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岩登りが若い人たちだけのものだった時代、雪の北岳バットレスに誘われた。当時私は岩の才能に限界を感じていて、岩を去るきっかけを探していた。そして誘いに乗り、これを機会に岩登りを止めるつもりだった。計画が具体化するにしたがって恐くなり、雪崩れを避けるために時期を早めたり、易しいルートに変更したりしてしまった。その結果、ものたらない登攀になってしまい、けじめとならずにその後も同じような山を続けている。 最近なぜか北岳バットレスを登ってみようと気持ちになった。バットレスには上記の時以来行っていない。昔はバットレス沢出合にベースをして楽々日帰りで登っていた。しかし今の私の力では少し工夫が必要なような気がした。また人気コースのために渋滞対策も必要である。考えた末に、御池小屋を早立ちする計画ではなく、一番のバスで広河原に入った日に登って、肩の小屋で泊る計画とした。 8月下旬になっても安定した夏空が続いている。猛暑ゆえに雷雨も多く、雨に会わないうちに登り切りたかった。気持ちだけが先行してしまい、ちょっと早いペースにバテバテでバットレス沢を登った。順調に思惑よりも早い時間に四尾根の取付テラスに着くことができた。この日の四尾根は私たちの前に5人パーティー、そして私たちの後を追う5人パーティーだけだった。スピードも同じようなもので、四尾根の登攀を開始した時は7割がた成功したような気持ちになった。 取付テラスまでは昔の記憶はまったくなかったが、四尾根を登っているうちに記憶が少しよみがえってきた。雷雨の心配はなかったが、マッチ箱の岩峰に立つころには薄いガスが去来するようになった。眼下に大樺沢の雪渓を見ての登攀にはならなかったが、風もなく涼しく文句のない気象条件だった。先行パーティーは中央稜に継続するためにCガリーに懸垂で下り、後続パーティーも中央稜に向かったようだ。終了点は我々だけの世界だった。長い休憩の後、途中でのビバークを考えて持ってきた非常用の水を捨てて山頂へと向かった。
2010.08.30
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暑さを逃れようと、ここ数年の夏の恒例となった感の丹沢の玄倉川本流を歩いた。丹沢の黒部と言われた玄倉川だが、面白い箇所はたった1時間ほどの距離だ。それでも行きたくなる魅力がある。 猛暑が続いたが、この日は猛暑も一休みで午後からは雨の予報だった。青崩隋道の手前から河原に下りると、水の少なさに驚く。淵を泳いて通過するのが目的だが、淵には水はたまっているだろう。モチコシ沢大滝のシャワーを受けて先に進むとやっと淵の出現である。曇り空だが、水は温まっていて躊躇なく泳げる。 玄倉川は磨かれた白い石が特徴となっているが、この日の玄倉川はいつもより苔が付いているように感じた。細かいことを気にしなければ、楽しい川だ。往復しても2時間もかからないので、別の遊びを用意するのが大事だ。昨年は焚き火パンで遊んだが、今年の猛暑に焚き火は暑いだろうと、平凡なソーメンにした。寂しいので焚き火もしたが、涼しさに焚き火を囲んでソーメンを食した。
2010.08.20
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16日月曜日に小川山に行った。お盆の混雑も15日日曜日までと考えての日程だったが、廻り目平キャンプ場の盛況振りには正直驚いた。あの広いキャンプ場にはテントを張るスペースを見つけるのも困難なくらいに混雑していた。西俣沢沿いの林道も駐車する車の列を見ながら先に進むとやっと停めるスペースが見つかった。 このあたりの標高はおよそ1600m。日ざしを浴びると暑いものの、日陰に入れば涼しい。気温はこの季節は17度から25度くらいで推移しているようで、熱帯夜の続く下界からは別天地のような快適さだ。涼しさに長袖でクライミングをスタートしたが、すぐに半袖に着替えた。近郊の岩場では岩に熱気がこもっているが、ここではこんなことはない。 今回は易しいマルチピッチルートを登るのが目的だった。キャンパーは多いもののクライマーは少なかった。午前中にマルチピッチルートを2本登ると、もう目的は達した気分になった。午後からはトップロープでのクライミングをのんびりと楽しみ帰途についた。次回は空いている時にキャンプで来たいと思った。
2010.08.17
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丹沢の小川谷廊下を歩いた。今年二度目の小川谷廊下である。前回は6月で水が多く、水も冷たく厳しさを感じた山行だった。今回は水も少なく、かつ水はぬるみ、楽しさが際立った遡行となった。 お盆休みなので混雑を予想していた。しかし玄倉川や小川谷の河原はキャンパーで大混雑だったが、小川谷廊下は他に1パーティーを見ただけだった。やはり正しい登山者はもっと大きな山に行っているのだろうか。 今回の目的は親睦だった。親睦山行らしい『のんびり』と歩くはずだったが、皆セカセカと歩いてしまい2時間で遡行は終了してしまった。最後は河原でのんびりと昼食をとった。夏の定番は「ソーメン」だが、今回は「冷やし中華」となった。
2010.08.14
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9日にある丹沢の沢を予定していた。ところが当日起きてみると激しい雨に、この計画はあっさりと中止とした。その時のメンバーの一人は下界の暑さから逃れるために、日を改めて沢に行こうという。私は時間のかかる沢に行く意思がなかったので、短時間で帰れそうな西丹沢の中川川水系の地獄棚沢を提案した。私の提案は運良く通ったが、同行者は下界からの脱出が目的なので沢ならどこでもよかったのであろう。 下界は強い日差しが照りつけていたが、丹沢は厚い雲に覆われていた。幹線から離れ山間部に入ると、急に空気が変わったのを感じた。登山道を少し歩き、マスキ嵐沢の出合から大滝沢に降りた。雨の後なのに水は非常に少ない。やはり夏だ。 やがて正面に立ちはだかるように地獄棚沢のF1が現れる。高さは50mと言われている。もちろん巻きのルートだが、この巻きは簡単ではない。左岸の急な樹林帯をロープを付けて越えた。立ち木が安定しているので精神的には楽なルートだが、腕力が必要なルートである。 大棚を越えるとナメ状の滝が連続する。どれも適度な難しさ(あるいは易しさ)で、適度に水がかかるので、今日の目的にはあった沢だった。普通に歩いたのではすぐに終わってしまうので、途中で時間調整などした。 連瀑帯が終わると二股になる、支流の右俣に入ると作業道がある。これを辿ると、沢の最後には避けられない「つめ」のいやらしいもなく、一軒屋避難小屋に簡単に出られる。なんだかあっけない沢だが、短い時間でも別世界のような環境に身を置く贅沢さを少し味わった半日だった。
2010.08.12
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日本三大岩稜を選ぶとしたら、剣岳八つ峰、槍ヶ岳北鎌尾根、前穂北尾根となるだろう。いずれの岩稜も多くの岩峰が並びながら山頂に向けて標高を上げて行く尾根の姿が美しい。魅力あるルートとは、登っての充実感だけでなく、姿や形も大事な要素だ。 奥穂からのジャンダルムはその姿を見た人に強い印象を残すだろう。北穂からの前穂北尾根も印象的だが、どちらかと言うと優美な姿である。奥穂からのジャンダルムは前穂北尾根よりも強い印象を見た人に植え付けるかもしれない。それはジャンダルム山頂から垂直なフランケを持つ急峻な飛騨尾根の姿のためであろう。 安曇節の一節に「西へ西へと皆ゆきたがる、ジャンの飛騨尾根岩登り」というのがあるそうだ。このように目立った存在だった飛騨尾根は穂高がバリエーション開拓の時代を迎える1930年にはトレースされた。それ以来、人気のルートで多くのクライマーを迎えるが、最近は訪れるクライマーは少ないようだ。それはルート自体が冒険を求めるには物足らないし、位置的な不便さが原因になっているように思われる。 今までジャンダルム飛騨尾根を登ってみようと思ったことがなかった。それが2週間ほど前に急に行くつもりになった。手ごろな難易度と静かな登攀が楽しめるのではと思えたのが理由かもしれない。穂高岳山荘を基点にするのが短時間で取り付けるのだが、入山が簡単な岳沢ベースの計画にした。 確実に長時間行動になるので岳沢をまだ暗いうちに出発した。天狗沢を登っているうちは夏の強い日差しはまだだ受けなかった。暑さを考えると早立は正解であった。天狗のコルで強い陽を受けたが、コブ尾根の頭への登りは日陰斜面にルートが取られていたのは幸だった。 飛騨尾根は想像していたより容易でかつ快適だった。残置支点が少ないと予想して、ギアはたくさん持って行った。尾根は見た目より傾斜が緩く、ランナウトしても不安は感じなかった。必要ならばナッツが有効な割れ目がたくさんあった。確保支点はピナクル状の岩が有効だった。 遠くに奥穂・西穂の縦走者の姿を見るものの、すばらしい岩稜を占用できるのは幸せだ。T2やT1の顕著なテラスは下からは聳え立つ岩峰に見え、それを目指して固い岩にロープを延ばす行為は何ものにも変えられない山の楽しさだ。登攀自体は2時間ほどだった。のんびりとした時間を過ごしたかったが、のんびりしていたのでは奥穂を廻ってベースに戻る計画が許さない。奥穂には出発してから8時間半後だった。あとは惰性で紀美子平を経て下るだけだ。明るいうちにベースに戻れるのは確実と解ると、いっそう歩みが遅くなった。
2010.08.06
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