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予告編を見て即決した映画でした。お目当ては ジュディ・デンチ
です。彼女を初めて見かけたのは 007
の映画
でした。イギリス諜報部 M
の親玉という役柄だったでしょうか。つい最近では 「シェークスピアの庭」
でシェークスピアの妻を演じていて、感心しました。
言い方が偉そうですが、仕事をやめて映画館を徘徊し始めて 2
年になりますが、漸く顔を覚えて、スクリーンでその姿を追いかけたい俳優さんが何人かでき始めたのですが、その一人がこ映画 「ジョーンの秘密」
の主人公を演じる ジュディ・デンチ
です。この映画では諜報部 M15
の取り調べを受けるスパイの役のようです。
落ち着いた住宅のリビングでしょうか、テーブルで新聞に見入っている老女が映し出されます。外務省の役人の死が報じられている記事に関心があるようです。そうこうしていると庭先に誰か来たようです。
怪訝とも、確信ともとれる表情が映し出されます。お目当ての ジュディ・デンチ
です。映画が始まりました。
50
年以上昔のスパイ容疑の取り調べが始まります。核兵器開発の研究所の現場にいた、若き日の ジョーン・スタンリー(ソフィー・クックソン)
の行動を、今や、研究者だった夫に先立たれ、一人で暮らす、 老いたジョーン
が思い出していきます。隣に付き添うのは弁護士をしている 息子のニック(ベン・マイルズ)
です。
チラシの写真はスクリーンの ジュディ・デンチ
とは少し違います。スクリーン上の彼女は 「老い」
を隠そうとはしていません。
次々と暴かれていく若き日の「罪」の前にさらされ、ついには、最愛の息子からも疑いの目を向けられる 老婆ジョーン
を演じ続ける ジュディ・デンチ
の姿は見ごたえがあります。まあ、女優自信が高齢ではあるんですが、そこが演技なのですね。
物語は、恋愛を餌にした KGB
の罠にからめとられていることを、彼女自身、気付きながら、それでも国家機密を漏洩した理由は何かというところに焦点化されてゆきます。
若き日のスパイ行為を諜報部の捜査員たちは着々と暴いてゆきます。 息子ニック
の疑惑の眼差しは、次第に冷たく彼女を刺し貫きはじめます。
しかし、 彼女
はウソをつかねばならないことは何もないとばかりに、恥じることのない自らについて、こう言い放ちます。
「あなたは信念に従って生きてるでしょ。私も同じよ。」
ぼくにとって、この映画が語りかけてきた最も心に残った言葉です。
「個人」の生き方を支える信念が「国家」の利益に優先する生涯
を生きてきたというのです。
彼女
の 「信念」
が、具体的にどのようなものであったのか、それは映画を見ていただければわかります。その信念への賛否は人それぞれかもしれません。
しかし、ちょっと大げさなことを言いますが、近代社会が 「個人」の平等と自由
を尊重するために選んだ 「国民国家」
というシステムが、今、国家の側に大きく傾こうとしています。そういう世相を考える、一本の道筋のようなものをこのセリフは暗示してはいないでしょうか。
映画は、 「国家反逆罪」の罪人
に対して悪意に満ちた記者たちが集まった会見の場での、 老ジョーン・スタンリー夫人
のスピーチで幕を閉じます。
ジュディ・デンチ
の意志的で明瞭なセリフ回しと、 「確信」
にみちた美しい表情が、そのシーンまでの 「困惑」、「絶望」、「苛立ち」
そして 「老い」
の表情を一掃するかのような、耳と目に焼き付くという印象でした。
クライマックスには、やはり、ちゃんと化けるのです。
もっとも、そこまでの老婦人ぶりこそ化けていたのかもしれませんが。
演劇的で、女優の長い経験を感じさせ、なんというか、見えを切ってみせたような名場面だったと思います。
若い ソフィー・クックソン
も、まっすぐな表情の好演でしたが、やはり今日は ジュディ・デンチ
でした(笑)。
監督 トレバー・ナン
製作 デビッド・パーフィット
原作 ジェニー・ルーニー
脚本 リンゼイ・シャピロ
撮影 ザック・ニコルソン
美術 クリスティーナ・カサリ
衣装 シャーロット・ウォルター
編集 クリスティーナ・ヘザーリントン
音楽 ジョージ・フェントン
キャスト
ジュディ・デンチ(ジョーン・スタンリー)
ソフィー・クックソン(若いジョーン・スタンリー)
スティーブン・キャンベル・ムーア(マックス・ディヴィス教授)
トム・ヒューズ(ロシア人・レオ・ガーリチ)
ベン・マイルズ(息子ニック)
2018
年・ 101
分・ PG12
・イギリス原題「 Red Joan
」
2020
・ 08
・ 07
シネリーブル神戸no62
追記2020・08・08
「シェイクスピアの庭」
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