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のっけから、すごいドアップになってしまったが、これは有馬温泉の旅館、銀水荘 兆楽のオリジナルのお菓子、丹波の黒豆の寒天寄せ。有馬温泉土産として、定番すぎて平凡化している炭酸せんべいに変わって推したい。黒豆好き、寒天寄せ大好きのMizumizuなので、この手のお菓子なら気に入るのは当然なのだが、普段、お菓子に関しては、あまり好みが合わないMizumizu連れ合い、Mizumizu母の家族3人が絶賛。なので、お土産にしても好まれる率は高いかと。銀水荘 兆楽は、結論から言うと、素晴らしい宿だった。少し温泉街からは離れているが、いつでも送迎してくれるし、お目当ての温泉は、金泉、銀泉の両方を持っているし、部屋食の食事も、満足のいくものだった。素材の組み合わせが、個性的だが美味しく調和していた。寒天寄せが割合多く出て、そのあたりも不思議とMizumizuの好みに合っている。ここの料理人の方とは、味の嗜好がかなり似ているな、そんな印象だった。やはり、和食はどう考えても関東より関西のがレベルが高い。今回も改めてそう思ったのだった。しかし…温泉旅館というのは、とてつもなくコストがかかる商売だ。温泉の管理も大変だし、料理の質も大事だし、清掃もとんでもなく手間がかかる。中心地から離れていたら送迎もあったほうがいい。今どきならWifiも必要だろう。それでいてあまり宿泊費が高いと人は来ない。銀水荘 兆楽は、すべて揃っていて、それでいて値段も高くはなかった(平日のせいもあるだろうが)。平日とはいえ、それなりにお客さんもいて、といって混んでいるという感じでもなく、泊まるほうとしたら、ちょうどよかった。良質の温泉に入り、美味しい料理を上げ膳据え膳でいただき、のんびりくつろぐ。目的はそれで、他にはない。そんな旅にぴったりの宿。銀水荘 兆楽――リピートしたい温泉宿の1つになった。
2018.07.28
有馬温泉には、長いこと縁がなかった。近くの神戸には何度か観光で行ったことがあるのだが。だが、音に聞く天下の名湯。今回は東京ー山口県のロングドライブの中継地として有馬温泉の温泉旅館を選んでみた。赤みを帯びた泥っぽい濁り湯を金泉、透明な湯を銀泉と有馬温泉では呼んでいて、今回はあくまで温泉重視で、金泉・銀泉の両方を自家源泉として持っている「銀水荘 兆楽」を宿に選んだ。結論として正解だった。温泉三昧で過ごすつもりなら、最適の宿。温泉街からは少し距離があるが、随時送迎をしてもらえる。宿については次のエントリーに譲るとして、有馬温泉の温泉街についての印象を少し。一言で言えば…すんごくこじんまりしてる!さっと見るだけなら30分もあれば回れてしまう。もっと率直に言えば…つまんない!メインの通りの目立つ場所につぶれた店があるのも痛いし、午後5時ですでに閉めてしまっている店もある。お土産屋はさすがに開いているが、炭酸せんべいと山椒ばっかり。炭酸せんべいはあまりにありふれている。有馬温泉に来たことのないMizumizuでさえ、何度もお土産にいただき、すでに飽きている。おまけに使われているのは炭酸でもなく、温泉と何も関係ない重曹だし。山椒はうなぎのかば焼きには使うが、別の食べ方をしようと思ったこともなく、花山椒の佃煮と言われても、そもそも佃煮が個人的にあまり好きではないので、あえてチャレンジしようとも思わない。竹細工の店もあるが、嵩張るものが多く、旅行者には不向き。モダンに改装しておしゃれっぽく頑張ってる店もあるのだが、おしゃれな店ならやっぱり神戸で入りたい。有名な有馬温泉ということで、日帰りで神戸から来たらしい外国人が結構いたのだが、ここはやはり温泉旅館に泊まってナンボのところだと、温泉街を歩いてつくづく思った。しかし、温泉街の宿に泊まっても、これじゃ夜のそぞろ歩きの楽しみは、ほぼないだろう。ひたすら温泉に浸かるのみ? せっかく情緒のある坂や小径のある街なのに。古い温泉街のありがちな雰囲気から、脱却しようとしてうまく脱却しきれないまま、それでも人は来るので何とかやっているが、全体的な「寂れ」を隠せない、そんな感じ。まちづくりを再考しなければ、ますます寂れそうだ。日本三古湯の1つで、実際に浸かってみたらホントに良い温泉だった。これほどの「財産」をもちながら、温泉街がコレじゃ、もったいなさすぎる。もっとオンリーワンのモノを売る店が増えなければ、人々は素通りするだけだ。例えば埼玉県の川越などは、「小江戸」と呼ばれる狭いエリアに、週末には観光客が押し寄せる。食べ歩きの店は長蛇の列になっているところも多い。川越には、行ってみて、その賑わいに驚いた。有馬には、来てみて、逆の意味で驚いた。人々を引き寄せるまちづくり、川越にできて有馬にできないわけがないと思うのだが。とはいえ、有馬温泉という稀有な温泉を持つ町には、やはりオンリーワンの風景も。温泉街でもっとも印象的だった場所。流れ出てくる「金泉」で、神社の石段が赤茶に染まっていた。こうした凄いモノがあるのだから、温泉街の店がもうちょっと魅力があれば…と残念で仕方なかった。
2018.06.19
東京都内の自宅から有馬温泉まで、久しぶりのロング・ドライブ。早朝に出て、新東名を走った。新東名は実に気持ちのイイ道。サービスエリアも充実していて、どこも新しく、トイレも清潔で、お土産コーナーも充実している。やたらとサービスエリアに寄り、各地のお土産を買いこむMizumizu。スイーツ派には、静岡エリアでの「いちこのミルフィーユ like you」がオススメ。駿河湾沼津サービスエリアに寄ると必ず買うお土産品。576 層もあるというミルフィーユが、1枚1枚が薄いせいか、全体として適度に柔らかくて食べやすい。静岡産の紅ほっぺを53%使用したというクリームは、この手のお菓子にしては珍しく、人工的な香料感が少ない。値段もお手頃。いちごのミルフィーユ10個入り【いちご】【ミルフィーユ】【like You】駿河湾沼津サービスエリアは、眺めも抜群。茶畑と市街地の向こうに駿河湾と伊豆半島。上の写真で島のように写っているのが、伊豆半島の一部だ。新東名を走ると、日本の道路も、ただ点と点を結ぶためのものではなくなってきたな、と思う。サービスエリアはちょっとしたエンターテインメントゾーンだし、クルマからの眺めにも、それなりに気を使っている。走ることそのものが楽しい道。高速道路でも、そうなることが可能なのだ。新東名はその先駆的な一例。
2018.06.16
2016年のサミット開催地が三重県志摩市賢島に決まった。と、聞いて思ったのは、「へ~、ここを選ぶとは、さすがに目が高い」ということ。賢島には1度だけ行ったことがある。もう十何年も前のことだ。観光というより、志摩観光ホテルの総料理長の高橋忠之シェフの「アワビのステーキ」と「伊勢海老のスープ」を食べに行ったようなもの。当時は志摩観光ホテルベイスイートなんて豪華バージョンはなく、志摩観光ホテルもかなり時代遅れの印象で(そもそも名前からして古臭い)、高橋シェフの料理を食べに全国から食通が集まってくる、というのがMizumizuの認識だった。有名になるとシェフは独立してしまうものなので、事前にわざわざホテルに、「高橋シェフはいらっしゃいますか?」と確認した。「はい、おりますが?」と、少し驚いたような声が返ってきた。賢島へは鉄道で行った。改札口を出ると、さびれた駅前にねずみ色のバンが停まり、その前にお迎えの男性が礼儀正しく立って待っていた。ホテルは古い造りで、窓もまるでアパートのそれみたいだったが、真珠筏が浮かぶ英虞湾の眺めは、緑の山とせめぎ合って素晴らしく、ホテルの人々の感じも非常によかった。これで設備がもっと豪華だったら、素晴らしいリゾートホテルなのに…と、当時思ったが、今はそれが現実になった。全室スイートルームのホテルも増設されたし、志摩観光ホテルのほうも改装中。サミットも決まったし、再開の折には以前とはまったく違う「お高い」ホテルに生まれ変わっているだろう。「高級」なお金を取る新興のリゾートホテルのサービスには、何かと文句をつけるMizumizuではあるが、ここに関しては不思議と悪い印象がない。設備は古かったが、伝統あるホテルという感じで、それに当時の志摩観光ホテルの宿泊代はかなり割安で、そのかわりフランス料理のフルコースを食べれば値が張るというふうだった。有名な「アワビのステーキ」と「伊勢海老のスープ」を含むフレンチのフルコースは…一言で言えば、「舌にはよいが、胃には悪い」という感じ。良くも悪くも「重い」料理なので、まぁ、一度は食べておくべき高級な料理には違いないが、そう何度も食べたくなるものでもなかった(なので、一度しか行っていない)。あまり知られていないが、カンテサンスの岸田シェフも実は、キャリアのスタートは志摩観光ホテル。http://www.quintessence.jp/chef.html革新的な才能は、伝統の中から生まれる。東京で最年少で三ツ星を獲得したシェフの原点が、高橋忠之シェフの店だというのは、Mizumizuには偶然ではなく必然。賢島は真珠の島なのだが、店のさびれっぷりは哀しいものがあった。宝飾品はある程度、「イメージ」を買うものだと思う。うらぶれた通りの、傾いたような店で売られたら、逆に価値が下がって見える。いくら腐るものではないとはいえ、「いったい何年売れずに残ってるの?」と突っ込みたくなるような真珠のアクセサリーや指輪を並べた、買わずに出たら申し訳ないような人気のない店を冷かして歩くのは、まったく楽しくなかった。真珠に詳しい人間なら、そういうハコに関係なく、モノを見極めることが、あるいはできるのかもしれないが、Mizumizuは真珠通ではなかった(し、今もそうではない)。せっかく英虞湾という景勝地にあるのに、とつくづく残念に思ったものだ。サミットを機に、商店街も洒脱に生まれ変わってくれたらと思う。英虞湾の美しくも特異な眺め、美味しい食材、そしてもちろん真珠という特産品。賢島には世界的なレベルで、一級の観光地になれる条件が揃っている。過去にサミットが開催された洞爺湖のザ・ウィンザーホテル洞爺と沖縄のザ・ブセナテラスも、サミット前からMizumizuのお気に入りのホテルだった。以前に行って好印象だった志摩観光ホテルが、サミット会場となる(であろう)のは、その宣伝効果を考えたとき、非常に喜ばしい。日本だけでなく、世界中から目と舌の肥えた観光客が足を伸ばしてくれれば。その価値は十分にある島だ。
2015.06.08
せっかく伊香保に来たのだから、夕食は取って帰りたい。急に思い立って来た日帰り旅だから、あまり食事処を調べる時間はなかった。石段街で評判のいい店でもあればと食べログをチェック。一部ヤラセがあるとか、食べログだけで高評価で地元では全然知られてない店もあるとか、批判もある食べログだが、ネットの情報というのは、もともと玉石混交。玉を石と言ったり、石を玉と思いこんだりする人もいる。実際に自分にとって「玉」なのかどうかは、やはり足を運んでみなければ確認しようがない。石段街にある店で目についたのが「ティーレストSARA」というカフェだった。名前はカフェだが、投稿で美味しいと書いてあるのは「しょうが焼き」や「週末限定のチーズバーガー」。しょうが焼きにチーズバーガー??なんとも不思議な取り合わせだが、昼がうどんなので、この手の庶民的な味がいいかもしれない。石段街の上のほうにある店は、苦労もなく見つかった。立地は抜群だ。しかし、この入口…食べログを読んでいなかったら、わざわざ温泉街に来て、まずこういう店には入らないだろうなあ…天井の低い店の中は、いかにも作りが古く、置いてあるテーブルや椅子もチグハグで統一感がない。「代官山のカフェだと言っても通じちゃう感じ」と書いている人がいたが…それは、ないでしょう。美味しいという評判を知らずに入ったら(知ってて入っても)、「観念するか」と、諦めの境地でメニューを広げるかもしれない。「いらっしゃいませ」と、それだけ文字にすれば普通だが、若干「木で鼻を括ったような」言い方の女性に迎えられ、「ガタッ」と雑にメニューを置かれる。Mizumizu+Mizumizu連れ合いが頼んだのは、食べログで美味しいとあった2品と、表の看板で「じゃらんのおすすめ」とあったワッフル。まずはチーズバーガー。見た目は普通だ。しかし、一口食べてみて、「んっ!? これは美味しい!?」こういう簡単なもので、「美味しい」と思わせるのは難しいと思う。だが、そうなのだ。まずパンが美味しい。表面がかりっとして中がもっちり。そして肉が美味しい。噛むとじゅわっと肉汁の広がる、上質な風味。惜しみのない厚さで食べごたえもある。言うまでもなく、チーズと野菜とソースも美味しい。つまりは、チーズバーガーをチーズバーガーにしている素材全部にスキがないのだ。こちらが、しょうが焼き定食。ついてるうどんを一口食べて、Mizumizu連れ合い、「ん? 昼のうどんよりうまい…?」あーあ、言っちゃった。昼は水沢うどんの有名店に行ったのに(苦笑)。こちらが、しょうが焼き。いい感じに焼けているが、見た目は普通だ。だが、食べてみると一味違う。厳選素材だというのはメニューにも書いてあるが、濃い目の味付けも、「隠し味は何?」と、聞きたくなるようなひねりが効いている。ありそうで、ちょっと、なかなかない味だ。そして、ワッフル。見た目は、正直、たいしたことない。電子レンジでチンしただけの、シナッとした出来合いワッフルみたいだ。ところが、ところが…あれっ?食べてみると、これが不思議にイケるではないか。予想に反してワッフルは、もっちりといい感じの食感。添えらているアイスもホイップもベリーも、ちゃんとしている。作り手の味のセンスの良さを、食感と味覚で感じられる店だった。結局料理はセンス。しょうが焼きとかチーズバーガーとかワッフルとか、統一感のないメニューを頼んでも、これだけ、そこここに作り手のセンスが感じられた料理も珍しい。「美味しい、美味しい」を連発して完食したMizumizu+Mizumizu連れ合い。支払いのころには、最初は「やっぱり群馬の女って…」と思わされた女性の態度もほぐれてきた。また伊香保に行ったら寄りたい店になった。これだけの料理のセンスなら、他のメニューも期待できそう。
2014.06.03
温泉饅頭の発祥の地は、伊香保らしい。詳しい話は、「勝月堂」のホームページを読むと書いてあるのだが、かいつまんで言うと、明治のころに勝月堂の半田勝三氏が地元の「伊香保に新しい名物を」という声に応えて考案したのが、茶色い温泉の湯の花をイメージした饅頭で、それが各地に「温泉饅頭」として広まっていったのだそうな。温泉地で温泉饅頭を好んで買うかと言えば、そうでもない(苦笑)Mizumizuだが、元祖の勝月堂「湯乃花饅頭」は食べてみることにした。石段街の一番上のほうにある、きれいな店構えの勝月堂。店員も笑顔で、はきはきと感じがいい。バラで1つ買って、店の外でパクリ。感想は…ふつうに美味しいお饅頭ですね。質の悪い饅頭にありがちな、くどさや、カサカサ感はなかったが、特に大感動することもない。それこそ今となっては、よくある温泉饅頭。由来にまつわるエピソードを聞かなければ、ブログに取り上げることもなかったかもしれない。ところが、勝月堂よりさらに上のほう、石段街が終わって、伊香保露天風呂に向かう道の途中に、古い店構えの饅頭屋があったのだ。店にいるのは夫婦2人。その場で製造・販売するスペースがあるだけの文字通り最小限の店。元祖湯乃花饅頭に対抗したのか、元祖子宝饅頭と名乗っている。まあ、ネーミングはどうでもいい。どっちが何の元祖でも。饅頭で大事なのは、味でしょ。こちらでも、当然バラで売ってもらえるだろうと思い、「すいません、バラで買えますか」とご主人に聞くと、「いいですよ。いくつ?」と逆に聞かれたので、「1つ」と言ったら、「えっ」と物凄く不機嫌な顔をされた。「1つじゃ売れない。2つから」ぼそっと言うので、「じゃあ、2つ」と2つ買うことに。バラ売りというのは、通常1つずつ売ることだと思うのだが、この店だけは違うらしい(苦笑)。この露骨な態度と「下の店より安いです」という、卑屈な手書きの宣伝文句に、ハズレかな~ と覚悟したのだが、一口食べて…えっ、これは美味しい!つやつやと黒光りしている皮は、もっちりとした食感が素敵だし、しとやかな風味がしみている。餡も甘すぎず、いい感じだ。ほっぺたが落ちるほど…などとは言わないが、とても好きな食感と味で、もっと食べたくなった。そこで…箱で買いました。賞味期限が短いので、自宅に戻ってから、余りそうな分は1つ1つラップにくるんで冷凍し、後日少しずつ自然解凍で食べた。もちろん、風味は落ちるが、家で食べるおやつとしては十分。知名度から言えば勝月堂だし、店もずっときれいだし、客あしらいも比較にならないぐらい上だが、味で言えばMizumizuは子宝屋に軍配を上げる。本当に手作り少量生産というのが、舌で納得できる。饅頭好きではないMizumizuだが、また伊香保に来たら、必ず「子宝屋」の饅頭を箱でリピートするだろう。
2014.06.02
水沢うどん→伊香保露天風呂→榛名神社→榛名ロープウェイと回って、いよいよ伊香保温泉といえばココ、の石段街にやってきたMizumizu+Mizumizu連れ合い。おお~、賑わっている。「THE温泉町」と言いたくなる、これぞ名湯・伊香保の風情。こちらが伊香保で入ったもう1つの温泉。「石段の湯」。立地の良さで知られる共同浴場。伊香保には「黄金の湯」と「白銀の湯」という2種類の泉質があるのだが、この「白銀の湯」というのがクセモノ。1996年に開発されたもので、成分こそ温泉だが、ほとんど効能はないと言われている。観光客が増え、温泉の供給量が間に合わなくなったことが「白銀の湯」の開発のきっかけ。名湯・伊香保の湯はあくまで古くからある「黄金の湯」なのだ。伊香保に来たのなら、設備はよくても泉質の悪い「白銀の湯」よりも、規模は小さく、清潔度は落ちても「黄金の湯」に入りたい。というわけで、立地もよく、黄金の湯かけ流しだという「石段の湯」を2番目(そして日帰り旅の最後の)温泉に選んだ。石畳の温泉街をそぞろ歩き、饅頭や食事をすませたあとに入浴したのだが、この「石段の湯」、入ってみて意外なことを知った。かけ流しはかけ流しなのだが、なんと「塩素消毒」をしているという。えっ?その表示にかなりテンションの落ちるMizumizu。源泉から遠く、温度が高くないたいめに、雑菌が繁殖する恐れがあるということだろうか? 詳しい人に聞いたわけではないから、はっきりわからないが、かけ流しの温泉が、塩素消毒するとは予想外だった。別に塩素臭がするということはない。言われなければ、単純に源泉かけ流しの100%温泉だと思っただろうから、きちんと表示があるのは良心的(というか、消毒の有無表示は義務だが、全国の温泉施設すべてが、忠実に義務を順守していると思えないのだ)だが、ネットの観光案内では、そこまで書いていないのがほとんど。共同浴場だから混んでいて、温泉地に来たゆったり気分も味わえずに終わった。露天がないのは承知の上だった。最初に野趣あふれる露天風呂に入るから、2番目は体が洗えて、かけ流しならいいだろうと思ったのが、あまりに共同浴場・共同浴場しすぎていて、伊香保まで来た甲斐がない気がしてしまった。こんなことなら、「黄金の湯」を引いている温泉旅館あるいはホテルの日帰り入浴を利用すればよかったかな? しかし、伊香保は水道水を温泉と偽って営業していた温泉旅館が大問題になったことがあり、それがたとえごく一部だったとしても、いまだに印象がよくない。あまり下調べをする時間もなく決めてしまったのだが、立地の良さのほかは、東京からわざわざ来て入るほどの浴場でもなかった。泉質だったら、源泉に一番近い「伊香保露天風呂」が最高だろう(ただし、体を洗ったりはできないが)。伊香保で塩素消毒かあ… 効能豊かなお湯というイメージだったのに… そう考えると、山口に散在している「俵山温泉」「柚木慈生温泉」「(川棚)小天狗温泉」など、素晴らしいじゃないですか。俵山温泉は、旅館のほとんどが内湯をもたずに少ない効能豊かなお湯を守っている。そのすぐれた泉質を、「西の横綱」と言う人もいる俵山温泉の共同湯には、消毒なしのかけ流し浴槽がちゃんとある。柚木慈生温泉は、体を洗うのもやっとの小さな温泉で、お世辞にもきれいとは言えないが、炭酸ガスその他の有効成分を大量に含む、全国でも珍しい泉質。小天狗温泉は、厳冬期に加温するのみの、源泉100%かけ流しの含弱放射能泉。ここも小さな旅館の温泉で、一度入ってどうということもなかったが、「本当の温泉」を守る姿勢が素晴らしい。とはいえ、伊香保の温泉街の風情と賑わいは、見て、歩いて、楽しめた。一晩泊まってもいいかな…という気持ちにもなった。車の通らない道が、温泉街のメインストリートになっているというのもいい。石畳の道を横に折れて入っていくと、旅館がある。こういう立地は最高だろう。古い伊香保町の絵図もあった。それを見ると、昔はこの石段がもっとずっと横に広かった様子。夕方になってくると、宿泊客が浴衣でそぞろ歩き始める。日帰りの身とすると、なんとなくうらやましい。急な高低差のある道の眺めは、変化に富んでいておもしろい。歩いている人にも風情がのり移るようだ。階段を登りつめると、神社があり、その先をさらに歩くと、「伊香保露天風呂」に行ける。やはり東京に住んでいたら、一度は来ないと、伊香保。楽しい温泉街散歩だった。PS:伊香保の「黄金の湯」を引いている旅館は以下:http://www.ikaho-koganenoyu.net/
2014.06.01
榛名神社から榛名湖へ戻る。湖の向こうは、右が榛名富士、左が(たしか)烏帽子ヶ岳。つまりはカルデラ湖、中央火口丘、溶岩円頂丘を見ていることになる。これぞ榛名カルデラを代表する眺め。遠くにボコボコした峰がたくさん見える。実に特異な景観だ。が、感動するってほどでもないんだな、これが。榛名富士の山頂にはロープウェイの支柱が見える。今日はこんな快晴。やっぱりこれは登っておかないと。ということで行くことにした。ところが、榛名富士に近づいてもロープウェイが動いてるのは見えない。道も閑散としている。榛名神社のほうがよっぽど人がいた。「もしかしてもう廃止になったのか?」と不安になる。乗り場に着いたら、観光客が少しいた。時刻表を見ると、あまり頻繁に出ていないのだが、それでも10分後には出るというので待つことにした。しかし、このお客の数は…天候に恵まれたGWの週末にしては、寂しい。白樺湖もこんな感じだったなあ… 榛名湖もやや時代遅れの観光地という印象が否めない。伊香保に来たら、一度ぐらいは来るかもしれないが、それ以上の魅力がないのだろう。それでも、ロープウェイに乗れば、山頂からの眺望に期待は高まる。 午後の日差しを受けてキラキラ輝く榛名湖。これぞまさしく、カルデラ湖と外輪山。ボコボコした峰の間を縫うように敷かれた道。なにかと批判の槍玉にあがる道路行政だが、休日のドライブではこんな複雑な形状の山岳地帯を、こんなに快適に走行させてもらっているのだから、実は感謝しなければいけないのかもしれない。いよいよ山頂に着いた。ところがところが期待に反して、榛名湖があまり見えない。木が邪魔している。これには少しがっかり。そういえばロープウェイのチケットには、「関東平野と上州の山々を一望」とあった。確かに、ソレは見えた。左が相馬山。眼下に広がるのが前橋市街…と、看板に書いてありました。これだけの快晴でも、やはり遠くは霞んでいて、「関東平野が一望できる」というほどでもない。ロープウェイで登る山頂からの眺めというのは、だいたいがこういうものだ。「快晴なら(遠くの)○○が見える」とあっても、見えたためしはない。この手のロープウェイが競うように作られた時期があったのだろう。関東甲信越の山のリゾート地なら、たいてい、どこに行ってもあり、どこに行っても同じような眺望が待っている。山や平野についた固有名詞は違えども。さすがに、飽きてしまった(苦笑)。曇っていたら乗らなかっただろうけど、山頂に来なかったら来なかったで心残りになっただろうから、まあ、行ってよかった…ことにしておこう。
2014.05.31
露天風呂のあとは、温泉街へ…は、行かず、榛名湖方面へドライブすることにした。なにしろ日帰り、温泉街は夕方でも賑やかだが、山に行くなら早い時間のほうがいい。東京で散ってしまった桜が、このあたりでは見ごろだった。ぐいぐい高度をあげて山道をのぼる。あっという間に伊香保の街が眼下に小さく固まった。のぼったあとは、なだらかな高原になる。榛名湖はカルデラ湖。なるほど地形はプチ阿蘇といった感じがしないでもない。気持ちのいい直線道路を快走。思ったより早く榛名湖に着いたので、足を伸ばして榛名神社に行ってみることにした。榛名神社は、榛名湖からは少し下るのだが、それでも相当な山の中にある。きっとこじんまりした神社なんだろうと思いきや…山の中のハズなのに、急に茶屋やら土産物屋やらが並んでいるりっぱな参道が開けた。満開の桜が迎えてくれる。「人々が集う」場所が急に現れた感じだ。摩訶不思議な気分。もしかして、榛名神社って、由緒あるデカい神社なのか? こんな場所に??予備知識ゼロで来たMizumizu+Mizumizu連れ合い。とりあえず土産物屋の駐車場に車をおき、神社の説明を書いた看板を読むと、榛名神社は700メートル歩いた先にあるという。700メートル先!? 何度も言うが、ここは相当の山の中だ。ここから700メートル先って、一体全体どうなってるの?百聞は一見に如かず。行ってみりゃわかるでしょ、ということで歩き出す。りっぱな杉並木の道が続く。よくこんな山の中にこんな道を作ったものだなあ…などと感心しているうちに、道は険しさを増し、視界に岩がちの山肌が見えてくる。途中はこんなトンネルになっている。これが神社へ続く参道? これだけ安全な歩道を作る前は、ここはどんな道だったのだろう? 武田信玄が戦勝祈願したという「矢立杉」(国指定天然記念物)までは約10分ほど。たしかにデカい(苦笑)。この画面の右に写っているのが矢立杉。だが、天然記念物の巨木よりも、周囲の巨岩・奇岩のほうに驚いてしまった。岩がちの山肌を削って流れる一筋の滝。なるほど森厳とは、ここのような場所を言うのか。巨岩の隙間をすり抜けるように階段が作られ、本社へ向かう。奇岩と重要文化財に指定された建造物の織りなす不思議な景観に、すっかり度胆を抜かれるMizumizu。建物には、明らかに日光東照宮につらなる江戸趣味の木彫りの彫刻が施されている。このような山奥のそのまた奥の神社に、運ぶのだって大変だろう。宗教心の篤さというより、財力のある後ろ盾の存在を強く感じた。だが、しかし… 凄いとは思うが、この趣味は、やはり美意識に合わないのだ。ショーグン趣味と言われる日光東照宮が、そもそもそうだから、ここも当然そういう感想になる。「榛名神社」の起源自体は10世紀にさかのぼるというが、今見る形に整えられたのは江戸に入ってから。だが、神社境内で9世紀のものと考えられる遺物が見つかったというから、どういった規模であれ、はるか昔にここに神社が築かれたのは事実らしい。誰がどんな情熱をもって、この地に最初に神社を建立したのか。どうやってこの場所を見つけ、何を感じてそうしたのか。奇岩と巨木と清流が、その答えを知ってる。10世紀まで時間を遡って早回しで見ることができたら、ここほど興味深い変遷を見せる神社も日本にそうないかもしれない。
2014.05.30
夢二記念館で思いのほか時間を使ったあと、いよいよ本来の目的である温泉へ向かうMizumizu+Mizumizu連れ合い。だが、有名な石段のある温泉街はあとに取っておくことにして、まずはちょっとはずれたところにある「伊香保露天風呂」へ向かった。ここは源泉かけ流し。林の中にある、野趣あふれる露天風呂だとか。「かけ流し」を高く評価するMizumizu。いくら施設がきれいでも「循環式」だと、あまり有難さを感じないタイプだ。伊香保の温泉は効能高いとも聞くし、かなり期待して行った。駐車場から露天風呂に行く途中には、飲用の温泉が流れ出ている。一口飲んで…Mizumizu「うっ、まずっ」Mizumizu連れ合い「お、うまい」えっ、美味しいか? こんな温泉そのものの水。とても二口飲む気にはなれませんが…しかし、確かに「効きそう」な味だった。何に効くのかは…調べてないので、わかりません(苦笑)。露天風呂施設は、ひなびた風情。入り口で料金を払い、ちょっとした渡り廊下を歩いて脱衣場に。木造りで、質素な佇まいだが、掃除はきちんとされている印象で、「この値段なら、きれいなほうかな?」と思ったとたん、「わっ、ここ? 汚い!」と、横から驚いた声を出したのは、入り口で一緒になった、華美過ぎない今風のファッションでキメた60歳ぐらいの女性。えっ、汚いですか? 500円以下で入れる公共の露天風呂ですよ? 埃がたまってるわけでも、ごみがあるわけでもない、床がびしょびしょといこともない。この手の露天風呂にしては、悪くはないと思いますが?明らかに、テンションがた落ちのその女性、服を脱いで入ったとたん、今度は、「シャワーもないの?」と、さらにショックを受けた様子。こういう温泉にはまったく慣れていないようで、イヤイヤといった様子で湯舟に浸るものの、「虫がいる」と、もはや辟易と言った顔でそそくさと出て行った。そこまで気に入りませんか? かけ流しのカルシウム・ナトリウム硫酸塩炭酸水素塩塩化物泉。そう聞いただけで十分に価値ある温泉だと思うのだが。浴槽は熱めの湯とぬるめの湯に分かれていて、色は緑がかった褐色。入った感じは、硫黄泉のようにきつい感じはなく、肌当たりはまろやか。林の中の温泉なので、虫が来るのは避けられないが、まだGWなのでMizumizuには気になるほどではなかった。むしろ困ったのは屋根がないこと。日差しが強かったので、岩陰になって直射日光が来ない場所でじっと体を浸すMizumizuだった。解放感、ゼロ(苦笑)。たとえば、草津の「西の河原露天風呂」などと比べると、ずいぶんひなびた、小さな露天風呂で、お湯も見た目ほどには「浸かって感じる」インパクトのようなものはないし、そもそもいくら効能のある温泉でも、一度、数十分入っただけで目に見える効果があるわけもない。いや、一度入っただけで、効果が感じられるお湯も、ある。アトピー体質のMizumizuにとって、一番、即効性があると思えた温泉は九州の「赤川温泉」。別府の明礬温泉にも、立ち寄り湯をしただけ、相当「いい感じ」がした温泉もあった。伊香保露天風呂には、そういった即効性は感じられなかったし、あくまでこじんまりとした質素な野外共同浴場だが、泉質をあらかじめ調べていったせいもあるにせよ、緑がかった茶褐色の濁り湯には、「いいお温泉なんだろうな」という印象が確かにもてた。温度も熱すぎず、ちょうどよかった。湯あたりのようなものもない。わりあいに満足して、露天風呂を後にするMizumizu。とはいえ、もう一度来たいかというと微妙ではある。関東の人間が、北海道にも九州にも行きにくい時代なら、この源泉かけ流しの露天風呂はかなりいい選択肢になるかもしれないが、今は飛行機で気軽に北でも西でも行ける。効能豊かといっても、湯治に滞在できるほど時間に余裕はない。やはり、次は別の選択肢を選ぶだろう。
2014.05.29
竹久夢二伊香保記念館のショップで目に留まった、白地の革の財布。柄のデザインは夢二の作品から取ったものだという。パッと見ただけで作りの良さがわかる。ちょうど明るい色の二つ折りタイプの財布が欲しいと思ってなかなか気に入るものがなかったところだったから、渡りに船とショップの店員さんに頼み、在庫を含めて、いろいろと見せてもらう。1つ1つ微妙に違うのは、浅草の職人さんに依頼して作った文庫革だからだと店員さん。群馬の美術館で売る財布を、さほど数もいない浅草の文庫革の職人に依頼するとは… いいものだとは思ったが、さすがにここはやることに妥協がない。一番インパクトがあったのは傘のデザインで、傘の形と配置がリズミカルで斬新、かつ個性的だったのだが、これを自分が財布として持つと、いつも「雨の日」をイメージしそうなので、最初に候補から外した。最後まで迷ったのは、渦巻きになった蔓(つる)のラインと赤/ピンクの小さな花が印象的なパターン模様、それに苺をあしらった可愛らしいものの2つ。長々と考えたが、結局より大胆な「苺」を選んだ。財布をひらくと、「竹久夢二」のタグが…(笑) もはや立派なブランド。夢二本人が見たら、何と言うだろう。文庫革というのは、姫路で生産される真っ白な革に独特な加工を施した工芸品。白革に型を押し、手作業で彩色を施し、さらに漆で古びをつけるという工程を経て完成する。なぜ「文庫」なのかといえば、江戸時代に文庫と呼ばれた書類箱にこの革を貼り付けて装飾したから。どちらかというと和服の女性が持つものというイメージがあり、色柄が派手なわりには、現代的な感覚に乏しい気がして、これまで興味をもったこともなかったのだが、夢二のあどけないデザインが、「伝統工芸」的な古臭さをうまく消してくれている。それに、使ってみたら、使い勝手がとてもいい。革はしっくりと手になじむし、縫製もしっかりしているので、カードを入れても、硬貨を出し入れしても安心感がある。それでいて、コイン入れの開閉はとてもスムーズ。考えてみると、メイドインジャパンの財布って、Mizumizuはほとんど使ったことがない。革製のフォーマルな長財布はイタリア製を使うが、それでなければ、アジアのどこかで作られた適当なブランド物だ。今回、「夢二絵の文庫革」という思いがけない出会いによって、図らずもメイドインジャパンの財布の良さに気付くことになった。群馬より浅草に近い場所に住んでいながら、知らなかった。持ってみたら案外使い勝手が悪く、ガッカリする財布も多いが、今回は逆の印象だった。明るい色とデザインなので、使って楽しいのもいい。傷んできたら修理もできるという。直しながら長く使おうか。文庫革 箱まち財布(二つ折り財布) 小銭入れやカード入れもついた文庫屋 大関のレディース向け花...価格:16,200円(税込、送料込)手元を美しく演出する、職人こだわりの名刺入れ☆【送料無料】【母の日】【日本製】【本革】手...価格:7,560円(税込、送料込)
2014.05.28
竹久夢二は、特に好きな芸術家ではない。いや、夢二の代表作『黒船屋』の記念切手はかなり好きで、今でも大事に取ってあるから、嫌いなわけではないが、といって、「ゆめじ、ゆめじ」と追っかけさながらのファンというわけでもない。伊香保で夢二記念館に行こうと思ったのも、ほかにあまり行きたい場所もなかったから。旅に出ると、ついでに1つか2つ、観光地にある美術館を訪ねてみたくなるのは、業界の「仕掛け」にうまくのせられているのかもしれない。入場料が高いわりには、たいしたことない美術館も多い。管理が行き届かず、先行きの暗さがアリアリとわかる美術館もあるし、実際、行こうと思ったらもうつぶれてた…なんてこともある。というわけで、たいして乗り気ではなかったものの、「それでも夢二だし、どうせ一生に一回しか来ないし」というつもりで、竹久夢二伊香保記念館へ行ってみた。ヨーロッパの猿真似をした、安づくりの建物かと思っていたら、案外、ハリボテ感はない。新緑と桜越しに見る白亜の洋館は、どうしてなかなか風情があるではないか。ここは本館のほかに、新館もあるとかで、全部見るとかなり大変なうえ、料金も高い。そこまで夢二マニアでもないので、本館だけにするとチケット売り場の女性に告げた。入ってみて、驚く。ただし、今回は水沢うどんの店で感じた、「呆れ」の入った驚きではない。建物といい、夢二時代の照明器具を集めたという調度品(別に夢二がデザインしたとかということではない。ただ同時代というだけだが)といい、相当に上質のものが揃っている。教会の礼拝堂を思わせる椅子の並んだ、広めの部屋で聞かせてもらえるアンティークオルゴールも、魅惑的な音を響かせているではないか。床材はヘリンボーンだし、天井は下にステンドグラスをはめ込んだ二重構造。壁を飾るいくつかのキュリオケースはデザイン様式はバラバラだが、ダークブラウンの木製で統一している。夢二作品も、美人画あり、イラスト風の小品ありで、夢二ファンでなくとも、十分に楽しめた。夢二の作品を引き立てる調度品にも妥協がない。一体、だれがこれだけのものを集めてきたのだろう?? 審美眼の高さと「夢二とその時代」に対する並々ならぬ、真摯な情熱が隅々に漂う記念館だ。大学は上野で、美術を学んだMizumizu。急にアカデミックな血が騒ぎ、「このデッサンはないよなー。着物の中に(立体的な)体がおさまらないじゃない」と、基本的な突っ込みを入れたくなるような作品もあるのだが、色彩の配置やデフォルメされたフォルムの面白さという視点から見ると、実にユニークで魅力的。時代を超えて、夢二ファンが多いのも頷ける気がした。アカデミックな画壇が夢二を認めたがらなかったのも、このデッサン力では無理からぬ面もある。だが、イラストレーターとしての個性は比類がない。上階にあるカフェで、「夢二サブレ」をコーヒーと一緒にいただいて、また驚く。ココナッツの風味が個性的な、ちょっと珍しい、そしてさっくりと美味しいサブレではないか。これ、かなり本気で作ってる。ココナッツの大好きなMizumizu。これは買うしかないでしょう。買ってみてわかったのだが、このサブレ、味もいいが、包装紙から箱に至るまで、夢二作品で埋め尽くされた、実に洒脱な品。包装紙に印刷された、少女の儚げなまなざし。小動物を抱いているところなど、まさに夢二。赤い箱のデザインも夢二作品から。夢二はやはり、優れたイラストレーターだったと思う。原物よりも、何かの装飾やイラストとして印刷されたほうが魅力的に見えるモノもかなりある。サブレはなんとハート形(笑)。サブレを包む夢二イラストも3種類刷ってあるという凝りよう。舌だけではなく、目でも楽しめる贅沢。いや~、参りました夢二記念館。観光地の、観光客を当て込んだ、テキトーな商売だと思ったら、とんでもない。美術館ショップに溢れる、粗悪品にかなりヘキエキしているMizumizuだったが、夢二記念館のグッズは、総じて質がよく、種類も豊富。思わず絵葉書も買ってしまった。有名な「黒船屋」は見られなかったが、赤い頭の鳥の絵がとても気に入った。小動物への繊細なまなざしも、夢二の世界の重要な構成要素。さすがに鳥の絵は、原物のほうがずっとよかった。しかし、この絵葉書、いまどき郵便番号が5桁って…印刷自体は悪くはないが、いいのか、それで?カフェで出された夢二羊羹。抹茶だったのが、まずかった。Mizumizuは抹茶の羊羹が好きでないのだ。夢二のデザインしたキャラメルパッケージ。10年以上前になるが、復刻限定版としてここで発売した当初は、たいへんな人気を集めたよう。実は夢二の時代には、このパッケージデザインはボツになったとか。キャラメルの味は普通でした(←キャラメルも特に好物ではないMizumizuの感想ですので)。黒船屋をあしらったクリーナー。眼鏡を拭いてもよし、グラスを拭いてもよし。案外重宝している。というワケで、夢二記念館で夢二にハマったというよりは、夢二作品を商品化したグッズのアイディアに魅了されたといったほうが正確かもしれない。それは当然、夢二作品に魅力があるからに他ならないが、いかに魅力のあるものでも、それを見出し、付加価値をつけ、世に出す人が必要だ。それはたいていは、本人以外の人間のほうが、うまくいく。夢二は自分の作品を海外に売り込もうとして成功しなかった。だが、この記念館は、夢二作品に魅せられた人が、さまざまなアプローチで夢二の素晴らしさを再構成し、訪れる人に訴えかけている。夢二を芸術家と呼ぶのか、あるいは今風にアーティストと呼ぶのか、イラストレーターと限定するのか、それはこの際たいしたことではない。「夢二っていいでしょう。大正ロマンって素敵でしょう」と語りかける誰ががいる。誰かの熱意が確かにある。ここで夢二以上にMizumizuが感動したのは、その事実だ。
2014.05.27
2014年4月26日、土曜日。世に言うGW初日の土曜日だった。前半は連休が取りにくいカレンダーの並びになった今年のGW。急に思いついて、杉並区の自宅から自家用車で伊香保日帰りをしてみることに。伊香保は実は行ったことがない。草津その他の群馬の温泉に行き、その客商売の、特に女性の態度にヘキエキさせられて避けている。一言で言えば、木で鼻をくくったような物言いの女性に、偶然にしてはあまりに高確率で遭遇してしまう県、それが群馬だ。それが縁もゆかりもない一般人ならともかく、観光業に携わる女たちだから、こちらとしては気分が悪い。それでも古くからの温泉地として有名な伊香保。よく写真で見る石段も風情がある。交通の便はよく、杉並からなら練馬インターで関越にのれば、2時間もかからずに行けるハズ。日帰りにはちょうどいい目的地ではないか? それだけの単純な理由で早起きして出かけた。渋滞は? というのが最大の懸念だったが、結論から言うと、行きも帰りもたいして混まなかった。特に帰りは拍子抜けするくらいスイスイ。むしろ、行きのほうが混んでいた。朝飯抜きで出発し、渋川に着いたのがだいたい朝の8時過ぎ。伊香保温泉にのぼる道を途中で左折して、まずは「水沢うどん」を食べに行った。朝9時からやっている田丸屋へ。時計を見ると、まだ開店まで20分もあった。…早く着きすぎた。一番に店に入る。入って、驚く。「天井、高っ!」うどん屋というより、温泉旅館にでも来た気分だ。靴を脱いで上がる。「すげ~~」とは思いました。思いましたけどね、しかし、うどん屋でここまで見せつけるような造りにされると、どうも…。「どんだけ、(利益)のせてるの?」と思ってしまうのだ、むしろ。トイレに行くのに、庭を眺める渡り廊下を通り、なぜかトイレの入り口が自動ドアで、気恥ずかしくなるような音を立てて開き、そのわりには、そのあと古臭いスリッパに履き替えていかないといけないというのも、どことなくチグハグ。やれやれ、これが北関東の趣味ですか?どうにも美意識が相容れないものを感じつつ、うどん…の前に食したのは、これ。「おしんこ餅」という郷土料理らしい。硬めでやや辛めのみたらし団子…というのが一番イメージが近いかもしれない。本当に手作りらしく、しばらくテーブルの上に置いておいたら、その間にさらに硬くなった。お団子のような粘着性はない。そこが逆にとても気に入った。ひねってあるので、硬いなかにも歯ごたえに変化ができる。それも、ショートパスタの食感を思い出して、おもしろい。だが、見た目以上に重いし、味も辛めに寄った甘辛というだけなので、途中で飽きてしまう。そして、お待ちかねの水沢うどん。実は、水沢うどんも食べたことが、ほとんどない。東京で食べるのは、讃岐うどんが多いMizumizu。天ぷらは美味しくいただきました。野菜と舞茸はよかった。えびは普通。まあ、ここは山だし… しかし、肝心のうどんに…。特段、感動できない自分がいた。いや、もちろんまずいわけではない。しかし、ホームページやパンフレットの宣伝文句が「とても大仰」に思えてしまったのも事実。これなら、近所の讃岐うどんのランチのほうが、かやくご飯もついてくるし、おトクで美味しいのでは?それにタレがやたら辛い。う~ん、胡麻ダレのほうを選ばなかったのが失敗だったのか?こちらは、関西風だというのだが、この出汁の味では、関西人が怒るのではないか? そのくらい、「出汁が弱い」。立派なスペースも、もちろんお代のうちだし、雰囲気が気に入れば、納得できるタイプだと思うが、この変に高い天井とか、渡り廊下とか、庭園とか、お金をかけるにしても、もっと違う方向にかけて欲しいと思うのは…まあ、単に趣味の違いかもしれない。うどん屋の店員さんは、特に感じは悪くないが、といって特別丁寧に扱われたという感じもしない。会計のときなど、さっさとお帰りください、とでもいうような、事務的な態度と口調に、「やっぱりね…」と思う。お土産用に売られていたうどんにも、手が伸びずに去ったMizumizuだった。どうも北関東とはいろんな意味でソリが合わないのかも…そんな予感がした「水沢うどん」だった。次は「清水屋」にしてみようかな。一回だけで水沢うどんenoughと決めるのも、少しもったいない気がする。
2014.05.26
松本に行ったら、桃太楼で栗のお菓子を買って…と、しっかりくだんの店の定休日と営業時間をチェックしておいたMizumizu。なにせ閉店5分前にかけこもうとして、閉まっていた苦い体験があるから(こちらの記事参照)。だが、なんと…!行ってみたら臨時休業の張り紙が!がっかり… つくづくこことは縁がないらしい。隣の土産物店でなんとな~く聞いてみたら、「ああ、身内に不幸があったらしいですよ」とのこと。そ、そうですか…しかたなく、というわけでもないのだが、店構えは非常にきれいで高級感のある店に寄ってみた。その名も開運堂。実にわかりやすい。いろいろなお菓子があったが、どれがどんな味やらわからない。ウロウロ見てまわった末に選んだのが、「真味糖」という、細長い落雁のような和菓子だった。「真の糖の味」とも読める非常にストレートな名前なので、単に砂糖を固めて、そこに山国らしく胡桃を入れたものだろう…ぐらいに思っていた。ただ、甘いだけのよくある味だろう、と。しか~し!その予想はいい意味で裏切られたのだ。和風タッフィー(トッフィー)と説明されていたが、タッフィーのようにベタつかない。ヌガーのようでもありながら、どこかさっくりしている摩訶不思議な歯ごたえなのだ。材料の寒天に秘密があるのかもしれない。もちろん甘いが、単なる砂糖の甘さではない。蜂蜜を使っているせいか、甘味にコクがある。なのに、しつこくない。実に摩訶不思議。もちろん胡桃もしっかり主張してくる。フレッシュなものを使っているのか、野性的だが後に残る嫌味なクセがない。胡桃を散らした白雪のような肌の佇まいもいい。これ、なかなか凄いお菓子では? こんな小さな長方形だが、しっかりした材料の吟味と選択、そして味のセンスが光っている。胡桃と寒天という地方色豊かな素材から、タッフィーに通じるモダンな風味を作り上げる。そう言ってしまえば簡単だが、この独創性は特筆すべきもの。どこにでもありそうで、なかなかない味。そんな言い方がぴったりくる。いや、恐れ入りました。松本はやはり地味に凄い街だ。砂糖と寒天、蜂蜜にくるみのすてきなハーモニー♪信州を代表する銘菓です。開運堂 真味糖(しんみとう)開運堂のホームページをあとで見たら、真味糖はもともとは生菓子なのだとか。Mizumizuが買ったのは干菓子だったが、次は生を食べてみたい。
2014.01.30
何度も訪れる街で、何度も行きたくなる食べ物屋というのは、案外庶民的な店が多い。地元の常連さんに交じって、美味しい文化のお裾分けをいただく。そんな心持ちだ。松本でMizumizu一行のお腹を満たしてもらったのは、「池国」。そして、午後のティータイムを楽しんだのは「おきな堂」。池国は、前回松本に来た時にふらりと入って気に入った店。今回ここに駐車場があることを知った。店の前にはクルマはおけないのだが、道をはさんだ隣の空きスペースを池国の駐車場として利用していいことになっているそうだ。注文した品は前回とほとんど同じ。馬刺し。やっぱり、コレを食べないと。馬刺しに偏見のある関東人の皆さん、騙されたと思って一度是非。柔らかく、生臭さもまるでない。「うちのは冷凍ものではありませんから」と、店のおかみさんが胸を張る。…しかし、冷凍の馬刺しの味を知らないMizumzu(苦笑)。東京では食べないので…しかし、新鮮だということは、もちろんわかる。そして、山賊焼き。この名称、各地にあってそれぞれ味が違うせいか、「信州松本 山賊焼き」とわざわざ地名を冠して呼ぶようになっているらしい。蜂蜜や生姜を醤油に混ぜて肉を漬け込むのがポイント。自分でも作ってみたのだが、うまくできなかった(再苦笑)。前回頼まずに今回頼んでみたのが、ソースかつ丼。見た目は真っ黒で、ものすごくしつこい、こってりした味を想像するのだが、見かけよりずっと甘く、上品な味だ。しかし、すごい量だった。ここはガッツリ系の店。お客も比較的、男性が多い。そして、以前カツカレーを食べて満足したカフェ「おきな堂」へ。これはレモンスカッシュ。平凡なカフェメニューだが、おきな堂は一味違う。レモンの苦味がまったくない。浮かんだ一切れは丁寧に皮がむかれていた。甘味はかなり強いが、さっぱりとした、フレッシュなレモンの香りそのものを楽しめる。銅製のカップというのが、また憎い。カップの周囲につく水滴の見た目の涼やかさと、唇にふれたときの冷たい感触。ゆっくり飲んでも、最後までクールな口当たりを楽しめる。たかがレモンスカッシュなのに、ここまでこだわりをもって、ちゃんと作って出す店も珍しい。手作り感たっぷりのプリン。苦めのカラメルと、バニラの風味高い濃厚なプリンのハーモニーがいい。何度でも食べたい、これも果物系とはまた違った意味で、フレッシュな味。また来よう、池国もおきな堂も。
2014.01.29
車山高原を後にしてドライブを続けるMizumizu一行。朝は曇っていたが、だんだんと天気予報通りに晴れてきて、素晴らしい展望が開ける。一言で言えば、「山々と肩を並べて」走っている感覚。例えば富士山のような、シンボリックに突出して高く雄大な山はないが、ギザギザした峰が折り重なってどこまでも続き、ときおり「下界」の視界が開けて高さを知る…という独特のシナリオが信州ヴィーナスラインには用意されている。早めに出発したせいか、連休でも渋滞にはまることなく、快適にドライブ。来てよかった! 花の時期ならまた格別だろう、このヴィーナスライン。ただし、天気がよければ、だが。澄み切った空気の中、霧の気配もない霧ケ峰を通過。三峰茶屋の展望台まで休まずに走った。木々の傾ぎ方を見ると、風が相当強いのだろう。山に来て、何に感動するか? ここでは緑と青の織りなすグラデーションだ。圧倒されるような山がなくても、山の連なりに感動できる。それが信州の魅力なのだろうと思う。そういえば、八ヶ岳も、どの山がどれがわからない。逆に言えば、どの山がどれでもかまわない。峰々が連なった景観を、あれが八ヶ岳だよと指さされ、なんとなく納得している人が大半ではないだろうか。遠くへ目をやれば、青。そして、蒼… これが信州の山脈だ。扉峠でヴィーナスラインから外れると、急に周囲はすべて緑になる。視界が木々にさえぎられ始める。そうして、ああ今まで高いところを走っていたんだなと実感する。「女神」の世界から、「人」の世界へ。だんだんと景色に生活が入り込み始める。果樹園や温泉を通って、松本に着いたのはなんとかランチタイムに間に合うかどうかという午後の時間。人の住む街はずいぶんと低い、そして暖かいと思った。
2014.01.28
茅野(蓼科)で一泊した翌日は、朝からヴィーナスラインを通って、松本へドライブすることにした。時間的に行くかどうか決めかねていたのが、美ヶ原高原。茅野(蓼科)から霧ケ峰を通って松本へ行くなら、美ヶ原高原の手前にある扉峠から下って行くほうが近い。美ヶ原高原方面からぐねぐねと遠回りして松本へ抜ける道も、地図上ではあるように見えるが、どんな道かわからない。それならば扉峠まで戻ったほうがわかりやすそうだ。有名な美ヶ原スカイラインとヴィーナスラインは、ちょうど美ヶ原にさえぎられるかっこうで、直接的にはつながっていないのだ。途中で土地の人に聞こうと、扉峠ルートと美ヶ原高原ルートを保留したまま出発する。天気予報は「晴れ」だったが、あいにく雲一つなかった前日とは違い、朝から頭上にはやや重そうな雲。茅野からまずは、藤城清治の影絵美術館のある白樺湖へ。湖は絵的には、悪くない。だが、天気のせいもあるにしろ、なにやらうすら淋しい場所だった(苦笑)。白樺湖は全体的に「さびれたリゾート地」という雰囲気に覆われている。廃屋になって放置された観光関連施設が、さらにうすら淋しさに拍車をかけている。街にこういう建物がポツポツあると、他の施設・業者がいくら頑張っても無駄なあがきになってしまう。せっかく湖あり、白樺あり、山ありと自然に恵まれた立地なのに、「あそこもつぶれました」「ここもつぶれました」の景色で、ほとんどすべてが台無しに…観光は各々の業者が競いあうだけではなく、街全体を一体として考えていかないと、もはや立ちいかないのかもしれない。こちらは湖の反対側、車山方面を湖越しに見る位置からの1枚。湖と山と見てる分には、風光明媚だ。街の一部の人工物を見なければ、ね。車山方面にヴィーナスラインを登っていく。眼下に白樺湖。車山高原にはスキー用のリフトがある。夏は高山植物が楽しめるらしいが、あいにく行ったのは秋。寒々しく雲をかぶった山頂を見て、「曇ってるし、寒そう。行く価値あるかしら?」と迷う。リフトから降りてきた女性に直撃取材(笑)すると、「素晴らしいですよ! 是非行ってください」と手放しに薦められた。ありったけの服を着込み、リフトに乗り込む。3人掛けだった。ああ、寒そう…上りは南側に開けた、湿原のパノラマを眺めながら行く。途中で一度乗り換えてから山頂近くへ。北側には、信州の山が幾重にも重なる眺めが待っていた。近くの山は、緑だ。遠くの連山は、蒼い。感動的なグラデーション。『青い山脈』という歌があるが、なるほど山脈というのは確かに蒼いのだ。山頂付近に着いたときは曇っていたが、強い風が雲を吹き飛ばし始めた。下るころに晴天が広がってくる。しかし、残念。迂闊にも軽装で来たから、寒すぎて長居する気になれなかった。雲が取れて、蓼科山が真正面に見え始めた。麓には白樺湖。ここから見れば、あの静かな湖のあたりにゆったり滞在してみたいと思う。広々とした車山湿原、すんなりとした姿の美しい蓼科山、さらに遠くの蒼い山並み。確かに絶景と言っていい。まあまあ晴れてくれてよかったが、もっと雲が遠慮してくれれば、さらに素晴らしいパノラマが広がるだろう。途中のロープウェイ駅のカフェで、ホットココアをいただく。このごろ観光地の食べ物は、どこもレベルが上がっている。旧態依然とした、高いだけでまずい一見客相手の店では、やっていけないのだろう。このカフェも、手作りを謳ったおいしそうなメニューが並んでいた。車山の麓に下りたあと、店のお兄さんにドライブルートを聞く。やはり美ヶ原に行ったら、引き返して扉峠から松本に行くルートが一般的らしい。美ヶ原はちょうど盲腸のようになっていると考えるとわかりやすい。時間的に、今回は無理そうだ。今日のうちに松本も歩きたいし。そいうわけで、美ヶ原には寄らずに扉峠でヴィーナスラインを終えることにした。
2014.01.27
子供のころ、心惹かれていた藤城清治の影絵の世界。Mizumizuが惹かれた理由はおそらく、日本的なテーマを扱っていても、どこか藤城の世界には垢抜けたヨーロッパの気品が漂っていたからだろう。「森」「白馬」「トナカイ」…彼が好んで描くこうした自然の造形物は、およそ日本的ではない。アジアのどこかでもない。海を越えた大陸のさらに西、ヨーロッパの童話の世界からやって来た。「燭台」「鉄の柵や支柱」といった人工物も、その装飾性が日本の伝統的な感覚とは距離がある。やや過剰な曲線美を備えたところは、どこかバロック的なのだ。藤城清治の世界は、子供や妖精を描いても「カワイイ」だけではない。黒い肌や大きな黒い目はどこか異教的で、見方によっては不気味でもある。誰かといても、1人1人はそこはかとない孤独を漂わせている。そうした藤城の世界は、やはり印刷物ではなく、光を通したナマの「影絵」として見るのがいい。挿絵として見ていたころには知らなかった、驚嘆すべき、まさに「輝かしい」美の世界に迷い込むことができる。こうした藤城美が人気を集めているのか、藤城清治のミュージアムは各地にできている。白樺湖にある『世界の影絵・きり絵・ガラス・オルゴール美術館』も、メインの展示物は藤城清治。影絵にも、きり絵にも、ガラスにも、オルゴールにも興味がなくても、どんな人にとっても一見の価値がある。光を通した藤城清治の世界の、精緻で大胆で、輝かしい美の世界には、大人も子供も驚嘆の声をあげるだろう。藤城グッズも充実。Mizumizuもカレンダーやクリアファイルなどをお買い上げ(笑)。しかし、このカレンダー、すわりが悪くて困った… 細かいところが案外粗悪なのが、美術館グッズには多い。販売を企画する人間は、こういうところの質に、もっと気を配るべきだろう。芸術家の作品で人を集めて、その芸術作品の品質にあやかって商売しているのに、こういうところがザツな物品が多いことに腹立たしさを覚える。
2014.01.26
蓼科でのディナーは、イル・ポルトでと予約を取っておいた。 ホームページによれば(笑)、最高の食材を低価格で提供する店だという。雑誌などで紹介されることもあり、行ってみたい店だった。予約は夜の7時半。だが、困った事態が生じた。 縄文考古館と尖石遺跡で思いのほか時間を取ってしまい、他の美術館(山下清の美術館を候補にしていたのだ)に行く時間がなくなり、といって別の観光施設に行くにも中途半端な時間になってしまった。ホテルにチェックインしてみたものの、直前に取れるのはビジネスホテルしかなかったから、くつろげる雰囲気でもない。少し休憩して街に出たが、地元の人が行くようなショップは閑散としていて、旅行気分も盛り上がらず。 蓼科って案外淋しいところだ・・・別荘地として有名だが、日が落ちるころには、山から冬めいた風とともに、静寂と寂寥の帳がおりてくるようだった。あるいは、ここを別荘地に選ぶ人には、それがいいのかもしれない。軽井沢は賑やかだが、俗っぽくなってしまったから。行くところもないので、午後6時前にダメもとでイル・ポルトに行ってみた。予約に空きがあれば、時間の前倒しを頼もうと思って。しかし、甘かったのだ。入口のドアに「本日は予約で満席です」の文字。「これは無理だろうな・・・」と思いつつ入ってみたが、スタッフは全員忙しいと見えて、出迎えにさえ来ない。なんとか手の空いたスタッフをつかまえて事情を話してはみたものの、やはり満席だとのこと。 『千乃壺』のスタッフもそうだったが、顔に「忙しくて余裕がありません」と出ている。これまたダメもとでと思いつつ、「この時間から行けるところはありますか?」と観光案内を頼むMizumizu(苦笑)。案の定、困ったようなほほえみを浮かべ、「さあ・・・」と首をひねるアルバイトらしき女の子。だいたい観光客が行くような店は6時には終わる。つるべ落としの秋の陽は落ちて、灯りも少ない蓼科高原で時間を持て余すMizumizu一行。あとから考えると、諏訪の夜景を見下ろせるスポットがあったのだが、なにせ直前に決めた旅行、 そのときは頭に浮かばなかった。仕方なく、近くのイングリッシュガーデンに行き、「もう暗いし、閉園時間だけれど、ショップだけでも見せていただけますか」とお願いすると、快く無料でどうぞと言ってもらえた。ショップは案外アイテムが多く、手軽なお土産もあるが、なかには、「こんな田舎で?」と思うような(失礼)、高級品が置いてある。なるほど、ここは別荘地なのだ。ゆっくりショップを見てまわり、ちょっとしたものを買って出たが、それでも時間は余っていた。また再び山のほうへ車を走らせてみたが、暗いばかりで宿泊施設以外は何もない。仕方なく、大きめのホテルに入り、またショップを見て時間をやりすごした。ようやく予約の時間がきて、イル・ポルトへ。相変わらず忙しそうなスタッフに案内されて、テーブルへ。昼間なら眺めのいいロケーションのようなのだが(ホームページによれば)、夜は窓の外はただの闇だった。水牛のモッツァレラを使ったカプレーゼ。たしかに水牛のコクがあった。パレルモの市場で、「4日ぐらいしかもたないから」と言われて買った生の水牛のモッツァレラには、もちろん及ばないが、普通の牛乳のモッツァレラにはない、水牛ならではのコクはかなり味わえる。日本の、しかも長野で水牛のモッツァレラが食べられるようになるとは…。ちなみにトマトはごくごくフツーで、そこらのスーパーで買ったような味だった。すべてが最高の食材とは言えないようで…こちらも定番の生ハムとフルーツの盛り合わせ。生ハムは塩気が強く歯ごたえの硬いものと、脂の甘みを感じさせる柔らかめのものと、味わいの違う2枚の風味が楽しめた。自家製らしい。丁寧な、とてもいい仕事をしている。フルーツはごくごく普通。最高の食材って…まあ、いいや。おいしかったしね。ちょっとばかり火入れが長すぎた感のあるフォアグラのソテーと野菜。野菜は文字通り新鮮、そして、この野菜をフォアグラに合わせるの? という驚きも新鮮な一皿だった。ソテーは、やや雑になった感がある。こういう調理のちょっとしたブレに、厨房の慌ただしさを感じてしまった。 だが、まずいというわけでは決してない。フォアグラのソテーはもともと好きなMizumizu。ソースも軽やかなフレンチイタリアンスタイルで、ぬめっとしたフォアグラと野菜それぞれの食感を引き立てていた。自家製ベーコンとゴルゴンゾーラのペンネアラビアータ。ペンネがしっかりアルデンテだったのに、まずは感心する。簡単なようでこれは案外タイミングが難しいのだ。ペンネをこうした絶妙のタイミングで茹で上げてサーブできる店は、東京にもなかなかない。日本人がパスタのアルデンテに、あまりこだわらないせいもあるかもしれないが。自家製ベーコンの味わいは、ゴルゴンゾーラの心地よくも主張の強い香りのなかに紛れて後退してしまったかもしれないが、おいしい一皿だった。アンティパストをプリモがわりに余計に頼み、セコンドはスキップしたMizumizu一行。そのせいもあったのか(たぶん、ないと思うが)、ドルチェをやたらと待たされた。ま、これだけ忙しそうならサービスの低下はある程度仕方ないかもしれない。待たされるのはイタリア仕込みで慣れている(苦笑)し、夜はやることもない。忙しそうなスタッフに催促をするのも気が引けて、おしゃべりをしつつゆっくり待った。写真は撮り忘れたが、『栗の渋皮煮とエスプレッソのプリン 果実のコンポートと自家製ジェラート添え』は、秋らしい素敵なデザートだったのだ。栗のスイーツが好きな方なら満足できるだろう。ただ、別に作るのに時間がかかるようなものではない。やっぱり、単に忘れていただけなんだろうな、忙しいし。慌ただしい表情で、慌ただしく動きまわるスタッフの「余裕のない一生懸命さ」がこちらにも伝わってきて、とてもくつろいだディナーを楽しんだとは言えないが、サービス自体は決して悪くはなく、ハズレたと思った料理も1つだけだった(ここでは言及していない)。すべてが最高の素材だと思って行くと裏切られるかもしれないが、求めすぎなければ十分にアタリの店だといえる。ただ、東京ではない、蓼科なのだ、と思える味がさほどなかったのが残念と言えば残念かもしれない。駐車場には練馬や品川ナンバーのメルセデスが何台も泊まっていた。同じ住所ナンバーに同じメーカーのクルマを見てしまうと、なんだかご近所のイタリアンに来たよう。違うのは凛とした涼やかな夜の空気だけだった。
2013.11.17
尖石縄文考古館のあとは、館のすぐ北側にある与助尾根遺跡(よすけおねいせき)へ。それから道路を挟んで南にある尖石遺跡へ。「ここには何があるんですか?」と博物館の職員に聞いたら、「今は特に何も…」と言われた(苦笑)。行ってみると、確かにただの緑の平地で、発掘されたという石囲炉跡も、ヤケに形が整っていて、ただのキャンプファイヤー場のようだった。与助尾根遺跡の復元住居は、遺跡を見ているというより縄文時代にちなんだテーマパークに来た気分だったし、尖石遺跡はただの原っぱで「遺跡」の雰囲気はない。それでは…と尖石という地名の由来にもなったという「尖った石」を見に行った。石囲炉跡のある平らな原っぱから急な坂を下る。木々の向こうに見え隠れするのは、ごくごく普通の田畑。のどかな田舎の風景だ。そして、長く信仰の対象だったという尖石へ。えっ、これ…?思ったほどありがたくない(笑)。一部人工的に削られたらしい、先の尖った、タダの石だ。「巨石」と説明しているガイドブックや解説書もあるが、それほど大きくもない。尖石の案内板には、以下のような説明がある。この石は、高さ1.1メートル、根本の幅1メートルで、先端のとがっているとこころから、「とがりいしさま」と呼ばれています。古くから村人の信仰の対象とされたものらしく、いつの頃からか傍らに石のほこらが祀られました。遺跡の名前もこの石の形からつけられたものです。 この一帯は、明治25年頃桑畑にするために開墾され、その時、見馴れない土器や石器が多量に出土しましたが、祟りを恐れて捨ててしまったといわれています。また、この土器や石器は、大昔ここに住んでいた長者の残したものであろうと、長者屋敷と呼びならわしていました。 そしてこの「とがり石」の下には宝物がかくされているとの言い伝えから、ある時こっそり村人が掘ったところ、その夜たちどころにおこり(熱病)にかかって死んでしまったとのことです。この石を神聖視する信仰から生じた言い伝えでしょう。 石質は八ヶ岳の噴出岩の安山岩で、地中に埋まっている深さは不明です。右肩の樋状の凹みは磨り痕から人工のものと思われます。縄文時代に磨製石斧を制作した際に、共同砥石に使用されたものとも、また縄文時代は石を貴重な利器としたところから、地中から突き出したこの石を祭祀の対象としたものであろうともいわれています。「亀石」とか「酒船石」のような神秘性やロマンを期待して来たのだが、よく考えれば年代がまったく違う。ここからさほど遠くない和田峠は良質な黒曜石の産地として知られる。石器の材料として古代には貴重だった黒曜石を、この石で研磨したのだろうか?そう考えれば、悠久のロマンに浸れる…人もいるのかもしれないが、残念ながら、あまりピンと来なかった。
2013.10.25
火焔土器の迫力ある造形美が好きだ。蓼科高原には美術館・博物館がかなりあるが、縄文芸術にもともと興味のあるMizumizuが、是非行きたいと選んだのは、尖石縄文考古学館。ここにある『縄文のヴィーナス』が目当てだった。目指す土偶は、考古学館の一室中央のガラスケースに美しく陳列されていた。重要文化財に指定されている『仮面の女神』も同室にある。パッと見には、『仮面の女神』のほうに強い印象を受ける。怪獣映画に出てきそうな迫力のあるカタチと、ずっしりした量感、線を中心に細かく施された装飾。一方の『縄文のヴィーナス』は、一見シンプルで、控えめな印象。だが、前から、横から、後ろから、じっくり鑑賞していくと、最初の印象がくつがえってくる。素朴な造形の中に、『仮面の女神』にはない、モダンで重層的な美意識が隠れていることに気づくのだ。前から見た『縄文のヴィーナス』は、斜めのラインで表現された目が印象的な簡素で小さな顔立ちと、膨らんだ腹部、どっしりした下半身のフォルムの組み合わせが面白い。顔は平板な形に見えるのだが、横から見ると、実はかなり鼻が高く、人の横顔を模したというより、デフォルメして別のイメージに昇華させているようにも思えてくる。Mizumizuは、この横顔になぜか「鳥」のイメージを重ねた。真横から見たときに強く感じるのは「安定感」だ。なにものにも揺るがない「強さ」を、作り手は表現したかったのではないかとさえ思う。想像以上に下半身にボリュームが置かれており、前から見たときには肩と胸の造形に目を奪われて気づかなかった量感が、土偶の下部にぞんぶんに発揮されていることに驚く。後ろから見ると、形は極限までシンプルになる。肩部の丸いふくらみとハート形の尻部は、他の要素を一切廃した「引き算」の美を感じさせるという意味で、現代的ですらある。布を幾重にも巻いたような厚みのある被り物には、線で装飾が施されており、体躯がつるんとした質感ゆえに、線模様の面白さに目が行く。複雑ではなく、簡素で、最低限ともいえる模様だからこそ、その窪んだラインの迷いのなさに感動するのだ。じっくり見れば見るほど、「ボリュームとライン」の織り成す造形の面白さに惹きこまれる。彫刻芸術の原点でもあり、頂点でもあるのではないか。平成7年と、比較的最近になって国宝に指定された『縄文のヴィーナス』。彼女の放つ不思議なパワーにまた触れたくて、一度では飽き足らず、館内の縄文時代にまつわる展示物をつぶさに見たあと、また舞い戻ってきて、なんどもガラス越しに見つめた。どんな人が、なんのために作ったのか…正解の出るはずのない問いの答えを、頭の中で構築してみるのも楽しい。小さな売店には、レプリカも売られていて、案外いい出来だった。一瞬、家に飾りたいとさえ思った。だが、やはり本物の国宝がほの暗い博物館の一室で、浮き立つような照明を浴びながら大切に展示されているさまを記憶に焼き付けておいたほうがふさわしいと思い直して、買わずにおいた。土偶のマグネットなら、気軽に買える。だが、二次元の写真になってしまうと、縄文時代の彫塑芸術のもつ不思議なパワーは消えてしまうようだ。これを見ても、どこがどういいのかわからないのではないか。とはいえ、こんなお遊びなら、楽しい。
2013.10.23
ランチは蓼科の有名カフェハウス「千乃壺」へ。駐車場がほぼ満車だったので、これはダメかとドアからのぞいて店員さんに聞くと、『すごくバタバタしてます』という余裕のない表情ではあったが、庭の席なら用意できるとのこと。駐車場もカフェハウスの下にあるということなので、言われるままにクルマを移動して、少し風の冷たい外のテーブルへ。高原の空気をいっぱいに吸い込みながら外でのランチを…と期待したのだが、大きな道路のわきなので、クルマの音が案外うるさかった(苦笑)。メニューの選択肢はあまり多くない。「信州牛ほほ肉のカレー」一皿と「信州牛ハンバーグ」二皿を3人で頼むMizumizu一行。カレーのほほ肉は、臭みもなく柔らかい。カレーはさらっとしていて、スパイスの香りふんだん。…でも新宿中村屋の出してるレトルトカレーに風味が似ているような気がした…のは、たぶん気のせいだろう。ハンバーグはボリュームたっぷり。粗めのひき肉は食べ応えも十分。ミネストローネも見かけ以上に具だくさんで、しのばせたチーズがとろりとリッチなコクを演出していた。なのだが…サラダの野菜もスープの野菜も、種類がたくさんというわけではない。食べながら、「水菜ばっかり」「にんじんばっかり」と思ってしまう。この偏りが残念。ハンバーグのソースも意外に単純な味だった。いろいろな料理本にも自身のレシピを公開している料理研究家のカフェなのでランチはここでと決めてきたが、ちょっと期待が大きすぎたのかもしれない。ウエイトレスの女性は、本当に忙しそうに働いている。明らかに人手が足りない。店員の慌しさが伝わってきて、こちらもあまりくつろげないのだ。駐車場にとめてあったクルマはほとんど県外ナンバーだった。休日の蓼科の有名店はこうなるということか。それでも、次いつ来るかわからないし、デザートも食べてみようということになった。りんごのキャラメリゼを添えたクレープ。有機栽培の伊那産の小麦粉を使っているという。…だが、シナモンが一部にドバッとかかりすぎていた。いきなりシナモンの粉っぽさと強い芳香が口いっぱいに広がってしまい、しょっぱなでデザートが台無しになった気分。クレープ自体は焼き加減もよく、小麦粉の風味も高かっただけに残念。りんごのキャラメリゼも柔らかいながらも歯ごたえがあり、甘みと酸味のバランスも上品だった。コーヒーも有機豆を使用。今さら珍しくもないと言ってしまえばそうだが、美味しいコーヒーを飲んだという気持ちにさせてくれるクオリティをきちんと備えている。ウィンナーコーヒーとりんごのパイ。パイ生地はさっくりと、そしてかなり厚い。素朴な味で、もちろんまずくはないが、といって、パクパク食べたくなるほどでもなかった。クリームたっぷりだが、特筆するほどの質ではなかった(もちろん、悪くはないが)。…と、とても褒めているとは思えない感想になっているが(苦笑)、インテリアに渋い色の木材をふんだんに使い、天井が贅沢なほど高いカフェは雰囲気もあり、清潔で、気持ちがよかった。このメニューにしては値段も高めだし、驚くような味に出会えたわけではないが、時間が経ってみれば、また行ってもいいかなと思わせる。上質な素材と、作り手の腕のよさは、案外そんなところに出ているのかもしれない。
2013.10.21
晴れた日には、八ヶ岳連峰、中央アルプス、北アルプスが見渡せることが売りの北八ヶ岳ロープウェイ。インターネットで割引券も入手しておいた。100人乗りのゴンドラは満員の人を詰め込み、山頂駅へ向かう。正面に見えるのが中央アルプスの山なみ。このうえない晴天に恵まれ、本当によく見えること。ロープウェイの旅は約7分。録音アナウンスではなく、乗り込んだ乗務員の生の声で景観の説明を受けられるのがいい。中央アルプスの山なみの右に視線を滑らせると、平らな大山が見えた。木曽の御嶽山らしい。それからさらに右を見ると、乗鞍連峰が見える。写真に端にギリギリ写っている峰がおそらく乗鞍連峰の鉢盛山だろうと思う。雪をいただけば見分けも簡単なのだろうけれど、Mizumizuの行った日は、手前の山なみと重なってしまい、乗鞍は印象が薄かった。こちらが中央アルプスから見て左に広がる八ヶ岳連峰。ごつごつした男性的な景観は、ダイナミックで迫力に富んでいる。八ヶ岳というからには、てっきり8つの山の頂があるのかと思い、「どれがそれにあたるのだろう?」などと数えてしまった。調べてみると、「八ヶ岳」という名称のいわれは複数あり、必ずしも8つの峰に見えるから八ヶ岳というわけでもないらしい。山頂駅から見た中央アルプス。高い山の連なりが蒼いグラデーションになって、緑と美しい対比をなしていた。山頂駅を出ると、「坪庭」とトレッキングコースが待っている。山頂駅付近のなだらかな自然景観を坪庭にたとえた呼称のよう。ここは木道が整備され、歩きやすい。途中から急な斜面を登り、「坪庭」から遠くの山々まで続く、一大パノラマを見て楽しむことができる。来てよかったと思える眺めだった。坪庭散策は全周まわっても約30分。ただ後半はアップダウンがきつくなるため、脚に自信のない人は、「ここまでで引き返してください」と掲示が出ている。いろいろと親切だ。山頂駅には、木材をふんだんに使ったカフェもあり、その先には山々を眺められるテラスもあった。こういったロープウェイ施設、古くなってサビついた建物がそのままで雰囲気が台無しになっているような場所もあるが、北八ヶ岳ロープウェイは全体的に綺麗で、建築物も自然景観にマッチした造りになっていた。ヨーロッパの山岳リゾートは、人工物と自然景観との調和をとても大切にしている。そこに学んだのかもしれない。トレッキングをしないMizumizu一行も、十分に楽しむことができた。日本の山岳リゾートもレベルが上がってきたと思えた1日だった。ちなみに12時半ぐらいに麓におりたのだが、ロープウェイ待ちの行列は嘘のように消えていた。
2013.10.20
蓼科高原への入り口、茅野(ちの)駅に午前9時ちょっと過ぎに着くと、まさに雲ひとつない晴天が広がっていた。こんな条件のいい日はめったにない。レンタカーに乗り込むと、すぐに山へ向かうMizumizu一行。ヴィーナスラインにのればそのまま山麓のロープウェイ駅に行くはずなのだが、距離の関係かナビが導いたのはメルヘン街道を通ってヴィーナスラインに途中で合流するルート。メルヘン街道は、どこがメルヘンなのかよくわからない、普通の田舎道だった。渋滞は一切なく、すいすいで目的地である「北八ヶ岳ロープウェイ(ピラタス蓼科)」乗り場に約1時間後に着いた。なんともう広い駐車場はほぼ満車状態。ぐるぐるしたあげく、タイミングよくでてくれたクルマが一台いたので、ようやく停めることができた。スイス風の、まだ新しく見える木造の建物が青空に映える。やはり天気がいいと、わくわく感が違う。クルマを降りて山の空気を吸えば、さらに期待感が高まってくる。職員もチロル風の制服を着て観光客をお出迎え。しかし、ここは日本なのだから、なにもスイスのまねっこをする必要はない気がする。スイス旅行が高嶺の花だった時代の発想だ。本当にこれ以上ないくらいの快晴。少し黄色く色づいた木がすがすがしい。ロープウェイ乗り場に行くと、すでに長蛇の列だった。しまった、せっかく3人なのだから、駐車スペースを探す間に、誰かが先に並んでおくべきだった。「どのくらい待ちますか?」と職員に聞くと、「40分ぐらい」とのことだった(が、結局1時間待った)。観光バスもやってきて、15分もたたないうちに行列はさらに伸び、「ただいま最後尾は1時間半待ちとなっております」とアナウンスが響く。10時に着くか10時半に着くかで、並ぶ時間がかなり違ってくるということだ。並んでいる人の年齢層は高めで、皆かなり本格的な山歩きの格好を整えている。トレッキングをするつもりのないMizumizu一行は、周囲から浮くぐらいの軽装。もう少しあったかい服をもってくるべきだったと後悔する。なにしろ東京は10月というのに30度越えの暑さで、信州の山の気候が想像できなかったのだ。やはりいきなり思い立って来ると、抜けてしまうことがある。ちょっとばかり甘かった。
2013.10.19
このところ休みは九州で過ごすことが多いMizumizu。だが、この10月の3連休の2日目・3日目は、急に思い立って、久々に信州へ足を伸ばしてみることにした。旅のパートナーは今回は母と弟。連れ合いと出かけるなら、ほぼ100%自宅から自家用車で行くところだが、今回は体力面も考えて、鉄道+レンタカーで行くことにした。長野にクルマで出かけると、行きはともかく、帰りはまず間違いなく高速で大いなる渋滞に巻き込まれるからだ。なにしろ数日前に天気予報を見て、信州方面は連休中晴れそうだというだけで思い立った旅。行き先も、まだ行ったことのない蓼科から、だいたい勝手のわかっている松本まで、ヴィーナスラインを通って行ってみようとほとんど思いつきで決めた。レール&レンタカーで、なんとか蓼科高原の入り口「茅野(ちの)」での駅レンタカーの予約は取れた(これが連休の前々日)。松本で乗り捨てることにする。ネットで調べた限り、乗り捨て可能で、追加料金もナシだった。次は列車の指定席が欲しいとみどりの窓口へ行くものの(これが前日)、指定は朝の9時台までいっぱいだという。仕方ない。新宿駅に早めに行って、7時発のスーパーあずさ自由席に座ろう…ということになった。しかし、どのくらい「早め」に行ったらいいのだろう? 始発だし、案外直前でも大丈夫だろうか?ということで、ネットで検索したところ、休日のスーパーあずさ松本行きは非常に混む、新宿から立って乗ってくる人も多数いる…という情報をゲットした。7時発だから、いくらなんでも6時ちょっと過ぎなら大丈夫だろうと早起きして、自宅を出て、新宿駅のホームに着いたのが6時10分ぐらい。「早すぎるかな?」「ホームはガラガラかな?」と思いきや、すでに待っている人がいた。自由席車両の列に並ぶ。前に数人いるものの、これなら座れると安堵して、順番にホームのベンチに座ったりして「スーパーあずさ」が入ってくるのを待った。徐々に人が並び始める。それでも6時20分あたりまでは、行列はそうでもなかったのだ(下写真左)。ところが「30分前に行って並ぼう」と考える人が多いのか、25分あたりから急に人が押し寄せ始めた(下写真中央)。連休中日だから、連休初日よりは人出は少ないハズだが、それでも、始発の松本行スーパーあずさがホームに入ってくるころには、もはや一番後ろがどこなのかわからないくらいの行列になった。「新宿から立って行く人」も確かに多かった。下の写真右は、荷物を置こうとしている人が立っているのではない。座席に座れないから立っているのだ。いったん座ったら、もう車内の通路には人がいっぱいでトイレにも行けないほど。中高年どころか、初老の、山好きと思しき方々も立っている。山梨あたりで降りる人も多いので、早めに来てホームで立つより、ぎりぎりに来て車内通路に立っていても、さほど立つ時間は変わらないということか。それにしても、すごい。事前にネットで情報を探しておいてよかった。ここまで始発が混むとは。というか、そもそも山歩きが目的の人も多く乗る電車で、休日始発が7時というのが遅い気がする。連休中日からの1泊旅行。しょっぱなからこんなに人、人、人… 蓼科高原やヴィーナスラインはどんなことになっているのだろう? 秋の早朝だというのに人いきれの窮屈な自由席車両で、やや心配になるMizumizuだった。
2013.10.18
椿山荘の中には桜はあまりなかった。大きな池の脇に数本と修理中の三重の塔のそばに大木が1本。そのかわり、庭園から神田川沿いの遊歩道にすぐに出ることができ、そこで満開の桜を堪能した。正直、ここより近所の善福寺公園のほうがいい気もしたのだが(苦笑)。それでも、今年は神田川沿いの桜を上からも下からも見たので、それでよしとしよう。どこもかしこも満開の桜。花見のタイミングとしては完璧だった。桜の「超」名所だと、桜を見に来たのか人を見に来たのか、わからなくなってしまうのだが、このくらいの場所ならそれもない。水面に落ちた花びらが流れていくさまも美しい。川がもっときれいならいいのだが。夜になって、庭園内の三重塔の脇の大木を見に行ってみた。風が強く、花を全身につけたまま、きしむような音を立てながら身をよじる桜の美しさは、むしろ恐怖に近かった。
2011.04.10
フォーシーズンズホテル椿山荘の庭園内にある数寄屋造りの料亭、錦水。というと、いかにも高そうだが、入り口のメニューを見たら、ショート懐石で6000円(サービス料・税込み!)という特別メニューがあった。消費マインドが冷え込んでいる昨今、なんとかお客さんに来てもらおうと、どこも必死に工夫しているのがよくわかる。ホテルのコンシェルジュをとおしてディナーの予約を取ってもらい、ついでに、「できれば窓際の席」と指定したのだが、「混んでいて窓際は取れない」と言われた。行ってみると宿泊客ではなく、食事だけ食べに来たといった女性グループも多かった。桜の効果だろうか。錦水は非常に広く、個室がいくつもあった。そのなかの一室が貸切客以外のレストランスペースになっていて、畳敷きの和室にテーブルが並んでいる作りだった。庭園内にあるので、庭の眺めがいいのかと思っていたのだが、レストランスペースとして使っているその部屋からの眺めはほぼゼロ。節電で庭の照明を落としてるということもあるだろうが、「庭園内の料亭」の雰囲気を味わえる眺めのいい部屋は貸しきり客のためのものだとういうことだろう。よく考えれば、そりゃそうだ。6000円ポッキリ(笑)のコースなので、もちろん文句はない。桜豆腐と百合根(右)、湯葉を使ったおひたし、目にも可愛い器。お造りはひたすらウマイ。普段食べているお刺身との違いに改めて唸る。素材はもちろんだが、「切り方」でこうも味が変わるのか。素材を選ぶ目と料理人の技の違いを舌で納得できる日本人に生まれてよかった。花形のカボチャと桜色の豆腐、白っぽい固まりは鯛子。給仕役の若い女の子:「タイコというのは、鯛のお子さんです」。爆笑こちらはMizumizuの選んだ和牛。さっぱりとしたドレッシングのかかった野菜も上品な味で肉とよく合っていた。脇に添えられたゆず胡椒と辛くない唐辛子がアクセントに。Mizumizu連れ合いはきんきを選択。ヒレがピンと立ち、目にも美しい焼き魚。少しもらって食べたが、火の通り具合も最高で、「やっぱり魚料理は日本人でしょ」と確信する。フランス料理でよく、「魚の火入れの具合を楽しんでください」などと言うが、そうやって威張るわりにはムラがあったり、ちょい生っぽかったり、たいしたことがない。しょせん、魚の火の入れ具合の「微妙な巧み」は、日本人にしかわからないのかもしれない。桜海老のご飯と赤だし。これはちょっと田舎臭い味だった。自家製の杏仁豆腐(右)は極上の滑らかさ。左はフルーツカクテル。器は江戸切子。東京は和食の「味」に関しては、たいしたことはないと思うのだ。出汁の使い方が違うのか、あるいはそもそもの味に対する好みが違うのか、やはりながく日本の食文化の中心地だった「西」の洗練にはかなわない。今回もその印象は残ったが、なんといってもこの場所でこの値段というのが破格だと思う。食事のあと、夜風にあたりながら、ほの暗い庭を歩けるゆとりもいい。椿山荘のシンボルでもある三重の塔は現在改修中で、四角い囲いとシートに覆われているのだが(なんだか、建屋が爆発してふっ飛ぶ前の福島第一原発のよう・・・)、園内の桜はライトアップされていた。三重の塔の眺めがないことも、ホテルと料亭の「特別価格」提供の一因かもしれない。だが、サービスは丁寧で十分に満足できるレベル。ホテルのほうも、割引価格とはいえ、高級ホテルの命である部屋のメイクアップサービスに手抜きはなかった。食事の前に使ったタオルは、食事から帰って来るとすべて新しいものに交換されており、ゴミ箱も飲み終わったティーバックもきれいに片付けられていた。だが・・・1つだけ言うと、日本の高級ホテルって、部屋に傷みがあるのにきれいに修繕されていないことが多い気がするのだが・・・今回泊まった部屋もレースのカーテンが数箇所、薄切れていたし、壁の角のクロスがひび割れて剥げていたり、荷物をぶつけて凹んだあとかそのままだったりした。椅子の布地はきれいだったが、ときどきシミがついたままになっている高級ホテルもある。こういうことって欧米の高級ホテルではまずない・・・ように思うのはMizumizuだけだろうか。
2011.04.09
震災および福島原発事故による外国人観光客の激減(というより全滅)、それに自粛ムードの広がりで打撃を受けている日本各地の観光業・飲食業。募金やボランティア活動といった直接的な被災地支援も大事だが、大きな被害を蒙らなかった人間は、自分のできる範囲で経済活動を活発化させることも大切だ。経済が停滞してしまうと、さまざまな方面で悪影響が出る。そこで、これからはフィギュアスケートネタと並行して、Mizumizuが実際に足を運んだホテルやレストランの情報を掲載して、苦悩する業界の「宣伝」に一役買えたらと思う。今日の話題は、桜の開花に合わせて一泊した都内のホテル、フォーシーズンズホテル椿山荘。目白の高台に位置しながら、秩父山系から地下水脈を通じて100年かけて雨水が湧き出してくるという稀有な場所。その地の利を生かして造営された、広々とした自然主義庭園を抱くこのホテルでは、東京都心にいるとは思えない緑と花の織り成す景観美を堪能できる。そのため、都内に住む人をターゲットにしたショートステイプランにも力を入れ、女性を中心に人気を得ているようだ。今回Mizumizuが利用したのは、Travelzoo提供の特別プラン(こちら)。このクラスのホテルとしては、確かに「驚愕」の割引プランだった。これがホテルと庭園の全景マップ。神田川沿いには桜並木が続き、今まさに満開だった。神田川方面から見たホテル。窓の張り出した8階が今夜のMizumizu+Mizumizu連れ合いの部屋。たまたま庭園の眺めのいい、和風インテリアの部屋が空いているというので、そちらをチョイスしてみた。この部屋のウリは、なんといっても檜風呂。水を張って身体をしずめると、檜のいい香りがほんのりと漂ってきた。ベッドなのだが、確かに和風の上質なインテリアが施されている。障子の向こうには張り出した窓がある。フォーシーズンズホテル椿山荘は、シティビューとガーデンビューで室料金が違い、当然ガーデンビューのほうがいい。もちろんMizumizuも、ガーデンビューで予約。こちらは神田川方面の眺め。桜は満開。右は庭園の緑。池のある庭園。起伏に富み、散策すると美しい山道を歩いている気分になれる。こちらが庭園の「底」。湧き水が流れている。椿山荘の名の由来となった椿もあちこちで咲いていた。椿山荘と名付けたのは山県有朋で、山県の出身地である萩から移植された椿もあるのだとか。夕闇が迫ると、暗い庭園と桜の神田川の向こうに、都会らしい風景が広がった。夕食は庭園の中にある料亭、錦水(きんすい)でいただくことにした。
2011.04.08
クルマで行ける富士山の新五合目。今回は五合目まで行かず、スカイラインを御殿場方面に抜けたのだが、富士の宝永火口がよく見えるという水ヶ塚駐車場に寄ってみた。知らないと通り過ぎてしまうような駐車場だが、ここに入ると、本当に宝永火口がよく見える。ここに入らないと、見えない。まさにボロ穴。富士山が頂上から噴火しても、ここで溶岩がかなり溜まりそうだ。「水ヶ塚駐車場からは宝永火口がド迫力」――富士山スカイラインをドライブするときは、思い出してください。スカイラインで御殿場に降りて、Mizumizu母の所有地を見回る。ここに来たのは初めて。現在はMizumizu母とMizumizu従姉妹2人の名義になっている。土地の一部を以前、沼津在住のドクターが買ったという話で、おそらく別荘でも建てようと思ったのだろうが、今にいたるまで何も建たず、荒れたまま。Mizumizu母の代で処分しないと、今度はMizumizuの代、つまり姉弟3人で相続することになり、従姉妹を含めて5人の共同名義になる。ヤレヤレ・・・えらく面倒だ。といって、すぐに買い手が現れそうな場所でもない。御殿場を出て、三島へ走る。駅からさほど遠くない、「元祖うなよし」で食事。三島は水がいいので、うなぎが美味しいのだという。うなよしにクルマをつけると、ドアを開けたとたん、うなぎの蒲焼の匂いがした。これで一人前1900円は、東京の感覚からすると、安いし、量も多い。味も申し分なし。夕方近く、富士山のかさ雲がそのまま頂上から飛ばされたような、はぐれ雲を見た。大渋滞の高速を避けて、三島からは新幹線で東京へ。こだまで1時間、ひかりで30分。あっという間。高速道路の週末1000円は、なんとかなりませんかねぇ。勝手な希望を言えば、高速は無料にしなくてもいいから、半額ぐらいに下げてもらいたい(ホント、勝手な言い分だ・苦笑)。楽しかった富士山への小旅行も終わり。次はどこへ行こうかな。寒くなってきたので、暖かいところがいい。ドルが安いので、ハワイあたりに行って静養したい。と言っても、結局仕事なしに静養だけするのは不可能なので、日本国内のほうが心配がないかな。となると、石垣島あたりはどうだろう。連れ合いに持ちかけると、「こないだチェンマイに行ったばかりじゃない」と、当たり前のことを言われた。ものともせずに粘ると、結局Mizumizuには甘いMizumizu連れ合い。「じゃあ、行くかねえ・・・」とその気になってくれたよう。さてさて、実現できるかどうか。
2009.10.19
日本人の面白いところ――いや凄いところと言ってもいいのだが――は、中産階級の知識欲が旺盛で、どんな分野にでも「マニア」がいることだ。特段おカネに結びつくわけでもなく、それを生業としているわけでもないのだが、ある分野・あるモノに関してやたらと詳しい。そういう人の話をまた、楽しんで聞く人も多い。聞くのが楽しい人は、「知る」のが楽しい人だ。そして、中にはマニアが長じて専門家となり、一目置かれるようになる人もいる。それは「面白いものを面白い」と考えて追求する人と、そういう人を「面白い」と尊敬する人がいて、初めてなりたつ図式だ。面白い人を面白いと認めるほうにも、基礎的な素養・教養は必要になってくる。日本の文化的な強さというのは、必ずしも金銭的に報われなくても、「物事を追求する人」に人々が尊敬の目を向けることにあると思う。いくらマニアックな人がいても、誰もその人に関心を払わなければ、「マニアの文化」は続いてはいかない。そんなことを思ったのは、富士宮にある「奇石博物館」を訪ねたせいだ。岩石鉱物化石を展示する博物館で、「石に興味のある人って、そんなにいるの?」と思いながら行ってみたら、休日のせいか、子供たちで思いのほか賑わっていた。そういえば、オトコノコというのは、案外「石」が好きなのだ。「鉄道」ほどには人気がないかもしれないが、我が家の元オトコノコも、三葉虫の化石などをリビングの棚に飾って、Mizumizuの怒りを買っている。三葉虫の化石ってさ~、キモワルなのよ。なんでそんなものをコッソリ飾ろうとするわけ? ついでにさ~、ミニカーを机周辺に飾るのも、ガキじゃあるまいし、やめてほしいんだけどね~奇石博物館には、博物館設立の由来が、まず最初に展示パネルに書かれている。「感動から始まる!」と題したパネルには、後に奇石博物館の初代館長となる植本十一氏が、山中で珍しい石を見つけ、その鑑定を鉱物学者の益富寿之助博士に依頼したことから、2人の間に交流が生まれ、やがてこのユニークな博物館設立へと結びついたことが記されている。その珍しい石というのは、「龍眼石」。鉄をピカピカに磨き上げたようなきれいな球形の石が、ノミで削ったような平べったい岩の上に乗っている。とても自然にできたとは思えない。出会いと感動を大切にする博物館らしく、入り口に近い展示スペースでは、係員による「カンカン石」「こんにゃく石」「テレビ石」の紹介が数十分おきに行われ、来館者はそれらの珍しい石に実際に触ることができる。カンカン石というのは、鐘のようなよい音のする石。こんにゃく石とは、石なのに柔らかく、ぐにゃぐにゃ曲がる石。テレビ石とは、字の上に置くと、その字が石の表面に浮き上がって見える(透けて見えるのではなく、浮き上がって見える)石。どれも大人でも珍しく思えるモノだ。見たものを石に変えてしまうメドゥーサの伝説よろしく、石に張り付いたまま、今にも飛び立ちそうな姿で石化してしまったトンボの展示もある(写真はこちら)。この石化トンボの写真は、某有名バンドのアルバムジャケットにも使われたとか。実際に見ると、石と一体化したトンボを含めて全体が明るい黄土色で、きらきらと砂粒が輝いており、非常にきれいだった。そのほか、「雨ニモマケズ、風ニモマケズ」の宮沢賢治が、実は筋金入りの鉱物採集マニアで、ハンマー片手に石掘りによく出かけており、その体験が作品に生かされているという、具体例を挙げての説明もあった。ほ~~今も時間ができると、ハンマー片手に鉱物採集に出かけるマニアな人が、日本のどこかにいるのだろうか。インターネットの発達で、誰でもさまざまな情報を簡単に手に入れられるようになった。昔なら、図書館をまわって、古い文献をひっくり返さなければならなかったような話でも、机に座ったままググれば、かなりのことがすぐにわかる。だがその分、「わかりやすい説明」「短絡的な結論」ばかりがはびこり、「わかりにくいが重要なこと」「思考のプロセスの大事さ」がないがしろにされている。あまりに多くの人々が自分で考えることをやめ、「詳しい人にわかりやすく教えてもらおう」としている。ボタンを押して正解を求めようとする人たちだ。すると重要なことは伝播されず(重要なことは、理解するのが難しいからだ)、些細な誤解がデフォルメされて一挙にネット上を駆け巡る。見つかるか見つからないかもわからない、珍しいモノ、未知のモノを求めて、自分の足で山中に分け入り、ハンマーをふるう――そんな原始的だけれど、高い知的欲求をもった「普通の人」、変わり者だと言われても、何か1つのことを徹底して追求するのは楽しいと思っていた市井の教養人。奇石博物館には、今の日本人がないがしろにしつつある「たとえ小さな世界でも、たとえ世間一般の関心を惹かなくても、自分の手で、自分の足で、その世界を深く知ろうとした人」の夢が息づき、継承されている。
2009.10.18
クレマチスの丘は、富士山麓に造られた一大文化コンプレックス(複合施設)。美術館・自然公園・文学館・ショップ・レストランが自然豊かな丘に集結、多くの観光客で賑わっている。クレマチスとはキンポウゲ科の植物。花の名をとったアミューズメントエリアにふさわしく、200種を超える花が季節ごとに咲き乱れ、訪れる人の目を楽しませてくれる。クレマチスの丘は、ベルナール・ビュフェ美術館のあるビュフェエリアと、ヴァンジ彫刻庭園美術館のあるクレマチスガーデンエリアの2つに分かれている。Mizumizu一行が訪れたのは、ガーデンエリア。和食レストラン「ガーデン・バサラ」も美味しいと聞いたのだが、重い食事は取りたくなかったので、軽食の食べられる「チャオチャオ」に。クアトロ・フォルマッジのピッツァを注文。クアトロとはイタリア語で「4つ」、フォルマッジはチーズ。つまり、4種類のチーズをのせたピッツァということ。たいていは、ゴルゴンゾーラの味が主になるピッツァ。ただ、ここのクアトロ・フォルマッジは、リコッタが入っていた。日本のピッツァも、このごろは本場イタリアのピッツァに負けないほど美味しいものが増えた。「チャオチャオ」のピッツァも、十分に合格点をあげられる。Mizumizuは4つのチーズの組み合わせでペンネをよく作る(レシピはこちら)。これもとても美味しい。こちらはもっと本格的なイタリアンを食べるときのための店、「レストラン・プリマヴェーラ」へのエントランス。プリマヴェーラとは、春のこと。花の名を取った丘に、いかにもふさわしい。この店からは、美術館の一部になっている庭園が見下ろせるらしい。ベルナール・ビュフェ美術館は無視して、ヴァンジ彫刻庭園美術館に入館。ジュリアーノ・ヴァンジとは、現代イタリアの具象彫刻家だとか。知りませんでした・・・遠方にせいせいと山の広がる借景が見事。池のある広々とした庭園も芝の手入れが行き届き、爽快な空気とあいまって、心が解放されるよう。この贅沢な空間の中にヴァンジの彫刻が散在している。庭園のほうから見た、ヴァンジ美術館。このハコの中にも彫刻作品が展示されている。コンクリート打ちっぱなしの壁。大きなガラス窓が1つ。この手の美術館、世界のあちこちで見る気がする。パリでもニューヨークでも。ハコの中は・・・当然コンクリート打ちっぱなしの壁。床材には大理石(こういう組み合わせもよくあるなあ・・・)。写真は、空中廊下になっている渡り廊下の入り口。この美術館、建築作品としてかなりおもしろいと思う。切り取られた大きな窓からは庭園が額縁におさめられた絵のように見えるし、こうした空中廊下を通って、下の展示室に移動する際には、彫刻作品を上から、そして階段を降りれば同じ目線から、眺められるようになっている。物凄く贅沢なハコ・・・ただ、ヴァンジの作品は・・・こういう大理石の作品も・・・こういうブロンズの作品も・・・どれもこれも、現代的なわざとらしさが鼻につく。確かに、人間の苦悩や孤独や社会との関わりについて、考えるヒントになりそうな作品だ。だが、いかにも、「ほれ、考えてみろや」と言われているような気がするのだ。このチューブに押し込められた女性の顔なんて、まさしく「いかにも」じゃないの。ここまでカネかけた贅沢なハコに展示するほどのものですか?残念ながら、これが正直な感想。庭園の中のティーハウス。ガーデナーハウスをイメージした。とてもオシャレな空間になっている。やっぱりここは、ハコ、つまり庭園を含めた建築作品のほうが、肝心の収蔵作品、つまりはヴァンジの彫刻より勝っている。美術館に来るというより、クレマチスの丘全体の建築物と自然のハーモニーを楽しみながら食事をし、ついでに気が向いたら収蔵美術作品も1回くらい見てもいい――そんな場所だと思う。
2009.10.17
宿泊したのは、本栖湖にほど近い、森の中の一軒宿「小さなホテル スターティングオーバー」。周囲に民家も何もない細い道をかなり奥まで行くので、途中「ホントに、この道でいいの?」と不安に。迷いようがない一本道なのだが。オーナーによる自称「小さなホテル」は脇に置いておいて・・・こうした宿を、「プチホテル」というのか、「ペンション」というのか、あるいは「オーベルジュ」というのか・・・ハッキリ言って、カテゴリーに当てはめるのは野暮だという気がした。一番そぐわしい印象は、「料理上手な友人の別荘に、泊めてもらった」ような感覚。女性好みのロマンティックな内装の室内。掃除はよく行き届いている。ペンションに泊まると嫌なのは、部屋にバス・トイレがないことだが、ここは狭いながらも両方ある。そして、大きなお風呂もあり、3組しか泊まれないという小さな宿の特権として、貸切で利用できる。小さな子供の受け入れには制限があり、その分、非常に静か。「そこそこのホテル」に泊まると、宿泊客がワサワサして、高級難民キャンプに来たような気分になることがあるが、ここはプライバシーが守られている。「隠れ家」というほどに、大げさなものではない。「3組限定」と聞くと高そうだが、1泊2食付で約1万4000円と非常にリーズナブル。それもこれも、ご夫婦だけでやっているから、できることだと思った。「コストを削る」のではなく、最初から「かけない」ようにする。2人でできる範囲で最大限のおもてなしをする――そういう原則に忠実にやっている。だから、料金とのバランスで考えた満足度は非常に高い。2階が客室。3つしかないせいか、食事以外のときは、他の宿泊客と顔をあわせることもなかった。廊下の脇のニッチ空間には本棚がしつらえてあり、自由に閲覧できる。並んでいる本は、技術者が好んで読みそうなジャンル。ご主人は元技術者かもしれない。そう思ったのは、ご主人の接客態度もある。「いかにも客商売」ではない。あまりお世辞も出ないし、口も軽いほうではない。玄関のドアを開けて入ると、しばらくしてから、ぬぼ~ッと現れた。別に感じが悪いわけではないが、訓練を受けたホテルマンの態度ではない。こうした個人経営の宿だからこそアリなキャラクターだ。スターティングオーバーというのは、ジョン・レノンの曲から取った名前かもしれないが、もともとの意味は、「再出発」。脱サラしてプチホテル経営に転じたオーナー夫妻の思いを込めたものかもしれない。聞いたわけではないのだが、そんな印象を受けた。ディナーは1階の大きなリビングで。席には蝋燭が灯され、ムーディに。飲み物を注文してから出てくるまで、ずいぶんかかった(笑)。なにせ奥様が料理担当(おそらく厨房でも1人で作っている)、ご主人がサーブ担当。2人だけだ。東京だと、飲み物はあっという間に出てきて、「さっさと飲んで、追加で注文してよ」という感じなのだが(苦笑)。前菜は、なすと生ハム。なすにしっかり味がついている。本場のフランス料理は、相当味が濃いのだが、ここの味のしっかり感は、フランスのそれと言うより、関東の和食の味の濃さを連想させた。一応、フレンチのフルコースということになっているが、フレンチ、イタリアン、そして和食のフュージョンという感じ。決して「本場」の料理ではないが、その分、どの年齢層の日本人にも合う家庭的な味になっていて、1つ1つの皿が丁寧に作ってある。ズワイ蟹のコンソメスープは、まろやかでやさしい味。エビとしめじのリゾット。イタリアのリゾットは、向こうの言い方ではアルデンテ、日本的感覚で言うと「生煮え」が多いが、ここのリゾットは、しっかり水を含んで柔らかい。イタリアのリゾットに慣れた舌には、「水が多すぎ」なのだが、たぶん普通の日本人には、こちらのほうが安心だろうと思う。Mizumizu母は、イタリアのリゾットは好きなのだが、しばしばそうとしか呼びようのない、あちらの国の「煮方が適当で硬い米料理」というのは、やはり抵抗があるようだ。Mizumizuはと言えば、芯のあるアルデンテのリゾットでも平気。日本のリゾットは、ゆるすぎる。ちなみに、信州出身のMizumizu連れ合いは、スパゲテッティのアルデンテも、「認めん」という人。たしかに、蕎麦が「アルデンテ」だったら、「生煮えの蕎麦」ということになりそうだ。不思議なタイミングなのだが、スターティングオーバーでは、メインの前に暖かなフランスパンが出てくる。これも2人でやっているゆえの苦肉の策かもしれない。つまり、肉を焼く時間をパンを供することで埋め合わせているということ。ちなみに、パンの味もグッド。メインは子牛。日本は和牛(成牛)が美味しすぎるせいか、子牛は人気がない。ヨーロッパでは、子牛は間違いなく、成牛より高級。育て方もさまざまある。最高級の子牛は、「完全ミルク飼育」。子牛に草を食べさせなければいけない時期に入っても、あえてミルクだけで育てる。与えなければいけないものを与えない、自然の摂理に逆らった飼育方法なので、当然子牛は、長く生きられない。統計によれば、3ヶ月とちょっとが限界なのだという。その限界日の直前に屠殺する。すると真っ白な極上の子牛肉ができるというわけ。パリの星付きレストランで食べた子牛は、溶けそうなほどに柔らかく、極上の味わいだった。日本の子牛は、ここまでのものはないように思える。そもそも子牛は白い。少しピンクがかったものもある(草を与えると肉は赤くなる。飼育方法と屠殺するまでの時期によって肉質は多少変わってくる)が、赤くはない。だが、日本の子牛は、成牛と変わらないくらい赤い肉のものも出回っている。牛肉=赤というイメージがあるせいか、子牛を豚肉と勘違いする人もいる。何を隠そう、Mizumizuも初めて子牛を食べたのは、オランダのフレンチレストラン。当時ライデンに住んでいた父が連れて行ってくれたのだが、「牛だ」と言われて頼んだ肉が、豚肉そっくりに白くて、「これ、豚肉じゃないの?」と、父に文句を言った記憶がある。デザートは、カカオだけで作ったケーキ。普通のチョコレートケーキとまた、一味違う。甘くないのに、濃い感じ。夕食のときは客同士が向かい合うようにセッティングされていたテーブル。朝食では、窓の外の景色が楽しめるように位置を変えてくれる心遣いが嬉しい。朝は、味噌汁がわりなのか、野菜たっぷりのミネストローネ。サツマイモや豆まで入っている! ショートパスタも2種類入っていた。なんと朝から本格的シフォンケーキが・・・。ひきたてのコーヒーを飲んで、朝からすっかり満足。マンダリンオリエンタルのような、ノウハウばっちりの高級ホテルもいいが、こうした個人の力量を最大限生かしてやっている、小さなホテルも大好きだ。料理が美味しい、掃除が行き届いている、設備も最小の中で最大限、お客の求めるものを満たしている。書けば簡単なようだが、こういう宿になるのは難しいのだ。一定のレベルを長い間維持していくのはまた、さらに難しい。経営は決してラクではないと思う。それでも質を落とさずに頑張っているからこそ、ちゃんとお客が来るのだろうと思う。「商売は牛のよだれ」――商売は牛のよだれのように細く長くやるものだということだが、人は欲を出して、ラクに稼ぎたくなったり、面倒になると手を抜いたりする。このホテルには、そうした個人経営のオーナーが陥りがちな欠点が見えない。これからも、このまま変わらず3組のお客様に最高の満足を届けて欲しいもの。絶景があるわけでも、アメニティが充実してるわけでもないが、また是非リピートしたい宿。
2009.10.16
白糸の滝から、途中盲導犬センターに寄り、本栖湖へ向かう。本栖湖へ北上する道は2車線で、あいにく片方の路線をまるまるつぶして工事が行われていたせいで、大渋滞だった。ウィンドサーフィンの帆が湖面を滑っていく。蟻が羽虫を曳いていくよう。本栖湖の周りは、クルマで一周できる。この道は、北海道の洞爺湖に似ている。山に隠れていた富士山がヌッと顔を出す瞬間は、感動的。しばらく走ると、富士がその全貌を現わし・・・やがて、旧五千円札の富士になる。本栖湖を離れてさらに北上、鳴沢氷穴へ。ここは竪穴環状形の溶岩洞窟。急な階段をくだる。途中、身体を相当かがめなければ通れない箇所もあり、ちょっとしたアドベンチャー気分。穴の底部には、氷の貯蔵庫がある。どこまで続いているかわからない細い横穴もあった。伝説によれば、江ノ島まで続いているという(そりゃ、ないよ)。氷穴を出て、しばらく走り、樹海を切り開いて作った71号線を走る。このあたりは、北海道の摩周湖周辺の道に似ている。うっそうとした木々の間を走る道は、渋滞もなく気持ちがいい。樹海の向こうに見える本栖湖。今年の東京は暑く、10月なのにまだTシャツ1枚で過ごせる日も多い。ススキの穂を見て、ようやくもう秋だと実感。
2009.10.14
「祝祭日の高速道路料金が1000円に」と聞いたときには、胸が高鳴った。こりゃ、週末ドライブし放題だわさ。ところが、蓋をあけてみれば、「1000円日に巻き起こる高速大渋滞」。渋滞にビビッて、逆に遠出ができなくなった。といって、週末以外に高速にのるのはまた、微妙にシャクだ。なので、ますます遠出ができなくなった。さて、この週末の3連休。「富士山を見に行こう」と決めてお出かけ。「1000円渋滞」を避けるために、東京から三島まで新幹線。そこでレンタカーを借りることにした。三島までは「ひかり」で30分、「こだま」で1時間。あっという間だ。三島駅のホームに降り立って感じたのは、「う~ん、空気がおいしい」地方の方は、毎日この空気をお吸いになっていらっしゃるわけで・・・とっても、贅沢なことだと思います!こちとら、東京の汚れた空気を吸い、毎日セカセカと時間に追われて仕事をしている。地方に行くと、それだけでいきなり、時計の進みがゆっくりになったような気がする。レンタカーでまず向かったのは、白糸の滝。ここは3度ほど来ている。滝自体は、美しいと思うのだが、そこにたどり着くまで、いや、たどり着いてからも、やたらとお土産屋(兼軽食屋)が並ぶ。個々の店主の事情があるとはいえ、こうした日本の観光地の風景にはいつも、「どうにかなりませんか」と思う。日常的な「商売」を持ち込むことで、白糸の滝の自然美、その神秘性が損なわれている。もっと秘められた雰囲気を出すよう、ここで商売する人たちがまとまって思案したうえで、それなりの演出をすれば、外国人にも十分アピールできる観光スポットだと思うのだが、今のこの状態では、ひどく俗っぽく、安っぽい。白糸の滝から田貫湖へ。朝のうちは少し寒く、雲を羽織っていた富士も、お昼あたりになると、季節外れの気温の高さに驚いたのか、思い切りよく雲を脱ぎ捨てた。裸になった富士山。大沢崩れもよく見える。田貫湖のほとりは、気持ち良さそうなキャンプ場になっている。こうして家族連れが平和な休日を楽しんでいる風景は、何よりMizumizuの心を喜ばす。何気ない幸福がもたらす幸福。それに替わる幸福はない。この日の主役は、間違いなく、この青い空。逆さ富士の見える田貫湖の国民休暇村で、水出し珈琲を飲んだ。
2009.10.13
連休を利用して、1泊旅行に行ったMizumizu。さて、どこに行ったでしょう?ヒント1ヒント2ヒント3ヒント4ヒント5詳細は明日以降に、ゆっくりと。ご期待あれ!
2009.10.12
夜は馬刺しが食べたいな、と思った。なにしろ、東京ではあまり食べる機会がない。松本ではあちこちに「馬刺し」の看板が出ている。だが、酒のつまみという感覚なのか、馬刺しがある店はいかにも居酒屋風。連れ合いがお酒がダメな人で、しかも酒場のガヤガヤした雰囲気も嫌いなので、定食屋風で馬刺しのある店を探した。…とはいっても、ホテル周辺にそもそもあんまり店がない(苦笑)。暗い道を歩いていると、夜になって底冷えが厳しくなった街は、東京より確実に1ヶ月は冬に逆戻りしている。人通りも少ない。寂しいなぁ。やっぱりゴーストタウンみたい。たまたま見つけたのが、「池国」という店。暗闇に浮かび上がる民芸調の店構えに雰囲気がある。メニューを見たら、お酒もあるけれど、鍋や定食もあって、単品での馬刺しもある。引き戸を開けて中に入ると、とても家庭的な雰囲気。お客さんもだいぶ入っていて、みんな鍋をつついている。アタリそうな予感♪♪値段そのものは、東京と比べてそれほど安くはない。蜂の子って、あの蛆虫みたいのだよね? あ~、食文化に偏見もつのはいけないが、あれだけは勘弁してほしい。それに、イナゴがメニューにあるってのもスゴイ。だが、長野で生まれて育った連れ合いによると、少年時代、かーちゃんに言われて田んぼに行き、虫獲り網でイナゴを捕まえてくるのは彼の役目だったとか。そして、家に持って帰ると、かーちゃんがフライパンで炒ってくれたという。ほ、ほんとか?Mizumizu「た、食べたの?」連れ合い「食べたよ」Mizumizu「どんな味」連れ合い「甘辛くて佃煮みたいな味」Mizumizu「…」連れ合い母が若いころの話はもっとスゴイ。おやつにそこらの蛾とか蛇(青大将)をつかまえて、火に投げ込んで食べてたとか。蛾のような昆虫系統は羽をむしって手でもんで火にくべるのが美味しく(??)食べるコツだそう。青大将は、連れ合い母的にはまずいらしい。この話を東京に来て同年代の女性に話したら心底驚かれたことに、連れ合い母は驚いたらしい。つーか、ふつう驚くだろう、そのおやつ話そういや、連れ合いは、「子供のころ、土壁の家ってあったよね~」などと言ってMizumizuを驚かす。土壁の家? はて? 見た記憶はないなぁ。キミはいつの時代のヒトやねん。1つ年下のハズですが。さてさて、池国では、「馬刺しのハーフ」「山賊焼き定食」「焼肉丼」を頼んでみた。しょうが醤油につけていただく馬刺しはとてもグー。東京ではどうして食べないのかな。なんとなく…だが、東京の人間は馬を食べるということに、多少抵抗があるような気がする。そして、予想外のヒットだったのが山賊焼き。すごい山盛りのごはん…(苦笑)。高校球児じゃないんだから… 松本のヒトってみんなこんな山盛りごはんを食べるの?山賊焼きというメニューも、あちこちで見るのだが、食べたことなかった。連れ合いにとっては懐かしい味で、店屋で食べるというより、肉屋で買ってくるモノだったらしい。しょうが、ニンニク、蜂蜜などを入れた醤油に鶏肉をつけこんで、片栗粉をまぶして揚げたものらしい。ってことは、山賊焼きじゃなくて、山賊揚げじゃないの? その場合… もっと言えば、唐揚げのバリエーションだと思ふなぜ「焼き」なのかはともかく、食べてみたらことのほか美味。う~ん、恐るべし松本。食べ物にハズレがない。以前、松本一のフレンチの店というところに行って、たいしたことなかったので侮っていたが、ふつうに庶民が食べるものがこれほどおいしいとはオドロキ。すなわち、それだけ食文化のレベルが高いということだ。ちなみに焼肉丼は、甘辛く味付けしたつゆがたっぷりしみこんだごはんに、豚肉とタマネギ、それに青いものが少しのっている。こちらはまあまあかな。個人的には山賊焼きのほうが好きだった。ふらっと入った店だったのだが、満足・満足。軽井沢もこのくらいおいしいといいのに。あそこはホテルはそれなりのがあるが、街や店がもう原宿化しすぎている。松本は正直、今回ホテルはあまり… カフェのおばさんは「素敵なところ」と言っていたけど、あれはたぶん外から見てるとそう見えるだけだな。まだ新しいし、場所もいいし、値段も安いし、それほど悪くはないが、ハッキリ言って、リピートはしない。
2009.03.25
見逃されがちだが、日本という国には、田舎の細い路地にいたるまで町がとても清潔だという美点がある。松本も観光客の来ないような住宅街の路地に迷い込んでも、道にゴミ1つ落ちていない。こういう国は、実はそう多くはないのだ。ホテルでもらった絵地図がわかりやすくて助かった。街の見所もいろいろ書いてある。「懐かしい雰囲気の路地」と書いてあるあたりを歩いてみる。店先のディテールに、思いがけない美しさがあった。人目に触れる小さな空間を、さりげなく飾って演出している。馬刺しって、そういうえば、東京では食べないなぁ。北海道の札幌にいたころは、ときどきスーパーで買っていたけど、東京のスーパーではあまり見ない。澄んだ湧き水がきれいだった。ウチの近所のドブ川の善福寺川とはえらい違いだ。「タウンスニーカー」という市内バスで松本城の近くまで戻る。絵地図で「大正ロマンの町」と書いてあるエリアに行ってみる。すると、東門の井戸のあたりで、ヨーロッパ風の建物に出会った。鉢の置き方にもセンスがある。喫茶もやっているようなので、入ってみたら、「舶来小物」が売られている中に、大きなテーブルが2つ。コーヒーを頼んだら、「いただきものですが」といって、カステラまで出てきた。「XXのカステラ」とちゃんと提供先の店まで言ってくれる律儀さ。残念ながら、何て店だか、聞いてもすぐ忘れてしまったケド(笑)。これで300円!? クラクラ… 安すぎる。コーヒーはアメリカンながら、ちゃんと淹れてる香りがした。使っている食器もおしゃれだし、カステラもちゃんとしたところで作ったやさしい味。スーパーやコンビニで売られてるモノとは違う。松本の和菓子屋では、案外カステラをよく見る気がする。東京では自家製のカステラ置いてる和菓子屋ってあまり見ない(カステラ専門店で、カステラだけを売っている感じ)ので、軽いカルチャーショックだった。支払いをしようと、財布を見たらあいにく1万円札と細かいのは200円しかなかった。「すいません、1万円でいいですか?」「あっ… 細かいの、ない?」しゃきしゃきしゃべるおばさんだ。「すいません、たまたまなくて」「あらあら、こっちもお釣りがないのよ」えっ… ど、どうしよう?「じゃあ、いいわ! あとで持ってきてくれれば」は? 客にあとから持って来いって? そうやって帰してしまっていいのか? 一見の観光客だぞ。「何時までやってますか?」「5時まで!」ご、ご、5時? 喫茶店兼店舗が午後5時に閉まるの? おきな堂の6時閉店にもびっくりしたが、その上を行ってる!5時に早々と閉まっちゃったら、仕事してる人は来れんじゃん。時計を見ると、すでに午後3時を回っている。「ご、ごじですか…」戸惑ってるMizumizuを見て、「あ、もし閉まってたら、ここ(と、ドアのほうに移動して)の隙間から投げておいて」と、じゃんじゃん一方的に指示する女主人。いーのか? どこから来たともしれない観光客をいきなりそんなに信頼しちゃって取りっぱぐれても。「じゃあ、とりあえず200円お支払いして。ホテルはアルモニービアンというところですから」「あるもにー…? あ、勧銀だったところ?」確かにホテルは、もとは銀行の建物だったと聞いていたので、「あ、そうです。たぶん」「ま~。素敵なところに」宿泊先を告げてみたのは、もしかして、「あ、じゃあ夜にでもホテルに取りに伺いましょうか」と言ってくれるかな、と思ったからなのだが、そんな気は毛ほどもないらしい。どこかの店でちょっと買い物してくずして持ってくればいいやと、とりあえず100円借金して店を出た。額の大小にかかわらず、借金が大嫌いなMizumizu。「キャッシング」だとか「リボ払い」なども大嫌い。利息を取る以上、借金の言い方を変えただけじゃん、あんなの。家もキャッシュで買った人間なのだ。「借りてるお金がある」「早く返さなくちゃ」というのが精神的に負担になって、それ以外のことが考えられなくなる性格だし、そもそもMizumizuにとっては、借金してまで欲しいと思うようなものは、ない。店を出て、お土産を売ってる店を捜したのだが、案外ない。気がついたらホテルのある大名通りに戻っていた。ホテルは午後3時からチェックインできるので、いったんホテルに戻り、少し休んでから近所のお土産屋で蕎麦を買い、万札をくずして、喫茶店まで行った。午後5時ちょっと前だったのだが、すでに店は閉まっていた(苦笑)。だが、ドアから覗くと女主人がまだいて、こちらに気づいて開けてくれた。お金を受け取り、「どうも」と言って、あっさり店の奥にひっこむおばさん。「わざわざありがとうございました」「どうもすいません。ご迷惑おかけして」なんていう一言もなかった。東京の人間なら、そこまで思ってなくてもオーバーにお礼を言いそうだ。なんか、不思議(苦笑)。
2009.03.24
早春、3月、松本。連休を利用してクルマで行ってきた。東京から長野県の松本までは200キロ以上ある。100キロ以内だと高速料金が休日割引で半額になるので、途中山梨(つまり東京から100キロ以内にある料金所)でいったん高速を降りて、またしばらくしてから高速にのるという、我ながらあまりにビンボーくさい知恵を働かせてみた。おかげで、高速料金はかなり安くすんだ(えっへん)。松本城のあたりは、電柱を埋めているせいか、街の風景がとてもスッキリと落ち着いて見える。この街独特のゆったりとした風格が気に入っている。白壁の蔵など見て歩き、以前来てたまたま入り、すっかりファンになってしまった「時代遅れの洋食屋 おきな堂」へ行ってみた。2000円食べると駐車券1時間分がもらえる…ちょ、ちょっとハードル高くないですか、田舎なのに。西銀座駐車場なんて、東京のド真ん中で2000円で2時間だぞ。前回たまたま食べて細かい衣サクサクのカツカレーが気に入った。今回もそれにしようかどうしようか迷ったのだが、「チキンを揚げたばんからカレーが人気メニュー」とウエイトレスのお姉さんが言うので、今回はそちらにしてみた。カレーソースは20種類のスパイスを使ったものだとか。ちょっと好き嫌いが分かれる味かもしれないが、カレー好きのMizumizuにとっては花マルのお味。ご飯の多さにびっくり。それとチキンのボリュームにも。ただ、個人的には「ばんから」より「ヒレカツカレー」のがお奨めかな。こちらは手打ちパスタのカルボナーラ。パスタはもちもちではなく、薄めで歯ごたえのあるタイプ。このカルボナーラも十分花マル。日本のベーコンって燻製してないマガイモノが多いが、ここのベーコンはちゃんとイタリアのパンチェッタの味がした。パンまでついて、あとでソースをつけて食べられるところが、気取りがなくていい。こちらもすごいボリューム。どちらの味も十分満足できる。カレーも生パスタも旨い店なんて、東京でもなかなかない。こんな洋食屋が近所にあったらいいなぁ。松本市民がうらやましい。ここのお昼はちょっと遅くて、ひととおり料理が揃うのが11時半ぐらいからだとか。その時間を目指してなのか、どんどんお客さんが入ってきて、お昼前には1階は満席になった。プリンもお奨めだというので注文。かなりのものです、このプリンも。ちょっとのった生クリームもとても美味しい。いやぁ~、これだけハズレがないなんて、凄いワ、おきな堂。コーヒーについてくる一口サイズのシナモンクッキーも気に入って、お土産に一袋買ってしまった。シナモンが煙ってくるように強く、硬い口当たりがドイツ風のクッキー。自宅でもエスプレッソ1杯に1つ、楽しんでいる。ポークステーキも人気だとか。夜も来ちゃおうかなと思い、会計のときに聞いてみた。「夜もやってますか?」「はい」「今日は何時まで?」「今日は祝日なので早くて… 午後6時がラストオーダーです」はっ…?ご、午後6時にらすとおおだあ? それで夜やってると言えるのか?? 洋食屋なのに?? 松本市民の祝日の夕飯はそんなに早いのか?あ~、びっくりした。東京ではありえません。ちなみに平日は午後8時半がラストオーダーだとか。それも食事を出す店としては、かなり早いと思うけど。それでやっていけるのだから、それにこしたことはないよね。お昼のあの賑わいを見ても、無理に夜遅くまでやる必要もないんでしょう。そもそも松本って街は、そのほかの店の店じまいもやたらと早い。午後6時には、観光の中心地がゴーストタウンと化す(というのはオーバーか)。なんつー、健康的な街やねん。東京人はついていけんわ(←どこの方言だよ)。
2009.03.23
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