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2024.07.22
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『室町は今日もハードボイルド』という本を、手にしたのです。
室町時代といえば、荒ぶる中世の戦国時代であり、徳目とは無縁のアナーキーな時代であり、興味深いのです。





清水克行著、新潮社、2021年刊

<「BOOK」データベース>より
僧侶は武士を呪い殺し、農民は合戦を繰り広げ、浮気された妻は相手の女を襲撃するー。あなたたち、本当にご先祖様ですか?数々の仰天エピソードから浮かび上がる中世の日本人像は実は凶暴でアナーキーだった!想像の斜め上を行く驚愕の日本史エッセイ。

<読む前の大使寸評>
室町時代といえば、荒ぶる中世の戦国時代であり、徳目とは無縁のアナーキーな時代であり、興味深いのです。

rakuten 室町は今日もハードボイルド



第一部「僧侶も農民も!荒ぶる中世人」の冒頭あたりを、見てみましょう。
p13~16
<第一話 悪口のはなし:おまえのカアちゃん、でべそ>
■戦国なぞなぞ
 のっけから、楽しい「なぞなぞ」を一つ。
 母とは二度会うけど、父とは一度も会わないもの、な~んだ?
 これは戦国時代に書かれた『後奈良院御撰何曾』という、なぞなぞ本に書かれている問題である。原文は「母には二たびあひたれども、父には一度もあはず」である。わかるかな?

 正解は、「くちびる」。なぜなら、「母」と発声するときは唇は二度触れ合うけど、「父」と発声するときは唇は一度も触れ合わせることがないから。どうです?

 ・・・え? 腑に落ちない? そう。自分で発声してみるとわかるが、残念ながら「ハハ」も「チチ」も、どちらも発生する際に唇は一度も触れ合わないのである。これでは、まったく「なぞなぞ」にならない。いったいどういうことなのだろうか。

 では、本当の答え合わせをしよう。じつは、戦国時代以前と以後では、「はは」という言葉の発声の仕方は異なっていたのである。現代では「はひふへほ」は、そのまま「ハ(ha)・ヒ(hi)・フ(hu)・ヘ(he)・ホ(ho)」と読むが、戦国時代以前の日本語では「ファ(fa)・フィ(fi)・フ(fu)・フェ(fe)・フォ(fo)」と読んでいたらしいのである。だから、「母」は「ハハ」ではなく、当時は「ファファ」。そう読めば、「母」と発声しようとすれば、いやでも唇が二回触れ合うことになる。信じられない人は、あたりに他人がいないこと確認したうえで、自分で声に出してみてください。ね? ちゃんと口が閉じるでしょ?

 ちなみに、江戸後期の国学者、本居内遠(本居宣長家の三代目)も、このなぞなぞの意味がわからなかった。苦心して、母は「歯々」、父は「乳」の意で、「くちびるで自分の歯に上唇・下唇で合計二回触れることはできるけど、自分で自分の乳首を一回も吸うことはできないから」という、トンチンカンな解答を書き残している(『本居内遠全集』所収)。残念! 本居先生、ちょっと考えすぎ!

 ここからもわかるように、江戸後期になると、「はひふへほ」は現代と同じ「ハヒフヘホ」と発音するようになってしまっていたため、かの本居家の家督を継ぐ大国学者でも、このなぞなぞの意味が理解できなくなってしまっていたのである(それにしても、江戸時代の大学者が必至で自分の乳首を吸おうとしているさまを想像すると、ちょっと笑える)。

 以前、轢死ドラマの時代考証の仕事をやったとき、徹底的に史実に忠実なドラマを、という制作側の要望に応えて、この「ファ・フィ・フ・フェ・フォ」の発音の完全再現を真面目に提案したことがあるが、さすがにイヤな顔をされた。「本能寺(ふぉんのうじ)に火(ふぃ)の手が!」「なに、謀(ふぁか)られたか!」では、やはり緊迫感がなさ過ぎるか・・・。





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Last updated  2024.07.22 00:54:02
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