F&B 腐向け転生パラレル二次創作小説:Rewrite The Stars 6
薄桜鬼 昼ドラオメガバースパラレル二次創作小説:羅刹の檻 10
黒執事 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:碧の騎士 2
天上の愛 地上の恋 転生現代パラレル二次創作小説:祝福の華 10
黒執事 転生パラレル二次創作小説:あなたに出会わなければ 5
YOI火宵の月パロ二次創作小説:蒼き月は真紅の太陽の愛を乞う 2
薄桜鬼 現代ハーレクインパラレル二次創作小説:甘い恋の魔法 7
火宵の月 転生オメガバースパラレル 二次創作小説:その花の名は 10
薄桜鬼異民族ファンタジー風パラレル二次創作小説:贄の花嫁 12
薄桜鬼ハリポタパラレル二次創作小説:その愛は、魔法にも似て 5
天上の愛地上の恋 大河転生パラレル二次創作小説:愛別離苦 0
火宵の月 BLOOD+パラレル二次創作小説:炎の月の子守唄 1
PEACEMAKER鐵 韓流時代劇風パラレル二次創作小説:蒼い華 14
黒執事 異民族ファンタジーパラレル二次創作小説:海の花嫁 1
火宵の月 韓流時代劇ファンタジーパラレル 二次創作小説:華夜 18
火宵の月×呪術廻戦 クロスオーバーパラレル二次創作小説:踊 1
薔薇王韓流時代劇パラレル 二次創作小説:白い華、紅い月 10
薄桜鬼 ハーレクイン風昼ドラパラレル 二次小説:紫の瞳の人魚姫 20
天上の愛地上の恋 転生昼ドラパラレル二次創作小説:アイタイノエンド 6
鬼滅の刃×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:麗しき華 1
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:鳳凰の系譜 1
薄桜鬼腐向け西洋風ファンタジーパラレル二次創作小説:瓦礫の聖母 13
コナン×薄桜鬼クロスオーバー二次創作小説:土方さんと安室さん 6
薄桜鬼×火宵の月 平安パラレルクロスオーバー二次創作小説:火喰鳥 7
天上の愛地上の恋 転生オメガバースパラレル二次創作小説:囚われの愛 8
天上の愛地上の恋 昼ドラ風時代パラレル二次創作小説:綾なして咲く華 2
ツイステ×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:闇の鏡と陰陽師 4
天愛×腐滅の刃クロスオーバーパラレル二次創作小説:夢幻の果て~soranji~ 0
ハリポタ×天上の愛地上の恋 クロスオーバー二次創作小説:光と闇の邂逅 2
魔道祖師×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想うは、あなたひとり 1
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:月の国、炎の国 1
天愛×火宵の月 異民族クロスオーバーパラレル二次創作小説:蒼と翠の邂逅 0
陰陽師×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:君は僕に似ている 3
黒執事×ツイステ 現代パラレルクロスオーバー二次創作小説:戀セヨ人魚 2
黒執事×薔薇王中世パラレルクロスオーバー二次創作小説:薔薇と駒鳥 27
薄桜鬼×刀剣乱舞 腐向けクロスオーバー二次創作小説:輪廻の砂時計 9
火宵の月×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想いを繋ぐ紅玉 54
天上の愛地上の恋 昼ドラ転生パラレル二次創作小説:最愛~僕を見つけて~ 1
バチ官腐向け時代物パラレル二次創作小説:運命の花嫁~Famme Fatale~ 6
FLESH&BLOOD×黒執事 転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:碧の器 1
腐滅の刃 平安風ファンタジーパラレル二次創作小説:鬼の花嫁~紅ノ絲~ 1
天愛×薄桜鬼×火宵の月 吸血鬼クロスオーバ―パラレル二次創作小説:金と黒 4
黒執事×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:悪魔と陰陽師 1
火宵の月 戦国風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:泥中に咲く 1
火宵の月 地獄先生ぬ~べ~パラレル二次創作小説:誰かの心臓になれたなら 2
PEACEMAKER鐵 ファンタジーパラレル二次創作小説:勿忘草が咲く丘で 9
FLESH&BLOOD ハーレクイン風パラレル二次創作小説:翠の瞳に恋して 20
火宵の月 異世界ファンタジーロマンスパラレル二次創作小説:月下の恋人達 1
天上の愛地上の恋 現代転生パラレル二次創作小説:愛唄〜君に伝えたいこと〜 1
天上の愛地上の恋 現代昼ドラ風パラレル二次創作小説:黒髪の天使~約束~ 2
火宵の月 異世界軍事風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:奈落の花 2
天上の愛 地上の恋 転生昼ドラ寄宿学校パラレル二次創作小説:天使の箱庭 5
天上の愛地上の恋 現代昼ドラ転生パラレル二次創作小説:何度生まれ変わっても… 0
天上の愛地上の恋 昼ドラ転生遊郭パラレル二次創作小説:蜜愛~ふたつの唇~ 0
天上の愛地上の恋 帝国昼ドラ転生パラレル二次創作小説:蒼穹の王 翠の天使 1
名探偵コナン腐向け火宵の月パラレル二次創作小説:蒼き焔~運命の恋~ 1
FLESH&BLOOD ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の花嫁と金髪の悪魔 6
火宵の月 和風ファンタジーパラレル二次創作小説:紅の花嫁~妖狐異譚~ 3
天上の愛地上の恋 昼ドラ風パラレル二次創作小説:愛の炎~愛し君へ・・~ 1
黒執事 昼ドラ風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:君の神様になりたい 4
火宵の月 昼ドラハーレクイン風ファンタジーパラレル二次創作小説:夢の華 0
薄桜鬼腐向け転生刑事パラレル二次創作小説 :警視庁の姫!!~螺旋の輪廻~ 15
FLESH&BLOOD ハーレクイロマンスパラレル二次創作小説:愛の炎に抱かれて 10
PEACEMAKER鐵 オメガバースパラレル二次創作小説:愛しい人へ、ありがとう 8
天愛×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:翼がなくてもーvestigeー 2
薄桜鬼腐向け転生愛憎劇パラレル二次創作小説:鬼哭琴抄(きこくきんしょう) 10
薄桜鬼×天上の愛地上の恋 転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:玉響の夢 5
黒執事×天上の愛地上の恋 吸血鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:蒼に沈む 0
天愛×F&B 昼ドラ転生ハーレクインクロスオーパラレル二次創作小説:獅子と不死鳥 1
天上の愛地上の恋 現代転生ハーレクイン風パラレル二次創作小説:最高の片想い 4
バチ官×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:二人の天使 3
FLESH&BLOOD 現代転生パラレル二次創作小説:◇マリーゴールドに恋して◇ 2
YOI×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:皇帝の愛しき真珠 6
火宵の月×刀剣乱舞転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:たゆたえども沈まず 2
薔薇王の葬列×天上の愛地上の恋クロスオーバーパラレル二次創作小説:黒衣の聖母 3
火宵の月×薄桜鬼 和風ファンタジークロスオーバーパラレル二次創作小説:百合と鳳凰 2
薄桜鬼×天官賜福×火宵の月 旅館昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:炎の宿 2
薄桜鬼×火宵の月 遊郭転生昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:不死鳥の花嫁 1
天愛×火宵の月陰陽師クロスオーバパラレル二次創作小説:雪月花~また、あの場所で~ 0
薄桜鬼×天上の愛地上の恋腐向け昼ドラクロスオーバー二次創作小説:元皇子の仕立屋 2
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:碧き竜と炎の姫君~愛の果て~ 1
F&B×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:海賊と陰陽師~嵐の果て~ 1
F&B×天愛 昼ドラハーレクインクロスオーバ―パラレル二次創作小説:金糸雀と獅子 1
天愛 異世界ハーレクイン転生ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の巫女 氷の皇子 0
相棒×名探偵コナン×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:名探偵と陰陽師 1
F&B×天愛吸血鬼ハーレクインクロスオーバーパラレル二次創作小説:白銀の夜明け 2
名探偵コナン×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:碧に融ける 0
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ミハエルは炎を自由自在に操り、踊りながら次々と人を殺していった。―あなたの本当のお父様とお母様は、あなたが赤ちゃんだった時にここへ預けたの。僕は捨てられたんだ。僕のママ。綺麗で、冷たいママ。ママはマドリードに住んでた。でもまたどこかへ行ってしまった、恋人と共に。許さない。僕を捨てたママを。いつかママが僕を迎えに来てくれると信じてた。けどどんなに待っても、ママは来なかった。ママは、ルドルフ皇太子。僕を産んですぐに捨てたママ。僕はここが大嫌いだった。だから全部燃やしてやる。跡形もなく。瓦礫の山の上に立ち、全身に返り血を浴びたミハエルは、口端を上げて狂ったように笑った。手には、血に染まった白薔薇があった。「絶対に、ママを殺すからね・・だから、待っててね、ママv」ミハエルはそう言って、夜の闇の中へと消えていった。-第5章・完-あとがきジュリアーナのことにしてもミハエルのことにしても暗澹たる展開になってしまいました・・。ミハエル君は真実を知って狂っちゃったし・・。第5章から少し話数を減らしたいと思います。なので、最終話は400話になるかもしれません。
2007年11月10日
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1928年7月12日。今日、ミハエルは10歳の誕生日を迎えた。「お誕生日おめでとう、ミハエル。」「ありがとう、院長先生。」そう言ってミハエルは白薔薇の花束を受け取って微笑んだ。「もうあなたは10歳になったから、本当のことを話すわね。あなたの本当のお父様とお母様は・・」院長の言葉を聞き、ミハエルはガタガタと震えた。「・・嘘だ・・僕は・・」「ミハエル、あなたを捨てたお父様とお母様は、本当はあなたのことを思ってここへ預けたのよ。そのことをわかってあげてね。」院長はそう言ってミハエルの肩に手を置いた。「嘘だ、そんなの嘘だー!」院長室が突然炎に包まれ、爆発した。「何なのっ、一体何が起きたのっ!」職員達が院長室に駆けつけると、そこには焼き焦げた院長の死体と、その返り血を浴びて口端を上げて笑うミハエルの姿があった。「ミハエル・・一体これは・・」そう言って近寄る職員の腹に、ミハエルは風穴を開けた。「きゃぁぁ、化け物っ!」やがて炎が職員達と、孤児院全体を包んだ。
2007年11月10日
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ジュリアーナは、教会の方へと駆けていった。「ジュリアーナ、いままで一体どこに行って・・」カルロスはジュリアーナの手に拳銃が握られているのを見た。「ジュリアーナ、それはどこで・・」「ここにお集まりの皆さん、死んでいただけないでしょうか?」ジュリアーナはそう言って招待客を見た。―一体何を・・―たちの悪い冗談だこと・・「ジュリアーナ、一体何を言ってるんだ!どうしたんだ!」カルロスはジュリアーナの両肩を揺さぶった。その時、1発の銃声が教会に響いた。ジュリアーナがカルロスの眉間を撃ったのだ。「ど・・し・・て・・」カルロスは静かに床に倒れた。そしてそれが合図であるかのように、教会に数人の男達がなだれ込んで、招待客をライフルで撃った。「なんて綺麗なのかしらv」ジュリアーナはそう言って返り血を浴びながらライフルを撃った。「お見事でしたよ、ジュリアーナ。」ジュリアーナは我に返って、血に濡れた教会を見渡した。「なんなの・・これは・・一体誰が・・」「全部、あなたがやったんですよ・・」「私が・・」ジュリアーナは呆然として床にへたり込んだ。「ずいぶんと君には楽しませていただきましたよ。残念ですがここでお別れです。」ソロモンはそう言ってジュリアーナを撃った。「ど・・し・・て・・ソロモン・・」「あなたの幸せが憎かった・・ただそれだけですよ。」さよなら、とソロモンは教会を出ていった。「ジュリアーナ!」カサンドラが教会に駆けつけると、そこには腹を押さえて呆然としている妹の姿があった。「どうしたんだい、しっかりおし!」「私・・カルロスを殺してしまったわ・・」「もうここを出よう。全てを忘れるんだ、いいね。」「ええ・・」ジュリアーナは、姉の腕の中で意識を失った。
2007年11月10日
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数週間後、ジュリアーナとカルロスの結婚式が行われた。「ジュリアーナ、本当にいいのかい?本当にあいつと・・」「大丈夫よ、姉様。私絶対に幸せになるわ。」「そうかい・・」カサンドラはそう言って最愛の妹の花嫁姿を見て目頭を熱くした。「とても綺麗ですよ、ジュリアーナ。」「ありがとう、ソロモン。」ジュリアーナは従兄弟に向かって微笑んだ。「あなたはいいですね・・好きな人と幸せになれて。」「どうしたの、ソロモン?気分でも悪いの?」「いいえ・・ただ今ここであなたが未来の夫とその家族を殺したら、どうなるかなぁと思いまして・・」ソロモンはそう言ってジュリアーナを見た。「殺す・・私が・・そんなの、嫌!」ジュリアーナは床に蹲り、激しく身を震わせた。「殺したくない・・嫌ぁ・・」呻いて頭を抱えるジュリアーナを、ソロモンは静かに見ていた。「・・そうね、みんな殺しちゃおうっとv」ジュリアーナはそう言って立ち上がり、ソロモンが持っていた拳銃を奪い、控え室を出ていった。その目は、狂気によって紅く光っていた。「お前、ジュリアーナに何をっ!」カサンドラはソロモンの胸倉を掴んだ。「これから、面白いことが起きますよ。」ソロモンはそう言ってくつくつと笑った。
2007年11月10日
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今日もジュリアーナはカルロスと共に過ごしていた。「ねぇジュリアーナ、僕君と結婚したいんだ。」「私と?」ジュリアーナの蒼い瞳が、喜びに満ちる。「君と初めて会ったとき、僕の運命の人は君しかいないと思ったんだ。だから、こんな僕でよければ一緒になってくれるかい?」「ええ・・あなたとなら幸せな家庭が築けそう。」ジュリアーナはそう言ってカルロスにキスした。「やった!」カルロスはジュリアーナを抱き締めた。「これからは、君を幸せにするよ!」「嬉しいわ。」「今日は何かとご機嫌だね、ジュリアーナ。」帰宅して夕食を作っていると、カサンドラがキッチンに入ってきてそう言った。「そうかしら?」「好きな男が出来たんだね?顔にそう書いてある。」「ええ、とっても素敵な人なのよ。いずれ姉様にも紹介するわね。」鼻歌を歌いながら料理をする妹を、カサンドラは切ない目で見ていた。
2007年11月10日
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「ルドルフ様から離れろ。」ユリウスはそう言ってソロモンを睨んだ。「主人の危機には真っ先に駆けつける・・まるであなたは番犬のようですね。」「黙れっ!」ユリウスはサーベルをソロモンに向かって振り下ろした。ソロモンは隠し持っていた短剣でユリウスの刃を受けとめ、ユリウスを突き飛ばした。ユリウスは壁に吹っ飛び、背中を強打した。「そんなに弱いのに、主人を守ろうとするなんて・・本当に、人間という者は愚かな生き物だ・・」床に突き刺さっているユリウスのサーベルを抜き、ソロモンはユリウスにゆっくりと歩いていった。「あなたには、ここで死んで貰います。」そう言ってユリウスの首めがけてサーベルを振り下ろそうとしたときールドルフがサーベルでソロモンの刃を受けとめた。「ユリウスに手出しはさせない!」「・・そうですか。あなたとは手を取り合って生きてゆけると思ったのに・・でも、あなたは僕達の敵だ!」ソロモンはそう言ってルドルフに襲いかかった。部屋中に、剣戟の音が響いた。「はぁっ!」ルドルフの刃が、ソロモンの腹を突いた。「今回はあなたの勝ちです。でも、次こそはあなたを倒しますから、そのつもりで。」ソロモンはルドルフを未練がましく見ると、姿を消した。
2007年11月10日
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「お前と・・一緒になれだと・・?」そう言ってルドルフはソロモンを睨んだ。「ええ。子どもには両親が必要でしょう?」ソロモンはニッコリと笑ってルドルフの手に口付けた。「僕とあなたなら幸せな家庭を作れる。それに、あなたはあの人間を傷つけることはもうないんですよ。」「お前とは結婚したくない。私はユリウスと・・」「一緒になる?ありえません、魔族と人間の結婚など。」「彼はもう人間じゃない。」「ああ、そうでしたね。」ソロモンはそう言ってコーヒーを飲んだ。「でもあなたは彼を魔族にしてよかったのですか?司祭であった彼を、魔物にして。」「それは・・ユリウスが望んだ・・」ルドルフはソロモンを睨み、手元にあったバターナイフを握った。「あなたは嘘吐きですね。」「嘘吐き?」「ええ、そうです。」ソロモンはルドルフの手からバターナイフをたたき落とした。「本当はあなたは彼を魔族にしたくなかった・・それなのに自分のエゴで勝手に彼を魔族にしてしまった・・」「違う、違う・・そんなんじゃない!私は・・」ルドルフの脳裏に、幸せだった頃の思い出が走馬灯のように駆けめぐった。彼を魔族にしなければ。こんな戦いの中に、彼を・・「違う、違う・・」「もう苦しまないで。僕のそばにいれば、あなたは幸せな毎日を送れる。」ソロモンはそう言ってルドルフに微笑んだ。「同族で争うなんて、無意味なことはもうしなくていい。だから僕と一緒になって・・」「私は・・私は・・」ルドルフは、苦しそうに顔を歪ませた。「ルドルフ様っ!」「あなたはいつも、僕の邪魔をするんですね。」ソロモンは舌打ちして、ユリウスを睨んだ。
2007年11月10日
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その日から、ジュリアーナはカルロスと毎日のように一緒に過ごした。「じゃあ、またね。」「ああ。」カルロスとジュリアーナは別れのキスをした。(こんな気持ち、初めてだわ・・これが恋というものなの?) 早くに両親を失い、姉と共に憎しみと好奇の視線の中で育ってきたジュリアーナは、初めて感じる安らぎと淡い恋に胸を弾ませていた。(このままずっと、こんなことが続けばいいのに・・)ジュリアーナはカルロスとの幸せな日々の中で少しずつ、ミハエルのことを忘れてしまった。それよりも、自分とカルロスとのことだけを考えていた。だが、そんな日々は長くは続かなかった。
2007年11月10日
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孤児院からの帰り、ジュリアーナは放心状態で街を歩いていた。(なんて恐ろしい子なの・・なんとかしなければ、あの子は・・)ミハエルの能力の源は強い憎しみと怒りからできている。まだ2歳の子どもが、自分より年長の子を火だるまにした。「っ・・!」ジュリアーナは激しい吐き気を感じて、溝に吐いた。「どうしました?」荒い息をして顔を上げると、そこには自分を心配そうに見つめる榛色の瞳があった。「ちょっと気分が悪くて・・もう大丈夫です。」そう言って立ち上がろうとすると激しい眩暈がジュリアーナを襲った。「少し歩いた所に僕の家がありますから、そこでしばらく休んでください。」「ご親切に有り難う。わたくしはジュリアーナ。あなたのお名前は?」「カルロス。カルロス=カルジャーノと申します。」(なんて優しい瞳なの・・)ジュリアーナはカルロスと出会った時から、彼と恋に落ちた。それはカルロスも同じだった。(夏の青空のように何て美しく澄んだ瞳なんだ・・)こうして2人は出会った。やがて起きる悲劇など知らずに・・
2007年11月10日
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「どうして・・あなたがそのロザリオを持ってるの?」ジュリアーナは蒼い瞳を驚きで見開かせながら言った。「産まれた時から持ってるんだ。ママが僕を捨てた時から。」ミハエルはそう言ってニッコリと笑った。「僕ね、いつかママを殺すのv」「そんなことを思っちゃ駄目。きっとあなたのお母様は事情があってあなたを・・」「もう決めたんだもん!ママを殺すんだもん、あんな風に。」ミハエルは自分をよくいじめている子をチラリと見た。すると突然、その子の身体が炎に包まれた。「熱い、熱いよぉ~!」「やめなさい、今すぐにやめてっ!」「ヤダ、あいついつも僕をいじめるんだもん。」ミハエルはそう言って笑った。ジュリアーナはミハエルの頬を叩いた。炎に包まれていた子は地面に倒れた。全身にひどい火傷を負っており、時折獣ようなうめき声を上げている。「どうして怒るの?僕ふざけただけなのにぃ。」ジュリアーナはミハエルを見て、悪寒を感じた。
2007年11月10日
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「僕の息子は、今どこにいるんです?」「それを知ってどうするつもりだ。」ユリウスはそう言ってソロモンを睨んだ。「僕が引き取るに決まっているでしょう?どうやらあなたは僕の息子を捨てたようですし。」ユリウスは拳を固めた。「ユリウス、ここは私に任せておけ。」「ですが・・」「彼と2人きりにさせてくれ。」「わかりました。」ユリウスはソロモンを睨んで部屋を出ていった。「あの子はここから10分ほどにある孤児院にいる。名前はミハエル。」「そうですか・・息子の居場所がわかったところで、僕と取引をしませんか?」「取引だと?」「ええ、そうです。」ソロモンはそう言ってルドルフの唇を塞いだ。ルドルフはソロモンの頬を打った。「相変わらず冷たいんですね。まぁ、それはそれでいいんですけど。」「早く用件を言え。」「では・・」ソロモンはルドルフの耳元に何かを囁いた。
2007年11月10日
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部屋に籠もっていたジュリアーナは久しぶりに外に出て、いつも訪ねる孤児院へと向かった。「お姉ちゃんv」「今日はどんなこと、占ってくれるの?」ジュリアーナが孤児院に入ると、たちまち彼女は子ども達に囲まれた。「今日はね、みんなにおいしい物をあげるわね。」そう言ってジュリアーナはバスケットからできたてのマフィンを取り出した。「お姉ちゃんありがとうv」子ども達にマフィンを配っていると、1人だけ自分のことを見ている子どもがいた。ジュリアーナはその子どもが気になって仕方がなくて、その子どもの方に歩いていった。「あなた、お名前は?」「ミハエル。」子どもはそう言ってジュリアーナが胸に提げているロザリオを見た。「これはね、私の両親の形見なのよ。」「僕も同じの、持ってる。」ミハエルは胸に提げているロザリオをジュリアーナに見せた。「これは・・」“あの方”の従者が持っていた物と同じロザリオ。「これ、僕のママ。」そう言ってミハエルがジュリアーナに見せたものは、ルドルフの写真だった。
2007年11月10日
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ミハエルは、図書室で本を読んでいた。 それはハプスブルク家に関する書物で、2歳の子どもには到底理解できない内容のものだった。だがミハエルは熱心にページを捲り、食い入るように活字を目を追っていた。ミハエルの手はやがて、あるページで止まった。そこは、ルドルフ皇太子について記述されているページだった。“ルドルフ皇太子は1889年1月29日、ウィーン郊外のマイヤーリンクで謎の情死を遂げた。”ページの右上には、晩年と呼ぶには若すぎる死を遂げたルドルフ皇太子の写真が載っていた。ミハエルは写真をそっと手で撫でた。「ママ・・」写真にキスしたミハエルは本を閉じて、図書室を後にした。
2007年11月10日
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ルドルフはリビングでブランチを取っていた。「あなたがお好きなカツレツを作ってみました。どうですか、お味は?」「美味い。長い間眠っていたせいか、腹が減って仕方がない。」ルドルフはカツレツを完食して、口元をナプキンで拭いながら言った。「そうですか。私の行きつけの店で、美味しいパエリアを出す店があるんです。今から行きませんか?」「ああ。」「では、僕もご一緒いたしますね。」ユリウスはとっさにキッチンにあったナイフを声のする方へと投げた。「久しぶりに会えたというのに、随分と乱暴な挨拶ですね?」ソロモンはそう言ってナイフを人差し指と中指に挟んだ。「何しに来た?」「あなたにひとつ、お聞きしたいことがあるんです。」「聞きたいこと?」「ええ。僕の息子は今、どこにいるんです?」「・・言いたいことはそれだけか。」ユリウスはそう言って身構えた。「そう来ると思いましたよ。」ソロモンはニヤリと笑って、ユリウスを睨んだ。
2007年11月10日
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「“あの方”がお目覚めになりましたよ、兄さん。」ソロモンはそう言ってオルフェレウスを見た。「随分と早い目覚めだな。まぁ、今度こそ“あの方”に私たちの子を産んでもらうチャンスがやってきた。」「そうですね・・“あの方”は僕達の希望なのですから。」「実際はお前だけの希望だろう、違うかソロモン?」「兄さんには、なんでもお見通しなんですね。」ソロモンはフッと笑った。「お前がロシアで“あの方”を孕ませたことは知っている。そして、お前の子はこの街のどこかにいることもな。」「仕方なかったんです。僕は“あの方”に僕の子を産んで欲しかった・・だから・・」「本能のままに従ったのか。まぁいい。すぐに“あの方”と再会するだろう。」「ええ、そうですね・・あの邪魔な司祭と一緒に。」ソロモンの瞳が一瞬、紅い光を放った。「あの司祭、邪魔だから殺してもいいでしょうか?」「構わん、殺れ。」「じゃあ、手加減なく殺しておきますね。」ソロモンはニッコリと笑って、部屋を出て行った。「恐ろしい奴だ・・ソロモン・・」オルフェレウスはそう言って蝋燭を吹き消した。
2007年11月10日
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ユリウスが帰宅すると、寝室から物音がした。(まさか・・まだ目覚めるのは早すぎる・・)寝室のドアを開けると、そこにはベッドから落ちて痛さに呻くルドルフの姿があった。「ルドルフ様っ!」ルドルフはユリウスの腕を掴み、ゆっくりと顔を上げた。暗闇の中で、蒼い瞳が異様に光っている。ルドルフはユリウスのシャツを引き裂き、首筋に牙を立てた。「ルドルフ様・・もう・・」ユリウスはそう言ってルドルフをどかそうとするが、ルドルフはユリウスの首筋に吸い付いて離れない。やがてルドルフはベッドに横になり、安らかな寝息を立て始めた。(今のは一体・・ルドルフ様の活動期はまだ先のはず・・)ユリウスは首筋を押さえながら寝室を出ようとした。だがルドルフの手がユリウスの腕を掴んだ。「ユリウス、私を1人にするな。」「お目覚めになられたのですね、ルドルフ様。」ルドルフはユリウスに向かって微笑んだ。「ああ、よく寝た。さっきはすいすぎてすまなかったな。」「いいえ。お腹が空きましたでしょう?」「ああ。」ルドルフはゆっくりとベッドから立ち上がり、ユリウスの手を握った。
2007年11月10日
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夜の帳が下りたマドリードの市街には、酒場から響く哀愁漂うフラメンコの歌声が聞こえた。ユリウスはその音色を聴きながら、酒場に入った。ステージでは数人の踊り子がフラメンコを踊っている。哀愁あるフラメンコギターの音色を聴きながら、ユリウスはパエリアをほおばった。“狩り”をする前に、腹ごしらえをしておかなければ。視線を感じて窓際の席を見ると、女が好色な目つきで自分を見ていた。ユリウスは彼女に微笑んで、席を立った。「お兄さん、今夜はヒマ?」「ああ。」「そう・・じゃああたしが素敵な夜をあ・げ・るv」むせかえるほどのキツイ香水をつけた女はそう言ってユリウスに抱きついた。2人は酒場の近くにある安宿へと向かった。「さあ、服を脱いで楽しみましょうよ、ニーニョ(坊や)」「君が脱ぐところを見たいな。」「そう・・」女はゆっくりと服を脱いだ。「あんたの番よ。」ユリウスは女に抱きつき、女の頸動脈を噛んだ。「アディオス、セニョリータ。」翌朝、その部屋には全身の血を抜かれた女がベッドに横たわっていた。
2007年11月10日
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誰かの声が聞こえる―・・ね深い憎しみと怒りが籠もった声。―死ね・・ジュリアーナが目を開けると、そこには黒髪の男が自分の首を絞めていた。「いやぁぁっ!」「どうしたんだい、ジュリアーナ!しっかりおし!」カサンドラはそう言って妹の頬を叩いた。「男が・・私の首を・・」「何言ってんだい、あんたは生きてるよ!」「カサンドラ、私怖かったわ・・あれが現実だと思ったの・・」「大丈夫だよ。」カサンドラは妹のプラチナブロンドの髪を撫でた。「あたしが悪夢を見ないように、まじないをしてあげるからね。」カサンドラはジュリアーナの耳元で呪文を囁いた。「ありがとう、姉様。今夜はぐっすり眠れそうだわ。」「お休み、あたしの可愛いジュリアーナ。」ジュリアーナはゆっくりと目を閉じ、深い眠りの海へと沈んでいった。
2007年11月10日
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ジュリアーナが昼食を食べている頃、マドリード市内にある孤児院の中庭で、1人の少年がじっと庭の薔薇を見ていた。やがて薔薇は火がないのに燃えだした。その炎はやがて中庭全体を包んだ。「火事だわ、大変!」院長はそう言って孤児院から飛び出して、職員達とともに中庭で消火作業に当たった。「ミハエル、大丈夫だった?怪我はしてない?」「うん。」金色の髪をなびかせ、少年はそう言って中庭を後にした。「薔薇なんか大嫌い・・」ミハエルはほくそ笑み、ベッドに入った。
2007年11月10日
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1920年、スペイン・マドリード。ジュリアーナは今日も、タロットで1人の女性を占っていた。「どうかしら?彼との結婚はうまくいくかしら?」「そうね・・」ジュリアーナはそう言って1枚のタロットを捲った。「うまくいくわ。」「そう、ありがとう!」女性はそう言ってジュリアーナの手を握り、部屋を出ていった。「今日も忙しかっただろう?」ジュリアーナに声を掛けたのは、背中まであるカールした黒髪を流し、黒いドレスと真紅のショールを巻き付けた女だった。「ええ。20世紀なのにみんな占いに頼るのね。」ジュリアーナはそう言って凝った肩をほぐした。「あんなひどい戦争が起こったあとは、誰だって心が不安定になるさ。」「カサンドラ姉様は占いはしないの?」「あたしゃあ人のためにするなんて真っ平ごめんさ。ま、誰かを呪い殺してくれっていうなら別だけどね。」「辞めて頂戴、カサンドラ。そんなことを言うのは。」ジュリアーナはそう言ってキッとカサンドラを睨んだ。「冗談に決まってるだろ。でも忘れちゃいけないよ、ジュリアーナ。あんたとあたしはその気さえあれば虐殺くらい簡単に出来る恐ろしい魔女なんだからね。」「ええ、わかっているわ・・」ジュリアーナは蒼い瞳を潤ませながら、うつむいた。
2007年11月10日
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1918年12月、スペイン・マドリード。マドリード郊外にある瀟洒な造りの豪邸の一室で、ルドルフは激しい眩暈に襲われていた。「ルドルフ様、とうとう・・」「ああ、そうらしい。」ルドルフはそう言ってベッドに横になった。「ユリウス、ミハエルを頼む。」「わかりました。」「それから・・」ルドルフはユリウスの耳元で何かを囁いて、目を閉じた。寝ていたミハエルが起きてミルクを求めて泣き始めた。「よしよし、泣かないで。今からミルクをあげるからね。」ユリウスはミハエルをあやしながら、寝室を出た。ユリウスはミハエルを抱きながらある建物の前で足を止めた。そこは教会が経営している孤児院であった。「ごめんね・・」ユリウスはそう言って孤児院の戸口にミハエルが入っている籠を置いた。-第4章・完-あとがきロシア革命ほとんど出してなくてごめんなさい。そして後半部分が意味不明になってしまいました(滝汗;)。ロシア革命を書こうと思いましたが、いかんせん知識不足で全然書けませんでした・・。それに昼ドラな展開目指そうとしたけれどもこちらも挫折・・本当に期待していた皆さん、ごめんなさい。第5章では敵サイドの魔族の少女・ジュリアーナとカルロスの恋物語を書いていこうかなと思ってます。もちろん、孤児院に捨てられたミハエル君の成長も。ちなみに、ミハエルはロシア語で大天使ミカエルの意味です。ドイツ語だとミヒャエル君。
2007年10月26日
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「ここを出るぞ。」「はい。」産まれたばかりの赤ん坊を連れて、ルドルフとユリウスは北の帝国を後にした。第1次世界大戦を期に、時代の新しい波が、ヨーロッパを襲った。サラエボ事件、辛亥革命、ロシア革命・・時代の激流は王家を呑み込み、次々と崩壊させていった。そして・・1918年11月11日。オーストリア=ハプスブルク帝国最後の皇帝・カール1世退位。これにより、650年以上続いていたハプスブルク家による帝国は、あっけなく崩壊した。そのことを、ルドルフは汽車の中で知った。「私は、一体何のためにいままでやってきたのだろう・・?」「ルドルフ様・・」ユリウスはルドルフを抱き締めた。「本当に、ウィーンには私の居場所はなくなってしまった・・」「私がおります。どんなことがあっても、私があなたをお守りいたします。」「ありがとう・・」ルドルフは涙を流しながら、ユリウスの唇を塞いだ。
2007年10月26日
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1918年7月12日。ルドルフはサンクトペデルブルク市内の自宅で陣痛に襲われ、ベッドの上で暴れ回っていた。「ルドルフ様、今です、息んで!」「ううっ~!!」額から汗を流しながら、ルドルフは何度もいきんだ。「頭が見えてきました、もう少しです!」「う~!」ルドルフは最後の力を振り絞り、気を失った。元気な産声が、部屋中に響いた。「ルドルフ様、産まれましたよ。元気な男の子です。」ユリウスはそう言ってルドルフに赤ん坊を抱かせた。「ん・・」赤ん坊はソロモンに似た、美しいトルマリンの瞳と、ルドルフの蒼い瞳を持った子だった。「名前は、何にいたしましょう?」「さぁ・・お前が考えろ。」ルドルフはそう言ってユリウスにそっぽを向いた。ユリウスはルドルフの手から赤ん坊を抱いた。「じゃあ、この子はミハエルと名付けましょう。」「それでいい。」かくして、運命の忌み子がこの世に産まれた。その存在が、やがてルドルフとユリウスを脅かすことになるとは、この時まだ誰も知らなかった。
2007年10月26日
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アレクセイは泣き叫びながら廊下を走っていた。脳裏に浮かぶのは、八つ裂きになったラスプーチンの遺体と、怒りに燃えたルドルフの姿だった。「誰か、助けて・・殺されちゃう。」「どうしたのぉ、アレクセイ?」顔を上げると、そこにはブロンドの少女がいた。「アフロディーテ、助けて!あの人に殺されちゃうよぉ!」アレクセイはそう言ってアフロディーテに駆け寄った。「あらあら兄様を怒らせちゃったんだ、いけないわね。でもお兄様の暴走する姿は美しいからいいわ。」「ルドルフと、知り合いなの?」「知り合いも何も、私とルドルフ兄様は血を分けた家族よ?」アフロディーテはそう言ってアレクセイの頬を撫でた。「私と一緒にいらっしゃい。」「うん!」1918年7月17日。ロシア帝国皇太子・アレクセイは両親と4人の姉とともに銃殺され、13歳の若い命を散らした。だがアレクセイはその時既にロシアを離れ、ソロモンとアフロディーテと行動を共にしていた。「ねえアフロディーテ、僕ルドルフをものにできるかな?」「さあ、どうかしらね?」アフロディーテはそう言って不敵に笑った。あとがきロシア革命全然書けませんでした・・期待していた皆さん、すいません。アレクセイについては完全に私の創作ですのであしからず。
2007年10月26日
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魔族の本性を呼び覚ましたルドルフは、動くもの全てを斬っていった。やがて彼の白い肌は返り血でまみれ、瞳は真紅に染まった。ルドルフはアレクセイの部屋目指して次々と人を斬っていった。(殺してやる・・絶対に・・!)アレクセイの部屋を見つけ、ルドルフはドアを蹴破った。「ひぃぃっ!」そこには青ざめたアレクセイの従者がいた。ルドルフは彼を斬り伏せた。(どこだ、一体どこに!)アレクセイの姿を探していると、気配を感じてルドルフはサーベルを振り回した。
2007年10月26日
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「ルドルフが愛している司祭というのは、お前?」アレクセイはそう言ってサーベルでユリウスの柔肌を斬った。白い肌から鮮血が噴き出した。「あいつは僕のものなんだよ・・この泥棒猫!」嫉妬に歪んだ醜い顔で自分を睨みながら、何度も何度も斬りつけるアレクセイ。「ユリウスっ!」ドアが乱暴に蹴破られ、怒りを瞳に宿したルドルフがアレクセイとラスプーチン、そして天井に吊されているユリウスを見た。「よくも、ユリウスを・・」「だってお前が悪いんだよ?お前が僕のこと見なかったから。」アレクセイはそう言って笑った。ルドルフの瞳が、徐々に真紅に染まってゆく。突風が部屋を襲い、窓ガラスの破片がアレクセイの全身を突き刺した。悲鳴を上げながら床を転がり、アレクセイは部屋を飛び出していった。「ルドルフ大佐・・」怯えながら、ラスプーチンは恐る恐るルドルフに近寄った。ルドルフのサーベルが、ラスプーチンの瞳を突き刺した。「ひっ」部屋には断続的に振り下ろされるサーベルの音と、肉と骨が断たれる音が響いた。「ルドルフ様・・」ユリウスに映ったのは、全身八つ裂きにされ息絶えたラスプーチンの姿と、狂気を孕んだ真紅の瞳を宿したルドルフの姿だった。「大佐、一体どうなさって・・」部屋に入ってきた兵士が、ラスプーチンの姿を見て青ざめた。だが悲鳴をあげる前に、ルドルフの刃の餌食となった。ルドルフはうなり声を上げて、部屋を出ていった。
2007年10月26日
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革命が勃発して数日が経ち、サンクトペデルブルクは無秩序状態となった。「これからどうなるのだろうな、この国は・・」ルドルフはそう言って窓から暴徒達の群を見た。「滅びの道しか、この国には残っていません。」「そうか・・」ルドルフは窓から目を離してベッドから降りようとすると、激しい眩暈が彼を襲った。「大丈夫ですか?まさか、もう眠りが・・」「いや違う、そうじゃない・・」ルドルフはそう言って身支度をして、ユリウスとともに宮廷へと向かった。貴族達は革命によって自分達が殺されるのではないかと怯えていた。「では、私はここで。」「ああ。」「ルドルフ様、あまり無理をなさいませんように。」「誰に向かって言っている。」恋人の背中を見送りながら、ユリウスは廊下を歩いていると、突然背後から誰かに殴られ、気を失った。「ん・・」「気が付きましたか?」目を覚ますと、そこには喜びで瞳を潤ませるラスプーチンと、憎しみに満ちた瞳で自分を睨むアレクセイの姿があった。「アレクセイ様、これから楽しい実験の始まりですよ。」ラスプーチンはそう言ってサーベルを抜き、その刃をユリウスに向けた。
2007年10月26日
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1917年2月23日。数万人の市民が食糧配給の改善を訴えるデモを起こした。デモは日を追うごとに拡大し、サンクトペデルブルク市内の労働者の大半が参加するようになった。こうした状況を見た帝国政府は、26日デモの鎮圧のため市内中心部のネフスキー通りにて警官隊がデモ隊に発砲し、市民側に多数の死傷者が出た。連隊はデモの鎮圧に混乱していたが、やがてサンクトペデルブルクは無秩序状態となった。帝国政府に不満を持っていた一部の連隊がデモ隊と結託し、それに呼応するかのように兵士の脱走が始まり、反乱兵の規模は数万に達した。ロマノフの終焉が、突然訪れようとしていた。あとがき説明ばっかりですいません。ロシア革命が勃発したときのことを書いてみました。説明不足ですが・・(滝汗;)参考資料 ウィキペディア ロシア革命
2007年10月26日
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ユリウスとルドルフは死霊を相手に死闘を繰り広げていた。だがいくら倒してもキリがない。「クソッ、どうすれば・・」ルドルフはそう言って舌打ちした。その時、彼の背後に死霊の群が襲いかかってきた。「ルドルフ様っ!」ルドルフがサーベルを群に向かって振り下ろそうとすると、彼らは光に恐れをなして逃げ去った。「一体、これは・・」「間に合いましたね。」そこには光を掲げたソロモンが立っていた。「お前・・」ルドルフは眦を上げてソロモンを睨んだ。「何故助けた?お前と私は敵同士のはず。」「言ったでしょう?僕達は同じ魔族。憎しみ合い、戦うことだけが全てではありません。」ソロモンはそう言ってルドルフの唇を塞いだ。「では、僕はこれで。」「待てっ!」後を追おうとしたが、ソロモンの姿は既に消えていた。ドクン、と腹の子の心臓が鳴るのを、ルドルフは感じた。
2007年10月26日
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パーティーからの帰り道、ルドルフは背後に不穏な気配を感じて銃を撃った。すると路地裏から3人の男達が出てきてルドルフに襲い掛かった。 ルドルフは腰のサーベルを抜き、1人の頚動脈を刺し貫き、返り血を浴びながら残りの2人を手にかけた。「ルドルフ様、お怪我はっ!」銃声を聞いたユリウスがルドルフの元に駆けてきた。「ただの雑魚だ。」ユリウスは刺客の遺体を見てハッとした。「どうした?」「この人たちは、確かレーニンの部下だった・・」「じゃあ、こいつらは・・」ルドルフはレーニンの不吉な言葉を思い出し、眉間にしわを寄せた。「宮廷で一目置かれているわたしを亡き者にし、革命を起こす・・なんと姑息な・・」「帰りましょう。」「ああ。」そう言ってルドルフが刺客に背を向けると、死んだはずの刺客の1人がルドルフに向かって剣を振り上げて来た。「この、死に損ないがっ!」ルドルフは刺客の脳漿を突き刺し、頭蓋を鞘で叩き割った。「さぁ、行こうか。」「はい・・」2人が路地を後にしようとすると、突然2人の前に虚ろな目をした者達が現れた。みなその顔は青ざめ、中には半ば腐敗した顔をしている者もいる。「死霊か・・妖魔よりもタチが悪いな。」ルドルフは舌打ちして、サーベルに付いた返り血をコートの裾で拭った。「さぁ、来いっ!」コートを脱ぎ捨て、ルドルフは死霊たちに向かってサーベルを構えた。「ふふふ・・面白くなりそうだね。」「ええ。」水晶玉越しにルドルフの様子を見ていたアレクセイとラスプーチンは、そう言って笑った。
2007年10月26日
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1917年1月。ルドルフがサンクトペテルブルクに来てから一月が経った。 ロシアでは貧民達の暴動が日々起きており、その炎はもうすぐ冬宮を包み紅毛とする勢いであった。拡大する貧富の差。嵩む戦費に、高くなる税金。サンクトペテルブルクでは、レーニンが打倒ロマノフを掲げて民衆の人気を集めていた。そんな中、ルドルフはユリウスにソロモンの子を宿していることを話した。「本当なのですか、それは?」「ああ。」ルドルフはそう言って下腹を叩いた。「私は実験台にされ、腹には憎い敵の子がいる。だから私はこの子を殺す。」「殺すのですか、宿した命を?」「当たり前だろう、お前の子ならともかく、あいつは私たちの敵だ。」ユリウスは何か言いたそうに口を開いたが、ルドルフに睨まれて黙ってしまった。その日、ルドルフはある貴族のパーティーでレーニンに会った。「あなたですね、オーストリアからはるばる来たという貴婦人達の人気を集める若き大佐は。」レーニンはそう言ってルドルフを見た。「どうやらあなたはロマノフを倒して新しいロシアを作ろうとしていますね。」ルドルフの言葉にレーニンは大きくうなずいた。「私はこのロシアを変えてみせる。そのためなら、手段は選ばない。」その言葉にルドルフは背筋に一瞬悪寒を感じた。「まさか、皇帝一家を殺すと?」「そんなことはしませんよ・・けれども、必要とあればするでしょう。あなたは宮廷では一目置かれている存在だと聞きますが、そろそろ自分の身の振り方をお考えになったほうがよろしいでしょう。」レーニンはそう言って不敵に笑うと、ルドルフの元を去っていった。あとがきレーニン登場させました。といってもワンシーンだけですが。ロシア史にあまり詳しくないので、適当に書きました。
2007年10月26日
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「何故、こんなことを・・」ルドルフはそう言って部屋を出ようとした。「僕はあなたを愛しています。だから、愛の証が欲しいんです。」「愛の・・証?」ルドルフはくつくつと笑った。「ユリウスとの子は殺して、私にお前の子を産んで欲しいだと?身勝手な奴だ、お前も、あいつも。」「何と言われても構いません。あなたには僕の子を産んでもらいます。」「死んでもいやだと言ったら?」ルドルフは床に転がっている拳銃に手を伸ばした。「今ここで私が頭を撃ち抜けば、お前とあいつは困るだろうな。そのつもりはないが、お前の子を産むつもりもない。」拒絶の言葉を受け、ソロモンはため息をついた。「随分と嫌われましたね・・」「失せろ、お前の顔など見たくもない。」「わかりました。」一週間後、ルドルフの妊娠が確認された。「ソロモンの子を宿したお前は、戦いを止めることだ。」「わたしはお前達を倒す。」ルドルフはそう言ってユリウスが待つ我が家へと帰っていった。腹の中にソロモンとの愛の証を宿して。
2007年10月26日
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ガァーンッ!!部屋に銃声が響き、弾はソロモンの右肩を貫通した。「何故邪魔をするっ、もう少しで死ねたのにっ!」ルドルフはそう言ってソロモンの頬を叩いた。「今あなたが死んだら、あなたの従者はどうするんです?」「ユリウス・・」ルドルフは恋人の名を、久しぶりに呼んで目を閉じた。「あなたは、彼だけを愛しているのですね・・」ソロモンはさびしそうに笑って、ルドルフの服を脱がし始めた。『ルドルフ様、愛しています。』どこからか聞こえるユリウスの声。目を開けると熱で潤んだ翠の瞳で私を見つめるユリウスがいる。「ユリウス・・」自分を愛してくれる男の背中に、ルドルフは思いっきり爪を立てた。「痛っ・・爪を立てるほど、気持ちよかったんですか?」違う、この声はユリウスじゃない。そこには熱を孕んだトルマリンの瞳で自分を見るソロモンの姿があった。「離せ、離っ・・」「いいえ、離しません。僕の想いを、あなたに刻み込みたいんです。」ソロモンはそう言ってルドルフの最奥で果てた。
2007年10月26日
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オルフェレウスの邸に連れてこられて一週間が経った。ルドルフは毎日飲まず食わずでただ失った命を嘆き悲しんでいた。そのためか頬はこけ、目は泣き腫れて真っ黒な隈が周りを縁取っていた。ユリウスとの間に初めてできた命。それを無残にも奪われ、ルドルフは生きる気力を失くしていた。「また、残しましたね。」ソロモンが部屋に入ってきて、手がつけられていない朝食を下げた。「いい加減何か食べないと、あなたの体がもちません。一口でもいいから食べてください。」そう言って彼はスープをスプーンによそおってルドルフの口元に持っていった。「要らない。」ルドルフはそう言ってソロモンを睨んだ。「何故お前達はあんなことをした?人の命をまるでゴミのように扱って・・」「それは誤解です。確かにあなたにしたことは許されないかもしれません。けれどそれはあなたの命を救うためだったんです。もしあのまま無事に出産を迎えられても、あなたの命が危険に晒されるんですよ。」「それでも産みたかった。だから私はお前達を倒すと決めた。」ソロモンはため息をついた。「強情な奴だ。」オルフェレウスが部屋に入ってきてそう言ってルドルフの顎を持ち上げた。「随分と痩せたな。だが交配には支障はないだろう。」「兄さん、彼はまだ・・」「黙れソロモン。私はルドルフをお前達の実験台として連れてきたのだ。感謝しろ。」「実験台?何のことだ?」「これからお前は私達に抱かれるのだ。お前の従者以外に子を生せるのかどうか・・お前はわれわれにとって貴重な実験台なのだよ。」オルフェレウスはルドルフの服を乱暴に脱がせ、馬乗りになった。それからルドルフはオルフェレウスの残酷な実験台として、毎日サンクトペテルブルク中の魔族に抱かれた。(もういやだ・・こんなのは・・)ルドルフはサイドテーブルに置かれた拳銃を手に取り、こめかみに当てた。
2007年10月26日
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ルドルフがオルフェレウスの邸で悲嘆にくれているころ、ユリウスは冬宮の中でルドルフの姿を探していた。舞踏会から先に帰ってきてルドルフの帰りを待っていたが、とうとう帰ってこなかった。(一体どこへ行かれたんだろう・・宮廷に顔も出していらっしゃらないし・・何かあったのでは・・)そう思いながらうろうろしているとき、1人の男にユリウスはぶつかった。「おや、誰かと思ったらウィーンから来た司祭様ではないですか。」「あなたは・・」長い銀髪をなびかせ、淡いグリーンの瞳をきらめかせながら、皇帝夫妻の寵愛を受けている若い魔術師は自分を見ていた。「人を探しているのですが・・」「それはルドルフ大佐ですか?闇雲に探すよりも私の部屋へどうぞ。」ラスプーチンの部屋へ一歩は入ったユリウスは、部屋に雑然と置かれている医療器具や魔術に用いる道具などを見て、少し鳥肌が立った。「こちらへ。」そう言ってラスプーチンが指し示したのは中央のテーブルに置かれてある水晶玉だ。水晶玉の周りにはタロットが積まれて置いてある。「この水晶玉でルドルフ大佐を探してあげましょう。」ラスプーチンはそう言って呪文を唱えて水晶玉に軽く触れた。すると水晶玉の中にルドルフの姿が現れた。「ルドルフ様っ!」ユリウスが水晶玉を覗き込むと、ルドルフは下腹をさすりながら涙を流している。“兄様、仕方ないじゃない。あいつらは私たちの妊娠を望んではいなかったんだから。”冷めた口調でアフロディーテがそう言ってルドルフのベッドに腰を下ろした。“けどオルフェも残酷よね。ソロモンに気絶させてその内に堕胎するなんて。”(堕胎・・ルドルフ様は・・)この前あんなに嬉しそうに自分に妊娠の報告をしていたルドルフの姿が、脳裏に浮かんだ。“子どもなんてまた作ればいいのよ。”アフロディーテの言葉にルドルフは答えず、虚ろな目で下腹をさすっている。(ルドルフ様・・)ユリウスは涙を流しながらそっと水晶玉の表面を撫でた。今すぐにでも抱きしめたい。だが水晶玉はやがて何も映さなくなった。「大佐がおられるのは、ここから10分もしないところですよ。」「そうですか、ありがとうございました。」そう言ってユリウスが部屋から出ようとすると、ラスプーチンがユリウスの腕を掴んだ。「今はそっとしておいた方がよいでしょう。彼はあなたの顔を見るとますます傷つくから。」「それは・・どういう意味ですか?」「言葉どおりです。」
2007年10月26日
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「そんな・・そんなことが・・」ルドルフはそう言って床にへたり込んだ。「あなたには選択肢が2つあります。1つは剣を取って無意味な戦いを続けること、もう1つは僕達と手を取り合って未来を築くことです。」ルドルフは下腹をさすった。この命がこの世に生れ落ちたとき、自分はいない。ならばールドルフは寝室の壁に掛けられてあるサーベルを取り、装飾を施された鞘を抜き、刃をソロモンに向けた。「私は、お前たちを倒すっ!」ソロモンはさびしげに笑って、壁に掛けてあるサーベルを取った。「やぁぁっ!」上段から勢いよく振り下ろしたルドルフの刃を、ソロモンは難なくかわし、ルドルフの鳩尾に一撃を入れた。「がはっ・・」ルドルフはそう呻いて気を失った。「オルフェ兄さん、後は頼みますね。」ソロモンはベッドにルドルフを寝かせて、立ち去った。「ん・・」目を覚ましたルドルフがベッドから起き上がろうとすると、下腹に焼け付くような痛みが走った。「無理をしちゃだめよ、兄様。だって兄様は堕胎したばかりなんだからvま、私もそうだけどね。」「そんな・・」「あいつらにとって、私たちは希望だから、死んで欲しくないのよ。あいつらにとって、お腹の子は歓迎されなかった命なのよ。」「どうして・・」ルドルフはそう言って下腹をさすった。蒼い瞳から、とめどなく涙が流れた。
2007年10月26日
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「それはできない。」そう言ってルドルフはソロモンに背を向けた。その途端、激しい眩暈に襲われ、ルドルフはよろめいた。「大丈夫ですか?」「ああ・・でもどうして・・」「それはね、妊娠したからよv」いつの間にか部屋に入ってきたアフロディーテがそう言ってルドルフの下腹を指した。「私もね、ここに赤ちゃんがいるのよ。でもね、私と兄様が赤ちゃん産むとね、どちらかが死んじゃうのv」「どちらかが・・死ぬ?」ルドルフはそう言って下腹をさすった。ユリウスとの愛の結晶を産み落とした後、自分は死ぬのか?「本当なのか、それは?」ソロモンはうつむいて静かにうなずいた。「優秀な子孫は1人だけでよい。お前とアフロディーテにとっては酷なことだが、2人とも子を産み落とせば両方とも助からぬ。」「そんな・・」それはルドルフにとって残酷な真実だった。あとがきとうとう残酷な真実を知ってしまったルド様。愛する人の子を宿したのに、喜べないって複雑ですね・・。
2007年10月26日
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「あいにくだが、私には伴侶がいる。」ルドルフはそう言って左手薬指に光る指輪をソロモンに見せた。「ユリウスのことなら知っています。ですが僕は、彼からあなたを奪います。」トルマリンの瞳を決意で光らせながら、ソロモンは言った。「あなたは何故無意味な戦いを続けているのです?同族同士憎み合い、殺しあっても何の利益も生まないのに。」「私には・・守るべきものが・・」そう言ったルドルフの脳裏に、父の涙と最期の言葉が浮かんだ。“ルドルフ、愛してる・・”「あなたの家族はもういない。あなたを慕ってくれる部下達も、あなたを頼りにする友も、もうあの世へ逝ってしまった。それでもあなたは戦うというのですか?」「私は・・私は・・」頭を抱えてうずくまるルドルフの肩を、ソロモンはそっと叩いた。「僕達とあなたは同じ魔族。魔族同士争って血を流すなんて、無意味だと思いませんか?戦いをやめて、僕達の未来を築くために、あなたはここにいるのに。」「私たちの、未来・・?」「そう。あなたは僕達の唯一の希望。だから・・」ソロモンはルドルフに跪き、微笑んだ。「僕の伴侶となって。」
2007年10月26日
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「ん・・」ルドルフはゆっくりと蒼い瞳を開き、辺りを見渡した。ここは冬宮ではない。「目が覚めたか?」ドアの方を見ると、オルフェレウスがそう言って自分を見ていた。「ここはどこだ?」「わが邸だ。そしてお前を閉じ込めるための金の鳥籠でもある。」「鳥籠?」「お前はここで、私の子を産むのだ。至高なる純血種の後継者を。」オルフェレウスはそう言って笑った。「また、会えましたね。」コツン、とブーツの音がして、ルドルフと同じ濃紺の軍服を着たソロモンが部屋に入ってきた。「お前、どうして・・?」「決まっているでしょう。」ソロモンはそう言ってルドルフを抱きしめた。「あなたと、愛し合うためです。」あとがきオルフェに続いてソロモンも再登場。ルド様が好きな弟のためにオルフェはルド様を拉致してソロモンに会わせたのです。そういうオルフェもルド様を狙っていますが。総受けですね、ルド様・・。やっぱり受胎期フェロモンのせいでしょうか?
2007年10月26日
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「どうしました、アレクセイ様?なにやら顔色がよくありませんね。」そう言ってラスプーチンは銀髪をなびかせながら、アレクセイの額に手を当てた。「僕ね、あいつのことが好きなの。」「あいつ?」「うん。最近28連隊の大佐になった奴だよ。」「ああ、ウィーンから来た・・」恋煩いか。「ねぇ、お前の魔術であいつを僕の虜にさせてよ。」「偽りの愛はいつか壊れます。それよりも・・」ラスプーチンはそう言って窓から獲物を見つけた。「彼に罠を仕掛け、あなたのものにするのです。」「それ、いいかもね。」「それでは、私はこれで。」ラスプーチンはそう言ってアレクセイの部屋を出て行き、獲物にゆっくりと忍び寄った。あとがきラスプーチン登場です。実在のラスプーチンはおっさんなんですが、私は面食いなので彼は美形にしました(オイ)。ラスプーチンは魔術師として皇帝夫妻から寵愛を受けていました。アレクセイが血友病を患い、その治療を施したからだといわれてますが、彼は謎が多い人物です。『月光花』では美形だけれどユリウスを密かに狙っている変態という設定です。彼もアレクセイと同様、魔族です。魔族は基本的に美形が多いのです(それは作者が面食いだから←オイ)
2007年10月26日
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「・・どうしてまた私が女装なんか・・」そう言ってルドルフは鏡の前でしかめっ面をした。「プラハ城で私が味わった思いを、あなた様にも知って欲しくて。」ユリウスはニッコリと笑いながら言った。「お前、あのときのことまだ根に持ってるのか?もう随分昔のことだぞ?」「でもあなたはピンクの髪をしたご令嬢に言いがかりをつけられたりしていないでしょう?」ユリウスのエスコートで真珠色のドレスをまとい、サファイアのネックレスをつけたルドルフが会場に入ると、周りにいた男達がどよめいた。「お嬢さん、一曲お願いできますか?」「いいえ、このわたくしと。」「いや、僕と。」ユリウスを無視して男達は男だとは知らずにルドルフを落とそうと必死だった。彼らが必死になるのは、ルドルフの体から漂ってくる甘い薔薇の香りだろう。ユリウスは男達に気圧され、早めに自分を置いて帰ってしまった。(全く、しょうがないやつめ・・)ユリウスはこんな華やかな場所は苦手で、ブタペストでもいつの間にか姿を消してしまっていた。ユリウスがいないとつまらないから帰るかーそう思ってルドルフが出口のほうへと歩き出したときー「私と踊ってくれませんか、フロイライン?」凛とした声とともに入り口からブタペストで見かけた男が現れた。「お前は・・」「久しいな、ルドルフ。」そう言ってオルフェレウスはニヤリと笑って、狼のように鋭いアメジストの瞳でルドルフを見た。「何故ロシアに?目的はなんだ?」「決まっているだろう、お前と交配するために来たのだよ。」オルフェレウスはそう言ってルドルフの腰を掴んだ。「今度こそ私のものになってもらおう。今宵お前は、私の子を産むのだ。」あとがきオルフェ登場。男達はルド様のフェロモンに吸い寄せられてしまいましたね。それにしてもユリウス、頼りにならないなぁ・・まぁ、ルド様がしっかりしてるからいいんですけど。次回はあの美形変態魔術師・ラスプーチンを出します。
2007年10月26日
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「話とは、なんだ?」そう言ってルドルフはアレクセイを見た。「お前、僕のことどう想ってるの?」「お前のことは大切な主だと思ってるが、それが何か?」アレクセイはフッと笑い、ルドルフの左手薬指を見た。「お前には他に好きな人がいるんだね・・」そう言ってルドルフに抱きつく。「僕はお前のことが好きなのに。」「冗談はよせ。」ルドルフはアレクセイから離れようとした。「ねぇ、お願いだよ。一度だけでいいから僕を見て。」「それはできないな。」冷たく言い放ち、ルドルフは部屋を出て行った。「いいよ、お前がその気なら僕は絶対、お前を手に入れてやる・・」くつくつとアレクセイは笑った。
2007年10月26日
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「おはようございます、大佐。」「おはよう、諸君。」ロシア軍28連隊は、今日も宮殿の中庭で訓練をしていた。冬宮で訓練する兵士達の中で一番目立っているのは、彼らの指導者であるルドルフだった。癖のあるブロンドは冬の光によって輝き、濃紺の軍服は均整の取れた体のラインを強調しており、窓からその様子を見ていた女官達は、一斉にため息をつく。「今日の訓練はここまで。」そう言ってルドルフは冬宮の中へと入っていった。アレクセイはルドルフの後姿を、木陰からじっと見ていた。女神のように美しい、その姿。初めて会ったとき、胸が締め付けられるように痛くなった。そして彼を手に入れたいと思った。自分だけのものにして、一生金の鳥かごに閉じこめたい。「何見てるのよ、アレクセイ?」「お姉様。」黒髪をなびかせながら、姉である第4皇女のアナスタシアがそう言って自分を見た。「何見てるのかと思ったら、ルドルフ大佐ね。あの人男なのに綺麗よね。女の私でも妬けちゃうわ。あなた、大佐のこと好きなのね?」「そ、そんなわけじゃ・・」「ごまかしたってだめよ、顔に出てるわよ。」アレクセイはいつの間にか、ルドルフに恋心を抱いていた。
2007年10月26日
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ルドルフは熱に潤んだ瞳でユリウスを見つめて言った。「お前の子どもが欲しい。」「ル・・ル・・ルドルフ様っ!?」あまりにも直截的な言葉をぶつけるルドルフに、ユリウスは顔を耳まで赤くした。「どうなさったのですか、一体?お熱でも・・」ユリウスはルドルフの額に手を当てようとしたが、その手はルドルフによって下腹へと導かれた。そこは熱く、濡れていた。「ユリウス・・」ルドルフは下腹に導いた手を自分の口元へと持っていき、わざと音を立ててユリウスの白い指をしゃぶった。その姿がなぜか艶かしく、指をしゃぶられただけなのに感じてしまう。ルドルフがゆっくりと自分の衣服を脱がしていく。金ボタンを外し、豪華な刺繍が施された軍服をズボンとともに脱ぎ捨て、シャツ1枚の姿となったルドルフのすらりと伸びた美しく長い足を見てユリウスは唾を飲み込んだ。「ユリウス・・」目を開けると、隣には一糸まとわぬ姿で寝ているルドルフの姿があった。それから、ルドルフは毎日ユリウスを求めてきた。一週間くらい経った頃、ルドルフの口からとんでもないことばが飛び出してきた。「ユリウス、私は妊娠した。」ルドルフはそう言ってユリウスに微笑み、下腹を撫でた。あとがきエロくてすいませんでした(滝汗;)。受胎期を迎えたルド様は、何かと積極的です。この時期は理性を捨てて、動物的本能に従うまでです。クールなルド様のイメージをぶち壊してしまいました・・すいません。
2007年10月26日
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「ん・・」ルドルフは朝日が射し込む寝室のカーテンを開け、遥か遠くにある宮殿を眺めた。ここはサンクトペデルブルクにある豪邸が立ち並ぶ裕福な地区である。ルドルフとユリウスは崩壊寸前のボロ家から、瀟洒な造りをしたこの豪邸へと引っ越してきた。ルドルフは昔のような優雅な生活を送っていた。「ルドルフ様、おはようございます。朝食を持ってまいりました。」執事がドアを開け、朝食を載せたトレイを持って入ってきた。「ありがとう。」そう言ってルドルフは執事に微笑んだ。その笑顔に執事の胸はキュンと鳴った。今日の主人は何か違う。髪や肌の艶がいいし、肌はきめが細かく張りがある。そして全身から甘く芳しい薔薇の香りがする。「今日はいい香水をおつけになっていらっしゃるのですね。」「香水?何を言う、私はそんなものはつけていないぞ。」「ではその香りは一体?」「香り?何のことだ?」ルドルフは首をかしげながら朝食を食べた。一体何のことだろう。朝食を食べ終えて身支度を済ませてリビングに入ると、そこにはユリウスが新聞を読んでいた。「おはよう、ユリウス。」そう言ってルドルフは両腕をユリウスの首筋に回した。「おはようございます、ルドルフ様。昨夜はよく眠られましたか?」「ああ・・」なんだろう、ユリウスを見ているとなぜか体が熱い。「ユリウス、今日は仕事を休みたいんだが・・」「何をおっしゃいます、皇太子様のお世話係のほかにあなたは26連隊の大佐なんですから、ちゃんとお仕事をなさってください。」「仕事なんか、どうでもいい。」ルドルフはそう言ってユリウスをソファに押し倒した。「ルドルフ様・・?」いつもとは違うルドルフの様子に、ユリウスは戸惑いを隠せなかった。 むせ返るほどの甘く芳しい薔薇の香りが、ルドルフの全身から漂い、ユリウスの鼻を刺激した。
2007年10月26日
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「ねえカエサル、兄様が宮廷であのクソ生意気なガキのお世話をすることになったわよv」宮殿にほど近い邸の中で、そう言ってアフロディーテはカエサルに微笑んだ。「そうですか・・困ったことになりますね。」「困ったことって、なぁに?あ、わかった、受胎期のことね!」「そのとおり。」カエサルはそう言って眼鏡を押し上げた。始祖魔族―ルドルフとアフロディーテには、それぞれ活動期、受胎期、昏睡期、3つのサイクルがある。特に受胎期は20年に一度しか巡ってこない大切な時期で、この時期は男女関係なく妊娠・出産ができる時期でもある。だが始祖魔族が妊娠・出産すると、2人のうち一方が死に、もう一方が力を失い40年の眠りに就くこととなっている。この時期を逃すとチャンスがないため、始祖魔族および魔族達は伴侶探しで忙しくなる。始祖魔族の1人であるアフロディーテの体内では受胎期を迎えると大量の性フェロモンを放出する。それはルドルフも同様である。だがそのフェロモンは魔族のみならず人間まで誘惑するため、一度間違いを犯すと取り返しがつかない事態となる。「アレクセイ様はソロモンの末弟に当たる魔族。皇太子様の放つ強烈なフェロモンに果たして耐えれるのかどうか、心配です。」「あの子なら我慢できずに兄様押し倒しちゃうわね。」アフロディーテはそう言って紅茶を飲んだ。その頬はばら色で上気しており、髪と肌の艶がよくなっている。「ねぇカエサル、お願いがあるの・・」アフロディーテはカエサルにしなだれかかり、熱で潤む蒼い瞳でカエサルを見た。「なんでしょう?」「あのね・・こんなことを言うのは恥ずかしいんだけど・・お前の子どもが欲しいのv」カエサルはクスリと笑って、慈愛に満ちた目でアフロディーテを見た。「そんなことなら、お安い御用ですよ。」彼はそう言って、アフロディーテをお姫様抱っこしてベッドへと運んだ。あとがき始祖魔族(アフロディーテとルドルフ様)には子どもができる時期、「受胎期」というものがありまして、20年に一度しか来ないという大事な時期なのですが、もしアフロディーテとルドルフ様が出産するとどちらかが死んでしまうという複雑なものなのです。フェロモンを放出するのは、動物と同じように子孫を残すための動物的本能としてです。次回は受胎期を迎えたルドルフ様を書こうと思っています。
2007年10月26日
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カフェでルドルフ達が働いて3日が経ったある日のこと。ルドルフをホテルでナンパした男が2人の前に現れた。「お前、しつこいな・・」そう言ってうんざりした様子で男を見るルドルフ。「へぇ~、あんた黒髪の彼氏いたんじゃん。マジイケメンだねぇ~」男はユリウスに名刺を差し出した。「俺、皇太子様の従者なんだけどぉ、今皇太子様の世話係探してる最中なの。一昨日あんたのこと皇太子様に報告したらさぁ、会わせろってしつこいんだよねぇ。」「ユリウス、さっさと仕事に取りかかろう。」ルドルフは男を完全無視してユリウスの肩をポン、と叩いた。「その話、お受けいたします。」ユリウスはそう言って男に微笑んだ。「ユリウス、本気なのかっ!あんなちゃらちゃらした男、信用できんっ!」「でも宮廷で働けばあなたが望むセレブな生活に戻れますよ?」「うっ・・」確かに、あんなボロ家よりもマシな家に住めるかもしれない。でも、何だか嫌な予感がするのだ。だがー「そうだな。」ルドルフとユリウスは男に連れられ、皇太子の部屋の前に立った。「皇太子様、彼をお連れいたしました。」さっきまでチャラチャラした男の口調が、堅い口調へと変わる。「入れよ。」ドアが開き、中には10歳前後の軍服姿の子どもが座っていた。「皇太子様、こちらが例の彼でございます。隣は、彼の連れです。」「ふぅん・・」アレクセイはそう言ってルドルフとユリウスを見た。その途端、ビビビッと来た。「ねぇ、僕と今からいいことしない?」アレクセイはルドルフの顎を掴んで言った。「いいこと?どんなことだ?」「色々あるよぉ~、鞭で打たれたり、縛られたり、外でしたりねv」儚げな外見とは裏腹に、アレクセイの口からは過激な言葉が次から次へと飛び出てくる。「優しくしてあげるからさ、今からしようよv」「生憎だが、私は打たれるより打つ方が好きでな。」ルドルフはそう言ってアレクセイを睨んだ。あとがきアレクセイとルドルフ様の出会いです。ルドルフ様はSでしょうね、きっと(意味不明)。
2007年10月26日
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「何で私がこんな目に・・」そう言ってブスッとするルドルフ。「仕方ないでしょう、生きるためには働かなきゃいけないんですから。」そう言いながらユリウスは窓拭きをしていた。ホテルを追い出され、ルドルフとユリウスは市内のカフェで住み込みで働くこととなった。司祭となる前に色々とアルバイトをしていたユリウスは慣れていたが、いままで人に傅かれ、頭を下げられる側にいたルドルフにとって、接客業は向かず、主に裏方の仕事に回っているのだった。「それにあんなボロ家に住むなんて・・あんな、ネズミの巣に私が・・」そう言ってルドルフはため息を付いた。「“いつまでも、あると思うな親と金”ですよ。雨露を凌げる家があっていいじゃないですか。」「良くない、良くないぞっ!なんだあの部屋の広さはっ!スイス宮にある私の部屋の半分以下じゃないかっ!」「ホーフブルクと庶民のアパートを比べないでくださいよ。それよりも仕事してください。」「お前・・ホーフブルクにいた時はおとなしかったのに、今では私に意見するようになって・・」ルドルフはユリウスを睨みながら窓拭きを再開した。「絶対にこんなところから抜け出してやる・・ホーフブルクよりいい家に住んで、服も毎日新調して、風呂も毎日入って・・」「口よりも手を動かしてくださいよ。」「ったくああいえばこういう・・」不平不満ばかり言っているルドルフだが、本当はユリウスがいるから何も不満はない。しかし皇太子時代のライフスタイルが身についてしまったため、今の極貧生活とどうしても比べてしまうのであった。「今日もお仕事、頑張りましょうね。」「ああ・・」あとがき私的にはルドルフ様は接客業は向かないんじゃないかと思うんですよ。プライド高いから。それに人に頭下げるよりも下げさせるタイプだし。シンプルライフは次で終わります。
2007年10月26日
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ルドルフとユリウスは、サンクトペデルブルクの最高級ホテルのスイートに落ち着いた。「これから家探しですね。長くは住まないし、内装にはあんまり拘らなくてもいいですよね?」ユリウスはそう言ってベッドに大の字になって寝ているルドルフに話しかけた。「私はボロ家に住むのは御免だぞ。古くてもいいから、一等地の家に住む。」「そんなことだろうと思いました。」ユリウスはベッドに腰を下ろしてため息を付く。「でもこんな時代ですし、豪邸に住むのは難しいかもしれませんよ?」「その時は、その時さ。」ルドルフはそう言ってニヤリと笑ってベッドから降りた。「下のカフェに行って来る。ここのルームサービスは最悪だ。」「私もお供いたします。」「お前は家探しを頼む。そういうことはお前の方が頼りになるから。」「わかりました。」ルドルフは下のカフェに入り、熱々のコーヒーとビーフストロガノフを頼んだ。料理を待っている間、駅でコートをやった子どものことを思った。あのコートはフランツが成人祝いにくれたものだったが、あのコートの他に10着くらいにたようなものがある。皇族としていままで贅を尽くしてきたルドルフは、物に対する愛着心が皆無に等しかった。コートにしろスーツにしろ、望めば何着でも作れる。黒貂のコートをやったくらいで、どうということもない。そう思いながらコーヒーを飲んでいると、誰かに肩を叩かれた。「ねぇねぇ、君宮廷で働かない?今さぁ、皇太子様のお世話係探してんだけどぉ、皇太子様は面食いだからぁ~、きっと君のこと気に入るんじゃないかなぁ~?」振り返ると、語尾を上げて話す気障な男が自分に話しかけている。「それに君ぃ、貴族っしょ?宮廷なら就職先いっぱいあるからおいでよ~」男はそう言ってルドルフの左手薬指を見た。「所帯持ちでもうちは全然大丈夫。毎日8時間労働で残業なしだしぃ、土日とか連休とか、休暇とか休みあるしぃ。家族サービスとか全然OK。それに、出会いもあるしぃ~」こめかみに青筋を立てたルドルフは、男に零度の微笑みを浮かべながら言った。「バツイチですから。」「あっそ。じゃあ皇太子様にピッタリだ。」男は空気が読めないのか、ルドルフの腰に手を回した。「皇太子様はぁ、バツイチとかなんかワケあり系が好きなんだよねぇ。それにぃ、イケメンだと何かと優遇してくれるよv」「・・気安く私に触るな、この下郎。」 堪忍袋の緒が切れたルドルフは、男の急所に強烈な膝蹴りを喰らわし、カフェを去っていった。あとがきルド様、アレクセイの従者にナンパされる。次回から、ルドルフとユリウスの「シンプルライフ」が始まります。
2007年10月26日
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1916年12月、ロシア帝国・サンクトペテルブルク。 300年の永きに渡りロマノフ家が支配するこの帝国は、ハプスブルクが支配するオーストリア同様、斜陽の時期を迎えていた。その影響か、街中には路上生活者やストリートチルドレンが多く、彼らは自動車を乗り回す貴族達に物乞いをする日々を送っている。過去に何度かロシアと対立し、オーストリアをロシアから救おうとしたルドルフは、この帝国の現状を見て驚いた。エカテリーナの治世より、広大な領土を治めてきたロシア。だが北の帝国の栄華は近い。「ルドルフ様?」駅の売店でピロシキを買ってきたユリウスは、凍死寸前で路上に蹲る子どもを見ていた。「ユリウス、ちょっと待っていてくれないか?」「ええ。」ルドルフは子どもの方に歩いていき、皇太子の頃よく愛用していた黒貂のコートを脱ぎ、子どもの肩に羽織らせた。「ありがとう!!」子どもはそう言ってルドルフに微笑み、元気よく路地を駆けていった。「あれはあなた様が大事になさっていた・・陛下から賜ったコートですよ。」「あれの代わりならいくらでもある。それにあの子はいずれロシアの未来を築く存在だろう。」「そうですね・・」オーストリアの元皇太子は、こうして北の帝国に降り立った。その頃、宮殿では-「ちょっとぉ、まだ僕の新しい世話係見つからないのぉ?」そう言ってロシアの幼き皇太子・アレクセイは従者を睨んだ。「まだ見つかっておりませんが、見つけ次第殿下には・・」「さっさと見つけてよね。お母様なにかとうるさいし、そろそろ新しいおもちゃ欲しいしさぁ。今から街行ってイケメン見つけてキャッチして来いよぉ。」20代前半の従者は、「わかりました」と頭を下げて、部屋を出ていった。あとがきロシア編、スタートです。ロマノフ朝末期のロシアと言えば、ロシア革命は外せません。その前に、第3部で少し出てきたソロモンとオルフェレウスの出番を増やさなくては。そしてロシア編では、新キャラが登場します。変態美形魔術師・ラスプーチンと、変態皇太子・アレクセイです。アレクセイは表では病弱で純真無垢な皇太子ですが、裏はルドルフ様に負けず劣らずの策略家で、俺様な子です。
2007年10月26日
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