全5件 (5件中 1-5件目)
1
東ドイツの工場で事故にあったリータが入院しながら西ドイツに行ってしまった元恋人のマンフレートを追想する話。三人称で独白(ドイツでは体験話法というらしい)を多用する文体。物語内の現在と過去が入り混じる構成。現在と過去が入り混じって場面が飛ぶ上に情景描写があいまいで状況を把握しにくく、構成の複雑さがプロットの面白さにつながらずわかりにくい。リータの追想がメインなのに、リータとマンフレートの視点を行き来するのも焦点がぶれてよくない。ストーリーはリータが働く工場の人間について書いている部分が長く、事件が起きるわけでもないので緊迫感もなく退屈する。終盤になってリータとマンフレートが不和になったところでようやく恋愛小説らしくなるものの恋愛小説としては期待はずれで、かといって東ドイツの社会主義についての描写も中途半端なので、西ドイツに行く機会があったにもかかわらず東ドイツに戻ったリータの心境もよくわからない。2回読めば現在と追想の部分の区別がわかって最初読んだときより内容を理解できて面白くなるだろうけど、予備知識なしで読んだら混乱してしまう。★★★☆☆
2010.11.23
コメント(0)
青年アルマンが娼婦マルグリッドに恋した話。一人称。死んだ娼婦の競売で「マノン・レスコー」を買ったデュマがアルマンに会い、アルマンが恋愛の顛末を語るという凝った構図で、作者はこれを事実だと言ってリアリティーを補強しているものの、アルマンがマルグリッドとの会話をすべて覚えているというのはさすがに無理がある。さらにはアルマンの語りが~だった、~しました、という単調な描写の連続で中だるみする。終盤はマルグリッドの手紙がプロットの種あかしをしつつ心情描写も兼ねていて、手法としてはよい終わり方だろう。しかし急にアルマンの視点からマルグリッドの視点に変わるため、感情移入の軸がぶれてしまうのは構図としてはよくない。マルグリッドに同情するほどアルマンの不甲斐なさが目立ってきて、運命の悲劇というより別れたのは全部アルマンのせいじゃないかと思えてくる。ストーリー自体は真実の愛が叶わず死に別れたという定型的なお涙頂戴ものだけれど、アルマンはマルグリッドへのあてつけで別の娼婦を買ったり悪口を噂したりして、娼婦の恋愛の相手としては幼稚すぎてつまらない。こんな幼稚な相手に真実の愛というのが成り立つのかも疑問。恋愛小説というよりは「ナナ」のような娼婦の物語の部類で、アルマンのぐだぐだした恋愛話よりも娼婦の粋な渡世を書いたほうが物語が面白くなったかもしれない。★★★☆☆椿姫改版価格:620円(税込、送料別)
2010.11.10
コメント(0)
父親が列車事故にあったときに読んでいた本にちなんでゴーゴリと名づけられたインド系アメリカ人男性の半生の話。三人称で簡潔な短文を連ねていく文体で、視点を変えて各登場人物を描写している。母親が妊娠したところから物語がはじまり、ゴーゴリの成長が時系列順に描かれていく。初長編らしいけれど、短編のときほどの心理描写の鋭さはなく、エピソードの見せ方に抑揚がなく淡々と話が続くので飽きてくる。インド系という差異化もたいして効いておらず、アメリカナイズされた月並みな恋愛と家族愛の物語になっている。物語そのものは面白くなる余地があるけれど、表現力のない文体がエピソードをつまらなくしている。短い文章を連ねているもののハードボイルドというほどの迫力もなく、目だった文飾もなく、登場人物から距離をおいて描写していて心理描写が浅いので共感のしようもない。しかもエピソードが単発的で伏線が少なく、結局は短編のときと同様に夫婦の不和で離婚という展開になるのだったら長編でなく短編でまとめたほうがましだっただろう。★★★☆☆その名にちなんで価格:740円(税込、送料別)
2010.11.10
コメント(0)
レヴィ=ストロースを中心に構造主義がどんなものか解説した本。親族の構造、構造主義のルーツになっているギリシアの幾何学、神話の構造を説明していて、レヴィ=ストロースの業績と、構造主義がどういうものなのかがわかりやすくかかれていてよい。★★★☆☆はじめての構造主義価格:756円(税込、送料別)
2010.11.10
コメント(0)
腸結核になった若い妻を見取る話。一人称の私小説。タイトルどおりの展開で、妻の看病から葬式までが時系列順に書かれている。妻の死を書くのは昔の小説の定番でテーマに新鮮味はないものの、田舎暮らしの人間関係に情緒があってよい。金銭にこだわらない作者の人生観も垣間見えるけれど、突っ込み不足で物足りない印象。★★★☆☆
2010.11.10
コメント(0)
全5件 (5件中 1-5件目)
1