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スタートレック・ヴォイジャー 国際法や海洋法の間隙をつくような仕方で、横浜にやってきたダイヤモンド・プリンセス。その船籍はイギリスで所有会社はアメリカ、でその船長はイタリア人で、船員はそれこそ世界中から集めた約一千人。そして乗客もまた日本人、アメリカ人をはじめとして、五十カ国以上から約二千七百人。 ということは、乗員乗客合わせて約三千七百人が、乗組員は別としても、付き合いの薄い村サイズの人数が、未知のウイルスにさらされて、船に乗り合わせているという状況は、ちょっと私には想像しにくい。何もなければ結構で豪奢なクルーズが、いったんことが起きると極めて危険な状況に陥るという、パニック映画の定型のような景況を示しましたね。 それかあらぬか、武漢の情報が、中国当局によって厳重に封鎖されていることもあって、世界中のメディアが横浜に集まって来ました。欧米人にとっては、自国民が乗っているということもあったでしょうが、こうした絵になる状況というのは、間違いなく「メディア映え」するニュースソースだったはずです。それに加えて船内からは、乗客たちがスマホで動画を発信したりするので、虚実取り混ぜの記事が世界を飛び回ることになりましたね。 あとから考えれば、このころすでにアメリカでもヨーロッパでも、武漢ウイルスはひそかに拡がっていて、遠からず大爆発という段階に来ていたはずですが、欧米メディアは明らかに、これらをはるか地球の裏側の話として、要は自国の乗客の話も含めて、恰好の見せ物としてこれを扱っていました。 「遠いアジアの港の汚染された船に、欧米人が放置されている、日本は何をしているんだ」というシナリオは、彼らにとってはある意味、非常に居心地のいいトーンであったのではないか?私は今回のダイヤモンド・プリンセスにかんする、外国一流メディアの一連の報道ぶりを見ていて、彼らも案外いいかげんな憶測記事や煽情ネタを流すんだなと思ったものでした。 元来、武漢ウイルスの集団感染が船内に発生しているらしいので、乗客を降ろしたいと言って来たのはダイヤモンド・プリンセス側であって、であれば、厚労省は国民防護の立場で、「検疫」を前提に対処することになる。乗客乗員の「医療」を施すのは、身もフタもない言いかたをすれば、日本人乗客は別として、「放っておけない」から、いわば人道的立場で行なっているというスタンスになるのです。げんにこの時の医療負担は、さしあたって日本側、乗客乗員の食費はプリンセス側ということだったらしいですね。これって何だかヘンで、じゃあ船籍を持つイギリスや最大の乗客人数だったアメリカ他は何も負担しなくていいのか?という話になります。後になって、アメリカ大使が日本側に謝意を表したということですが、果たしてそれで済む話なのかどうか。 いずれにしても、あたかも善意を施すのが当然であるかのように、強要して回る欧米メディアのありようは、はなはだ人の心に水を差すものではありました。ついでに言うと、そうした海外の論調に敏感に反応して政府厚労省批判を繰り返した、日本のオールドメディアに至っては、ほとんど笑止の沙汰でしたね。しかし、そうした日本の論調を見ていて、ひそかに戦略的に世界の目を逸らそうとした国がありました。これは後で触れます。 それにしても、最近の大型豪華クルーズ船の姿かたち。私はその極限まで利益率を優先した、胴長で膨れ上がった船体を少しも美しいと思いません。今どき数十万トンのタンカーでも、乗員十数名というのがあたりまえの時代、よくもこんな奇怪な形の船を造ったもんだと思ったものです(日本製らしいですね)。 話は変わります。ダイヤモンド・プリンセス騒ぎですぐ思い浮かぶのは、タイタニックということになりそうですが、まああまりに語りつくされた話なので、私は別の連想をしてしまう。昔、テレビでやっていた「スタートレック・シリーズ」のヴォイジャー号のことなのです。ジェーンウェイ艦長率いる宇宙艦ヴォイジャーが、謎のビームに巻き込まれ銀河系の果てに飛ばされて、果てしない地球への帰還の旅に出るという物語でした。そこに登場する様々なキャラクターが面白く、テレビの連続シリーズということもあってか、人気の出たキャラクターは何度も使うということもあったみたいですね(私的には、後半登場したセブン・オブ・ナインがお気に入りでした)。 毎回、お決まりの異星人だの謎の知性体だのが現れて、クルーを危機に陥れるわけですが、元祖スタートレックの戦艦エンタープライズと違い、戦闘能力はそれほどでもないので、女性艦長以下さまざまな星人種族が知恵を絞って何とか切り抜けていく。とはいえ、最後に現れた知性集合体ボーグは、思いのほか強敵で、とうとう艦長本人までボーグに取り込まれてしまう。さて結末はいかに、というようなストーリーでした。 スタートレック・シリーズは、神話的要素とスペースオペラのエンターテインメントで、より万人受けに作られたスターウォーズ・シリーズに比べ、多少地味ですが本格SFの風合いを色濃く出して、今だに根強いファンがいますね。初期はカーク船長とミスター・スポックという、魅力的なキャラクターで引っ張っていましたが、特にピカード艦長率いる新スタートレック以後のシリーズは、素粒子理論やパラレル宇宙、あるいはタイムトラベルなど、最新物理学理論のテイストがふんだんに取り込まれていて、かなりのハードSFファンにも納得のいくものではなかったか? ヴォイジャー・シリーズは、その傾向がもっとも洗練された時期ということが出来、そのころすでに、いい大人だった私でも、毎回ビデオに録画して楽しみにしていました。逆に言うと、スターウォーズ・シリーズは初回の三編だけ見て、それ以後のは気恥ずかしくて見てません。 先ほど触れた最大の強敵ボーグは、まったく人智を介さず容赦なく人間界に侵入し、それを同化して巨大な知性集合体に組み込むという、ある意味自動機械に近い振舞いかたをする厄介な敵なのですが、最後はジェーンウェイ艦長の献身と、その圧倒的な自動機械の力をテコに、ヴォイジャーは一気に地球に帰還するという離れ業をやってのけます。 さて目下の武漢ウイルスという、はなはだ厄介で奇妙な振舞いかたする病原体に対して、私たちはヴォイジャーのような逆転のシナリオを描けるのかどうか?
2020.04.25
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官邸 ところで、今回の武漢ウイルス・クライシスの渦中にあって、どうも安倍政権の一連の対応に危惧というか、不安を感じている方は多いのではないか? 外交安全保障と危機管理といえば、なんとなく安倍政権の得意分野という、漠然とした先入観があったのですが、今回の騒ぎにかんするかぎり、動きが鈍いというか、主導して引っ張っているという印象が薄い。どころか、チャーター便の派遣だの、中国からの入国制限だの、今回の十万円一律給付にしても、むしろ周りから(青山さんはじめ)やいやい言われて、戸惑いつつ腰を上げているという感じ。 やっていることは、決して遅いということではないと思うのですが、印象としては「鈍重」という言葉がピッタリ。安倍さんが外交で見せる、軽いフットワークと切れが感じられません。肝心なのは、国民に与える官邸の、なにやら「受け身な雰囲気」なのです。盤石の長期政権を築いてきたこの政権、かなり脇が甘い場面がいくつかあったにせよ、外からの提言をやすやすと受け入れるというようなことは、これまでついぞ無かったように思う。 不思議なのは、本来こうした緊急事態というのは、ある意味「リーダーの腕の見せどころ」みたいなところがあって、台湾とか韓国とかドイツとか、政権の立て直しに、このコロナ禍を利用して、まんまと成功した事例もあります。騒ぎの発出から、もし官邸主導で武漢ウイルス対策をやっていたら、当時話題になっていた「桜を観る会」問題など、あっという間に吹き飛んでしまったはずですが、実際はそうはならなかった。すべての対応を厚労省に「丸投げ」して、安倍さんは後ろに控えるというスタンスでしたね。なぜそういう動きになったのか、私には判然としません。 武漢で、「新型コロナウイルス」が発生しているらしいという情報は、十二月の中旬ぐらいから入っていたと思うのですが、そのころの国内の関心事は、なんといっても消費税増税にともなう景気の鈍化具合と、今では信じられない話ですが、今年のインフルエンザはどれくらい流行るのか、といった話題だったように思う(今となっては、なんだか別世界の話になってしまいましたが)。 一つには、この新型ウイルスの情報にかんして、中国側が当初それを否定し、隠し切れないとなると、「確かに発生しているが、感染力は弱い」とか「毒性は中程度で、大したことはない」など、かなり重大な偽のコメントを、しかも国際機関であるWHOを巻き込んで、流し続けたことが大きいのかもしれない。しかし、そうした中国政府や国際機関のコメントを、素直に受け入れていたように見える日本政府の対応も、ちょっと信じがたいのです。台湾や香港は、早くからというか、ほとんどのっけから、こうした中国式官製情報に疑いを持って接し、独自に準備を進めていたみたいですね。 おかげで年が明けてからも、武漢を含めた中国人観光客は、じゃじゃ漏れ状態で日本にやってきては、マスクを買い漁っていくという仕儀となりました。中国本土以外で、最初の感染者が確認されたのは、確か日本だったと思います(観光バスの運転手さんとバスガイド)。 そのころになると、武漢市内の猖獗をきわめる映像も入ってくるようになってきて、さすがにちょっと「やばいんじゃないの」という空気が出てきたのですが、それでも病院に押し寄せる群衆の阿鼻叫喚騒ぎというのは、あまりにも現実離れしていて、例によっていかにも中国式のパフォーマンスをやっている、要は「他所事」と捉えた人も多かったのではないか。 いよいよそれらが現実のものと認識されるようになったのは、おそらくチャーター便が武漢からの帰国者を乗せて飛来し、そこから感染者の発生が確認されてからでしょう。クルーズ船が横浜港にやってきたのも、確かちょうどそのころ、ひらたく言えば現実の危険が、日本の大都市圏の真ん中に鎮座するという事態となったのです。 このあたり、本当は時系列を確認して話すべきですが、私はジャーナリストじゃないので、この年末から今現在までに生起している、あまりに多くの「物語」を忘れないように記すだけに止めます。私が様変わりした京都駅に遭遇したのが、一月二十六日。そのころには中国人観光客はウソのように姿を消し、いよいよ我々も身構えざるを得ないのかな、という感じを抱いたものでした。
2020.04.22
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楽しい話題を少しずつ再開しようと思っていたら、このたびの新型コロナウイルス騒ぎ。826asukaさんの話題を中心に音楽の話をもっと深掘りしようと思っていたのですが、すっかり水を差されて白けてしまいました。下書きはできているのですが、気分的にどうもUPする気になれません。 武漢ウイルスがパンデミックになって、はなはだ先行き不透明な同じ危機を、世界が同時的に共有しても、今どきの世界の政治家や首長、医療従事者あるいはそれぞれの国民のエートス(ものの捉えかた、考えかた、立ち居振る舞い)の違いがあらわになって、さまざまな教訓を与え続けていますね。 メディアではさまざまな人物(主として医療関係者)が登場して、コメントをされていますが、同じことを話すにしても、人によって何だかネガティヴな気分になるものと、ポジな方向性を感じさせる話し方があって面白かった。ああ、それにしても「コロナの女王」だの「コロナ・プリンセス」だの、皆さん、すっかりお茶の間の馴染みになってしまいましたね。 しかし、私はもちろんこれらの方面の専門家ではないので、こうした一連のコロナ・パニックの論評じゃなくて、そうしたナラティヴ(物語り方)の在りようを考えてみたいと基本的には思っているのです。national security それにしても今回の騒ぎの中で、少し話題になった言葉として「ナショナル・セキュリティーnational security 」というのがありました。国家安全保障という意味ですが、日本以外の各国で感染症対策が、生物化学兵器といった軍事的脅威への対処と同様の、国家安全保障の概念でとらえられているのに対し、日本ではそうした考えかたは希薄で、通常の保健衛生の範疇でとらえようとする傾きが強いということでした。 実際のところ、今回の新型コロナウイルスが示している挙動は、見ようによっては、きわめて生物兵器的な在りようをなしている、と言っていいのかもしれない。従来想像される強毒性の天然痘だのエボラだのといった生物兵器と異なり、むしろ強毒でないことによって、その兵器としての政治目的を、最も効果的に発揮していると言えるのではないか?早い話、戦争の最中なら敵兵士および市民を殲滅ないし無力化することが、この種の兵器の主目的になるかもしれませんが、それは同時に「やり返される脅威」に自国をさらすことを意味する結果、核兵器と同様の「使えない兵器」にならざる得ないのです。 しかし、隠密性が高く致死性が比較的低いという、不思議な特徴を持つ今回のようなウイルスは、平時に敵対国あるいは世界を撹乱し、人心をパニックに陥れ、経済社会生活を停止させるという、ある種の政治目的達成には、恐ろしく叶っているのです。今回の騒ぎを生物兵器の開発過程における事故が原因だ、とは私は思いませんが、少なくとも各国の軍事アナリストやテロリストたちは、これを今後起こり得る生物化学兵器使用の際の好個の事例として、目を皿のようにして見ているはずです。 早い話、武漢でコロナウイルス肺炎が蔓延しているという噂がたったとき、最初に中国からの渡航を全面禁止にしたのは、たしか北朝鮮だったでしょう。当時は、自国の保健衛生体制があまりに脆弱なので、仮に唯一の友好国である中国であっても、背に腹は代えられないということなのかな、とも思っていましたが、今はもう少し穿った見かたをしています。かの国はおそらく、武漢の情報が入った瞬間に、そこで起こっている事態を、かなりの確度で推定し得ただろう。なぜなら、彼らは似たような兵器の開発を、間違いなくやっているだろうからです。北朝鮮が中国と、この種の兵器の情報を共有しているとは、もちろん思いませんが、同じようなことをやっていれば、大体のことはすぐ類推できるはずだからです。 続いて同じような反応をしたのがアメリカとロシアで、これも「国家安全保障」という観点から、生物化学兵器の研究をしているのをなかば公然化しているかの国々にとってみれば、当然の処置ではありました。アメリカのCDC(疾病対策センター)がカバーする範囲というのは、驚くほど広範囲で、ある意味疾病対策に特化した戦略的高度情報機関という体をなしている。 これに対応する日本の機関は国立感染症疫学センターだと思うのですが、これは明らかに医学の専門家組織で、国家安全保障の概念で疫学を捉えている研究者はいないでしょう。むしろ自衛隊の防衛医科大の広域感染症疫学制御・研究部門や、サリン事件で活動した実働部隊としての陸上自衛隊中央特殊武器防護隊などのほうが、これに近いかもしれない。 いずれにしても、ダイヤモンド・プリンセスが横浜港にやって来たとき、それに対応するのが厚労省の防疫対策部門であったのは、日本ではごく自然な成り行きであったのですが、実際に検疫と救命が始まった時点で、national securityの概念の希薄さが露呈してしまう結果となりました。
2020.04.21
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