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「おれを今すぐ十九歳の女にしてもらおうか」冷静な口調で言われてルーファス・ラヴィーは絶句した。週の始まりの月曜日の放課後、日替わりのケーキを楽しもうとしていたところに切り出されるにしてはあまりにも予想外の事情だった。あんぐりと口を開けて見返したが、こんな冗談を言う相手でないのは分かっている。おまけに猛烈に腹を立てているのは一目で分かる。救いを求めて隣に座ったシェラに目をやったが、こちらは何やら必死の様子で手を合わせている。(お願いですから逆らわないでください)と言わんばかりだ。確かに今のリィの様子は尋常ではない。表情は落ち着き払って見えるのに緑の瞳の奥に押し殺そうとして押し殺しきれない炎がちらついている。迂闊に刺激したらそれだけで大爆発しかねなくてルウはビクビクしながら問いかけた。「あの、・・・エディ?まず理由を聞いてもいい?」「ドミが来た」意味が掴めず困っているとシェラが囁いた。「リィの姉ドミューシアが体験入学にいらしたんです」ドミューシアに起こった屈辱的な出来事は・・・。 「クラッシュ・ブレイズ」シリーズは、異世界で王妃兼将軍として冒険した経験のある美少年リィや同じ異世界で殺し屋をしていたヴァンツァー、海賊王ケリーと財閥令嬢にして超一流軍人でもあるケリーの妻ジャスミン夫婦、などとんでもない常識はずれの人々が「普通の人間」として平穏な生活をしようとするストーリーです。当然、常識はずれの彼らにそんなことができるはずがなく、否応なく様々なトラブルに巻き込まれることになってしまいます。そして、今回リィは姉のドミューシアの仇を討つため異世界デルフィニアで王妃をしていた経験を活かし美少女に大変身、殺し屋を廃業して勉学に打ち込むヴァンツァーは宇宙の大女優ジンジャーに誘われて闘争中のマフィアたちの中心に乗り込むことになり、ドレスアップして夫のケリーとデートすることになったジャスミンはちょっとした間違いでデートがいつのまにか戦闘になってしまうのです。「目指せ一般市民」というスローガンとはほど遠い、彼ららしい冒険が始まることになります。 「マルグリートの輪舞曲(ロンド)」は姉思いのリィが主人公の「優しい狼」、意外と気の合う元殺し屋ヴァンツァーと大女優ジンジャーの二人が活躍する「初戀の詩」、ジャスミンとケリー夫婦がデートと大暴れをする「怪獣の宴」、中編ストーリー三本でお送りします。美少女に変身して女性の敵を成敗したり、恋愛トラブルを解決しつつ人質の少年を守ったり、デートとマフィア退治を両立したり、それぞれのバラエティあふれるエピソードが少しずつ関連し合いながらストーリーが進んでいくことになります。それにしても恋愛やデートでトラブルが起きたら、その後の埋め合わせや仲直りが大変になるのではないかと思うのですが、これらのエピソードではそれらの危機を全く問題ないような感じで乗り切っていてすごかったです。そうした所に登場人物たちそれぞれの信頼や絆の強さが感じられ大変面白かったと思います。あと、久しぶりのリィの女装はやっぱり似合っています。本物の女性たちに負けていませんね。 ジャンルはデートトラブル・アクション・ファンタジー。アクションやファンタジーが好きな人にお薦めです。<終>クラッシュ・ブレイズシリーズ「クラッシュ・ブレイズ」シリーズは「デルフィニア戦記」シリーズ、「スカーレット・ウィザード」シリーズ、「暁の天使たち」シリーズの続編です。あらかじめ「デルフィニア戦記」シリーズ、「スカーレット・ウィザード」シリーズ、「暁の天使たち」シリーズを読んでから読むといっそう楽しめます。
2009年01月26日
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「団結力というものは、時に全ての悪を打破するのよ!」会長がいつものように小さな胸を張って何かの本の受け売りを偉そうに語っていた。今回の名言に俺の隣に座る元気少女・椎名深夏がノリノリで応じる。「おお、その通りだぜ会長さん!正義の絆は何より強い」どうやら熱い要素好きの深夏の心に火をつけたらしい。理由なくその場でシャドーボクシングを始めてしまった深夏を満足げにみながら、ちびっこ生徒会長・桜野くりむは「うむうむ」と頷く。副会長である俺、杉崎鍵は早速脱線気味の状況をそれとなく修正にかかる。「それで今日は・・・確か夏休み前の全校集会でやる出し物の話し合いですよね。毎年恒例の生徒会役員による寸劇でしたっけ」「そう!それの話!」会長は少し背伸びしつつ、ホワイトボードに「出し物について」と記す。それを眺めて俺の目の前にいる書記で三年の知弦さんが「ふぅ」と物憂げな溜息を漏らす。いつも不敵な彼女には珍しいことだったため、俺は首を傾げた。碧陽学園生徒会での雑談は今日も今日とて楽しくて・・・。 「生徒会」シリーズは、主人公の生徒会副会長・杉崎鍵をはじめとする私立碧陽学園の生徒会メンバーたちが毎回生徒会室に集まって楽しく雑談するというストーリーです。身長だけでなく精神年齢もちびっこな美少女生徒会長・桜野くりむ(通称・アカちゃん。クリムゾンなので)、陰謀家でドSな生徒会書記・紅葉知弦(彼女は生徒会長のことが大好きです)、熱血でレズビアンな体育会系生徒会副会長・椎名深夏、あらゆるTVゲームとボーイズラブをこよなく愛する深夏の妹にして生徒会会計・椎名真冬。彼女らは生徒会メンバーは生徒たちの人気投票によって選ばれました。本当に単なる人気投票の結果なので性格や政策や能力はいっさい関係なく選ばれていて、全員が見た目重視の美少女ばかり。そんな中、学園内での美少女ハーレムを夢見る杉崎は、ほとばしるエロの情熱で勉強しまくり「成績優秀による推薦」という形で見事生徒会副会長になることに成功しました。そうして自らのハーレムサクセスストーリーを妄想する杉崎は生徒会の美少女たちを口説きまくることになりますが、当然彼女たちはエロ丸出しの杉崎に口説かれることなく毎回生徒会室で爆笑トークを繰り広げることになっていきます。 「存在しえないプロローグ」に登場する謎の企業。そして、その企業から派遣されている生徒会顧問の教師・真儀留紗鳥。前巻から傍若無人すぎる美人教師・真儀留紗鳥が加わったり、この巻で杉崎が謎の企業に挑戦状を叩きつけたり、様々な展開がありましたが基本的に生徒会メンバーたちが面白おかしく雑談するといういつもどおりのエピソードが続いていくことになります。1~3巻をかけて少しずつ登場人物たちの背景が明らかになったりストーリーは進んでいますが、学園や生徒会の日常を脅かすような大事件は全く起こることなくギャグのような雑談シーンが中心でシリアスな展開はほとんどありません。このシリーズはとにかくひたすら爆笑トークが続くという普通のストーリーでは絶対ありえない展開で、生徒会の楽しくて温かい雰囲気を存分に味わうことができるのが魅力的でとても面白いです。 ジャンルは生徒会学園雑談コメディ。コメディが好きな人にお薦めです。<終>生徒会シリーズ短編集?も出てますマテリアルゴーストシリーズ(生徒会シリーズとちょっとだけ関連があります)涼宮ハルヒの憂鬱(生徒会シリーズ1巻の出だしは涼宮ハルヒの憂鬱を意識したものです)
2009年01月19日
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かくて、また、時は流れ、人は移ろい、物事は過ぎてゆきつつあった。別れの宴が持たれ、そしてヴァレリウスがヨナとひそかにミロク教徒についてのかなり不安な話し合いをしたその夜がたちまちに、それははやグイン王とそれを迎えに来たケイロニア宰相他一行が故国ケイロニアに向かって発ってゆかなばならぬ日であった。「行ってしまうのねグイン・・・寂しくなるわ。本当に・・・寂しくなってしまう。クリスタル宮廷はまた火が消えたようになってしまうわ」リンダはもう今さらその繰り言を繰り返すことにいささか気がとがめながらも、それでもやはりグインの巨大な手を握って涙を流さずにはいられなかった。「今度はいつ会えるのでしょう。ああ、本当に今度はいつあなたに会えるのかしら。ハゾスさまは私に今度はサイロンに来るようにとご親切に勧めて下さったけれど、やっぱり今のパロの状態を考えてみればなかなか女王である私が旅をしてるゆとりはないわ」「このたびは本当に世話になった」グインは重々しく女王の華奢な手を握って云った。サイロンへと帰るグインを待つものは・・・。 「グイン・サーガ」シリーズは、記憶を失った状態で突如ルードの森に現れた豹頭人身の異形の主人公グインが英雄的な功績が認められて大国ケイロニアの王様になっていくというストーリーです。記憶のないグインは自分の記憶を何とかして取り戻そうと世界三大魔道師のひとり賢者ロカンドラスを捜すことになります。しかし、「北の賢者」と呼ばれるロカンドラスを捜して北の国々を旅して回ったものの、結局ロカンドラスを見つけることができませんでした。そんな時、中原の大国ケイロニアを訪れたグインはケイロニアの質実剛健な気風を気に入り、ケイロニアで暮らすことになるのです。超一流の戦士であるグインは体育会系気質のケイロニアでたちまちのうちに受け入れられ、「豹頭」という異形にも関わらずどんどん出世していくことになります。そして、闇の司祭グラチウスに攫われたケイロニアの姫シルヴィアを見事救い出したグインは、シルヴィア姫と結婚することになってケイロニアの王に選ばれます。ところが、淫魔ユリウスの毒牙にかかったシルヴィアは精神的に病んでおり、その後グインが長期間戦争に出かけたり再び記憶を失ったこともあって二人の間に深い溝が出来ることになってしまうのです。 古代機械に記憶を修正されたグインはケイロニアでの記憶を取り戻したものの、今度はパロ内乱やタイスに関わる記憶を失うことになります。しかし、グインが行方不明になったり記憶喪失になったりして落ち込んでいたケイロニアの選帝侯や将軍たちは大喜び。さっそくグインを連れてケイロニアへ帰国することになるのです。グインの帰国にケイロニアの人々は熱狂的な歓喜で出迎えますが、グインの妻シルヴィアに大変な異変が起きておりそれはグインを苦しめることになっていきます。私としては、シルヴィアは犯罪被害に遭い精神的にも肉体的にも深い傷を負った可哀想な被害者だと思うのですが、ケイロニアでは「皇女にふさわしくない犯罪者」のように扱われていてとてもショックでした。特にグインの親友ハゾスは最悪で「いっそ死んでくれたほうが良い」「汚らわしい淫婦め」など、とても親友の妻や主君の姫君に対する態度ではなかったように思います。本当にグインの親友であるなら親友の妻シルヴィアのことをもっと気にかけ、病気で苦しむシルヴィアに適切な治療を受けさせるのではないでしょうか?ともあれ、今回はいつも超人的なグインの弱々しい姿が見られたり、どんな状況になっても変わらないグインのシルヴィアへの愛が伝わり面白かったです。 ジャンルは夫婦の危機ファンタジー。家庭崩壊ストーリーやファンタジーが好きな人にお薦めです。<終>グイン・サーガシリーズ(一部紹介)
2009年01月10日
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遠い遠い神話の時代。神々はこの世界を造った時に三つの約束事をした。一つ、神々の争いをこの世界には持ち込まないこと。一つ、全ての神々はこの世界に過度の干渉をしないこと。一つ、全ての神々がこの世界に何か一つの「贈り物」をすること。ある神はその世界に「人」という生き物をつくった。別の神々はその世界に「土」を用意して、「樹」を造り、「水」と「空気」を与え、「炎」や「氷」、「雷」といった精霊の力を用意した。またある神々は種々の「獣」を造り、「森鬼」や「泉女」「妖精」といった人以外の種族を造った。そうして次々と贈り物は定まっていき、やがて新参の神々の番となった。しかし、世界に必要そうなものは既に先人達によって定まっている。だから、この新参の神々は自らの持ち物を一つずつその世界へもたらすことにした。神々がこの地に残したと言われる魔導具「神器」。人間たちに与えられた「魔導具を作る」「魔導具を使う」という二つの能力。新しい神々が残していったそれら祝福の行方は・・・。 「輪環の魔導師」シリーズは、魔導具を作ることも使うこともできない主人公の少年セロが実現不可能な魔導具「還流の輪環」(ソリッド・トーラス)をめぐる争いに巻き込まれていくことになるというストーリーです。優秀な魔導具職人だった祖父ゼルドナートに育てられたセロでしたが、セロ自身には魔導具を作る才能も使う才能もなく無理に魔導具を使おうとすると壊してしまうので祖父の跡を継がず仕方なく薬師を目指しています。そんなある日、王立魔導騎士ハルムバックに「君の祖父のゼルドナートが遺した魔導具を見せてくれないかね」と頼まれたセロは、はじめて祖父が六賢人のひとり魔人ファンダールの弟子だったことを知らされるのです。祖父は実現不可能とされる特殊な魔導具「還流の輪環」(ソリッド・トーラス)を完成させていました。そして、「魔族」という危険な集団が「還流の輪環」(ソリッド・トーラス)を狙っていることも知らされます。幼馴染みの少女フィノや故郷の町ミストハウンドを守りたいセロは祖父の友人だと言う奇妙な魔導師アルカインとともに「魔族」と戦うことになっていきます。 魔導具については全く分からず急に命を狙われることになってしまうセロ、年下の少年セロを愛し心配するあまり身分の差だけでなく「魔族」とも戦おうとする勇敢な貴族の娘フィノ、そして何処から見ても猫の姿をしている奇妙な魔導師アルカイン。魔導具を作ることも使うこともできないセロや基本的に貴族のお嬢様であるフィノ、可愛い黒猫にしか見えないアルカインたちが強力な魔導具と巧妙な陰謀を操る恐るべき「魔族」たちに敢然と立ち向かっていく姿はとてもドキドキハラハラさせられました。大切な人たちや愛する町を守るため勝ち目のなさそうな強大な敵と戦うことになっていく展開は大変面白かったです。また、光を司どる精霊オルタフ、豊穣の女神アラクナ、鍛冶の神ルールーブ、双子の女神クティカとシュティカなど以前読んだことのある「パラサイトムーン」シリーズに登場していた神々の名前が出てきてビックリしました。「パラサイトムーン」シリーズの主な舞台は現代の日本なので全く別世界のような「輪環の魔導師」の世界で同じ神々が信仰されているのは不思議な感じがします。 ジャンルは冒険アクション・ファンタジー。アクションやファンタジーが好きな人にお薦めです。<終>輪環の魔導師シリーズパラサイトムーンシリーズ「輪環の魔導師」シリーズは、「パラサイトムーン」シリーズの続編ではありませんが多少関連しています。あらかじめ「パラサイトムーン」シリーズを読んでから読むといっそう楽しめます。
2009年01月05日
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