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かくして、いよいよアンドレス軍が、ラ・プラタ副王領での勢力を維持すべく当地に残留するアパサ軍と離れ、ペルー副王領へ帰還の進軍をはじめた頃、スペイン側の動きはどうなっていたであろうか。
アンドレスがフロレスから英国艦隊の到来を知らされるよりも少し前、ペルー副王領リマのインディアス枢機会議本部の執務室で、かのアレッチェが、非常に苦々しい表情で葉巻をくわえたまま、荒々しく書類をめくっていた。
ペルー副王領の反乱軍討伐隊総指揮官アレッチェ――彼は、本来の植民地巡察官たる職務も再開しつつ、現在もインカ軍の残党を叩き潰しながら、且つ、脱獄したトゥパク・アマルの捜索をも執拗に継続していた。
そして、次なるインカ軍との本格的な決戦に備え、火器類の生産に、いっそうの熱を上げていた。
だが、そんなある日、本国スペインから、まさかの衝撃的な内容の司令書を受け取ったのである。
その重要書類を睨みつけながら、アレッチェの脳裏には、未だ行方の掴めぬ、あの男――トゥパク・アマル――の姿が生々しく甦る。
【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆
≪トゥパク・アマル≫
反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。
インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。
インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。
「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。
清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。
≪ホセ・アントニオ・アレッチェ≫
植民地ペルーの行政を監督するためにスペインから派遣されたエリート高官(全権植民地巡察官)で、植民地支配における多大な権力を有する。
ペルー副王領の反乱軍討伐隊(スペイン王党軍)総指揮官として、反乱鎮圧の総責任者をつとめる。
有能だが、プライドが高く、偏見の強い冷酷無比な人物。
名実共に、トゥパク・アマルの宿敵である。
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