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2024.06.15
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カテゴリ: マーマレード文庫


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2021年7月刊
マーマレード文庫
著者:西篠六花さん

箱入り娘の朱音に突然舞い込んだお見合い話。父の会社のためと決意するが、結婚前に一度だけでも好きなことをやりたいと、一人夜の街へ。そこで危ないところを助けてくれた秋哉に強烈に惹かれ、一夜をともにしてしまう。連絡先もかわさず別れた二人は、見合いの席でまさかの再会。彼は見合い相手の弟だった。秋哉は、自分を選べと熱く迫ってきて…!?



登場人物
 三上朱音=箱入り育ちの社長令嬢。
      一生に一度の羽目を外した夜に秋哉と知り合う。
 藤崎秋哉=総合商社社長の次男。
 藤崎孝弘=秋哉の異母兄で朱音の婚約者。


設備会社の二代目社長の一人娘・朱音は、過保護で過干渉な両親に逆らうことなく従順に生きていた。そんな彼女の唯一の我儘は就職する事。
当然ながら反対されたが、根気よく説得を続けると目の届く父の会社​ならと渋々ながら許しを得た。特別扱いされたのでは意味が無いと社長の娘であることを隠し、三上メンテナンスの受付業務に着いてから3年が経つ。
そんなある日、社長室に呼び出された彼女は、父から親会社である藤崎コーポレーションの跡取り息子との結婚を命じられた。先方の家族とは近々顔合わせを予定していると話す父を遮り、本人の意思も聞かず事後承諾で勝手に結婚相手を決められていたことに朱音は異を唱えた。
が、箱入りで育てた娘に恋人がいないことなど判っているし、お相手は大企業の御曹司。こういう時の為に金を掛けて育てて来たのだからと言って憚らない。娘の幸せよりも藤崎家との姻戚関係を築く方が父には重要なのだ。帰宅後、母ともこの縁談について話したが概ね父と同意見で話にならない。兄の克基も然り。確かに両親は常々、お前は然るべき家に嫁がせると言っていた。それでも、お相手については少しは本人の希望を聞いてくれる思っていただけにショックは大きい。これって私の考えが異質なの?
どちらにせよ、父の態度からしてこの結婚はもう決定事項らしい。
どうにもできないのなら、今までできなかったことをしてみるのも良いかもしれない。朱音は、この1回だけと決めてその日、夜遊びに繰り出したのだった。

先ずはお洒落なバー。店内で知り合った青年から口当たりの良いカクテルを薦められ、4杯も飲んだら相当酔いが回り、これはヤバイと思っていたら、別の青年に5杯目を止められた。
彼は待ち合わせをしていた風を装うとカウンター席からテーブル席に移動し、朱音に水を飲ませると危ない所だったと告げた。どうやらあの青年が隙をついてグラスに薬を仕込んでいたらしい。デートドラッグというもので飲み干していたらホテルに連れ込まれやり棄てされていたと聞き、一気に酔いが醒めた。近年増えている性犯罪の常とう手段というのは流石に彼女も耳にしたことがある。まさか自分がターゲットにされていたとは。やはり一人で遊びに来たのは早計だったか。
青年は秋哉とだけ名乗り、夜遊びがしたかったという朱音を笑わず、その後も数店舗付き合ってくれた。そんな彼と離れ難く、つい引き留めてしまった朱音は、秋哉に誘われるままホテルへ。夜遊びとは言ってもここまで経験するつもりではなかったけれど後悔は無い。目を覚ますと彼の姿は既に無く、おかげで一夜の夢として胸に秘めておくことができる。そう思っていた。

それから1ヶ月ほど経った頃、両家の顔合わせが行われた。
既に結婚することが決まっているせいか、どちらも家族総出での対面となったのだが、朱音の視線はお相手の孝弘ではなく、斜め後ろにいる眼鏡をかけた青年に釘付け。
どうして彼がこんなところに。
他人の空似かと思いきや、名乗った名前も藤崎秋哉だし紛れもない本人だ。まさか彼が結婚相手の弟だったなんて。向こうも朱音に気付いたようで何だか居た堪れない。
孝弘は優し気な雰囲気で誠実そうな青年という印象、兄弟の割にあまり似てないんだなとぼんやり考えながら顔合わせは終わり。互いの人となりを知るためにも暫くは交際期間を設けてはどうかと藤崎社長からの提案によって決まり、帰りの車の中でくれぐれも孝弘の機嫌を損ねないよう両親から言い含められ頷いた。

一方、秋哉は再会した朱音の態度に内心で憤っていた。
あの夜、どうしても帰らねばならず、連絡先を書いた名刺を置いて来たのに一切連絡はなく、彼女にとって遊びの一環なのだと思い知らされた。なのに、何の因果か朱音は兄の結婚相手として現れた。愛人の子である自分に分け隔てなく接してくれた藤崎家の面々には恩義がある。孝弘の妻になる人が夜遊びの末、男と簡単に寝るような女だなんて以ての外だ。丁度、三上メンテナンスには財務管理の仕事で暫く出向する。ついでに彼女の人となりを調べてみるか。
自分も当事者でありながら、朱音にだけ不実を問うような真似をしようとしていることに秋哉自身全く気付いていなかった。

数日後、三上メンテナンスの財務部で勤務を始めた秋哉は、早々に朱音にきつく当たり彼女を責め立てた。兄との婚約を辞退しろと詰め寄る彼に、今藤崎コーポレーションとの縁を切る訳にはいかないと聞き入れない。孝弘には誠実に接するつもりだと話す姿に一層イラついたが、彼女は社長の娘だと公表しておらず、受付業務を軽視している総務部の女性社員達の嫌がらせのような掃除仕事まで嫌がらずにこなしている姿を見て驚いていた。
融通が利かない所もあるが生真面目で頑張り屋、ほんの数日ではあるものの、朱音は出会った時の印象そのままの人だった。自分は思い違いをしていたのかもしれない。よくよく思えば自分に彼女を攻める資格なんてない。そして朱音に心惹かれていることも。
なら、せめて連絡をくれなかった理由だけ聞いてみよう。そう決意した秋哉は、仕事終わりに朱音をカフェに呼び出すと今までの非礼を真摯に詫びた。そして、彼女の話で連絡先を書いた名刺を目にしていない事を知った。枕元に置いていたので寝返りでも打った際、床にでも落ちたのだろう。そりゃ、連絡しようもないわけだ。色々腑に落ちて、改めて勝手に誤解して酷いことを言ったと詫びた秋哉は、初めて会った時から君が好きだったこと、兄ではなく自分と結婚してくれないかと告げた。

かくいう朱音も、孝弘ではなく秋哉はが相手ならどんなにいいだろうと考えていた。しかし、自分は孝弘の婚約者。相手が兄から弟になるだけで藤崎家に娘が嫁ぐことに変わりはないとして両親は煩く言わないかもしれない。しかし、藤崎家の方は複雑だろう。
秋哉の申し出に二つ返事で頷きたいが、この話はせめて孝弘との婚約が解消してからにしたいと保留にして欲しいと頼んだ。
秋哉は一先ず兄に頼んでみるというので、その日は別れたが、色々タガが外れたのか、その日から彼による猛アプローチが始まった。いや、これ拙いからとなんとか彼を往なしていたある日、父から秋哉に鞍替えするつもりなのかと問い詰められた朱音は無理矢理退職させられた挙句、結納の日まで屋敷に閉じ込められてしまった。昨夜、秋哉からまさかの事態に難航しそうだと連絡を貰っていたので嫌な予感がしていたのだ。彼の話では孝弘は出来の良い異母弟を心底嫌っており、嫌がらせとして朱音との婚約破棄は絶対にしないと言っているらしい。父が激怒していたのは孝弘からの密告のせいであろう。
打つ手なしかと思われたが、秋哉は諦めておらず、兼ねてより調査していた資料を基にある手段に打って出ようとしていた・・・。


略奪婚ものです。
結婚相手との顔合わせ前に出会い、関係を持ってしまった二人。忘れられない人は夫となる人の異母弟。紆余曲折の末、想いを通わせるようになったものの、抑えが効かず朱音に会いたがる秋哉の態度が後半からいきなり甘くなるのでそのギャップがw
婚約者の孝弘はとんでもない食わせもので、朱音のことも弟への嫌がらせに使えると婚約破棄の要請に応じず三上家に秋哉とのことをチクったり裏で暗躍。
最初は本当にいい人風だったので、この変貌には驚きました。
しかし、秋哉は本当にデキる人なので、兄の裏の顔というか、朱音の父と兄を巻き込んで多額の横領をしていた証拠を掴み、彼らを脅します。
朱音との結婚を認めてくれるなら、藤崎社長に黙っててやると言われ、二つ返事で承諾した彼らは一生弱みを握られる羽目になっていい気味。
でも、そのまま不問にするつもりはないと数年後には兄を引き摺り下ろし、自分が後継者になると不敵に笑う秋哉との結婚が決まった朱音のやり取りが描かれてEND

誤解していたとはいえ、中盤までのヒーローの態度が少々鼻につきましたが、ヒロインに惚れていると自覚してからはハイスペックぶりを発揮し頼れる男に。
そんな男に惚れられるヒロインの性格が好感持てました。


評価:★★★★★





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最終更新日  2024.06.15 11:43:12
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