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「残るのです」 「やだ」今回は、菅谷家の庭先での、新太郎と小浪の場面から始めるのですが、ちょっとその前に寄り道いたします。雑誌「ふり袖太平記」の特集でこの場面・・菅谷家の庭先・・の撮影現場を取材した「セット訪問」というきじがあります。抜粋になりますが、そこからいきたいと思います。~仲良しコンビはにっこり笑ってはい・スタート!刀遊びとにらめっこ?橋蔵さんの余興にファンもどっと大喜び~皆様もスタジオ見学をしている気分で、撮影合間の雰囲気と本番の雰囲気を味わいながら、作品を追って見てください。まずは・・・✶セットでにらめっこは、ひばりちゃん今日は御両人が顔を合わせるセットを訪問しました。セットは武家屋敷の座敷から庭にかけて組まれています。ちょうどライティングの最中です。塀を越えて屋根の上にカメラが据えてあります。俯瞰撮影(高い位置から見下ろして撮影)になるようです。ずーっと中へ入っていくと、廊下に橋蔵さんが座っています。グリーンの地に白い鱗模様を浮かせたシックな着物、袴もワインカラーに白の縦縞という(当時の)流行色。髷の型は大変かわっています。ムシリという月代が伸びた浪人の型と前髪の合いの子のような髷で、前髪がちょっと乱れて、江戸時代の慎太郎刈という感じです。(当時石原新太郎さんの髪型が流行っていたのですよ)ひばりさんは庭先の椅子に座って、台本片手に熱心に台詞の練習中です。とき色と橙色の中間色に鳥の柄が散らしてあるふり袖、娘島田の髪がよく似合っています。(この撮影が終了したのは9月ですから、京都はまだ暑さ厳しい時期、そこにスタジオはライトなどでよけいに暑いですね)記者は半袖で汗をかくほどではなかったようですが、橋蔵さまとひばりさんは、さぞかし暑かった途思います。記者の方がセットに入ってから20分近くも経っていますが、セッティングに時間がかかっているようです。なかなか始まらないため、堅い板の廊下にずっときちんと座りっきりの橋蔵さんは、さすがに退屈したようです。腰に差した小刀を、「エイッ」とばかりにサッと抜いて、鞘に収めたり、国定忠治みたいにライトの光にかざして見得を切ってみたり、お茶目ぶりを発揮して、スタッフや見学のファン達を笑わせています。(当時は撮影スタジオの中でも近くで見学ができたのですから、京都方面のファンの人はよかったですね、羨ましかったです)そのうち、それも飽きたようで、今度は庭の方へ向いて、顔をしかめたり、舌を出したり、あかんべえをしたりし百面相をしはじめました。誰を相手に?と思ってその方を見ると、なんと庭で台詞の稽古中だったひばりちゃんです。ひばりちゃんも負けずに顎を突き出したり、すました顔をしたり・・奮闘中ですが・・このにらめっこは橋蔵さんが優勢。ひばりちゃんは何度も堪えきれず笑い転げています。(お二人とも無邪気で可愛い。見学していたファンは見ていて面白く長い準備時間も飽きなかったでしょう)✶男女七歳にして席を同じくせずの巻監督の声が響きます。「さあ、テスト行きましょう」場面は菅谷家の庭先。「ま、こんなに暗くなったのに、新太郎少しは気をつけなさい。・・・二人きりで」橋蔵さんの新太郎くんは、一発お袋さんからお叱りを受け、そこへひばりちゃんの小浪の「新太郎といったら、わたしの言うことを聞かないのよ」と言われ、俄然攻撃の鉾先が橋蔵さんに向けられます。「新太郎、何故お嬢様の言いつけを聞かないのです」お袋さんから叱られて、新太郎くんは、くさってしまい返事もせずに目を伏せたっきり。ここで、「カット」の声が入りました。「叱られ通しで、折角の剣豪も台無しだよ」・・橋蔵さんが、ひばりちゃんを見て、怨めし気な顔をします。「だってぇ、新太郎さんが強情なんだから、仕方ない」「いや、強情なのは、あんたの方だょ」どうも、お仕事を離れても、この仲良しコンビは喧嘩友達です。次は、十八番のひばりちゃん、橋蔵さんの喧嘩シーンになります。全く真に迫るということはこのことでしょう。傍で見ていると、今にも掴みかからんばかりの凄まじさ・・ピッタリと息の合ったお二人の喧嘩ぶりに、見学のファンなど手に汗握ってハラハラしていました・・「全く上手いものですねぇ」ひと汗かいたお二人に、ここでちょっとご挨拶をしました。(ひばりちゃん)「あたしこまっちゃうんですょ。いつも勝ち気でおきゃんな役 ばっかしでしょう。だからみんな、あたしの地だと思ってんじゃ ないかと心配なのよ。ほんとはねぇ、とっても内気で、言いたい こともいえないくらい気が弱いのに」(橋蔵さん) 「そうだよ、普通のひばりちゃんは、とってもおとなしい、いい娘 さんだよ。でもね、時々江戸っ子らしい負けん気を出すこともあ るしね。まあ、多少の地はあるんじゃない」(ひばりちゃん)「まあ、ひどいっ、覚えてらっしゃい。映画では、私の家来みたい なもんだから、ブツとこでもあったら本当にブッてやるから」(橋蔵さん) 「ほら、ほら、地が出た」(ひばりちゃん)「キライよ」ちょっと仲良く話していたかと思ったら、あっと思う間に、たちまち口争いです。そのくせご当人たちは、至極楽しそうに、そうです、まるで喧嘩を楽しんでいるといった感じが、お二人には多分にあります。(橋蔵さん) 「僕はね、立回りが大好きなんですよ。ところが、この作品の前に は、二本とも立回りがなかったんで、大いに腕を撫していたんで すが、今度はちょいとした青年剣豪なんですから張り切っていま す。大いに、斬り倒すところをご覧にいれますよ」やさしい顔に似合わぬ物騒なことを言う橋蔵さんです。「さあ、本番行きましょう」 喧嘩場の再開です。「じゃ、ひばりちゃん、張り切ってやりましょう」と冗談を飛ばしながら、橋蔵さんが定位置につきます。橋蔵さまが廊下にお座りになったので、私達も、菅谷家の庭先に目を向けましょう。 夕暮れた中、菅谷家の庭先です。小浪は庭に出ていて、新太郎は廊下に座って、灯りもつけず何となく様子がおかしいのです。新太郎の母かねが部屋にやってきます。かね 「ま、こんなに暗くなったのに」かねは、灯りをつけて、廊下にいる新太郎に気づきます。かね 「ま、新太郎、少しは気をつけなさい。灯りも点けずにお嬢様と二人きり で・・」そんな、かねの言葉に小浪 「誰に見られたってかまわないわ。私達は小さい時から一緒にばあやお乳 で育った乳兄妹ですもの。・・てもねぇ、ばあや、新太郎ったら私の言 うこと聞かないの」かね 「新太郎、何故、お嬢様のおっしゃることを聞かないのです」新太郎は、かねの言うことでも、それはできないと返事もせずにあきれ顔です。 (ここからは、トミイとマミイにはなくてはならないお得意?の言い合いシーンになります・・ここは絶対に見逃せないところです。お二人の息はピッタリですし、楽しんでやっているようです・・そこが見ている私たちにはたまらなく良いのです)小浪 「ばあや、私は江戸へ行って、老中田沼様へお父様のことを嘆願に参ろうと 決心したんです」かね 「お江戸へ?」新太郎「いま言い争っていたのはこのことです。ここは絶対私がお伴しようという のに、一人で行くなんておっしゃるから・・」 小浪 「独りじゃありません。源八郎を連れて行きます」新太郎「この際、あんな老人を連れて行っても役にたちません」小浪 「いいえ、かまいません。私はもう子供じゃないんですから」新太郎「いいえ、子供も同然です。ことに、こんな大事な場合の一人歩きは まだ無理です」小浪 「まぁ、悔しい、ひとを子供扱いにして。いいえ、どうしても一人で 行きます。新太郎は、残ってください」新太郎「いいえ、残れと言われても、お嬢様を一人でやるわけにはまいりません」小浪 「残りなさい」新太郎「残りません」小浪 「残るのです」新太郎「やだ」(二人の表情を合成しました)新太郎がふくれて立ち上がると、かね 「これ、何です新太郎、。心安立に、そんな口を聞く人がありますか」新太郎「だって、母上・・」かね 「新太郎」新太郎は、母に言われ拗ねた様子をしています。 新太郎の母かねは、新太郎はお伴をさせないからと・・小浪に初めての道中だすから気をつけるように言います。新太郎が何も言わずさっさと言ってしまうので、寂しく思う小浪です。(あれだけ心配していた新太郎ですが、このまま知らんふりをして、小浪一人を江戸に行かせるのでしょうか。小浪も、本当は新太郎に付いてきてほしいのに、意地を張って・・「女は女らしく」しましょう) 続きます。
2017年01月31日
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いや、参らぬ、参らぬは橋蔵さまは「江戸三国志」のころは武士の役柄でも、まだ立回りも演技も見ていてちょっと・・ポーズはちゃんと決まるかな、・・とか心配がありましたが、「ふり袖太平記」では安心して見ることができるまでになっています。後の橋蔵さまからすれば、まだ完璧ではありませんが、スッとかまえる立姿が決まってきましたし、橋蔵さまらしい表情や話し方の片鱗が見え出した作品です。いつも思いますが、ひばりさんとの共演の時の橋蔵さまは、とても可愛いうぶな表情の中に色気を見せるのです。ひばりさんも相手を頼り切った甘えを見せてくださいます。可愛い妹のようなひばりさんをお兄様のような橋蔵さまが見守っている、そしてそこに恋心が生まれハッピーエンドという設定での作品が多くなるのも頷けます。1956年までの橋蔵さまの目のお化粧は、ちょっと歌舞伎的な切れ長にしていましたが、1957年以降目の切れ長の目が変わりました。アイラインも綺麗に入って、勿論つけまつげも変わり切れ長の目がこれまで以上に素敵になりました。その目が左から右に、右から左へと、動いて流し目になりますから、スクリーンを観ていた女性客はたまったものではありません。カメラワークもそこを分かっていての撮り方をしていきますから、橋蔵さまの作品はアップが多い。映画の最初の頃、映画でのメークをよく分からなかったのでひばりさんが教えてくれたと、言っていたことがあったと思います。そのように仲の良い兄妹のようなお二人ですから、息もぴったり。でも、ひばりさんとの共演映画を橋蔵さまファンの中には嫌う人が多い、ひばりさんのファンは橋蔵さまとの映画は好きで、今でもひばりさんの映画で好きなのはというと橋蔵さまとの共演ものがあがってきています。私はお二人の作品は好きです。お二人はプライベートでも良い仲であったから、ラブシーンもちょっとした仕草も自然体で、お互いに良いところを引出していますもの。さあ、それではトミイ・マミイコンビ第三作「ふり袖太平記」に入りましょう。斉藤豊吉さん原作もので、平凡に連載され、ニッポン放送で半年以上連続放送劇として放送、単行本も出たものの映画化です。制作はお二人が所属していた新芸術プロの社長福島通人さんです。ひばりさんのことも橋蔵さまのこともよく知っている方ですから、良いところが凝縮されている作品だと思います。第12作品目 1956年10月封切 「ふり袖太平記」 小浪 美空ひばり露木新太郎 大川橋蔵旋風の次郎吉 星十郎濡髪おえん 浦里はるみ幾江小市郎 片岡栄次郎菅谷織部正 有馬宏治源八郎 堺駿二駒木飛騨 吉田義夫 かね 松浦築 安房館山にある名家里見家の血筋を引く菅谷織部正は、六千石の禄高の旗本で江戸常勤。織部正は一人娘小浪の母とは家老駒木飛騨の策略で離別し、飛騨の妹繁野を正室にしていました。小浪は乳兄妹で育った露木新太郎と大の仲良しです。(今回の作品紹介は少し長くなります。私の好きな作品ということもありますが、橋蔵さまとひばりさんがといも良いので。お二人の台詞が・・・)(雑誌からの画像です。このような柄と色の着物なのですね)今日も二人は浜辺で棒切れを持って剣術で楽しく遊んでいます。映画の出だしは、笑みを浮かべた小浪が、「お面」・・入れ替わり新太郎が振り向きざまに、「参ったか」と優しい声で笑みを浮かべていいます。 小浪「参らぬ。お胴、お付」と立て続けにやってくる小浪をよけた瞬間、新太郎「あっ」小浪が転んでしまいます。新太郎、大丈夫だろうかと心配そうに近づいていきます。(映画では交互に映していますので、小浪の転んだ姿を右下に入れました) (新太郎の髪型いいでしょう。アップで見ると複雑な髪型になっています。後でよくみてください。この当時から時代劇でもその当時はやっている髪型を何処かに入れていたのですね。慎太郎刈りを意識して作った髪型だったようです。どんな髪型でも似合う橋蔵さまですね)小浪は何でもないようですが痛そうに振舞い、新太郎の気を引きます。(右下の画像がその時の小浪の様子です)新太郎はどうしようと困ってしまっています。小浪 「痛い、痛いわ」新太郎「お嬢様、お嬢様」新太郎の駆け寄ってくるのを来るのを見ると、小浪は水際の方へかけていきます。 新太郎「お嬢様」小浪 「新太郎、舟」新太郎「舟?」小浪が乗りたいというが新太郎「船はだめです。小さい時、私がわざとお嬢様の舟をひっくり返して・・」小浪 「肌着までずぶ濡れ、随分水飲まされたわ、あたし」新太郎「それで私はお袋から大目玉。あくる日一日暗い納戸に閉じ込められて、 飯ももらえなかった」小浪 「だからそっと、おにぎりを持っててあげたのに、新太郎たら・」新太郎「そうでしたかなあ」小浪 「そうよ、それを忘れるなんて、憎らしい、うん」着物の袖で新太郎を叩く仕草をします。 (可愛い二人です。ここの様子は本当に演技?、演技以上のお二人の呼吸の良さが表れています)水際を子供のように追いかけっこをしていましたが、小浪が渡れないところに来てしまいました。新太郎が「さぁ」と言って、おぶってあげるからというようにすると「一人で渡れる」と小浪は言います。新太郎「ずぶ濡れにしては、またお袋に大目玉を」一刀流の免許皆伝を受けてもまだお母さまが怖いのか、という小浪に、新太郎「参った・・・いや、参らぬ、参らぬは」 小浪が「これでも」と言って濡れて渡ろうとするので、新太郎が抱っこをしてしまいます。小浪 「いや、いやいや、いやいや、いや」 (とっても甘えるように言うの?・・参ってしまうわ、ひばりさん)新太郎「そんなに怖いなら落しますよ」小浪は新太郎にしがみつきます。新太郎「こんなに重くなってもこわいの。怖いのなら歌うたってもらいましょう」小浪 「まっ、ずるい」新太郎「じゃ、落すぞ」小浪 「あぁ、歌う、歌うわ」橋蔵さまに監督から甘~く甘~くやってくださいという注文だったようです。橋蔵さまひばりさんが相手だからバッチリ。相手を見るあのほんのり色気のある目が生きている。見ている私たちが照れてしまうくらいの出来です。(この後からひばりさんの「かもめ白波」が1コーラス流れます。新太郎は水の中を渡り、小浪を降ろしても濡れないところまで抱っこしていきます。橋蔵さま、抱っこしてあるいた時のひばりさんは重かったそうです。そうですよね、ひばりさんの体重に衣装の重さがプラスされるわけですから・・・リハーサルは??回、二人のことだから大丈夫だったでしょう)(youtubeに「かもめ白波」が流れるところの「ふり袖太平記」の動画が投稿されていますので二人の雰囲気が分かるのではないかと思いますので載せます。以前は「ふり袖太平記」からのひばりさんが歌っているところがあったのですが、著作権で削除になっちゃいました。そこで、歌は他の人が歌っているので気にせず動画だけ気にして見てください。ここの部分は1番の歌のところになります。2番のところはラストのところです)新太郎が街道の方へ目を向けた時、早籠が菅谷家の方にやってきました。「あっ、早籠」 新太郎「江戸で何かあったのではないでしょうか」小浪 「もしや・・お父様のお身に」二人は急いで屋敷に向います。菅谷家の乗っ取りを企む駒木飛騨が田沼意次と仕組んで、里見家改易次第書を書物庫から旋風の次郎吉に盗ませ、江戸城書物庫勤番から菅谷織部正を失脚させたのです。飛騨の妹繁野の娘小百合に菅谷家の跡目を継がせることを企んでいました。江戸から知らせに来た家臣より仔細を聞いています。江戸屋敷の実権は駒木飛騨に握られていること。このたびの殿織部正の失脚の原因も駒木飛騨の(図ったこと)・・その時、矢が家臣に向け射られた。江戸屋敷の飛騨のもとへ、菅谷家に行った家臣はつまらぬことをしゃべりかけたので始末したことが伝えられます。あとは、次郎吉に盗ませた、里見家改易次第書だ・・・。もう少し先へ進もうと思ったのですが、橋蔵さまとひばりさんのお馴染みのお二人の楽しいおしゃべりの掛合いから始まりましたので、ここは省くわけにはいかなくなりました。お二人を見ていると自然と笑みがこぼれてしまいます。ひばりさんがとっても甘い声で橋蔵さまに言い寄っていっても、嫌らしくないの、可愛いんです。それを受け止める橋蔵さまも大人っぽいのだけれども可愛い。お二人の息があっているから脚本以上の良さが出てきているのですね。つぎの場面もお二人の息の合った場面から始めることになります。 続きます。
2017年01月28日
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こうして呼べば、おとうが・・奥村丹後守が河北潟の視察にやって来たとき、お才が命をもらうと丹後守に短筒をむけます。お才 「命をおもらい申しますよ」五兵衛「お才、おまえ気でも狂ったのか」お才は可愛い子供を殺された時から、ずっと正気だと言います。要蔵「何を言う、あれはわしじゃない」と言うと、お才の行動を止めようと近づき短筒を取り上げようとしますが、その一発が丹後守の愛妾お扇の方に当たり負傷してしまいます。 丹後守を撃ちもらしたので次の作を・・大原はお扇の方の見舞品に毒を入れた菓子を殿様からといってもたせました。お粥もまだ食べられないお扇は殿様からの折角の菓子も食べられない。大野先生におすそ分けをすることにします。しかし、先生は私だけがいただくのは冥加に余ると・・それではと丹後守「拙者もご相伴いたしましょう」と菓子を取ります。大野先生は、五兵衛にも食べさせたいと持って帰ります。五兵衛「これは立派なお菓子ですな」一人で食べてもつまらない、みんなで喜びを分かち合おうと、分けて食べようとしていた時でした。 丹後守が殿様から頂いた菓子を食べた後、腹痛を起こしたとの知らせがきました。五兵衛「おい、その菓子を食うんじゃないぞ」奥村丹後守は毒殺され、執権に返り咲いたのは長大隅守と大原でした。埋立て工事をしている河北潟にある夜白い薬が投ぜられ、翌朝湖岸には死んだ魚が打ち上げられていました。五兵衛「要蔵、心当たりはないか」要蔵 「さっぱり分からん」五兵衛「工事に石張りでも使っているのではないかな」要蔵 「わしが知っとる限りでは、使っておらんです。石張りを使うとあんな風に 魚が死ぬもんですか」五兵衛「うん、場合によってはなぁ」大原は、死んだ魚を城下で売らせて、五兵衛をおとしいれることを考えます。例年五兵衛が善光寺参りに出かけている時を狙うというのです。お才を使って毒死した魚を売らせたため、多くの使者がでました。河北潟の工事をしていた人達が捕えられ、お白洲で一人が五兵衛の言いつけでと吐いたことから、銭屋の家族全員を召し取るべきとまで。要蔵は、五兵衛に知らせるため、旅先の旅籠に馬を飛ばします。五兵衛「よし、わしは闘ってやるぞ。例え屍を牢の中にさらしても、わしは 闘ってやる」要蔵 「おとう、わしも同じ覚悟だ」五兵衛「いかん、お前はここからすぐに逃げろ。そして、陰謀を企んだ奴の尻尾を 掴んで来い」要蔵 「はい」大原と長大隅は五兵衛を獄に投じ、毒薬をを用い病気のため獄死とすることで押し切ろうと考えます。食べ物に毒が入れてあるから7日から8日は食事をしないようにと獄医の言うことを信じ・・五兵衛は日に日に衰弱していきます。要蔵は、五兵衛に言われたように大原達の後をつけていました。大原と津本は、お才には用がなくなり斬ってしまいます。そして、冥途の土産にと、要蔵は息子の敵ではない、誤って自分で海へ落ちたのだと言います。大原と津本が去った後、要蔵がお才を助けます。お才「銭屋の若旦那、申し上げたいことがございます」 要蔵は、前田土佐守の屋敷にお才を連れていきます。要蔵「銭屋要蔵めにござります。父五兵衛の無実をはらすため、これに生き 証人を連れてまいりました。何卒、これの申し開きをお聞きとりください ませ、お慈悲でございます」銭屋五兵衛は大原と長大隅におとしいれられた・・河北潟に毒を流したのも、奥村丹後守を毒殺したのも・・・と言いお才は息絶えます。絶食をしていた五兵衛はお咎めなしが届いた時に、ガックリと倒れてしまいます。長大隅守には前田土佐守が上意をくだし、大原と津本のところへは上意により召し取りに行ったが、刃むかってきました。要蔵は外で成り行きを見守っています。大原が屋根の方から逃げようとしていたところを、要蔵が見つけ裏から屋根へ上がって行きます。(ここでは剣を持たない商人ですから、投げ飛ばされたりで、瓦屋根の上を何回も転げます。)その頃、五兵衛は大野先生が診ていますが、なかなか目を開けません。銭屋の家族も駆けつけます。要蔵は屋根に上り大原に向っていきます。 五兵衛が目を開けます。「・・・要蔵」と力のない声で呼びます・・また、「・・要蔵」と。要蔵は父のために大原と必死になって対決をしていました。要蔵が投げた水桶の水が屋根瓦に飛び散り、大原は足を滑らせ落ちてしまいます。 「要蔵」 「おとう」 「要蔵」 「おとう」五兵衛は力を振り絞り要蔵を呼び、要蔵は「おとう」と叫びながら父のもとへひた走ります。 前田土佐守が五兵衛のもとに、無実の罪に陥れられたことが全て明白になったことを告げます。長大隅守は切腹したこと、津本は召し捕られた・・あとは大原だけだ、「大原だけじゃぞ」と言うところへ、「おとう」と要蔵の声が・・要蔵が五兵衛のもとへ。要蔵 「おとう」五兵衛「要蔵か」要蔵 「おとう、大原の奴は召捕られました」五兵衛「馬鹿たれ、わしはなぁ、あんなちっぽけな奴はとうから相手にしては おらんわい」というと、土佐守にただ一つだけ心残りがあると。一日も早く異国と交わりを持たないと日本は取り残されてしまうと、訴えます。土佐守「分かった、分かったぞ五兵衛。その方の先見の目は、何時かは必ずこの 日本を 眠りから覚ますことになろうぞ」五兵衛「・・・うれしいお言葉を賜り、五兵衛死んでもわしの魂は要蔵が、わしの 魂を、要蔵が・・・」おまさの手を握りながら、海の百万石とまで言われた銭屋五兵衛は、その波乱の生涯をとじました。海辺に立っている要蔵とおてつ。「おと~ぅ」・・海に向って要蔵が何度も呼んでいます。要蔵「おとうに会いたくなると、ここでこうして呼べば、おとうが海の向こうから 帰ってくるような気がするんだ。お舞うも呼んでごらん」いつまでも海に向って「おとう」と呼んでいる二人でした。 (海に向ってのシーン、千恵蔵御大もいて、ダメ出しが何回もあり、橋蔵さまと千原さんは声がかれてしまったとか。納得できるシーンが取れるまでの努力大変ですね。それにしても、橋蔵さま何回「おとう」の台詞を言ったでしょう、すごいですね。) (完)「河北潟疑獄事件」で要蔵は一族と共に捕えられ、33才の若さで刑場へ。「海の百万石」と称された隆盛を極めた銭屋五兵衛とその一族は、この事件で無実の罪に問われ、お家断絶衰退してしまったようです。おてつは16才から銭屋の女中として頭もよく可愛がられていたようです。要蔵は養子に出されたのですが、離縁して銭屋に返って来て、おてつと仲良くなったようです。おてつは、要蔵が刑死したあと、鉄悟尼という尼になり、海月寺の庵主になったということです。「朧の刻」という小説があります。おてつが処刑された要蔵の首を、刑場から密かに盗み出したという逸話をもとに、要蔵の死後、よみの国から戻り、銭屋疑獄事件の真相と、夢の中で再び結ばれるという物語だそうです。
2017年01月23日
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わしは、両方考えます銭屋の所有船には、前田家の紋章を使って存分に商いをしてよい、ということになりました。河北潟に五兵衛と要蔵の姿があります。要蔵が、水が浅く魚が捕れない河北潟を埋め立てて、新田を開拓するのはどうだろうと言います。飢餓の時の用意にもなるし、沿岸の人も助かるのではないか、と五兵衛に言っています。すると、五兵衛は要蔵の案に賛成をします。五兵衛「うん、面白い。しかし、埋め立てはなかなかの大工事だが・・よし、 こいつは一つ奥村様のご意向を伺ってみよう」 要蔵 「ありがとう、おとう」(ここからは、恋が芽生えた要蔵にご注目ください。)蘭学者大野先生の家、おてつが薬の調合をしています。大野先生の講義が終わって、要蔵がおてつのもとへ・・手伝うといってやって来ました。おてつ「もう講義は終りましたの」要蔵 「うん」 (とってもいい感じなのです。自然でお姉さんに可愛い坊やが返事をしているみたい。)そして、要蔵はおてつに、自分が帰るとき、川の辺りまで送ってほしいといいます。要蔵 「実は、いつもいろいろ話したいと思っても、おてっちゃんが忙しそうに 働いているもんだから」(この時の要蔵の仕草がまた可愛い・・子供が物をいじりながらつまらないように拗ねるというか、そんな仕草をするのです。)おてつ「でも、外を歩くの、あたし怖いわ」要蔵 「怖い?」おてつは自分を女郎に売ろうとしている藤吉に会うのではないかと、要蔵 「なあに、わしがついているから、心配ないさ」大野先生が患者に包帯を巻くようにおてつに言います。すると、要蔵が包帯巻を手伝うと手を出しますが、先生から、その巻き方では・・おてっちゃんの方が包帯巻は上手いようだと言われ、照れ笑いをする要蔵です。 日本一の船常豊丸を造っている所に、五兵衛と妻おまさが様子を見に来ました。おまさは日本一の大船を持つ人の女房になるとは夢にも思わなかった、と幸せそうに五兵衛にい言います。五兵衛「あはははっ、この次は要蔵の嫁御の番じゃな」おまき「あたしも、この間からそのことを・・是非とも、銭屋の跡取にふさわしい 立派な嫁後をもろうてやらねばなりません」五兵衛「まず、心の立派なのが一番じゃ・・おまき、おぬしのようにな」(さあ、大変なことに。おてつの生い立ちがネックになるのでしょうか。どうなるのでしょう。要蔵は五兵衛とおまきが望んでいるようになるのでしょうか。)日本一の巨船、常豊丸の進水式が終わり、祝いの席が盛大に開かれています。しかし、要蔵の姿が見えません。五兵衛の心配をよそに、要蔵は家を抜け出し、おてつに料理を持っていったのです。要蔵「常豊丸のお祝いに配ったやつを一つ持ってきたんだ。おあがり」 おてつ「こんなご馳走、生まれてから食べたことがありません」要蔵 「みんな、お上がり」おてつが急に悲し気な表情をみせます。要蔵 「どうしたの⤴・・」(覗き込むように、とってもあたたかい感じでいうのよ。素直に育ったお坊ちゃまなのよ。)おてつは亡くなった両親にお弁当の中の一つでも食べさせてあげられたらと思ったら・・・と、要蔵 「ねぇ、おてっちゃん、もしあんたが嫌でなかったら、わしと夫婦になって くれないか。わしは、とうから心にきめておったのだが、いや、今すぐ 返事をくれんでもいい。よう考えてからでいいんじゃ」身分が違い過ぎるというおてつに、同じ人に生まれ身分の差などないという要蔵。そればかりではない、自分を女房にしたら、どんな災難がかかるかも知れない、とおてつがいいます。要蔵 「藤吉のことか。むろん、おぬしを嫁御にもらうとなれば、藤吉からの 借金のことも話をつけるつもりだ。二十五両という金は、今のわしには どうにもならぬが、わしはおとうに頼んでみようと思っている。 おとうならきっと、私たちのことを分かってくれると思うんじゃ。 何を泣くんじゃ」 おてつ「あまり思いがけなく、おまり夢のようなもので」要蔵 「そんなら、ええんじゃな・・ええんじゃな・・おてっちゃん」要蔵はおてつをしっかりと抱きしめるのでした。(橋蔵さまの言い方は、声もソフトですから、「おあがり」「みんなおあがり」「どうしたの」が、とても心地よいのです。こんな風に言われたら好きになってしまいます。)その夜、要蔵は五兵衛におてつのことを打ち明けますが、そんな金はびた一文出すことは出来ないと言われます。要蔵 「おとう、一生のお願いです。おとう、おてっちゃんと夫婦にさせて ください」五兵衛「いや、いかん。そんなことを考える前に、河北潟の埋め立て工事のこと でも考えてみろ」要蔵 「わしは、両方考えます」(そうですよね。要蔵にとってはどちらも大切なことだもの、さすがです。) (右側はスチール写真になります。)要蔵は部屋をでると、外で成り行きをまっている待っているおてつのところへ、要蔵 「だめだった」おてつ「そぅ」要蔵 「あんな、おとうなんか」しばらく思案しながら歩いていた要蔵の足が止まります。 要蔵 「おてっちゃん、こうなったら、二人で逃げるより道はない。逃げよう」おてつが頷きます。要蔵 「支度をしてくるから、裏口で待っていておくれ、いいな」要蔵は部屋に戻って身の回りの支度をして出て行こうとした時、近づいて来る足音が聞こえ、慌てて寝床に入って寝たふりをしていると、障子が開いて五兵衛が要蔵の寝ている様子を確認すると、何かをおいて去っていきました。要蔵は、足音が遠くなったのを確認し、出て行こうとして障子のところに包みがあるのを見ます。・・・開けて見ると二十五両が・・・「おとう」要蔵は有難くて男泣きします。 裏口で心配そうに待っているおてつ、その時窓が開き五兵衛が声をかけます。五兵衛「おてっちゃんかね。冷えるといかん、中へ入りなさい。・・わがままな 奴じゃが、頼みますよ」(この場面、見ていても思い出しても、目が潤んできてしまいます。五兵衛の親心がすごーく伝わってきます。)五兵衛の許しがもらえた要蔵とおてつ・・よかったですね。でも、喜んでばかりはいられないことが、これから起こります。おまさを五兵衛に取られたのを根に持つ大原と要蔵に息子を殺されたと思い恨んでいるお才が五兵衛をおとしいれてきます。 つづきます。
2017年01月20日
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船橋聖一の歴史小説「海の百万石」の映画化です。実際にいた人物銭屋五兵衛の映画化、三人息子がいたようですが、この作品は、そのうちの一人要蔵とのことを描いています。銭屋五兵衛は志を三つに分けて三人の息子に託しました。銭屋の経営・河北潟の干拓・五兵衛の志の実現。どれか一つしくじっても二つは生き残れる、ということです。要蔵が託されたのが河北潟の干拓でした。映画は、ここを脚色したものになっているのでしょう。要蔵の父親を呼ぶ「おとう」・・・要蔵と父親五兵衛の関係がとってもいいのです。時代劇と世話物に分けるとしたら「海の百万石」は世話物、東映としてはこの時期稀な作品だと思います。片岡千恵蔵御大主演の作品ですが、橋蔵さまという俳優との出会いがこの作品を本当にいいものにしたと思います。そして、橋蔵さまもこの時期にこの作品に会えたことはよかったことではなかったかな。要蔵は父親を尊敬し慕う蘭学を学んでいるお坊ちゃま。これから商人として成長して行くところを若い橋蔵さまは見事に演じました。剣も使わず派手な見せ場もない学者肌な男を見事に演じたということで、いままでチャンバラ役者としてのみ見ていた批評家たちも、一人の演技者として正しく評価するようになりました。この役は橋蔵さまにとって一つの試練でした。これを機に型の美しさにこだわっていた橋蔵さまが、のびのびと生きた人間を演ずるようななったと言われるようになりました。撮影の合間には、千恵蔵御大から教えをいただき、それに答えられると「よかった」という言葉が返ってくるのでとても嬉しかったようです。千恵蔵御大は初めて共演した橋蔵さまについて「カンがいい」と言っていたそうです。この後の千恵蔵御大との共演作品では、橋蔵さまはとても素晴らしい演技で答えています。「はやぶさ奉行」「血槍無双」「幕末の動乱」「お坊主天狗」「大勝負」と。「海の百万石」の撮影時、橋蔵さまはこうおっしゃっていました。「完全な町人役というものは初めてなので、いささか芸が生硬になったかもしれません。撮影日数が少なく研究する暇もなく、まだまだ映画新入生であることを痛感させられました。」いやいや、歌舞伎でならした橋蔵さまですから、商人としての歩き方、身のこなしは大したもの大丈夫です。話し方もいい感じで、初めてやる約とは思えないくらいです。こういう役のもの、世話物をもっと残してもらって見たかったですね。大映は、長谷川一夫さんと市川雷蔵さんが世話物を随分やっていた、女優さんもいっぱいいたし・・・東映は後半に錦之助さんがやっていましたが。橋蔵さまにはとても合うと思いましたし、橋蔵さま自身も世話物をやりたかったと聞いています。東映は、橋蔵さまを売るのには、ファンが期待をしている美剣士でいくことだけを考えていたのでしょうか。その分、橋蔵さまは年三回の1か月特別公演の舞台では、世話物を演目にいれたときもありましたから、その舞台を観られた方は本当に幸せだったのですね。市川右太衛門御大とは、第2作品目「旗本退屈男謎の決闘状」で共演していましたが、もう一人の片岡千恵蔵御大と共演ができる時がきました。では 1956年9月封切 「海の百万石」 要蔵、一生のお願いでございます加賀百万石前田藩にあった質商銭屋五兵衛は、侍を見返すような日本一の商人になろうと廻船業に転じました。銭屋はおまさと一緒になったが、前々から大原伴右ヱ門はおまさに強く執着していたので、銭屋への憎しみがとても大きかったのです。折あらば五兵衛を落ち入れようと策を練っています。そんな時、五兵衛の子要蔵と遊んでいたお才の子が死んだことから、お才は恨みを持つようになります。大原は津木治右ヱ門を使ってお才の過去を知っていると脅迫し、お才に五兵衛の密貿易の証拠を探るように命じます。文政八年、外国船内払令の強化とともに、銭屋の蜜貿易の噂も問題となります。長大隅守や大原らの反対にも拘わらず、奥村丹後守の主張が通り奥村が藩の執権となると、五兵衛は永代お船切手まで拝領して、藩の財政立て直しにも尽力していました。ある日、五兵衛はみんなの労をねぎらうため女歌舞伎に出かけ、そこで役者になっていたお才と会うのです。お才と大原の罠にはまった五兵衛は、やっとの思いで蘭学者大野弁吉の家にたどり着きます。時は流れ、天保七年、飢餓が襲い民は暴徒と化し・・銭屋にも飢餓の民たちが群れをなして押しかけてきました。(青年になった要蔵が登場・・我らが待ちに待っていた橋蔵さまの登場となります。)要蔵 「みな、まってくれ、まってくれ。みなが苦しいのはよう分かっとる。 しかし、うちの米蔵の米は御上の御用米なんだ。御上の命令無しには、 たとえ家のものとて指一本触れられない御用米なんだ」 終止がつかないところへ、五兵衛「待て」 と静止にはいる。「要蔵、もうええ、止めとけ」要蔵 「しかし、おとう・・」五兵衛「もう、ええ」五兵衛は群衆を米蔵へ連れていき、一人一升で我慢してくれといい米蔵を開けます。大原伴右ヱ門は、奥村丹後守が弾圧の手を伸ばしてくる前に、五兵衛を召し取りでっち上げれば手が出なくなる、と長大隅守に言いますが時期を待てと言われます。場所は変わって、蘭学者大野弁吉の家。大野先生のところで要蔵は今日も熱心に洋学を学んでいます。大野「例えば、この船だ」要蔵「黒船でございますな」大野「蒸気船と言ってくれたまえ。即ちこれは蒸気の応用、テレグラフは エレキの応用。すべてこれ学問学理の応用にすぎないのさ」要蔵「はあ・・」 大野先生のところからの帰り道、本を読みながら勉強をしながら歩いていると、何かから逃げるようにやって来た娘にぶつかります。(脚本は?蜆売りの娘おてつにぶつかって蜆を散乱させてしまった縁で知り合い恋をするようですが。)道すがら事情を聞くと、おてつは両親はなくおばの借金のために二十五両で女郎に降られるのだ、というのです。要蔵はおてつにそれだけ(女郎に売るのだけは)は断った方がと言います。 おてつは泣くばかり。それを見て、要蔵は懐から手拭いを出し、要蔵「さぁ、もう泣かないで」と、おてつに差し出します。(やさしいなぁ。とっても言い方がいい感じなのです。こんな風に言われたら、あなたなら要蔵をどのように思いますか。)おてつの足元を見て、裸足だったので洋装「あっ、これを履きなさい」 と言って、草履を脱ぎます。おてつ「いいえ、よござんす」要蔵 「足を切るといけない。わしは足袋を履いているから大丈夫だ」おてつ「でも、そんなにご親切にしていただいて」要蔵 「さっ、履きなさい」と言って、おてつに草履を履かせます。 (まあ、ここまでしてあげるの、優しいのね。)要蔵はおてつを見て、この笑顔を見せます。おてつもにっこりとします。要蔵 「やっと笑いましたね」 おてつは、もう家には帰れないといいます。(要蔵がいい男で優しい人だからといって、会ったばかりなのに少し甘え過ぎですよね。)要蔵、悩んでいましたが、何やら思いついたようです。要蔵 「そうじゃ、よい思案がある。おいで」おてつの手を取り、大野先生のところへ行ったのです。蘭学者大野先生宅要蔵「先生のお情けにすがるよりほかございません。要蔵、一生のお願いでございます」 (要蔵さん、一生のお願いということばに、おてつが何故にそこまでというような顔をしていますよ。)大野「それほどまでに、この娘さんを」要蔵「はい」(やはり、一目惚れだったのですか。) 大野「よろしい、かくまってあげよう」要蔵「ありがとうございます」おてつをかくまってもらい嬉しい要蔵ですね。でも、これから五兵衛にも要蔵にも苦難が待っているのです。 続きます。
2017年01月18日
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気になるか・・では、名乗ってやろう田沼は錦が男であることを随分前から見抜いていたようです。牢へ入れられた錦の姿が・・そこは身の軽い大八です。天井から抜け出し、三日月お才の家に帰っていました。 (ずぅーと錦に浸っていた私達に、今度はガラッと変わり町人・・はつらつとした若衆姿を見せてくれます。この映像が映った時は、観客は錦から大八への変化にと感動ものだったと思います。大八、涼やかでいい男です。)お才「お前さんに間違いがなくて何よりだったよ」大八「うーん、しかし、折角大事なものの在りかを突き止めたはずの腰元さんが、 西の丸へ連れて行かれてしまったんだ、何とか腰元さんを」お才「腰元さん?もしやその人は文江さんていう人じゃないかい」大八「お前さん、どうしてそんなことを知っているんだ」 その時襖が開いて、訳は自分から話すと越坂が現れます。大八「お前さんは、いつか上野の森で・・」越坂「この前は寺小姓、今日は町人。なかなか器用に変わられますな」 ちょっと間をおいて、越坂「時に、山縣大八殿」大八「えっ」越坂「実は、文江は拙者の妹です。拙者は越坂玄次郎と申すもの」~山縣大弐先生の門下で水戸家の家臣と言えば、我々兄弟が「入門控」を命をかけて探しているか分かるはず~と越坂が言います。越坂「~帰するところは同じ目的、悪政田沼を倒し、山縣先生のご意思、勤皇の 大義を世に広めんがためのはず」大八「そのお言葉を聞き、大八、百万の見方を得たような心持ちがいたします」 (橋蔵さまは、この時期はまだ線が細いですから、大友柳太朗さんの越坂と映ると・・小さく可愛く見えてしまいますね。)西ノ丸、家基の寝所へ文江を助けに忍び込んだ狐の面、越坂、大八がいました。文江が無事なことに、優しい笑みを見せる大八。 文江「あっ、あなたは」大八「文江さん」立ち上がろうとしてよろめいた文江は、とっさに駆け寄った大八の胸にすがりつきます。この時二人には、恋が芽生えていたのですね。町中、捕り方が網をはっているために、越坂の友人である築地の堀正太夫のところに身を寄せることになります。治外法権で公儀も入れない場所なので、かくまってもらうのには絶好の場所でした。大八と文江は、そのような中で親密になっていきます。かんざしを文江にいつ返そうか迷っている大八、大八が声をかけてきてくれるのを待っている文江です。大八が近くに来たので、ベンチの座っている場所をずらす文江、そこへ腰かける大八です。 文江「あっ、これはわたくしの」大八「そうです、いつかあなたが落したかんざしですよ。帰そうと思いながら・・ その折がなくて・・・今まで大切に持っていたんです、お守りだと思って ね」(こんな台詞言われたらいちころですよね。) 大八「私は大分、文江さんに嘘をつきましたね」文江「あぁ、お小姓になっておられた時」大八「それから、このかんざしが落ちた時」文江「本当に」ぎこちなかった二人の間がスムーズになったようです。笑顔で笑いあえるようになりました。大八「許してくれますか」文江「ええ」大八がかんざしを返そうとすると、持っていてくださいと、軽く手で押し返します。(橋蔵さまご自身おっしゃっていますが、女形の時代が長かったため、はっ、と気がつくと足が内またになっている時が、随分あったと。ここでも、ベンチに腰をかけている時、ちょっと足が内をむいているように見えます。撮影は順序よくは撮っていませんから、この場面から何故か私には、錦の雰囲気が少しある大八にみえました。動きがしとやかでね。橋蔵さまの声音、響きがいいですね。語尾や言葉を発するのを強くしないのが橋蔵さまです。すごーく優しいトーンでいいますから。そうそう、女性とのこのようなシーンは初めてでした。こちらが緊張して恥ずかしくなってしまいます。橋蔵さまも、これからの作品ではラブシーンが多くなってきますから、ファンは覚悟が必要だったでしょう、見たいような見たくないような、複雑な思いが・・・。)田沼から、オランダ甲比丹の接待についての席に堀正太夫も呼ばれました。接待の方法として、白無垢姿の花嫁の贈り物をしたらよいのでは、と話は決まります。その花嫁には、山口屋が以前田沼に差し出したおかんに決まりました。(おかんは、越坂達が匿っていましたが、留守をしている時は、岡っ引きに見つかり連れ戻されていました。)越坂が、水戸家から甲比丹屋敷に戻ってきました。越坂「大八殿、いよいよ、最後のときが来ましたぞ」大八「では、今夜にでも」越坂「さよう」田沼邸に越坂と大八が押し入り、仕掛け棚から「入門控」を取り出そうとした時、「曲者」と家臣たちに取り囲まれてしまいます。 (ここから立回りです。)大八は「入門控」を手に取り白刃を掻い潜り越坂に渡すと、二人は別々に・・大八、田沼邸から外へは出られましたが町方にも囲まれたため、橋の上から川へ飛び込みます。(ここでやっと立回りが見られてスカッとしました。やはり、東映の時代劇は立回りが気持ちよいです。作品の画像からですと動いているのでうまく画像が決まりません。スチール写真ですとこのように。) オランダ甲比丹が長崎よりやってきました。2日目の田沼邸での接待の宴です。喜んでいるのを見て、もう一息で思いのままにできる、入門控などなくても大丈夫という田沼です。宴もたけなわになり、皆が狐の面を被った花嫁行列が入ってきました。「狐の面とは妙だな」という田沼に、「狐の嫁入り」という趣向だと正太夫が答えます。駕籠が正面で止まり開きます。白無垢の花嫁が出てきました。音曲が止み静かになります。「今宵の媒酌人は、かくゆうお狐じゃ」と言い、田沼自らが花嫁を迎えに行きます。(田沼は、花嫁はおかんであると思っています。)花嫁の手を取り歩いていたその時、花嫁が足を止めます。白無垢の花嫁が、口を開きます。大八「田沼」田沼「なに・・」大八「山縣大弐の名を忘れはしまい」田沼「おのれは何者だ」大八「気になるか・・では、名乗って野郎」 綿帽子を取り白無垢を脱いで侍姿になった大八です。大八「山縣大弐の一子、大八だ」田沼はびっくり、周りも慌て出します。大八「あはっはっは、驚いたか意次」生かして表に出すなと田沼が言います。(最後の立回りです。) (まだ仕方のないことですが、体の線が流れるところが見受けられます。立回りとしては、鼻がけ黒装束での立回りの方が、私としては好きです。刀での立回りでは、まだ顔でのキメが出来ていません。橋蔵さま独特の斬ったあとの見得を切るではありませんが、あの仕草が早く見たいものです。でも、凄いでしょう、立回りで片足でも動けちゃうのです。)大立ち回りをするも大八危機一髪のところに「上意」の声が聞こえました。公儀大目付の資格をいただきやって来たのは越坂玄次郎です。私腹を肥やし国禁を犯した罪で、田沼に切腹を申しつけると、裃を脱いで切腹をするように見せ、越坂に斬りかかったが、大八の刃に倒れます。越坂「お見事」大八、お才一味は、水戸家お預けになるようです。大八と文江の様子を見ていた越坂が言います。越坂「大八殿」大八「はっ?・・・」越坂「これからは拙者のことを兄上と呼んでもらわねばなりませぬな」大八「・・はっ・・」越坂「しかし、余り見せつけぬよう、今から頼んでおきますぞ」 めでたく納まりました。ハッピーエンドで痛快で気持ちよい作品でした。 (完)「復讐侠艶録」は大友柳太朗さんが主役で、橋蔵さま共演なのですが、ストーリーが橋蔵さま扮する錦と大八がしゅになっているのと、作品に出ているのが多いので、ちょっと勘違いをしてしまいます。大友さんと橋蔵さまは公私ともに仲がよくなって、お互いの作品に、大友さんの作品には、掛け持ち作品が支障を来たさない限り橋蔵さまの出番が随分あるものが多いですね。橋蔵さまの女装(大八が錦として女になって)綺麗でしたね。薄化粧で女にはなっているけれども実は・・というところをチラッチラッと見せつけます。橋蔵さまが、女性の姿での作品は「復讐侠艶録」と「雪之丞変化」だけでした。雪之丞は女形の役者としての演技ですから、女としての完全な女の仕草ではありません。それだけにこの作品の女"錦"に扮した橋蔵さまの仕草・所作は貴重なものです。
2017年01月12日
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「田沼の首」・・といったら凌雲院の小姓をする錦は、田沼意次の眼に留まり田沼の屋敷に奉公することになり、その夜には田沼の屋敷にいき、部屋を用意されます。今日は遅いのでゆっくり休むようにいわれます。一人になった錦は・・何をするつもりでしょう・・部屋の様子を見回しました。 (何かするような雰囲気です。)夜が更けた頃、腰元の文江が動き出しました。見廻りの者が来たので慌てて錦が与えられた部屋の前の物陰に隠れていたのですが、近づいて来るのでどうしようか困っていると、部屋の障子が開いて、黒装束姿の男が部屋に引きずり込みます。文江が何か言おうとした時、大八「待った」小さな声で言い、文江をかばうようにして、見廻りの者が通りすぎるのを待つのですが、この時文江のかんざしが落ちてしまいます。音がしたため見廻りの者が錦の部屋の前でいったん立止まりますが、そのまま通り過ぎていきます。ほっとして胸をなでおろした時、文江が慌てて大八の腕の中から離れます。 文江「あなたは、この前の」大八「またお目にかかりましたね」文江「そのお声は、あの、もしや昼間の」大八「昼間の?へっへっへ、冗談で。あっしはおめえさんに会うのはこれで まだ2度目ですよ」 (この時、文江が落したかんざしを大八が手に持っています。)大八「それよりおめえさん、何を探して夜中に歩きなさる。もし、お差支え なかったら話していただけませんか。あっしはこんな男だが、もし お役に立つなら、と思いましてね」文江「あなたこそ、何を狙ってたびたび忍びこむのです」大八「・・(文江の顔色を見るように)田沼意次の首、といったら驚きますか」 文江「何のために」大八「仔細のことはちょっと言えませんが、これも人助けになると思っているん ですがねえ」(大八、手に持っていたかんざしを、話をしながら懐に締まってしまいます。)文江「あたくしは、山縣大弐の入門控を探しています」大八「えっ、山縣大弐の・・・」文江「あのぅ、お名前だけでも・・」大八それには答えず、大八「どうやら、大丈夫のようだ。さっ、今のうちに早く・・きっとまたお会い できますぜ」(何回も言ってしまいますが、橋蔵さまは鼻掛けが本当に似合います。顔のバランスと輪郭がよく、すっーととおった鼻でしょう、バッチリですよね。体の線も綺麗で、筋肉質で細く綺麗な足、お尻の形もよい、といい所ばかり。)田沼の屋敷では宴会が開かれています。山口屋がお礼のお返しの贈り物だと差出したおかんという女の人形ぶりを見ていて満足な様子の田沼です。その最中、金色堂では、見張りの者たちが大八にやられ、三日月お才の率いる狐の面一味が大介の手引きで財宝をいただきに金色堂に入ります。大八「不浄の財宝だ。遠慮はいらねえ、残らず頂戴するがいい」引き上げる時、お才が大八に心配そうに聞きます。お才「あんたの方は、いつやるつもり」大八「それが、悔しいが、なかなか隙がありそうじゃねえ。それに実は、探し物が 一つ増えましてね」お才「探し物?」大八「まだ検討はつかねえが、田沼の居間にあることは間違いねえ。なあに、 2,3日中には手を入れてみせますよ。あっ、気をつけてけえんなせい」 お才は小兵ヱに、錦のことが気になるのでもう少し様子を見てから帰る、というと田沼の屋敷に戻って行きます。お才たちを見届けて、大八は部屋を戻り、錦の装束をまとっています。「殿のお召しでございます」錦を迎えに来ました。障子が開くと、そこには艶やかな錦が座っています。錦返事をして、しとやかに歩き田沼の待つ大広間へ・・。 小兵ヱ達は盗んだ物をやっとの思いで塀の外へと出したところに・・越坂がいたのです。宴席に錦がやってきました。田沼「今宵はまた格別に艶やかじゃのう」酔って田沼が錦を見つめます。錦は、視線を田沼から外します。田沼「どうじゃ、予の意に従う気持ちには、まだならんか」 よい返事をしない錦に、錦以外の女には目もくれない証拠にと、贈り物のおかんの首をはねるというのです。無意気の殺生でなく、錦に対する心意気だ、と田沼が言います。おかんを庭に連れ出し切ろうとしたとき、戻ってきたお才が、そして越坂が助けに入ります。そこへ、家臣が、金色堂が大変だと・・田沼は慌てて金色堂へ向かいます。その様子を見て、錦はこの表情です。 (「ざまあみろ」という感じですかしら。)おかんとお才を助けた越坂がお才に、「お前の稼業は、昼は口入屋、夜になると狐の面を被るのか」といい、「狐の面は勤皇の厚い志と聞く、それに面白そうじゃ」仲間にいれてほしいというのです。田沼の屋敷から娘を連れだされたこと、金色堂が荒らされたことで、町方の動きが厳しくなりました。ある日の田沼の居間。「入門控」を隠しているところを覗き見していた文江が見つかってしまいます。誰に頼まれたと尋問します。田沼「申せ、錦に頼まれたか」文江は偶然通り合わせただけと答えていた所へ、錦が来ました。 (助けに来たのです)こんな所で何をしている、と錦が文江に言います。田沼「錦、その方こそ、ここへ何しに来た」(雲行きがおかしくなってきました。錦に不審を抱いたようです。)文江に所要を頼んだが遅いので見に来たのだ、と。文江は覗き見などはしない、許してほしいと錦が頭をさげます。田沼「そなたの心次第では、許さぬものでもない」(どういうことでしょう、意味深ですね。錦さん気をつけてね、折角いつでも敵を討てるところにいるのだから。)(錦はどういう事かというような表情をしますが、「なんでしょう」というように柔らかい表情になり田沼の顔を見ます。) 錦の表情を見て、文江は許され部屋を出て行きます。ここからしばらくは、橋蔵さまの錦と進藤さんの意次のやりとりになります。言葉一つ一つに、表情一つ一つをご覧ください。作品を見てほしい。そして、田沼のことばに対しての感情を目の動きで表現する錦をずっと追って見てください。田沼は錦に、心願の成就叶うまでは男に近づかないと言い張っているが、どういう訳だと聞いてきます。錦が黙っている様子を見て、田沼「言い訳としてはまずいのう、錦」錦、はっとします。すると田沼は錦の腕を取り、田沼「こう腕ずくに出たらどうする」錦 「お許しくださりませ」 (錦我慢です)田沼「あっはっはっは、そのしおらしさ、よく今まで続いたのう」錦 「何と仰せられます」田沼「どうじゃ、とことんまで争ってみるか」錦「なりませぬ・・お放しなさいませ」田沼「いいや離さん。この手この骨組み、これが果たしておなごのものか、あくまでも体に聞くのじゃ」 大老までになろうという男だ、目蔵ではない。初めのうちは騙されはしたが、合点のいかない数々、男であることにいつまでも気がつかないと思っていたのか。田沼「今日こそはとっくりと仔細を聞こう。その方、何ゆえあって当屋敷に女と偽り屋敷に住み込んだ、真の名前を申せ、何ものじゃ」 (田沼に見破られた錦ですが、我慢に我慢して、本性は表しません。(普通だったらこのあたりで「分かっちゃやってられねえ」とか言っちゃうのですが。弁天小僧ならもろ肌脱いでいなおっちゃいますよね。)錦の細かい眼の動き、我慢をして、ここまできても男ということを白状しません。)進藤英太郎さんは重みがあるにくたらしい役がうまいですね。橋蔵さまとのこのような場面は見ごたえがあります。橋蔵さまの目の動きが綺麗に細かく動きます・・目が田沼の言葉に対する錦の心情、感情の込みあげをてき面に表しています。画面も橋蔵さまのアップです。完全に橋蔵さまの、語れる目での演技になっています。錦が何も言わないので、家臣に、田沼「容赦はいらん、体に聞け」その言葉と同時に、錦の体が動きます。振り切って逃げようと抵抗しますが・・(無理) その時、西の丸様(徳川家基)が立ち寄られた知らせを受け。錦を牢に監禁しておくよう言いつける。徳川家基を歓迎しての席、腰元文江が家基の目に止まり、田沼に文江を差し出すように言います。そのころ、家臣たちが慌ただしく動いていました。牢に入れた錦がいないのです。天井が開いていて、着物が脱ぎ棄てられています。大八の女装錦の艶やかさをたっぷり見せてくれた場面でした。錦はどこへ行ったのでしょうか。目指すは同じ田沼、、大八、越坂、文江、お才はこの後どのようにかかわるのでしょう。 続きます。
2017年01月08日
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女にも見まほしい美男島津家も田沼意次に頭をさげた、田沼の言いなりにならないのは水戸家だけになったというのです。田沼に屈服するわけにはいかない水戸中納言治保でした。「入門控」には水戸家の家臣の名が多く書かれているので、水戸家に累のおよばぬよう未然に取替さねばならないのです。そのため、越坂は妹文江を田沼の屋敷に住みこませ、自分も浪人になって機会を狙っているのですが・・・まだ・・。水戸家に傷がつくかつなぬかの境、一日も早く「入門控」を手に入れてほしい、「入門控」が戻れば田沼を叩き潰せる・・と治保に頼まれる越坂です。山縣大八が田沼に追われていることを案じる治保に、越坂は大八のことは少し知っていることもあるので安心してほしいと言います。口入屋のお才のところに、徳雲という坊主がやって来ていました。お才 「錦さん、どうやら運が向いてきたようですよ。実はね、今の坊主は上野 凌雲院の使いで、今までいた小姓が暇を取ったので、一人世話をして くれって言ってきたんですよ」 錦 「それで」お才 「寺小姓といっても、実は女を男に仕立て世間をごまかしてるんですが、 凌雲院は寺の格も高いし、それに田沼とは訪ねたり訪ねられたりしている 特別の間柄とか・・だから、お前さんを小姓に仕立てて連れていく手も あるんですがね」小兵ヱ「こりゃうめえや、棚から牡丹餅だ。住み込んでしまえば田沼に近づく ことができますよ」(ここまでで、浪人の素性、田沼の屋敷で探しものをしていた腰元の素性が分かりました。そして浪人の越坂は、大八を何となく分かっている・・うぅん、だから舟に乗っている錦に向けて、人相書を投げたのでしょうか。)錦を小姓として連れていくことになりました。「じゃ、気をつけて」お才と錦を見送る小兵ヱです。小姓として、お才と凌雲院へ向かう錦です。小兵ヱ錦に見惚れ「どっから見ても女だなぁ」凌雲院の門外で、越坂と妹文江が人目を気にしながら話しています。文江は狐の面を被った男が思わぬ時に現れ助けられた、と越坂に話します。深夜にただ一人田沼の居間に忍び寄るとは大胆不敵な奴だ。越坂「・・・もしや・・・」 (山縣大八ではないか?・・と思ってのでしょうか)お才と小姓姿の錦は凌雲院に向かう途中、酔った侍達に絡まれ道を塞がれてしまいます。侍が言います。 「こら小姓、なかなか艶やかじゃのう。察するところ、その方は女であろう」 酒の酌に連れていくと錦の腕を取った時、錦 「御無体な、何をなさいます」(橋蔵さまの女に扮した女としての初めての声をここで聞くことができました。女形時代の橋蔵さまを頭の中でイメージして・・。小姓としてですから薄い化粧ですが、これだけ美しいのですから、ぽーと見惚れるだけです。)侍達に手向かいする気かと囲まれ、錦が何とか逃れようとしている所へ、越坂「待て、手荒なことはお止めなさい」 助けに入ります。 (本当はこんな侍達を蹴散らすことは錦には簡単なことですが、何しろ女になっているのですから・・振舞いはしとやかに・・ですね。錦さん、流石です。ここでの動きも女です。)お才「ありがとうございました。お蔭様で、あたくしは柳橋に口入屋を 営んでおりますお才と申します。この方は、錦と申し・・・」 お才はここまで言った時、越坂が錦をじっと見つめ探っているような視線に言葉が出なくなります。越坂「これからいずれへ」お才「はい、凌雲院様へこの方をご案内してまいります」越坂、錦に「気をつけていかれよ」と言って立ち去るのです。さあ、ここから暫くは、橋蔵さまの女形時代を彷彿させる場面になります。錦は男が女装ですから、女より女っぽい仕草が随所に見られます。女性も勉強しないといけません。仕草がたおやかなのですもの。手先までの柔らかな動き、腰の落し方、立ち居振る舞い、と全身で女を表現できているのです。六代目からの教えが身についていて、流石、歌舞伎界の将来を有望されていた若手人気女形だったということが分かります。浄寛僧正のところに案内されます。浄寛「頼んでおいた小姓か」お才「はい、さようでございます。お気に召しますかどうか存じませぬが、錦と申します」錦、浄寛に挨拶をする。 (どうですか、色っぽいと思いませんか。このような目で挨拶されたら、あなたどうしますか。これはまだまだ・・もう少しあとになると、もっと色っぽいです。)浄寛「うぅーん、なかなか艶やかじゃのう」気に入り使ってみようという浄寛。早速、錦に肩を揉んでほしいといいます。(「はい」といって浄寛のもとへ行く錦の歩く姿、うわぁ、女より女っぽい。)浄寛「うん?女子にしてはなかなかようきくのう。・・いやぁ、結構結構」身の回りの世話は女子でないとという浄寛に、錦が話しかけます。錦 「あのぅ、こちらは将軍様も一目おかれる高い地位のお寺と伺ってまいりましたが」 諸大名もごきげん伺いに来るが、老中の田沼は碁が好きで、時々呼ばれては碁を打つ仲だという浄寛です。(田沼の話がでてきた時の錦の表情です。)錦 「そのような折には、お伴が叶いますでしょうか」浄寛、そのときには連れていくといいます。錦 「きっとお願いいたします」浄寛「きつい念の入れ方じゃのう。あっはっは」(うまくいきました。田沼意次に会うことができるという返事をもらいました。)浄寛のお伴で田沼の屋敷に行く日が出来ました。錦は、田沼と浄寛が碁を打っている様子を、控えの部屋からうかがっています。(敵の田沼がすぐそばにいるのです。厳しい眼差しをむけて何を思って、いや考えているのでしょう。)そこへお茶を持ってきた腰元がやってきました・・慌てて錦は席にすわります。腰元は、田沼の居間で何かを探していた越坂の妹文江でした。腰元の文江は、錦の顔を見てびっくり、前に一度あったことがあると言います。錦 「えっ、いいえ、それは何かのお間違え。寺小姓の錦と申します」文江「いいえ、確かにそのお声どこかで」・・・(見破られては、折角田沼に近づけたのにだいなしになってしまう。さあ、どうしようか・・・) そこへ、浄寛さまがお呼びですと錦を迎えに来ます。(錦、窮地を救われました。)浄寛に呼ばれた錦に、田沼の視線が止まります。錦を見つめる田沼に、錦は笑みで挨拶を返します。田沼が錦を気に入った様子を見て、浄寛「田沼殿も美童を愛されますかな」田沼「いや、女にも見まほしい美男とおもいましてな」浄寛「さすがにお目が高い。お気に召しましたか」 田沼が錦を気に入ったので、浄寛は錦を譲ります。(この場面いいですよ。田沼を見つめる眼差しの動きが色っぽいのです。普通は嫌らしく見えてしまうのですが、橋蔵さまの表情は嫌らしくないのです。美しく、色気もあり、かわいらしさもあり・・男の人だったら、いや女の人でも、こんな目でこんな仕草でじっと見られたら・・・いちころなのが分かります。)錦の美しさに田沼意次は心を奪われてしまいました。田沼の傍にすんなりと行くことが出来ました。これから、田沼の屋敷に潜入しての錦のまわりで起こる話になっていきます。 続きます。
2017年01月06日
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1956年8月封切 「復讐侠艶録」 東京タイムスの連載「怪盗五人女」を脚色した映画で、大友柳太朗さん主演、大川橋蔵さま共演の痛快娯楽時代劇になります。徳川十代家治の世、老中・田沼意次は水戸家失脚を企み、勤皇の先覚者・山縣大弐を捕らえ水戸家の家臣が連盟する「入門控」を奪ったのです。主君水戸中納言の危急を救うため「入門控」を取り返そうとする越坂玄次郎、柳橋の口入屋実は女義賊の三日月お才、女装をして錦と名乗り田沼に近づく山縣大弐の息子・大八。それぞれの思いは同じであると田沼に立ち向かっていくお話です。橋蔵さまは大友柳太朗さんとは「笛吹若武者」以来二度目の共演となります。橋蔵さまと大友さんは公私ともに仲良になり、この後も共演することが多くありました。橋蔵さまの演技からも堅さが取れてきました。橋蔵さまこの時まだ27才。この作品の中での橋蔵さま本当にはつらつ水も滴るよい男、初々しさがあって可愛い!この映画の中では、大八と文江の若者のお互いの気持ちが描かれている箇所が意外とあります。大八役の橋蔵さまに、10代~20代の若き乙女たちは、私もこのような人と巡り会えたら・・と心ときめかしていたのでしょうね。(私はその当時小学低学年の時だったのですね・・まだ私の中はそういう気持ちは芽生えていない時だったのでした・・若すぎた!!)橋蔵さまが歌舞伎界の女形であつた時の舞台を観ていた人は少なかったでしょうから、女を演じるとどんな感じになるのか期待を持って映画を見たことでしょう。女形を演じていた時の舞台の様子を仕草から想像できますし、こんな声質で演じていたのかしらと、皆さまいろいろ想像し感動だったでしょう。女装の錦は化粧もそんなに濃くしてはいませんし、この時の橋蔵さまには女形の時の体系と表情がまだ残っていて本当に自然な感じで綺麗です。ちなみに、橋蔵さまの作品での女装?がみられるのは「復讐侠艶録」と、のちの「雪之丞変化」になります。錦は大八が女になりすましてということですから・・女らしく見せるための細かい仕草が見どころでもあります。裾さばき、腰の落し方、指先の動き、眼の使い方、と。御高祖頭巾で歩く姿は綺麗で、私は好きですね。橋蔵さまの立姿、歩く姿はいつ見てもよいです。(ちょっと余談ですが、)お才役の日高澄子さんは、映画界では出演は少なかったですが、大映、松竹、東映と出ていました。テレビでは脇役でしたが活躍していらっしゃいました。頼りがいがある姐御役がピッタリで素敵な人でした。千原しのぶさんとはまた違った良さがありました。田代百合子さんは、東映では錦之助さんの相手役が多かったと記憶をしているのですが。橋蔵さまの相手役は「復讐侠艶録」と「修羅時鳥」の二作品でしたね。華がない女優さんという気がして、私は好きでないなぁ・・橋蔵さまの相手役としては、釣り合いがとれなく相手役には向かなかったと思います。橋蔵さまの演技を受け止められないのでは、橋蔵さまの甘い魅力がだいなしです。この頃は女優陣が少なかった東映でしたから仕方がないのね。では、本筋に入りましょう。錦と山縣大八水戸家の失脚を企んでいた田沼意次は、勤皇の先覚者山縣大弐を捕えて「入門控」手に入れます。山縣大弐には大八という息子がいます。生かしておくと一門を率いて事を起こすのは必定、田沼の意向を見せてやるといい町に人相書きの看板を立てさせます。町で人相書きを見ていた不審な編み笠をかぶった侍は、岡っ引きが転んで手から放した人相書きの紙を手にすると、返してほしいというのを無視して懐に入れてしまします。岡っ引きがつけているのが分かっていて橋の上に来ると、その侍は御高祖頭巾の女が乗っている舟の方に目を落としています。(口入屋のお才という)女が船に乗ろうとして侍を見ました。すると、浪人は何かを合図するようなそぶりをして、懐から取り出した人相書きを丸めて、橋の上から川の桟橋に止まっている舟をめがけて投げました。それが御高祖頭巾の女(錦といいます)の肩に当たります。(左の画像の肩のあたりに白くぼーっと映っているのは丸めて投げられた人相書です。) 錦が侍の方に視線を向けますと、手で早くいけと合図をします。 (この瞬間にみせる錦の表情がいいですね。綺麗!!橋蔵さまでないと、この眼の使い方の表情はできないですね。) お才に言われ小兵ヱが慌てて舟を出します。二人の女を乗せ舟は川をゆっくりと流れていきます。錦とお才を乗せた舟の上、 お才「誰だろうね、これを投げたお侍は・・」と言いながら、投げられた紙を開けると お才「おや、山縣大八だって。誰かさんに似てるじゃないか」と言って、錦に手渡します。小兵ヱ「なるほどね、田沼の野郎、だいぶ躍起になっているらしいが、この江戸中 いくら人相書をばらまいたところで。捕まる気遣いはありませんぜ」 お才「まさか山縣大八が、女の姿で昼ひなた、こんな舟に乗っていようとは 夢にも思わないだろうからね、ねえ、錦さん」お才の言葉に微笑みで頷く錦です。(ここの場面まで、錦は声を発しません・・表情は女の錦ですから、橋蔵さまがどのような声で話すのか、見ていた皆さまは待ち遠しかったでしょう。・・じらしますねぇ。)お才「だけど、女までに身を変えて田沼を狙う大八様、いえ錦さんのご苦心が、 三日月お才本当に頭が下がります」 錦「いや、父代のわずかばかりの恩顧に感じて、何から何までお世話くださる お才さんのご親切、本当にありがたく思っております」 (錦がここで初めて喋ります。見ていた人達は、ここで男の声で話すとは想像もしていなかったのではないでしょうか。ここでは、錦ではなく、大八としてお才と話をしているので、表情と声は男です。映画館で見ていた人達は、期待が外れてしまったかもしれません・・ガッカリしないでくださいね。監督はちゃんと見ている人達の期待を裏切ってはいませんから。)田沼意次の屋敷の様子を探る錦、お才、小兵ヱの姿があります。(歩く姿綺麗でしょう。裾さばき、姿勢、流石です・・これだけでも、橋蔵さまに惚れちゃうのです。) 田沼の屋敷の物々しい警備。正面の門から運ばれていく品物の行列が。お才「田沼に絞られているのは百姓町人だけではなさそうだよ」お才が錦の方を見ます。それに対し錦は頷き、田沼に何かを思うように視線を走らせます。 田沼の敷地内にある金色堂には、各大名から送られてきた品物が唸っているのです。その中、水戸家からだけがまだだったのです。「あくまでも水戸が頭をさげてこぬ了見なら、わしも断じて手は引かんぞ。幾度でも使者を出し、幾度でも脅してやる」という田沼です。家臣から最近狐の面の盗賊が江戸の町に出没しているからこの金色どうも気をつけた方がとの忠告に、大丈夫と田沼意次は笑い飛ばしました。各大名からせしめた金銀財宝の入った金色堂を狙いに定め、狐の面を被った一味が田沼邸内に押し入ります。同じその頃、田沼に使えている腰元が、寝静まったころ何やら動き出します。そして、狐の面を被った一人の男が様子をうかがいながら・・田沼の部屋の前まで行った時、気づかれたか? すかさず身を隠しますが・・障子が開きます。田沼は人の気配を感じたようです。金色堂では鍵を開けようとしている狐の面の一味。腰元は、何かを探している様子、居間の戸棚から手文庫を見つけ明けると短銃が入っていました。その様子を天井裏から見ていて降りて来たのは、先ほどの狐の面を被った男でした。田沼は、どうも気になって居間を改めに行くと、手燭の用意をさせます。先ほどの居間では、天上から降りて来た狐の面の男に、腰元が手文庫にあった短銃を向けます。男は面をはずし、(女装の時は錦と、男装の時は大八と書きます。)大八「おっと、早まっちゃあいけねえ、その引き金をへたにひかねえほうが、 お前さんの身のためですぜえ。・・夜よなか、主人の部屋で何を 探していなさるんだ。 大八「ふん、なるほど、初めて会った人間には言えねえだろうが、さあ、 そんな物騒なものはこっちに貸しなせい」腰元が躊躇したその時、人の来る気配を大八は察知します。 大八「誰か来る、早く元へ」田沼が居間を見回し天井が開いているのに気がつき、「曲者だ、出会え」と、大八は腰元が見つからないように逃がしてから、田沼の前に姿を見せてから雨戸を破って逃げていきます。金色堂に押込みをいていた一味も慌てて逃げます。大八の台詞格好いいです。「若さま」「江戸三国志」で見せた役とは全然違う・・橋蔵さまの新しい魅力がここに花開きました。2作品目の「旗本退屈男」での半次役の時、この人は違う魅力もあると言われていましたがなるほどですね・・・町人、やくざも出来る。そして被り物も合います。「旗本・・」では頬被りでしたが、今回はきりりと締め鼠小僧風の黒装束。この後こういう黒装束に被り物で出る作品も多くなっていきます。橋蔵さまは、被り物も合うし、黒という色が似合います。次回から錦と大八と忙しい、いよいよ動き出しますよ。 続きます。
2017年01月03日
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あけましておめでとうございます幸せいっぱいの一年でありますように、お祈りいたします大川橋蔵さまと共に、今年も作品を紹介してまいりますので、皆さまお付き合いの程よろしくお願いいたします。華麗・優美・流麗。さそっそう・粋・鯔背、これらの言葉がぴったり合う二枚目スター大川橋蔵さま。仕事の合間に書いていきますので、どこまで作品を紹介できるか・・な。私も橋蔵さまを何回も確認することは、心により深く刻むことが出来るので、楽しみにして書いていきますね。
2017年01月01日
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