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はじまりは1970年代半ば、肝炎ウィルス国際会議に参加するため向かったパリ。B型肝炎ウィルスの亜型識別を文化の伝播を結びつけた研究結果を発表して賞賛を受けた佐伯教授は、講演後20年ほど前に渡米した親友を知るという老人・ベルナール博士の訪問を受けます。昭和25年に同期に東北大へ入局した佐伯と黒田が、お互いにさほど意識させることなく敬愛を土台にした友情を築きつつあった3年後の昭和28年、西暦では1953年、センダイヴァイラスの細胞融合能力に関する論文を発表した黒田はそのウィルスと共にアメリカの研究所へ渡っていくのですが、便りが無いまま2年後に事故死の知らせが届いていたのでした。黒田はアメリカではなく、フランスとスペインの間、ピレネー山脈の小国アンドールにあった合衆国の生物研究所で働き、そして自殺した、と語る老博士。アリエージュ県ウストにあるという親友の墓。その墓を守るヴィヴ婦人へと老博士から託された封筒を携えて、佐伯はピレネーへ向かいます。チャイルド44と同時進行で読んでたのは私にとっては幸いでした。イメージを広くして時代を想像することが出来たように思います。国同士の水面下での鬩ぎあいが実に怖い危うい時代だったのだなと、背筋が寒くなります。でも読後感は決して悪くありません。二人の友情は確かなものだったと確認できるからです。むしろ明るく、穏やかな気持ちにさえなります。美しいに違いない風景も、実際には到底及ばないながら、目を閉じると浮びそうです。1979年上半期、直木賞の候補になったそうなのですが、受賞してないということは、よほど良い作品の多い時だったんでしょうね。ちなみにこのときの受賞は、田中小実昌「浪曲師朝日丸の話」と 阿刀田高「ナポレオン狂」だったとか。
2009年02月15日
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「女の庭」を読んでいて、ちょうど一年前に読んだ『現代韓国女性作家短編 6stories 』に収められていた ハ・ソンランの「隣の家の女/ヨプチプ ヨジャ」を思い出した。普通にまぎれたいのに、まぎれても自分だけは違うと叫びたいような感覚。分かるような気もするけど、分かりたくないような。あとほんの半歩で危険な範囲に踏み込んでしまいそうでもあり、ささやかなひと言や出来事で安らぎを得られそうな。もどかしさを味わいたければぴったりな一編。「嫁入り前」を読んでいる途中で頭痛がしてきました。生理的に受け付けないタイプ、かな。めまいをおぼえたい人にはぴったりかもしれません。「女の庭」と「嫁入り前」、正直言ってよく分からない、この中編二作品。
2009年02月14日
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ここまで長いお話にする必要があるんだろうか?と思いつつも、飽きの来ない程度に一気読みさせる展開ではありました。八重山に流刑にされた宦官・孫寧温が首里天加那志の側室・真鶴として宮廷に返り咲くにがあまりにも早く、八重山での苦労の痕跡も残してないようなのが不思議だし、いつも危機を救う誰か、あるいは何かが簡単に現れるのが物足りなくもありました。登場するキャラクターは極端にインパクトの強い人だらけで劇画のようでしたが、ハチャメチャになりそうなストーリーに歴史的事実が何とかブレーキの役目も果たしていた気がします。読み終えて、一番強烈に残ったのは聞得大君・真牛でした。あそこまで過酷な人生を強いなくてはいけなかったのでしょうか? テンペスト 上(若夏(うりずん)の巻)
2009年02月10日
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17歳の少年と34歳の女性歯科医出逢ってしまってもそれぞれが似たような傷を抱えていたとしても恋愛に発展するとは思えない発展したとしても、続いていくとは思えない別々の場所から伸びてきた線路が一瞬寄り添って重なって何も無かったようにまた別の場所へ伸びていくようなそんな、人生のある時にすぎないんじゃないだろうか 時間が行きつ戻りつ挟まれつして分かりにくいお話でした手にした時、表紙の写真にはびっくりしたけども
2009年02月08日
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舞台は天鏡峠につらなる山襞に建つ合掌造りの一軒家、ということですがどこにあるのかは私にはよく分かりません。飛騨、白川郷の大家族制度を作者なりに想像してモデルとしたとのことです。かつてここの大家族の一員として暮らしていて場所を知っているか、道に迷った人しか訪れないこの僻地の一軒家には、母と栄吉という少年の二人っきり、世間から離れてひっそり自給自足の生活をしています。宿を請う迷い人は、宿賃の代わりでもあるでしょうし、世間から離れたおそらく二度と訪れることのない場所にいる気安さからもあるのでしょう、里の町の話や、自身の身に起きた過去の話などを語ってくれるます。いっとき「侍の妻」としての心を味わって恋を散らした娘の話、「毒消し売り」が訪れた村でコレラの恐怖に取り付かれた人々の狂気ぶり、盆の間の三日間だけ神様の決めた人の妻として過ごす「盆嬶」、「無限寺」の願掛けで願いを叶えた話、母と栄吉が暮らす合掌造りの村でかつて暮らしていた大家族の娘が「天鏡峠」を越えて逃げていった話、「餅のなる樹」の実を食べた栄吉の母の語り。 どれもこれも実に生臭い(血生臭い、ではありません)。その生臭い話を、余計な疑問をはさまず素直に母と一緒に聞いている少年の純な感じが良いんです。栄吉の母がいちばん生臭くてミステリアスかもしれません。シエラザードが夜毎に語る千夜一夜のお話を、ふと思い出しました。
2009年02月07日
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