全15件 (15件中 1-15件目)
1
一日に五千回死にたくなったり生きたくなったりする男の話の表題作と他の短編集。一人称で主人公が過去にあった出来事を話しはじめるという形式で、筆致は安定しているもののマンネリを感じる。関西弁の会話にリアリティがあるものの、短編として月並みなオチをつけて仕上げているのがかえってリアリティを損ねてうそ臭く見えてしまう。★★★☆☆
2010.01.13
コメント(0)
アイヌの統一運動をめぐるアイヌとシャモの対立をかいた「森と湖のまつり」とその他の短編。三人称による文体。アイヌをめぐる運動で対立する各々の立場の主張や人間性や恋愛を綿密に描写していて、アイヌについてよく取材しているらしいのはよい。しかし長いわりに物語自体はそれほど面白くないというのが難点。恋愛関係がごちゃごちゃしていて、登場人物は粗暴で性格が悪く、主人公のような役割の画家の雪子は自分の意見を持たないままむやみにアイヌに首をつっこむし、表題になっているベカンベ祭りが盛り上がらず、前振りが長い割りにオチが性急でむりやりフラグを回収した感じがする。各場面の描写自体は中身が詰まっていて読み応えがあるものの、ただでさえ登場人物が多いのに雪子の日和見的態度はプロットが展開していく軸になりきれず、物語全体がしまりがない印象。★★★★☆
2010.01.13
コメント(0)
高慢な青年と偏見を持ったおてんば娘のエリザベスが恋愛したり誤解したりする話。三人称の簡易な文章でエリザベスを中心にして語られる。会話の皮肉やユーモアが面白いものの、物語展開の方法論や文章表現は月並み。予定調和的に結末がわかってしまうのが物足りないところ。★★★☆☆
2010.01.13
コメント(0)
横光利一の代表作集。一人称と三人称があるものの人称で特に文体が変わるわけでもなくて、短編ごとに構図が違う点に作者の工夫が見える。妻の死をテーマにした短編は陰鬱にならず愛情を鮮やかに表現していてよい。しかし長編「上海」は長いわりにストーリーも心理描写も淡々として見せ場らしい見せ場がない。★★★☆☆
2010.01.13
コメント(0)
大学に合格して田舎から上京してなんとなくセクトに入ったぼんやりした青年が学生運動の騒乱にまきこまれる話。一人称による文体で、とくに表現に工夫がない平凡な書き方。物語の中核となる学生運動の話がたいして発展せず、恋愛とアイデンティティ探しという平凡な青春小説として終わってしまっている。当時の学生運動の様子がわかるのは興味深いものの、小説としてはやや物足りない出来。★★★☆☆
2010.01.13
コメント(0)
火葬場で働く男の恋愛を書いた芥川賞受賞の表題作と他の短編集。三人称で「である」が混在する文体は古くて月並みな印象。他の短編は自伝的に戦時中の少女の心の動きを的確に書いていくのはよいものの、冗長になりがちで全体の構成が弱く感じる。★★★★☆
2010.01.13
コメント(0)
マコンドの医師が自殺するという処女作とその他の短編集。医師の居候先の大佐、妻、少年の一人称で、同じ出来事を視点を変えて何度も語る形式。『百年の孤独』の後で読んでしまったので物足りなく感じる。それでも文体の特色が十分に出ていて、随所の凝った言い回しによるイメージの展開が鮮やかでよい。★★★★☆
2010.01.13
コメント(0)
割礼されたアフリカ人女性が精神病になり、後に自分たちを割礼した老婆を殺して死刑になる話。各登場人物の現在形一人称によって語られる形式。時間や場所がごちゃまぜで語られるので登場人物のつながりがわかりにくいけれど、それが割礼された女性の苦しみの理解しがたさをあらわしているようで、複雑さがかえって物語の魅力となっている。★★★★☆
2010.01.13
コメント(0)
芸術家や神童などを書いた初期の短編集。わかりやすい表現をしないひねくれた文体。ストーリーは陰気でプロット上の仕掛けもないのでストーリーテリングとしては大して面白くなく、見所が抽象的でわかりにくく、これの何が面白いんだろうと思いながら解説を読んでようやく何を書こうとしたのか理解できるという感じ。★★★☆☆
2010.01.13
コメント(0)
第二次世界大戦の兵士の死の瞬間や、戦後の町の人たちを書いた短編集。一人称や三人称による簡潔な文体。「ローエングリーンの死」のような死をパセティックに書いた戦争をテーマにした短編が面白いぶん、「笑い屋」のようなユーモア重視の小説は月並みでつまらなく感じる。ドイツの時代背景がわからないと皮肉やユーモアが理解しきれない部分もあり、描写がくどい割りにいまいち面白さがわからない。★★★★☆
2010.01.13
コメント(0)
生まれた子供が死に、また子供が生まれて、そのうち父親と和解する話。一人称「自分」の私小説。言葉遣いは単調すぎるくらいで文彩も特にない。物語の構造として和解に至る課程が明確でなく盛り上がりに欠け、また主人公の心理表現も不十分にみえる。★★★☆☆
2010.01.13
コメント(0)
勉強ができないけど女にもてる高校生の話。一人称による文体。失恋や教師への反発や級友の自殺などの心情を丁寧に拾い上げているのはよい。しかし主人公があまり高校生らしくなく、思考が幼稚なのが興ざめする。むしろ三人称で書かれた小学生時代の番外編のほうが完成度は高いようにみえる。★★★☆☆
2010.01.13
コメント(0)
日常の出来事や芥川賞受賞後のことや俳句やパソコン通信について書いたエッセイ。他人の生活を覗き見るような感じで、特に優れているというわけでもない普通のエッセイ。★★★☆☆
2010.01.13
コメント(0)
ローマ時代の実業家ユリウスがキリスト教徒になる話。三人称の文体で、キリスト教の教義の欺瞞と実生活の卑俗さを比較しながら物語が展開していく。晩年のトルストイの思想を寓話化したような内容で、説教臭く、物語としてはプロットが単調で予定調和的にみえるのでリアリティがない。★★★☆☆
2010.01.13
コメント(0)
主人公と恋仲の従姉が主人公との結婚を反対されて、金持ちと望まない結婚して死んでしまう話。「僕」の一人称による文体。一人称ながら主人公の思考はあまり書かれず、泣き落としが強調されすぎている印象。★★★☆☆
2010.01.13
コメント(0)
全15件 (15件中 1-15件目)
1