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2020.08.28
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​ワン・シャオシュアイ「在りし日の歌」シネ・リーブル神戸​

​​​​​​  1980年頃 からでしょうか、 中国 からやってくる、 パンダ の名前が 「ランラン」 とか 「カンカン」 とか、どうして二文字の繰り返しなのか不思議でした。もっとも、ぼくは パンダ と出会ったことが一度もありませんから、それほどのこだわりはありませんが、この映画を観ていてわかりました。子供の愛称だったんですね。​​​​​​
​​​​​​​​​​ この映画には ​「シンシン」​ ​「ハオハオ」​ という二人の同い年の少年が登場します。双子のように誕生日まで一緒です。親同士も仲良しです。親友といってもよさそうです。見たのは ワン・シャオシュアイ監督 「在りし日の歌」 です。
 1980年代でしょうか、子供の誕生日、一つのケーキを二人の子供が一緒に吹き消し、大人たちが破顔一笑するシーンがこの映画の始まりでした。
 チラシの食卓シーンは、その少年の一人 ​「シンシン」 ​の家族の 「在りし日」 の写真です。食卓には炒め物と包子、茹でピーナツとスープと饅頭があります。夕食です。機械工の 父親ヤオジュン は酒を飲みます。白酒、日本で言えば焼酎です。工場で働く 母親のリーユン は左利きです。 息子のシンシン は紅衛兵の赤いリボンをつけています。もちろん一人っ子です。
​​​​​
​​​​​ 写真の貧しいながらも穏やかな夫婦の生活に、最初に入る亀裂は リーユン が二人目の子供を身籠ってしまうことです。 「命令」 なのか 「自粛」 なのか、 「一人っ子政策」 の政治的スローガンがBGMのように流れてきます。
​​​ 血相を変えて彼女を病院に連れて行くのは 「ハオハオ」 の母親 です。親友だったはずの女性でした。職場の上司として命令する 「親友」 のことばに ​リーユン​ は堕胎を余儀なくされ、出血が止まらない手術の失敗で二度と身ごもることができないことが暗示されます。
​​ 二つ目の亀裂は元気者の友達 「ハオハオ」 と遊んでいた、引っ込み思案の 「シンシン」 が、水辺の事故で命を落とすことです。
​​ 父親の​ リウ・ヤオジュン は息子を担いで病院へ走ります。しかし、息子を助けることはできませんでした。
​​​ 二つの亀裂が原因なのでしょうか、 二人 「友人・知人」 「住み慣れた町」 を捨て南の町へ流れてゆきます。​​​
​ 言葉も通じない、友人もいない、誰も 二人 のことを知らない海辺の町で、働き、雨が降れば床が水浸しになる住居で暮らし続けます。​
​​ 故郷を捨てた二人 は、その町で ​シンシン の身代わりでしょうか、男の子を養子にして育てています。​
​​​​​ 三つ目の亀裂は、年頃になった 養子の男の子 二人 のもとから去って行くことでした。 ヤオジュン は、 姓の違う「身分証明書」 息子 に渡し、親でも子でもない関係、独立を認めます。
​​​​ 義理の息子 が去った家の食卓に、隠されていた 昔の写真 が置かれています。あのチラシの写真です。暗い食卓の上の明るい家族の写真が載っています。 夫婦 はもう若くありません。
​​​​​​​​​​​​ ​​ ヨン・メイ  という女優さんが演じる 妻ワン・リーユン と​​​​、 ワン・ジンチュン の演じる 夫リウ・ヤオジュン 夫婦の物語 でした。
 失礼ですが、二人の俳優ともう一度​​ ​​​ どこかで出会ったとしても、ぼくには、それがあの夫婦だったと気付くことはないでしょう。目立たない、何とも言いようない 「普通の人たち」 でした。​
 にもかかわらず、見終えて何日もたちましたが、和解したのでしょうか、家を去った男の子からの携帯電話に、
二人が代わる代わる出るラストシーンが浮かび上がってきて涙が止まりません。​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​

​​​​​​​​ 映画は 「子ども」 をうしなった ​母リーユン​ ​夫ジンチュン​ と過ごした 30数年の日々 を描いていました。
 3時間という長丁場の中で、 二人 以外の登場人物たちはさまざまに語り、意見を主張するのですが、 二人 はほとんどしゃべりません。表情も大きく動きません。特に、主人公である女性は、この映画で一番セリフが少ない役であるにもかかわらず、確かに主人公でした。
​リーユン​ が一度だけ、涙をポロポロこぼすシーンが浮かんできます。堕胎を強要され、一人息子を失い、永遠に誰の「母」であることも出来なくなった涙でした。夫の ​​ ジンチュン ​​ はなすすべなく、黙って妻の腕を掴むだけです。
 寡黙な ​リーユン​ ​​​​​​​​
が一度だけ意思をはっきりと口にするシーンがありました。
​​​​​​​

​​​ 「あなたが離婚を望むなら、私は受け入れます。」​​ ​​

​​​​​  ​夫の ​​​​裏切り を予感した ​リーユン​ のセリフです。ぼくは、正直ギョッとしましたが、夫の ​ジンチュン​ は不倫を見通されていることを知り呆然としていました。たたみかけるように、 ​リーユン​ の自殺のシーンが映り、 ​ジンチュン​ は命を絶とうとした妻​​ ​を、あの、一人息子 ​シンシン​ の事故の時のように、無我夢中で担ぎあげ、文字通り、懸命に走ります。​ ​​​ ​​
​ 映画の終盤に二人は、捨てた北の町に戻り、 死んだ息子の墓 に詣でます。20​ 数年ぶりでしょうか。
​​  母親 は墓に供えた蜜柑を食べ、 父親 はあの頃のように白酒を飲みます。 ​「在りし日」​ の写真の食卓のまま、息子の墓を間にして二人は座っています。​​
 二人は見つめ合ったりするわけではありません。ただ、ボンヤリと街の風景を見ているだけです。
 二人の目の前には ​「在りし日」​ とは様変わりした北の町が​​​​​​​​​​
​​​​スモッグのなかで霞むように広がっています。文化大革命の失敗以来、 「共産主義」的「資本主義」体制 という、摩訶不思議な 「国家資本主義」 ともいうべき経済政策が作り上げた 「新しい町」 がそこに在りました。​​​​​

 年を取ったのでしょうか、こういうシーンが、かすかな「憤り」の気分を湧きあがらせながら、心をとらえて離しません。
​​​​ あの時、 堕胎を迫った友人 は、大きなお屋敷の奥様として、南の町から臨終の場に駆け付けた リーユン ​に詫びながら 「しあわせ」 に息を引き取ります。​​​
「妊娠」の責任を押し付けるためだったのでしょうか、 ジンチュン ​を不倫に誘った女性は白人との混血の少年を育ててアメリカで暮らしています。​​​

​​​  シンシン を水辺に突き落した少年は、自らの過ちを リーュン ジンチュン に告白する誠実な医者になっています。​​​
​ ​​​みんな、自分の生活を懸命に守り続けて、今があるのです。誰ひとり、 主人公の夫婦 を不幸に陥れようとした人はいません。​
​​ しかし、それならば、なぜ、 「普通の生活」 を生きてきた リーュン ​​​はこんなに寂しく孤独な人生を送らねばならなかったのでしょう。​​
​​​​ これが、この映画がぼくに問いかけた 「問い」 でした。​映画を見てから、考え続けていますが、うまくいえる答えはわかりません。しかし、正しいかどうとか、立派かどうかとか、そういうことは知りませんが、 ​​

​リーユンの生活こそが「普通の生活」だ ​​

​  ということはわかります。​
 エンド・ロールに「中国電影局」の上映許可の​マークが映し出されるのを見ながら感じた違和感は、今でも感じ続けています。
 映画に描かれた リーユン とその夫の人生の姿は、明らかな社会批判だと思うのですが、そんなことは歯牙にもかけないのが、中国に限らず、現代の社会なのでしょうか。​​​
  監督 ワン・シャオシュアイ
  製作 ワン・シャオシュアイ
  脚本 ワン・シャオシュアイ  アー・メイ
  撮影 キム・ヒョンソク
  音楽 ドン・インダー
  キャスト​

     ワン・ジンチュン(夫 リウ・ヤオジュン)
     ヨン・メイ (妻 ワン・リーユン)

     ワン・ユエン(二人の息子シンシン:リウ・シン)
     シュー・チョン(友人 シェン・インミン)
     アイ・リーヤー(友人の妻 リー・ハイイエン)
     ドゥー・ジャン(友人の息子ハオハオ:シェン・ハオ)
     チー・シー(シェン・モーリー)
     リー・ジンジン  ( ガオ・メイユー)

     チャオ・イエングオジャン​​(チャン・シンジエン)​​​​​​​

   2019 年・ 185 分・中国
 原題「地久天長 」英題「 So Long, My Son
 2020 06 16  シネ・リーブル神戸no64

​​追記2020・08・27
 映画館で見てから、二月以上も立ちますが、感じたことをうまく言葉にすることができません。
 たとえば、新コロちゃん騒ぎで、実際に肺炎を患い苦しみぬいて命を落としている人がある筈ですが、マスメディアから聞こえてくる「ことば」はそういう、確かな現実をあっという間に忘れていくようです。

 神戸の地震の時でもそうでした、笑いながら肉親の骨を探していた人と実際に出会うという体験は、ぼくのその後の考え方の底に残っていますが、やはり、忘れてはいけないことというのはあるのではないでしょうか。
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最終更新日  2024.01.04 23:12:04
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