーーと思っていたのに、ひょんなことから、名倉課長の方から急接近!? 「今からきみを独占しようと思ってる」遠くから見ていた最推しに、甘く強引に迫られて……!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 大崎真理=文具メーカーの生産管理部に勤めるOL 自他共に認める地味オブ地味の所謂モブ女だが、仕事は早く優秀。 趣味でTL小説の投稿をしており、ヒーローのモデルである上司・名倉 を15分だけこっそり観察するのが日課。 名倉信也=生産管理部課長。三拍子揃ったイケメン上司で女子社員からの人気も 高い。その分、積極的な女性に辟易しており部署内で唯一自分に対し てガッつかない真理に興味を持ち、好意を抱く。 本田留美=真理の同僚。一年後輩ながら真理に何かと突っかかり勝手にライバル 視している。本野しおり=真理と仲の良い小説投稿サイトの同志。お互い感想を言い合い、名倉 との関係についての相談にも乗っていた。タイトル通りのお話です。地味なモブ女子とイケメン上司との恋物語。どちらかと言うとヒーローの方がヒロインにぞっこん(今、言わないか)で、ヒロインとの温度差が良かった。割と最近発売の作品なので中盤以降はざっくり目に。大崎真理は文具メーカー生産管理部に勤める会社員。地味な外見と雰囲気から、数合わせで合コンに参加しても目にも止められない、所謂モブ女子。だが、仕事は早くミスも無い事から、上司や男性社員からの評価は高い。今日も今日とて、他の女子社員達のほぼ倍の作業をこなしながら、今日の日課とばかりに斜め前のデスクにいる課長の名倉を観察する真理。いつもながら本当にカッコイイし良い声してる。今夜の投稿も捗りそうだと、うっとり眺めていると、隣席にいる後輩社員の留美に見咎められた。どうも彼女は性格がキツくて苦手なのだが、変にライバル心を持たれているらしく、毎度当たりが厳しい。どうやら、真理が名倉を好きで狙っていると思われているようだ。正直、カッコイイとは思うものの、飽く迄名倉へ向けているのは恋愛感情ではなく、アイドルやアニメキャラに抱くような「推し」の扱いだ。そんなに牽制しなくても、そもそも彼は真理のことなど眼中にないだろう。その後きっちりノルマをこなし、定時で退社した真理は寄り道もせず帰宅。夕食もそこそこにPCを開くと1時間もしないうちに8000字程度の小説を投稿した。彼女の唯一の趣味、それは小説を書くこと。とは言え、ジャンルは今流行りのTL小説だが。これまで専門の小説投稿サイトに何本か掲載しており、真理(PN・マリリン)の小説はそこそこの人気だった。特にヒーローがリアルで良いと評判で、感想に書いてもらえると顔がにやける。何と言っても実在の人物をモデルにしているのだ、そりゃあリアルであろう。今連載してるのは貴族もの。国王と侍女のラブストーリーで物語もそろそろ中盤なこともあり盛り上がって来た。当然国王のモデルは名倉である。そろそろラブシーン突入なのだが、何せ恋愛経験ゼロなのでどうにも濡れ場を描くのは苦手だった。ヒロインの恋する感情も難しいし、内容は面白いけど、と前置いて欠点とまでは行かないがたまにそこを感想で指摘されるのが悩みどころだ。別段プロを目指していないが、やはり自分の作品を読んでもらえるのは嬉しい。故にもっと精進せねばと常々思っているけれど、恋愛感情の機微含めこの辺は今後も大きな課題だ。投稿仲間の本野しおりが早速今夜の投稿に面白かったと感想をくれたけれど、苦手箇所はしっかりバレていた。恋か。思わず名倉が思い浮かんだが高嶺の花過ぎてどう考えても無理ゲーだ。数日後、そんな真理の日常に変化が。日課の観察で気付いた名倉のスーツの袖のボタンが取れかかっており、気になってしょうがない。思わず勇気を振り絞って、たばこ休憩に立った彼を追いかけ、繕わせてくれと頼んでしまった。名倉は一瞬身構えたものの、あっさり上着を預けてくれた。思ってもみなかった交流に可愛いもの好きが昂じて衝動買いしてしまったソーイングセットを持ち歩いてて良かったと内心ウキウキしていた真理。名倉は、こんなシチュでは大抵女性側から迫られていたので、真理の態度が却って新鮮に映り、お礼すら辞退する彼女に好感を覚えたのだった。反対に真理は、この経験は次のネタに使えると上機嫌。早速帰宅後に投稿すると評判も上々。しおりも褒めてくれて嬉しい限り。この出来事を切欠に、偶然も重なって名倉と徐々に関係が近づいて行きます。文武両道なヒーローは武骨な手をしていると思い込んでいたが、ある日偶然触れた名倉の手は思いの外柔らかく衝撃を受けた。でも、実際、国王なんて上げ膳据え膳なのだし案外そんなものかもと思い直して、それをネタにしたエピソードはリアリティがあるといつも以上に好評で驚きながらも納得もしていた。やっぱり実体験があってこそリアルも描ける。ある日、体調を崩した名倉に付き添い彼のマンションまで送って、放って置けずに甲斐甲斐しく介抱した真理は翌朝回復した名倉に告白されて、勢いでそのまま深い関係に。彼氏いない歴=年齢の真理には目まぐるしい体験だったが、これは恋愛感情ではない、ただの推しへの想いと思い込んでいただけだと実感。何だかんだと自分は名倉に恋していたのだ。名倉の方も、初心で献身的な女性が好みだったこともあって真理はドンピシャなタイプでした。これは絶対に逃してはならぬと機会を伺っていた所、運よく(?)熱を出した自分を彼女は見てみぬふりは出来ず介抱してくれた。据え膳食わぬは男の恥とばかりに告白。早々に関係を持ってしまったが、あれ以降、二人の仲は良好。恋人たちの一大イベントであるクリスマスも近い。お互い、新たな恋に浮足立っていたら、真理の感想フォームに酷いバッシング投稿が相次いで・・・。経験のおかげでベッドシーン描写も上手くなり、連載も高評価。絶好調だったのに、ある日から自分へのバッシングが毎日寄せられて真理は大ショック。幸いにもそんな輩は一人だけなのだけれど、どうやらその人物に真理は身バレしているっぽい。本名は勿論伏せているし、同僚が読んだとしてもバレようが無いのだが。運営に対処してもらっても複数アカウントを使い分けているようでお手上げ状態。ふさぎ込む真理を心配した名倉に思い切って相談したら、状況を理解してもらう為にTL小説投稿も話すことにはなったが彼のアドバイスにより、解決の糸口は見つかった。そもそも、本名は名乗らずともアレコレと事情を話していた人物が一人だけ居る。彼女がもしかして同僚で、後から真理の素性を知り、やっかみで嫌がらせを始めたのなら辻褄は会う。証拠を押さえて対峙したのは予想通りの人物で、話し合いの末、何とかバッシング問題は解決。真理はクリスマスに名倉からプロポーズされてお終い。バッシングしてた人物は割とすぐ見当がつきます。登場人物紹介にある人に同一人物がいるって言うオチ。仕事が早いから仕事量が多くても残業しないせいで、単に無能だから仕事も回ってこないんでしょ、と思われてたらしいのはなんだかなぁと。でも見てる人はちゃんと見てるってことで、真理の優秀さは部署内の男性社員達は皆認めてた。単に地味過ぎて恋愛対象にはされてなかっただけ。(それも実際失礼な気はしますが)どちらにせよ、実はリゾート企業の御曹司だったらしい名倉にプロポーズされて、思わぬ玉の輿に乗った真理。趣味も認めてくれてるし順風満帆でなんかちょっと羨ましいお話でした。多少のやっかみもまあ判らないでもないけれど、こと創作系の繋がりは昨今のSNSトラブルを見るに、恐ろしいですね。評価:★★★★★ラブコメ寄りの内容なのでさらっと読めます。
2022.08.03
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2018年6月刊夢中文庫セレナイト著者:田崎くるみさん「なぁ、志乃。いい加減俺たち付き合わない?」──同期でもあり勤務先の問題児御曹司でもある大泉優志からのこうした口説き文句は、挨拶かと思うほど数え切れず言われてきた。できる兄と比べて同じ御曹司とは思えないほどチャラく勤務態度も悪い彼のことを、曲がったことが大嫌いな小野志乃はまったく相手にせず右から左に聞き流す。ある日、志乃は優志と二人で三泊の大阪出張を命じられるのだが、優志は上司の態度が気に入らない様子。思ったことは何でも口にしてしまう志乃は優志の言動にぴしゃりとダメ出し。「まずはあなたが変わらないことには、なにも変わらないと思うけど?」──それを機に優志は豹変、志乃の心は大きく乱される。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 小野志乃=老舗百貨店マーケティング戦略部に勤める会社員。 生真面目で正義感が強く、曲がったことが大嫌いな性格のせいか同性 からは煙たがれがち。不真面目な御曹司の優志に気に入られ、付き纏 われている。 大泉優志=大泉百貨店社長の次男。志乃と同期入社でズケズケと厳しい事を言う 彼女を気に入り交際を申し込むも全く相手にされていない。 不真面目な勤務態度から付いた渾名は「ボンクラ御曹司」 大泉太一=優志の兄で百貨店の次期社長。現在は営業部に所属。 弟とは真逆の性格で人望も厚く女性社員に絶大な人気だったが、先日 結婚。優志の恋を応援している。 山口洋子=志乃の数少ない友人。優志とも同期入社のためその為人をよく知って いる。優志と志乃は絶対に付き合うようになると宣言していた。kindle unlimitedで借りっぱなしにしてて、そのまま忘れていたお話。↑も積読状態になってるんで、今せっせと読んでるんですが、つい上限まで借りちゃうからなかなか減らないんですよね。いい加減学ばなければ(^_^;)大好きな田崎くるみさんの短編。多分、何かのスピンオフっぽいんですけど、前作を読んでなくても問題ありません。恐らくヒーローのお兄さんのお話も出てるはず。もしかしてブログ始める前に読んでるかもだけど、微妙に覚えてない。今度探してみよう。お話自体は至ってシンプル。ページ数の兼ね合いか恋のライバルも出て来ないので個人的にポイント高し。ヒロイン・志乃は老舗百貨店に入社して4年目の会社員。現在は憧れの部署・マーケティング戦略部に所属してやりがいのある仕事に打ち込んでいた。だが、悩みの種が一つ。同期入社で同部署の社員・大泉優志の素行だ。彼はこの百貨店の社長の息子であることから、不真面目な勤務態度でも部長ですら注意できない。今日もサボって医務室にしけこみ女性社員と戯れていた。そんな彼を躊躇せず叱れるのが志乃だけで、必然と彼の世話は彼女の担当に。おかげで、見たくもない乳繰り合いを邪魔する羽目となり、志乃もいい加減うんざりしていた。だが、優志にしてみれば、誰もが腫れ物に触るかのような態度の中、臆せずズケズケと厳しい事を言う志乃に好感を覚えていた。生真面目すぎるきらいはあるが、裏表がない分信用できる。冗談なわけでもなかったのだが、交際を申し込んだらけんもほろろに断られ、今日も今日とて散々叱られた挙句、軽蔑の眼差しで見られていた。そんな二人に、業績の落ちている大阪の3店舗の視察の仕事が入った。次男とは言え、社長の息子に少しはそれなりの仕事を回そうと言う配慮のようだが、流石に一人で行かせるのは不安がある。そこで、彼を特別視しない志乃の同行が決まったのだった。この仕事に関しても余計な気遣いに巻き込んですまないとへらへらしていた優志に、志乃の怒りが爆発。周りを差し置いていい加減少しは大きめの仕事を、と特別扱いするのも、自分が社長の息子の立場を利用して不真面目でも目溢されているからだろう。それが嫌なら態度を改めろと叱られた彼は大層ショックを受けたようだった。その夜、洋子に話を聞いてもらった志乃は流石に言い過ぎと諫められた。彼も優秀な兄がいることから色々と複雑な心境なのだろうと言う。なまじ、出来の良い身内がいると多少は卑屈にもなるもの。優志自身も優秀なのに見向きもせず、特に社長は兄の太一だけを可愛がっていたようだ。そんな家庭環境ではやる気も失くす、あの素行の悪さはストレスもあるのかもと情報通の洋子の話に多少衝撃を受けつつ、優志の気持ちや理由も考えずキツイ事を言ってしまったと志乃は落ち込みます。そして出張の日。謝ろうと身構えていたら、先に優志から反対にお礼を言われて面食らったものの、やはり言い過ぎたと素直に彼女も謝ります。視察も真面目にこなしていたし、改善点のレポも要点がまとまっている。やればできるじゃないかと内心感心していたら、漏れ聞こえて来たのは視察先の店舗の支店長と副支店長の愚痴。ボンクラ御曹司の箔付けも結構だが、もう少しましな社員を寄越せなど言いたい放題。主に優志の悪口だったので、ハラハラしたが持ち前の正義感から言いたいことがあるなら本人の前で言えと腹が立って仕方ない。話の途中で、さぞ聞こえてたぞばりに入室してやったが、志乃のもやもやは消えなかった。その夜、励ますつもりで彼を飲みに誘った志乃は、優志からその複雑な心境を聞かされます。親から出来の良い兄と比較され続けると言うのも辛いものなのだなと理解した彼女に、彼は志乃に認められるよう心根を入れ替えて仕事に打ち込むと約束。いつもの付き合ってくれ、ってのは冗談ではなかったのか。それから早2ヶ月ほど経ち、豹変したかのようにまじめに仕事に励む優志に、周りもボンクラなどとは口にしなくなりました。太一が結婚したことで、今度は優志狙いの女子社員が増え、志乃は嫉妬の対象に。どうやら彼は告白されるたびに、志乃に片思い中だからと断っていたらしい。どういうことなのかと先輩女性社員達に責められ、ついつい優志のことなど大嫌いだから付き合うなど有り得ないと叫んでしまい・・・。先輩社員達はこれで引いてくれたが、間の悪いことに優志本人に聞かれてしまい、彼は随分傷付いたようだった。太一まで心配して志乃に事の顛末を尋ねに来る始末。彼女も罪悪感と本心のはざまで思い悩み、洋子にそれは恋故だと指摘され、自分の気持ちを悟った志乃、若干その後勘違いで拗れかけたりもするんですが、志乃が本心を語って告白したことから晴れて二人は恋人同士に。今ではすっかり良好な関係らしい優志の父からもよろしく頼むと結婚を認められ、あれよあれよという間に一年後二人は結婚してお終い。真面目過ぎる故に、恋愛に対しても一歩引いてしまうヒロインと、彼女のおかげで心を入れ替えたヒーロー。最初はとんでもない奴だと思ったものの、早い段階から豹変したので、一気にスパダリに。ヒロインのお父さんも面白いキャラだったし、家族ぐるみで和気藹々と暮らしそうな二人でした。ヒロインのモノローグで、世の女性のイヤな部分が切々と書かれてたんですけど、ホントそれなと納得。評価:★★★★☆文庫一冊分くらい読みたい話。短すぎるのが惜しい。
2022.07.20
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2022年4月刊夢中文庫プランセ著者:山内詠さんどうして私は、誰にも選ばれないの?──侯爵令嬢のリリーは貴族女性としての幸せである結婚を目標にたゆまぬ努力を続け、花嫁候補としての条件も申し分ないはずだった。なのに社交界デビュー以来振られまくり、恋人を他の令嬢に奪われ……ついたあだ名は『当て馬令嬢』。それを繊細な美貌を持ち女性たちから常に注目を浴びる幼馴染の公爵クリスフォードから揶揄われる日々。昔は優しくて頼りがいがあって大好きだったクリスフォード。なのにある時からリリーに冷たくなり、彼への初恋は今でも胸に燻ったまま。そんななか、偶然知り合った異国の貴族男性と急速に距離が近づくリリー。やっと運命の人と出会えたと喜ぶが── ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 リリー=ヒロイン。ルーヴェル王国オルブライト侯爵令嬢。 かなりの優良物件ながら、10人もの相手からフラれ続けている ことから付いた渾名は「恋多き女」、「当て馬令嬢」クリスフォード=ヒーロー。タウンゼント公爵家当主。 リリーの3歳上の幼馴染で、子供時代は仲が良かったが、寄宿学 校を卒業してから態度が変わり、今では犬猿の仲。 ジェイムズ=リリーの兄でクリスとは親友。 クリスとリリーの仲を取り持とうとしている。 キース=フォルシオ王国からの交易使節団の責任者。 リリーの朝活の乗馬中に出会った青年で、以降親しくなる。 シンシア=リリーの親友で現在は伯爵夫人。大人しい性格の為あまり夜会に 出席していないが、何かとリリーを気にかけていた ジェーン=リリー付きの侍女。このレーベルさんにしては少々ページ数多目のお話でした。家柄も良く、容姿も申し分ないはずの侯爵令嬢リリーは、婚約者たちからフラれ続けてそろそろ行き遅れの域に達して来ていた。同じく行き遅れそうになっていた親友・シンシアは社交界には馴染めないと、領地に帰ったのが幸いしてそこでブラントン伯爵に見初められ結婚した。本日、目出度く10人目(婚約者にまでなったのは6人目)の相手からフラれたリリーは、自分も領地に引っ込もうかと自棄になっていた。そんな彼女を励ますシンシア。彼女から見てもリリーがこうもフラれまくる意味が判らない。漠然とだが、誰かが裏で手を回してるのではと頭をよぎったが迂闊な事も言えず、慰めることしかできなかった。リリーがバルコニーに一人になると、見計らったようにやって来たのはタウンゼント公爵クリスフォード。またリリーがフラれたのを聞きつけたのか、慰めるでもなくネチネチと嫌味と皮肉のオンパレードの彼にうんざりしながら、昔はこんな人ではなかったのにとしみじみ思う。クリスとリリー、その兄ジェイムズは母親同士が従姉妹な事もあってか、親交があり所謂幼馴染であった。ジェイムズとは今でも友人だが、リリーとは8年ほど前から犬猿の仲だ。何のことはない、いい加減女の子と遊ぶ年齢でもないからか、ある日突然態度が変わり、自分は遠ざけられ、たまに顔を合わせればこうして酷い言葉を投げつけられる。さすがにリリーもそんな相手と仲良くし続ける義理はなく、彼が公爵なのも構わず辛辣な態度を取り続けた。だが、今夜は彼にまで当て馬令嬢だの、身の程知らずとまで言われて猛烈に腹が立ち、早々に夜会から引き揚げて来たのだが、一晩経ってもモヤモヤは消えない。そんな折、日課の乗馬中、公園にて一人の外国人の青年と知り合ったリリー。この国の仕来りを知らず、少々粗相を働かれたが、青年キースは人当たりも良く、言葉を交わすうちに親しくなっていった。彼はフォルシオ王国の交易使節団の代表らしく、今まで様々な国を訪れているらしい。この国との交易は是非成功させたいと、ルーヴェルの貴族たちの仕来りなどを教えて欲しいと請われたリリーは報酬代わりに、キースの巡った国の話を聞かせてもらうことに。そんな親交が二か月ほど続き、王太子の誕生日祝いの宴のパートナーを務めさせてくれとキースから申し込まれた。王族主催の催しでの家族以外の男性のエスコートの場合、自分たちは婚約者だと知らしめることであった。リリーはキースに好意を持っていたし、彼の身分も申し分ない。やっと結婚できる、と浮かれていたら兄とまさかのクリスが大激怒。キースだけは絶対にダメだと言うが、一体何がダメなのかと問い詰めると、クリスの話ではキースには既に妻子がいるらしい。フォルシオの高位貴族は重婚が認められているそうで、リリーを第二夫人にする腹積もりなのは明らか。侯爵令嬢を第二夫人だなどと憤慨する彼らを他所に、自分の結婚のチャンスがまた露と消えたことにリリーは大層ショックを受け・・・。キースの事情が結構予想外でしたが、さすがに重婚は無いわ。しかも、この夜会でもあちこちの令嬢に粉を掛けていたようで、リリーでなくとも読んでて唖然。そういうお国柄なのかもですが、正直キースより、真相が判るにつれクリスの思惑が納得いかずで、このヒーローが嫌いになりました。やり方が不味すぎる。要は昔、突然リリーを避けていたのは彼女を性的に意識し始めたからで、良からぬことをしでかさぬよう敢えて会わないようしていた。それと元々二人は親同士が決めた許嫁で、リリーの社交界デビューと同時に婚約させるはずだったのだけど、運悪くその直前に彼の母が亡くなり、父も事故で歩けなくなった。クリスが公爵を継ぐ際かなりバタバタしており婚約発表どころではなくなってしまったのだ。一旦、許嫁の話は白紙となり、侯爵夫妻はクリスがいるからとのんびりしてたこともあって、事情を知らないリリーには社交界デビューと同時に自分で気に入る相手探しをさせたのだった。だが、諦めきれないクリスは「リリーには結婚相手が決まっており、今は好きに遊ばせている。彼女と付き合っても結婚は出来ない」と触れ回り、彼女の縁談を悉く潰していた。おかげで、リリーは不名誉を被ってしまい、相当傷付いたわけで、普段のクリスの暴言についてはシンシアとその夫ブラントン伯すら眉を顰める程だった。正直、この憎まれ口とあの態度をし続ける意味あったのかと思ったけど、おそらく嫉妬からくる意趣返しだったのでしょうね。さっさと自分を選ばないから的な。それでも納得いかないけど。そもそも、そんなに結婚したいなら改めて侯爵家へ自ら結婚の打診をすれば良かったのだと、彼女の両親が憤ってたのも無理からぬこと。ホント、そう思うもの。リリーはクリスのやり口に憤慨し失望。髪を切って結婚出来ないと意志表示して領地に籠ってしまったのだが、彼女より両親の侯爵夫妻が大層怒っており、今更何と言われようがクリスとの結婚には大反対の上、その片棒を担いだジェイムズまで厳しく叱責される始末。とは言え、内心ではリリーもクリスを憎からず想っていたので、彼の正式な謝罪と想いを打ち明けられて彼を許し求婚を受け入れます。だからと言って、全部が全部許したわけではないけれどと彼に告げるリリー。早々に既成事実を作られ、妊娠してしまった娘の為に侯爵夫妻も結婚を認めたわけだけど、どうもこのクリスのやりようが気に入らない。リリーは本音ではクリスが好きだったから上手く行っただけで、そうでなかったら大概許されないですからね。しかも、逃げられないようデキ婚に持ち込むとか、こんなクズ男がヒーローなんて。侯爵夫妻の言い分が尤も過ぎて、最後までこのヒーローのことは見直せなかったなぁ。重婚でさえなければキースの方が何倍も良い男だった。あんなに最後溺愛してるなら最初からそういう態度取って置けばこんなに拗れなかったのにねぇ。評価:★★★★お話自体は面白いし文章も上手い作家さんなれどヒーローのキャラ性に少々問題あり。気になってamazonのレビューも観てみたら、ヒーローがボロクソに言われてて苦笑。
2022.07.17
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2019年11月刊夢中文庫セレナイト著者:田崎くるみさん「大人になったら絶対迎えにくるから待ってて。……結婚しよう」十五歳の春。大好きな人、透はそう言って去っていった。きっと彼は約束通り迎えにきてくれる、明奈はずっと信じていた。あれから十年──社会人になっても約束は果たされず、同期に気になる人も出来た。新しい一歩を踏み出そうと思い始めていたそんなとき。会社で透と思いがけない、いきなりの再会! 学生時代とは違い独占欲全開でちょっと強引になった透と、気になる同期の存在。突然の再会で自分の気持ちが分からなくなる明奈。昔のふたりのままじゃない。大人になりお互い変わってしまったところもあるはず。ちゃんと自分と向き合うことにした明奈は── ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 今泉明奈=ヒロイン。外資系ホテルグループ広報課勤務のOL 10年前、幼馴染で彼氏の透と結婚の約束をしていたが、その後彼か ら何の音沙汰も無く、いい加減諦めて新しい恋をしようとしていた。 浅葱透=ヒーロー。明奈の勤めるホテルグループ代表の跡取り。 明奈との交際途中で母と外国人との再婚が決まり、一緒に海外移住し たが、この度日本支社勤務が決まって帰国した。 寺門渚=明奈の同僚で友人。明奈に想いを寄せているが、彼女が透の帰国によ って縒りを戻しそうな雰囲気に焦って行動に移す。 西村秀美=明奈の親友。透の帰国前は寺門との交際を明奈に薦めていたが、寺門 と透、どちらかを選びかねていた明奈の態度を諫める。三角関係ものです。恋人との約束を10年もの間待ち続けていたけれど、その間全く連絡が無い。自然消滅だったのかも、と自分を納得させて、最近良いなと思っている同僚と新しい恋を始めるのもいいかもしれない。そんな矢先、恋人が前触れもなく帰国し、自分に会いに来て・・・。っていうお話。ずっと想い続けていたと言う割にはメール一つ寄越さず、どの面下げてっな心境だった明奈。でも、透はあの頃よりもっとかっこよくなっており、しかもこのホテルグループの代表・スミス氏の息子だと言う。どうやら、透の母の再婚相手がスミス氏だったようだ。透は彼の後継者としての勉強に励み、いっぱしの人間になったら改めて明奈にプロポーズするのだと人一倍努力していたらしい。でも、10年放って置かれた立場の明奈は内心複雑。何も諦めて新たな恋をしようと思っていた矢先に現れなくても。複雑なのは明奈だけでなく、寺門もであった。結婚の約束をしていた上に、いずれはスミス氏のあとを継ぐ御曹司が彼女の恋人だったとは。ライバルが大物過ぎる。そんな明奈との10年間の穴埋めをすべく、透は明奈を溺愛。それと、何故連絡を絶っていたのかも教えられ、明奈の気持ちも透を好きだった頃に戻ります。明奈に相応しい男になるのだと努力していたのに、彼女に連絡したら日本にすぐ帰りたくなる、それじゃだめだと思ったとか言われたら怒れない。久しぶりに再会した彼の母によれば、透はイギリスに居た時も他の女に目もくれなかったそうだ。一途にずっと想われてたと知って、明奈はやはり透のことが好きなのだと自覚します。もう少ししたら来日するらしいスミス氏にも会って欲しいと告げられ、緊張していた明奈に、寺門はどうしても彼女を諦めきれずに告白して来て・・・。寺門の想いを知った明奈は親友の秀美に相談するも、自分の気持ちはもう固まっているくせに寺門に気を持たせているのは狡いとズバリと言い当てられて明奈は猛省。結局、透を諦めきれずずっと待っていたのだ。彼の本心も聞けてもう答えは決まっている。未来のホテルグループ代表の妻なんて不安もあるけれど、やっぱり透が好きだし結婚したいと思っていたら、透が倒れたと聞きパニック。まぁ、これはただの寝不足と過労だったんですけど、二人は想いを確かめ合って元鞘に。翌日明奈は寺門にその気持ちは受け取れないと告げます。答えはもう予想していたのか、寺門たっての頼みにより、今後も良き同僚で友人、ライバルとしてやっていくことになった。それから一ヶ月ほど経って、透がイギリスの本社に重要な会議で2週間ほど戻らねばならず、見送りに行った明奈は空港で改めて彼からプロポーズをされ、それを受けるのだった。おまけのエピソードではその後の二人。子供は三人は欲しいと、イチャ付いてる様子が描かれてます。微妙に中盤までのヒーローの影が薄い気がしましたが、そこからグイグイ巻き返してきます。寺門君もかなりの優良物件なんだけど、今回ばかりはしょうがない、相手が悪かったよね。きっとすぐに良い人が見つかる。展開的にはとにかく王道展開なこともあって、安心して読めます。ヒロインのふわふわ具合は読んでて確かにイラっと来てたので、喝を入れてくれた親友はよくやった。評価:★★★★
2022.07.07
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2017年12月刊夢中文庫セレナイト著者:田崎くるみさんお前にとって俺がたったひとりの相手だろうーー横田紗耶香二十五歳、大手食品メーカー勤務。親友の有住は会社の先輩に溺愛され、もうひとりの親友未知は優しい御曹司と結婚。ふたりとも幸せそうで嬉しい!最高の親友に恵まれ、重要な仕事を任されるようになり張り切る紗耶香。でも完璧な彼女にもコンプレックスが。女性から妬まれ、男性から心ない視線を向けられ嫌な思いをしてきた。それを一蹴したのが七瀬圭司。自分にも他人にも厳しいが部下思いの部長で、紗耶香は入社前から彼のことが大好き。親友に勇気づけられ告白を決意した矢先、七瀬に断れないお見合い話が持ち上がって!?ずっと抑えていた本気の恋心を紗耶香は伝えることが出来る? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 横田紗耶香=ヒロイン。大手食品メーカーに勤める会社員。 面接の際、倒れた自分を介抱してくれた七瀬に3年以上片思いをし ている。異性から何かと性的な目で見られる巨乳がコンプレックス 七瀬圭司=ヒーロー。紗耶香の上司で34歳の若さで販促部部長に昇進した。 仕事面では自分にも他人にも厳しいが、紗耶香の働きぶりは認めて おり、気にかけている。 星野有住=紗耶香の友人。先輩社員の風見と婚約しており、近々挙式予定。 自分たちが上手く行ったのは紗耶香のアドバイスのおかげと、彼女 の恋を応援する。「失恋おやゆび姫は溺愛紳士に翻弄されています 」のヒロイン。 大泉未知=紗耶香の友人。1年前に結婚して寿退社した。 「誘惑御曹司は臆病なシンデレラを溺愛したい」のヒロイン。 友永道幸=紗耶香達と同期入社の男性社員。地方支社にいたが、本社に転属し て来た。仕事は優秀ながら自他ともに認める男尊女卑で販促部の女 性社員達から反感を買っている。 ここしばらくハマっている田崎くるみさんのお話です。どうやらシリーズものみたいで、またしても読む順番間違えたかも(^_^;)とは言え、ストーリー面では気になったら読んでね、くらいの関わりなので前作を知らなくても問題はありません。一応、残り2作品もkindle unlimitedで借りて来たので、近いうちに読んで感想上げます。お話自体は至ってシンプル。頑張り屋ながら、物静かで地味な性格のヒロインが仕事のできるヒーローにずっと片思いしていたけど、実は彼の方も彼女を、な感じの内容です。ヒロイン・紗耶香は入社3年目にして憧れの七瀬のいる販売促進部に転属になって内心では大喜び。浮ついた噂一つ無い彼は女性社員の憧れの人。自分のこの恋も片思いのまま終わりそうだが、今は彼の下で働けるだけ嬉しい。せめて部長の役に立ちたいと仕事に精を出す日々。今日も次に企画しているキャンペーンの報告で褒められたばかり。天にも昇るような気持だったけれど、自分に対して聞こえよがしに囁かれる男性社員達のセクハラまがいの悪口が耳に入って、テンションも下がってしまった。それもこれもこのFカップもある胸のせい。学生時代から男子からは厭らしい目で見られ続け、女子生徒からは男に色目を使っていると陰口を言われる始末。電車に乗れば高確率で痴漢に遭遇したりと、俗に言う巨乳に産まれて得なことはほぼ無いに等しい。そういえば、あの時痴漢から助けてくれたスーツ姿の男性がいたっけ。交際を申し込まれれば、初回のデートでホテルへ連れ込まれそうになるし、単にその手の輩に目を付けられやすかったのだろうけど、就職活動の時はとある企業の面接官まで胸を凝視して来て、凹んだものだ。そんな経緯もあって、今勤めている食品メーカーの面接は第一志望であり、気合を入れた。どうしても受かりたくて胸が目立たぬようきつく晒を撒いて挑んだら、息苦しくて待ち時間に昏倒。そこを介抱してくれたのが七瀬だった。彼は、晒を撒いていた彼女の理由と愚痴を根気よく聞いてくれて、セクハラめいた面接官のいる会社に入らなくて正解だったと慰め、短所だと思うから余計に気になるのだから長所だと思えと励ましてくれた。この彼との邂逅によって、無事就職試験は合格。3年かかったが彼の部下にもなれた。憧れや恩が恋心に代わるのも致し方なく、ずっと七瀬を思い続ける紗耶香。そんな彼女を見て近々結婚する同僚の有住や、既に退職しつつも未だに交流を続ける未知は自分たちの恋を後押ししてくれたのだし、と紗耶香の恋を応援してくれていた。だが、七瀬はあまりにも高嶺の花。せめて良い部下でいたいと言う気持ちも大きくて自分の思いは言わぬが花な気がする。しかし、販促部に地方支社から同期入社の男性社員・友永が転属してくると聞きつけ、有住共々気が滅入る。友永は決して悪い人間ではないのだが、自他ともに認める男尊女卑で、女性を見下しセクハラすれすれの発言も多い。当然紗耶香も胸のことで散々からかわれた上に、やたらとデートや食事に誘われて困っていた。地方支社に転属となって安心していたのに、仕事は優秀だから本社に呼び戻されたのだろう。案の定、彼は悪びれずに女性社員を顎で使い、終業後は彼女達をしつこく食事に誘うことから部署内では問題になっている。一応、彼の教育係を任された紗耶香の元に苦情が相次ぎ彼女も困り果てていた。見かねた七瀬が自分から注意するとは言ってくれたけど、彼の手を煩わせたくなくて丁重に断った。だが、友永の歓迎会にて酔った彼が紗耶香の胸をネタに暴言を吐いたことで七瀬がキレて・・・。これをきっかけに二人の仲も若干近付いて、部署内では付き合っているのではと噂にもなったりします。友永も猛省して真摯に謝罪したことで大事にはならなかった。でも、入れ替わりに七瀬が専務の娘と見合いするらしいと紗耶香の耳に入って目の前は真っ暗。あの歓迎会のあと、思い切って告白しないで良かった。失恋決定だと地の底まで落ち込む彼女を勇気づけたのは友人二人。彼女達を心配させてはいけないと、何とか平常心で働いていたけど、ある日例のお嬢様と仲良さげに歩いていた七瀬を見て立ち直れそうもない。でも、最近様子のおかしい彼女を気にして七瀬が声を掛けたことから、自暴自棄になった彼女は彼に告白をぶちかまします。が、七瀬もまた紗耶香をずっと想っていたらしくお互い両想いだったと判明。見合いの件も元々お嬢さんとは知り合いだったから会うだけ会って、共通の話題で盛り上がっていただけだと言う。そこをたまたま紗耶香が目にしてしまったようだ。その後二人は交際。1年半後に結婚してお終い。おまけのエピローグでは、高校時代の紗耶香を痴漢から助けたサラリーマンが七瀬だったと判明するのだけど、だよねー。だと思った。120ページ弱の短いお話なのでサラーっと読めます。故に、そのページ数のせいか七瀬のがっつきぶりが顕著に(苦笑)両想いと判ってすぐにベッドに連れ込むとは、彼も涼しい顔して相当追い込まれていたらしい。友永君は嫌な人のまま終わるのかと思いきや、七瀬に怒られて考えを改めたのもあり、ホント、根は悪い人じゃないんだよなと思いました。それと、巨乳なりの悩みも大変なんだなと。評価:★★★★☆ヒーローが終盤まで少し影が薄かったのが惜しい。
2022.06.23
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2019年2月刊夢中文庫プランセ著者:こいなだ陽日さん男爵家の令嬢ベルと双子の弟は二人とも美形だが、とても貧乏。ある日、名門侯爵家の使者が男爵家にやってくる。使者いわく、侯爵家の子息エーヴェルトが、昔からの許嫁との婚約解消をほのめかして困っているとのこと。どうやら、貴族の間では恋愛結婚が流行しており、エーヴェルトとその許嫁は自由な恋愛をしたがっているらしい。そこで、ベルと双子の弟に、それぞれエーヴェルトと彼の許嫁にほどよく恋愛を経験させてから、姿を消して欲しいと依頼をしてきた。ベルたちはやむを得ず引き受けるが、ベルはエーヴェルトに必要以上に気に入られてしまったようでーー!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 ベル=男爵令嬢。貧乏貴族のため、両親共働きの上、双子の兄と二人マナ ー講師をして何とか生活していた。ある日、ブロテール侯爵家から 子息を誘惑し、その気にさせたらフって欲しいと言う依頼をされて 戸惑うが、破格の報酬に飛びついた。エーヴェルト=ブロテール侯爵家の跡取り。許嫁であるエレナとの結婚を突然辞め たいと言い出して騒動になった。 ベルを気に入り、過剰なスキンシップを仕掛ける。 ステファン=ベルの双子の兄。依頼を受け、エレナを誘惑する役目を負った。 エレナ=グロンベルグ公爵令嬢。エーベルトの婚約者で似た者同士。 ステファンに入れこみ、何かと世話を焼く。偽装恋愛の依頼を受けたはいいが、恋愛初心者には荷が重い。しかも、ターゲットに一目惚れしてしまって、と言うお話。コミカライズ版もあるそうです。貧乏男爵家の双子の兄妹、ベルとステファンは生活と税金のために貴族向けのマナー講師として、せっせと働く日々。痩せた領地をいつかは豊かにしたいと思ってはみても、それ以前に適齢期のベルは、この状況では持参金が用意できないので結婚も危うい。巷では、王太子が庶民の娘を妃に迎えたらしく、純血を重んじる貴族界隈でも自由恋愛の波が押し寄せていた。ある日、男爵家にブロテール侯爵家の執事頭が訪れ、二人にとある仕事を依頼したいと告げた。ブロテール家の跡取り・エーヴェルトと、彼の婚約者でグロンベルグ公爵令嬢・エレナを誘惑して欲しいと言う。しかも、惚れさせたら手酷くフってほしいとも。どうやら、昨今の自由恋愛ブームに乗せられてなのか、この二人が突然結婚したくないと言い出したらしく、両家共頭を抱えているらしい。お互い、自分が心に決めた相手を伴侶にしたいとのことだが、高位貴族なだけあって純血主義の両家は、二人に恋愛の末に王太子の様に庶民を選ばれては困るそうだ。そこで、今は一時の気の迷いで恋愛に夢を見ているが、実際そんないいものではないと思い知らせれば、考え直すであろう、との狙いで白羽の矢が立ったのがベルとステファンだった。兄妹は金髪碧眼で見目も良い。社交界でも顔が知られていないので外国の侯爵家の令嬢と子息と偽り易い。だが、内容を聞く限り、双方の親は了承してるとは言え、人の心を弄ぶような真似は良心が痛む。ベルは渋っていたが、報酬を聞いて考えが変わった。成功すれば更にその倍貰えるらしい。これだけあれば次の税金の補填をしてもかなりの額が残る。兄妹は良心をかなぐり捨てて、この依頼を引き受けたのだった。二人はブロテール侯爵邸に厄介になることになったのだが、いざ、ターゲットであるエーヴェルトを見たベルは一目で心奪われてしまった。折しも、エレナも屋敷に滞在しており、ステファンの方も早速近づけそうだったが、いざ、相対してみるとどうもあっという間にターゲット達に気に入られてしまったようだ。何かとエーヴェルトに誘われ、ついつい領地の事も口を滑らせてしまったが、特に不信に思われなかったのにはホッとした。でも、彼からキスの練習をさせてくれと言われた時には驚いた。疑われるわけにもいかず、応じてしまったら以降、過剰なスキンシップが増えて戸惑うばかり。このままでは貞操の危機。だが、こんな日々も敢無く終わりをつげ、彼らが熱を上げてるうちに領地に帰ればフられたと思うであろうと、姉弟は突然帰されることになり・・・。実は、エーヴェルト達は親の企みに気付いてて、ベルたちのこともからかって追い返すつもりでした。なのに、思ったより彼らが良い子達なのでハマってしまい、自分たちの伴侶にしたいと思い始めていたのです。そこで、双子たちを追いかけ種明かしをして、双方結ばれます。純血に拘っていたエーヴェルト達の両親は、男爵家が由緒正しい純血の一族と知って、失敗しても混じりけの無い貴族ならOKと、最悪の事態を想定して依頼していたのでした。80ページちょっとの短編ですが、ぶっちゃけ、よくこのページ数で納めたなと思う程の情報量。ターゲットの方が策士だったってオチなのも、双子の性格上仕方ないよね。終盤はステファンがエレナと立場逆転してましたけど、まぁ男の子だからそれくらいの気概が無いと。兄妹が大物を捕まえたおかげで、男爵家と領地も安泰って終わり方は、大団円って感じで良いです。評価:★★★★さらっと読めるストーリー。このページ数で2回もラブシーン入れたのは天晴。
2022.06.12
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2022年1月刊夢中文庫プランセ著者:日向そらさん公爵令嬢エリシアはある日、『この世界』が前世で自分がシナリオを書いた同人乙女ゲームだと思い出す。しかしメインヒーロー・セドリックの義妹である『エリシア』は病弱で、シナリオ通りなら数年以内に死んでしまう脇役。ーーいや、死ねない! なぜならこのゲーム、バッドエンドでは攻略対象達はみんな“ヤンデレ化”するのだ。妹思いの優しい義兄セドリックも、エリシアの死がきっかけで『監禁ヤンデレ』に……! ヒロインもヒーロー達も我が子同然。彼らを不幸にするわけにはいかない! エリシアはヤンデレルートを潰し、彼らをハッピーエンドに導くと決意するが……? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 エリシア=ヒロイン。元は現代日本人で、同人乙女ゲームのサークル活動をして いたが、酔った勢いで自宅マンションの窓から転落死。自身がシナリ オ担当したゲームのモブキャラに転生した。自分の死がメインヒーロ ー・セドリックの心の闇に繋がることから、どうせなら皆ハッピーエ ンドを目指そうと攻略キャラ達のヤンデレの素を潰すべく奮闘。セドリック=ヒーロー。マクドネル侯爵家の跡取りでエリシアの義兄。 同人乙女ゲーム「君がいるから世界は謳う」のメインヒーローだが、 エリシアの矯正によって、妹命の超シスコンキャラに変貌。 その実、彼女に恋しており、将来は結婚して二人で侯爵家を継ぐ腹積 もりであった。 ロザリー=ゲームのヒロイン。男の理想を詰め込んだようなキャラで、エリシア によってゲームの内容が大幅に変更したことから、隠しキャラである オズナに狙われ、魔法薬を飲まされ昏睡状態に陥る。 オズナ=ゲームの隠し攻略キャラ。ルートが大幅変更されたことで本来なら登 場しないはずだった。ロザリーを気に入り、彼女を手に入れるべく魔 法薬を飲ませるも、解毒薬入手のため交渉に来たエリシアに標的を変 更した。 転生ものです。成人向け同人乙女ゲームの製作者(シナリオ担当)が不慮の事故で亡くなり、気付くと自作ゲームの世界に転生していたと言うお話。それと、あらすじでは公爵令嬢になっていますが、本文では侯爵です自らが制作した乙女ゲームのメインヒーロー・セドリックの妹に転生したヒロイン。ある日、突然前世を思い出したエリシアは頭を抱えた。このキャラは病弱で、年齢を考えればもうしばらくもしないうちに亡くなる設定だったはず。しかも、このエリシアの死をきっかけにセドリックは心に闇を抱えてしまうのだ。とは言え、よくよく思い返してみれば、エリシアは母親が事故死して自暴自棄になり、薬も飲まずに衰弱死している。では、ちゃんと薬も飲んでしっかり養生すれば生き延びられるのでは?前世ではキャラのヤンデレ化が大好きで、ハッピーエンドよりバッドエンドに力を入れて作ったものだが、自分が転生した世界となれば話は別。どうせなら、闇にハマるより皆幸せになるのが一番。一念発起したエリシアは、セドリックのバッドエンドを潰すべく、先ずは死なない事を目標に努力を続けた結果、喘息だけはどうしても完治できなかったものの、7年後にはそれなりに丈夫になった。その代わり、涙ぐましいエリシアの姿を傍で見続けたセドリックは重度のシスコンになってしまった。かなりの過保護で終始自分にべったりなのは少々戸惑うが、そこはまぁ許容範囲。何だか少し胸が痛むけれど、あとはメインヒーローらしくヒロインのロザリーと幸せになってくれれば満足である。その他二人の攻略対象も、ヤンデレに発展する芽は先回りして潰したのが功を奏して、楽しくやっているようだ。こちらももう心配はいらないであろう。だが、エリシアの大幅なシナリオ変更により、本来なら正規ルートの一つをクリアしないと出現しない隠しキャラ・オズナが登場したことで、ロザリーが予想外の事件に巻き込まれ・・・。この隠しキャラがかなりの曲者で、元々ヤンデレなキャラだけにエリシアも対処に手古摺り、挙句の果てに貞操の危機に。そこをセドリックに救われ、その後屋敷に連れ帰られた際、彼には前から不思議に思われていたらしい、エリシアの行動の理由を尋ねられます。観念した彼女は、信じてもらえないかもと思いつつ、前世の事、自分が作った物語の修正をしていることを話した所、あっさり信じてもらえて拍子抜け。そして、セドリックの本心を告げられたエリシア。いずれは妻になってほしいと求婚され、いつからか同じ気持ちだった彼女もそれを受け入れます。ラストでは、実はヒロイン・ロザリーも転生者であり、ゲームのヘビーユーザーだったと言うオチ。割とこの辺の件が唐突で、いつそんなそぶりあったっけ?と首を捻ったものの、120ページ弱では、多少の説明不足は仕方ないかな。結構良いキャラしてたのと、オタク独特の雰囲気は嫌いじゃない。ロザリーの方も、攻略対象外のキャラと恋仲になっていて、エリシアの努力の賜物で全員ハッピーエンドで幕。途中挟まるキャラごとのバッドエンドルートのセリフにはドSぶりが光ってて笑えます。さすがは闇鍋さん(ヒロインの前世のペンネーム)が力入れてただけある。個人的にはハッピーエンド派ですが。評価:★★★★コメディーに振り切らず、メインヒーローのルート一本に絞ったゲームシナリオっぽいお話、と言う印象。
2022.06.08
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2021年11月刊夢中文庫プランセ著者:宮永レンさん足を滑らせ川に落ちてしまったアリゼは偶然通りかかった青年に救われる。呆然とするアリゼに青年は問う。クリスタンヴァル伯爵の屋敷を探している、アリゼ嬢に会いたいのだと。それは私……と答えると、青年はひどく驚いた様子で、でもはっきりとした口調で「俺と結婚してほしい」とプロポーズする。彼はロレシオといい、この国の公爵子息だという。そんな人がどうして私と? 初対面なのに? 大混乱のアリゼ。隣国の公爵家の流れを汲むアリゼとこの国の公爵家のロレシオが結婚することで、二国間に漂う不穏な空気を払拭するための王命による政略結婚なのだ。そしてロレシオはこの結婚に愛を注ぐ気はないときっぱりと言い切り…… ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 アリゼ=ヒロイン。隣国・ヒートラ国の王族の血を引くクリスタンヴァル伯爵 家の娘ながら、先祖代々小さな領地で畑を耕し、慎ましく暮らしてい た。社交界とは無縁の生活を送っていたが、とある事情により、この 国の王族であるデュラール公爵の跡取りであるロレシオとの政略結婚 が決まった。 ロレシオ=ヒーロー。執政補佐官でセドキス国の王族・デュラール公爵の子息。 ヒートラ国との戦争回避のため、王命にてその国の王族の血を引く娘 であるアリゼとの政略結婚をすることになった。だが、本心では12 歳の頃に出会った初恋の少女を忘れられず、アリゼを愛することは決 してないと思っている。セバスティアン =セドキス王国の王太子でロレシオとは従妹同士。 既に妻帯者であり、自身も政略結婚だったが、一緒に暮らすうちに心 は変わるものだと、初恋を忘れられないロレシオを励ました ルイ=アリゼの兄。伯爵家の跡取りだが身体が弱く、長らく気管支の病気で 臥せっていた。ルイを王医に見せると言う条件で、アリゼが結婚を了 承したことを申し訳なく思っている。 ポレット=デュラール公爵家の侍女で、この度ロレシオの婚約者として屋敷にや って来たアリゼ付きになった。貴族の令嬢らしからぬアリゼの態度や 行動に当初は戸惑っていたが、後に打ち解けて彼女を慕うようになる政略結婚ものです。120ページくらいの中短編ですが、正に王道展開のお話。昔、セドキス王国とヒートラ国は戦争となり、その時はセドキス側の勝利に終わった。その際、友好の証と言う名の人質としてヒートラ国からやって来た王族であるクアドラード公爵令嬢が、武勲を挙げたクリスタンヴァル子爵に嫁ぐことになった。その際、伯爵へと位階も上がったものの敗戦国からの人質と言うことで、令嬢は口さがない貴族連中たちの悪意に晒された。そんな彼女を守るため、伯爵は貰い受けた領地のほとんどを返還し、残った僅かな領土に引き籠った夫妻は以降は社交の場から遠ざかり慎ましく暮らしたと言う。長らく両国は争いも無くやってきたが、近年ここに来てこれまでの友好関係も揺らぎ始め、一触即発であった。今度もまたセドキス側の勝利で終わるなら戦争も吝かではないが、今はこの国も昔ほどの戦力は無い。ならば、争うつもりはないとヒートラ側に示す必要がある。そこで、ヒートラ国の王族・クアドラード公爵家の血族をこの国は厚遇していると、クリスタンヴァル伯爵令嬢アリゼとこの国の王族であるデュラール公爵の子息・ロレシオとの政略結婚が決まった。かの公爵の子孫は王族に嫁ぎますよ、ということだが白羽の矢が立った二人にしてみれば迷惑な話であった。田舎で貴族令嬢らしからぬ生活をしていたアリゼは兄の治療と、生活に困窮していた伯爵家への援助を条件にロレシオとの結婚に同意し、公爵邸までやって来た。洗濯や掃除までやりたがるアリゼにロレシオ始め、屋敷の使用人たちは面食らったものの、どうせ形ばかりの夫婦、仲良くするつもりは無いと思っていたロレシオは好きにさせていました。でも、飽く迄仮面夫婦たる扱いが彼女の怒りに火を点け、脱走を図ったことから、彼もアリゼの言い分を聞き入れて交流を持つように。どうせ結婚は回避できないなら仲良くしたい、アリゼの言い分は尤もで毎晩同じ部屋で眠るうちに、二人の関係にも変化が。しかし、ロレシオは同じく政略結婚だった両親の不仲ぶりに傷つき、貴族同士の結婚なんてそんなものと思っていました。けれど、令嬢らしからぬアリゼの言動は彼にしてみれば新鮮で、徐々に彼女に惹かれて行くのを感じます。自分には忘れられない初恋の子がいるというのに。セバスティアンからもアドバイスを受け、アリゼに歩み寄ろうとするロレシオ。街に出掛けた際、記憶を呼び戻されたのかアリゼはここで一人の少年に出会った話を始め・・・。予想通り、お互いが初恋の人同士だったと言うオチ。その後、戦争推進派の侯爵にアリゼが浚われたり事件も起きるんですが、ロレシオに救われ事なきを得て、後に二人は特使としてヒートラ国へ出向き、国王夫妻との会談の結果、戦争は回避されることに。数か月後、盛大な結婚式を挙げて、了。アリゼより、ロレシオの心情の方が多く描かれてた印象です。初恋の子云々は絶対にアリゼのことに違いないと思ってたので、早く気が付けよーっとじれじれしました。ので、タイトルの溺愛が始まるのはかなりの終盤。でもまぁ、貴族たるもの政略結婚は避けられないとはいえ、親の関係が冷え切ってると結婚に対して良い印象持てないのも仕方ない。昔のクリスタンヴァル伯爵夫妻の様に、この二人も仲良くやってくんだろうな。評価:★★★☆良くも悪くも外してないストーリーでした。
2022.05.29
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2021年3月刊夢中文庫プランセ著者:彼方紗夜さん好きなのは人よりも鳥とそのさえずり、それから美声。伯爵令嬢のカリーナは結婚適齢期を迎えても社交界から遠ざかり、愛鳥たちと戯れる日々を過ごしていた。しかし、わが道を突き進む妹を心配した兄の「それなら声で決めてはどうか」という発案で、とうとうお見合いならぬ『お声合い』をすることに。そして出会った比類なき美声の持ち主、ジラルド公爵と結婚! ところが幸せなスタートを切ったと思ったら、実はジラルドはとんでもなく寡黙だった! 声が聞きたい、でもなかなか聞かせてもらえない。美声を求めて奮闘するカリーナに、ジラルドの態度はどんどん優しく甘くなるけれど……!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 カリーナ=ヒロイン。マリヴォー伯爵令嬢。自他共に認める『声フェチ』 屋敷の温室にて87羽ものインコを買っていることから、社交界では 「変人」及び「鳥狂い」と揶揄されており、本人も社交に興味が薄か ったためかなりの優良物件ながら行き遅れかかっていた。この度、親 代わりの祖父と兄の懇願により、結婚を決断。声フェチらしくお見合 いならぬ、お声合いにて相手を選ぶとして、3人の候補の中から第一 声を聞いて激しく心惹かれた人物、ジラルドに嫁ぐにとになった。 ジラルド=ヒーロー。エイディアール公爵で、カリーナの夫。 かなりの美声ながら、寡黙の為あまり喋らないので誤解されがち。 言葉にしないことから本心は分かり難いものの、カリーナを溺愛して いる。 ヴィル=ヴィルフレード・マリヴォー。王室付監察官で、カリーナの兄。 早くに両親を亡くした妹の親代わりであり、彼女が行き遅れかかって いることを気に病んでいた。泣き落としに近い形でカリーナに結婚を 決意させ、監察官と言う自らのコネを使って妹への求婚者を募った。 ロイク=オーザンヌ国の王太子。 ジラルドの親友で、カリーナによれば彼もかなりの美声の持ち主。 実はお声合いに参加していた。 ベルタ=サンドワール子爵令嬢。ジラルドに想いを寄せて積極的にアタックを 仕掛けていたが相手にされず、何かと貶めていたカリーナに彼を奪わ れたことから彼女を妬んでいた。ページ数115と言うことで、短編に近いお話ですが、起承転結がしっかりしてて面白かったです。割と早く主役カップルは結婚して、新婚なりにラブラブな生活を始めるのだけど如何せん、ジラルドが喋らないので、カリーナはもしかして浮かれてるのは私だけ?と内心不安だったりします。さすがに、実家のインコたちは連れて来られなかったけれど、彼と結婚出来て幸せ。ジラルドも求婚者だったわけだから、多少は彼女に気があるからだろうし、公爵であり広大な領地を持つ彼が彼女の持参金目当てとは思い難い。でも、彼は彼なりにカリーナを溺愛しており、王家主催の舞踏会に夫婦同伴で参加した際は、自慢の妻を見せびらかしたい気持ちで一杯でした。そんな気分の中、カリーナがベルタの嫌がらせにより、毒薬に近い薬品を飲まされて喉が焼けると言う事件が起き・・・。この出来事が昨今ジラルドの領地で起きてる、特産品に似せた粗悪品の横行と繋がってくんですけど、なるほどそう来たか、と。賑やかなカリーナが一時的とはいえ喋れなくなったことで、途端に屋敷も静かになってしまい、自分のせいだと落ち込むジラルドをなんとか元気づけようと筆談とサインで想いを伝えるカリーナ。前述の通りにページ数が少ないため、黒幕が名前しか出て来なかったのは仕方ないかなぁと。何故、カリーナがインコにハマったのかなど、少し駆け足ながらその説明もされてたし、ベルタのやらかしを目の当たりにして、その後のカリーナの対応が良かったことで事件から数か月後には、他の貴族令嬢たちとも交流するように。書類上は夫婦なれど式は準備期間もあったので、二人は盛大な結婚式を挙げて、了。個人的に私も声フェチなので、ヒロインの気持ちはメッチャ判りました。カリーナと同じく、外見より声が良い方が好み。まあ、ジラルドは外見も整ってたのでかなり掘り出し物だったわけですが、実は彼は数年前からカリーナに想いを寄せていたと言うオチ。ただ、カリーナ自身が、舞踏会に出るより鳥たちと戯れていたいと言う子だったので、ジラルドがアタックしようにも彼女と滅多に会えなかった。そこをカリーナの兄による彼女の求婚者探しを耳にして立候補した彼は、その美声のおかげで彼女の夫の座をGETしたのでした。そりゃ、溺愛するよね。寡黙な人なので、その理由を中々言い出せなかったのがカリーナを一時不安にさせたものの、何とも可愛らしい夫婦のお話だったと思います。評価:★★★★★キャラ、ストーリー共に文句なし
2022.05.27
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2022年3月刊夢中文庫プランセ著者:桧垣森輪さん「生まれ変わったら、今度こそ幸せになりましょう」一国の姫だったルチアは護衛騎士のレイと身分を越えた禁断の恋に落ちた。敵国に攻め込まれる前の最後の夜、二人は愛し合い、そして命を落とした。ルチアは記憶を残したまま現代の日本に生を受け、レイを探し続けてきたけれど、気づけば28歳。これ以上はもう待てない──そう思い始めた頃、勤務先で一際目立つスーツ姿の男性と出会う。全身の毛が逆立つような感覚。胸の奥が熱くなって身体中が細胞レベルで歓喜する。一目でわかった、レイだ! やっと出会えた。私の運命の人! しかし……「誰だ?」──レイともう一度会うために生まれてきたはずのルチア。それなのに、忘れられてる……!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 守時光莉=ヒロイン。物心ついた時から前世の記憶を夢で追体験しており、その 時の恋人にまた巡り会えることを願っていた。だが、アラサーになっ ても一向に会える気配が無く、諦めかけていた頃、前世の彼にそっく りな青年・月咲と出会う。 月咲玲司=ヒーロー。不動産会社の御曹司で、ふとした縁で光莉と知り合う。自 社のプロジェクトによりアパートの退去を余儀なくされた彼女に責任 を感じてか自宅の住み込みの家政婦をするよう提案。しかし、それに は下心があり、同居後すぐに光莉に手を出し恋人関係になる。 ルチア=光莉の前世で、小国のお姫様。 隣国の王子・テオドールと政略結婚する予定だったが、破談となる。 これが引き金となって隣国と戦争となり、国に攻め込まれた際に護衛 騎士のレイと共に死亡。実はレイとは両想いで、死の間際に来世は絶 対に幸せになろうと約束を交わした。 レイ=ルチアの護衛騎士。彼女とは両想いだったが身分違いで結婚が叶わ ず、ルチアは友好の証として隣国の王子に嫁ぐ予定であった。 だが、テオドールが卑劣で残忍な人物と聞き及び、王に婚約解消を 進言。願い通りに破談は叶ったが、王子の恨みを買い戦争となる。 御堂尊=司法書士。テオドールの記憶を持つ。 ルチアにひとかたならぬ執着心を持ち、一目で光莉がルチアだと気付 き今度こそ自分のものにするべくアプローチを仕掛ける。テオドール=ルチアの国の隣国の王子で、彼女の婚約者だった。御堂の前世。 非常に好戦的で残忍な性格であり、それがレイの耳に入ったことから 破談となる。後に腹いせで彼女達の国に戦争を仕掛けて滅ぼした。レイ(猫)=光莉の飼い猫。親代わりの祖父母を亡くした後、ペットショップでレ イっぽいと一目惚れして飼い始めた。転生ものです。前世の記憶を持つヒロイン・光莉。転生した恋人との出会いを待ち続けていたものの、気付けば自分はもう28歳。アラサーになっても恋愛経験ゼロはさすがに痛い。いい加減諦めて、前世の想いは捨て去るべきかと考えていたら、勤め先の倒産を知らされ茫然。仕出し弁当の製造業者だったことから工場は取り壊され、跡地は再開発されるらしいが早々に視察に来ていた不動産会社の管理者を見て、光莉は凍り付いた。レイにそっくりな青年・月咲玲司は間違いなく彼だ。漸く会えて涙が出る程嬉しいが、彼の方は自分を見ても無反応。まさか、あんな熱い一夜を過ごし、死の間際に来世こそは幸せになろうと約束も交わしたと言うのに、露ほどの記憶も無いと言うのか。失業と失恋の二重のショックを受けて帰宅すると、大家から更にとどめの一言。近々このアパートを取り壊すから出来れば早めに出て行って欲しいと言われ、最早どうすればよいやら。せめて親がいればまだ何とかなったであろうが、彼女には親兄弟の類はおらず、親代わりだった祖父母が亡くなってもう数年経つ。家族と呼べるのは飼い猫のレイだけ。取り敢えず、引っ越すにも金は必要。給料が良いらしいキャバ嬢の体験バイトもしてみたが、嫌な思いをしただけで一晩でクビ。しかも、そこでも接待を受けて来店したらしい玲司に会ってしまって気分は最悪だ。だが、翌日、アパートの土地の件で大家に会いに来ていた玲司とまたもや遭遇し、何の因果か彼に恨み言を言ってるうちに手料理を振舞う流れになってしまった。ここ二日ばかりに起こった彼女の災難を聞き、何やら思案していた玲司から、なら彼の自宅の住み込みの家政婦として働かないか?と提案されます。提示された給料も良く、仕事内容は三度の食事の支度と掃除のみ。おまけにレイも連れてきていいと言う。あまりの好条件に同情か?と思わず尋ねると、間接的とは言え退去に関しては自分の会社のせいでもあるし、それは飽く迄建前で本音は一目惚れだと答える玲司。何やら最後は聞き捨てならない事を言っていた気がするけれど、無職の上に住処迄もうすぐ無くなる身としてはありがたい申し出だ。住み込みと言うことで早々に同居を始めると、数日もしないうちに彼の方から手を出され一線を越えた二人はなし崩しに恋人同士に。初対面の時は随分と無関心だったのに、自分を溺愛する彼に戸惑う光莉は、ほぼ三食昼寝付きの様なこの生活は申し訳ないと、彼の受け持つプロジェクトの仮事務所にて事務員のバイトを始めます。だが、記憶はないっぽいけれどレイが転生しているのだ、まさかと思っていたらあの蛇の様な男・テオドール王子の記憶を持つ、御堂が現れて・・・。この後、御堂に付き纏われて光莉はピンチに陥るんですけど、玲司に救われ事なきを得ます。今世では玲司の方が断然立場は上であり、手出しできないよう手回しされた御堂は、光莉への接近禁止を言い渡され悔しがりながらも手を引きました。前世とは違い、彼女を守ることが出来たと満足げな玲司は、しっかり過去生の記憶を持っていたのです。初対面時に気付かなかったのは弁当の製造用の作業員姿だったこともあり、帽子とマスクの完全防備では彼女の目しか見えていない状態だったし、キャバクラの時は確かに化粧が濃すぎて別人状態。彼にしてみれば、まともに彼女の顔を見たのはアパートの下見に来た日。それであの唐突な住み込み話と一目惚れと言うわけか。納得した彼女は改めて、前世からの恋が叶ったとしみじみ思うのでした。で、了。正直、当初は猫が前世の彼かと思わないでもなかった(苦笑)それはそれで新しくていいですけど、そんな機はてらわずにちゃんとヒーローはヒーローだった。王子のねちっこさが気持ち悪くて、前世の時からあんな言動してたならレイも不審に思って裏で調べるよなぁと。なまじ勢力の有る国だったので、彼らの国は攻め込まれたらどうしようもなかったわけですけれど、あんな男に嫁ぐよりはマシと思うべきなんですかねぇ。何にせよ、時間はかかったけど、30歳前に前世の恋人と会えて良かったねってお話。評価:★★★★★3つ半かなと思いきや、ヒーローが結構好みのタイプだったので★4で。キャラ設定重要(`・ω・´)良い意味でありがちでテンプレなせいか先の展開も読めるんですが、転生ものが好きな方はハマるかと。
2022.05.21
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