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2020.04.04
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​​​​​ ​​ テンギズ・アブラゼ「希望の樹」元町映画館
映画com
 グルジアの名匠、 テンギズ・アブラゼ 「祈り」三部作 の第二作。 「希望の樹」 を見ました。
「懺悔」、「祈り」、「希望の樹」 の順番で見たのですが、 「懺悔」 で、なるほど、そういう戯画化と風刺を狙った映画監督かと少し高を括りました。
 ところが 「祈り」 で打ちのめされてしまいました。抽象度が高くて付いていけていない、わからん、そんな感じでした。
 でも、 「希望の樹」 で少し希望を取り戻しました。ちょっと、わかったような気がするとでもいえばいいのでしょうか。もっとも、これらのシリーズが「三部作」と銘打たれている理由は、イマイチわかっていません。
「祈り」 は、いわば抽象、光と闇を交差させた詩的なイメージの連鎖のような映像が心に残る作品でしたし、 「懺悔」 は、寓話性が如実に表現されている映画で、映画の中で展開される「物語」が現実社会の「戯画」として描かれている印象を強く持ちました。ただ、その中で愚かしい独裁者のシンボルと、抵抗する人間のシンボルである墓を暴く女性に対して、教会への道を探す老婆の存在が何を意味していると受け取っていいのか、腑に落ちたとはとても言えません。
 社会と人間に対する映像作者の眼差しが、ある種の共感を持ちながらも、滑稽さや痛快さとともに、「人間」という存在の哀しさ、愚かしさを、批評的に見据えているという印象が記憶に刻まれる体験でした。
 さて 「希望の樹」 です。
 真っ赤な芥子の花が一面に咲き乱れる草原に少年と横たわった馬がいます。老人が現れて少年に馬を殺すこと命じます。それが始まりのシーンでした。​​​

 村の長である同じ老人が、掟を破った女性を、泥でぬかるんだ暗い道を引きずりまわし、死を宣告する。それが最後のシーンでした。
 新しい社会を主張するアナーキスト、 「希望の樹」 を探す夢想家とその娘、美しい少女と貧しい少年の恋。それが、美しい芥子の花が咲き乱れるこの村で抹殺され、滅びてゆくものです。
 明らかな風刺、サタイアとして描かれている世界なのですが、ぼくには笑えませんでした。それは、おそらく、この惨たらしくも「美しい」世界が、決して過去や他国の比喩ではない緊張感で襲い掛かって来たからだと思います。
 先に見た 「懺悔」 で、失われた「教会」への道をとぼとぼ歩いて去ってゆく老婆に対する共感と、この映画で、一応、主人公のように扱われている若い二人の「恋」を断罪する、村の長である老人への、ある種、絶望的な反感がぼくのなかでぶつかり合いました。
 二人は同じものの裏表であることは明らかなのですが、ぼく自身の中で、この反感と共感の共存している理由を解かない限り、少女の処刑を指揮する「村の長」を断罪することができないことを厳しく問いかけた映画でした。
 それにしても、考えてもわかりそうもないのですが、考え続けざるを得ない、大きな問を突き付けた三部作だったと思いました。

 監督 テンギズ・アブラゼ
 原作 ギオルギ・レオニゼ
 脚本 レヴァズ・イナニシュヴィリ テンギズ・アブラゼ
 撮影 ロメル・アフヴレディアニ
 音楽監修 ビジナ・クヴェルナゼ ヤコブ・ボボヒビ
 キャスト
  リカ・カヴジャラゼ(聖少女マリタ)
  ソソ・シャチヴリアニ(牧童ゲディア)
  ザザ・コレリシュヴィリ(金持ちの息子シュテ)
  コテ・ダウシュビリ(長老ツィツィコレ)
  ソフィコ・チアウレリ(放浪の日傘の女プパラ)
  カヒ・カフサビ(革命の予言者イオラム)
  オタル・メグヴィネトゥフツェシ(希望の樹を探す夢想家)
  テミナ・トゥアエヴァ(胸の大きな娘ナルギザ)
  1976年 ジョージア カラー 107分
  2019・11・08・元町映画館no39
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最終更新日  2023.12.17 22:22:30
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