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2023.12.22
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​ギャスパー・ノエ「VORTEX ヴォルテックス」シネ・リーブル神戸​
今日見たのは 、 アルゼンチン 出身らしい ギャスパー・ノエ という監督のフランス映画 「VORTEX ヴォルテックス」 です。
 1940年生まれのジーさん と、 1944年生まれのバーさん 老老二人生活 と、
​​これでオシマイ! ​​​
の映画でした。
 主人公の一人、 ジーさん の方は映画評論かなんかの本を書いている、まあ、所謂、インテリの物書きですが、心臓手術の経験者です。もう一人の主役の バーさん は精神科の医者だったらしい、しっかり者のインテリで、家じゅう本で埋まっています。
息子 が一人いますが、どうも、元ヤク中だったらしく、一応社会復帰はしていますが子連れの大麻売りです。経済的にも社会的にも、頼りになる感じではありません。そんな 息子 がシングル・ファーザーとして育てている 孫のキキちゃん も、母親の不在と、見るからに不安定な父親という環境にやっとのことで耐えてる様子で、 ジジ、ババの家 に来ていても、落ち着かなくてシンドそうです。
​​ 問題はしっかり者だったはずのバーさんがボケたことです。 ​​
老夫婦 がベッドで寝ているシーンから始まって、 バーさん が先に起きだします。トイレに行って、それからパジャマの上に、そのまま普段着を着込んで、台所に行って薬缶を火にかけて、部屋に戻って何かメモして、それをポケットに入れると、そのまま上着を着てドアを開けて外に出ていきます。もちろん火はつけっぱなしです。通りに降りて来て雑貨屋に入って、・・・・。
ジーさん が目覚めて、トイレに行って、沸き立っている薬缶の火を止めて、お湯をカップに注いで、自分の部屋に帰ってタイプライターをちょっと叩いて、ようやく、 バーさん の不在に気付きます。で、あわてて上着を着こんで、よろけながら部屋を出て行って・・・・。
 若い方が、ここまでのシーンをご覧になってどう思われるのか、チョット想像がつきませんが、目の前のシーンが他人ごとではないボクには、異様な 実感と不安 が沸き起こってきました。行って、しまえば、それがこの映画のすべてでした。笑えません。
老々介護 の中で、まあ、当然起こるであろう出来事で映画は展開しますが、まだらボケが戻った時には
​捨ててほしい・・・・​
​  と呟く バーさん と、心のどこかで現実から逃避したい本音を隠せない ジーさん 、世話する能力を端から持っていない 息子 、落ち着かない 、哀しいとか、切ないとかいう以前に、ワラワラと湧いてくる ​​
​​ あんなー・・・・ ​​
​​​​​​​ ​​  と、まあ、言葉にならない実感にとらわれ続けた2時間でした。題名の ​「ヴォルテックス」​ ​「渦」​ という意味だそうですが、 バーさん がやたらとごみを捨てたものですから流れない​​​​​くなった水洗トイレの 「渦」にならないシーン だけが記憶に残りました(笑)。​​​​​​
​​​​​​​  「老い」 をめぐって 「生」と「死」 を真摯にとらえようとする努力というか、態度というかの表明のように、 人生は夢の中の夢 だとか フランソワーズ・アルディのMon Amie la Rose「バラのほほえみ」 の絶唱であるとか、 画面二分割の工夫 だとか手を尽くしていらっしゃるのですが、かえって、こざかしい屁理屈というか、言わずもがなの講釈というかで、
​​ 老人二人の演技のリアル! ​​
​ ​ で十分でした。
​​​ いや、それにしても 老夫婦 を演じたお二人、 ダリオ・アルジェント(夫)フランソワーズ・ルブラン(妻) には、まあ、だからといって、やっぱり笑えるわけではありませんが 拍手!拍手! でした。​​​
​​​ 監督 ギャスパー・ノエ の真摯はしっかり受け止めましたが、たしかに、 人生は夢の中の夢 なのかもしれませんが、
​「老い」は「現実」 ​​

​  ですよ(笑)。ハハハ、ようやく笑えました(笑)。​​​​

監督・脚本 ギャスパー・ノエ
撮影 ブノワ・デビエ
美術 ジャン・ラバッセ
衣装 コリーヌ・ブリュアン
編集 ドゥニ・ベドロウ ギャスパー・ノエ
音楽 ケン・ヤスモト
キャスト
ダリオ・アルジェント(夫)
フランソワーズ・ルブラン(妻)
アレックス・ルッツ(息子)
キリアン・デレ(孫)
2021年・148分・PG12・フランス
​原題「Vortex」
2023 12 18・ no156・ シネ・リーブル神戸 no210


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最終更新日  2024.01.13 23:27:49
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