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2022.02.27
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​100days100bookcovers no67(67日目)
​​ 『USムービー・ホットサンド 2010年代アメリカ映画ガイド』(グッチーズ・フリースクール編:フィルムアート社) ​ 忙しい1週間が終わり、早く行かないと見逃しそうな映画に足を運んでいるうちに、ふと気がつくと、前回の YAMAMOTOさん からすでに2週間が過ぎようとしていました。すみません。 「ぼーっと生きてんじゃないよ!」 と5歳児に叱られそうです。​
YAMAMOTOさん は、ご自身で編集に携わられた 『高等学校における外国につながる生徒支援ハンドブック~すべての生徒が輝くために~』 をご紹介下さいました。日本の高校で学ぶ外国人生徒を支援するために実践できることをまとめたこのハンドブックは、実際にそうした学生たちと接する教育現場の先生方のために編まれていて、大きな助けになるものと思います。可愛らしいイラストもふんだんに使われていて親しみやすく、門外漢の私も、外国人生徒たちに関わる教育現場の方々の一端を知ることができました。
 さて、次は何を、と考えました。 「教育」 というくくりで繋ぐことはできそうにありません。ですが、 ​「ハンドブック」​ ならいけるのではないだろうか。ハンドブック、すなわち案内書、「ガイドブック」ならば。
​『USムービー・ホットサンド 2010年代アメリカ映画ガイド』(グッチーズ・フリースクール編:フィルムアート社)​
「ホットサンド」 とはなんぞや?というのはとりあえず置いといて。
 この本に出会ったのは、昨年の12月末、 下高井戸シネマ ケリー・ライヒャルト監督 『ミークス・カットオフ』 というアメリカ映画を観に行ったときです。劇場の売店で売っていて、そのときは買わなかったのですが、先月、やっぱり買おうと思い立ちネットで購入しました。
 ご存じのように(って誰に話しかけているのか自分でも謎ですが)私はとても偏った映画ファンで、日本で公開された話題作をまんべんなく観ているわけではありません。アメリカ映画も、2010年以降は クリント・イーストウッド クリストファー・ノーラン しか観ていないといっても過言ではなく(いやまあ、過言ですが)、名前も知らない若い映画監督や俳優がたくさんいます。最近よく目にする A24 が、話題作を世に出している新しい製作会社だということぐらいは知っていますが、どんな映画を製作配給しているのか、そんなことも、もう少し詳しく知りたいと思ったわけです。
 まだ買って間もない本で、じつはすべてを読んだわけではありません。ですが、この本は頭から順番に読んでいくようなタイプの本ではなく、毎日目次を開いて 「あ、今日はここを読もう」 という読み方でOKな本です。というか、そういう読み方をするように編まれている本なのです。
​​ 編者である グッチーズ・フリースクール 降矢聡さん 「はじめに」 でこう書いています。
​​ (前略)年間何百本と作られるアメリカ映画の10年間を一冊の本で網羅するなど到底無理なお話です。そして現在では配信ドラマやバラエティ・ショーなど、アメリカ産の様々な映像コンテンツを世界中の誰もがほぼリアルタイムで体感できる環境が整ったこともあり、映画という伝統的なジャンル観がどれほど意味を持つものなのか……等々、議論は幾度となく平行線を辿りました。
やがて時間が経ち、明確な解決策が浮かばないまま、とにかく本を作ることを始めることになりました。アメリカ映画というものの定義(基準)を明確にして綿密な計算のもとで中身を充実させる方法ではなく、気になったもの、目に入ったものを片っ端から寄せ集め、見て、書いて、合わせてみるという工程を、私たちは選んだということです。(後略)
​こうした成り立ち、体裁が 「ホットサンド」 というタイトルに反映されたのだと思います。でも、映画ファンにとってはそれでいいのです。 「映画を定義する場所」 からは、映画を教授する学者や映画評論家は生まれても、映画ファンは生まれないからです。そして映画は、映画を観る人のためのものです。​
 この本を手にしたとき、私はかつて愛読した 『シティロード』 という情報誌を思い出しました。あの雑誌には、映画だけでなく音楽や演劇など、東京で触れることのできるあらゆる文化芸術の情報が溢れていましたが、 『ぴあ』 と比べると内容がよりマニアックで、書き手の好みも強く反映されていて、それによって、読者が映画ファンになり、好きな監督を見つけ、映画を発見し、映画を支えてゆくという潮流をつくったと思っています。とことん 「ファン」 と共にある雑誌でした。私はあの雑誌で 中野翠さん の文章に出会い、以来、彼女の映画評はとても信頼しています。

CHAPTER 01 ライフ/エンタメ/ヒストリー
――テーマから見る2010年代アメリカ映画
CHAPTER 02 アメリカン・フィルムメイカーズ
――2010年代の映画監督たち
CHAPTER 03 シチュエーション/プロダクション
――アメリカ映画のバックグラウンド
CHAPTER 04 カルチャー&ムービーズ
――アメリカ文化とアメリカ映画
CHAPTER 05 トーク・アバウト・ムービーズ
――2010年代アメリカ映画について語ろう
CHAPTER 06 ムービーズ・ディテール
――より深くアメリカ映画を知るための雑学
以上のようになっていますが、それぞれの章の中に多数の細かい情報が投じられ、用語の説明もあれば対談もある、映画に出てくる犯罪者の目録、年表、監督へのインタビュー、撮影監督や俳優の紹介など、どこを開いても異なるページ構成で、2010年代のアメリカ社会と映画を論じた真面目なページもあります。
 具体的に紹介しましょう。
​​  CHAPTER 01 の扉をめくると、まず最初に出てくるのが 「Town Movies2010-19 2010年代アメリカ大陸はどのように横断されたのかを検証。」 という見開きページです。アメリカ合衆国の地図が印刷され、そこに地名と2010年代のロードムービーの行程が書き込まれています。 『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』や『グリーンブック』 など、観た映画のタイトルはその行程を指でなぞり、風景を思い出してワクワクしてしまいます。最新オスカー映画 『ノマドランド』 も、こんなふうに地図上で行程を見てみると、さらに感じることがあるかもしれません。映画にとっての 「地理」 は、案外大切なものです。​​
​ 実際に見ていただくのがいちばん早いのですが、 CHAPTER 01 はこんなふうに、イラスト、表、地図、スチール写真などをふんだんに使い、記事ごとに段組を変え、構成を工夫し、カラフルにポップに、つまり、毎日ふとページを開いて昨日と違う記事を読む楽しさに満ちています。​
​  CHAPTER 02 の章では何人かの監督と作品が紹介されていて、私的にはとても役立ちそうです。 「2010年代の開拓者たち」「2010年代の新星たち」「2010年代の巨匠たち」 と3項目あるのですが、 「開拓者」 に名前が上がっている監督が私はなんとひとりも分からず、作品に当たって、かろうじて 『ア・ゴースト・ストーリー』 デヴィッド・ロウリー を認識できました。​
 「新星」 では 『ミッド・サマー』 アリ・アスター 『ストーリー・オブ・マイ・ライフ/わたしの若草物語』 グレタ・ガーウィグ を知っていましたが、 アリ・アスター は名前を知っているだけで、映画は観たことがありません。うーん。
「巨匠」 を見ると、 ロバート・ゼメキス、クエンティン・タランティーノ、デヴィッド・O・ラッセル、デヴィッド・フィンチャー、M・ナイト・シャマラン、フレデリック・ワイズマン、クリストファー・ノーラン。 ああよかった、知ってる。この人選が妥当かどうか、いろいろなご意見はあると思いますが、それはここでは触れません。ただ私は、 ディビッド・O・ラッセル 「巨匠扱い」 にちょっと驚きました。彼の映画は3本しか観ていませんが( 『スリー・キングス』『世界にひとつのプレイブック』『アメリカン・ハッスル』 )、最近のアメリカの社会事情を踏まえた映画で、ここんところよく撮っている人、という気がしていたのです。でも年齢は私と同じなので、もう十分すぎるくらいベテランなのでした。
​  CHAPTER 03 以降は論や対談が多く、まだほとんど読めていませんが、映画周辺の文化事情などにも話は及んで、かなり読み応えがありそうです。ことに対談は、見逃している映画を発掘する上で、かなり威力を発揮してくれると思います。​
 ただ、残念な点がふたつあります。ひとつは、文字が小さいこと。老眼鏡を手放せない身には、細かくぎっしりと組まれた文字を読むのはとても大変なのですが、つらつら考えてみると、私のような老人をいまさら映画ファンに仕立てる必要はなく、若い人のための本だと思えば、それでいいのかもしれません。 『シティロード』 だって文字は小さかった。しかし若い人は 「紙の本」 を手に取ってくれるのかなあ。情報だけならネット上にゴロゴロ転がっているし。この本がうれしいのは、やっぱり中高年なのかもしれない。そこは気になるところです。
 もうひとつは、索引がないこと。映画本ならば、映画タイトルと監督、俳優の索引はぜひあって欲しかった。もし改訂することがあればお願いしたいところです。
​ また長くなりました。本書の 「ホットサンド」的 な特徴に合わせたわけではありませんが、紹介もホットサンド状態です。どうぞお見逃し下さい。​
​ 編者の ​「グッチーズ・フリースクール」​ について少しだけ書きますと、日本未公開の洋画(主としてアメリカ映画)の上映会を開いたり、ソフト化したり、配給したりしている団体です。 ケリー・ライヒャルト も、この団体のおかげで日本での上映がかないました。​
 紹介してくれる配給会社がないと、アメリカ映画に限らず、永遠に知ることも観ることもできない素晴らしい洋画が地球上にはたくさんあります。それを忘れたことはありません。が、いい映画を見つけたけれどどこも配給してくれないときは、フィルムを借りて、自分たちで上映会を開くこともできるんだ、そういうことがメールでやりとりできる時代がきているんだ、ということが「はじめに」に書かれていて、映画を巡るフレキシブルな考え方に、目を開かれる思いでした。
それでは KOBAYASIさん 、お願い致します。 K・SODEOKA・2021・04・28


追記2024・04・05
 ​100days100bookcoversChallenge の投稿記事を ​​​100days 100bookcovers Challenge備忘録 ​ (1日目~10日目) ​​  (11日目~20日目)  ​​​ (21日目~30日目)  ​​​ (31日目~40日目) (41日目~50日目)  ​ ​(51日目~60日目)) ​​  (61日目~70日目) (71日目~80日目) ​という形でまとめ始めました。日付にリンク先を貼りましたのでクリックしていただくと​備忘録が開きます。​​​​​​​​​

​  追記

 ところで、このブログをご覧いただいた皆様で 楽天ID をお持ちの方は、まあ、なくても大丈夫かもですが、ページの一番下の、多分、楽天のイイネボタンを押してみてくださいね。ポイントがたまるんだそうです(笑)​​ ​​​

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最終更新日  2024.04.08 21:04:40
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