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果たして、戦場の二人は、どれほどの間、間合いを計り続けただろうか。
互いに、切り込む隙を全く掴むことができない。
しかし、ついに、二人はピタリと動きを止めた。
アンドレスの全身から、瞬間、焔のごとくオーラが燃え上がる。
(フロレス!!
覚悟――!!)
先に勝負を仕掛けたのは、アンドレスの方だった。
彼は、決然たる剣裁きで、フロレスへと一直線に切り込んだ。
彼の全身が、唸る風を切って相手に迫る。
だが、フロレスは、完全に動きを止めたまま、微動だにしていない。
騎乗の彼は、猛然と迫り来る相手を見据えながら、その安定した構えを一縷(いちる)も崩すことなく、眉一筋さえ身じろぐこともないままに、そこにいる。
アンドレスはサーベルを水平に握り締め、一気にフロレスとの距離を詰めた。
ついに互いの体が交差する瞬間、アンドレスは、水平に構えていた己のサーベルを、フロレスの喉元へと光の矢のごとく突き出した。
一方、その最後の最後まで、フロレスは全く動かない。
陽(ひ)に透けるブロンドの髪だけが、風の中に舞い上がる。
そのままアンドレスのサーベルは、確実にフロレスの首を貫くはずであった。
―――が、手応えが無い!!
己の意識よりも早く、アンドレスの鍛えられた動体視力は、フロレスが、首の一捻りで己のサーベルを避けるのを、はっきりととらえていた。
『!!』
アンドレスは、衝撃よりも、むしろ、強い恍惚に瞳を輝かせて息を呑む。
(なんという冷静さ!!
フロレス、この者は…――!!)
【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆
≪アンドレス≫
トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。
若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。
スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。
現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。
≪フロレス≫
ラ・プラタ副王領のスペイン軍総指揮官として、当地の反乱鎮圧の総責任者をつとめる。
副王の信任も篤く、かつては最高司法院の議長まで務めた有能、且つ、武勇に秀でた麗人。
植民地生まれであるためか、他のスペイン人高官とは異なり、偏見を持たぬ公明正大な人物。
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