型をこよなく重んじるも、嵌ることをめっぽう嫌がる作曲家の日記

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2020.06.18
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テーマ: 現代音楽(10)
カテゴリ: 作曲家
小学生の頃から生意気にもクラシック音楽愛好家について興味があり、
憧れていた時がありました。
最初は管弦楽曲、交響曲、ピアノ曲が好んで聴く対象でした。
子供ですから、華やかな音、親しみのある曲、身近なピアノ曲など、
音楽の授業や鑑賞教室で取り上げられる曲が興味の対象でしたが、
それらがクラシックの本当の名曲とはやや違っていることにすぐに気がつきました。
そこからレコード芸術や音楽の友、FM雑誌を読み漁るに至りました。
それでも室内楽曲は作曲のレッスンを受けるまで遠い存在で、
室内楽を好んで聴くようになるのは、


しかし、作曲を志すにあたり最初に書くのが室内楽でしたので、
そのお陰で高校に入った頃には室内楽ばかり聴くようになっていました。
入試で弦楽四重奏を書く予定だったので、
古典の弦楽四重奏をよく聴きましたが残念ながら当時それは長くて退屈で、
特にベートーヴェン、メンデルスゾーンは聴きながら気が遠くなっていました。
それに比べればラヴェルはとてもよく、アカデミックとは言い難いプロコフィエフ、
ショスタコーヴィチ、スメタナ、リゲティなどは好きで聴いていた気がします。

宍戸睦郎先生に師事した高校時代にベートーヴェン漬けになりました。
彼はどんな作曲においても根本はベートーヴェンだと考えていました。
宍戸先生はジョリヴェに師事した僅か3人の日本人のうちいちばん兄弟子で、
大学に入ってからもいつジョリヴェの分析を教えてもらえるだろうと心待ちでしたが、

ジョリヴェの分析は最後までお預けでした。

曲として好きとは思わなかった12音技法は分析できるとその達成感がひとしおで、
ジョリヴェもその時期に分析していたらもっと早くに好きになったかもしれません。
大学教員になってから演奏会実習ゼミでジョリヴェをとりあげた学生は、
サックスとピアノのための幻想即興曲のみで、

他は院生の研究テーマとして論文指導として多くの分析をしました。
その結果、宍戸先生の教えはジョリヴェそのものだったと感じました。

今はジョリヴェの音楽を土台として作曲するようになりました。
そして、クラシック音楽の中においてもっとも芸術性を感じさせる、
室内楽、ソロを聴くことによって内面的な影響を受けています。
若い頃に、ここに辿り着くことはまったく想像していませんでした。
しかし、これまでの全ての出来事が今の自分に導いていたと感じます。

今更になってということですが、ルーツを考え今の音楽事情を見るのです。
再評価とはそれを誰かが主張した時に起るものかもしれません。
しかし、その多くは残っている音源や記録を見た一般の愛好家の文章で、
あたかもそうであったかのように実しやかにwebにある限りです。

よって、知る限りの事実を少し書いておきたいと思います。
宍戸先生とまだ会っていない1960年代に書いたエッセイや解説から、
先生が留学していた頃には留学生の類にもれず屋根裏部屋に住み、
隣に住む60歳くらいのおばさんから弾いているピアノについて、
「ピアノがよく聞こえますが、音楽を弾いてもらえませんか?」
という苦情を受けたことがあり、
フランス人の友人の運転でドライブに出て大きな事故に遭ったことがあるそうです。
また、一人でノルマンディを旅して鰯とライスをレストランで食べたなどの話があります。

そんな宍戸先生の1960年頃に作曲したピアノ協奏曲第1番を聴くと、
ジョリヴェのピアノ協奏曲からの影響と感じさせる打楽器の用法、
日本を想わせる旋律、また伝統的なピアニズムと現代的なピアニズムが交錯することは、
ジョリヴェの思想に合致していてさまざまな様式感を感じさせます。
しかし、何よりも音楽は構成力だということを感じさせます。
要所要所の圧倒的な力強さは生涯変わらなかったことだと思います。
ピアノの田中希代子氏は先生の前妻ですが、この録音の頃は離別されていたかもしれません。
現代音楽をこれほどに演奏する凄い日本人女流ピアニストがいたことは驚きです。



宍戸先生のピアノ作品には「トッカータ」と名付けられた作品がいくつかあります。
子供も演奏するピアノソナタ第2番の終楽章もトッカータです。
日本人の作品として誇れる内容で、
デュティユーなどのフランスのピアニズムは気品も感じさせます。
この曲を聴くと宍戸先生が現代音楽を除いてもすばらしいことがわかります。



今の若い作曲学生は形式や構造をあまり考えない傾向があります。
ある時まじめな学生が次のように言いました。
「いかにも盛り上げるぞと言った音楽を聴くと気持ちが萎えてしまいます」
型に嵌った音楽、感覚的な音楽が多い中、
形式や構造はもっとも工夫すべきところで聴き手はその時間の中に身をおき、
その時間の中で盛り上がっていると感じるわけですから、
単に大きな音を出しているとか多くの音があるだけではありません。
盛り上がりを感じない音楽がNGというわけではありませんが、
形式や構造という音楽の大きな因子を活かさずに評価はないと思います。
音楽で最初にクリアしなければならないのが形式や構造であって、
経験上よく「長すぎる」「短すぎる」「あそこが長すぎる」「あそこが短すぎる」
などと言われたら真摯に反省しなければならない時です。
「綺麗な音」と言われたらそれは必要条件で、「汚い音」と言われたら問題です。
「格好いい」と感じるかどうかは、人それぞれ自己満足の範囲です。
よくある画一的な格好良さを問うことは個性や表現の幅がなくかえって虚しいです。
逆に格好いいと感じる趣味に合わせて作ることはいくらでもできるのです。
若い人たちがよく言う「格好いい」とは映画音楽的、映像的な「格好いい」であって、
そんな表現はやろうと思えばできて個性的でないことが多いのです。





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最終更新日  2020.06.18 16:13:40
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