ユーカリの木陰で里の行
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このところASA(Australian Society of Authors)オーストラリア著者協会主催のセミナーやイベントに参加している。というのも、初めて英語で書いた小説『PRECIOUS EGGS: Naomi's Journeyto Get a Baby with IVF, Adoption, and Meditation』が完成し、出版の道を探しているもので。以前、英語で書いた短編小説を出版したことはあるけれど、長編は今回が初めて。とにかく手探りで進みつつ、やりながら学んでいるって感じね。それでも書き進める前に、出だし3章とシノプシス(概要)を送ってアメリカの文学エージェントにアプローチし、全原稿を読みたいと言ってくれたエージェントをN.Y.に見つけていたので、去年半ば原稿が仕上がったとき早速そちらに送った。ものの、結局、断られてしまったのだった。そこで他の文学エージェントにアプローチしたところ、N.Y.にある別の文学エージェントが興味をもってくれた。エージェントには毎週何百通もの売込みがあるというからこれはとてもラッキーな事態であった。うまくいくことを願いつつ何か月か気を揉んだ後、結局、出版にはいたらなかった。やはり厳しいですね~ちなみに、なんで出版社ではなくエージェントに営業しているかというと、持ち込み原稿に門戸を開いている出版社は少ない(つーか、ほとんどない)からである。でもって、なんでオーストラリアではなくアメリカかというと、オーストラリアはマーケットが小さいので、アプローチ可能な出版社どころかエージェントもほとんどないので。とはいえ、この作業も実はなかなか楽しい。N.Y.やロンドンの文学エージェントをネットでサーチしつつ、そのウエブに名前の知ってる作家とかが出てきたりすると、え~、このエージェントの作家さんなんだぁ~!とか関心しつつ調べてゆくのもオタッキーな愉しみね。(^^;でもそんなことばかりしていたら、いつまでたっても先に進めない。くわえて、時代はe-book。電子図書とそのマーケティングについても勉強してみようとメルボルンで行われるASAのセミナーに参加してみることにしたのだった。まずは5月14日に開催された「Industry Spotlight―Going Global」のセミナーへ。オーストラリアの出版社、Text PublishingのAnne Belbyさんが出版業界の動向について語ってくれた。具体的には著書契約に関する話が多かったのだけど、数ある注意事項のなかで一番心に残っているのは、契約の際には全ての単語を一語一句チェックしてからサインすべきだ、というごく当たり前にして、でもうっかりしてしまいそうなアドバイスだろうか。アンさんは、e-bookでも、どんな契約であろうともASA等の著作権専門の弁護士と相談してから交わすべきだ、と忠告していた。彼女の、著作権は著者にあるべきだという話を聞きながら、以前参加した出版に関するセミナー (2012年10月のブログに)を思い出していた。講師のRhonda Whittonさんが、今ではオーストラリア出版業界のバイブルともイエローページともいわれる『Australian Writer’s Marketplace』を初めて出版したときの体験談を。契約書の著作権帰属者の箇所に、自分の名前ではなく出版社の名が記されていた!?というのだ。彼女の指摘に、出版社の方は「Oh, silly us!」ととぼけ、結局著作権は彼女の名前で取り交わされたのだそうだが、「あのまま契約を交わしていたら…」と憤慨されていた。う~む、英文の法律文書か。ただでさえ心許ない自分の判断力+英語力…たとえe-bookでも契約の際にはASAの弁護士とかプロの方に頼ろう、と心に誓った。話は逸れるけど、著作権は著者の死から70年後に切れるんだそうだ。引用句を使うにあたって昔、ライター仲間と、シェイクスピアなら安全だよね~とか冗談を飛ばし合った記憶があるけど、なにもそこまで遡らずとも、前世紀前半で既に安全だったのね(笑)。さて、続いては6月18日に開催されたセミナー、『Spread the Word(s)』に。講師はMcmillan社に25年勤務し、出版業界30年というAndrew Farrellさん、著書のPR販促について語ってくれた。まず参加者がどのジャンルの本を手掛けているかでPRに関する講義内容が違ってくるからと言われ、それぞれ自己紹介を。全員で10人ほどだったけど、フィクションは、ダーク系ミステリーを書いているという女性作家と私だけ。後は皆さんノンフィクション作家だった。ノンフィクションもジャンルがばらばらだったので、結局、全般について広く浅く語られることになった。まずはシビアなマーケット情報から。去年2013年の1年間だけでオーストラリアで出版された本は2万作!にも及ぶと言う。e-bookも含まれるとはいえこの国の全人口を思えば(約2,300万人ね)、かなりの数である。で、そのうち150部以上売れたのは、2,500作だけ。残りの17,500作の売り上げは150部にも届かなかったのだと聞き、早くも会場の空気がどんよ~りと沈んでゆく。一方、アンドルーさんの方は参加者の溜息を燃料(?)に、PR戦略を説き始めた。一種のショック療法ですかね?要点は、今の時代、著者としてInteractivityは絶対に必要だということ。人任せに受け身に構えていたのではダメで、「旧世界」(と彼は呼んでいた)のPR戦略であろうと、ネットを駆使した「新世界」の販促であろうとも著者自らとことんアクティヴに活動しなければならない。「旧世界」の新聞、雑誌、TV、ラジオ等メディアへの販促はもちろんのこと(だかそこでも書評など本に割かれる割合は年々減っているんだそうで)。図書館、文化教育施設、ブッククラブは元より、美容院、病院、カフェから肉屋まで、人の集まる所ならどこへでも、「Giveaways」(献本)戦略を実行すべきである、と。「え~、肉屋まで~!?」という素朴な声に、アンドルーさんは、父親が肉屋だというコネ(?)をつかって、肉切り待ちの客目当てに精肉店に献本しまくって成功したミステリー作家の話をしてくれた。実話ですかっ!? けどそれがバラバラ殺人だったりすると、肉屋の売り上げの方が落ちてしまいそうではありますが…他にも、自作のPOP広告を手に本屋へ出向くとか、図書館にセミナーや講演をさせてくれるよう頼みに行くとか、ブッククラブに自著本の批評・論争ノートを作って本を取り上げてくれるよう働きかけに行くとか、ライターズ・フェスティバルやブックフェアとかのイベントに参加して積極的に人脈を広げてゆく、とか。とにもかくにもフットワークは軽く―また「新世界」のオンライン用PRでは、オンライン書店やオンライン・リーディング・コミュニティ、マーケティングやパブリシティ・サイト、人気のブロガーや、オンラインレビューへの働きかけはもちろんのこと、著者自身フェイスブックやツイッター、ブログ等ソーシャルネットワークを駆使してPRに励まなければならない、とか。それからPRに有益なサイトを教えてくれたのだけど、正直、私はそれらを書き留めているだけで既に疲れてしまった。。。つーか、聞いているだけでもう疲れ切ってしまったのだった。明らかに、販促は書くことの10倍大変そうである。IT弱いし、足腰も弱いし、そんな(難儀な)ことができるんだろーか、自分っ!?さて、今月最後のイベントは21日に開催された『Literary Speed Dating』。Boys Meet Girlsならぬ、Authors Meet Publishersである。会場に集まった出版社や文学エージェントに作家やライター、イラストレーターが原稿や企画を売り込む。確か未だ2回ほどしか開催されてなかったと思うが、開催決定と同時に即日満席になってしまうという人気のイベントである。私も、参加した知り合いの作家二人から噂は聞いていた。のだけれども、英語の小説は書いても、編集者や文学エージェントを前に英語でプレゼンする自信はなかったので、自分には無理だと思っていた。けど去年末、6月に開催されると聞き、もしも未だ出版社が決まってなかったら…と、とりあえず申し込んだのだった。そうして半年が経った今、とりあえず、が実現してしまったのは残念なことではあるが。(^^;もっと残念なことに、参加予定の出版社と文学エージェントの最終リストを見たところ、大半が子どもやティーンエイジャー向けの出版社だった。ペンギンとか、普段なら決して売り込めない大手出版社もいたけど、児童書部門オンリーってことで…。今回Women’s Fiction(Chick-litかも…)を売り込みたい私がアピールできるのは、出版社1社と文学エージェント1社だけ。それでも、ともかく販促用ピッチを元に、持ち時間の5分PRスピーチを考え、営業用のQuery Letterを用意して当日に臨んだ。参加者は40人ほどだったろうか。直前に5分だと思っていた持ち時間が、実は3分間だと聞かされ、青くなる。案内には3分と書かれていたのだけど、Web上では5分間と記されていたので、せっかくの時間を持て余してしまうのも困るし勿体ないと5分で考えてきたのだった。でもWeb情報は去年のものだったんだそうで…(^^;どうしよう!?と焦っていると、隣の女性が「オー マイ ガッ! 聞いた? 3分だって!? 5分だと思ってた!」と話しかけてきた。「どうしよう! こういうのは初めてなのよ。ああ、いったい私は何を話せばいいんだろう!」と派手に動揺している。「でもそう、何事も経験よね! でしょっ? で、あなたは何を書いてるの?」医療ノンフィクションを書いているという、その女性作家のパワフルな動揺ぶりに、妙な安心感が湧いてくる。そうか、焦っているのは何も私だけじゃないんだ。そうですよね、何事も経験ですよね。―と、ほぼ開き直りの心境に。彼女と話せたおかげで予定通り2社にアプローチしてきました。とはいえ文学エージェントの方は、Women's Fictionを扱っているというので多少期待していたのだけど、このテーマでフィクションっていうのは…とあっさり却下されてしまった。けれど出版社の方は興味を示してくれて、読んでみたいから原稿を自分宛に送ってくれと女性編集者が言ってくれた。振り返れば、どのセミナーもそれぞれ得るところがあって楽しく、インスパイアーされてきました。これからまだまだ道のりは長いと思うけど、気楽に楽しみながら続けてゆきたいと思っております。
2014.06.18
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