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フェリックス・デュフール=ラペリエール「ヴィル・ヌーヴ」アートヴィレッジ
不思議な印象が、静かに残りました。まったく初めて見るタイプのアニメーション映画でした。たしかに「物語」を描いてはいるのですが、淡いモノクロの映像ということのせいもあると思うのですが、物語の輪郭が定めがたい印象で、どんな話だったのかを語ることが難しい作品でした。
カナダの監督
らしいですが、 フェリックス・デュフール=ラペリエール
という人の 「Ville Neuve」、「新しい町」
と訳せるようですが、という、 白黒のアニメーション映画
でした。
海辺の一軒家を借りて住み始めた中年の男が、かつての妻だった女性に電話をかけます。彼が詩人であることはよくわかりませんが、物書きであることはわります。離婚の理由の一つは、男のアルコール中毒だったようですが、彼は、今、何度目かの「禁酒」の最中のようです。
越してきた、海辺の一軒家に「訪ねてきてほしい」というのが、男の電話の要件なのですが、それが、うまく言えないのが、この物語のだいじなところです。
妻であった女性は、何度かの電話でのやり取りの後、この海辺の家にやって来ます。二人の間にある「齟齬」が解決したわけではありませんが、その女性が、その場所、 「新しい町」
へやって来たことには、それなりに、女性の内面を語っていると思いました。
こう書いていると、老年にさしかかった、元夫婦の「やり直し」の話のようですね。確かにそうなのですが、この二人の関係に、 カナダ
で実際に起こっている ケベック州の独立運動
の話が、鋭角に突き刺さってくるあたりから、映画そのものの「筋書」が、見ていて混沌としてくるのです。
たとえば、チラシにも映っていますが、モノクロのこんなシーンがあります。
ご覧のように、何故だか、二人の実像に対して、鏡面の絵のような、少しトーンを落とした絵が重ね合わせられています。
電話のやりとりの「遠さ」から、会話する二人の影の描写、冷たく静かな海での和解のシーンまで、アメリカの作家 レイモンド・カーヴァ―
にインスピレーションを得たという、チラシにある創作裏話に納得のいく、「アイデンティティの危機」の描き方なのですが、ここに、 ケベック独立運動
という、もう一つの、実に切実な社会的要素が重なってきて、見ているぼくは、何が何だかわからないことになりました。
「白」の地に、「黒」から、様々な「灰色」を経て、再び「白」が描かれるかに見えるアニメの画面は、ある種の頼りなさを湛えながら、どこか清潔で、極彩色のアニメにはない「心象風景」を作り出していきます。
で、最後に報告しますが、そういうシーンの連続は「眠いのです」。あたかも、催眠術をかけられたかのように、「眠り」と「覚醒」の、ゆるやかな反復の80分、話の筋がよくわからない理由は、そこにもあるのでした。
監督 フェリックス・デュフール=ラペリエール
製作 ガリレ・マリオン=ゴバン
脚本 フェリックス・デュフール=ラペリエール
音楽 ジャン・ラポー
ロバート・ラロンド
ジョアンヌ=マリー・トランブレ
テオドール・ペルラン
ジルドール・ロワ
ポール・アーマラニ
2018年・76分・カナダ
原題「Ville Neuve」
2020・12・05アートヴィレッジ(no12)
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