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上州は大前田にござんす半次に財布を掏られた栄次郎は食べることができずお腹ぺこぺこ、道端脇に座り込んでいる始末。何しろ目的地は海老屋です。海老屋までいけば何とかなるのです。栄次郎に声をかけられたお百姓も気味悪く急ぎ足でいってしまいます。そんな様子を見ている二人連れがいます。仕方なしに歩きだしますが、何しろ何も食べていないので、ふらふらで歩いています。そんな様子を通りかかった・・・海老屋のお喜代と婆やが見ていました。 お喜代は栄次郎の歩いている様子を見て、お腹が空いているようだ、これを渡してと婆やにお金を持たせます。「旅の人」と声をかけられ、うれしそうな様子で「何か用かい」と言う栄次郎に、「これで何か召しあがってくださいと、お嬢さんが」と来たから栄次郎の顔色が変わります。お金をとると、お喜代の方に行き 栄次郎「おう、変な真似よせよ。おらあ、物乞いじゃねえんだ」お喜代は、すいませんと謝り、「だってお腹が空いているんでしょ」と言いますと、栄次郎「おれは、憐れんでもらいたくねえんだよ。・・なあに、ここまでやって来 たんだい・・おれは、海老屋甚八親分の家へ草鞋を脱ぐんだい。おう、 けえすよ」と息がって見せ、ふらふらと歩きだしますが、これ以上は歩けず倒れ込んでしまいます。お喜代と婆やが手を貸します。 ヨロヨロしながら町内に入ってきました。急に栄次郎がおかしなことをお喜代に聞きます。栄次郎「甚八親分には、綺麗な娘さんがあるんだってね。・・どうだね、お前さん よりか綺麗かい?」 「噂になるような綺麗な娘ではない、私のようなおかめよ」と聞いた栄次郎は、栄次郎「おかめ、なーんでいおかめか。・・・だって、お前さんほどのおかめな ら、そう捨てた面じゃねえなあ」栄次郎は何だかうれしそうな顔をします。 お喜代が名前を聞いてきます。栄次郎「聞いてくれんない、・・道中”護摩の灰”に胴巻を掏られて、カラスに笑わ れるような男だもん」 お喜代は栄次郎を海老屋の前まで手を引っ張って連れて行きます。 すると子分の辰五郎が「お帰んなさい」とお喜代を迎えに出たから大変、栄次郎の困った様子をみてお喜代と婆やが笑らいます。 お喜代がやくざは軒下三寸入って仁義をきるもの、と言い家の中に入り栄次郎の仁義を受けます。(栄次郎しっかりとお腹に力が入ってないような仁義で始まります)栄次郎「軒下三寸借り受けまして、仁義ごめんなせいやし。まずは、あんさんか ら」お喜代「ます、あんさんから」栄次郎「まず、あんさんから」 お喜代「では、逆いながら、控えさせていただきます」(そのとき、栄次郎はこんな表情をお喜代に見せるのです) (ここからの栄次郎は元気が出て、しっかりと仁義を切ります。)栄次郎「へい、早速お引きねげえやしてありがとうござんす。手前生国と発します は関東でござんす。関東と申しましても広おござんす。関東は赤城降ろし の吹きすさぶ上州は大前田にござんす」(カッコいいよ、栄次郎さん)お喜代は上州大前田と聞いてびっくりした顔をします。 その頃、次郎長一行は海老屋甚八のところに向かっていました。 続きます。
2019年06月28日
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カラスにも笑われ、財布を掏られ(ここでも、栄次郎と半次のやり取りを楽しみましょう。そろそろ決着がつきそうです。そうでないと、海老屋になかなか行きつきません)道中師の半次はつかず離れず栄次郎についていきます。その栄次郎は半次との道中を楽しんでいるようにも見えます。 日が暮れてきました、夕日で真っ赤な空です。栄次郎はお堂でひと休みしていますと、半次が追いついてきました。 栄次郎「おう・・・どうだ”ごま”、まだ狙うつもりかい」半次という名があるといいますが、栄次郎は、胴巻を狙っている間は”護摩の灰”としか呼ばないと言うと、半次は栄次郎の財布を狙うのは「もういやになった」と言い出します。 栄次郎「なんでい、口ほどもねえ」 半次 「旦那相手じゃね、手間ばっかりかかって商売にならない」 栄次郎「あっはっはっは、お気の毒様ってえとこだね」 半次 「負けました、負けた、もう狙いませんよ、えっ」 栄次郎「よーし、じゃ、先行きな」 そう言われて、行きかけた半次が、見てもらいたいものがあると、栄次郎との道中の間に掏った数個の財布を見せます。 その時、こちらにやって来る人の姿を見て、半次が「いけねえ」と言って逃げようとしたところを、栄次郎が押え、 栄次郎が「あんなお百姓さんのまで取りやがったのか」 半次は「すみません」と言い、取った財布はこれだと栄次郎に渡し、逃げていきます。 娘連れの御百姓さんがやって来ます。栄次郎が声をかけます。 栄次郎「おい、父つぁん、とんだ目にお会いなすったな」 声をかけられた父つぁんは何のことかと・・?・・栄次郎は、父つぁんが”護摩の灰”に掏られた財布を取り返してやった、と言いますと、その財布は自分のものではないと言われます。「第一、わしは、護摩の灰にたかられるようなうすのろと違う」と言われてしまいます。 そう言われて、栄次郎は、自分の懐を確かめて財布がないことがわかり「やられた」と慌てて半次を追いますが、どこに行ったのか・・。日も落ちた中、カラスにも笑われ、財布を掏られてしまった栄次郎はこの先どうするのでしょう、無事海老屋までたどり着くことが出来るのでしょうか。 前橋の大前田を次郎長が子分と共に訪ねてきます。牢に入っている大前田栄五郎を次郎長が訪ねます。 栄五郎は布団も煙草盆まで入れてもらっての牢暮らしで元気な様子です。 次郎長がやって来たのは、海老屋甚八から、もう年なので海老屋の娘にりっぱな婿が決まるまで、縄張りを次郎長に預かってほしい、と頼まれたというのです。そのため海老屋と兄弟分の大前田栄五郎に相談したくやって来たと言うのです。 栄五郎は異存はない、ども安達が手荒なことをしでかさないうちに、しっかりと預かってやってほしい、と言います。 次郎長は、帰り際小声で「栄次郎さんは何処に」と聞きますと、「今ごろは、海老屋の家へ草鞋をぬいてるはずなんだ」と栄五郎が言います。 次郎長「すると、海老屋さんの」 栄五郎「そおよ、ちょうどいい時期だと思って、見合いにやったんだが、あいつは 俺の跡取りだ。海老屋の縄張りは、次郎長、おめえのもんだよ」 同じ頃、ども安も動き出していました。 続きます。
2019年06月22日
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(ここでは、橋蔵さまの大前田栄次郎と堺駿二さんの道中師半次の絡みを楽しんでください)海老屋甚八を訪ねて草鞋を履いた栄次郎の姿が街道筋にありました。ところが、後ろを振り向いたりと何か気になっているようです。茶店でひと休みします。すると、栄次郎の後ろから来ていた道中師の半次が、何気ない様子で栄次郎の傍によって来て、半次「旅の人、あんさん、初めての旅でしょ」と話しかけてきます。栄次郎「そうだよ・・・どうしてわかる」半次 「 あっしは、一目見たら間違いっこねえです」栄次郎「ううーん」栄次郎は相手にしないふりをしてそっぽを向いていますと、 半次 「お前さんの懐の中まで見えるんだから・・・五十両と睨んだなあ」そう言いながらニコッと見ている半次に、栄次郎はつい懐に手を入れ、栄次郎「てえした眼力だあ」栄次郎に、この街道は”護摩の灰”がうろうろしているから気を付けるようにいうと、半次は先に行きます。 ひと休みし、街道を行ったところで、栄次郎の来るのを今か今かと待っていた様子の半次が道端にいます。栄次郎が半次に気が付きます。栄次郎「おぉう、またあったね」 栄次郎「えらく、うろうろするじゃねえかよ」半次は、「へい」と言うと、突然自分の懐に手を入れて懐中物を確かめ半次 「大丈夫だった・・旅の人は・・」と言ってきます。栄次郎は「なに?」と言い、慌てて懐を確かめ、栄次郎「・・大丈夫だい、笑わせるねい」と言い、先を急ぎます。 渡し舟に先に乗っていた栄次郎の傍に半次が来たので、栄次郎は「えい、よるねい」と突き飛ばします。そして、舟に乗り合わせた客たちにこう言います。栄次郎「みなさん、お気を付けなすってくださいよ。この男はどうも”護摩の灰”だ と思いますからねえ・・・おう、てめえ、そうだろう」半次はとぼけた様子をして笑い「しゃれで」と。栄次郎「あれ、・・何がしゃれだい、てめえは、俺の胴巻狙っているんだろう」半次、ニヤニヤしながら「へい」と。 栄次郎「こら、俺も男だ。てめえみてえな野郎にゃ、絶対掏られねえからな。 まあ、諦めろい」 半次 「いやよ、ううふ」栄次郎「なにぃ、この野郎・・もしも俺の体にちょっとでも触ってみろ、てめえの がん首は叩き斬るからそのつもりでいろい」 半次「なるほどー、・・旦那がねえ、男の中の男なら、あの、あっしはねえ、・・(ここで半次が体勢を変え栄次郎に近づいたので、栄次郎が「よるな、よるな」とあしらうようにします)・・”灰の中の灰だ。狙った旦那のその財布は、きっと頂戴しやすからねえ、何分ご用心を」 栄次郎「ようし、いつでも勝負してやらあ。・・・みんな、もう大丈夫ですよ、 おい船頭さん、出してくんな」 やっと渡し舟が動きます。こうして、栄次郎は財布を盗る機会を狙う半次と道連れという奇妙なことになります。 続きます。
2019年06月19日
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監督マキノ雅弘、脚色結束信二が手掛ける肩のこらない娯楽時代劇。これを1962年に監督マキノ雅弘、脚色結束信二とマキノ雅弘共同で、手を入れているのであろうが、まるっきり内容は同じストーリーで「次郎長と小天狗 殴り込み甲州路」を北大路欣也の大前田栄二郎、中村錦之助の清水の次郎長で撮っています。・・・が、やはり大川橋蔵の魅力にはほど遠い気がします。「見る通りただの一人よ」歯切れのよい啖呵、喧嘩小天狗と呼ばれる意気と腕の若親分、関八州の暴れ若獅子大前田栄次郎。長脇差と仁義、恋と人情が青空街道にとびかい颯爽と暴れまくる。人気絶頂の橋蔵がまた新しい魅力を発揮した股旅痛快篇。清水の次郎長にあずけられた大前田栄五郎の二世栄次郎は大の負けず嫌い。さすがの東海一の親分清水の次郎長も手をやく暴れん坊でした。ひとつの当たり役となったやくざ映画の決定版。大前田の大親分の息子栄次郎として長脇差片手に男の意地に死ぬ気で斬りまくる大暴れの連続はファンを喜ばせ、「やくざものの橋蔵」のまた新しい魅力のひとつを加えました。ここでの橋蔵さん演ずる大前田栄次郎は、どちらかというと、やくざとしてカッコいいところはありません。世間知らずの大前田のお坊ちゃまが、大前田栄五郎と海老屋甚八の策略により、見合いをさせるために旅に出させる。そんなこととは知らない栄次郎が、海老屋に向かうまでに道中師にあったりとへまなことばかり。生意気でダメなところが多い橋蔵さまの栄次郎を楽しむ作品です。きりっとしたカッコいいやくざが橋蔵さまのイメージですが、こういう役から橋蔵さまの違った面が見えてきます。また一つ新しい魅力を引出した作品です。いつも誰かが助けてくれているという栄次郎も、最後は海老屋甚八の仇を討つためにども安の宴席に一人乗り込んでの啖呵と立回りは堪能できます。大前田栄五郎の息子・栄次郎が、清水の次郎長の力を借りて許婚の父の仇を討つという娯楽時代劇。◆第44作品目1958年12月封切 「喧嘩笠」 大前田栄次郎 大川橋蔵お喜代 大川恵子おきぬ 高島淳子お千賀 神楽坂浮子朝駒太夫 雪代敬子法印大五郎 加賀邦男桶屋の鬼吉 徳大寺伸武居のども安 阿部九州男増川仙右衛門 石井一雄辰五郎 杉狂児半次 堺駿二婆や 赤木春恵陣場の喜助 有馬宏治関東綱五郎 立松晃大前田栄五郎 月形龍之介森の石松 水島道太郎黒駒の勝蔵 進藤英太郎清水の次郎長 大友柳太郎上州大前田の祭礼で、無法の代官所役人に傷を負わせた大前田栄五郎の長男、通称喧嘩小天狗の栄次郎は、父親の弟分という貸元・海老屋甚八を頼りに旅に出た。ところが道中、懐中物を狙う道中師に遭って一文無し。餓死寸前の栄次郎を救ってくれたのが海老屋甚八の娘お喜代だとはつゆ知らず・・・。海老屋に草鞋を脱いである日博ちにうつつを抜かしている時、武井のども安の 手にかかって甚八が非業の死を遂げる。怒りに燃える栄次郎は、甚八の仇を討つために、海老屋を出ていきます。そして・・・ 立派な口がきけるような男になって帰って来い 大前田栄五郎の縄張りである上州前橋、朝駒太夫の一座が掛け小屋で華やかな踊りを繰りひろげているとき、客席で侍達が町娘に酌をしろと言い寄り舞台はだいなしに、その時、客席の後ろの方から「静かにしろい、野暮天」と声を発したのは、前田の栄次郎でした。 朝駒太夫たちがお願いしても侍達は静かにならず、とうとう栄次郎が出てきました。「無礼者、我々をなんと心得おる」という侍に、栄次郎「へえ、申し訳ござんせんが、ついぞお見かけしねえもんだから、存じませ んので、へえ」 「黙れー」と言われ、栄次郎「おっとう、黙っちゃいられねえんだい・・ねえ、お侍さん、ここは町人衆 やお百姓さんが、面白可笑しく楽しんでいなさるところで、お前さんがた が、酒の肴にわいわい騒ぐところじゃござんせんぜ」 ここまでは栄五郎もおとなしくしていたのですが、喧嘩小天狗と呼ばれている栄次郎は、川越から前橋に赴任してきた代官所の役人と言ったのを聞いて顔色を変えます。栄次郎「なにぃ、てめえ達役人だと」 その役人の一人が胸倉を掴んできたから大変、栄次郎の血が騒ぎだしてしまいます。栄次郎「おうおうおう、やるのか、野郎、どさんぴん」栄次郎「許さねえのは、こっちだい。役人と聞いちゃ、こっちが許さねえ。おう 俺の血がかあーとなったら、てめえ達はお陀仏だぜ」 役人達が刀を抜いてきたので、最初は素手で相手をしていた栄次郎が刀を抜いたとき、一人の侍の手首に傷を負わせます。 「どうしたい、どうしたい、おうおう、どうしたんだよ」と追い詰めて行く栄次郎から役人達は後ずさりして行き、とうとう逃げ帰っていきます。 朝駒太夫からお礼をいわれた栄次郎は、少し照れ気味で栄次郎「やだなあ、舞台のセリフの様なこと言ってくれるなよう」町人たちから相手がお役人で大丈夫か、大変なことになると言われ、役人だろうと悪い奴だから斬ったまで、「あとは大前田の栄次郎が引き受けたよ」といい気分になってかえります。 その夜、大前田のところでは、子分衆も座敷に集まり、栄五郎は文をしたためています。栄次郎が神妙にしています。 栄次郎「ねえ、お父つぁん、おら何も悪いことしたとは思わねえなあ。この土地の 皆さんが迷惑になるのを見かねてやったまでのことだ。おいらやくざは、 土地の皆さんあってこその稼業だと、いつもお父つぁん言ってたはずじゃ ねえか、そうだろう?」栄五郎「その通りだ、それに違えねえが、相手が御陣屋勤めのお役人だ」子分が栄次郎の正当さを言っても、栄五郎は斬った側がいけないと、突っぱねます。栄五郎は、栄次郎にほとぼりの冷めるあいだ草鞋を履くよう言いますと、栄次郎は嫌だ御陣屋に一人で殴り込みをしてけりをつける、と行こうとしたとき、「馬鹿野郎」と栄五郎の声が飛びます。 栄五郎「子供のくせに自惚れるな。てめえは大前田の小天狗だの喧嘩若親分だと、 くだらねえおだてに乗りやがっていい気になっているが、大暴れしなけ りゃ酔っ払いの二人や三人なだめることが出来ねえようじゃ、まだてめえ は三下だ。いいかどこへ出ても立派な口がきけるような男になって帰って 来い」 陣屋の役人が捕り方を連れやって来ました。栄五郎は、栄次郎に急いで裏口からでるように、文を渡し海老屋甚八のところへ行くように、そして、甚八のところには可愛い娘がいる、「惚れてもいいんだぜ」と訳の分からないことを言います。 栄五郎は、栄次郎を召し捕りに来た役人に、栄次郎は逃げ出してしまいいない。せがれの罪は親の罪、栄次郎に代わってお縄を頂戴します。そんなことになっているとは知らず草鞋を始めて履いた栄次郎の旅はどうなるのでしょう。無事に海老屋甚八のところに行きつけるのでしょうか。栄五郎の言った「海老屋の娘に惚れてもいいんだぜ」という言葉はどういう意味なのでしょうか、気になりますね。 続きます。
2019年06月03日
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