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グー・シャオガン「西湖畔に生きる」シネリーブル神戸
山水映画
、 「春江水暖」
の グー・シャオガン監督
ですが、今回は、その 山水映画第2弾
だそうです。見たのは、邦題 「西湖畔に生きる」
、原題 「草木人間」
、多分、 「そうもくじんかん」
と読むのでしょうね、 「じんかん」
というのは人間の 社会
のことですね、でした。
納得でしたね。いや、 「春江水暖」
は感想を書きあぐねた記憶がありますが、今回は書けそうです。ただ、あれこれ錯綜していて簡単ではありません(笑)。
舞台が 杭州
ですから 上海
の近く、川でなくて湖です。 茶畑
があって、中国の昔の絵のような 山や森
があって、 湖
があって、その向こうに超近代的な 都市の影
が映っています。現代中国の姿ですね。
バスの中で、出奔した 夫の死の噂
について 「ハオ」
という言葉で語る 女性
がいて、 青年
が森を歩いて茶畑までやってきて、そこで働く女性に 「マー」
と呼びかけ、行方不明の 父
をめぐる会話が始まりますが、バスの中の女性が青年の 母
だったことがわかって映画が始まりました。
いや、本当は、 春の山に行列をなして登って行く人々
が小さな灯りのとなって点々と薄暗い茶畑に拡がり、山に登る人々の足元の闇の中で、 ヘビや虫たちがうごめき始め
、人々が 山
を起こす、この 「草木」
シーンこそが、この映画の始まりだったことに、実は、見終えて気付きました。
で、映画は、 茶摘み仕事
から追われた 母
の、マルチ商法に浸りこんでいく 地獄めぐり
のような 人間(ジンカン)
シーンが徹底的に描かれます。
それは、われわれの社会では、 90年代半ば
だったでしょうか、戦後の経済成長が頂点に登りつめた、あの時代、県立高校の現場にすら出没した、あの、インチキ経済に憑りつかれた人々の姿を彷彿とさせるシーンで、社会主義の理想を捨てた 現代中国
がさしかかっている、真の姿を実感しながら見ていたのですが、金の 亡者
と化した 母
と、それを救わんとする 息子
の 物語
の結末が、森の中の蓮池にもどってくるのを見ながら、まあ、両方現実なのですが、
金の亡者のシーンが夢だったのか?
今、目の前にある山の水辺が夢なのか?
という、ある種の 困惑 に浸りながら映画は終わりました。 原題にある 「草木」 と 「人間(じんかん)」 、 自然と社会 を重ね合わせた 「時間」の描き方 に、多分、
グー・シャオガンという監督の、らしさ
があると感じてはいたのですが。
で、帰りの電車でチラシを見ながら、 息子と母の名前
に、ボクの 困惑
に対する、とりあえずの解答があることに気付きました。
この映画では、 息子の名前
は 釈迦の十大弟子
の一人、 目蓮
と名づけられていて、その 目蓮
が 餓鬼地獄
に落ちた 母
を救うという 「目連救母」
という仏教譚がこの作品の枠組みだったのですね。
あのぉ、日本でも、 お盆
に、お坊さんが、 施餓鬼
とかいってお経をあげる行事がありますが、あれの原型譚で、 日本の仏教
の原型である 中国の仏教
ではかなりポピュラーなパターン噺ですが、日本人は案外、知らないと思います。
グー・シャオガン監督
、 前作
は 漢詩
、 今回
は 仏教説話
でした。
山の 草木
の中で暮らす人たちが湖の向うの、いわば拝金主義の 人間社会
で餓鬼道に落ちるという、 時間と空間の設定
が、
グー・シャオガン監督の味!
なのかもしれません。とどのつまりの 虎の登場
といい、燃え上がる緑の木を思わせる 樹木の思想
といい、 監督のセンス
が、ボクは面白かったですね。
まあ、それにしても、 母タイホウ
を演じた ジアン・チンチンさん
の鬼気迫る演技に 拍手!
でした。
監督・脚本 グー・シャオガン
脚本 グオ・シュアン
撮影 グオ・ダーミン
美術 ジョウ・シンユー
衣装 リー・ホア マー・ジュオミン
編集 ジャン・イーファン リウ・シンジュー
音楽 梅林茂
キャスト
ウー・レイ(ムーリエン目蓮:息子)
ジアン・チンチン(タイホア苔花:母)
チェン・ジエンビン(チェンさん老銭)
ワン・ジアジア(ワン・チン万晴)
イェン・ナン(ドン・ワンリー董万里)
チェン・クン(ジンラン金蘭)
ウー・ビー(ウー・ビーグイ呉彼貴)
ジュー・ボージャン(チャン・ヨン張勇)
2023年・115分・G・中国
原題「草木人間」英題「Dwelling by the West Lake」
2024・09・28・no124・シネリーブル神戸no271
追記
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