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アルマが恋した相手は既婚者の歯科医師、ウォルター。
ウォルターの妻は、金持ちだけれど売れなくなった舞台女優のリディアです。旧知のチャップリンを頼ってアメリカで映画女優に転身する決意をしたリディアは、ウォルターの制止に一切耳を傾けず、家も歯科医院も売り払い、アメリカ行きの客船モーリタニア号を予約してしまいます。
アルマとウォルターはリディアを船の甲板から落として殺害する計画を立てますが…。

事態はどんどん意外な方向に進んでいきます。ウォルターは偽名を名乗ったばかりに、高名な引退した警部に間違われます。上流階級の青年と、彼に娘をめあわせたい資産家の母と、ペテン師たちも船に乗り合わせて話は複雑に。高圧的なリディア、恋愛小説が人生の指南というアルマ、主体性に欠けるウォルター、さらには脇を固める登場人物の性格も癖が強めで、演劇や映画を見るようです。
次々に話は展開してテンポよく進みますが、実は冒頭から伏線が張られていたのだと後から気づきました。
時代はチャップリンが活躍したころで、クリッペン事件が人々の記憶に新しいころ。
クリッペン博士は、妻コーラ殺害の罪で死刑に処せられました。実在のデュー警部が、コーラの死体を発見し、愛人ル・ネーヴと共にモントローズ号で逃走したクリッペンを逮捕しています。
あきらめて、デューとして船上の殺人事件の捜査に当たることになり、飄々と証言を引き出すウォルターには笑わせられ、人々が織りなすドタバタ劇にも味があります。
最後はハッピーエンドと言っていいか…。
参照元:ピーター・ラヴゼイ 中村保男・訳『偽のデュー警部』ハヤカワミステリー文庫
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