「岡本太郎展」を見るコツ

May 7, 2011

東京国立近代美術館はいま午後5時閉館なので4時半で入場ストップとなる。その頃から展示の前半部分はガラ空き状態になってくるから、ほぼ貸切状態の理想的鑑賞ができる。

一般に美術展は前半がとくに混む。入場者が一点一点に時間をかけるから。後半になると疲れと飽きで人波の流れがよくなるが、じつはそのあたりに見どころの品があることが多い。

だから大混雑の美術展では、前半はさ～っと素通りして先ず後半を見てから、閉館の30分前あたりからじっくり前半を見るのがよい。

明日5月8日が「生誕100年岡本太郎展」の最終日だ。
最終日前の週末は地獄だろうと思い、6日金曜日の午後半休をとって午後3時半ごろ美術館に着いたら、入場券を買うだけで15分待ちの列ができていた。

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今回の展覧会で、岡本太郎さんの20代から30代の作品がいちばん気に入ったのはなぜだろう。
数多く目にしてきた太郎作品の源流としてのすがすがしさ、ぼくにとっての新鮮さのせいだろう。

入場してオブジェ作品群を抜けて絵画の1点目の「空間」。黒と白と赤の構成に、しびれた。ぼくの好みだ。こんな絵を描くひとだったんだ！
岡本さんが23歳のときパリで描いたが日本に持ち帰って戦災で消失、43歳のとき再制作したもの。

36歳のときに描かれた「夜」もいい。
白衣（びゃくえ）の少女の後姿。刃渡りの長いナイフを後ろ手に持っている。
森を支配する色彩と曲線、電撃は、まぎれもなく岡本太郎ワールドだ。

じつはぼくは岡本さんの「目玉」を描いた作品群が苦手だ。いまのぼくはまだ、あの目玉群にはノレない。

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展覧会は、全体構成がたくみだった。
オブジェ群→絵画→写真→オブジェ→映像→スケッチ→オブジェ→映像→絵画→商業デザイン→オブジェ→絵画→書籍→テレビ出演ビデオ→絵画→語録。

目玉群にうんざりさせられることを恐れていたぼくは、岡本太郎ワールドの懐の深さを実感させてもらえてうれしかった。

壁面の岡本太郎語録のなかで気に入ったのが
≪好かれるヤツほどダメになる。≫
そうそう、
≪成功は失敗のもと。≫
というのもあったね。

出口のところにオミクジふうに「太郎のことば」をいただけるコーナーがあって、ぼくが引いたのは
≪やろうとしないから、やれないんだ。≫

う～ん、いろいろやろうとしてるんだけどね。
一向に原稿書きに取り掛からずに次の出版の夢ばかり見てるぼくへの岡本太郎さんの警鐘かもしれないね。

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