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2024.06.02
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『中国共産党支配の原理』という本を、手にしたのです。
このところ米中の緊張が高まっているが最悪の場合、習近平氏とトランプ氏が対立するケースがあるわけで・・・習近平氏支配の構造を見ておこうということでチョイスしたのです。






羽田野主著、日経BP日本経済新聞出版、2023年刊

<「BOOK」データベース>より
謎の巨大組織を縦横無尽に読み解く。「秘密結社」から始まった中国共産党は潜在的に守りの意識や被害者意識が強く、常に内側に不安を抱えている。結党目的の共産主義の実現はすでに失われ、政権党として君臨することが自己目的化している。米国の「圧力」にさらされていると受けとめる共産党は、軍事的統制を強め有事体制に移行しつつある。中国の隅々に張りめぐらされた党組織は硬直化し、自己改革できない「大企業病」に冒されているようだ。膨張の果てに戦前の日本と同じ道を歩むリスクさえ見え隠れするようになった。外部から見た不可解な行動をとる中国共産党の原理とは何か。共産党の憲法といわれる「党規約」の読み解きを交えながら、有益な中国分析を提供する。「党規約」最新版の全訳も掲載。

<読む前の大使寸評>
このところ米中の緊張が高まっているが最悪の場合、習近平氏とトランプ氏が対立するケースがあるわけで・・・習近平氏支配の構造を見ておこうということでチョイスしたのです。


rakuten 中国共産党支配の原理


習近平氏の怖さが語られているので、見てみましょう。
p96~99
<最大の危機、香港デモ>
 習近平氏は軍改革を機に、一気に党・軍の権力を手中に収めることに成功する。2016年には毛沢東、鄧小平、江沢民に続いて4代目の党の「核心」に位置づけられた。2017年には国策映画「すごいぜ、中國」を制作し、まさに絶頂の時期だった。
 強権を手にした習近平氏が最大の正念場を迎えたのが、2019年3月から2021年夏まで香港に広がった民主化を求めるデモだった。

 このデモは、香港政府が捕まえた刑事事件容疑者を中国大陸に引きわたすことを可能にする逃亡犯条約改正案への反対運動で始まった。参加者は香港政府に①条例改正案の全面撤回、②これまでの衝突を「暴動」と認定したことの撤回、③デモ参加者への刑事責任追及の撤回、④警察による暴力行為を独立調査委員会を立ち上げて調べる、⑤香港の行政長官の辞任と直接選挙の実現・・・を突きつけた。これらは「五大要求」と呼ばれデモは大きなうねりをみせた。

 2019年6月16日のデモでは、主催者発表で最大約200万が参加し、1997年の香港返還以降で最大のデモとなった。これは香港市民の4人に1人以上が参加した計算だ。デモ鎮圧までに8000人以上が逮捕される大混乱となった。

 当時、習近平指導部が最も恐れていたのは、民主化デモの中国大陸への伝播だった。とくに香港と広東省は隣接しており、人々の往来も多く影響を受けやすい。広東省は中国国内で最大の国内総生産(GDP)を誇っており、経済発展が著しい。自由を求める空気はもともと強い。

 広東省が香港のデモに「感化」されれば共産党の統治が足元から揺らぐリスクさえあった。ちまたでは習近平指導部が人民解放軍を投入してデモ隊を鎮圧するのではないか、天安門事件の再来かとささやかれていた。

<軍投入も検討していた習近平氏>
 デモが勢いを増していた2019年8月29日、不気味なできごとがあった。人民解放軍の兵士を乗せた装甲車の車列が広東省深圳市から続々と香港に入ってきたのだ。香港市民がざわつくなかで中国国営の新華社は「22回目の香港駐留部隊の交代作戦が無事に終了した」と配信。「今回の交代は香港駐留部隊法の交代規定によって施行するもので、党中央軍事委員会の承認を受けた正常な定例作戦だ」と説明した。

 だが奇妙な点がいくつもあった。まず中国のこれまでの公式資料に交代は11月下旬に行うと書いてある。なぜ8月下旬に前倒ししたのか説明がない。また兵士の入れ替えだというのに香港から出ていく兵士の姿が確認できなかった。香港市民は軍の動向を注視しており、出ていけばSNS(交流サイト)などに写真や動画が上がるはずだった。「以前の交代式で兵士はバスに乗ってきていた」との指摘もあった。なぜ今回は装甲車でやってくるのか。

 9月を迎え中秋節が近づく頃、当時北京にいた台湾人の知り合いが突然連絡してきた。
「大変だ。習近平は軍を投入してデモ隊を弾圧するつもりだ」という。彼は香港に行き、香港駐留部隊に月餅を差し入れている業者の話を聞いたという。月餅は中国のお菓子の一種で、月のように丸く、平べったい形をしていることからこう呼ばれる。9月の中秋節前に贈り物として用いられる。

 この月餅業者は、毎年中秋節の前に5000個の月餅を香港駐留部隊に届けていた。部隊内で兵士一人につき一つの月餅を配る習慣があるという。とすれば約5000人の駐留軍がいる計算になる。公式資料で確認してみると、1997年の香港返還を受けて約6000人の解放軍が駐留するようになったとの記事があり、数字はおおむね一致している。
 これが今年は1万個に増えたという。駐留兵士は5000人から1万人に倍増したことになる。これが何を意味するか。香港駐留部隊の指揮権は北京の中央軍事委員会にある。つまり今回の増員劇は習近平氏が指示していたことになる。

 中国側は増員を徹底して秘匿していたことから、軍の投入を本気で検討していた可能性がある。ちょうどこの時期、北京にある米国の大使館と日本の大使館の駐在武官は、解放軍の投入の可能性をめぐって頻繁に情報交換をしていた。
 米国側から武力鎮圧の可能性をどう分析しているか連日のように意見を求められたという。担当者は町中に張りめぐらされた監視カメラから逃れるため、変装して散歩をするふりをしながら情報を交換したとふり返る。

 越えてはいけない一線、レッドラインはどこにあったのか。いざとなれば軍によるデモ弾圧もいとわない習近平氏の意思が伝わってきた事件だった。香港のデモはその後、2019年12月頃から広がり始めた新型コロナウイルスの流行で下火になり、2020年6月に香港国家安全維持法が施行され、完全に封じ込められた。





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Last updated  2024.06.02 00:28:16
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