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映画監督の 是枝裕和
の対談集、 「世界といまを考える」
という PHP文庫
を見つけて、 第3巻
からパラパラ読んでいます。
「対談集」
というのが好きです。作家や哲学者の対談でもそうですが、当然、本にするに際して構成とか校正とかで整理してあるのでしょうが、小説作品や評論の文章にくらべて、 「はだかのままの言葉」
が出てきている気がして、素直に 「ああ、そうなのか」
と、気楽に読めるからです。
この本の場合、ここのところ、ぽつぽつとその作品を見ていて、印象に残っている 是枝裕和
という映画監督は何を考えているのだろうという興味で読みました。
マア、そういうと、何か考え事をしているようですが、ほんとはパラっと見たときに、作家の 川上弘美
とかマンガ家の 吉田秋生
の名前が出ていたので、そっちにひかれて読んだにすぎません。(ああ、 川上弘美
は第3巻ではありません。第2巻です)
是枝監督
の映画 「海街diary」
の原作者は 吉田秋生
で、二人の対談は2015年に是枝監督が映画化した際に 「フラワーコミック」
の掲載された対談のようです。
読みながら、面白いなと思ったのはこんなところでした。
吉田 :是枝さんは「海街diary」のなかでは「真昼の月」(第2巻)のエピソードがお好きだとお聞きしたのですが。 とまあ、こんな会話なのですが、読みながら 大竹しのぶ と 綾瀬はるか の表情が浮かんでくるような話で、そのうえ、マンガと、実写化した映画という表現の違いも面白かったわけです。
是枝 :ええ、大好きです。
吉田 :実は私も好きなエピソードなんです。幸が久しぶりに会ったお母さんと、和解したわけではないけれど、「まあ、しようがないか」と思うところが描きたかった。昔の私だったら描けなかったと思います。なんて厭な母親だろう、と思ったはず。
是枝 :映画では、そのオトナになりきれない母親役の大竹しのぶさんが絶妙で・・・・。
吉田 :母親であって娘でもある、というところを見事に演じていらっしゃいましたね。
是枝 :「出来の悪い娘で…」と大竹さんがいったときに、(幸を演じる)綾瀬さんがふっと母親を見る感じがとてもよかった。原作には「そうか、この人も娘だったんだ」という台詞があるのですが、それを口に出さずに目線だけでどれだけ伝わるかにチャレンジしました。(P59)
是枝 :「ランド」はこれまでの作品に比べると、土着というか、歴史を背負っている匂いがするのんですが、ご自分ではいかがですか。 で、話題になっている 「ランド」(講談社) の 第1巻 を取り出して、評判の悪さに納得したりなんかしていると、 山下和美 の結論はこうでした。
山下 :歴史を背負っている・・・・、たぶんそれすらも覆すと思います。
是枝 :引っ繰り返っていく?
山下 :引っ繰り返っていくと思います。人が歴史だと思っていたものが実は植えつけられていたものだったりとか、自分の過去の記憶すら当てにならない感覚だったりというか・・・。( 中略)
それをどうしたら上手く表現できるか、いま試行錯誤しています。でも、1巻の時は大変でした。編集部でも評判が悪くて…(苦笑)
是枝 :そうなんですか?(P93)
山下 :「ランド」は主人公が何に対峙すればいいのかを探し続ける話なんじゃないかな、ということで腑に落ちたんです。逆を言えば「はっきりとした敵を設定して欲しい。出ないと落ち着いて読めない」というタイプの人は「ランド」を好まない。(P93) なんだか、ちょっと耳の痛い結論です。ご存知の方はご存知でしょうが、 「ランド」 は不思議な設定の時代劇・SF(?)・ファンタジー(?)・マンガで、 是枝監督 も言っているように、土着というか、もう一つ昔というか、歴史の次元が少しずれた世界を描いていますが、現代と通底しているところがオリジナルな感じの作品です。
第一章 映画監督と語る 細田 守 それぞれ、かなり読みでがある対談です。この第3巻では 森達也 との 「ジャーナル」 な話題で話している対談が面白かったのですが、映画監督というのが、まあ、 森達也 との対談に限らず、まあ、当たり前といえば当たり前なのですが、現代社会に対してビビッドであることに、ちょっとホッとしたような次第でした。
第二章 マンガ家と語る 吉田秋生、山下和美
第三章 学者と語る 原 武史、斎藤 環、宮台真司、野田正彰、福岡伸一
第四章 演出家と語る 水田伸生、三谷幸喜、蜷川幸雄&笠松泰洋、森 達也、鴨下信一
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