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図書館に予約していた『鉄道と愛国』という本を、待つこと8ヶ月ほどでゲットしたのです。この吉岡桂子というジャーナリストは、中国に関する確固たる洞察がええわけで、以前からフォローしているわけで・・・今回はシルクロードをめぐるホットな列車旅ですか♪【鉄道と愛国】吉岡桂子著、岩波書店、2023年刊<「BOOK」データベース>より戦後日本の発展の象徴、新幹線。アジア各地で高速鉄道の新設計画が進み、中国が日本と輸出を巡って競い合う現在、新幹線はどこまで日本の期待を背負って走るのか。1990年代から始まった新幹線商戦の舞台裏を取材し、世界最長の路線網を実現した中国の高速鉄道発展の実像に迫る第一部、中国、香港、韓国、東南アジア、インド、ハンガリーなど世界各地をたずね、鉄道を走らせる各国の思惑と、現地に生きる人々の声を伝える第二部を通じて、時代と共に移りゆく日中関係を描き出し、日本の現在地をあぶりだす。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(12/04予約、副本?、予約?)>rakuten鉄道と愛国「6「赤いはやぶさ」発車ベルはいつ? インド」からインドへの高速鉄道売り込みを見てみましょう。p200~210<6「赤いはやぶさ」発車ベルはいつ? インド> インドにとって初めての高速鉄道を、日本が協力して建設している。南西部の商都ムンバイから北上すること、約500キロ。首相のナレンドラ・モディの地元グラジャート州のアーメダバードと結ぶ構想だ。だが、建設をめぐる交渉は難航し、目標にしていた2023年の開業は、少なくとも5年は遅れる見通しだ。新幹線がインドの大地を駆ける日はいつか、来るのだろうか。(ここで8ページほど中略)■中国人ビジネスマンが語るインド新幹線 アーメダバードでは、郊外にあるサバルマティ・アシュラムに立ち寄った。インド独立の父として知られるマハトマ・ガンジーが住んでいたこともある場所だ。「鉄道で邪悪が広がります」。ガンジーは、著書『真の独立への道』(岩波文庫)で、そう語る。 ペスト、つまり感染症を広げるとして、鉄道を批判したのだ。南アフリカにいた若き日には有色人種として鉄道から降ろされたこともある。この経験は、のちの自由を求めた闘争につながる。インドに戻ってからは三等車に乗って、あちこちを訪ねたことで知られる。 インドの駅はガンジーの肖像画であふれている。ガンジーなら、新幹線に何を広げることを期待するだろうか。■伏せられた情報 この路線を新幹線が走る日はいつか。 目標にしていた23年の開業は、両政府内部では少なくとも28年まで延期されている。だが、正式には公表されていない。事業費の膨張や、その対応策についても明らかにされていない。ODAで円借款を投じるなら、日本政府は国民に向けてきちんと説明する必要がある。 新幹線の輸出そのものを否定するつもりはないが、不透明な事業の進め方には問題がある。海外のインフラ建設は巨額の円借款を投じるにもかかわらず、国内の公共事業に比べて納税者の監視の目が届かない。私がこだわって取材を続ける大きな理由だ。 インドにとって高速鉄道の建設が初めてなら、インフラ輸出に力を入れてきた日本にとっては、現状で新幹線の輸出計画が進んでいるのはインドだけである。 日本とインドは、中国を牽制するために手を組んだパートナーどうしでもある。とりわけ日本が提唱する外交戦略「自由で開かれたインド太平洋」構想にとって、インドは欠かせない存在だ。 もちろん、インドも中国と根深い国境紛争を抱え、「一帯一路」にも反対だ。インドが対立するパキスタンと中国が近しいことも関係をいっそう遠ざける。日米豪印で立ち上げたQUAD(クアッド)という戦略的な枠組みにも加わった。だが、中国を名指しした「対抗」には踏み出さない。インドにとって中国は隣国であり、最大の貿易相手国でもあるからだ。 中国が主導して設立したアジアインフラ投資銀行(AIIB)に加盟し、副総裁を送り込み、最大の借り手となっている。バンガロールの地下鉄などへ融資をうける。ブラジル、ロシア、中国、南アフリカとともに新開発銀行(NDB)を運営する。22年2月のロシアのウクライナ侵攻後、米欧が主導する対ロ制裁には加わらなかった。ロシアは武器や資源の購入先でもあるからだ。「戦略的自立性」を重んじるインドは、ひとことでいえばしたたかな大国、なのである。『鉄道と愛国』2:そして、あの事故 暗転『鉄道と愛国』1:はじめに
2024.08.17
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図書館に予約していた『鉄道と愛国』という本を、待つこと8ヶ月ほどでゲットしたのです。この吉岡桂子というジャーナリストは、中国に関する確固たる洞察がええわけで、以前からフォローしているわけで・・・今回はシルクロードをめぐるホットな列車旅ですか♪【鉄道と愛国】吉岡桂子著、岩波書店、2023年刊<「BOOK」データベース>より戦後日本の発展の象徴、新幹線。アジア各地で高速鉄道の新設計画が進み、中国が日本と輸出を巡って競い合う現在、新幹線はどこまで日本の期待を背負って走るのか。1990年代から始まった新幹線商戦の舞台裏を取材し、世界最長の路線網を実現した中国の高速鉄道発展の実像に迫る第一部、中国、香港、韓国、東南アジア、インド、ハンガリーなど世界各地をたずね、鉄道を走らせる各国の思惑と、現地に生きる人々の声を伝える第二部を通じて、時代と共に移りゆく日中関係を描き出し、日本の現在地をあぶりだす。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(12/04予約、副本?、予約?)>rakuten鉄道と愛国「第1部 海を渡る新幹線」から中国の高速鉄道事故を見てみましょう。どうしても嫌中マターに偏るのです、私の場合。p57~63<5 そして、あの事故 暗転>■追突事故「中国の高速鉄道は世界一流だ」 北京―上海高速鉄道の開業を控えた会見で、鉄道省次官の胡亜東は言った。 わずか1ヶ月後。 突然の事故で、その自信は暗転する。 浙江省温州市で高速車両どうしが衝突し、当局の発表で200人を超える死傷者を出したのだ。しかも、発生から数時間後、事故車両の一部は穴を掘って埋められてしまった。被害者の捜索打ち切りを早々に宣言した直後、車両から二歳の少女が助け出された。 衝撃的な事態が明らかになるなか、翌日夕方には運航を再開し、1日半後にはダイヤを完全に復旧させた。 日本の読者の関心が非常に高く、発生直後から北京で取材や出稿に追われた。白地に青いラインの和諧号が高架の軌道からぶら下がる映像を憶えている人も多いはずだ。中国と日本の双方の視点から、あの事故が持つ意味を考えてみたい。(3ページほど中略)■異例の報道合戦 この事故は、中國メディアのあり方も赤裸々に示した。 中国共産党・政府は重大な事故であればあるほど、報道を統制し、情報を管理する。 それだけに、この事故にからんで注目されたのは、その統制をかいくぐって続いたSNSによる情報の発信だ。被害者自身や家族がSNSで次々に声をあげた。直接は関係なくとも事故を知った人々が当局のずさんな対応に怒り、調査を求め、責任を問うた。 私は北京から主に当局の動きを追っていたが、SNSを通じた情報が公式発表より圧倒的に早かった。ひょっとして中国の報道は何かが変わるかもしれない。期待した。SNSを通じた人々の声がテレビや新聞といった伝統的なメディアとコラボするようなかたちで、政府を動かす可能性をみせていたからだ。 上海師範大学影視伝媒学院副教授の陳雅賽が早稲田大学大学院博士課程に在学中に書いた「7・23温州列車脱線事故における中国ネット世論の形成」によると事故にかかわる最初の情報発信は、発生する3分前に、現場近くに住むと考えられるウェイボー(中国版ツイッター)利用者が、速度の異変について書き込んだものだ。発生から13分後には、救助を求める乗客がウェイボーに書き込んでいる。10万回も拡散され、その乗客は2時間後に救出された。 陳は、08年に山東省で発生した列車事故の第一報は中国国営新華社通信が5時間後に伝えたものだったことを指摘し、ネット世論の影響力の増大を論じている。 SNSに押されるように、北京の都市報『新京報』は一報から一面で報じた。商業色が強い新聞や雑誌は連日、大型の特集を組んだ。 鉄道省の記者会見が事故から1日以上も過ぎてからだったことや、車両を埋めたことを救助活動の一環として自己弁護を繰り返したことなどを強く批判した。賠償金についても数々のメディアが疑問を呈した。北京―上海高速鉄道の開業前から、高速鉄道では細かい不具合が多発していたという関係者の証言を伝える報道もあった。中国中央テレビ(CCTV)でも人気キャスターの白岩松が「1ヶ月前であれば(鉄道省の説明を)信じたいと思うが、いまは信じられない」と言い切った。 事件から5日目の7月28日。首相の温家宝が現場に赴かざるをえなくなった。被害者に哀悼をささげ、頭をさげた。家族らを慰問し、記者会見を開く。「事実の通り話そう。病気で11日間、起きあがれなかった。今日も医者にとめられたが、振り切ってやってきた」と釈明した。疲れた表情だった。 この11日間の途中、訪中していた元衆院議長の河野洋平と会談していることから、温の弁明は「仮病」と批判された。その真偽はともかく、国家指導者が自らの健康問題に触れることは極めて異例だった。また、洪水や地震など自然災害ではない事故現場に入り、外国メディアを含めて50分間もの長さの会見に応じるのも非常に珍しい。 それだけ、人々の怒りのマグマがたまっていたのだ。「中国よ、飛ぶように駆ける足を止めよ。人民を待ってくれ。魂を、道徳を、良識を・・・。列車を脱線させるな。崩れ落ちるような橋を架けるな、陥没する道路を造るな、危険な住居を建てるな。もっとゆっくり歩こう。一人一人の命に自由と尊厳を。時代の下敷きにされぬよう、一人一人が平和なゴールへたどりつけるように」 童大換というコラムニストが事故後にネットに投降した文章だ。たいへんな勢いで読まれた。高速鉄道の安全問題を越えて、庶民を置き去りにした超高成長に疑問や不安を感じる人の共感を呼んだ。「安全を失えば、信頼も失う」「(発展のスピードが)速ければいいのではなく、質や効率などを考慮し、何より安全を最優先させる」。温が強調する姿がCCTVで放送された。この日、鉄道省から被害者への賠償金も50万元から91万元へ引き上げられた。事故への怒りは、弱者を踏み台にして発展を急ぐ中国の体制に対する批判にも転じつつあった。『鉄道と愛国』1:はじめに
2024.08.16
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図書館に予約していた『堤未果のショック・ドクトリン』という本を、待つこと11ヶ月ほどでゲットしたのです。日本政府が進めているマイナンバーカードであるが、セキュリティに信頼をおけないのでできるだけ取得を先延ばししていたが、このたびマイナ保険証の取得が強制されることになり・・・堤未果さんの告発的な解説を読もうということなんですが。【堤未果のショック・ドクトリン】堤未果著、幻冬舎、2023年刊<「BOOK」データベース>より「ショック・ドクトリン」とはテロや大災害など、恐怖で国民が思考停止している最中に、為政者や巨大資本がどさくさに紛れに過激な政策を推し進める悪魔の手法のことである。日本でも大地震やコロナ禍という惨事の裏で、知らない間に個人情報や資産が奪われようとしている。パンデミックで空前の利益を得る製薬企業の手口、マイナンバーカード普及の先にある政府の思惑など…。強欲資本主義の巧妙な正体を見抜き、私たちの生命・財産を守る方法とは?滅びゆく日本の実態を看破する覚悟の一冊。<読む前の大使寸評>日本政府が進めているマイナンバーカードであるが、セキュリティに信頼をおけないのでできるだけ取得を先延ばししていたが、このたびマイナ保険証の取得が強制されることになり・・・堤未果さんの告発的な解説を読もうということなんですが。<図書館予約:(8/25予約、副本7、予約177)>rakuten堤未果のショック・ドクトリンまず「第1章 マイナンバーという国民監視テク」から読み進めてみましょう。紙の保健証が使えなくなるので、この秋には私もしぶしぶマイナンバーカードを作ることになるんですが。p79~83<2 マイナ保険証はここが危ない>■⑤QRコード丸見え、セキュリティがザル はい、いよいよ老若男女全員が心配するポイントです。 一体全体、セキュリティは大丈夫なのか? この制度が導入されたとき、私たちの個人情報を守るために、総務省はわざわざカードと一緒に情報セキュリティ対策用のアイテムをつけてくれました。 カードを入れると、個人番号や性別、臓器提供情報などが目隠しされるよう、入念にデザインされた、ビニール製の専用カードケースです。 これなら持ち歩いても、肝心な情報が盗まれる心配はありませんよ、という政府の優しい配慮でした。 ですが残念なことに、国民からはすぐに悲しみの声が上がったのです。「QRコードが丸見えなんですが・・・」 そう、カード裏面についている、個人番号が含まれるQRコードのほうは無防備でした。中国で、前の人のスマホ画面のQRコードを肩越しに自分のスマホカメラで撮影して盗む犯罪が多発して問題になった、あれですね。個人情報保護委員会は、慌ててQRコードを他人に見せないよう、以下のような注意喚起を出しました。「インターネット等に自らのマイナンバーカードを、裏面のQRコードが見られる状態で掲載することは、・・・これを見た他人がスマートフォン等で読み取ることで、容易にマイナンバー(個人番号)を知られてしまうおそれがあります」 政府が親切に作って配布してくれた「頭隠して尻隠さず」の特性ケースのおかげで、QRコードは隠さなければならないことがわかりました。 ならば持ち歩くのは危ないのでは? 国民の間に広がった不安を一蹴してくれたのは、1日も早くマイナンバーカードを全国民に持ち歩かせることに全力を注ぐ。河野太郎デジタル大臣でした。自分の公式サイトに、マイナンバーについてのQ&Aを掲載したのです。「Q マイナンバーを人に見られても大丈夫なのですか。 A 大丈夫です。 マイナンバーだけ、あるいは名前とマイナンバーだけでは情報を引き出したり、悪用することはできません。 マイナンバーを使う手続きでは、顔写真で本人認証することが義務化されています。 オンラインで利用する時にも、ICチップに入っている電子証明書を利用するので、マイナンバーは使われません。 マイナンバーはそれだけではなにかできるものではありません」(河野太郎公式サイトより) そして、(健康保険証や運転免許証や年金カードなどと一体化した身分証明書になる)マイナンバーカードを使うことで便利になるサービスが増えていくので、カードは持ち歩きましょう! と奨励しています。 大臣、ありがとう。これなら安心して持ち歩けます! ・・・いやいや、本当にそうでしょうか?■⑥海外では問題だらけ アメリカ政府が「カードは持ち歩くな」と警告 デジタル化に関して中国と熾烈な競争を繰り広げているアメリカではどうなっているでしょう? アメリカには社会保障番号という一生変わらない個人番号があるのですが、まず絶対にカードは持ち歩きません。私が住んでいたときも、「カードは金庫の中だよ」という同僚が何人もいたのを覚えています。 社会保障番号が書かれたカード自体にも「DO NOT CARRY IT WITH YOU.(絶対に持ち歩かないでください)」と、わざわざ注意喚起が印刷されています。 いったいなぜでしょう? ズバリ、なりすまし被害が多すぎるのです。 2015年5月には、番号を盗んだ犯人が本人になりすまして確定申告を行い、1万3000人分の還付金を手に入れるという事件が起きました。 他にも、他人の番号でクレジットカードを作ったり不動産ローンを組んだり、銀行口座を開いたりと、似たような犯罪が後をたちません。 その1ヶ月後に起きた事件はさらに深刻でした。 中国系ハッカーの攻撃により、人事管理局から政府職員2150万人分の個人情報が漏洩したのです。 番号のみならず薬物使用歴や外国への渡航歴など、スキャンダルネタになる機密情報が満載ですから、政治的に利用できるでしょう。 2017年には、消費者の信用度を計算する信用調査会社大手エキファックスが大規模なハッキング攻撃に逢い、1億4500万人分の番号が個人情報とともに漏洩してしまった事件がありました。 流出したのは、名前と住所と生年月日、運転免許証番号と社会保障番号、そして20万9000件にものぼるクレジットカード番号です。一生変わらない個人番号は強固な身分証明になり高い値段がつきますから、あっという間に闇市場で売買されてしまいます。『堤未果のショック・ドクトリン』1:紙の保健証が使えなくなる
2024.08.15
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図書館に予約していた『堤未果のショック・ドクトリン』という本を、待つこと11ヶ月ほどでゲットしたのです。日本政府が進めているマイナンバーカードであるが、セキュリティに信頼をおけないのでできるだけ取得を先延ばししていたが、このたびマイナ保険証の取得が強制されることになり・・・堤未果さんの告発的な解説を読もうということなんですが。【堤未果のショック・ドクトリン】堤未果著、幻冬舎、2023年刊<「BOOK」データベース>より「ショック・ドクトリン」とはテロや大災害など、恐怖で国民が思考停止している最中に、為政者や巨大資本がどさくさに紛れに過激な政策を推し進める悪魔の手法のことである。日本でも大地震やコロナ禍という惨事の裏で、知らない間に個人情報や資産が奪われようとしている。パンデミックで空前の利益を得る製薬企業の手口、マイナンバーカード普及の先にある政府の思惑など…。強欲資本主義の巧妙な正体を見抜き、私たちの生命・財産を守る方法とは?滅びゆく日本の実態を看破する覚悟の一冊。<読む前の大使寸評>日本政府が進めているマイナンバーカードであるが、セキュリティに信頼をおけないのでできるだけ取得を先延ばししていたが、このたびマイナ保険証の取得が強制されることになり・・・堤未果さんの告発的な解説を読もうということなんですが。<図書館予約:(8/25予約、副本7、予約177)>rakuten堤未果のショック・ドクトリンまず「第1章 マイナンバーという国民監視テク」から読み進めてみましょう。紙の保健証が使えなくなるので、この秋には私もしぶしぶマイナンバーカードを作ることになるんですが。p71~75■高齢者がカードを作らないなら、健康保険証を廃止します 実は日本はけっこうなアナログ社会で、官公庁を筆頭に、地方のお役所もいろいろな手続きはまだ紙ベース、契約書も印鑑が主流です。 総務省の調べでも、2021年時点で70歳以上の半数以上はスマホを持っていません。 いくら政府が、「マイナンバーカードは身分証明書に使えます」「コンビニで住民票の写しや戸籍証明書が取れます」「健康保険証やワクチン接種証明書として使えますよ」「キャッシュレス決済できますよ」「給付金の振り込みが早いですよ」などとメリットを並べ立てても、「海外に遅れてますよ」と煽っても、アナログでそれほど困っていない国民、特に高齢者は腰を上げません。 2021年10月からは健康保険証と紐づけて使えるようにしたものの、かえって負担が増えると現場からは批判の声が。約11万人の医師が所属する全国保険医団体連合会の調べでも、専用のカード読み取り機を導入した医療機関の4割で不具合があったという報告でした。 マイナポイントという餌をちらつかせても、申請期限切れ直前の2022年8月末時点で申し込みは5割以下、政府は困り果てていたのです。 この状況に、強引さと行動力に定評がある河野太郎デジタル大臣は、会見で眉をひそめながらこう言いました。「これは一つ、真剣に考えなければいけない」 法律で強制できないこの状況で、全国民を、有無を言わさず真清窓口に走らせる方法を真剣に考えた河野大臣が決めたのは、国民の選択肢を奪うことでした。 10月にいきなりこう発表したのです。「2024年秋をもって、紙の保険証は廃止します」 国民皆保険制度のある日本で、全国民が必ず持ち歩き、高齢者ほど頻繁に使う健康保険証が今のままでは使えなくなれば、マイナンバーカードを作る以外に選択肢はありません。 たちまち国内に激震が走りました。 運転免許証がなくても、パスポートがなくても、健康保険証があれば身分証明書になる日本では、財布に入れて持ち歩いている人も多いでしょう。 その健康保険証を廃止してマイナンバーカードに統合するというのです。「あったら便利」だったはずのものが、「ないと生活できません」に、するりと入れ替えられた瞬間でした。 では、反対している人は、いったい何を心配しているのでしょう。 まだイマイチわからない、という人のために、マイナ保険証の問題点を順番に見ていきましょう。<2 マイナ保険証はここが危ない>■①カード作成は義務じゃないのに、選択肢を奪って強制「これは違法!」 法律家の立場から真っ先に反対の声を上げたのは、日弁連(日本弁護士連合会)でした。 番号法17条1項には、こう書いてあるからです。「個人番号カードは住民の申請により交付するものとする」 つまり作るか作らないかは、私たち国民の自由。 でも紙の保険証が廃止されればその選択肢は奪われて、事実上の強制になってしまう。日弁連の言う通り、れっきとした違法行為です。 でも政府はそれを認めるどころか、さらに脅しのようなことを言い出しました。「2024年にはすべてマイナ保険証だ。紙の保険証は廃止後1年間は使えます。どうしても嫌なら健保組合などに資格確認書を発行してもらうこともできるけど、その場合自動更新はなしで、受診料はマイナ保険証より高くしますよ」■②医師や病院が追い詰められる マイナ保険証の事実上の強制は、違法なだけではありません。 実は日弁連が反対声明を出す半年も前に、医師や病院からは「勘弁してくれ!」という声が出ていたのです。 2022年6月、政府は閣議決定した「骨太の方針2022」を踏まえ、全国の医療機関に、マイナンバーカードを端末にかざすと保険証の資格確認ができる「オンライン資格確認システム」の2023年4月までの導入を原則義務化しました。 ところが、前述したように、このシステムには不具合が多く導入費用も高いため、導入に多くの医師たちが猛反対。 カードを読み取れなければ、患者は保険が使えず、最悪の場合、その場で10割の窓口負担を払うことになってしまいます。そしてまた、カードリーダーは国から支給されるものの、小さいクリニックほど、システムを使うために従業員が受けるトレーニングの時間と費用といった高額のランニングコストが負担になってしまう。 しかもやりたい放題の政府は、「期限内に導入しなければ、医療機関の資格停止もあるかも」と、またもや脅し。「資格停止だぞ!」ではなく「かもよ・・・?」とちらつかせるところが、なんとも反社会的です。「もう廃業するしかない」と泣き声を上げるクリニックも少なくありません。 埼玉県保険医協会の渡辺義弘副理事長は、医療機関を追い詰める政府のやり方に怒りをにじませ、県民に必死でこう訴えました。「このままでは、地域医療が崩壊する恐れがあると知ってほしい」
2024.08.13
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<『鉄道と愛国』1図書館に予約していた『鉄道と愛国』という本を、待つこと8ヶ月ほどでゲットしたのです。この吉岡桂子というジャーナリストは、中国に関する確固たる洞察がええわけで、以前からフォローしているわけで・・・今回はシルクロードをめぐるホットな列車旅ですか♪【鉄道と愛国】吉岡桂子著、岩波書店、2023年刊<「BOOK」データベース>より戦後日本の発展の象徴、新幹線。アジア各地で高速鉄道の新設計画が進み、中国が日本と輸出を巡って競い合う現在、新幹線はどこまで日本の期待を背負って走るのか。1990年代から始まった新幹線商戦の舞台裏を取材し、世界最長の路線網を実現した中国の高速鉄道発展の実像に迫る第一部、中国、香港、韓国、東南アジア、インド、ハンガリーなど世界各地をたずね、鉄道を走らせる各国の思惑と、現地に生きる人々の声を伝える第二部を通じて、時代と共に移りゆく日中関係を描き出し、日本の現在地をあぶりだす。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(12/04予約、副本?、予約?)>rakuten鉄道と愛国まず「はじめに」から読み進めてみましょう。ウクライナ鉄道から言及するところが、いかにもジャーナリストではないか。pⅴ~ⅷ<はじめに> 毎日、開くフェイスブックがある。ウクライナ鉄道だ。 ロシアがウクライナを侵攻した2022年2月22日から読み始めた。戦火から鉄路を守り、避難する人たちを運ぶ。動員されて殉死した若い職員を悼む。国内の空港が全て閉鎖されているため、列車で首都キーウを目指す世界の首脳らを迎える。つかの間でも日常を取り戻そうと、あえてイースター(復活祭)を祝う。ロシアの暴挙は、戦時の鉄道の姿をあぶり出している。 ロシアの線路の幅は1520ミリ。旧ソ連の構成国だったウクライナも基本的に同じ幅だ。その先ポーランドからは欧州規格の1435ミリとなる。ウクライナでは一部に残る欧州と同じ幅の鉄路を復旧し、ポーランドに向けて直通列車を運行しようとしている。欧州の鉄路は国境を越えて広がる。線路の幅は勢力圏の象徴である。 鉄道は、国家と個人、政治と経済、歴史と現在が交叉し、越境しあう場所だ。 海を渡る新幹線を追いかけて、30年近くになる。 きっかけは、朝日新聞経済部の記者として1995年から約2年間、運輸省(現国土交通省)を担当したことだ。中国政府が北京―上海に初めて高速鉄道を敷く構想を打ち出し、日本政府は新幹線を売り込もうと必死になっていた。「日中友好」の象徴とされ、ODA(政府の途上国援助)で支援する前提だった。 その後、私は特派員として北京と上海に通算8年ほど駐在し、高速鉄道商戦を取材することになった。中国政府は日本とドイツ、フランスを巧みに競わせた。日欧とも翻弄された。結果的に東北新幹線はやて、独ICE、仏TGVをベースとする車両がすべて中国へ渡った。外国の技術を導入してカエル跳びで一気に進化させるやり方は、中国の産業政策の典型だ。死亡事故を起こしても、トライ・アンド・エラーの一幕として忘れられていく。わずか数年で日本の新幹線網を上回る距離を運行し始め、ほんとうに驚いた。 2020年秋までの3年半はバンコクを拠点にし、習近平政権が進める対外戦略「一帯一路」の沿線20ヵ国以上を訪ねた。中国の影響力を探るためだ。ちょうどアジア各地で高速鉄道構想が浮上し、日本と中国が受注をめぐって激しくぶつかりあっていた。アジアの国々は日中を両天秤にかけた。かつて日欧を手玉にとった中国のように。 正直言うと、これほど早く、中国の高速鉄道が新幹線のライバルとして国際市場に現れるとは思っていなかった。日本のかけ声は、かつての「独仏に負けるな」から「中国に負けるな」に転じた。だが、変わらなかったものがある。ビジネスの最前線にいる企業の人たち以上に政治家や官僚、そして世論が熱くなることだ。同じく巨額の資金がうごめく国家プロジェクトでも、ダムや橋とは違う。新幹線には日本社会の「熱」が宿る。私が「海を渡る新幹線」にこだわり続けている理由の一つだ。 新幹線の源流は、戦前の「弾丸列車」にある。日本国内だけでなく、大日本帝国として侵略した朝鮮半島や中国を抜けて、欧州や東南アジアまで延ばす構想もあった。 第二次世界大戦の敗戦で国外は途絶えたが、国内では東京―下関の計画が時を置かずして甦る。外資導入を前提に政財界の一部が動いた。国鉄には技術者が残っていた。ただ、朝日新聞社説が「「弾丸列車」案に反対す」「新線建設より復旧第一」」(1946年9月3日朝刊)と書いたように、戦火の爪痕は深く、それどころではなかった。 戦前と地続きにあった「夢の超特急」が新幹線となって開業したのは、1964年10月、東京五輪が開かれた秋のこと。東京―新大阪を最高時速200キロ超で走り、約4時間で結んだ。営業速度は世界一。国鉄総裁石田礼助は「新幹線は、全世界の鉄道の新時代を告げるもの」と語っている。敗戦から20年足らず。「安かろう悪かろう」と皮肉られながら欧米に割安の日本製品の輸出攻勢をかけていた時代だ。列強の一角を占めたにもかかわらず敗戦で砕けた日本人のプライドを、新幹線は埋める存在にもなっただろう。 そして、新幹線開業の4年後。日本は西ドイツ(現ドイツ)を抜いて「世界第二位の経済大国」に駆け上る。0系と呼ばれる団子鼻で白地に青いラインが映える初代ひかりは、当時を知る世代にとって「上げ潮」日本の記憶を呼び起こす記号である。 中国が高速鉄道を本格的に開業させたのは、北京五輪が開かれた2008年8月。北京―天津を最高速度350キロで走った。営業速度として世界最速を記録した。日本では「ぱくり新幹線」と揶揄されながらも、中国はあっというまに路線網を広げていく。北京―上海が開業した前年の10年には、中国は経済規模でも日本を追い抜く。「世界第二の経済大国」は入れ替わった。日本と中国は高速鉄道の受注で競い合う存在だ。
2024.08.11
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今回借りた3冊です。 だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は強いていえば、「手あたり次第」でしょうか♪<市立図書館>・鉄道と愛国・恋する映画・文・境雅人<大学図書館>(ただいま市民への開放サービスを休止中)図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)***********************************************************【鉄道と愛国】吉岡桂子著、岩波書店、2023年刊<「BOOK」データベース>より戦後日本の発展の象徴、新幹線。アジア各地で高速鉄道の新設計画が進み、中国が日本と輸出を巡って競い合う現在、新幹線はどこまで日本の期待を背負って走るのか。1990年代から始まった新幹線商戦の舞台裏を取材し、世界最長の路線網を実現した中国の高速鉄道発展の実像に迫る第一部、中国、香港、韓国、東南アジア、インド、ハンガリーなど世界各地をたずね、鉄道を走らせる各国の思惑と、現地に生きる人々の声を伝える第二部を通じて、時代と共に移りゆく日中関係を描き出し、日本の現在地をあぶりだす。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(12/04予約、副本?、予約?)>rakuten鉄道と愛国【恋する映画】 町山智浩著、 スモール出版、2021年刊<「BOOK」データベース>より「恋愛」についての映画は「人生」についての映画である。トラウマ級恋愛映画8本を徹底解剖。<読む前の大使寸評>追って記入rakuten恋する映画【文・境雅人】境雅人著、文藝春秋、2013年刊<「BOOK」データベース>より堺雅人は鞄に原稿を書くための道具を入れて、持ち歩いている。撮影の合間に楽屋で、休みの日に喫茶店で、「演じる」ことについて考え、文章にするのだ。そうして生まれた54作の本格エッセイに加え、作家の宮尾登美子氏、長嶋有氏との対談やインタビュー、写真を掘り起こして収録。役者の思考や日常が垣間見える一冊。出演作品リスト付き。<読む前の大使寸評>追って記入rakuten文・境雅人
2024.08.07
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『朝日デジタルの書評から』フォームや『読みたい本』フォームを作っているのだが、これを市図書館の予約に利用しようと、思い立ったのです。これまでの予約内容と予約候補は以下のとおりです。<予約中>・川上未映子『黄色い家』(7/24予約、副本?、予約504)現在39位・原田ひ香『図書館のお夜食』(10/04予約、副本17、予約402)現在18位・高野秀行『イラク水滸伝』(1/06予約、副本3、予約86)現在15位・絲山秋子『神と黒蟹県』(3/02予約、副本3、予約63)現在35位・三浦しおん『しんがりで寝ています』(4/12予約、副本?、予約106)現在44位・カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」(4/27予約、副本1、予約48)現在27位・前田和男『昭和街場のはやり歌』 (5/10予約、副本?、予約8)現在5位・小倉ヒラク『アジア発酵紀行』 (5/14予約、副本2、予約5)現在14位・池澤夏樹『ノイエ・ハイマート』(6/29予約、副本?、予約?)現在6位・内田樹『勇気論』(7/07予約、副本?、予約?)現在27位・有田芳正『誰も書かなかった統一教会』(7/27予約、副本?、予約?)現在13位<カートで待機中>・N・ネフスキー著『月と不死』・グレタたったひとりのストライキ・カズオ・イシグロ『夜想曲集』・沢木耕太郎『深夜特急』・原爆裁判:延滞資料があり予約不可<予約候補>・中野翠『ほいきた、トシヨリ生活』・鴨志田譲×西原理恵子『アジアパー伝』:図書館未収蔵・ジョージ・ミーガン『世界最長の徒歩旅行』:図書館未収蔵・井上ひさし『本の運命』・ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』・ケン・リュウ『草を結びて環を衡えん』:図書館未収蔵・九段理恵『東京都道場塔』:図書館未収蔵・外山滋比古『思考の整理学』・ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』・「中国」はいかにして統一されたか・街道をゆく「モンゴル紀行」「南蛮のみち」・地球の歩き方 日本・畑正憲『どんべえ物語』:図書館未収蔵・消費者金融ずるずる日記・ヤマザキマリ『水木しげる厳選集 異』:図書館未収蔵・猫社会学、はじめます:図書館未収蔵・書いてはいけない日本経済墜落の真相<予約分受取:5/10以降> ・本川達雄『ウマは走るヒトはコケる』(3/31予約、5/10受取)・南海トラフ地震の真実(10/20予約、5/15受取)・斎藤幸平『マルクス解体』(11/28予約、6/05受取)・李琴峰『彼岸花が咲く島』(6/19予約、6/25受取)・大学教授 こそこそ日記(1/12予約、6/29受取)・三浦しおん『墨のゆらめき』(8/9予約、7/07受取)・米番記者が見た大谷翔平(5/16予約、7/07受取)・椎名誠『続 失踪願望』(5/31予約、7/18受取)・『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(9/18予約、7/27受取)・堤未果のショック・ドクトリン(8/25予約、7/27受取)・吉岡桂子『鉄道と愛国』(12/04予約、8/06受取)**********************************************************************【黄色い家】川上未映子著、中央公論新社、2023年刊<「BOOK」データベース>より2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。長らく忘却していた20年前の記憶ー黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな“シノギ”に手を出す。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい…。善と悪の境界に肉薄する、今世紀最大の問題作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/24予約、副本?、予約504)>rakuten黄色い家【図書館のお夜食】原田ひ香著、ポプラ社、2023年刊<「BOOK」データベース>より東北地方の書店に勤めるものの、うまくいかず、仕事を辞めようかと思っていた樋口乙葉は、SNSで知った、東京の郊外にある「夜の図書館」で働くことになる。そこは普通の図書館と異なり、亡くなった作家の蔵書が集められた、“本の博物館”のような図書館だった。開館時間は夜7時から12時まで、まかないとして“実在の本に登場する料理”が出てくる「夜の図書館」で、本好きの同僚に囲まれながら働き始める乙葉だったがー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/04予約、副本17、予約402)>rakuten図書館のお夜食【イラク水滸伝】高野秀行著、文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>よりアフワールーそこは馬もラクダも戦車も使えず、巨大な軍勢は入れず、境界線もなく、迷路のように水路が入り組み、方角すらわからない地。権力に抗うアウトローや迫害されたマイノリティが逃げ込む、謎の巨大湿地帯。中東情勢の裏側と第一級の民族誌的記録ー“現代最後のカオス”に挑んだ圧巻のノンフィクション大作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/06予約、副本3、予約86)>rakutenイラク水滸伝【神と黒蟹県】絲山秋子著、 文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>より「黒蟹とはまた、微妙ですね」。日本のどこにでもあるような「地味県」の黒蟹県。そこで暮らす、そこを訪れる、名もなき人々や半知半能の神がすれ違いながら織りなす、かけがえなく、いとおしい日々。まだ名付けられていない人間関係を描き続けてきた著者真骨頂の連作小説集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(3/02予約、副本3、予約63)>rakuten神と黒蟹県【しんがりで寝ています】三浦しおん著、 集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より雑誌「BAILA」での連載4年分に、書き下ろしを加えた全55編!三浦しをんの沼にどっぷりハマる、最新&爆笑エッセイ集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/12予約、副本?、予約111)>rakutenしんがりで寝ています【カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」】 室橋 裕和著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりいまや日本のいたるところで見かけるようになった、格安インドカレー店。そのほとんどがネパール人経営なのはなぜか?どの店もバターチキンカレー、ナン、タンドリーチキンといったメニューがコピペのように並ぶのはどうしてか?「インネパ」とも呼ばれるこれらの店は、どんな経緯で日本全国に増殖していったのか…その謎を追ううちに見えてきたのは、日本の外国人行政の盲点を突く移民たちのしたたかさと、海外出稼ぎが主要産業になっている国ならではの悲哀だった。おいしさのなかの真実に迫るノンフィクション。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/27予約、副本1、予約48)>rakutenカレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」【昭和街場のはやり歌】前田和男著、 彩流社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「はやり歌」から、明日の日本の姿が見えてくる…。歌とともに時代を共有した「団塊」といわれるベビーブーマー世代が、エピソードを交え描く歌謡社会文化論!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/01予約、副本?、予約8)>rakuten昭和街場のはやり歌【アジア発酵紀行】小倉ヒラク著、文藝春秋、2023年刊<出版社>よりアジアの巨大な地下水脈をたどる冒険行。「発酵界のインディ・ジョーンズ」を見ているようだ!ーー高野秀行(ノンフィクション作家) 自由になれーー各地の微生物が、奔放な旅を通じて語りかけてくる。ーー平松洋子(作家・エッセイスト)発酵はアナーキーだ! チベット~雲南の「茶馬古道」からインド最果ての内戦地帯へーー前人未到の旅がいま幕をあける! 壮大なスケールでアジアの発酵文化の源流が浮き彫りになる渾身作。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/14予約、副本2、予約21)>rakutenアジア発酵紀行【ノイエ・ハイマート】池澤夏樹著、新潮社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりある日、難民になる。「新しい故郷」を求めて、歩きだす。そんなに遠い世界の話ではないのです。シリアで、クロアチアで、アフガニスタンで、満洲で、生きのびるために難民となった、ふつうの人たち。その姿と心を、てのひらで触れるようにして描きだす。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(6/29予約、副本?、予約?)>rakutenノイエ・ハイマート【勇気論】内田樹著、光文社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりモヤモヤを抱えた編集者との“カウンセリング”往復書簡。ジョブズ、フロイト、孔子、伊丹万作、河竹黙阿弥、大瀧詠一、パルメニデス、富永仲基…話頭は転々として奇を極めー。いまの日本人に一番足りないものは何だろうか?読めば心が軽くなるーウチダが綴る9通のメッセージ。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/07予約、副本?、予約?)>rakuten勇気論【誰も書かなかった統一教会】有田芳正著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より2022年7月の安倍元首相銃撃事件後、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と政界の癒着を中心に多くの報道があった。だが、メディアが報じたのは全体像のごく一部だった。教団をめぐる多くの問題が残されたまま事件の風化を憂慮したジャーナリストが、教団の政治への浸食の実態、霊感商法の問題はもちろん、「勝共=反共」にもかかわらず北朝鮮に接近していた事実、教団の実態を早くから認識していたアメリカのフレイザー委員会報告書、教団関係者による銃砲店経営、原理研究会の武装組織、「世界日報」編集局長襲撃事件、公安が教団関係者を調査していた事実等、その全貌を公開する。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約(7/27予約、副本?、予約?)>rakuten誰も書かなかった統一教会【月と不死】N・ネフスキー著、平凡社、1971年刊<出版社>より著者は日本民俗学界の異色の存在として知られるロシア人学者で,柳田国男,折口信夫らと親交を結び,沖縄,東北などの民俗を採録した。本書は日本語で発表された論文・書簡を網羅した唯一の著作集。<読む前の大使寸評>ロシア人にして、日本民俗学界の異色の存在が気になるのです。<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>heibonsha月と不死図書館予約の運用にも慣れて、速攻で入手するコツも何となくつかんだと思うのだ♪・朝日書評欄で探すとしたら、3ヶ月前掲載くらいのモノが狙い目かも。・専門的すぎるほどのモノは、予約0となっていることが多い。・受取館に収蔵しているモノは、移送する手間が省けるので早くなるだろう。・本屋の店頭に出た直後の新刊本・ウィキペディアでめぼしい著作を探す・神戸市図書館の予約順位は毎週火曜日(午前1時~3時) に更新されます。・Kindle版を購入すれば、その本の全て読めるのだが、紙の本から書き写す手間が好きなわけでおます。予約分受取目録R26好書好日トップ図書館情報ネットワーク 蔵書検索
2024.08.07
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図書館に予約していた『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』という本を、待つこと10ヶ月ほどでゲットしたのです。坂本さんはツイッターやSNSと距離をおくというか、時代の流れに逆らうように「非同期」を意識してきたとのこと・・・アナログな私はしびれるのです♪【ぼくはあと何回、満月を見るだろう】坂本龍一著、新潮社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「何もしなければ余命は半年ですね」ガンの転移が発覚し、医師からそう告げられたのは、2020年12月のこと。だが、その日が来る前に言葉にしておくべきことがある。創作や社会運動を支える哲学、坂本家の歴史と家族に対する想い、そして自分が去ったあとの世界についてー。幼少期から57歳までの人生を振り返った『音楽は自由にする』を継ぎ、最晩年までの足跡を未来に遺す、決定的自伝。著者の最期の日々を綴った、盟友・鈴木正文による書き下ろし原稿を収録。<読む前の大使寸評>坂本さんはツイッターやSNSと距離をおくというか、時代の流れに逆らうように「非同期」を意識してきたとのこと・・・アナログな私はしびれるのです♪<図書館予約:(9/18予約、副本5、予約126)>rakutenぼくはあと何回、満月を見るだろう1章「1 ガンと生きる」の続きを、見てみましょう。p10~11<手術直前のこと> ここで、ぼくの今の病状について説明しておきたいと思います。生々しい話になりますが、しばしお付き合いください。 2014年に発覚した中咽頭ガンはその後、晴れて寛解したものの、2020年6月にニューヨークで検査を受け、直腸ガンと診断されてしまいました。前回、放射線治療がうまくいったので、ニューヨークのそのガン・センターのことを信頼していました。今回は放射線治療と並行して抗ガン剤も服用しました。しかし治療を始めて数ヶ月が経っても、なかなかガンが消えません。 同じ年の12月に日本での仕事があり、その頃、物忘れの多さに悩んでいたこともあって帰国ついでに脳の調子を調べておこうと思い、11月中旬から新型コロナウィルスの感染対策のため2週間の隔離を経てから人間ドックを受けました。そうしたら、脳は正常だったのですが、あろうことか別の場所で異変が見つかってしまった。直腸ガンが肝臓やリンパにも転移しているというのです。 この時点で放射線治療が終わって3ヵ月は経っていましたが、なぜかニューヨークの病院では転移の事実を告げられていませんでした。少なくとも9月末には転移の根っこは見えていたはずなのに。当然、転移自体がショックなことだけど、全米でも一、二を争うガン・センターが見落としていたのか、あるいはどういう理由でか、ぼくに黙っていたことに対して、一気に不信感が芽生えました。『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』1:ベルトルッチとボウルズ
2024.08.05
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図書館で『漢字のなりたち 日英対訳』という本を、手にしたのです。白川先生が中国で生まれた古代語(漢字)を視覚化して語っています♪それも、日本語と英語で語っているのが、いかにも言語学者ではないか。*********************************************************【漢字のなりたち 日英対訳】 白川静, アラン・スウェイツ著、平凡社、2016年刊<「BOOK」データベース>より今も使われる漢字一つ一つに秘められた古代人の信仰や風俗ー豊かで奥深い漢字の世界を歌舞・刑罰・医術など14系列100字でめぐる対訳入門書。<読む前の大使寸評>白川先生が中国で生まれた古代語(漢字)を視覚化して語っています♪それも、日本語と英語で語っているのが、いかにも言語学者ではないか。rakuten漢字のなりたち 日英対訳「白川静漢字暦」から抜粋された「天象」「江河」「鬼神」など14の系列の字が紹介されているが、「江河」を、見てみましょう。P19~22<江河>水はつねに聖なる力の源泉であった。清冽な泉は新しい生命を生み、ほとばしる渓流には生命のリズムがある。また旺洋たる大河はその流域に文明を生み、それ養い育てた。文明のはじめのときに生まれた文字の象形のうちには、そのような水と人間との深いかかわりが、古い記憶として残されている。<Rivers and Streams>Water has a sacred force. Clear springs give birth to new life, and swift streams have a vital rhythm all their own. Moreover, great rivers give rise to and sustain civilizations within thir basins. In the shapes of characters produced at the dawn of civilizations, we can see a distant memory of the intimate connection between water and humans.<川・水>「川」は流れている水の形。勢いよく流れる大きな水の流れを表している。小さな水の流れは水である。<江>「江」の音符(音を表わす符号)は工。工に紅・空のように、左右にわたってゆるやかに湾曲するものの意がある。長江のその全体の流れの姿が、古い時代にもすでに把握されていたのであろう。<河>「河」は甲骨文においては柯に従う。柯は木の柯枝の形。河水(黄河)の上源は古くは知られなかったとしても、オルドスの地帯で一たび直角に南下し、また河曲部に至って、さらに直角に東に向かい、ついに斜して海に入る。その屈折の仕方が柯枝に似ていることを、古人はすでに知っていたのであろう。『漢字のなりたち 日英対訳』2:天象『漢字のなりたち 日英対訳』1:はじめに
2024.08.03
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図書館で『漢字のなりたち 日英対訳』という本を、手にしたのです。白川先生が中国で生まれた古代語(漢字)を視覚化して語っています♪それも、日本語と英語で語っているのが、いかにも言語学者ではないか。*********************************************************【漢字のなりたち 日英対訳】 白川静, アラン・スウェイツ著、平凡社、2016年刊<「BOOK」データベース>より今も使われる漢字一つ一つに秘められた古代人の信仰や風俗ー豊かで奥深い漢字の世界を歌舞・刑罰・医術など14系列100字でめぐる対訳入門書。<読む前の大使寸評>白川先生が中国で生まれた古代語(漢字)を視覚化して語っています♪それも、日本語と英語で語っているのが、いかにも言語学者ではないか。rakuten漢字のなりたち 日英対訳「白川静漢字暦」から抜粋された「天象」「江河」「鬼神」など14の系列の字が紹介されているが、冒頭の「天象」を、見てみましょう。P11~13<天象> ことばの終わりの時代に、神話があった。 そして神話は、古代の文字の形象のうちにも、おもかげをとどめている。 そのころ、自然は神々のものであり、精霊のすみかであった。 人々はその中にあって、神との交通を求め、自然との調和を願った。<Natural Phenomena> Mytse arose out of many millennia of language use, and myth had an influence on the shape of ancient Chinnese characters, in those days,the natural realm was the dminion of the gods and the abode of spirits. Humanns also lived in nature's midst and sought communion with the gods and harmony with nature. <風・鳳>「風」は鳳形の取りであらわされ、それは神の使者であった。上帝の命をあまねく伝えるために、東西南北、それぞれの地方にある神々も、みな鳥を使者とし、その往来は風のそよぎとして感知された。風土、風気、風俗は、みなその地の神々の意志によって形成されるものとされた。『漢字のなりたち 日英対訳』1:はじめに
2024.08.01
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図書館で『漢字のなりたち 日英対訳』という本を、手にしたのです。白川先生が中国で生まれた古代語(漢字)を視覚化して語っています♪それも、日本語と英語で語っているのが、いかにも言語学者ではないか。*********************************************************【漢字のなりたち 日英対訳】 白川静, アラン・スウェイツ著、平凡社、2016年刊<「BOOK」データベース>より今も使われる漢字一つ一つに秘められた古代人の信仰や風俗ー豊かで奥深い漢字の世界を歌舞・刑罰・医術など14系列100字でめぐる対訳入門書。<読む前の大使寸評>白川先生が中国で生まれた古代語(漢字)を視覚化して語っています♪それも、日本語と英語で語っているのが、いかにも言語学者ではないか。rakuten漢字のなりたち 日英対訳まず「はじめに」を、見てみましょう。白川先生が語る古代語が見えるのがええでぇ♪P5~7<はじめに> 文字は、ことばの器として生まれた。ことばを視覚化し、形象化して、ことばのもつ呪能をそこに内在させることが、その目的であった。ことばが神と交通する直接の手段であった時代に、ことばを何らかの方法で定着させようとすることが試みられたが、その方法は容易に発見されなかった。それで久しい間、上古の人びとは絵画的な方法、たとえば犠牲の姿や祭儀のようすを描写することなどによって、その呪的な目的を達しようとした。 オーリニャック期やマグダレニアン期の、洞窟の奥深く描かれている動物画は、狩猟の成功を祈る呪的な目的をもつものであったし、イベリアの先史地域の岸壁画、その他未開社会に広汎に分布する種々の象徴的な絵画は、いずれも絵画は、いずれも神がそのその絵を判読してくれるであろうという期待を以てかかれたものであった。中国においても、殷周期の青銅器に残されている図象的な標識のうちには、そういう起原をもつものがあるように思われる。たとえば、『山海経』にみえる奇怪な神像を図象化したらしいものもみられるのである。 しかし、絵画的な表示は、もとよりまだ文字ではない。文字はロゴスを内に宿すものでなければならない。ロゴスとして、存在のあらわれであることばを、その全体系において受け止めうるものでなくてはならない。従って文字は、古代の文化圏のうちでも、最も高い文化段階に達したところでだけ成立した。それらはみな、ことばを視覚化し形象化したもの、すなわち象形文字であった。そしてそれらはまた、神事や儀礼に用いるものとして、神聖文字であった。 文字はそのような職事にたずさわる神聖階級によって創出された。楔形文字、エジプト文字、および漢字がそれである。 しかし文字が象形文字であり、神聖文字であるという基本的性格は、近東においてはながく維持されることがなかった。民族の興亡がはげしく、文化の隆替ということもあって、その文字はやがて他の民族によって借用されるようになったが、そのとき異なることばの体系に適応させるために、ことばと文字との直接的な結合を分離することが必要であった。 文字はその形象の含む本来的な意味を離れて、音標科された。こうしてアルファベットが生まれる。 アルファベットの成立は、文字の大きな進歩とされるものであるが、しかしそのとき、ことばと文字との結合という古代文字のもつ最も本質的なものは失われた。 そして漢字だけが、いまもなおその特質をもちつづけている。 漢字はその成立以来、三千数百年にわたって、そのことばとともに生きつづけ、中国の文化、またその文化圏としての東洋の文化を培う土壌として、尽きることのない生命の源泉をなしている。ことばの形象的な表現である漢字は、したがってことばと同じようにそれ自身の体系をもち、世界観をもっている。そのことが、漢字文化のあらゆる特質を規定しているのである。
2024.08.01
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図書館に予約していた『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』という本を、待つこと10ヶ月ほどでゲットしたのです。坂本さんはツイッターやSNSと距離をおくというか、時代の流れに逆らうように「非同期」を意識してきたとのこと・・・アナログな私はしびれるのです♪【ぼくはあと何回、満月を見るだろう】坂本龍一著、新潮社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「何もしなければ余命は半年ですね」ガンの転移が発覚し、医師からそう告げられたのは、2020年12月のこと。だが、その日が来る前に言葉にしておくべきことがある。創作や社会運動を支える哲学、坂本家の歴史と家族に対する想い、そして自分が去ったあとの世界についてー。幼少期から57歳までの人生を振り返った『音楽は自由にする』を継ぎ、最晩年までの足跡を未来に遺す、決定的自伝。著者の最期の日々を綴った、盟友・鈴木正文による書き下ろし原稿を収録。<読む前の大使寸評>坂本さんはツイッターやSNSと距離をおくというか、時代の流れに逆らうように「非同期」を意識してきたとのこと・・・アナログな私はしびれるのです♪<図書館予約:(9/18予約、副本5、予約126)>rakutenぼくはあと何回、満月を見るだろうまず冒頭の1章から、見てみましょう。p7~10<1 ガンと生きる>■ベルトルッチとボウルズ「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」70歳の古希を迎えてから、よくそんなことを思います。こんな台詞が映画『シェルタリング・スカイ』(1987年)に出てきたことを憶えている方もいるかもしれません。『ラスト・エンペラー』(1987年)に続いてぼくが音楽を手掛けた、ベルナルド・ベルトルッチ監督の作品ですね。 映画の最後に、原作者のポール・ボウルズが登場し、枯れ葉ぼそっとこう語ります。「人は自分の死を予知できず/人生を尽きぬ泉だと思う/だがすべて物事は数回 起こるか起こらないか/自分の人生を左右したと思えるほど/大切な子供の頃の思い出も/あと何回 心に浮かべるか/4~5回 思い出すのがせいぜいだ/あと何回 満月をながめるか/せいぜい20回/だが人は 無限の機会があると思う」 実際、ボウルズは映画の完成から10年も経たずにこの世を去るわけですが、『シェルタリング・スカイ』に関わっていた頃、ぼくはまだ38歳でした。ボウルズのこの言葉は鮮烈な印象を残しましたが、必ずしも我がこととして捉えていたわけではなかった。 でも、2014年に中咽頭ガンが発覚してから、自らのモータリニティ・・・死についても、自然と考えざるを得なくなりました。 そんな経緯もあって、2017年に発表したアルバム『async』では、『fullmoon』(満月)という曲を作りました。映画の中からボウルズの先ほどの一節をサンプリングし、同じ文章を中国語やドイツ語、ペルシャ語などさまざまな言語に翻訳して、それぞれのネイティブのアーティストに読み上げてもらいました。 一番最後がイタリア語で、実はその朗読をしているのがベルトルッチなんです。「もしイタリア語を入れるなら、あなたしか考えられないんだけど、やってくれるかな?」と軽い気持ちで頼んだら、彼からすぐに「ああ、いいよ」とメールの返信が届き、しばらくして録音した音声データが送られてきました。 ボウルズの声は、戦前のニューヨークで前衛作曲家としても活躍しただけあって枯れた味わいがあり、声質からも並のアメリカ人とは違う教養の深さを感じさせます。対して、ベルトルッチの声は実にドラマティックで、さすがはオペラの国のひとだなと思わせる、こちらも素晴らしいものでした。 しかし、そのベルトルッチも曲の完成から1年後には亡くなります。録音という形ではあるものの、『fullmoon』での声の出演が、彼の生前のアピアランスとなってしまいました。
2024.07.30
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図書館に予約していた『続 失踪願望』という本を、待つこと1ヶ月半ほどでゲットしたのです。この本は日記(続 失踪願望)と、エッセイ(さらば友よ!)の二本立て構成となっているが・・・いずれもややマッチョなシーナが見られて・・・ええでぇ♪【続 失踪願望】椎名誠著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より「おい、シーナ、逃げるなよ」親友からの最期の“檄”その真意とは?書き下ろし「さらば友よ!」収録。老いること、喪失を抱えて生きること、愛するものたちへの思いをまっすぐに。79歳の日録が静かに差し出す新たな人生の世界線…共感必至!<読む前の大使寸評>この本は日記(続 失踪願望)と、エッセイ(さらば友よ!)の二本立て構成となっているが・・・いずれもややマッチョなシーナが見られて・・・ええでぇ♪<図書館予約:(5/31予約、副本?、予約8)>rakuten続 失踪願望「どぶろく、島酒、アイスバイン:2022年10月」から八丈島キャンプあたりを、見てみましょう。p61~64<どぶろく、島酒、アイスバイン:2022年10月>■10月13日(木)「kotoba」の著者インタビューで集英社へ。聞き手は目黒(考二)。ひさしぶりだ。コロナ以降なかなか会えなくなっていた。何してたんだ? と聞くと、家で本を読んでいる毎日と言っていた。文芸評論家そのものじゃないか。 11月に発売となる『失踪願望。』を中心にしばし文章世界の話をする。目黒はやや太っていたが早口に迫力があり、あいかわらずかなわなかった。■10月14日(金) 八丈島は雨だった。 週刊ポストの連載「わしらは怪しい雑魚釣り隊」の取材だ。雑魚釣り隊は第三次怪しい探検隊の位置づけであり、現在は休刊してしまった沖釣り雑誌「つり丸」の連載として2005年にはじまった。2012年からは「週刊ポスト」に移籍して、月に一度どこかの浜辺に出かけては自堕落キャンプを続けてきた。 それが今回の取材で一応、最終回を迎える。担当のケンタロウに「17年のケジメとしてどこか行きたい海はありますか?」と聞かれたので八丈島と答えた。ちなみに第一回は伊豆大島だった。 雨で堤防釣りは中止となり、今夜の肴は出船するメンバーの釣果次第だ。居残り組はキャンプ場で怠惰にビールを飲んだ。ツマミは島寿司だ。文句ない。 夕方に無事、釣り班が豪華絢爛の島魚を仕留めてきて宴会のメドがたった。山下カズも金目鯛を差し入れてくれ、これをしゃぶしゃぶにした。島焼酎がうまい。 夜になっても雨は止まらなかったが、タープに当たる雨音が心地よい。ぼく自身の釣りはちっとも上達しなかったが、こうして釣って食って飲んでの贅沢な17年間だったなあ、と感傷にひたっていたら、どっかで聞いたことのあるメロディーが聞こえてきた。ザコという友人がぼろんぼろんとギターを奏でて歌っていたのだ。 俺がいたんじゃお嫁にゃ行けぬ、という寅さんの「男はつらいよ」の主題歌だ。 長く飲食業界での勤務経験があるザコは隊のコックでもあるけれど、スカバンドのミュージシャンでもある。彼が歌う寅さんはぐっとモダンな印象になるが、これはこれで良さがある。 いつの間にか大合唱となった。二番の歌詞に「目方で男が売れるなら」というフレーズがある。これまでも聞いていたはずなのだが、深く考えたことはなかった。いま歌っている酒好きで旅好きな友人はみんな目方でなんか測れない、いいやつらだなと深く頷き、島酒をおかわり。何時に寝たかは覚えていない。■10月15日(土) 今日も八丈島は雨だ。みんなはキャンプをしていたが、トクヤとシーナのために、ケンタロウはコテージを予約してくれた。そのコテージでトクヤが淹れてくれるコーヒーを飲んで、キャンプ場へ行くと、ヅケ丼の朝飯が用意されていた。トシをとるのもいいもんじゃのう。 午後から藍ヶ江へ移動。今夜はカズが漁師仲間らと野外宴会をしてくれるという。昨日、出船したメンバーが仕留めた10キロ超えカンパチの巨大なカマ焼きメインに、茹でたて島ダコの刺身、蒸かした里芋などがゴーカに並んでいる。島の人気居酒屋「むらた」の店主が焼きそば、スパゲッティまで作ってくれ、ほとんど暴飲暴食だ。途中、追加で酒の買い出し隊が出た。 21時くらいまで続いた続いただろうか、風も強くなったので宴会はお開き。コテージに戻ったが、なんだか眠れないので竹田に「寝酒に島酒を頼めるか」と連絡すると、一升瓶とたっぷりの氷を太陽と共に持ってきてくれた。■10月16日(日) 最終日まで雨だったが、それも八丈島らしくていい。 あまった刺身はヅケにしておいたのでそれを使って童夢が島寿司を握ってくれた。ざっと300カン。30人の男たちのためだ。あっという間にもっともっと!のサワギになった。童夢の島寿司はうまい! 残りの野菜をすべて投入した味噌汁も作る。運転手以外はビールを飲んだ。 夕方の便で東京に戻る。まあ八丈島も東京なのだが。 雑魚釣り隊の遠征も2022年で17年になった。テントかついで全国をマタにかけ、海だ岬だ泥洲だ島だとうろついてきた。途中コロナによる遠征の中断があったが初期隊員の8人から年ごとにどんどん増えていき現在はなんと30人になっていた。八丈島遠征の獲物は1メートル級のカンパチをはじめ10種類、100尾あまり。全部で20キロ以上になっていた。『続 失踪願望』1:『あひるのうたがきこえてくるよ』の舞台となった奥会津
2024.07.29
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今回借りた4冊です。 だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は強いていえば、「予約本」でしょうか♪<市立図書館>・堤未果のショック・ドクトリン・ぼくはあと何回、満月を見るだろう・墜落・漢字のなりたち 日英対訳<大学図書館>(ただいま市民への開放サービスを休止中)図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)***********************************************************【堤未果のショック・ドクトリン】堤未果著、幻冬舎、2023年刊<「BOOK」データベース>より「ショック・ドクトリン」とはテロや大災害など、恐怖で国民が思考停止している最中に、為政者や巨大資本がどさくさに紛れに過激な政策を推し進める悪魔の手法のことである。日本でも大地震やコロナ禍という惨事の裏で、知らない間に個人情報や資産が奪われようとしている。パンデミックで空前の利益を得る製薬企業の手口、マイナンバーカード普及の先にある政府の思惑など…。強欲資本主義の巧妙な正体を見抜き、私たちの生命・財産を守る方法とは?滅びゆく日本の実態を看破する覚悟の一冊。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/25予約、副本7、予約177)>rakuten堤未果のショック・ドクトリン【ぼくはあと何回、満月を見るだろう】坂本龍一著、新潮社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「何もしなければ余命は半年ですね」ガンの転移が発覚し、医師からそう告げられたのは、2020年12月のこと。だが、その日が来る前に言葉にしておくべきことがある。創作や社会運動を支える哲学、坂本家の歴史と家族に対する想い、そして自分が去ったあとの世界についてー。幼少期から57歳までの人生を振り返った『音楽は自由にする』を継ぎ、最晩年までの足跡を未来に遺す、決定的自伝。著者の最期の日々を綴った、盟友・鈴木正文による書き下ろし原稿を収録。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(9/18予約、副本5、予約126)>rakutenぼくはあと何回、満月を見るだろう【墜落】真山仁著、文藝春秋、2022年刊<「BOOK」データベース>より2022年6月金城華が夫の一を刺殺。DVに耐えかねた妻が夫を殺した単純な事件として解決するはずだった。しかし、担当検事の冨永真一は不審を感じ、自ら捜査に乗り出す。ほぼ時を同じくして糸満市で自衛隊の戦闘機の墜落事故が発生。民間人が死亡したことで軍事基地が集中する沖縄では、抗議デモが巻き起こる…。かつてない臨場感で沖縄の姿を炙りだす、冨永検事シリーズ第三弾にして最高傑作!<読む前の大使寸評>追って記入rakuten墜落【漢字のなりたち 日英対訳】 白川静, アラン・スウェイツ著、平凡社、2016年刊<「BOOK」データベース>より今も使われる漢字一つ一つに秘められた古代人の信仰や風俗ー豊かで奥深い漢字の世界を歌舞・刑罰・医術など14系列100字でめぐる対訳入門書。<読む前の大使寸評>追って記入rakuten漢字のなりたち 日英対訳
2024.07.28
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『朝日デジタルの書評から』フォームや『読みたい本』フォームを作っているのだが、これを市図書館の予約に利用しようと、思い立ったのです。これまでの予約内容と予約候補は以下のとおりです。<予約中>・川上未映子『黄色い家』(7/24予約、副本?、予約504)現在49位・原田ひ香『図書館のお夜食』(10/04予約、副本17、予約402)現在26位・吉岡桂子『鉄道と愛国』(12/04予約、副本?、予約?)現在1位・高野秀行『イラク水滸伝』(1/06予約、副本3、予約86)現在19位・絲山秋子『神と黒蟹県』(3/02予約、副本3、予約63)現在39位・三浦しおん『しんがりで寝ています』(4/12予約、副本?、予約106)現在49位・カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」(4/27予約、副本1、予約48)現在31位・前田和男『昭和街場のはやり歌』 (5/10予約、副本?、予約8)現在5位・小倉ヒラク『アジア発酵紀行』 (5/14予約、副本2、予約5)現在15位・池澤夏樹『ノイエ・ハイマート』(6/29予約、副本?、予約?)現在6位・内田樹『勇気論』(7/07予約、副本?、予約?)現在28位・有田芳正『誰も書かなかった統一教会』(7/27予約、副本?、予約?)現在13位<カートで待機中>・N・ネフスキー著『月と不死』・グレタたったひとりのストライキ・カズオ・イシグロ『夜想曲集』・沢木耕太郎『深夜特急』・原爆裁判:延滞資料があり予約不可<予約候補>・中野翠『ほいきた、トシヨリ生活』・鴨志田譲×西原理恵子『アジアパー伝』:図書館未収蔵・ジョージ・ミーガン『世界最長の徒歩旅行』:図書館未収蔵・井上ひさし『本の運命』・ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』・ケン・リュウ『草を結びて環を衡えん』:図書館未収蔵・九段理恵『東京都道場塔』:図書館未収蔵・外山滋比古『思考の整理学』・ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』・「中国」はいかにして統一されたか・街道をゆく「モンゴル紀行」「南蛮のみち」・地球の歩き方 日本・畑正憲『どんべえ物語』:図書館未収蔵・消費者金融ずるずる日記・ヤマザキマリ『水木しげる厳選集 異』:図書館未収蔵・猫社会学、はじめます:図書館未収蔵<予約分受取:4/28以降> ・Wedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機 (4/16予約、4/28受取)・本川達雄『ウマは走るヒトはコケる』(3/31予約、5/10受取)・南海トラフ地震の真実(10/20予約、5/15受取)・斎藤幸平『マルクス解体』(11/28予約、6/05受取)・李琴峰『彼岸花が咲く島』(6/19予約、6/25受取)・大学教授 こそこそ日記(1/12予約、6/29受取)・三浦しおん『墨のゆらめき』(8/9予約、7/07受取)・米番記者が見た大谷翔平(5/16予約、7/07受取)・椎名誠『続 失踪願望』(5/31予約、7/18受取)・『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(9/18予約、7/27受取)・堤未果のショック・ドクトリン(8/25予約、7/27受取)**********************************************************************【黄色い家】川上未映子著、中央公論新社、2023年刊<「BOOK」データベース>より2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。長らく忘却していた20年前の記憶ー黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな“シノギ”に手を出す。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい…。善と悪の境界に肉薄する、今世紀最大の問題作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/24予約、副本?、予約504)>rakuten黄色い家【図書館のお夜食】原田ひ香著、ポプラ社、2023年刊<「BOOK」データベース>より東北地方の書店に勤めるものの、うまくいかず、仕事を辞めようかと思っていた樋口乙葉は、SNSで知った、東京の郊外にある「夜の図書館」で働くことになる。そこは普通の図書館と異なり、亡くなった作家の蔵書が集められた、“本の博物館”のような図書館だった。開館時間は夜7時から12時まで、まかないとして“実在の本に登場する料理”が出てくる「夜の図書館」で、本好きの同僚に囲まれながら働き始める乙葉だったがー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/04予約、副本17、予約402)>rakuten図書館のお夜食【鉄道と愛国】吉岡桂子著、岩波書店、2023年刊<「BOOK」データベース>より戦後日本の発展の象徴、新幹線。アジア各地で高速鉄道の新設計画が進み、中国が日本と輸出を巡って競い合う現在、新幹線はどこまで日本の期待を背負って走るのか。一九九〇年代から始まった新幹線商戦の舞台裏を取材し、世界最長の路線網を実現した中国の高速鉄道発展の実像に迫る第一部、中国、香港、韓国、東南アジア、インド、ハンガリーなど世界各地をたずね、鉄道を走らせる各国の思惑と、現地に生きる人々の声を伝える第二部を通じて、時代と共に移りゆく日中関係を描き出し、日本の現在地をあぶりだす。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(12/04予約、副本?、予約?)>rakuten鉄道と愛国【イラク水滸伝】高野秀行著、文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>よりアフワールーそこは馬もラクダも戦車も使えず、巨大な軍勢は入れず、境界線もなく、迷路のように水路が入り組み、方角すらわからない地。権力に抗うアウトローや迫害されたマイノリティが逃げ込む、謎の巨大湿地帯。中東情勢の裏側と第一級の民族誌的記録ー“現代最後のカオス”に挑んだ圧巻のノンフィクション大作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/06予約、副本3、予約86)>rakutenイラク水滸伝【神と黒蟹県】絲山秋子著、 文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>より「黒蟹とはまた、微妙ですね」。日本のどこにでもあるような「地味県」の黒蟹県。そこで暮らす、そこを訪れる、名もなき人々や半知半能の神がすれ違いながら織りなす、かけがえなく、いとおしい日々。まだ名付けられていない人間関係を描き続けてきた著者真骨頂の連作小説集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(3/02予約、副本3、予約63)>rakuten神と黒蟹県【しんがりで寝ています】三浦しおん著、 集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より雑誌「BAILA」での連載4年分に、書き下ろしを加えた全55編!三浦しをんの沼にどっぷりハマる、最新&爆笑エッセイ集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/12予約、副本?、予約111)>rakutenしんがりで寝ています【カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」】 室橋 裕和著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりいまや日本のいたるところで見かけるようになった、格安インドカレー店。そのほとんどがネパール人経営なのはなぜか?どの店もバターチキンカレー、ナン、タンドリーチキンといったメニューがコピペのように並ぶのはどうしてか?「インネパ」とも呼ばれるこれらの店は、どんな経緯で日本全国に増殖していったのか…その謎を追ううちに見えてきたのは、日本の外国人行政の盲点を突く移民たちのしたたかさと、海外出稼ぎが主要産業になっている国ならではの悲哀だった。おいしさのなかの真実に迫るノンフィクション。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/27予約、副本1、予約48)>rakutenカレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」【昭和街場のはやり歌】前田和男著、 彩流社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「はやり歌」から、明日の日本の姿が見えてくる…。歌とともに時代を共有した「団塊」といわれるベビーブーマー世代が、エピソードを交え描く歌謡社会文化論!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/01予約、副本?、予約8)>rakuten昭和街場のはやり歌【アジア発酵紀行】小倉ヒラク著、文藝春秋、2023年刊<出版社>よりアジアの巨大な地下水脈をたどる冒険行。「発酵界のインディ・ジョーンズ」を見ているようだ!ーー高野秀行(ノンフィクション作家) 自由になれーー各地の微生物が、奔放な旅を通じて語りかけてくる。ーー平松洋子(作家・エッセイスト)発酵はアナーキーだ! チベット~雲南の「茶馬古道」からインド最果ての内戦地帯へーー前人未到の旅がいま幕をあける! 壮大なスケールでアジアの発酵文化の源流が浮き彫りになる渾身作。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/14予約、副本2、予約21)>rakutenアジア発酵紀行【ノイエ・ハイマート】池澤夏樹著、新潮社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりある日、難民になる。「新しい故郷」を求めて、歩きだす。そんなに遠い世界の話ではないのです。シリアで、クロアチアで、アフガニスタンで、満洲で、生きのびるために難民となった、ふつうの人たち。その姿と心を、てのひらで触れるようにして描きだす。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(6/29予約、副本?、予約?)>rakutenノイエ・ハイマート【勇気論】内田樹著、光文社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりモヤモヤを抱えた編集者との“カウンセリング”往復書簡。ジョブズ、フロイト、孔子、伊丹万作、河竹黙阿弥、大瀧詠一、パルメニデス、富永仲基…話頭は転々として奇を極めー。いまの日本人に一番足りないものは何だろうか?読めば心が軽くなるーウチダが綴る9通のメッセージ。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/07予約、副本?、予約?)>rakuten勇気論【誰も書かなかった統一教会】有田芳正著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より2022年7月の安倍元首相銃撃事件後、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と政界の癒着を中心に多くの報道があった。だが、メディアが報じたのは全体像のごく一部だった。教団をめぐる多くの問題が残されたまま事件の風化を憂慮したジャーナリストが、教団の政治への浸食の実態、霊感商法の問題はもちろん、「勝共=反共」にもかかわらず北朝鮮に接近していた事実、教団の実態を早くから認識していたアメリカのフレイザー委員会報告書、教団関係者による銃砲店経営、原理研究会の武装組織、「世界日報」編集局長襲撃事件、公安が教団関係者を調査していた事実等、その全貌を公開する。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約(7/27予約、副本?、予約?)>rakuten誰も書かなかった統一教会【月と不死】N・ネフスキー著、平凡社、1971年刊<出版社>より著者は日本民俗学界の異色の存在として知られるロシア人学者で,柳田国男,折口信夫らと親交を結び,沖縄,東北などの民俗を採録した。本書は日本語で発表された論文・書簡を網羅した唯一の著作集。<読む前の大使寸評>ロシア人にして、日本民俗学界の異色の存在が気になるのです。<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>heibonsha月と不死図書館予約の運用にも慣れて、速攻で入手するコツも何となくつかんだと思うのだ♪・朝日書評欄で探すとしたら、3ヶ月前掲載くらいのモノが狙い目かも。・専門的すぎるほどのモノは、予約0となっていることが多い。・受取館に収蔵しているモノは、移送する手間が省けるので早くなるだろう。・本屋の店頭に出た直後の新刊本・ウィキペディアでめぼしい著作を探す・神戸市図書館の予約順位は毎週火曜日(午前1時~3時) に更新されます。・Kindle版を購入すれば、その本の全て読めるのだが、紙の本から書き写す手間が好きなわけでおます。予約分受取目録R26好書好日トップ図書館情報ネットワーク 蔵書検索
2024.07.28
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図書館に予約していた『彼岸花が咲く島』という本を、待つこと1週間ほどでゲットしたのです。この李琴峰という日本で生まれた台湾人作家の使う日本語が興味深いのです。【彼岸花が咲く島】李琴峰著、文藝春秋、2021年刊<出版社>より【第165回 芥川賞受賞作!】記憶を失くした少女が流れ着いたのは、ノロが統治し、男女が違う言葉を学ぶ島だったーー。不思議な世界、読む愉楽に満ちた中編小説。<読む前の大使寸評>この李琴峰という日本で生まれた台湾人作家の使う日本語が興味深いのです。<図書館予約:(6/19予約、副本?、予約0)>rakuten彼岸花が咲く島1章の続きあたりを、見てみましょう。p9~11<1> 島の視点を持っているならば、大海原にぽつんと浮かぶ〈島〉は東西に長く、南北に狭く、ガジュマルの葉のような形をしていることがわかる。偶然にも〈島〉は気候が高温多湿で樹木の生育に適しており、全体的にガジュマルやビロウに覆われて鬱蒼としている。〈島〉の海岸はほとんどが岸壁で、特に最東端の東崎と最西端の西崎ともなると百メートル強の断崖絶壁になる。これらの岩石海岸も植生に覆われており牧場としては最適で、牛や豚、山羊、馬などが飼育されている。砂浜海岸は何ヵ所かしかないが、少女が倒れていた北方の〈北月浜〉がそのうちの一つである。 〈島〉の周囲は風が強く、特に秋から冬にかけては北向きの卓越風で北方の海が大荒れするので、〈島〉への出入りは主に南西にある〈グソー港〉を使う。空港はもちろんない。曾て空港だったと思われる跡地は、今や赤一面の彼岸花の絨毯に覆われている。 海岸以外にも、〈島〉は丘陵や山岳が多い。人々は普段山岳地帯には立ち入らないが、山間の平地へ流れる川は灌漑用水として使われ、米、芋、砂糖黍などが植えられる。平地にある田んぼと畑の周りに人々が集まって、三つの集落ができた。一番規模が大きい〈東集落〉、二番目に大きい〈西集落〉と最も小さい〈南集落〉である。千数百万人の島民はこの三つの集落に分散し居住している。 游娜(ヨナ)が住んでいるのは〈東集落〉である。〈東集落〉は島の北東部に位置し、彼岸花を採りに〈北月浜〉へ出向くのに便利である。少女を発見すると游娜は急いで集落に戻ってオヤを呼び、オヤは車を出して少女を家に運び込んだ。 布団の中で寝込んだ少女は相変わらず顔色が悪く、弱々しく見えた。オヤは游娜が採ってきた彼岸花の花弁を磨り潰し、水を加えて掻き混ぜてから少女の傷口に塗布した。游娜のオヤは旗魚(かじき)捕りを生業としている女性であり、游娜と一緒に生活している。 夜中になると少女は大汗を搔きながら、苦しそうに目を覚ました。まだ身体が重く、頭の内側で啄木鳥(きつつき)が頭蓋を突いているような鋭い痛みが走っているが、傷の痛みはだいぶ治まった。次に襲ってくるのは圧倒的な飢えと渇きだった。渇きのせいで少女は声を発することも叶わないまま、もがきながら上体を起こした。暗闇に目が慣れると、隣の布団で寝ている游娜とオヤの姿に気付いた。 少女は彼女たちを起こさないように気をつけながら、ゆっくり立ち上がろうとした。が、足が思うように動かなくて思わずよろめいてしまい、床に尻餅をついた。 少女が立てた音で游娜も目が覚めた。少女の姿を認めると慌ててオヤを起こし、少女を再び布団の中に寝かせた。「動くは駄目ら! ビアンバナー、薬効発揮したロー」と游娜が言った。 オヤが電気をつけると、少女は眩しそうに目を細めた。ビアンバナーとは何なのかということも気になるが、それより大事なことがあった。「みず」 と少女は言おうとしたが、喉が嗄れていて声にならなかった。「ハ?」と游娜は訊いた。「声を大きいに!」 少女は口の中で唾液が溜まるのを待ってから、それらの唾液を飲み込んで僅かに喉を潤した。そしてもう一度力を振り絞って言った「み、ず」 ここの言葉では、彼岸花は「ビアンバナー」と言うのだそうです。『彼岸花が咲く島』1:冒頭から語り口p2~7
2024.07.27
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図書館に予約していた『墨のゆらめき』という本を、待つこと11ヶ月ほどでゲットしたのです。飛ばし飛ばしにめくってみると、この遠田氏は書道教室を経営するほど中国や漢字の素養が並外れているが、暴力団にも知己をもつという変人であることが知れるのです。【墨のゆらめき】三浦しおん著、 新潮社、2023年刊<出版社>より実直なホテルマンは奔放な書家と文字に魅せられていく。書下ろし長篇小説! 都内の老舗ホテル勤務の続力は招待状の宛名書きを新たに引き受けた書家の遠田薫を訪ねたところ、副業の手紙の代筆を手伝うはめに。この代筆は依頼者に代わって手紙の文面を考え、依頼者の筆跡を模写するというものだった。AmazonのAudible(朗読)との共同企画、配信開始ですでに大人気の書き下ろし長篇小説。<読む前の大使寸評>飛ばし飛ばしにめくってみると、この遠田氏は書道教室を経営するほど中国や漢字の素養が並外れているが、暴力団にも知己をもつという変人であることが知れるのです。<図書館予約:(8/9予約、副本12、予約373)>rakuten墨のゆらめきまず冒頭の語り口を、見てみましょう。p3~5<一> 京王線下高井戸駅に降り立つのははじめてだった。 俺は電車内で読んでいた文庫を鞄にしまい、かわりにスマホを取りだした。社用のパソコンで遠田薫氏とやりとりしたメールは、スマホのほうにも共有されている。昨日、最後に受信した遠田氏からのメールの文面は極めて素っ気なく、「玉電の線路を右手に、線路沿いの道を三軒茶屋方向へ5分ほど進む。それまでのあいだで一番ボロいと思われる家が見えたら、そこがたぶんうちです。」とだけ書いてあった。 漠然としている。 しかし俺もホテルマンの端くれ。万全の下準備をして、気むずかしいお客さまにもなるべくご満足いただけるよう努めるのが習性だ。遠田氏は客ではないがそれでも、「玉電」とは東急世田谷線の通称だと、ちゃんと調べはすんでいる。 スマホを夏物の背広の尻ポケットに収め、鞄と手土産の紙袋を手に、京王線のホームからあたりを見まわした。柵を隔てて簡素なホームがすぐ隣にあり、二両編成の電車が停まっていた。バスのように小さくて愛らしい。これが世田谷線だろう。インターネットの情報によると、道路とははっきり分離した形で線路が通っているが、もともとは路面電車の支線だったとのことだから、こじんまりした車体なのもうなずける。 ホーム同士は隣りあっているのに、柵に切れ間はない。どうやら一度京王線の改札を通らなければ、玉電がわへは行けないつくりらしい。近くにあるようでいて遠い。京王線と東急線のあいだにはやはり微妙なライバル心が働いているのだろうか。 とりあえず京王線のホームの階段を上り、橋上駅舎に設置された改札を出た。地上へ下りる階段は方角的に、駅前の商店街に向かっているように見受けられる。そうではなく玉電の線路脇の道のほうへ行きたいのだが、あの階段で制海なのかと改札まえでまごついていたら、食材の詰まったエコバックを掲げた老婦人が、「なにかお困りですか」と親切にも声をかけてくれた。 俺は町でよくひとに話しかけられる。子どものころからだ。帰宅しようとただ通学路を歩いていただけなのに、「坊や、迷子か」と見知らぬおじさんに言われた。大人になっても、老若男女国籍を問わず道を聞かれるのはしょっちゅうだし、待ち合わせをしていたら宗教に勧誘された。渋谷ハチ公まえで、あたりにはごまんとひとが立っていたというのに、なぜか俺だけ。ちなみに学生時代はチンピラに因縁をつけられカツアゲされかけることもしばしばだったし、いまも散歩中の犬に出くわせば吠えかかられる。 つまり俺は、よく言えば柔和そう、悪く言えばあらゆる生命体からナメられがちなんだろう。でも、「話しかけやすい」という体質は仕事のうえでは得になる。近寄るのも憚られるほどの強面では、お客さまのために尽くすホテルマンとしては失格だ。おかげさまで三日月ホテルに勤務して15年、、お客さまに問われて5万回ぐらいトイレや喫煙所の場所をお答えしてきた。あるとき気になって同僚に尋ねてみたら、「え、まじで。そこまでしょっちゅうは聞かれないよ。だってトイレも喫煙所も案内表示あるだろ」とのことだった。話しかけやすい顔面と雰囲気を保持していたがゆえに、、お客さまのお役に立てて本望だ。
2024.07.25
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図書館に予約していた『続 失踪願望』という本を、待つこと1ヶ月半ほどでゲットしたのです。この本は日記(続 失踪願望)と、エッセイ(さらば友よ!)の二本立て構成となっているが・・・いずれもややマッチョなシーナが見られて・・・ええでぇ♪【続 失踪願望】椎名誠著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より「おい、シーナ、逃げるなよ」親友からの最期の“檄”その真意とは?書き下ろし「さらば友よ!」収録。老いること、喪失を抱えて生きること、愛するものたちへの思いをまっすぐに。79歳の日録が静かに差し出す新たな人生の世界線…共感必至!<読む前の大使寸評>この本は日記(続 失踪願望)と、エッセイ(さらば友よ!)の二本立て構成となっているが・・・いずれもややマッチョなシーナが見られて・・・ええでぇ♪<図書館予約:(5/31予約、副本?、予約8)>rakuten続 失踪願望『続 失踪願望』から2022年のとある1日を、見てみましょう。長編映画『あひるのうたがきこえてくるよ』の舞台となった奥会津が語られています。p52~54<どぶろく、島酒、アイスバイン>■10月1日(土) JR只見線復旧イベント出席のために前泊地の福島県須賀川市から奥会津に向けて移動する。ぼくはずっと寝ていた。 道中、早朝の「再会一番列車」でトラブルがあったと連絡が入る。ダイヤが乱れたので「会津川口-只見」間で乗る予定だった記念列車の運行は取りやめになり、只見駅に直接、行くことになった。 なんでも再会一番列車に鉄道ファンが押しかけ、予想していた以上の負荷がかかりブレーキが故障したようだ。いろんなことが起こるもんだ。 無事に只見駅に着いたので時間までスキー場のレストハウスで昼飯を食った。ぼくは昔懐かしい感じのカレーライスを食べた。孫の風太はもりそばをすすっていた。「なんだか孫とじいちゃんの食うものが逆な気がする」と指摘してきた77歳のトクヤはソフトクリームを二つ食べていた。 式典は、只見線の全面運転再開を祝っての大々的なものだった。(中略) 式典の後は、本日の宿、金山町・玉梨温泉の恵比寿屋へ。ここへ来るのは5~6年ぶりだろうか。初めて来たのはぼくにとって二本目の長編映画『あひるのうたがきこえてくるよ』のロケハンの時だった(改めてキャストをみると柄本明さん、高橋惠子さん、余貴美子さん、黒田福美さん、竹下景子さんなど、かなり豪華な演者が揃っている。駆け出しのぼくなんかの映画によく出てくれたものだ。「どうして出てくれたんですか?」と聞いてみたい気すらする)。 それから金山町には30年以上、通っていることになるのだが、本当に変わらない。何もかもが素朴で、余計なものが一切ないのだ。 いまの宿の主人、ユズル君は早くに先代経営者である父親をなくし母子でやってきた。最初来たときぼうやのように見えたユズルもいろいろ迷いつつ困惑しつつ、よくこれまえやってきたなあ、と宿のみんなの顔をみるとつくづく感心します。旅館のかたわらを流れる野尻川の激しい瀬音も変わらない。奥会津の山や草原で百人規模で遊べる映画作りや三角ベース野球の試合なんかを思いついてはここに全国から沢山の人々を集めたもんだなあ。 到着してすぐ只見川の支流にあたる野尻川を望む露天風呂に入った。もちろん風呂上りは生ビールだ。あまりのうまさに「おおう」と自分でもよく分からぬ声がでた。 夕方からは宴会がはじまる。肴はきのこや野菜、山菜やイナゴあたりが中心だ。やまあいの巨大旅館でよく出る変色したマグロの刺身なんかを一切、排除しているところが潔い。瓶ビールを少しやってから地酒とどぶろくに移行していく。
2024.07.23
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図書館で『室町は今日もハードボイルド』という本を、手にしたのです。室町時代といえば、荒ぶる中世の戦国時代であり、徳目とは無縁のアナーキーな時代であり、興味深いのです。【室町は今日もハードボイルド】清水克行著、新潮社、2021年刊<「BOOK」データベース>より僧侶は武士を呪い殺し、農民は合戦を繰り広げ、浮気された妻は相手の女を襲撃するー。あなたたち、本当にご先祖様ですか?数々の仰天エピソードから浮かび上がる中世の日本人像は実は凶暴でアナーキーだった!想像の斜め上を行く驚愕の日本史エッセイ。<読む前の大使寸評>室町時代といえば、荒ぶる中世の戦国時代であり、徳目とは無縁のアナーキーな時代であり、興味深いのです。rakuten室町は今日もハードボイルド第一部「僧侶も農民も!荒ぶる中世人」の冒頭あたりを、見てみましょう。p13~16<第一話 悪口のはなし:おまえのカアちゃん、でべそ>■戦国なぞなぞ のっけから、楽しい「なぞなぞ」を一つ。 母とは二度会うけど、父とは一度も会わないもの、な~んだ? これは戦国時代に書かれた『後奈良院御撰何曾』という、なぞなぞ本に書かれている問題である。原文は「母には二たびあひたれども、父には一度もあはず」である。わかるかな? 正解は、「くちびる」。なぜなら、「母」と発声するときは唇は二度触れ合うけど、「父」と発声するときは唇は一度も触れ合わせることがないから。どうです? ・・・え? 腑に落ちない? そう。自分で発声してみるとわかるが、残念ながら「ハハ」も「チチ」も、どちらも発生する際に唇は一度も触れ合わないのである。これでは、まったく「なぞなぞ」にならない。いったいどういうことなのだろうか。 では、本当の答え合わせをしよう。じつは、戦国時代以前と以後では、「はは」という言葉の発声の仕方は異なっていたのである。現代では「はひふへほ」は、そのまま「ハ(ha)・ヒ(hi)・フ(hu)・ヘ(he)・ホ(ho)」と読むが、戦国時代以前の日本語では「ファ(fa)・フィ(fi)・フ(fu)・フェ(fe)・フォ(fo)」と読んでいたらしいのである。だから、「母」は「ハハ」ではなく、当時は「ファファ」。そう読めば、「母」と発声しようとすれば、いやでも唇が二回触れ合うことになる。信じられない人は、あたりに他人がいないこと確認したうえで、自分で声に出してみてください。ね? ちゃんと口が閉じるでしょ? ちなみに、江戸後期の国学者、本居内遠(本居宣長家の三代目)も、このなぞなぞの意味がわからなかった。苦心して、母は「歯々」、父は「乳」の意で、「くちびるで自分の歯に上唇・下唇で合計二回触れることはできるけど、自分で自分の乳首を一回も吸うことはできないから」という、トンチンカンな解答を書き残している(『本居内遠全集』所収)。残念! 本居先生、ちょっと考えすぎ! ここからもわかるように、江戸後期になると、「はひふへほ」は現代と同じ「ハヒフヘホ」と発音するようになってしまっていたため、かの本居家の家督を継ぐ大国学者でも、このなぞなぞの意味が理解できなくなってしまっていたのである(それにしても、江戸時代の大学者が必至で自分の乳首を吸おうとしているさまを想像すると、ちょっと笑える)。 以前、轢死ドラマの時代考証の仕事をやったとき、徹底的に史実に忠実なドラマを、という制作側の要望に応えて、この「ファ・フィ・フ・フェ・フォ」の発音の完全再現を真面目に提案したことがあるが、さすがにイヤな顔をされた。「本能寺(ふぉんのうじ)に火(ふぃ)の手が!」「なに、謀(ふぁか)られたか!」では、やはり緊迫感がなさ過ぎるか・・・。
2024.07.22
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図書館で『日本の合戦 解剖図鑑』という本を、手にしたのです。書名に図鑑と触れているように、全編にわたって説明図が載っているので分かりやすくて、ええでぇ♪*********************************************************【日本の合戦 解剖図鑑】本郷和人著、エクスナレッジ、2022年刊<「BOOK」データベース>より合戦は日本をどう変えてきたのか?白村江の戦い、壬申の乱、壇ノ浦の戦い、元寇、応仁の乱、本能寺の変、関ヶ原の戦い、西南戦争。古代から幕末まで時代の転換点となった戦を豊富なイラストで徹底図解。<読む前の大使寸評>書名に図鑑と触れているように、全編にわたって説明図が載っているので分かりやすくて、ええでぇ♪rakuten日本の合戦 解剖図鑑「4章 戦国時代と群雄割拠」で長篠の戦いあたりを、見てみましょう。P98~99<鉄砲3段打ちは本当にあったのか?:長篠の戦い> 武田信玄の死後、後継の勝頼は父の遺志を継ぎ、織田・徳川と戦いながら武田氏最大の版図を築き上げた。しかし、奥平信昌が徳川に寝返ったことをきっかけに、勝頼は信昌が城主を務める長篠城へ出陣。家康は信長に協力を求め、両軍は設樂ヶ原で激突した。 戦国最強とも謳われる武田騎馬隊に対し、織田・徳川連合軍は夜襲をしかけて背後を取り、退却路を断つことに成功。勝頼は武田騎馬隊を率いて正面突破を試みるも、信長が騎馬隊対策として準備した馬防柵や大量の鉄砲に歯が立たずに総崩れし、武田軍の大敗北という結果に終わった。【敗軍の将】武田勝頼(武田最大版図を築くも信長に敗れる) 信玄の四男として生まれ、震源の死後に家督を継いだ。武田家最大の版図を広げたものの、長篠の戦いで敗北したあとは勢力を縮小。北条氏や上杉氏と婚姻を結んで勢力の回復を模索したが、織田・徳川連合軍が甲斐へ侵攻した際、家臣の裏切りにあい天目山で自害に追い込まれてしまった。勝頼の死をもって名門武田氏も滅亡したのである。【合戦の影響】鉄砲の大量導入が戦いを様相を一変させる 長篠の戦いの数十年前に鉄砲は伝来していたが、実戦で大量導入されたのは長篠・設樂ヶ原の戦いが初めてだった。 この戦いで武田騎馬隊に対し、馬防柵で守りを固めその内側から火縄銃で狙撃する方法が画期的、かつ効果的であることが証明された。鉄砲の普及に従い、戦闘方法は鉄砲隊による集団戦に重点を移し、防衛拠点である城も、鉄砲や大砲に耐えうる構造へと変化していくことになる。『日本の合戦 解剖図鑑』1:応仁の乱
2024.07.21
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図書館で『日本の合戦 解剖図鑑』という本を、手にしたのです。書名に図鑑と触れているように、全編にわたって説明図が載っているので分かりやすくて、ええでぇ♪*********************************************************【日本の合戦 解剖図鑑】本郷和人著、エクスナレッジ、2022年刊<「BOOK」データベース>より合戦は日本をどう変えてきたのか?白村江の戦い、壬申の乱、壇ノ浦の戦い、元寇、応仁の乱、本能寺の変、関ヶ原の戦い、西南戦争。古代から幕末まで時代の転換点となった戦を豊富なイラストで徹底図解。<読む前の大使寸評>書名に図鑑と触れているように、全編にわたって説明図が載っているので分かりやすくて、ええでぇ♪rakuten日本の合戦 解剖図鑑合戦マップ「4章 戦国時代と群雄割拠」で応仁の乱あたりを、見てみましょう。P78~79<戦国時代の幕開けとなった日本史における転換点:応仁の乱> 8代将軍・足利義政の頃、幕府内では守護大名同士が政治の主導権をめぐり争っていた。そんな中、義政と妻の日野富子の間の男子(義尚)が誕生。義政はすでに弟の義視を後継に指名していたため、義視には細川勝元、義尚には山名宗全が後見人となり、両者は激しく対立。守護大名たちも二派にわかれ、争いとなった。 両軍の勢力は拮抗。寝返りが横行し、戦局は混迷を極めた。長引く戦火で京都は焦土と化し、各地で一揆も頻発した。そして開戦から10年後、勝敗がつかないまま、両軍は京から撤退。大乱は幕を閉じた。【敗軍の将】細川勝元(東軍総大将を務めた幕府のナンバー2) 室町幕府の管領。管領とは将軍と守護をつなぐポストで、勝元はのべ23年間管領職を務めた。山名氏とは縁戚関係を結ぶなど融和策をとっていたが、かつて山名氏が赤松氏討伐の功で得た、播磨・備前・美作の旧主・赤松氏を復興させるなど、山名氏を警戒して勢力をそぎ落そうとした。両者の対立は将軍家の跡継ぎ問題をきっかけに表面化し、11年の大乱の一因となった。【合戦の影響】幕府の権威は著しく低下し実力でのし上がる時代に 敵味方の区別もつかなくなるほどの厭戦状態が続くと、途中で任国に帰る守護たちも続出した。しかし留守を預かっていた守護代や国人たちが現地で支配力を強め、守護の多くが彼らに隊場を取って代わられた。これにより力ある者がのし上がる「下剋上」の風潮が強まることとなる。
2024.07.21
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図書館に予約していた『米番記者が見た大谷翔平』という本を、待つこと50日ほどでゲットしたのです。米国のジャーナリストが大谷の「二刀流」のすごさを語るとのこと・・・興味深いではないか♪【米番記者が見た大谷翔平】 ディラン・へルナンデス著、朝日新聞出版、2024年刊<出版社>より本塁打王、2度目のMVPを獲得し、プロスポーツ史上最高額でロサンゼルス・ドジャースへの移籍が決まった大谷翔平。渡米以来、その進化の過程を見続けた米国のジャーナリストが語る「二刀流」のすごさとは。データ分析や取材を通して浮かび上がってきた独自の野球哲学、移籍後の展望など徹底解説する。<読む前の大使寸評>米国のジャーナリストが大谷の「二刀流」のすごさを語るとのこと・・・興味深いではないか♪<図書館予約:(5/16予約、副本1、予約8)>rakuten米番記者が見た大谷翔平・志村朋哉:英語と日本語で記事を書くジャーナリスト、米メディアで唯一の大谷担当だった。・ディラン・ヘルナンデス:スポーツコラムニスト、スペイン語と日本語を話す。・サム・プラン:スポーツ記者、AP通信スポーツ編集者賞など受賞まず冒頭の『「世界一の選手」までの道のり』から、見てみましょう。p15~19<日本時代から注目株>トモヤ: 大谷翔平のことを初めて知ったのはいつだったか覚えてる?ディラン: 彼が高校生の時。(2012年7月19日の岩手大会準決勝で)投手として99マイル(160キロ)を記録した時だったと思う。僕は自分のツイッター(現X)アカウントに日本の新聞を登録しているんだ。だから、そういう選手の情報はいつも入ってくる。その時、ロサンゼルスの地元球団のドジャースも獲得しようと狙っていた。それで大谷について取材するようになった。 その冬に行われたウィンターミーティングでの出来事を今でも覚えているよ。メディアルームの外で、ドジャース関係者たちと話していたら「(大谷を)獲れると思う」と自信ありげに言っていたんだ。でも結局、大谷は日本でプレーすることを決めた。 なぜ、そうなったのか噂が出回ったよ。日本社会でこれだけ大きな動きがあるのは、不正行為や見返りが絡んでいる場合も多いという見方もあるから。ドジャース関係者の中には、「(大谷の家族が)日本ハムの工場でのデータ関係の仕事をもらった」なんていう憶測を立てて、獲得できなかった言い訳をする人もいた。真実ではなかったけど。 当時から、大谷の身長の高さや投げる球の速さをみて、「ちょっとこいつは違う」という印象だった。日本人選手は、スキルの高さに比べて肉体的強さで劣るというのが一般的なイメージだからね。大谷は正反対に見えた。投球コントロールは良くなくて、どちらかというとアメリカの若い選手のようだった。後になって、結構、野球経験が長いことに驚いたくらい。少なくとも投手としては、まだ素質と才能だけでやってるようにすら見えた。 当時、ドジャースは大谷を投手としてしか見ていなかった。プロでは打者はやらないだろうって。それに対して、日本の球団は、逆に打者として評価していた。打撃の方が投球よりも洗練されていたから。速い球は投げられても、それをコントロールできないというのは、日本的には良い組み合わせとは見られないんだろうね。サム: 大谷が高校生の時は、bokuhaまだ野球取材はしていなかった。大谷が渡米を決めた2017年もニューヨークの小さな町で高校スポーツを取材していた。大谷についての最初の思い出は、メジャー球団による争奪戦だね。ほぼすべてのチームが参加しての。(あまりスター選手とは縁のない)ピッツバーグ・パイレーツでさえ、大谷にアピールしようと、熱のこもったプレゼンをしたくらいだから。(中略)<二刀流への反応>トモヤ: サムがエンゼルスの担当になったのは、ちょうど大谷がブレークしてMVPを受賞した21年だったよね。サム: そう、6月半ばだった。大谷は5月に打撃で絶好調になり始めて、ブラディー・ジュニアと本塁打数で競っていた。投手としては、球団が(無理させないために課していた)制約を外した時だった。投球数制限や休養日が取り払われて、今に続く大活躍が始まったんだ。トモヤ: 大谷がメジャー挑戦を発表した時、アメリカのスポーツメディアは、これまでの日本人選手以上に大きく取り上げた。その理由はやはり二刀流だから。メジャーという舞台で、それが可能なのか。誰も興味津々だったと思う。ディラン: 彼ならできるとは思ったけど、でもそれ以上に、単にメジャーで二刀流をやる選手というのを見てみたい気持ちが大きかった。当時、二刀流が可能だなんて思っていた球団は、そんなになかったと思う。
2024.07.20
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今回借りた3冊です。 だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は強いていえば、「日本史」でしょうか♪<市立図書館>・続 失踪願望・日本の合戦 解剖図鑑・室町は今日もハードボイルド<大学図書館>(ただいま市民への開放サービスを休止中)図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)***********************************************************【続 失踪願望】椎名誠著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より「おい、シーナ、逃げるなよ」親友からの最期の“檄”その真意とは?書き下ろし「さらば友よ!」収録。老いること、喪失を抱えて生きること、愛するものたちへの思いをまっすぐに。79歳の日録が静かに差し出す新たな人生の世界線…共感必至!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/31予約、副本?、予約8)>rakuten続 失踪願望【日本の合戦 解剖図鑑】本郷和人著、エクスナレッジ、2022年刊<「BOOK」データベース>より合戦は日本をどう変えてきたのか?白村江の戦い、壬申の乱、壇ノ浦の戦い、元寇、応仁の乱、本能寺の変、関ヶ原の戦い、西南戦争。古代から幕末まで時代の転換点となった戦を豊富なイラストで徹底図解。<読む前の大使寸評>追って記入rakuten日本の合戦 解剖図鑑【室町は今日もハードボイルド】清水克行著、新潮社、2021年刊<「BOOK」データベース>より僧侶は武士を呪い殺し、農民は合戦を繰り広げ、浮気された妻は相手の女を襲撃するー。あなたたち、本当にご先祖様ですか?数々の仰天エピソードから浮かび上がる中世の日本人像は実は凶暴でアナーキーだった!想像の斜め上を行く驚愕の日本史エッセイ。<読む前の大使寸評>追って記入rakuten室町は今日もハードボイルド
2024.07.19
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『朝日デジタルの書評から』フォームや『読みたい本』フォームを作っているのだが、これを市図書館の予約に利用しようと、思い立ったのです。これまでの予約内容と予約候補は以下のとおりです。<予約中>・川上未映子『黄色い家』(7/24予約、副本?、予約504)現在67位・堤未果のショック・ドクトリン(8/25予約、副本7、予約177)現在3位・『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(9/18予約、副本5、予約126)現在3位・原田ひ香『図書館のお夜食』(10/04予約、副本17、予約402)現在41位・吉岡桂子『鉄道と愛国』(12/04予約、副本?、予約?)現在1位・高野秀行『イラク水滸伝』(1/06予約、副本3、予約86)現在24位・絲山秋子『神と黒蟹県』(3/02予約、副本3、予約63)現在39位・三浦しおん『しんがりで寝ています』(4/12予約、副本?、予約106)現在52位・カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」(4/27予約、副本1、予約48)現在32位・前田和男『昭和街場のはやり歌』 (5/10予約、副本?、予約8)現在6位・小倉ヒラク『アジア発酵紀行』 (5/14予約、副本2、予約5)現在16位・池澤夏樹『ノイエ・ハイマート』(6/29予約、副本?、予約?)現在7位・内田樹『勇気論』(7/07予約、副本?、予約?)現在30位<カートで待機中>・N・ネフスキー著『月と不死』・グレタたったひとりのストライキ・カズオ・イシグロ『夜想曲集』・沢木耕太郎『深夜特急』<予約候補>・中野翠『ほいきた、トシヨリ生活』・鴨志田譲×西原理恵子『アジアパー伝』:図書館未収蔵・ジョージ・ミーガン『世界最長の徒歩旅行』:図書館未収蔵・井上ひさし『本の運命』・ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』・ケン・リュウ『草を結びて環を衡えん』:図書館未収蔵・九段理恵『東京都道場塔』:図書館未収蔵・外山滋比古『思考の整理学』・ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』・「中国」はいかにして統一されたか・街道をゆく「モンゴル紀行」「南蛮のみち」・地球の歩き方 日本・畑正憲『どんべえ物語』:図書館未収蔵・有田芳正『誰も書かなかった統一教会』・文字の大図鑑<予約分受取:2/27以降> ・村上春樹×柴田元幸『翻訳夜話』(2/15予約、2/27受取)・楊双子『台湾漫遊鉄道のふたり』(6/23予約、2/27受取)・川添愛『世にもあいまいなことばの秘密』(1/26予約、2/27受取)・呉叡人『フォルモサ・イデオロギー』(2/03予約、3/11受取) ・森見登美彦『太陽と乙女』(3/23予約、3/31受取)・Wedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機 (4/16予約、4/28受取)・本川達雄『ウマは走るヒトはコケる』(3/31予約、5/10受取)・南海トラフ地震の真実(10/20予約、5/15受取)・斎藤幸平『マルクス解体』(11/28予約、6/05受取)・李琴峰『彼岸花が咲く島』(6/19予約、6/25受取)・大学教授 こそこそ日記(1/12予約、6/29受取)・三浦しおん『墨のゆらめき』(8/9予約、7/07受取)・米番記者が見た大谷翔平(5/16予約、7/07受取)・椎名誠『続 失踪願望』(5/31予約、7/18受取)**********************************************************************【黄色い家】川上未映子著、中央公論新社、2023年刊<「BOOK」データベース>より2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。長らく忘却していた20年前の記憶ー黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな“シノギ”に手を出す。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい…。善と悪の境界に肉薄する、今世紀最大の問題作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/24予約、副本?、予約504)>rakuten黄色い家【堤未果のショック・ドクトリン】堤未果著、幻冬舎、2023年刊<「BOOK」データベース>より「ショック・ドクトリン」とはテロや大災害など、恐怖で国民が思考停止している最中に、為政者や巨大資本がどさくさに紛れに過激な政策を推し進める悪魔の手法のことである。日本でも大地震やコロナ禍という惨事の裏で、知らない間に個人情報や資産が奪われようとしている。パンデミックで空前の利益を得る製薬企業の手口、マイナンバーカード普及の先にある政府の思惑など…。強欲資本主義の巧妙な正体を見抜き、私たちの生命・財産を守る方法とは?滅びゆく日本の実態を看破する覚悟の一冊。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/25予約、副本7、予約177)>rakuten堤未果のショック・ドクトリン【ぼくはあと何回、満月を見るだろう】坂本龍一著、新潮社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「何もしなければ余命は半年ですね」ガンの転移が発覚し、医師からそう告げられたのは、2020年12月のこと。だが、その日が来る前に言葉にしておくべきことがある。創作や社会運動を支える哲学、坂本家の歴史と家族に対する想い、そして自分が去ったあとの世界についてー。幼少期から57歳までの人生を振り返った『音楽は自由にする』を継ぎ、最晩年までの足跡を未来に遺す、決定的自伝。著者の最期の日々を綴った、盟友・鈴木正文による書き下ろし原稿を収録。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(9/18予約、副本5、予約126)>rakutenぼくはあと何回、満月を見るだろう【図書館のお夜食】原田ひ香著、ポプラ社、2023年刊<「BOOK」データベース>より東北地方の書店に勤めるものの、うまくいかず、仕事を辞めようかと思っていた樋口乙葉は、SNSで知った、東京の郊外にある「夜の図書館」で働くことになる。そこは普通の図書館と異なり、亡くなった作家の蔵書が集められた、“本の博物館”のような図書館だった。開館時間は夜7時から12時まで、まかないとして“実在の本に登場する料理”が出てくる「夜の図書館」で、本好きの同僚に囲まれながら働き始める乙葉だったがー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/04予約、副本17、予約402)>rakuten図書館のお夜食【鉄道と愛国】吉岡桂子著、岩波書店、2023年刊<「BOOK」データベース>より戦後日本の発展の象徴、新幹線。アジア各地で高速鉄道の新設計画が進み、中国が日本と輸出を巡って競い合う現在、新幹線はどこまで日本の期待を背負って走るのか。一九九〇年代から始まった新幹線商戦の舞台裏を取材し、世界最長の路線網を実現した中国の高速鉄道発展の実像に迫る第一部、中国、香港、韓国、東南アジア、インド、ハンガリーなど世界各地をたずね、鉄道を走らせる各国の思惑と、現地に生きる人々の声を伝える第二部を通じて、時代と共に移りゆく日中関係を描き出し、日本の現在地をあぶりだす。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(12/04予約、副本?、予約?)>rakuten鉄道と愛国【イラク水滸伝】高野秀行著、文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>よりアフワールーそこは馬もラクダも戦車も使えず、巨大な軍勢は入れず、境界線もなく、迷路のように水路が入り組み、方角すらわからない地。権力に抗うアウトローや迫害されたマイノリティが逃げ込む、謎の巨大湿地帯。中東情勢の裏側と第一級の民族誌的記録ー“現代最後のカオス”に挑んだ圧巻のノンフィクション大作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/06予約、副本3、予約86)>rakutenイラク水滸伝【神と黒蟹県】絲山秋子著、 文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>より「黒蟹とはまた、微妙ですね」。日本のどこにでもあるような「地味県」の黒蟹県。そこで暮らす、そこを訪れる、名もなき人々や半知半能の神がすれ違いながら織りなす、かけがえなく、いとおしい日々。まだ名付けられていない人間関係を描き続けてきた著者真骨頂の連作小説集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(3/02予約、副本3、予約63)>rakuten神と黒蟹県【しんがりで寝ています】三浦しおん著、 集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より雑誌「BAILA」での連載4年分に、書き下ろしを加えた全55編!三浦しをんの沼にどっぷりハマる、最新&爆笑エッセイ集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/12予約、副本?、予約111)>rakutenしんがりで寝ています【カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」】 室橋 裕和著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりいまや日本のいたるところで見かけるようになった、格安インドカレー店。そのほとんどがネパール人経営なのはなぜか?どの店もバターチキンカレー、ナン、タンドリーチキンといったメニューがコピペのように並ぶのはどうしてか?「インネパ」とも呼ばれるこれらの店は、どんな経緯で日本全国に増殖していったのか…その謎を追ううちに見えてきたのは、日本の外国人行政の盲点を突く移民たちのしたたかさと、海外出稼ぎが主要産業になっている国ならではの悲哀だった。おいしさのなかの真実に迫るノンフィクション。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/27予約、副本1、予約48)>rakutenカレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」【昭和街場のはやり歌】前田和男著、 彩流社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「はやり歌」から、明日の日本の姿が見えてくる…。歌とともに時代を共有した「団塊」といわれるベビーブーマー世代が、エピソードを交え描く歌謡社会文化論!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/01予約、副本?、予約8)>rakuten昭和街場のはやり歌【アジア発酵紀行】小倉ヒラク著、文藝春秋、2023年刊<出版社>よりアジアの巨大な地下水脈をたどる冒険行。「発酵界のインディ・ジョーンズ」を見ているようだ!ーー高野秀行(ノンフィクション作家) 自由になれーー各地の微生物が、奔放な旅を通じて語りかけてくる。ーー平松洋子(作家・エッセイスト)発酵はアナーキーだ! チベット~雲南の「茶馬古道」からインド最果ての内戦地帯へーー前人未到の旅がいま幕をあける! 壮大なスケールでアジアの発酵文化の源流が浮き彫りになる渾身作。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/14予約、副本2、予約21)>rakutenアジア発酵紀行【ノイエ・ハイマート】池澤夏樹著、新潮社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりある日、難民になる。「新しい故郷」を求めて、歩きだす。そんなに遠い世界の話ではないのです。シリアで、クロアチアで、アフガニスタンで、満洲で、生きのびるために難民となった、ふつうの人たち。その姿と心を、てのひらで触れるようにして描きだす。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(6/29予約、副本?、予約?)>rakutenノイエ・ハイマート【勇気論】内田樹著、光文社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりモヤモヤを抱えた編集者との“カウンセリング”往復書簡。ジョブズ、フロイト、孔子、伊丹万作、河竹黙阿弥、大瀧詠一、パルメニデス、富永仲基…話頭は転々として奇を極めー。いまの日本人に一番足りないものは何だろうか?読めば心が軽くなるーウチダが綴る9通のメッセージ。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/07予約、副本?、予約?)>rakuten勇気論【月と不死】N・ネフスキー著、平凡社、1971年刊<出版社>より著者は日本民俗学界の異色の存在として知られるロシア人学者で,柳田国男,折口信夫らと親交を結び,沖縄,東北などの民俗を採録した。本書は日本語で発表された論文・書簡を網羅した唯一の著作集。<読む前の大使寸評>ロシア人にして、日本民俗学界の異色の存在が気になるのです。<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>heibonsha月と不死図書館予約の運用にも慣れて、速攻で入手するコツも何となくつかんだと思うのだ♪・朝日書評欄で探すとしたら、3ヶ月前掲載くらいのモノが狙い目かも。・専門的すぎるほどのモノは、予約0となっていることが多い。・受取館に収蔵しているモノは、移送する手間が省けるので早くなるだろう。・本屋の店頭に出た直後の新刊本・ウィキペディアでめぼしい著作を探す・神戸市図書館の予約順位は毎週火曜日(午前1時~3時) に更新されます。・Kindle版を購入すれば、その本の全て読めるのだが、紙の本から書き写す手間が好きなわけでおます。予約分受取目録R26好書好日トップ図書館情報ネットワーク 蔵書検索
2024.07.19
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図書館で『地形と地理でわかる大江戸の謎』という本を、手にしたのです。目次に58項目の「大江戸」の謎が出ているのだが・・・歴史的な蘊蓄に溢れていて興味深いのです。【地形と地理でわかる大江戸の謎】 大石学(監修)、宝島社、2021年刊<「BOOK」データベース>より歴史は「舞台」でこそ具体的な姿を見せる!なぜ、徳川幕府は江戸で開かれたのか?なぜ、参勤交代は大名ごとに時期が決まっていたのか?なぜ、大坂は「天下の台所」となったのか?なぜ、長崎に出島がつくられたのか?なぜ、江戸の罪人は八丈島に流されたのか?なぜ、晒し首の刑場は街道の入り口にあったのか?江戸時代の謎が地形と地理に注目することで解ける!そこで歴史は動いた‼ 全58項目の「大江戸」の謎に歴史の舞台へといざなうツール<読む前の大使寸評>目次に58項目の「大江戸」の謎が出ているのだが・・・歴史的な蘊蓄に溢れていて興味深いのです。rakuten地形と地理でわかる大江戸の謎まず「箱根の関所」について、見てみましょう。p32~35<Q04 なぜ、箱根に関所が設けられたのか>■支配体制強化のために徳川幕府が関所を復活させる 奈良時代、通行人や通信の検問を目的に、各街道の要所に関所が設けられた。中世に入ると関所は通行税(関銭)を徴収するための役所となり、幕府や朝廷、大寺社にとっての重要な収入源となった。16世紀前半頃、幕府や朝廷の権威は凋落したが、関所は存続した。しかし、幕府から独立した戦国大名が鎖国を支配する時代になると、関所はむしろ不要なものとなった。 関所があると商人の通行が妨げられ、領国内の経済発展を阻害するとともに、物資の流通が円滑に進まなかったためだ。また、各国を移動していた当時の商人は、他国の情報をもたらす重要な情報源でもあり、戦国大名は積極的に関所を撤廃していった。 しかし、江戸時代になると関所は復活する。徳川家康は全国支配のために、全国の大名の妻子や重臣の子弟を人質として江戸に集めた。また、幕府への反乱を防ぐためにも、武器の流通を制限しなければならない。「入鉄砲と出女」という言葉があるが、幕府は無許可で江戸に武器が流入することを防ぎ、大名の妻女が江戸から逃亡することを防止するために関所を復活させたのである。 幕府が設けた関所は、全国で53ヵ所に及んだ。なかでも重要だったのが、五街道に設けられた関所である。中山道の碓氷関(群馬県)と木曽福島関(長野県)、甲州道中の小仏関(東京都)、日光・奥州道中の栗橋関(埼玉県)、東海道の新居関(静岡県)と箱根関(神奈川県)である。それぞれ、地方と江戸をつなぐ交通の要衝であり、とくに中山道と東海道は関所を二つ置くことで検閲の二重体制をとった。■東海道一の難所・箱根に関所が置かれた理由 箱根関は元和5年(1619)、相模(神奈川県)と伊豆(静岡県)の国境の箱根山の山頂にある芦ノ湖のほとりに設置された東海道の関所である。 箱根は西国と関東地方をつなぐ交通の要衝である一方、東海道一の難所として知られていた。平安時代から鎌倉時代には、箱根越えがあまりに厳しかったため、迂回して碓氷峠や足柄峠を越えていたほどだ。 それでは、なぜそんな難所に関所をつくったのだろうか。地図を見るとわかるが、相模と伊豆の国境付近にそびえ立つ標高700メートルの箱根山は海岸線近くまでせり出しており、小田原宿から三島宿までの陸路は山と海に挟まれた状態だった。海岸を往来するのは困難なため、人びとは山を越えざるをえなかった。したがって、ここに関門をつくれば確実に交通をチェックできたのである。なお、幕府は箱根に関所を設ける際、山の中腹から芦ノ湖の湖畔まで柵を立て、関所以外を通行できないようにしたという。 現在、箱根を通る旧東海道沿いは杉並木がつらなっている。これは幕府が街道を整備する際、街道沿いに並木を植えるように指示したためという。一本道にすることで交通の便をよくするとともに、取り締まりをしやすくしたわけである。
2024.07.17
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図書館で『日本の「世界化」と世界の「中国化」』という本を、手にしたのです。漢字文明圏に属する日中ではあるが、感覚や考え方がこれほど違うのはなぜか?・・・ということでチョイスしたのです。【日本の「世界化」と世界の「中国化」】 小倉和夫著、藤原書店、2018年刊<出版社>より日本を映す“鏡”としての中国を、2000年の歴史を通して俯瞰する。明治以降の日本にとって中国は、近代化に乗り遅れた混乱と混迷の国であると同時に、文化的伝統には親近感を覚える国だった。しかし、古代にまで遡れば、中国は政治的権威の源であり、学ぶべき故事来歴の豊かな国であり、模範であった。断絶し、矛盾した中国観が共存している中で、中国が急成長し、大国化した今、“新しい中国観”の確立が急務である。2000年前から続く関係史を見渡し、これからの日中関係のため、“日本にとって中国とは何であったのか”を探る。<読む前の大使寸評>漢字文明圏に属する日中ではあるが、感覚や考え方がこれほど違うのはなぜか?・・・ということでチョイスしたのです。rakuten日本の「世界化」と世界の「中国化」「第Ⅲ部 近代日本の画家、文人の描いた中国と中国人像」から火野葦平の中国観を、見てみましょう。p275~279<6 火野葦平『赤い国の旅人』に見る中国> 第二次大戦中、従軍作家なみに扱われ、戦後批判をあびた火野葦平は、1950年代に、中國へ旅行し、『赤い国の旅人』という作品を残した。この書の題名が示唆するように、火野が、共産主義に反感をもっていたことは否定できない。それだけに、この作品には、中国に対する冷静な観察が見て取れるともいえるが、同時に、共産中国というイメージに一見そぐわないような側面には敏感に反応している所がある。 そこへ、中国側の人が打ちあわせに来ているからという知らせがあって、また、全体会議をした部屋に行った。平和委員会事務局の唐明処さんを紹介される。例の工人服装だが、ものやわらかな痩せ型の紳士である。広東以来、ずっと私たちが会ったちゅうごくじんはいずれも共産主義者であり、闘士でもあるわけだろうが、例外なく温厚で人あたりがよく、どぎつさやものすごさなどは感じさせなかった。けっしてわざとしているわけでなく、自然に人柄が出ているだけで、中国人が大人(たいじん)の風格を持っていることを認めないでは居られなかった。唐明処さんもそんな中国人の一人である。■大人の風格 火野が中国人に対して「大人の風格」という表現を使っていることは、共産主義中国においても、伝統的な中国の国民性が残っているというイメージを抱いたからにほかならない。いいかえれば、些細なことや表面的な違いに拘らない性格を表現したものといえる。 もとより火野は、共産中国が、元来共産主義に同情的ではない火野を受け入れた意味に鈍感であったはずはない。それだけに、火野が、心にもないお世辞をのべたはずもない。むしろ、自然に印象を述べたものであろう。 細事に拘らない中国人というイメージは、火野にかぎらず、多くの日本人作家の中国描写に見られる。例えば、芥川は、その中国旅行記のなかで、昔の死刑場所として知られ、旅行案内にものっているような草原で、中国のお婆さんたちが、昔のことなど全くかまわぬといわんばかりに、静かに草を摘んでいる姿をみて、「頗る悠々とした眺め」と描写しているが、ここにも、やや似た感覚が滲み出ている。さらに、上海の便所での日本人の体験を描いた金子光春の次の文章は、より鮮明な形で中国人の「こだわりのなさ」を浮き彫りにしている。 老人はやがて、唐紙を取り出し、ゆるゆると二つに折っては、折り目から裂き、またそれを折って、四枚にした。何気なくそれを眺めていると、四枚のうちの二枚を、静かに手をのばして僕のほうに差し出す。僕も、うなづいてそれを受け取ったが、僕は、まだその老人の姿と、難しく説明するほどの行為ではないが、知る知らぬを越えた淡々とした交換の現れに、中国人の心の広く大きいものを感じた。(金子光春『絶望の精神史』) ここには、日中関係を考える上で、留意せねばならないある種の落とし穴が潜んでいる。それは、こうした「心の広さ」とか、「悠々とした」態度、細部にこだわらぬ「大人の」姿勢といった特徴づけが、その裏面に、中国人の、無表情、無感動、ふてぶてしさといったイメージを内蔵しているとみられるからである。いいかえれば、時として、中国人の大人びた態度の裏面として、ある種の無感動、無表情、そして、ふてぶてしさともいえる態度が現れるのである。(中略)■無感動な中国人 同じように、林房雄は小説『上海戦線』のなかで、赤いちゃんちゃんこを着て、町の掃除をしている中国人を見た日本人は、その奇妙な風体に驚き、気味悪く感じるのだが、中国人の方は「ぜんぜん無感覚な表情です」と表現する。 こうした、無感動な中国人といったイメージを日本人の観察者が感じ取った理由の一つは、これらの体験が、なんらかの形で戦争や戦乱と結びついていた、あるいは、そういう時期のものであったためでもあろう。 長い混乱、内戦、対外戦争に慣れてきた中国の人々が、そうした混乱や戦乱に対して緊張感、緊迫感をもたなかったとしても不思議ではない。石川達三の『生きている兵隊』のなかで、日本の兵士が中国の兵士を見て「表情のない顔」「痩せた、どこか呆けた顔つき」を見出したのも、また、上田広の『黄塵』において、中国の兵隊を見た日本人の表現として、「戦争をやっているのは自分の国じゃないという風じゃありませんか」と述べているのも、戦乱に対して、日本人と中国人の間に感覚の違いがあったことを暗示している。
2024.07.13
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図書館で『あのころの日本映画101』という本を、手にしたのです。101本の日本映画といえばかなりの本数になるので、観ていない映画や感動した映画もあるだろう・・・ということでチョイスしたのです。*********************************************************【あのころの日本映画101】 立花珠樹著、言視舎、2018年刊<「BOOK」データベース>より50年代の古典から“ちょい前”の問題作まで先がみえない時代だからこそ、生きるヒントや心の潤いになる101本を厳選。1本ずつ「心に残る名せりふ」を解説する。<読む前の大使寸評>101本の日本映画といえばかなりの本数になるので、観ていない映画や感動した映画もあるだろう・・・ということでチョイスしたのです。rakutenあのころの日本映画101まず「初代ゴジラ」を、見てみましょう。もちろん私は、この映画を映画館で観た世代であり、圧倒的な影響を受けたのです♪P70~71<1954年『ゴジラ』全編貫く水爆への恐怖>『ゴジラ』という映画を、巨大怪獣の迫力を売り物にした子ども向けの娯楽シリーズと思っている人には、ぜひ第1作を観てほしい。本田猪四郎が監督した1954年の『ゴジラ』は、今の大人が観てもわくわくするような、質の高い映画であることが分かるはずだ。 この年の3月1日、太平洋のビキニ環礁近海で米国が行った水爆実験によって、遠洋マグロ漁船第五福竜丸が被ばく。9月には久保山愛吉・無線長が「放射能症」で亡くなった。この事件をきっかけに急速に広がっていた水爆への恐怖が、11月公開の『ゴジラ』全編を貫いている。 冒頭の場面は、第五福竜丸事件そのものを思わせるし、評論家の川本三郎が「ゴジラはなぜ『暗い』のか」という示唆に富んだ論考で指摘したように、逃げ惑う群衆や病院に収容されたけが人の姿は、東京大空襲や広島、長崎の原爆の犠牲者を思わせる。 もちろん、映画がヒットしたのはそうした理屈とは関係なく、大人も子供もも夢中になるほど、怖くて面白かったからだ。本多をはじめ、特撮担当の円谷英二、音楽の伊福部昭ら日本映画に大きな足跡を残したスタッフが結集。真剣に重ねた努力や創意と情熱が、至る所で実を結んでいる。 ゴジラの叫び声は、「タタタン、タタタン・・・」というおなじみのテーマ曲を作曲した伊福部が「コントラバスの弦を皮手袋で縦に引っ張って」出した音を基に作り上げた。CGを見慣れた目には、船や飛行機の特撮はたしかにちゃちだが、ゴジラそのものは見せ方に工夫があり迫力十分、共感を呼ぶ哀愁も感じさせる。 主な登場人物は、古生物学者、山根博士(志村喬)。博士の娘、恵美子(河内桃子)。その恋人の尾形(宝田明)。恵美子の元婚約者、芹沢博士(平田昭彦)の4人。 映画のラストで山根博士が「もし水爆実験が続けて行われるとしたら」と、警鐘を鳴らす。続編を計算したせりふでもあるだろうが、ここに日本映画が生んだ「ゴジラ」の原点の反核メッセージがある。
2024.07.09
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今回借りた4冊です。 だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は強いていえば、「予約本」でしょうか♪<市立図書館>・墨のゆらめき・米番記者が見た大谷翔平・地形と地理でわかる大江戸の謎・日本の「世界化」と世界の「中国化」<大学図書館>(ただいま市民への開放サービスを休止中)図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)***********************************************************【墨のゆらめき】三浦しおん著、 新潮社、2023年刊<出版社>より実直なホテルマンは奔放な書家と文字に魅せられていく。書下ろし長篇小説! 都内の老舗ホテル勤務の続力は招待状の宛名書きを新たに引き受けた書家の遠田薫を訪ねたところ、副業の手紙の代筆を手伝うはめに。この代筆は依頼者に代わって手紙の文面を考え、依頼者の筆跡を模写するというものだった。AmazonのAudible(朗読)との共同企画、配信開始ですでに大人気の書き下ろし長篇小説。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/9予約、副本12、予約373)>rakuten墨のゆらめき【米番記者が見た大谷翔平】 ディラン・へルナンデス著、朝日新聞出版、2024年刊<出版社>より本塁打王、2度目のMVPを獲得し、プロスポーツ史上最高額でロサンゼルス・ドジャースへの移籍が決まった大谷翔平。渡米以来、その進化の過程を見続けた米国のジャーナリストが語る「二刀流」のすごさとは。データ分析や取材を通して浮かび上がってきた独自の野球哲学、移籍後の展望など徹底解説する。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/16予約、副本1、予約8)>rakuten米番記者が見た大谷翔平【地形と地理でわかる大江戸の謎】 大石学(監修)、宝島社、2021年刊<「BOOK」データベース>より歴史は「舞台」でこそ具体的な姿を見せる!なぜ、徳川幕府は江戸で開かれたのか?なぜ、参勤交代は大名ごとに時期が決まっていたのか?なぜ、大坂は「天下の台所」となったのか?なぜ、長崎に出島がつくられたのか?なぜ、江戸の罪人は八丈島に流されたのか?なぜ、晒し首の刑場は街道の入り口にあったのか?江戸時代の謎が地形と地理に注目することで解ける!そこで歴史は動いた‼ 全58項目の「大江戸」の謎に歴史の舞台へといざなうツール<読む前の大使寸評>追って記入rakuten地形と地理でわかる大江戸の謎【日本の「世界化」と世界の「中国化」】 小倉和夫著、藤原書店、2018年刊<出版社>より日本を映す“鏡”としての中国を、2000年の歴史を通して俯瞰する。明治以降の日本にとって中国は、近代化に乗り遅れた混乱と混迷の国であると同時に、文化的伝統には親近感を覚える国だった。しかし、古代にまで遡れば、中国は政治的権威の源であり、学ぶべき故事来歴の豊かな国であり、模範であった。断絶し、矛盾した中国観が共存している中で、中国が急成長し、大国化した今、“新しい中国観”の確立が急務である。2000年前から続く関係史を見渡し、これからの日中関係のため、“日本にとって中国とは何であったのか”を探る。<読む前の大使寸評>追って記入rakuten日本の「世界化」と世界の「中国化」
2024.07.08
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図書館で『日本移民日記』という本を、手にしたのです。韓国出身のラッパーが、移民、日本語について語るというエッセイ集ってか・・・私のツボが疼くのです。【日本移民日記】 MOMENT JOON著、岩波書店、2021年刊<「BOOK」データベース>より移民として生きる経験に根ざし、日本語表現の新たな地平を切り開くラッパーMOMENT JOON、待望にして初の著作!<読む前の大使寸評>韓国出身のラッパーが、移民、日本語について語るというエッセイ集ってか・・・私のツボが疼くのです。rakuten日本移民日記まず「まえがき」から、見てみましょう。pⅰ~ⅲ<まえがき> 留学生、外人、ラッパー、韓国人・・・以前まで私を飾っていた他の言葉を置いておいて、あえて「移民」というタイトルでエッセイを書き始めた2020年の10月。10年間の日本での経験から「ネタはいくらでもある」と、甘い考えで始めたこの連載が、ここまで大きな課題と試練になるとは思いませんでした。 岩波書店の月刊誌『図書』に寄稿したエッセイがきっかけで連載のお話を享けた時は、たしかに「「外人あるある」ぐらいの話ならいくらでも出来るだろう」と、本当に安易に思っていましたね。しかし、連載を終わらせて単行本の出版を目の前にしている今になって振り返ってみると、この「日本移民日記」が自分の心と魂をどれほど変えたのか、恐ろしいぐらいです。 韓国生まれ育ちで、2010年に大阪大学に入学したことから留学生として日本に住み始めた私。2010年の若くて弱かった自分を覚えている私は、自分が「お金も力もない留学生」以外の何かとして人々に見られることに、未だに馴染めません。きっと世の中も自分も2010年からは大きく変わっているはずなのに、いざ何かあった時にはつい19歳の時の目で世の中を眺めてしまう自分がいます。 19歳のキム・ボムジュンの目で見た日本は、彼の声が無視されるのが当たり前のところで、「留学生だから」「外人だから」という言葉が全ての答えになりうる、そういうところでした。 もちろん、今は2010年ではなく2021年。私も19歳の貧しい留学生から、30歳のアーティストMoment Joonに変わりました。日本で生活する者として、大学院生として、あるいはアーティストとして自分が手に入れたものがあって、それに伴う責任も影響もあるのが、今の私の現実です。この「日本移民日記」は、ある意味で19歳のキム・ボムジュンが「Moment Joon」の現実に気づくプロセスの記録かもしれません。「いわゆる普通の日本人には分からない我らの話をしてやる」から始まった文章が、単純なはけ口を超えて今の自分と日本を見つめるものへと次々に変わっていくような、その成長と変化の記録がこの「日本移民日記」ではないかと思います。(以降略)
2024.07.07
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図書館に予約していた『大学教授 こそこそ日記』という本を、待つこと5カ月ほどでゲットしたのです。この出版社の「汗と涙のドキュメント日記シリーズ」には関心があるわけで、以前出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記を読んでいます。【大学教授 こそこそ日記】 多井学著、三五館シンシャ、2023年刊<「BOOK」データベース>より「いくらでも手抜きのできる仕事」。現役教授が打ち明ける、ちっとも優雅じゃない生活。<読む前の大使寸評>この出版社の「汗と涙のドキュメント日記シリーズ」には関心があるわけで、以前出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記を読んでいます。<図書館予約:(1/12予約、入荷待ち、予約?)>rakuten大学教授 こそこそ日記まず「第一章 大学教授の優雅じゃない日常」の冒頭から、見てみましょう。p11~15<雨ニモ負ケズ、風邪ニハ勝テズ> 朝7時に目覚ましが鳴る。カーテンを開け外をのぞくとシトシトと雨が降っている。ママチャリでの通勤を思うと気が重い。リビングの愛猫・ジジがニャオニャオと大声で鳴く。エサをくれという要求だ。キッチンの棚からカリカリのエサを取り出して皿に盛る。私のほうの朝食は野菜ジュースとブラックの缶コーヒー。肥満防止を兼ね、もう何年も朝に固形物はとっていない。 雨合羽を着込み、ママチャリにまたがり大学へ。数日前から風邪気味で、鼻が詰まり、喉が痛い。少々体調が良くないのだが、休んでもいられない。 KG大では、授業を休講とする場合、メールで理由付きの休講願いの提出が必須だ。休講数は大学当局によりカウントされている。 じつはある年度に、休講のコマ数が急増したことで理事長が激怒、各学部長宛てに「休講が多すぎるので極力減らすように」という指示が出た。わが学部の教授会でも理事長の要請文が配布され、学部長からも、「今後、休講を減らすようにしてください。やむをえず休講の場合もできるだけ補講を行うようにお願いします」 と要請があった。ウン十年前のように、体調不良や学会参加を理由にして、頻繁に休講することが許されるような牧歌的時代はとっくに終わってしまったのだ。 大学までの通勤時間は20分。途中から予想外に雨足が強まり、大学に到着するころには、上着とズボンどころかパンツや靴下までびしょ濡れである。 大学に着き、事務室に向かうと、事務職員の坂上さんに声をかけられる。40代の女性で生真面目な仕事ぶりは信頼が置けるのだが、自分にも厳しい分、他人にも厳しい。「多井先生、欧州公共政策の非常勤講師の件ですが、来年度のカリキュラムに間に合うように、そろそろ担当者の情報をいただけませんか?」「今、D大の佐藤教授に打診している最中です。ご連絡いただけたら、メールしますね」「できるだけ早く、1週間以内にお願いします」「了解しました」 非常勤講師探しも大学教授の大事な職務である。D大の佐藤教授とは面識がないものの、欧州関係の著書を出しており、この科目にはピッタリだと見込んで、D大のホームページに記載されていたアドレス宛にメールを送信したところだ。報酬は月額3万円プラス交通費のみと決して良くはない。研究者には「非常勤講師」をやりたがる人とそうでない人がいる。 報酬が少ないため、遠方だとつうきんじかんがかかり、「割に合わない」と断られることもある。逆に関西ではそれなりに知名度のあるKG大の「非常勤講師」という肩書きに魅力を感じたり、KG大の図書館やデータベースが使えるため、喜ばれることもある。佐藤教授が後者だといいのだが・・・。
2024.07.05
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図書館で『生命式』という本を、手にしたのです。この本は⒓篇の短編小説で構成されているが、悲喜こもごもの構成になっているようです。【生命式】 村田沙耶香著、河出書房新社、2019年刊<「BOOK」データベース>より文学史上、最も危険な短編集。自身がセレクトした、脳そのものを揺さぶる⒓篇。<読む前の大使寸評>この本は⒓篇の短編小説で構成されているが、悲喜こもごもの構成になっているようです。rakuten生命式この本は⒓篇の短編小説で構成されているが、まず冒頭の「生命式」から、見てみましょう。p7~11<生命式> 会議室でご飯を食べていると、ふいに後輩の女の子が箸を止めて顔を上げた。「そういえば、総務にいた中尾さん、亡くなったみたいですね」「えっ、ほんと?」 会議室に集まっていた5人ほどの同じ部署の女の子たちが、一斉に後輩を見た。「脳梗塞だったみたいですよ」 私は中尾さんの人のよさそうな笑顔を思い浮かべた。ロマンスグレーの上品な男性で、よく私たちに取引先からもらったお菓子を分けてくれた。物腰の柔らかい、礼儀正しい人だった。定年で退職してからまだ数年しかたっていない。「まだ若いのにね」「ほんとよね。それって、いつだったの?」「おととい亡くなったみたいです。今朝、会社に電話あったみたいですよ。今夜、式をやるからなるべく皆に来てほしいいって、故人もそれを願ってたからって」「そっかあ。じゃあ、今日はお昼、控えめにしとこう。デザートはやめとこっかな」 私と同期の女性が、プリンを開けないままコンビニの袋に戻した。一つ上の先輩が、肉じゃがを口に運びながら言う。「中尾さん、美味しいかなあ」「ちょっと固そうじゃない? 細いし、筋肉質だし」「私、前に中尾さんくらいの体型の男の人食べたことあるけど、けっこう美味しかったよ。少し筋張ってるけど、舌触りはまろやかっていうか」「そっかあ。男の人のほうが、いい出汁が出るっていうしね」 プリンの入った袋を片付けていた同期の子が振り向いた。「池谷さんも行くでしょ? 生命式」「あーうん、どうしようかなあ」 近所のコンビニで買った海苔弁当をつつきながら、私は曖昧に言って首をかしげた。「えー、なんでですかあ。あ、ひょっとして、池谷先輩って人肉あんまり食べない人なんでしたっけ」「違う違う。ただちょっと、最近胃もたれしてて。それに生理だし」「整理なんですかあ。それは確かに」 納得したように、後輩の女の子が頷いた。「でも、生理でも妊娠できるかもですよお。行ったほうがいいですよ、生命式。受精できるかもしれないじゃないですかあ」 私は誤魔化すように笑いながら、ソースをかけすぎた白身フライをペットボトルのお茶で流し込んだ。 私が小さいころは、人肉は食べてはいけないものだった。確かに、そうだったと思う。
2024.07.03
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図書館で『幽囚回顧録』という本を、手にしたのです。日本陸軍の軍人と言えば、あまり評判が芳しくないが・・・この今村均という大将はリベラルで、かなり異質な人だったようです。【幽囚回顧録】 今村均著、中央公論新社、2019年刊<「BOOK」データベース>よりインドネシアの軍政下で自治を認め、ラバウルでは自給自足を実現し、リベラル派で知られる軍人が理不尽な戦争裁判に立ち向かう。オランダ法廷では無罪になったが、オーストラリアの法廷では禁固十年が宣告されていたため、東京に送還されるも、部下と命運をともにしたいとマヌス島の刑務所に残留した。巻末に伊藤正徳のエッセイを収録。<読む前の大使寸評>日本陸軍の軍人と言えば、あまり評判が芳しくないが・・・この今村均という大将はリベラルで、かなり異質な人だったようです。rakuten幽囚回顧録回顧録概観から第一部第一章あたりを、見てみましょう。p8~11<幽囚回顧録概観>・昭和20年8月15日終戦後、ラバウル豪陸軍刑務所にはいり、昭和22年5月、10年の刑に処せられる。・昭和23年5月、ジャワのオランダ軍事裁判に移され、ひとたび死刑を求刑されたが、のち無罪を判決され、昭和25年1月、米・豪・蘭の各軍当局の合議により、巣鴨拘置所にて服役を申しわたされ、東京に送還された。・昭和25年2月、マヌス島服役を申しでて、同島の豪海軍刑務所に移された。・昭和28年、マヌス島の豪海軍刑務所の廃止にともない、他の戦犯とともに東京巣鴨拘置所に移管された。・昭和29年10月、刑期満了のため出所し、東京世田谷豪徳寺の自宅において、戦争犠牲者の援護につくした。<第一部 ラバウル幽囚録><第一章 戦い終わる> 昭和20年8月14日の夜、ラバウル方面軍将兵一同(約7万)は、陸軍大臣から、次の電報を受けとった。「明8月15日正午、天皇陛下御自ら、詔勅を放送あらせられる。同時これを謹聴すべし」 私は、日本本土に、敵の上陸を迎えての決戦態勢確立の要などにつき、ご激励の聖旨をくだされるのであろうと拝察した。数日前、阿南陸相から、「・・・ソ連遂に皇国に寇(あだ)す。事ジに至る。また何おか言わん。断乎神州護持の聖戦を戦い抜かんのみ。断じて戦うところ、死中自ずから活あるを信ず。是即ち七生報国“われ一人生きてありせば”の楠公救国の精神なると共に、時宗の“莫妄想、直進前”以て醜敵を撃滅せる闘魂なり・・・」の訓電に接しているので、直感的にそう思考したのである。 15日正午、服装をととのえ、防空壕内の無線電信所にはいり、数人の幕僚とともに、謹んで詔勅を拝聴しようとした。が、天候のためか、受信機能の不整によるものか、何らの玉音も伝わらずに終わった。 午後三時ごろ、軍参謀の一人が、私の部屋にはいって来、黙って一通の文書を机の上にさしだした。方面艦隊司令部の受けた海軍大臣からの、詔勅伝達電報を浄書したものである。前年2月以来、敵の制空制海により、全く祖国との交通を断たれ、無線による公電のほか、なんら国内の事情を知り得ないでいた私としては、思いもかけぬことであり、驚きとともに、かような詔勅をくださなければならないようになられた陛下のご心慮をいたみ奉り、瞑目すると参謀の小さなすすり泣きが聞こえる。“戦陣での武将は、決して涙など見せるものではない”と深くいましめていたのに、不覚にも涙はあふれ出てしまった。 やがて陸軍大臣からの、終戦に関する詔書の伝達電報が受信された。私は、ラバウル付近の全直轄部隊長約60人を、方面軍司令部内に集め、詔書の伝達式を行うことに決し、翌16日午前11時に参集すべきことを指令した。 15日の夜は、どうしても眠れず起きて防空壕外に出た。終戦となったためか、雨天のときでも、欠かさずやって来た敵機は、一つもやってこない。仰ぐと星は、ヤシのこずえにまたたいている。陸軍大将・今村均は、敵中に孤立したラバウルで、10万将兵の命を守るために何をしたかが興味深いのです。
2024.07.01
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今回借りた3冊です。 だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は強いていえば、「手あたり次第」でしょうか♪<市立図書館>・大学教授 こそこそ日記・あのころの日本映画101・日本移民日記<大学図書館>(ただいま市民への開放サービスを休止中)図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)***********************************************************【大学教授 こそこそ日記】 多井学著、三五館シンシャ、2023年刊<「BOOK」データベース>より「いくらでも手抜きのできる仕事」。現役教授が打ち明ける、ちっとも優雅じゃない生活。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/12予約、入荷待ち、予約?)>rakuten大学教授 こそこそ日記【あのころの日本映画101】 立花珠樹著、言視舎、2018年刊<「BOOK」データベース>より50年代の古典から“ちょい前”の問題作まで先がみえない時代だからこそ、生きるヒントや心の潤いになる101本を厳選。1本ずつ「心に残る名せりふ」を解説する。<読む前の大使寸評>追って記入rakutenあのころの日本映画101【日本移民日記】 MOMENT JOON著、岩波書店、2021年刊<「BOOK」データベース>より移民として生きる経験に根ざし、日本語表現の新たな地平を切り開くラッパーMOMENT JOON、待望にして初の著作!<読む前の大使寸評>追って記入rakuten日本移民日記
2024.06.30
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『朝日デジタルの書評から』フォームや『読みたい本』フォームを作っているのだが、これを市図書館の予約に利用しようと、思い立ったのです。これまでの予約内容と予約候補は以下のとおりです。<予約中>・川上未映子『黄色い家』(7/24予約、副本?、予約504)現在88位・三浦しおん『墨のゆらめき』(8/9予約、副本12、予約373)現在5位・堤未果のショック・ドクトリン(8/25予約、副本7、予約177)現在11位・『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(9/18予約、副本5、予約126)現在11位・原田ひ香『図書館のお夜食』(10/04予約、副本17、予約402)現在65位・吉岡桂子『鉄道と愛国』(12/04予約、副本?、予約?)現在2位・高野秀行『イラク水滸伝』(1/06予約、副本3、予約86)現在32位・絲山秋子『神と黒蟹県』(3/02予約、副本3、予約63)現在44位・三浦しおん『しんがりで寝ています』(4/12予約、副本?、予約106)現在67位・カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」(4/27予約、副本1、予約48)現在38位・前田和男『昭和街場のはやり歌』 (5/10予約、副本?、予約8)現在7位・小倉ヒラク『アジア発酵紀行』 (5/14予約、副本2、予約5)現在18位・米番記者が見た大谷翔平(5/16予約、副本1、予約8)現在1位・椎名誠『続 失踪願望』(5/31予約、副本?、予約8)現在2位・池澤夏樹『ノイエ・ハイマート』(6/29予約、副本?、予約?)<カートで待機中>・N・ネフスキー著『月と不死』・グレタたったひとりのストライキ・カズオ・イシグロ『夜想曲集』・沢木耕太郎『深夜特急』<予約候補>・中野翠『ほいきた、トシヨリ生活』・鴨志田譲×西原理恵子『アジアパー伝』:図書館未収蔵・ジョージ・ミーガン『世界最長の徒歩旅行』:図書館未収蔵・井上ひさし『本の運命』・ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』・ケン・リュウ『草を結びて環を衡えん』:図書館未収蔵・九段理恵『東京都道場塔』:図書館未収蔵・外山滋比古『思考の整理学』・ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』・「中国」はいかにして統一されたか・街道をゆく「モンゴル紀行」「南蛮のみち」・地球の歩き方 日本・畑正憲『どんべえ物語』:図書館未収蔵・内田樹『勇気論』:図書館未収蔵・有田芳正『誰も書かなかった統一教会』・池澤夏樹『ノイエ・ハイマート』・文字の大図鑑<予約分受取:2/27以降> ・村上春樹×柴田元幸『翻訳夜話』(2/15予約、2/27受取)・楊双子『台湾漫遊鉄道のふたり』(6/23予約、2/27受取)・川添愛『世にもあいまいなことばの秘密』(1/26予約、2/27受取)・呉叡人『フォルモサ・イデオロギー』(2/03予約、3/11受取) ・森見登美彦『太陽と乙女』(3/23予約、3/31受取)・Wedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機 (4/16予約、4/28受取)・本川達雄『ウマは走るヒトはコケる』(3/31予約、5/10受取)・南海トラフ地震の真実(10/20予約、5/15受取)・斎藤幸平『マルクス解体』(11/28予約、6/05受取)・李琴峰『彼岸花が咲く島』(6/19予約、6/25受取)・大学教授 こそこそ日記(1/12予約、6/29受取)**********************************************************************【黄色い家】川上未映子著、中央公論新社、2023年刊<「BOOK」データベース>より2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。長らく忘却していた20年前の記憶ー黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな“シノギ”に手を出す。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい…。善と悪の境界に肉薄する、今世紀最大の問題作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/24予約、副本?、予約504)>rakuten黄色い家【墨のゆらめき】三浦しおん著、 新潮社、2023年刊<出版社>より実直なホテルマンは奔放な書家と文字に魅せられていく。書下ろし長篇小説! 都内の老舗ホテル勤務の続力は招待状の宛名書きを新たに引き受けた書家の遠田薫を訪ねたところ、副業の手紙の代筆を手伝うはめに。この代筆は依頼者に代わって手紙の文面を考え、依頼者の筆跡を模写するというものだった。AmazonのAudible(朗読)との共同企画、配信開始ですでに大人気の書き下ろし長篇小説。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/9予約、副本12、予約373)>rakuten墨のゆらめき【堤未果のショック・ドクトリン】堤未果著、幻冬舎、2023年刊<「BOOK」データベース>より「ショック・ドクトリン」とはテロや大災害など、恐怖で国民が思考停止している最中に、為政者や巨大資本がどさくさに紛れに過激な政策を推し進める悪魔の手法のことである。日本でも大地震やコロナ禍という惨事の裏で、知らない間に個人情報や資産が奪われようとしている。パンデミックで空前の利益を得る製薬企業の手口、マイナンバーカード普及の先にある政府の思惑など…。強欲資本主義の巧妙な正体を見抜き、私たちの生命・財産を守る方法とは?滅びゆく日本の実態を看破する覚悟の一冊。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/25予約、副本7、予約177)>rakuten堤未果のショック・ドクトリン【ぼくはあと何回、満月を見るだろう】坂本龍一著、新潮社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「何もしなければ余命は半年ですね」ガンの転移が発覚し、医師からそう告げられたのは、2020年12月のこと。だが、その日が来る前に言葉にしておくべきことがある。創作や社会運動を支える哲学、坂本家の歴史と家族に対する想い、そして自分が去ったあとの世界についてー。幼少期から57歳までの人生を振り返った『音楽は自由にする』を継ぎ、最晩年までの足跡を未来に遺す、決定的自伝。著者の最期の日々を綴った、盟友・鈴木正文による書き下ろし原稿を収録。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(9/18予約、副本5、予約126)>rakutenぼくはあと何回、満月を見るだろう【図書館のお夜食】原田ひ香著、ポプラ社、2023年刊<「BOOK」データベース>より東北地方の書店に勤めるものの、うまくいかず、仕事を辞めようかと思っていた樋口乙葉は、SNSで知った、東京の郊外にある「夜の図書館」で働くことになる。そこは普通の図書館と異なり、亡くなった作家の蔵書が集められた、“本の博物館”のような図書館だった。開館時間は夜7時から12時まで、まかないとして“実在の本に登場する料理”が出てくる「夜の図書館」で、本好きの同僚に囲まれながら働き始める乙葉だったがー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/04予約、副本17、予約402)>rakuten図書館のお夜食【鉄道と愛国】吉岡桂子著、岩波書店、2023年刊<「BOOK」データベース>より戦後日本の発展の象徴、新幹線。アジア各地で高速鉄道の新設計画が進み、中国が日本と輸出を巡って競い合う現在、新幹線はどこまで日本の期待を背負って走るのか。一九九〇年代から始まった新幹線商戦の舞台裏を取材し、世界最長の路線網を実現した中国の高速鉄道発展の実像に迫る第一部、中国、香港、韓国、東南アジア、インド、ハンガリーなど世界各地をたずね、鉄道を走らせる各国の思惑と、現地に生きる人々の声を伝える第二部を通じて、時代と共に移りゆく日中関係を描き出し、日本の現在地をあぶりだす。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(12/04予約、副本?、予約?)>rakuten鉄道と愛国【イラク水滸伝】高野秀行著、文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>よりアフワールーそこは馬もラクダも戦車も使えず、巨大な軍勢は入れず、境界線もなく、迷路のように水路が入り組み、方角すらわからない地。権力に抗うアウトローや迫害されたマイノリティが逃げ込む、謎の巨大湿地帯。中東情勢の裏側と第一級の民族誌的記録ー“現代最後のカオス”に挑んだ圧巻のノンフィクション大作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/06予約、副本3、予約86)>rakutenイラク水滸伝【神と黒蟹県】絲山秋子著、 文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>より「黒蟹とはまた、微妙ですね」。日本のどこにでもあるような「地味県」の黒蟹県。そこで暮らす、そこを訪れる、名もなき人々や半知半能の神がすれ違いながら織りなす、かけがえなく、いとおしい日々。まだ名付けられていない人間関係を描き続けてきた著者真骨頂の連作小説集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(3/02予約、副本3、予約63)>rakuten神と黒蟹県【しんがりで寝ています】三浦しおん著、 集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より雑誌「BAILA」での連載4年分に、書き下ろしを加えた全55編!三浦しをんの沼にどっぷりハマる、最新&爆笑エッセイ集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/12予約、副本?、予約111)>rakutenしんがりで寝ています【カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」】 室橋 裕和著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりいまや日本のいたるところで見かけるようになった、格安インドカレー店。そのほとんどがネパール人経営なのはなぜか?どの店もバターチキンカレー、ナン、タンドリーチキンといったメニューがコピペのように並ぶのはどうしてか?「インネパ」とも呼ばれるこれらの店は、どんな経緯で日本全国に増殖していったのか…その謎を追ううちに見えてきたのは、日本の外国人行政の盲点を突く移民たちのしたたかさと、海外出稼ぎが主要産業になっている国ならではの悲哀だった。おいしさのなかの真実に迫るノンフィクション。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/27予約、副本1、予約48)>rakutenカレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」【昭和街場のはやり歌】前田和男著、 彩流社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「はやり歌」から、明日の日本の姿が見えてくる…。歌とともに時代を共有した「団塊」といわれるベビーブーマー世代が、エピソードを交え描く歌謡社会文化論!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/01予約、副本?、予約8)>rakuten昭和街場のはやり歌【アジア発酵紀行】小倉ヒラク著、文藝春秋、2023年刊<出版社>よりアジアの巨大な地下水脈をたどる冒険行。「発酵界のインディ・ジョーンズ」を見ているようだ!ーー高野秀行(ノンフィクション作家) 自由になれーー各地の微生物が、奔放な旅を通じて語りかけてくる。ーー平松洋子(作家・エッセイスト)発酵はアナーキーだ! チベット~雲南の「茶馬古道」からインド最果ての内戦地帯へーー前人未到の旅がいま幕をあける! 壮大なスケールでアジアの発酵文化の源流が浮き彫りになる渾身作。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/14予約、副本2、予約21)>rakutenアジア発酵紀行【米番記者が見た大谷翔平】 ディラン・へルナンデス著、朝日新聞出版、2024年刊<出版社>より本塁打王、2度目のMVPを獲得し、プロスポーツ史上最高額でロサンゼルス・ドジャースへの移籍が決まった大谷翔平。渡米以来、その進化の過程を見続けた米国のジャーナリストが語る「二刀流」のすごさとは。データ分析や取材を通して浮かび上がってきた独自の野球哲学、移籍後の展望など徹底解説する。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/16予約、副本1、予約8)>rakuten米番記者が見た大谷翔平【続 失踪願望】椎名誠著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より「おい、シーナ、逃げるなよ」親友からの最期の“檄”その真意とは?書き下ろし「さらば友よ!」収録。老いること、喪失を抱えて生きること、愛するものたちへの思いをまっすぐに。79歳の日録が静かに差し出す新たな人生の世界線…共感必至!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/31予約、副本?、予約8)>rakuten続 失踪願望【ノイエ・ハイマート】池澤夏樹著、新潮社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりある日、難民になる。「新しい故郷」を求めて、歩きだす。そんなに遠い世界の話ではないのです。シリアで、クロアチアで、アフガニスタンで、満洲で、生きのびるために難民となった、ふつうの人たち。その姿と心を、てのひらで触れるようにして描きだす。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(6/29予約、副本?、予約?)>rakutenノイエ・ハイマート【月と不死】N・ネフスキー著、平凡社、1971年刊<出版社>より著者は日本民俗学界の異色の存在として知られるロシア人学者で,柳田国男,折口信夫らと親交を結び,沖縄,東北などの民俗を採録した。本書は日本語で発表された論文・書簡を網羅した唯一の著作集。<読む前の大使寸評>ロシア人にして、日本民俗学界の異色の存在が気になるのです。<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>heibonsha月と不死図書館予約の運用にも慣れて、速攻で入手するコツも何となくつかんだと思うのだ♪・朝日書評欄で探すとしたら、3ヶ月前掲載くらいのモノが狙い目かも。・専門的すぎるほどのモノは、予約0となっていることが多い。・受取館に収蔵しているモノは、移送する手間が省けるので早くなるだろう。・本屋の店頭に出た直後の新刊本・ウィキペディアでめぼしい著作を探す・神戸市図書館の予約順位は毎週火曜日(午前1時~3時) に更新されます。・Kindle版を購入すれば、その本の全て読めるのだが、紙の本から書き写す手間が好きなわけでおます。予約分受取目録R26好書好日トップ図書館情報ネットワーク 蔵書検索
2024.06.30
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図書館に予約していた『彼岸花が咲く島』という本を、待つこと1週間ほどでゲットしたのです。この李琴峰という日本で生まれた台湾人作家の使う日本語が興味深いのです。【彼岸花が咲く島】李琴峰著、文藝春秋、2021年刊<出版社>より【第165回 芥川賞受賞作!】記憶を失くした少女が流れ着いたのは、ノロが統治し、男女が違う言葉を学ぶ島だったーー。不思議な世界、読む愉楽に満ちた中編小説。<読む前の大使寸評>この李琴峰という日本で生まれた台湾人作家の使う日本語が興味深いのです。<図書館予約:(6/19予約、副本?、予約0)>rakuten彼岸花が咲く島まず冒頭から語り口を、見てみましょう。p2~7 砂浜に倒れている少女は、炙られているようでもあり、炎の触手に囲われ大事に守られているようでもあった。 少女は真っ白なワンピースを身に纏い、長い黒髪が砂浜で扇状に広がっている。ワンピースも髪もずぶ濡れで黄色い砂がべったりと吸いつき、眩しい陽射しを照り返して輝き、ところどころ青緑の海藻が絡みついている。ワンピース以外に衣類はなく、持ち物も特にないようである。少女の白い裸足に、ワンピースの裾がめくれて露わになっている大腿に、折れそうなほど細かい首筋に、どこか寂しげな色を浮かべる顔に、あちこち傷跡がついている。鋭いもので切られたような傷口もあれば、鈍器で殴られたような暗い紫色の痣もある。 少女を包み込んでいるのは赤一面に咲き乱れる彼岸花である。砂浜を埋め尽くすほど花盛りの彼岸花は、蜘蛛の足のような毒々しく長い蕊(しべ)を伸ばし、北向きの強い潮風に吹かれながら揺れている。薄藍の空には雲がほとんどなく、太陽はちょうど中天に差し掛かる頃で、その下に際限なく広がる海水は浜辺から翡翠色、群青色、濃紺へとグラデーションしていく。白い波は彼岸花の群れに押し寄せては、岸を打つと音を立てて砕ける。この光景を見ると、少女は波で海岸に打ち上げられたのだということを誰も疑問に思わないはずである。 最初に少女の姿を目にしたのは、彼岸花を採りに砂浜にやってきた游娜(ヨナ)だった。少女と同じくらいの年齢に見えるヨナは笠を被り、ギンガムチェックの着物を着ていて、日に焼けた小麦色の細い手足が筒状の袖から伸びている。脹脛に届くくらいの長い黒髪は一つに結い、歩くと軽やかに躍動する。游娜は慣れた手つきで、満開を少し過ぎたくらいの彼岸花を丁寧に選別しては、はさみで緑の花径から切り取ると、左肩に背負っている麻袋に放り込んでいく。 鮮やかな彼岸花の群れに倒れている少女に気付いた瞬間、游娜は驚きのあまり麻袋を落とし、反射的にはさみを持ち直して身構えた。この砂浜には自分以外に誰もいないはずだ。しかし少女に目を凝らすと游娜はまた動揺し、ゆっくりとはさみを下ろした。少女の可憐な見た目に息が詰まりそうになったというのもあるが、彼女の身に纏っている白装束に気を取られたからである。(中略) 少女に見惚れた游娜は何かを考える前にほぼ衝動的に自分の顔を近付け、少女と唇を重ねた。目を閉じると世界の全てが遠退き、波の音だけが遠くで木霊する。冷たく柔らかい唇からは、海水の塩っぽい味がした。 唇を離すと、少女は悪夢にうなされるように瞼をきつく閉じ、両手で拳を握りながら、意味を成さない低い唸り声を発した。ややあって、ゆっくり瞼を開けると眩しそうに右手を目の前にかざし、影を作った。游娜の存在に気付いたのはそれからだった。「ノロ?」と游娜は訊いた。 もがきながら少女は身体を起こしてヨナを見つめ、何度か瞬きをした。そして、「ノロ?」と訊き返した。「ノロの服着てるアー!」游娜はやや興奮気味に言った。「リー、ニライカナイより来(らい)したに非ずマー?」「ここ、どこ?」昏睡していたとき顔に表れていた寂しげな表情が色褪せ、代わりに少女の顔に浮かんだのは純然たる恐怖だった。「なんでわたしはここにいるの?」「ここは〈島〉ヤー!」と游娜は答えた。「シマ?」少女は怯える目で游娜を見た。「なんのシマ?」「〈島〉は〈島〉ベー」
2024.06.29
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図書館で『女と男の大奥』という本を、手にしたのです。大奥といえば、なにやら隠微な興味が湧くではないか♪*********************************************************【女と男の大奥】 福田千鶴著、吉川弘文館、2021年刊<「BOOK」データベース>より江戸城本丸奥にあり、将軍の家族が暮らした後宮=大奥。その実態を知る上で不可欠な大奥法度から歴史・職制・機能を分析。多くの男たちが出入りしていた事実を明らかにし、「女たちの大奥」という固定観念を問い直す。<読む前の大使寸評>大奥といえば、なにやら隠微な興味が湧くではないか♪rakuten女と男の大奥まず「プロローグ」の冒頭で、江戸城大奥や女中たちの通用門が述べられているので、見てみましょう。P1~5<女たちの大奥に出入りする男たち>■大奥はどこにあるのか 本書のメイン・テーマは、江戸城大奥である。一般に大奥といえば、江戸幕府の後宮のことを指し、将軍の家族やそれに仕える多くの女性たちが暮らしていた。そう聞けば、女たちの愛憎劇や陰謀渦巻くいつもの「大奥」話を期待されるかもしれない。しかし、そのような「女たちの大奥」という固定観念を大きく改めたい、というのが本書のねらいである。 本書の舞台となる大奥は、いうまでもなく江戸城の中にある。では、「江戸城はどこにある?」。 今どきの学生にそう尋ねると、一瞬、思考が止まることがある。江戸城というからには東京にある、というところまでは思いつくのだが、そこから先が進まない。そこで、今の皇居だと教えると、「やはり、そうだと思っていました」という展開になる。 つまり、現在の皇居のある場所が、江戸城である。皇居を訪ねて坂下門から入ると、左手に宮殿がみえてくる。これは、もとは西の丸だった場所。そこから右手に、一段高くなった場所に本丸がある。 蓮池門を通って本丸エリアに向かい、左右に分かれた右手の道を選び、富士見櫓を左に見上げながら進むと、前方に二の丸エリアがみえる。その手前に本丸に登城するための中の門があり、門を通過して番所を背にして進み、U字に折れた坂道を上れば中雀門があり、表玄関付近に到着する。そうすると、その先に広がる本丸広場の一番奥に、巨大な天守台がみえる。そこまでが本丸エリアである。 大奥で女中の住居だった長局(ながつぼね)跡地付近には、今はカラフルでかわいらしい円筒状の宮内庁雅楽部桃華楽堂が建つ。令和元年(2019)の大嘗祭の際には、大奥エリアに大嘗宮が建立され、連日テレビで上空から映し出されていたので、ご覧になられて記憶に残っている方もいるだろう。■女中の通用門 では、大奥へはどのルートで入ったのか。通常、女中たちが出入りを許された通用門は、江戸城北側に設けられた平川門である。地下鉄の竹橋駅を降りて、大手町方面側の地上出口を出た先にある。平川門を入ると三の丸エリアがあり、それを背にして下梅林門を抜け、やや急な坂道を上がると上梅林門があり、左に曲がった先に本丸の裏門となる切手門があった。今は宮内庁書陵部がある。ここから先が大奥エリアである。 切手紋ではあらゆるものが改めを受け、門に届けられた書立に名がある者のほかは、門札や切手を持たなければ通行は許されなかった。 切手門を抜けると、中仕切門、広敷門があり、これを抜けるとようやく大奥玄関となる。これは将軍本妻専用の出入り口および姫君などの来客用であり、一般の女中たちはその右脇にある通用口(中の口)を使った。また、女中の使用人である部屋子やその親類、元女中などの来訪は、広敷門を入って右脇にある七つ口を通って各部屋に入った。 つまり七つ口とは、大奥女中たちに仕える部屋方(使用人)たちの出入り口であり、暮の七つ時(午後四時頃)に〆戸が閉まるのでその名がある。詳しくは、順次、本論で述べていくことにしよう。
2024.06.27
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図書館で『教科書には載っていない!明治の日本』という文庫本を、手にしたのです。この本の目次を見れば・・・どの歴史的事例も、そんな取り上げ方もあるのか♪と興味深いのである。【教科書には載っていない!明治の日本】熊谷充晃著、彩図社、2014年刊<出版社>より「明治時代」の表から裏まで、余すところなくご覧頂く。過剰なまでのエネルギーを放つ“19世紀の私たち”の奮闘を心ゆくまでお楽しみ頂きたい。(「はじめに」より)<読む前の大使寸評>この本の目次を見れば・・・どの歴史的事例も、そんな取り上げ方もあるのか♪と興味深いのである。rakuten教科書には載っていない!明治の日本第一章「明治日本の意外な姿」から武士の商売を、見てみましょう。p54~57<困窮した士族たちの「武士の商売」>■生き残りを駆けたお茶の栽培事業 武士の世が終わりを告げ、新しい世が始まりつつあった明治時代初期。 ちょんまげ、刀だけではなく、階級そのものまで喪失してしまった武士たちは、武力に頼ることなく生活の糧を得なければならなかった。しかし、所詮は「武士の商売」。経済活動とはほとんど無縁だった彼らが、すんなり成功できるほど甘くはない。 凍死者や餓死者が続出し定着に至らなかった北海道開拓事業の一部が代表的だが、沿岸部での昔ながらの手法による製塩事業や、浪士による石油発掘事業など、多くの「武士の商売」は、成功とは言いがたい結果に終わった。 そうして食い扶持にも事欠くような困窮士族が全国にあふれるのだが、廃藩置県後の静岡県は特に、その数が多かった。全国一の石高を誇っていた徳川宗家は静岡に移封され、250万石ともいわれる領地が70万石と、実に3分の1程度に激減。 旧幕臣に対する待遇を維持できないのはもちろん、養う人数自体を削減せざるを得ない状況に陥った。リストラされた旧幕臣は新天地に赴いてはみたが、後ろ指を指されて迫害にあう者、様変わりした生活に馴染めない者などを中心に、続々と静岡県に再集合する。そこには旧幕臣として、徳川家と運命を共にする覚悟をした者もいれば、行き場がないから仕方なく出戻った者もいた。 どんな背景があるにせよ、明日の食い扶持を稼ぐ必要があるのは、皆一緒。そこで彼らの生活を守るため、藩主導の救済事業が展開されることになる。その中で、現在まで脈々と続く成果を挙げたものが、お茶の栽培事業だ。江戸時代から茶の産地として知られていた静岡県だったが、明治に入ると困窮士族たちを救済する手段として拡大されていく。 まだ幕府と薩長が戊辰戦争を戦っていた時代、上野戦争で散った彰義隊と同時期に、剣豪として知られる幕臣・山岡鉄舟らが結成した「精鋭隊」という組織がある。 水戸に謹慎する慶喜の恭順路線に従った一団だが、「新番組」という名に改組してすぐに、静岡での窮乏生活を見越し、1869(明治2)年に静岡県にある牧之原台地の開墾を願い出て、藩庁から許可されている。 隊の名前も開墾方に改め、山岡とともに結成時に隊頭を務めた中條金之助をはじめ、200人ほどが茶の栽培に挑戦することになった。翌年には彰義隊の生き残りの一部が合流し300戸ほどの開墾集団になっている。 もっとも、実際に開墾するのは武士たち。即席の農民による事業は遅々として進まなかった。最初に拝領した開墾用地は1425町。対して1878(明治11)年に開墾を終えていた土地はたったの211町。しかも開墾に従事する戸数は100戸近くも減ってしまった。 それでも、武士の帰農チャレンジとしては成功の部類で、牧之原台地は今も県下有数の産地として知られる。 背水の陣を敷いた旧幕臣たちが見せた意地と努力は、成果を見るまでに時間はかかったものの「武士の商売」として結実したのだ。『教科書には載っていない!明治の日本』1:明治の選挙戦
2024.06.26
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今回借りた3冊です。 だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は強いていえば、「手あたり次第」でしょうか♪<市立図書館>・彼岸花が咲く島・幽囚回顧録・生命式<大学図書館>(ただいま市民への開放サービスを休止中)図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)***********************************************************【彼岸花が咲く島】李琴峰著、文藝春秋、2021年刊<出版社>より【第165回 芥川賞受賞作!】記憶を失くした少女が流れ着いたのは、ノロが統治し、男女が違う言葉を学ぶ島だったーー。不思議な世界、読む愉楽に満ちた中編小説。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(6/19予約、副本?、予約0)>rakuten彼岸花が咲く島【幽囚回顧録】 今村均著、中央公論新社、2019年刊<「BOOK」データベース>よりインドネシアの軍政下で自治を認め、ラバウルでは自給自足を実現し、リベラル派で知られる軍人が理不尽な戦争裁判に立ち向かう。オランダ法廷では無罪になったが、オーストラリアの法廷では禁固十年が宣告されていたため、東京に送還されるも、部下と命運をともにしたいとマヌス島の刑務所に残留した。巻末に伊藤正徳のエッセイを収録。<読む前の大使寸評>追って記入rakuten幽囚回顧録【生命式】 村田沙耶香著、河出書房新社、2019年刊<「BOOK」データベース>より文学史上、最も危険な短編集。自身がセレクトした、脳そのものを揺さぶる12篇。<読む前の大使寸評>追って記入rakuten生命式
2024.06.26
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図書館で『中世的世界とは何だろうか』という本を、手にしたのです。本書は週刊朝日百科『日本の歴史』(全133冊)に掲載された内容の一部とのことで、著名な歴史学者の語り口は如何なるものか?・・・興味深いのである。【中世的世界とは何だろうか】網野善彦著、朝日新聞出版、1996年刊<「MARC」データベース>より「源氏と平氏」から「後醍醐」までを縦軸に、遊女・海民、遍歴する人々、楽市と駆込寺、貨幣と税などの諸テーマを横軸に、広く深く日本の歴史をとらえなおす。<読む前の大使寸評>本書は週刊朝日百科『日本の歴史』(全133冊)に掲載された内容の一部とのことで、著名な歴史学者の語り口は如何なるものか?・・・興味深いのである。amazon中世的世界とは何だろうか冒頭の「海民と遍歴する人々」から縄文文化と弥生文化を、見てみましょう。p8~10<列島と海の民> 日本文化の最も古い基層といわれる縄文文化について、これを「島国的」で閉鎖性の強い文化とする議論を、しばしば耳にする。しかしこれが、「俗説」・・・日本を島国ときめこむ見方の産物であったことは、たとえば渡辺誠氏の研究によってすでに見事に明らかにされている。 渡辺氏は、縄文時代前期以来、西北九州と朝鮮半島東南岸との間を交流する漁撈民があり、この人々が結合釣針、曽畑式土器・石鋸など、海を越えた両地域に共通する文化の担い手であった事実を解明したのである。縄文文化は決して日本列島の中で完結した文かではなかった。 しかも、この漁撈民の文化は、縄文時代の漁撈の中心で、外洋性の釣漁撈、内湾性の網漁撈を発展させた東日本の漁撈民の文化に対して拒否的であり、異質であった。稲作はこの人々の朝鮮半島との交流の上にのって、まず西北九州に入ってくるが、それを契機に展開する弥生文化とともに、西日本には新たな外洋性の網漁撈が展開しはじめる。そしてこの弥生文化に対し、東日本の縄文人はやはり、少なくともその当初は多少とも拒否的だったのである。 渡辺氏はこうした漁撈民のあり方が、単に東日本、西日本の違いにとどまらず、北海道、沖縄もそれぞれに独自であったとする「常識」を覆す上でも、十分の根拠となりうるであろう。日本列島の各地域で、海を通じて大陸や北方、南方の島々と交流しつつ営まれてきたさっまざまな人間の社会が、一つの「民族」といいうるほどになるまでには、まだまだ長い時間が必要であった。 最近の研究はまた、縄文人の生活が、木の実などの採集に依存するところがきわめて大きかったことを明らかにした。こうした植物食を主とする内陸部の縄文人にとって、塩分は生理的にも不可欠であり、そのことが塩を生産し、魚介・海藻を採取する海辺の漁撈民との交易を早くから発展させた。関東・東北に縄文時代後期から土器製塩が発達し、漁撈民が専業的傾向を強めるようになるのは、こうした交易を前提としなければ理解しがたい。 そして弥生時代になると、土器製塩は西日本の瀬戸内海、大阪湾を中心に大きく発展し、古墳時代に入ると、さらに九州・北陸・東海にまで広がっていく。瀬戸内海には、漁撈・製塩を専業とする集団を率いた首長の古墳も、姿を現すようになる。周知のような西日本と大陸・朝鮮半島との活発な交流を担ったのが、こうした西日本の海の民であったことはいうまでもない。漁撈・製塩、海上の交通に従事するこれらの人々を、その一つの生業のみで呼ぶことは不適当であり、以下、海民とこれを呼ぶことにする。■貢納・神饌と海産物 畿内・吉備・山陰・北九州などの首長たちの激烈な競合の中で、中国大陸・朝鮮半島の政治勢力の動向と不可分の関わりを持ちつつ侵攻した、国家形成のすべてにわたって、これら海民集団が大きな役割を果してきたことは疑いない。その経緯は未だ十分に解明されたとはいいがたいが、海民の活動の一部は、確立した律令国家の制度の中にも、明確な刻印を残しているのである。『中世的世界とは何だろうか』1:さまざまな職能民
2024.06.24
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図書館で『教科書には載っていない!明治の日本』という文庫本を、手にしたのです。この本の目次を見れば・・・どの歴史的事例も、そんな取り上げ方もあるのか♪と興味深いのである。【教科書には載っていない!明治の日本】熊谷充晃著、彩図社、2014年刊<出版社>より「明治時代」の表から裏まで、余すところなくご覧頂く。過剰なまでのエネルギーを放つ“19世紀の私たち”の奮闘を心ゆくまでお楽しみ頂きたい。(「はじめに」より)<読む前の大使寸評>この本の目次を見れば・・・どの歴史的事例も、そんな取り上げ方もあるのか♪と興味深いのである。rakuten教科書には載っていない!明治の日本第一章「明治日本の意外な姿」から明治の選挙戦を、見てみましょう。p61~63<賄賂を贈り放題だった選挙戦>■身内同士で選び合うようなものだった 1890(明治23)年7月1日、日本初のアジアでも前例がない「制限選挙による投票」が実施された。第一回衆議院議員総選挙である。この国政選挙は板垣退助や大隈重信をはじめとする「民権派」たちの執念がようやく結実した日でもある。「選挙」というと、現在では満18歳以上の日本人であれば誰でも投票できる権利を持つが、初期のそれはご存知のように、今とは大きく異なるシステムだった。まず有権者は全国で45万365人で、これは全人口の1.13パーセントにすぎない。 有権者になるためには満25歳以上、かつ一定以上の納税をしている必要があり、その額は直接国税(地租と所得税)で年額15円以上。一方の非選挙民つまり立候補者の視覚だが、こちらは満30歳以上かつ直接国税15円以上を選挙区に納税している者。そして、官吏の一部は兼業が許されて一方で、神官や僧侶などの宗教者は立候補できず、現役の軍人は選挙権そのものを認められてはいなかった。 選ぶ側、選ばれる側どちらも似通ったフィルターを通して選別されていたわけで、巨額の所得税を納められるのは有力豪商などごく一部に限られていたから、有権者のほとんどは全国各地の大地主たちで、被選挙民リストもこれとほぼ重なっていた。 当時の地租は地価の2.5パーセントで、これを納税額15円に必要な土地の地価に換算すると600円。面積にすると全国平均で1.86町歩の土地を持つ大地主たちが選挙の主役だった、要するに、大地主たちが自分たちの代表を選んで「衆議院」を作っていたのだ。 衆議院の議員定数は300人。総人口で割ると、およそ12万人にひとりが選出される割合だった。選挙区は小選挙区制で全国257に振り分けられており、東京府は定員12名。ところが有権者は大地主、つまり都市部より農村部に偏っていたから、定員ひとりあたりの有権者数で見ると、東京は5715人なのに対して定数5の滋賀県は1万5456人もいた。 今でも「一票の格差」が選挙のたびに騒がれるが、当時はまるで比べ物にならない。おかげで、京都Ⅰ区の最下位当選者の得票数は27だったのに、滋賀3区では3085票でも落選するという、格差があったのだ。 立候補の制度も現代とは別物である。居住地制限がないので、納税義務さえ果たしていれば、複数選挙区で同時に立候補できたのだ。だから同一人物が別の選挙区で同時当選という珍事も生まれた。■現代ならアウトな選挙運動 選挙運動も今とは勝手が違う。前年に大日本帝国憲法が発布され、国中が中身も分からず熱狂した喧噪そのままに立候補した候補者が多かったから、彼らは自分なりの戦法で選挙を戦うことになった。中でも多かったのが「演説とはなんぞや」というトホホな疑問。 例えば、犬養毅と同じ選挙区に立候補したある候補者は、演説したいが、それが何か分からない。そこで知人に頼み込み、密偵として犬養の演説会場に潜り込んでもらい、結果もたらされた情報で演説の何たるかを知った、という笑い話がある。
2024.06.23
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図書館で『中世的世界とは何だろうか』という本を、手にしたのです。本書は週刊朝日百科『日本の歴史』(全133冊)に掲載された内容の一部とのことで、著名な歴史学者の語り口は如何なるものか?・・・興味深いのである。【中世的世界とは何だろうか】網野善彦著、朝日新聞出版、1996年刊<「MARC」データベース>より「源氏と平氏」から「後醍醐」までを縦軸に、遊女・海民、遍歴する人々、楽市と駆込寺、貨幣と税などの諸テーマを横軸に、広く深く日本の歴史をとらえなおす。<読む前の大使寸評>本書は週刊朝日百科『日本の歴史』(全133冊)に掲載された内容の一部とのことで、著名な歴史学者の語り口は如何なるものか?・・・興味深いのである。amazon中世的世界とは何だろうか冒頭の「海民と遍歴する人々」からさまざまな職能民を、見てみましょう。p5~8<日本史像に海からの視点を>「日本は島国」という見方は、日本人の「常識」として広く通用している。その常識の上に立って、これまで、「近代化」を志向する人々は、国際的視野を欠いた日本人の「島国根性」を批判し、「日本的なるもの」を讃美する人々は、日本文化の個性は「島国」なるが故に育まれたと強調してきた。 しかしこのような見方は、日本を周辺地域から孤立したものと見て、列島をとりまく海を、人と人とを隔てる役割を果すものとしてとらえることによって、はじめて成立しうるといってよい。 しかし、対馬と朝鮮半島の間の狭い海峡が人々の交通を妨げ、九州と対馬の間の波荒い玄界灘がそうではないなどということは不自然である。北海道から沖縄にいたる日本国内の島々の間の海は、人と人とを結びつけ、北海道とサハリン・沿海州、沖縄と台湾の間の海は逆の意味を持つといえないのは、当然すぎるほど当然であろう。「日本は島国」という主張は、あまりにも当たり前の事実を無視し、現在の国境をそのまま過去に投影したところから生まれる虚像・・・学問的な根拠のない偏った「俗説」にすぎない、と私は考える。■海を旅する人々 これまでの日本の歴史・民俗・文化をめぐる議論をふりかえってみると、海の積極的な役割は顧みられることきわめて少なく、その結果、多くの盲点が生まれ、歪んだ歴史像がつくり出されてきたのが現実である。それ故、われわれは、まずそうした偏り、歪みの大前提となってきた「日本は島国」ときめこむ「俗説」を捨て去るところから出発しなくてはならない。 そしてこの立場に立ったときにはじめて、海に生きた人々・・・列島の島々を結び、それを大陸に結びつけた、海を旅する人々の姿が、われわれの視野に入ってくる。この人々の役割に注目し、またその人々自身の目から日本列島における人間の社会と歴史を見直してみたとき、これまでとはかなり異なる日本史像が浮かび上がってくることは間違いない。 さきのような偏りの結果、この分野の研究は著しくおくれており、宮本常一氏が目ざしたような、「海から見た日本文化論」を本当に展開するまでには、まだかなりの距離がある現状といわざるをえないが、ここではできる限り、こうした視覚から問題を提起することにつとめてみたい。 一方、この見方はおのずとわれわれを、列島の内部を旅する人々、商工民、芸能民など、さまざまな遍歴民の役割の追及に導いていく。そしてその道に進んだとき、「日本は島国」という見方と表裏をなす、「瑞穂国日本」を基調とした従来の日本文化論、水田稲作をもっぱら日本社会の基礎と見る「通説」の偏りが、また否応なしにわれわれの前に浮かび上がってくるのである。■地域を結ぶ「道々の輩」 もちろん、縄文時代末期以降、西日本にひろがり、やがて東北にまでおよんだ水田稲作が日本の社会に大きな意味を持ち、とくに支配体制の基礎となってきたことはいうまでもない。しかし、その単色で日本文化を染め上げ、日本人の生活をぬりつぶそうとすることの誤りは、いままで述べてきた海の役割を考えただけでも明らかであろう。 それだけではない。日本の社会には古くから水田稲作以外の農耕・・・焼畑や畠作に依存する人々、狩猟や採集、多様な織物や編物、木材や鉄・銅などの金属の加工といった手工業によって生活を支える集団、さらにさまざまな芸能に携わる人々が少なからず活動していた。11世紀に居ると、これらの人々の間には木工道・漆工道から「博奕の道」にいたる、それぞれの職能に即した「道」が生まれ、こうした職能民を「道々の者」「道々の輩」などと総称するようになってくる。 また同じころから、手工業の技術までふくむ職能そのものを「芸能」と呼び、「所職」「職」というようになる。「職人」という呼称が、こうした職能民をさすようになるのは多少おくれ、14世紀のことであるが、南北朝期以前のこれらの人々は、その範囲は広狭はあっても、自らの「芸能」そのもの、あるいはそれによって生産された製品を持って、遍歴するのをつねとしていた。
2024.06.22
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図書館に予約していた『マルクス解体』という本を、待つこと半年ほどでゲットしたのです。このところメディアで頻出する気鋭の論客がマルクスという古典をどう論じるのか・・・興味深いのである。【マルクス解体】斎藤幸平著、 講談社、2023年刊<「BOOK」データベース>よりいまや多くの問題を引き起こしている資本主義に対する処方箋として、斎藤幸平は、マルクスという古典からこれからの世の中に必要な理論を提示する。本書『マルクス解体』は、マルクスの物質代謝論、エコロジー論、プロメテウス主義の批判から、未来への希望を託す脱成長コミュニズム論までを精緻に語る。これまでの斎藤の活動の集大成であり、同時に「自由」や「豊かさ」をめぐり21世紀の基盤となる新たな議論を提起する書である。<読む前の大使寸評>このところメディアで頻出する気鋭の論客がマルクスという古典をどう論じるのか・・・興味深いのである。<図書館予約:(11/28予約、副本?、予約?)>rakutenマルクス解体まず「はじめに」の冒頭から、見てみましょう。p7~8<はじめに> ギリシャ神話の神プロメテウスは、全知全能の神ゼウスの怒りによって火が奪われ、自然の猛威や寒さに喘ぐ人類に同情し、ゼウスを欺いて火を盗み、人間に与えた。はじめ、火を手に入れた人類は自然の力に打ち克ち、プロメテウスの願い通りに、技術や文明を発展させていく。ところが、豊かになっていく過程で人類は、火を使って兵器を作り、戦争で殺し合いを始めてしまう。さらなるゼウスの怒りを買ったプロメテウスは、罰として、コーカサス山の岩場に釘づけされ、半永久的に鷲に肝臓を啄まれ続けることになる。 兵器だけではない。人類は「プロメテウスの火」の力で、原子力のような自分達では制御できないリスクの大きい科学技術を発展させ、さらには大量の化石燃料を燃やすことで、地球そのものを気候変動の影響で燃やし尽くそうとしている。 人類の擁護者であるプロメテウスの「夢」は、「自然支配」という人類の「夢」に転化した。だがまさにその夢が私たちのクラス文明の危機を引き起こしているのだ。その結果、ソ連崩壊後にフランシス・フクヤマが宣言した「歴史の終わり」は、当時はまったく想定されていなかったような終焉、つまり人類史の終わりを迎えようとしているのである。 実際、新自由主義とグローバリゼーションの席巻は、第二次世界大戦終結以降の人間活動による地球環境に対する負荷の急激な増大を加速させ・・・すべての主要な社会経済および地球システムにおける指標がホッケースティックのような上昇曲線を描く「大加速Great Acceleration」の時代だ・・・、文明の物質的基盤を破壊しようとしている。 現在のパンデミック、戦争、気候崩壊はすべてソ連崩壊後の「歴史の終わり」と資本主義のグローバル化がもたらした事態であり、民主主義、資本主義、生態系を慢性的な複合危機に陥れているのだ。 現在の生活様式が人類の破滅に向かっているという現実はもはや無視できないものになっているが、資本主義は終わりなき過剰生産と過剰消費に対する代替案を提供することはできていない。実際パリ協定が目指す1.5℃目標を達成しようとするなら、社会のほぼすべての領域における徹底的かつ急速なシステムの大転換が必要であるが、そのような動きはどこにも見られない。 さまざまな形での渓谷、批判、反対の声があげられてきたにもかかわらず、化石燃料の消費量が今も増え続け、格差が拡大している現状を見れば、資本主義が現在の姿を大きく変えることができると信じるに足る理由もない。 この調子で「はじめに」は19ページまで続くわけで・・・著者はマルクス主義を虚仮にして解体しようとしているようです。よう知らんけど。
2024.06.21
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今回借りた4冊です。 だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は強いていえば、「日本史」でしょうか♪<市立図書館>・マルクス解体・中世的世界とは何だろうか・女と男の大奥・教科書には載っていない!明治の日本<大学図書館>(ただいま市民への開放サービスを休止中)図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)***********************************************************【マルクス解体】斎藤幸平著、 講談社、2023年刊<「BOOK」データベース>よりいまや多くの問題を引き起こしている資本主義に対する処方箋として、斎藤幸平は、マルクスという古典からこれからの世の中に必要な理論を提示する。本書『マルクス解体』は、マルクスの物質代謝論、エコロジー論、プロメテウス主義の批判から、未来への希望を託す脱成長コミュニズム論までを精緻に語る。これまでの斎藤の活動の集大成であり、同時に「自由」や「豊かさ」をめぐり21世紀の基盤となる新たな議論を提起する書である。<読む前の大使寸評>このところメディアで頻出する気鋭の論客がマルクスという古典をどう論じるのか・・・興味深いのである。<図書館予約:(11/28予約、副本?、予約?)>rakutenマルクス解体【中世的世界とは何だろうか】網野善彦著、朝日新聞出版、1996年刊<「MARC」データベース>より「源氏と平氏」から「後醍醐」までを縦軸に、遊女・海民、遍歴する人々、楽市と駆込寺、貨幣と税などの諸テーマを横軸に、広く深く日本の歴史をとらえなおす。<読む前の大使寸評>本書は週刊朝日百科『日本の歴史』(全133冊)に掲載された内容の一部とのことで、著名な歴史学者の語り口は如何なるものか?・・・興味深いのである。amazon中世的世界とは何だろうか【女と男の大奥】 福田千鶴著、吉川弘文館、2021年刊<「BOOK」データベース>より江戸城本丸奥にあり、将軍の家族が暮らした後宮=大奥。その実態を知る上で不可欠な大奥法度から歴史・職制・機能を分析。多くの男たちが出入りしていた事実を明らかにし、「女たちの大奥」という固定観念を問い直す。<読む前の大使寸評>追って記入rakuten女と男の大奥【教科書には載っていない!明治の日本】熊谷充晃著、彩図社、2014年刊<出版社>より「明治時代」の表から裏まで、余すところなくご覧頂く。過剰なまでのエネルギーを放つ“19世紀の私たち”の奮闘を心ゆくまでお楽しみ頂きたい。(「はじめに」より)<読む前の大使寸評>この本の目次を見れば・・・どの歴史的事例も、そんな取り上げ方もあるのか♪と興味深いのである。rakuten教科書には載っていない!明治の日本
2024.06.20
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『朝日デジタルの書評から』フォームや『読みたい本』フォームを作っているのだが、これを市図書館の予約に利用しようと、思い立ったのです。これまでの予約内容と予約候補は以下のとおりです。<予約中>・川上未映子『黄色い家』(7/24予約、副本?、予約504)現在97位・三浦しおん『墨のゆらめき』(8/9予約、副本12、予約373)現在31位・堤未果のショック・ドクトリン(8/25予約、副本7、予約177)現在16位・『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(9/18予約、副本5、予約126)現在17位・原田ひ香『図書館のお夜食』(10/04予約、副本17、予約402)現在77位・吉岡桂子『鉄道と愛国』(12/04予約、副本?、予約?)現在3位・高野秀行『イラク水滸伝』(1/06予約、副本3、予約86)現在36位・大学教授 こそこそ日記(1/12予約、入荷待ち、予約?)現在5位・絲山秋子『神と黒蟹県』(3/02予約、副本3、予約63)現在45位・三浦しおん『しんがりで寝ています』(4/12予約、副本?、予約106)現在73位・カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」(4/27予約、副本1、予約48)現在41位・前田和男『昭和街場のはやり歌』 (5/10予約、副本?、予約8)現在7位・小倉ヒラク『アジア発酵紀行』 (5/14予約、副本2、予約5)現在18位・米番記者が見た大谷翔平(5/16予約、副本1、予約8)現在1位・椎名誠『続 失踪願望』(5/31予約、副本?、予約8)現在7位・李琴峰『彼岸花が咲く島』(6/19予約、副本?、予約0)<カートで待機中>・N・ネフスキー著『月と不死』・グレタたったひとりのストライキ・カズオ・イシグロ『夜想曲集』・沢木耕太郎『深夜特急』<予約候補>・中野翠『ほいきた、トシヨリ生活』・鴨志田譲×西原理恵子『アジアパー伝』:図書館未収蔵・ジョージ・ミーガン『世界最長の徒歩旅行』:図書館未収蔵・井上ひさし『本の運命』・ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』・ケン・リュウ『草を結びて環を衡えん』:図書館未収蔵・九段理恵『東京都道場塔』:図書館未収蔵・外山滋比古『思考の整理学』・ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』・西東三鬼『神戸・続神戸』・「中国」はいかにして統一されたか・街道をゆく「モンゴル紀行」「南蛮のみち」・地球の歩き方 日本・畑正憲『どんべえ物語』:図書館未収蔵・内田樹『勇気論』:図書館未収蔵・有田芳正『誰も書かなかった統一教会』・池澤夏樹『ノイエ・ハイマート』<予約分受取:2/27以降> ・村上春樹×柴田元幸『翻訳夜話』(2/15予約、2/27受取)・楊双子『台湾漫遊鉄道のふたり』(6/23予約、2/27受取)・川添愛『世にもあいまいなことばの秘密』(1/26予約、2/27受取)・呉叡人『フォルモサ・イデオロギー』(2/03予約、3/11受取) ・森見登美彦『太陽と乙女』(3/23予約、3/31受取)・Wedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機 (4/16予約、4/28受取)・本川達雄『ウマは走るヒトはコケる』(3/31予約、5/10受取)・南海トラフ地震の真実(10/20予約、5/15受取)・斎藤幸平『マルクス解体』(11/28予約、6/05受取)**********************************************************************【黄色い家】川上未映子著、中央公論新社、2023年刊<「BOOK」データベース>より2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。長らく忘却していた20年前の記憶ー黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな“シノギ”に手を出す。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい…。善と悪の境界に肉薄する、今世紀最大の問題作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/24予約、副本?、予約504)>rakuten黄色い家【墨のゆらめき】三浦しおん著、 新潮社、2023年刊<出版社>より実直なホテルマンは奔放な書家と文字に魅せられていく。書下ろし長篇小説! 都内の老舗ホテル勤務の続力は招待状の宛名書きを新たに引き受けた書家の遠田薫を訪ねたところ、副業の手紙の代筆を手伝うはめに。この代筆は依頼者に代わって手紙の文面を考え、依頼者の筆跡を模写するというものだった。AmazonのAudible(朗読)との共同企画、配信開始ですでに大人気の書き下ろし長篇小説。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/9予約、副本12、予約373)>rakuten墨のゆらめき【堤未果のショック・ドクトリン】堤未果著、幻冬舎、2023年刊<「BOOK」データベース>より「ショック・ドクトリン」とはテロや大災害など、恐怖で国民が思考停止している最中に、為政者や巨大資本がどさくさに紛れに過激な政策を推し進める悪魔の手法のことである。日本でも大地震やコロナ禍という惨事の裏で、知らない間に個人情報や資産が奪われようとしている。パンデミックで空前の利益を得る製薬企業の手口、マイナンバーカード普及の先にある政府の思惑など…。強欲資本主義の巧妙な正体を見抜き、私たちの生命・財産を守る方法とは?滅びゆく日本の実態を看破する覚悟の一冊。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/25予約、副本7、予約177)>rakuten堤未果のショック・ドクトリン【ぼくはあと何回、満月を見るだろう】坂本龍一著、新潮社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「何もしなければ余命は半年ですね」ガンの転移が発覚し、医師からそう告げられたのは、2020年12月のこと。だが、その日が来る前に言葉にしておくべきことがある。創作や社会運動を支える哲学、坂本家の歴史と家族に対する想い、そして自分が去ったあとの世界についてー。幼少期から57歳までの人生を振り返った『音楽は自由にする』を継ぎ、最晩年までの足跡を未来に遺す、決定的自伝。著者の最期の日々を綴った、盟友・鈴木正文による書き下ろし原稿を収録。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(9/18予約、副本5、予約126)>rakutenぼくはあと何回、満月を見るだろう【図書館のお夜食】原田ひ香著、ポプラ社、2023年刊<「BOOK」データベース>より東北地方の書店に勤めるものの、うまくいかず、仕事を辞めようかと思っていた樋口乙葉は、SNSで知った、東京の郊外にある「夜の図書館」で働くことになる。そこは普通の図書館と異なり、亡くなった作家の蔵書が集められた、“本の博物館”のような図書館だった。開館時間は夜7時から12時まで、まかないとして“実在の本に登場する料理”が出てくる「夜の図書館」で、本好きの同僚に囲まれながら働き始める乙葉だったがー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/04予約、副本17、予約402)>rakuten図書館のお夜食【鉄道と愛国】吉岡桂子著、岩波書店、2023年刊<「BOOK」データベース>より戦後日本の発展の象徴、新幹線。アジア各地で高速鉄道の新設計画が進み、中国が日本と輸出を巡って競い合う現在、新幹線はどこまで日本の期待を背負って走るのか。一九九〇年代から始まった新幹線商戦の舞台裏を取材し、世界最長の路線網を実現した中国の高速鉄道発展の実像に迫る第一部、中国、香港、韓国、東南アジア、インド、ハンガリーなど世界各地をたずね、鉄道を走らせる各国の思惑と、現地に生きる人々の声を伝える第二部を通じて、時代と共に移りゆく日中関係を描き出し、日本の現在地をあぶりだす。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(12/04予約、副本?、予約?)>rakuten鉄道と愛国【イラク水滸伝】高野秀行著、文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>よりアフワールーそこは馬もラクダも戦車も使えず、巨大な軍勢は入れず、境界線もなく、迷路のように水路が入り組み、方角すらわからない地。権力に抗うアウトローや迫害されたマイノリティが逃げ込む、謎の巨大湿地帯。中東情勢の裏側と第一級の民族誌的記録ー“現代最後のカオス”に挑んだ圧巻のノンフィクション大作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/06予約、副本3、予約86)>rakutenイラク水滸伝【大学教授 こそこそ日記】 多井学著、三五館シンシャ、2023年刊<「BOOK」データベース>より「いくらでも手抜きのできる仕事」。現役教授が打ち明ける、ちっとも優雅じゃない生活。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/12予約、入荷待ち、予約?)>rakuten大学教授 こそこそ日記【神と黒蟹県】絲山秋子著、 文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>より「黒蟹とはまた、微妙ですね」。日本のどこにでもあるような「地味県」の黒蟹県。そこで暮らす、そこを訪れる、名もなき人々や半知半能の神がすれ違いながら織りなす、かけがえなく、いとおしい日々。まだ名付けられていない人間関係を描き続けてきた著者真骨頂の連作小説集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(3/02予約、副本3、予約63)>rakuten神と黒蟹県【しんがりで寝ています】三浦しおん著、 集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より雑誌「BAILA」での連載4年分に、書き下ろしを加えた全55編!三浦しをんの沼にどっぷりハマる、最新&爆笑エッセイ集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/12予約、副本?、予約111)>rakutenしんがりで寝ています【カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」】 室橋 裕和著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりいまや日本のいたるところで見かけるようになった、格安インドカレー店。そのほとんどがネパール人経営なのはなぜか?どの店もバターチキンカレー、ナン、タンドリーチキンといったメニューがコピペのように並ぶのはどうしてか?「インネパ」とも呼ばれるこれらの店は、どんな経緯で日本全国に増殖していったのか…その謎を追ううちに見えてきたのは、日本の外国人行政の盲点を突く移民たちのしたたかさと、海外出稼ぎが主要産業になっている国ならではの悲哀だった。おいしさのなかの真実に迫るノンフィクション。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/27予約、副本1、予約48)>rakutenカレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」【昭和街場のはやり歌】前田和男著、 彩流社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「はやり歌」から、明日の日本の姿が見えてくる…。歌とともに時代を共有した「団塊」といわれるベビーブーマー世代が、エピソードを交え描く歌謡社会文化論!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/01予約、副本?、予約8)>rakuten昭和街場のはやり歌【アジア発酵紀行】小倉ヒラク著、文藝春秋、2023年刊<出版社>よりアジアの巨大な地下水脈をたどる冒険行。「発酵界のインディ・ジョーンズ」を見ているようだ!ーー高野秀行(ノンフィクション作家) 自由になれーー各地の微生物が、奔放な旅を通じて語りかけてくる。ーー平松洋子(作家・エッセイスト)発酵はアナーキーだ! チベット~雲南の「茶馬古道」からインド最果ての内戦地帯へーー前人未到の旅がいま幕をあける! 壮大なスケールでアジアの発酵文化の源流が浮き彫りになる渾身作。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/14予約、副本2、予約21)>rakutenアジア発酵紀行【米番記者が見た大谷翔平】 ディラン・へルナンデス著、朝日新聞出版、2024年刊<出版社>より本塁打王、2度目のMVPを獲得し、プロスポーツ史上最高額でロサンゼルス・ドジャースへの移籍が決まった大谷翔平。渡米以来、その進化の過程を見続けた米国のジャーナリストが語る「二刀流」のすごさとは。データ分析や取材を通して浮かび上がってきた独自の野球哲学、移籍後の展望など徹底解説する。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/16予約、副本1、予約8)>rakuten米番記者が見た大谷翔平【続 失踪願望】椎名誠著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より「おい、シーナ、逃げるなよ」親友からの最期の“檄”その真意とは?書き下ろし「さらば友よ!」収録。老いること、喪失を抱えて生きること、愛するものたちへの思いをまっすぐに。79歳の日録が静かに差し出す新たな人生の世界線…共感必至!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/31予約、副本?、予約8)>rakuten続 失踪願望【彼岸花が咲く島】李琴峰著、文藝春秋、2021年刊<出版社>より【第165回 芥川賞受賞作!】記憶を失くした少女が流れ着いたのは、ノロが統治し、男女が違う言葉を学ぶ島だったーー。不思議な世界、読む愉楽に満ちた中編小説。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(6/19予約、副本?、予約0)>rakuten彼岸花が咲く島【月と不死】N・ネフスキー著、平凡社、1971年刊<出版社>より著者は日本民俗学界の異色の存在として知られるロシア人学者で,柳田国男,折口信夫らと親交を結び,沖縄,東北などの民俗を採録した。本書は日本語で発表された論文・書簡を網羅した唯一の著作集。<読む前の大使寸評>ロシア人にして、日本民俗学界の異色の存在が気になるのです。<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>heibonsha月と不死図書館予約の運用にも慣れて、速攻で入手するコツも何となくつかんだと思うのだ♪・朝日書評欄で探すとしたら、3ヶ月前掲載くらいのモノが狙い目かも。・専門的すぎるほどのモノは、予約0となっていることが多い。・受取館に収蔵しているモノは、移送する手間が省けるので早くなるだろう。・本屋の店頭に出た直後の新刊本・ウィキペディアでめぼしい著作を探す・神戸市図書館の予約順位は毎週火曜日(午前1時~3時) に更新されます。・Kindle版を購入すれば、その本の全て読めるのだが、紙の本から書き写す手間が好きなわけでおます。予約分受取目録R26好書好日トップ図書館情報ネットワーク 蔵書検索
2024.06.19
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図書館で『世界 2024年3月号』という雑誌を、手にしたのです。おお 特集1、2がUp To Dateで面白そうである。・・・ということでチョイスしたのです。【『世界』2024年3月号】雑誌、岩波書店、2024年刊<出版社>より【特集1】さよなら自民党 派閥・世襲・裏金 30年前の1994年1月29日、政治改革関連4法が成立した。改革の矛盾や問題点は様々に指摘されてきたが、今回の裏金事件でついに破断界に達したかに見える。【特集2】働けど、働けど どこの職場でも人員が削減される中で、労働時間やストレスばかりが増えている。物価がどんどん高くなる一方で、賃金は増えそうになく、税金や社会保険料で手取りは目減りする。働きつづけたからといって、「老後の安心」は手に入らない。こんな社会にだれがした?<読む前の大使寸評>おお 特集1、2がUp To Dateで面白そうである。・・・ということでチョイスしたのです。amazon『世界』2024年3月号「日本語のなかの何処かへ」という連載の最終回が面白そうなので、見てみましょう。温又柔さんの日本語体験が語られています。p288~290<私たちが愉快でいられるために:温又柔> あなたが楽しく愉快であるとき、それは、あなたが実際にそうである状態と、あなたが考えているあなたとのあいだにある埋めることのできない溝が何にも邪魔されることなく現れるがままになっていることを意味している。 あなたが首尾よく楽しく愉快になっているとき、それはあなたが自分が実際にそうなっていてこの溝において生きているとみんなが考えてよいと思っていることを意味している。あなたは自分の有限性を徹底的に受け入れている。(ティモシー・モートン) 幼少期に来日し、東京で成長する過程で私は、徐々に気づかされてきた。どうやら自分は「少数者」らしい。理由は明白。私が、日本人ではないから。 言うまでもなく、日本は、日本人だらけの国だ。それも、自分(たち)は「普通」の日本人であると信じ切ったまま、よほどのことがなければ、それをいちいち疑う必要にわざわざ迫られることのない人たちが、圧倒的多数を占めている。そして、かれらの大多数は、日本人の両親の子として生を享け、出生届が出されると同時に、日本国籍を所持する権利を獲得し、その人生のほとんどの時間を、日本列島内で暮らしている・・・こういう人があまりに多くを占めるため、自分自身がそうであるように、日本人といえば、普通は、そういう人であるはずだ、と漠然と感じている日本人は、現在も多い。 かくいう私自身も、ずいぶんと長い間、自分自身のことを、日本人みたいなぞんざいではあっても、日本人である、と思い切るのには、ためらってきた。 私が日本人? まさか、そんな。 私は、せいぜい、限りなく日本人に近い台湾人であるというだけで、日本人そのものでは決してないはずだ。 私は、日本人。 そう名乗るための「条件」を、私は十分に満たしていない。ましてや、私も日本人です、とほかの人(私と違って、自分は、自分は普通の日本人だと堂々と自称できる人たち)にむかって、主張しようだとは思いつきもしなかった。 特定の誰かに、君のような人間は日本人と名乗ってはならない、と禁じられたわけではない。君は日本人と名乗るな、と面と向かって命じられたこともない。 しかしながら私は、成長の過程で、何度も思い知らされた。 自分(たち)は普通の日本人なのだと信じている人たちの多くが、「日本語」と思っていることばの使用者に、私は含まれていない。【例】あなたは、日本語がお上手ですね。 私は、かれらが思うような「日本人」ではない。 【例】あの子って、日本人じゃないんだって。 かれらが「日本」と思っているこの国で、もしもかれらに「日本人」と認められたいなら私は、台湾人の要素を抹消しなければならない。【例】名前さえ言わなければ、君は日本人に見えるから安心しなよ。 だからと言ってかれらは、「日本人」に見える私のことを、自分たちと同じ日本人だとは認めていない。【例】さっさと帰化して、名実ともに日本人になればいいのに。 いつからか私は、たとえ日本国籍を取得したところで、自分のような「日本人」は、こんなふうに言われ続けるだけだと思っていた。(中略) 私は、自分としては、とっくのとうに「日本」や「日本語」のなかにいると感じてはいても、それをいちいち主張しなければならないらしい。そう、日本語を生まれながらの自分のものだと信じきっている人たちとはちがって。 それで私は、自分自身について、まずは書くことにした。・・・私は、この家にいたんです。この国ではなく、この家に。(李良枝「由煕」) 李良枝の、厳密に言えば由煕の、葛藤の果てにたどり着いたその境地が、私の出発点になった。この家、喃語を脱し、ヒトらしいことばを少しずつ口にするようになった私が、プィエ(太っちょの赤ん坊)という愛称からようやく、You rouと呼ばれるようになったばかりの頃の、私の台湾の家。アペエ、ココ、スゥスゥ、アムゥ、アヂン・・・父のきょうだいやその配偶者たちを正確に呼び分けられる幼い私は、日本語をまだ一言も知らなかった。 記憶のなかで氾濫する声に耳を傾けながら私は、日本語以外のことばが飛び交うそのようすを、書いてみたい、と欲望した。幸い、ほかでもない日本語という、漢字と仮名が混淆する文体を駆使すれば、本来ならば、たった一つの「国語」のみでは束ねきれないはずの、複数の言語に取り巻かれていた自分の幼少期を描写するのには、申し分ないように思えた。 今になって思えば私は、私の家があった台湾を書こうとしたことによって、私自身に最も相応しい日本語の姿を模索し、それを実現できる日本語の可能性に救われたのだった。何しろ、書いてみればみるほど、日本語という書きことばが、その実、私が赤ん坊の頃に耳にしていたことば(いわゆる「多数派」の日本人が普段の生活で耳にしたり、口にしたりすることは滅多にないような)を取り込む上で、大変に柔軟性のある、寛大な器だと感じ入ったのだから。日本語のこうした包容力を生かすべく試行錯誤することに、最初の小説を書いていた頃の私はとにかく興奮していた。
2024.06.18
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図書館で『中国共産党支配の原理』という本を、手にしたのです。このところ米中の緊張が高まっているが最悪の場合、習近平氏とトランプ氏が対立するケースがあるわけで・・・習近平氏支配の構造を見ておこうということでチョイスしたのです。【中国共産党支配の原理】 羽田野主著、日経BP日本経済新聞出版、2023年刊<「BOOK」データベース>より謎の巨大組織を縦横無尽に読み解く。「秘密結社」から始まった中国共産党は潜在的に守りの意識や被害者意識が強く、常に内側に不安を抱えている。結党目的の共産主義の実現はすでに失われ、政権党として君臨することが自己目的化している。米国の「圧力」にさらされていると受けとめる共産党は、軍事的統制を強め有事体制に移行しつつある。中国の隅々に張りめぐらされた党組織は硬直化し、自己改革できない「大企業病」に冒されているようだ。膨張の果てに戦前の日本と同じ道を歩むリスクさえ見え隠れするようになった。外部から見た不可解な行動をとる中国共産党の原理とは何か。共産党の憲法といわれる「党規約」の読み解きを交えながら、有益な中国分析を提供する。「党規約」最新版の全訳も掲載。<読む前の大使寸評>このところ米中の緊張が高まっているが最悪の場合、習近平氏とトランプ氏が対立するケースがあるわけで・・・習近平氏支配の構造を見ておこうということでチョイスしたのです。rakuten中国共産党支配の原理第3章で党幹部のビジネス活動が語られているので、見てみましょう。p128~131<最大勢力は「資本家」>(前略) 共産党は労働者階級のための組織である以上、資本家は対立するため「敵」だった。資本家から私有財産を没収してすべての富や資源、サービスを人民が共有する共産主義を目指していた。毛沢東時代は「清貧」が党幹部の美徳とされていた。 ところが江沢民が党規約で共産党が「広範な人民」を代表すると定義し直したため、改革開放以来、中国で増えた経営者や資本家らも含めることができるようになった。 これは、党内で市場経済化の流れに合わせて起業家らを取り込まないと、政権党として基盤を維持できないという危機感があったためだ。中国がちょうど世界貿易機関(WTO)に加盟し、経済のグローバル化に対応していこうとした時期に重なる。「労働者階級を代表する党」と位置づけてきた共産党は、改革を通じて幅広い層を取り込むことができるようになり、党の構成員が大きく変わるきっかけになった。<利権集団への変貌> ここでもう一つ大事なのは、江沢民の「三つの代表」理論は、民間の企業経営者を取り込んだだけではなく、巨大な権限を持つ共産党幹部が経済の市場化を通じて企業経営者や不動産所有者、金融資産保持者といった資本家にに変貌し、中國社会の大半の富を堂々と握ったことにある。 言ってみれば、共産党員がいよいよ共産主義という理想をかなぐり捨てて、大手を振って金もうけに邁進することができるようになった。既得権益層に党が政治的なお墨つきを与えたに等しい。貧富の格差が一気に広がるきっかけをつくった。 そこには労働者のための共産党という視点はほぼない。持てる者ほど共産党による統治の維持を必要とし、持たざる者ほど共産党から遠ざかってしまう矛盾をはらむようになった。 米紙「ニューヨーク・タイムズ」は、温家宝元首相の一族は平安保険公司を利用して27億ドルの不正蓄財をしていたと報道している。程暁農氏ら在米中国人経済学者の『中国・・・とっくにクライシス、なのに崩壊しない“紅い帝国”のカラクリ』によれば、共産党高級幹部の子弟や親族が権力を利用してビジネス活動を本格化したのは、江沢民と胡錦涛の時代だった。 具体的には、国有企業を管理していた共産党高官はその国有企業の純資産額を不当に低く見積もり、銀行融資で自ら購入。民営化プロセスの中で株の一部を高値売却し、巨万の富を得つつ、経営者としても居座るという手法が横行していたという。党高官は濡れ手に粟で、企業経営者にも大規模不動産や高額の金融資産の所有者にもなりうる。こうした勢力は、先ほどの党員区分の「ホワイトカラー層」に分類されている。 同書は「金融やエネルギー業界に進出し、私募ファンドの運営や国有企業の掌握によって、まさしく一族と国家が一体となった利益運搬メカニズムをつくりあげた」「彼らは公然と国有資源と公共財の山分けに走ったが、これは中層・下層の役人による腐敗行為のあしき手本となった」と指摘する。 さらに具体的に党幹部の名前を挙げて業界のつながりを記している。たとえば李鵬元首相の子女は、中国の電力業界を支配している。息子の李小鵬氏は中国華能集団の社長・会長を歴任し、「アジアの電力王」と呼ばれた。江沢民の息子、江綿恒氏が通信業界を牛耳ってきたのは、党関係者の間では有名な話だ。元国家副主席、曽慶紅氏の息子、曽偉しは石油業界に手を出していた。『中国共産党支配の原理』2:ウクライナに残された中国人7000人『中国共産党支配の原理』1:習近平氏の怖さ
2024.06.06
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図書館で『もぎりよ今夜も有難う』という文庫本を、手にしたのです。おお 片桐はいりの「もぎり生活エッセイ集」ではないか。・・・面白そうである。【もぎりよ今夜も有難う】片桐はいり著、幻冬舎、2014年刊<「BOOK」データベース>より映画「かもめ食堂」の初日挨拶で、シネスイッチ銀座の舞台に立ったとき、かつて銀座文化でもぎりのアルバイトをした7年間がキラキラした宝物のように思い出されー。「映画館の出身です!」と自らの出自を述べる俳優が、映画が活況だった頃の懐かしい思い出や、旅先の映画館での温かいエピソードをユーモアとペーソスを交えて綴る名エッセイ。<読む前の大使寸評>おお 片桐はいりの「もぎり生活エッセイ集」ではないか。・・・面白そうである。rakutenもぎりよ今夜も有難う「巴里の空の下ケムリは流れる」で石炭暖房の故障騒ぎを、見てみましょう。p29~32<巴里の空の下ケムリは流れる> 学生時代ストーブにコークスをくべた記憶があるのは、何歳から何歳くらいまでの世代だろうか。同い歳の東京生まれに聞いても、いったいそれ、何時代のどこ地方の話? と、まるで昔話を聞くように煙たい目をする人もいる。 東京の南のはずれの下町だけど、我が小学校時代、暖房はいわゆるだるまストーブだった。日直がバケツでコークスを取りに行き、休み時間に少しずつくべてゆく。人並みはずれた暑がりのわたしは、頼まれもせぬのにストーブ番を買って出て、炭の量を最小限にごまかしていた。 中学に入ると、校舎こそおんぼろの木造だったけど、暖房はすっかり全校温度調整されたヒーターが設置されていた。わたしは特別に許しを得て夏用の制服を着、窓際の席を与えられて、すきま風を入れてしのいでいた。 二十代になって、もう一度コークスの暖房に巡り合うことになるとは思いもよらなかった。時は昭和、でも最期の数年である。石炭やコークスの思い出なんて、終戦後に給食で脱脂粉乳を飲んだとか飲まないという話と同じくらい遠い過去になっていた、はずだった。 私が働いていた銀座文化では、入れ替え時間が忙しくないプログラムの時はたっぷりとお昼休みがもらえた。時間はあってもお金がないもぎりたちは、お弁当を持ち寄っては眺めの良い場所にくりだして、のんびりとランチタイムを楽しんだ。日比谷公園、晴海の埠頭、銀座通りに並んだデパートの屋上。なかでもわたしがお気に入りだったのは、銀座文化の屋上である。 裏通りのビルの上から眺めるこの街は、地上とはまるで別人の顔をしていた。銀座のどまん中とは言え、それぞれのビルの上には洗濯物がつるされた屋根部屋があったり、さびたデッキチェアやビーチパラソルが放られていたり、ひそかに育てられた植木が花を咲かせていたりする。日本一の高級商店街の上空にも、少しだけ暮らしの匂いが漂っていたのだ。 もぎりたちはスクリーンの向こうに広がる異国の街に憧れて、よく銀座通りをニューヨークの五番街に見立てたりしていたけれど、銀座文化の屋上はさながら、巴里の屋根の上だった。わたしたちは、「彼の地のアパルトマン暮してのはもしかしたらこんなふう?」と思いをはせながら、フランスパンならぬ、木村屋のあんぱんなどをかじったものだ。 ある冬の一日、そのアパルトマンからの眺めに異変が起こった。いつものように屋上の扉を開けると、夏場にはその存在に気づきもしなかった煙突から、もやもやと黒い煙がたなびいていたのだ。せっかく広げた白いごはんにススがふりかかり、風に合わせて右に左に向きを変える煙に追われて、わたしたちは大あわてで屋上から退散した。 その時はじめて、わたしはこの建物の秘密を知ったのである。「ボイラーの調子が変です!」と報告に行ったわたしたちに「石炭炊いてるからね」と語った社員の北村さんの口調には、ほんの少し内緒の響きがあった。世の中はバブル直前。すでに1980年代である。 そんな時代に映画館が二館と、東宝東和の試写室に川喜多記念映画文化財団なども入っていた銀座のどまん中のビルディングが、石炭の暖房であたためられていたことに、わたしはえらく衝撃を受けた。 ということは、わたしは最も多くの映画を石炭の暖房で観たことになる。銀座文化2で何度もかかった「ブレードランナー」の再映も、わたしたちは石炭のぬくもりの中で観たわけだ。ビルの谷間を車が飛びまわり、レプリカントが暗躍するサイバーパンクな近未来を、すでに手に届くところに感じていたはずなのに。 しかし不思議なことに、わたしはあのビル全体を暖めるだけの大量の石炭が搬入される様子を見た覚えがない。同期のもぎりたちにたずねても、その構造を確かめた者は誰もいないのだ。『もぎりよ今夜も有難う』1:渡り鳥映画館へ帰る
2024.06.05
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図書館で『もぎりよ今夜も有難う』という文庫本を、手にしたのです。おお 片桐はいりの「もぎり生活エッセイ集」ではないか。・・・面白そうである。【もぎりよ今夜も有難う】片桐はいり著、幻冬舎、2014年刊<「BOOK」データベース>より映画「かもめ食堂」の初日挨拶で、シネスイッチ銀座の舞台に立ったとき、かつて銀座文化でもぎりのアルバイトをした7年間がキラキラした宝物のように思い出されー。「映画館の出身です!」と自らの出自を述べる俳優が、映画が活況だった頃の懐かしい思い出や、旅先の映画館での温かいエピソードをユーモアとペーソスを交えて綴る名エッセイ。<読む前の大使寸評>おお 片桐はいりの「もぎり生活エッセイ集」ではないか。・・・面白そうである。rakutenもぎりよ今夜も有難うまず冒頭の「渡り鳥映画館へ帰る」を、見てみましょう。p9~12<渡り鳥映画館へ帰る> みずからの出自を問われたら、「映画館の出身です!」と胸張ってこたえたい。 俳優としての経歴ならば、「大学時代から小劇場の舞台に立ちまして、その後Cmに誘われて、ほどなく映画にも顔を出し・・・」などと言うのが筋かもしれない。でも心の底では、わたしは演劇でも映画でもなく、映画館の出身なのだ、とかたくなに思っている。 十八の頃から約7年間、銀座の映画館で働いた。いわゆるアルバイトの“もぎり嬢”として。大学があった吉祥寺より、劇団の稽古場があった池袋より、はるかに多くの濃いい時間を銀座で過ごした。四丁目の交差点、和光の裏にある銀座文化劇場、現在のシネスイッチ銀座が、もぎりのわたしの生まれ故郷である。 父親が死ぬまでJRのことを「国鉄」、映画のことを「活動」、と呼んではばからなかったように、わたしも新しいしゃれた名前を呼びなれず、二十数年経た今もなお、銀座文化、と呼んでいる。『キネマ旬報』という老舗の映画専門誌の上で、映画好き、を名のれるほど立派な鑑賞歴ではないけれど、とにかく中学に上がった頃から、少ないおこずかいをやりくりして映画にはまめに出かけた。勉強とか学生生活、というものに上手になじめなかったわたしには、放課後や週末ごとの映画通いは、日曜の礼拝に通うような、それは神聖な行事だった。映画を観ている間だけ、なにかから救われる。 学校の帰りが遅くなるたび父親に、「またカツドウか!」と怒鳴られたものだけど、でも、この特別な課外活動のおかげで、ぐれもせず大したまちがいも犯さず、とりあえずまっとうな大人になれたのだ、と今もわたしは信じている。 幼い頃から、どんな映画を観てもたいてい口もきけないくらい感動してしまう。見終わるとひと言もしゃべれなくなってしまうので、歳とともに、誰かと連れ立って行くことが少なくなっていった。 だいたい、せっかくロバート・レッドフォードやポール・ニューマンと同じ世界にいる時に、なぜ同行の友だちのひそひそ声に呼び戻さなければならないのか。それがわからなかった。わたし自身はよく覚えていないけど、わざわざクラスメイトと一緒に出かけたのに、「離れた席で観させてほしい」と主張して、ひとり、かぶりつきの席で背筋を伸ばし、身じろぎモセズスクリーンに観入っていたらしい。 あまりに映画の世界に入りこみすぎるので、明るくなっても夢からさめずに困った。「ジョーズ」を観て、湯船につかれなくなったのもこの頃だ。お風呂はじきに克服したが、海で泳げるようになるのには、それから数年がかかった。 あの頃は、映画を映画と思っていなかった。目の前の光景がつくりものだなんて、考えたくもなかったのだ。うっとりするようなラブシーンの後ろで、何十人のスタッフがカメラやマイクを構えているなんて想像すらしたくない。だからいくら好きでも、映画の中で働きたいとは思わなかったのである。 とにかく、ただスクリーンのそばにいたい。映画のそばで働ける仕事がしたい。受験勉強にいそしんでいた時分から、大学に入ったら映画館で働こうと決めていた。そしてできればそれは、幼い頃から通いなれた日比谷や有楽町、銀座界隈の劇場であってほしかった。 学生がアルバイト先を決めるのに、これほどピンポイントのこころざしを持っていることもそうないだろう。わたしは大学に入るなり、この地区の映画館に片っぱしから電話をかけた。 かつての日比谷スカラ座や日劇や有楽座、丸の内ピカデリーに松竹セントラル。しかしこれらの映画館は皆東宝や松竹の直営で、もぎり嬢もチケット売り場も売店も、正式の社員が雇われていたのだ。そして、この地域で唯一学生アルバイトが入りこむ余地があったのが、この銀座文化だったというわけだ。銀座文化は中高生の頃、名画座なのに一本立てでしかも250円というお手軽さが気に入って通っていた、なじみの映画館だった。 宝物のような7年間だった。毎日のように映画館に通い、好きな時に劇場に入り、好きな映画を何回も観た。そしてなにより、一緒に働く仲間たちはそろいもそろって大の映画好きで、仕事中も仕事後ものどが痛くなるまで映画の話に明け暮れた。時給が安いことなんて、ほとんど苦にならなかった。
2024.06.05
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図書館で『中国共産党支配の原理』という本を、手にしたのです。このところ米中の緊張が高まっているが最悪の場合、習近平氏とトランプ氏が対立するケースがあるわけで・・・習近平氏支配の構造を見ておこうということでチョイスしたのです。【中国共産党支配の原理】 羽田野主著、日経BP日本経済新聞出版、2023年刊<「BOOK」データベース>より謎の巨大組織を縦横無尽に読み解く。「秘密結社」から始まった中国共産党は潜在的に守りの意識や被害者意識が強く、常に内側に不安を抱えている。結党目的の共産主義の実現はすでに失われ、政権党として君臨することが自己目的化している。米国の「圧力」にさらされていると受けとめる共産党は、軍事的統制を強め有事体制に移行しつつある。中国の隅々に張りめぐらされた党組織は硬直化し、自己改革できない「大企業病」に冒されているようだ。膨張の果てに戦前の日本と同じ道を歩むリスクさえ見え隠れするようになった。外部から見た不可解な行動をとる中国共産党の原理とは何か。共産党の憲法といわれる「党規約」の読み解きを交えながら、有益な中国分析を提供する。「党規約」最新版の全訳も掲載。<読む前の大使寸評>このところ米中の緊張が高まっているが最悪の場合、習近平氏とトランプ氏が対立するケースがあるわけで・・・習近平氏支配の構造を見ておこうということでチョイスしたのです。rakuten中国共産党支配の原理第6章で共産党の死角が語られているので、見てみましょう。p242~246<ウクライナに残された中国人7000人> 中国外交を見てきて最もあぜんとさせられたのが、2022年2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻をめぐる対応だ。米国は1年以上前からロシア侵攻のリスクを把握し、日本や欧州だけでなく、中国にもくり返し伝えてきた。 2022年2月の侵攻前には、米国のインテリジェンスを信じて日本や欧州の主要国はウクライナにいる自国民に退避勧告を出した。2月中旬には退避を事実上終えていた。 対照的な対応を取ったのが中国だった。たとえば侵攻2日前の中国外交部の記者会見で、「ウクライナに駐在する中国大使館のスタッフは全員大使館にいるのか。ほかの公的機関はどうか」との記者の質問に、汪文斌副報道局長はこう答えている。「ウクライナ東部情勢に重大な変化が起きた。中国大使館はすでに在留中国公民と企業に対し安全を守るよう注意喚起した。中国外務省と大使館は引き続き在留中国公民、企業と緊密に連絡を取り、領事保護・支援を迅速に行い、その安全と正当な権益を確実に守る」。あとでわかることだが、事実何もしていなかった。 恥を忍んで白状するが、じつはこのときまで筆者も中国の判断が正しいのではないかと考えていた。ロシアの侵攻はないのではないか。なぜならウクライナ侵攻の直前に習近平氏がプーチン氏と会談していたためだ。2022年2月24日の北京冬季五輪の開幕式に合わせてプーチン氏を主賓として招待し、食事会まで開いている。共同声明では「上限のない協力」を謳ったばかりだった。 その中国が2月下旬になっても自国民をウクライナから退避させていないということは、ロシアの侵攻は「脅し」ではないかと推理した。だがものの見事に外れた。 侵攻した当日の中国外務省の記者会見はやはり歴史に残る内容となった。「現在、どれだけの中国公民がウクライナにいるのか。彼らに何か最新の指示を出したか」との記者の問いかけに華春瑩報道局長はこう答えた。「具体的人数については現在まだ把握していない。中国大使館は安全注意情報を出した。中国人民には団結奮闘し、互いに助け合うよい伝統がある。困難に遭遇したら、助け合うことを希望する。大使館は全力で支援する」 侵攻が始まっても中国が何の手も打っていなかったことがわかる。現地で団結して助け合えとはあまりに無責任な言い方だ。のちにウクライナに7000人以上の中国人が取り残されていたことが判明する。ロシアと蜜月を謳う中国はウクライナ侵攻をめぐる情報を何もとれていなかったことが、白日のもとにさらされてしまった。<ダイナミズムを欠く組織体質> 再び『失敗の本質』に戻る。同書は3つ目の失敗パターンとして「自己改革が起こらないダイナミズムを欠く組織体質」を挙げる。日本軍の最大の過ちは「言葉を奪ったこと」だと言う。戦争のやり方が歩兵と艦隊から空母機動部隊や航空機、重火器に移っても内部で声が上がらず、イノベーションが起きなかった。組織の末端や情報やアイデア、問題提起が中枢につながることを促進する若くて柔軟な「青年の議論」が許されていなかったと指摘する。 海外メディアの報道によれば、米国はウクライナ侵攻のリスクをくり返し中国に伝えたが、「西側のバイアスがかかった情報」と顧みることはなかった。だが7000人以上もの自国民がウクライナに残されている以上、退避の方法は最低限検討しておくべきだった。『失敗の本質』が指摘するいわゆる「青年の議論」がまるきり欠けていた。それが中ロ首脳会談で侵攻の情報をとれず→ゆえに侵攻はない、あってはならない→侵攻リスクにかかわる情報はすべて遮断・・・との判断に傾いていたとしたら、組織の病巣は深いと言わざるをえない。 「失敗の本質」から抜け出せなかった日本軍は、米国や中国との無謀な戦争に突入し、最後は無条件降伏まで追い込まれた。共産党が同じ病にかかっているとしたら、事態は深刻だ。東シナ海や南シナ海、台湾海峡で米国や日本、台湾と双方が予知せぬ衝突が待ち受けているかもしれない。<公務員試験に殺到する若者> ここから先は、いまの若者の視点から共産党が中国をどのような方向に導いているのかを見ていきたい。若者や女性ほど社会情勢の変化に敏感で、この国の未来を映し出す鏡となるためだ。 習近平氏を頂点とした共産党・国務院(政府)への権力が集中する状況を目の当たりにした若者は、民間企業への就職から公務員試験に殺到するように変わった。若者は自分の未来に真剣だ。リスクを恐れ、無難にやることが生き残る最善の道という風潮が、蔓延し始めている。 2023年1月7,8日に実施された国家公務員試験は、一部の職種の倍率は6000倍に達した。習近平指導部がIT(情報技術)企業などへの締めつけを強化し、民間企業離れが広がっていることが影響している。『中国共産党支配の原理』1:習近平氏の怖さ
2024.06.02
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図書館で『中国共産党支配の原理』という本を、手にしたのです。このところ米中の緊張が高まっているが最悪の場合、習近平氏とトランプ氏が対立するケースがあるわけで・・・習近平氏支配の構造を見ておこうということでチョイスしたのです。【中国共産党支配の原理】 羽田野主著、日経BP日本経済新聞出版、2023年刊<「BOOK」データベース>より謎の巨大組織を縦横無尽に読み解く。「秘密結社」から始まった中国共産党は潜在的に守りの意識や被害者意識が強く、常に内側に不安を抱えている。結党目的の共産主義の実現はすでに失われ、政権党として君臨することが自己目的化している。米国の「圧力」にさらされていると受けとめる共産党は、軍事的統制を強め有事体制に移行しつつある。中国の隅々に張りめぐらされた党組織は硬直化し、自己改革できない「大企業病」に冒されているようだ。膨張の果てに戦前の日本と同じ道を歩むリスクさえ見え隠れするようになった。外部から見た不可解な行動をとる中国共産党の原理とは何か。共産党の憲法といわれる「党規約」の読み解きを交えながら、有益な中国分析を提供する。「党規約」最新版の全訳も掲載。<読む前の大使寸評>このところ米中の緊張が高まっているが最悪の場合、習近平氏とトランプ氏が対立するケースがあるわけで・・・習近平氏支配の構造を見ておこうということでチョイスしたのです。rakuten中国共産党支配の原理習近平氏の怖さが語られているので、見てみましょう。p96~99<最大の危機、香港デモ> 習近平氏は軍改革を機に、一気に党・軍の権力を手中に収めることに成功する。2016年には毛沢東、鄧小平、江沢民に続いて4代目の党の「核心」に位置づけられた。2017年には国策映画「すごいぜ、中國」を制作し、まさに絶頂の時期だった。 強権を手にした習近平氏が最大の正念場を迎えたのが、2019年3月から2021年夏まで香港に広がった民主化を求めるデモだった。 このデモは、香港政府が捕まえた刑事事件容疑者を中国大陸に引きわたすことを可能にする逃亡犯条約改正案への反対運動で始まった。参加者は香港政府に①条例改正案の全面撤回、②これまでの衝突を「暴動」と認定したことの撤回、③デモ参加者への刑事責任追及の撤回、④警察による暴力行為を独立調査委員会を立ち上げて調べる、⑤香港の行政長官の辞任と直接選挙の実現・・・を突きつけた。これらは「五大要求」と呼ばれデモは大きなうねりをみせた。 2019年6月16日のデモでは、主催者発表で最大約200万が参加し、1997年の香港返還以降で最大のデモとなった。これは香港市民の4人に1人以上が参加した計算だ。デモ鎮圧までに8000人以上が逮捕される大混乱となった。 当時、習近平指導部が最も恐れていたのは、民主化デモの中国大陸への伝播だった。とくに香港と広東省は隣接しており、人々の往来も多く影響を受けやすい。広東省は中国国内で最大の国内総生産(GDP)を誇っており、経済発展が著しい。自由を求める空気はもともと強い。 広東省が香港のデモに「感化」されれば共産党の統治が足元から揺らぐリスクさえあった。ちまたでは習近平指導部が人民解放軍を投入してデモ隊を鎮圧するのではないか、天安門事件の再来かとささやかれていた。<軍投入も検討していた習近平氏> デモが勢いを増していた2019年8月29日、不気味なできごとがあった。人民解放軍の兵士を乗せた装甲車の車列が広東省深圳市から続々と香港に入ってきたのだ。香港市民がざわつくなかで中国国営の新華社は「22回目の香港駐留部隊の交代作戦が無事に終了した」と配信。「今回の交代は香港駐留部隊法の交代規定によって施行するもので、党中央軍事委員会の承認を受けた正常な定例作戦だ」と説明した。 だが奇妙な点がいくつもあった。まず中国のこれまでの公式資料に交代は11月下旬に行うと書いてある。なぜ8月下旬に前倒ししたのか説明がない。また兵士の入れ替えだというのに香港から出ていく兵士の姿が確認できなかった。香港市民は軍の動向を注視しており、出ていけばSNS(交流サイト)などに写真や動画が上がるはずだった。「以前の交代式で兵士はバスに乗ってきていた」との指摘もあった。なぜ今回は装甲車でやってくるのか。 9月を迎え中秋節が近づく頃、当時北京にいた台湾人の知り合いが突然連絡してきた。「大変だ。習近平は軍を投入してデモ隊を弾圧するつもりだ」という。彼は香港に行き、香港駐留部隊に月餅を差し入れている業者の話を聞いたという。月餅は中国のお菓子の一種で、月のように丸く、平べったい形をしていることからこう呼ばれる。9月の中秋節前に贈り物として用いられる。 この月餅業者は、毎年中秋節の前に5000個の月餅を香港駐留部隊に届けていた。部隊内で兵士一人につき一つの月餅を配る習慣があるという。とすれば約5000人の駐留軍がいる計算になる。公式資料で確認してみると、1997年の香港返還を受けて約6000人の解放軍が駐留するようになったとの記事があり、数字はおおむね一致している。 これが今年は1万個に増えたという。駐留兵士は5000人から1万人に倍増したことになる。これが何を意味するか。香港駐留部隊の指揮権は北京の中央軍事委員会にある。つまり今回の増員劇は習近平氏が指示していたことになる。 中国側は増員を徹底して秘匿していたことから、軍の投入を本気で検討していた可能性がある。ちょうどこの時期、北京にある米国の大使館と日本の大使館の駐在武官は、解放軍の投入の可能性をめぐって頻繁に情報交換をしていた。 米国側から武力鎮圧の可能性をどう分析しているか連日のように意見を求められたという。担当者は町中に張りめぐらされた監視カメラから逃れるため、変装して散歩をするふりをしながら情報を交換したとふり返る。 越えてはいけない一線、レッドラインはどこにあったのか。いざとなれば軍によるデモ弾圧もいとわない習近平氏の意思が伝わってきた事件だった。香港のデモはその後、2019年12月頃から広がり始めた新型コロナウイルスの流行で下火になり、2020年6月に香港国家安全維持法が施行され、完全に封じ込められた。
2024.06.02
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