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「テオ、サチを見た?」「・・・酒場は数軒、あたりを付けてある」テオは手にあったパン屑を全て投げて、何も言わずに荷物を担いだ。酒場を三軒廻ったが、サチの姿は見つからなかった。四軒目に至っては客すら一人も入っておらず、フェンは急く足で踵を返した。グラスを置く音にテオが踏み止まる。フェンが釣られて薄暗い店の奥を見やると、狭いカウンターの中で店主らしき壮年の男がこちらを指差していた。店主は長い髪を一つに纏めて、二重瞼の重そうな目でフェンとテオを見比べた。「聞いた通りだ。おっきいのと小さいの。分かり易いね」店主が薄い眉を持ち上げて掠れた声で笑う。フェンが店の扉を閉めて意味を問う前に、彼はその場でしゃがむと長い布の包みをカウンターの上に載せた。「若いトルリオン人の男から預かり物だよ」フェンはカウンターに飛び付いて布の包みを開いた。出て来たのは神剣ラヴァンドラ。空から降ってきた鉱石で作られたという曰くがある。サチが旅路の途中で誰かに貰ったらしいが、彼は無手の技を使う事もあって、いつも邪魔だと杜撰な扱いをしていた。突然消えた親友サチ。真実を知りたいフェンはトルリオンに向かうことになって・・・。 「フェンネル大陸」シリーズは、理由の分からないまま言われなき罪を着せられ故郷ストライフ王国を追放された元王女で主人公のフェン(本名・フェンベルク)が世界を知るための放浪の旅に出ることになり、行く先々の国々でトラブルに巻き込まれたりトラブルを起こしたりするストーリーです。13歳ながら王族として軍を指揮していたフェンは、信頼していた元帥の兄に裏切られ「反乱を先導した」という全く身に覚えのない罪により流刑に処せられることになってしまいます。他国に追放されたフェンは奴隷として競売にかけられることになり、ストライフ出身のグール(グールは普通の人間よりも頑健な肉体を持つ種族です。ストライフでは差別されています)・テオに買い取られて「悪に染まることなく前向きに生きろ」というプレッシャーをかけられながらの新人生をスタートさせることになります。そして、身元引受人のテオ、「英雄の弟を捜している」謎の青年サチ、の二人を旅の仲間にフェンは各国で大冒険を繰り広げることになっていきます。 突如行方をくらました親友サチの故郷トルリオン教国へ潜入したフェンたちでしたが、誰に聞いても「トルリオンの英雄」の情報が得られずサチの手がかりが見つかりません。「英雄の弟を捜している」と語ったサチは嘘をついていたのか?深い絶望に襲われる中、フェンは「あたしを外国に連れて行って。あたしは神子になんかなりたくない」と懇願する訳ありそうな少女チコリを助けることになっていきます。フェンが旅して廻る国々は「何百年も偉大な一人の王が治めている国」「頑健な肉体を持つグールだけが住むことの出来る過酷な自然環境の国」「他国の王を認めず周辺の国々を侵略する国」など、様々です。その国に住んでいる人には当然のことでも、他の国では奇妙に思える習慣・常識がたくさんあります。純粋で正義感の強いフェンはそうした国々独特の習慣・常識を認めつつ、あまりにも悪質で人々を苦しめる納得できない習慣・常識には国家を敵に回しても弱者を守るため敢然と戦うことになるのです。今回は謎の多いサチの故郷の話でした。サチやチコリを救うための冒険が人々の絆を深め、フェン自身を大きく成長させていく過程が大変感動的でとても面白かったです。 ジャンルは、ハートフル冒険アクション・ファンタジー。感動ストーリーやアクションが好きな人にお薦めです。<終>フェンネル大陸 真勇伝シリーズ(真勇伝は偽王伝の続編になります)フェンネル大陸 偽王伝シリーズ
2009年12月21日
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「大和くん、ひとつお願いがあるんだけど聞いてくれるかな?」「は?なんですか?」「今後は可能な限り由良ちゃんと一緒に居る時間を増やしてほしい。できれば、その・・・」そして、間にひとつ小さな咳払いを挟み、続けざまに告げられたのは「しばらくの間、彼女と共同生活をしてほしい」予想だにしない要求だった。記憶改ざんの影響で性格が別人のようになってしまった由良。由良が一番心を許している人物・大和一哉は、由良の記憶を取り戻すきっかけを作るため男性にも関わらず「学園の女子寮」に由良と一緒に住むことになってしまいます。「いいのか、一哉?女性の集団の中に男がお前ただひとりだなんて・・・多分、お前が想像しているよりもずっと肩身の狭い思いをすることになるぞ」一哉を心配する父・陽介。しかし、母・ミスラは「ナイスな展開じゃない。やったわねー一哉」諸手を上げて賛成。両親からの餞別はお金と避妊具で・・・。 「EX(エクス)!」シリーズは、戦隊ものでお馴染みの改造人間たちを生徒として受け入れている特殊な学校・聖クレス学園に転入した主人公の大和一哉が不良ヒーローや名目だけ正義を掲げた悪の組織と戦ったり、改造人間たちが人間社会に受け入れてもらえるよう頑張ることになるというストーリーです。かつて世界征服を目指し人類を恐怖のドン底に突き落とした改造人間たちも今ではすっかり反省し、ボランティアにも積極的に参加することで平和的に暮らそうと努力しています。一方、正義の集団エクスターたちは敵だった改造人間たちが悪事をしなくなって堕落の一途。「正義の味方は良いことをして当然」という世間のプレッシャーに負けてパトロールの放棄、平和に暮らす改造人間たちを虐待、「正義」の面影もありません。そんな中、正義のエクスターを父に改造人間の幹部を母に持つ一哉は、不良に堕落したヒーローや建前だけが正義の組織からクレス学園を守るため戦うことになっていきます。 夏休みの間だけ女子寮に住むことになった一哉は、由良の添い寝や不法侵入、そして隣室の先輩・十季子の夜のミーティングに理性が吹き飛びそうになります。「学園を救ったヒーロー」として人気のある一哉は女子寮の女の子にモテモテで、一哉が入浴しているのを女の子たちが覗こうとして大騒動。しかし、そんなハーレム気分を味わう間もなく記憶が混乱している由良は一哉以外とはコミュニケーションをとることができずトラブルを起こすことになり、「改造人間は悪」というレッテルを貼ることで改造人間を社会的に抹殺しようとする組織NYKは自らテロを起こしその罪を改造人間になすりつける卑劣な陰謀を企むことになるのです。今回は、記憶が混乱して別人のようなイメージチェンジを果たし皆を振り回すことになる由良と由良に振り回される友人たちや女子寮の人々の大慌てな様子がとても面白かったです。とにかくヒロイン由良のイメージチェンジにはビックリさせられました。 ジャンルは、ヒーロー学園ラブコメ・アクション・ファンタジー。ラブコメディやアクションが好きな人にお薦めです。<終>EX!シリーズドラマCDもあります
2009年12月14日
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もしもゲームの世界に入ってしまったなら。君なら、どうする?おれ、厳島勇吾はその時、酒など入っていなかった。ましてや、大麻やコカインなど絶対やっていない。自分で言うのもなんだが、おれは最近の高校生にしてはかなり真面目なほうなんだ。何かが起こったはずだった。確かそう、眩い光を見た・・・ような気がする。そのあたりの記憶はかなり曖昧だ。とにかく、瞬きひとつする間さえない、あっという間の出来事だった。「えっ?」きっとおれはその時、ぽかんと口を開けた間抜けな顔をしていたはずだ。(あれ?えっ?なんだこれ?)おれは緑濃い景色のただ中にいた。おれは学校から帰って制服を脱がないままゲーム機のコントローラーを握りしめRPG「ギャスパルクの復活」をプレイし始めたはずだ。それがなんで!なんで突然、全く別の場所にいるんだよ。いつの間にやらゲームの世界に入り込み、自分が作ったゲームのキャラクター、ゴーデスナイトのユーゴになっていた勇吾。自分と同じようにゲームの世界に入り込んでしまった学校の友人ショウとともにゲーム世界を冒険することになって・・・。 「RPG WORLD(ろーぷれ・わーるど)」シリーズは、RPGゲーム「ギャスパルクの復活」の世界に紛れ込んでしまった主人公の普通の高校生・厳島勇吾(ユーゴ)がゲームの設定どおりの英雄レベルの戦士になって、同じく高レベルの魔法使いとなった友人の宮本翔(ショウ)とともにゲームの世界を冒険することになるというストーリーです。当初、現実世界では普通の高校生でしかない二人は、それぞれ高レベルの戦士と魔法使いというゲームの登場人物になったことに感激して、モンスターを倒したり、魔法を使ったり、ゲーム世界の女の子たちと仲良くなったり、通常では味わえないファンタジー世界を満喫することになります。しかし、少しずつ「現実世界に戻ることができるのか?」「このゲームには死者を復活させる呪文やアイテムは存在しない=ゲームの中で死ぬと本当に死んでしまう」など重大な事実に気づき、現実以上にハードでエキサイティングな冒険を否応なくすることになっていきます。 私はそれほどTVゲームをしませんが全く経験がないわけではなく、ファイナルファンタジーなどRPGをやったことがあります。なので、このストーリーを読んで自分が育てたゲームの登場人物になるという想像をしてしまいました。しかし、私のゲーム上の戦術は大規模な攻撃や魔法でモンスターを一掃するというものなので(派手な召喚魔法とかが好きなのです)、村や同行者を守るどころか逆に傷つけてしまうのでは?と思いました。閑話休題、現実には戦闘や冒険とは全く無縁の人生を送ってきた普通人・勇吾が「今の自分には騎士としての力があるのだから、その力で皆を守らなければ後悔する」ということで、冒険のたびに本当の勇者へと一歩ずつ近づき成長していく姿が大変面白かったです。特に平凡な自分と真正面から向かい合いもかきながらも、「死を恐れずに弱い者を守るため体を張ろう」と決意するシーンは感動的でした。 ジャンルは、ゲーム世界冒険アクション・ファンタジー。アクションやファンタジーが好きな人にお薦めです。<終>RPG W(・A・)RLD(ろーぷれ・わーるど)シリーズ
2009年12月07日
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