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2019.05.15
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​​ ベネディクト・エルリングソン 「たちあがる女」シネリーブル神戸
 ​連休に出かけることを嫌がっていると、いつも出掛けるどの映画館もプログラムが一週間トンでしまって、これは好きかもと思っていた映画がみんな終わってしまう。
​「ああ、終わってまうやん。しゃあないなあ、出かけるか。よし、いくぞ!」 ​​
​  漸く重い腰を上げて、立ち上がるゴジラ老人。たどり着いた シネリーブル神戸 。​
​  いきなり、
ここはアイスランド!
 ​ という風景が広がる。全く樹木のない平原。草原ですらない。鉄塔だけが人工物で、送電線が空にくっきりと線を引いて、ずっと向うまで区切っているように見える。​
 女が青空に向けて矢を放つと、送電線に火花が散って、矢が落ちてくる。騒ぎが始まる。
 なぜか女のそばにはいつも楽隊がいる。ピアノ。ドラム、ラッパの三人組だ。その上、彼女は町のコーラスの先生らしい。そういうわけで、映画には、地味だがなかなかな音楽がずっと流れている。それがこの映画の雰囲気というかムードを作っていて、悪くない工夫その一。
 騒いでいるのは、電気を止められたアルミニューム工場の工員。なんと中国資本と提携している資本家。開発至上主義・成長経済至上主義の政治家。アホメディア。最後はテロのせいで物価が上がると信じる市民。
  この辺はグローバリズムや拝金主義、マスメディアの誘導するおバカ社会も描かれているというわけで今風です。
 女は50歳になろうかという独身のおばさんだが、実に元気。歌は歌うし、泳ぐは走るは、自転車も自在で車も平気。その上、できれば、母親になりたいと思っている。
​​​「元気ですな。そうか、子供を育てたいんや。」​​​
​​   そこにウクライナから両親を失ったの少女の母になる話が舞い込んでくる。ウクライナの孤児の母になる女がひるむわけにいかない。母になる前に決定的な勝負に出る。ビラを撒き、とうとう、爆薬まで用意する。
​​​「おいおい大丈夫かいな。そんな覆面通用せんやろ。そんなん、すぐ捕まるで(笑)。」​ ​​
 ところがどっこい、みごとに鉄塔を爆破。こうなると、政府、警察はもちろん、CIAまで頑張り始める。追いかけてくるのはヘリコプター、今評判の無人自動運転ドローンとかいう飛び道具。
 熱感知レーダー搭載の最新型ドローンがいきなり襲い掛かってくる。ここが実力の見せ場とばかり、女がドローンを弓矢で撃ち落とすシーンはなかなか痛快だ。
  まあ、あれや、これや、007もかくやという逃避行の末‥‥。基本、ご都合主義なのだが、そのコミカルな雰囲気の中で、女が大奮闘するアンバランスが二つ目の工夫かな。
 圧倒的包囲網の中で彼女を助ける人もいる。荒野の羊飼いのおやじ、そのうえ、なんと、双子の姉(ちょっとご都合主義かもしれない)、政府中枢に勤める彼氏(まあ、これも、ちょっとねえ?)。そうはいっても、羊飼いのおやじとムクムクした犬、なかなかいい。
 いろいろあって、結局、囚われの身となるのだが、今度はなんと脱走。
「うん、ちょっと無理ありまんな(笑)。前近代の警察でんがな。でも、まあ、ここで終わるわけにはいきまへんわな。」​
​ 警察から逃げ出して、やってきたのは、ウクライナ。飛行機を降りると、いきなり発電所が見えて(やっぱり!これは予想してた。)、それから少女のもとへ。少女があどけないのがまたいい。
​​​ ​「さて、これからどうしまんの?」
​ ​ そう思ってみていると・・・・。
 洪水で水浸しになっている道路を女と少女を乗せたバスはどんどん進んで行く。もう、これ以上という所で、運転手がギブアップ。女は少女を抱っこしてバスを降りる。二人は水があふれる道路を渡っていく。 ​​
映画が終わる、この最後のシーンにアゼン!
 アイスランドのツンドラ平原。送電線。鉄塔。弓矢。火花。羊の皮。羊飼い。氷の洞窟。チェルノブイリ。洪水。・・・・。
​「なんか、怪しげやな。 アッそうか。これは環境保護テロの英雄譚とはちゃうな。あの女の人は、原子力の火に焼かれて、箱舟も失った人類の救い主いうわけや。そんで「たちあがった女」の受難の神話やできっと。最後のあのシーンがカギなんや。 ホンマかいな?ヨーロッパの人が思いつきそうな話やな。」
「まあ、何はともあれ歩いて帰ろう。結構ええ天気やし。そうや、大丸の裏から神戸まで行ってみよ。あの女の人も、泳いだり走ったり頑張ってたしな。」
 監督・脚本 ベネディクト・エルリングソン
 製作 マリアンヌ・スロ  ベネディクト・エルリングソン
    カリネ・ルブラン
 キャスト
 ハルドラ・ゲイルハルズデッティル(一人二役:ハットラ・アウサ )
 ヨハン・シグルズアルソン(羊飼いズヴェインビヨルン )
 ヨルンドゥル・ラグナルソン(はた迷惑バルドヴィン)
 マルガリータ・ヒルスカ(ウクライナの少女ニーカ)
 ビヨルン・トールズ(首相)
 原題「Woman at war」2018年
 アイスランド・フランス・ウクライナ合作 101分
 2019・05・18シネリーブル神戸(no4)
​追記2019・10・31​

​​ 秋になって、 パルシネマ が上映している。なんかうれしい。不思議な明るさが印象的な映画。やっぱ、ラストシーンはびっくりすると思いますね。
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最終更新日  2024.05.11 11:21:43
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