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安藤美雷。それが彼女の名前のはずだった。隣のクラスで一番かわいいと男子たちに噂されている女の子だ。まあ、だからといって話したことはないのだが。その彼女の横からすごい勢いでトラックが迫ってきているのが大兎の目に入る。大兎の中にあった眠気が吹っ飛ぶ。そして、トラックの運転席を見た大兎はその運転手が寝ているのが分かる。「・・・おい、冗談だろ・・・」と呟くが、しかし、それは冗談じゃなかった。美雷はそのトラックに気づいていない。大兎はそれを見て「おい!」と叫んだ。だが、美雷は振り返らない。「ちょっと!」と叫んだ。だが美雷は振り返らない。「ああああああ嘘だろ、くそが」全力で走り出した大兎は、美雷に追いつき彼女の背中に手をかけ、「危ない!」と叫ぶ。美雷の背中を突き飛ばして彼女の命を救った大兎だったが、大兎自身は巨大なトラックに轢かれて、そのまま何メートルも吹っ飛ばされる。その衝撃で首が体から千切れてしまった大兎はどうしてか生きて?いて・・・。 「いつか天魔の黒ウサギ」シリーズは、平凡に生きて来た主人公の宮阪高校1年生・鉄大兎がトラックに轢かれて死んだことで幼い頃にしたサイトヒメアとの大切な約束を思い出し、幼い頃は守ることができなかった彼女を今度こそ守りぬき戦うことになるというストーリーです。6~7歳だった大兎は、引越しがあまりにも多くて転校を繰り返してばかりいました。そして、ある学校に転校した大兎は陰湿ないじめを受けることになってしまいます。そんな時、学校をエスケープした大兎は公園でラベンダー色の髪をした同じ年くらいの不思議な美少女サイトヒメアに出会うことになります。幼いながらも二人は愛し合うことになって、サイトヒメアは大兎に「離れることなく生きる時も、死ぬ時も、ずっと一緒にいられる」呪いをかけることになるのです。そうして9年後、死んだ大兎に呪いが発動し全てを思い出した大兎は、サイトヒメアを助けに向かうことになっていきます。 忘れられていた大切な記憶、十五分以内に七回死ななければ本当に死ぬことはない大兎の体質、「最古の魔術師」と呼ばれるいろんな事情を抱えていそうなヒロイン・サイトヒメア、次元の裂け目を管理しているスーパーヒーロー生徒会長・紅月光とその奴隷の安藤美雷、そして月光そっくりな顔の謎の敵ヒナタ。ストーリーは過酷で非日常過去の記憶が覚醒することによって進行することになり、全てを思い出した大兎は恐るべき過去の記憶にひるむことなくサイトヒメアとの約束を果たすため強大な敵に戦いを挑むことになっていきます。主人公の大兎は中学の時に空手経験があるというだけの普通の高校生なのですが、それが死んで生き返ったり妄想としか思えないような記憶が甦ったり異常な状況の中、ただ「9年前のサイトヒメアの約束を守る」ためひたすら突き進みます。ひたむきに突き進む大兎と思ってもみない驚きの展開が大変面白かったです。 ジャンルは学園リバース・ラブストーリー・アクション・ファンタジー。ラブストーリーやアクションが好きな人にお薦めです。<終>いつか天魔の黒ウサギシリーズ
2009年07月27日
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「怪物が目覚める」破滅を予言する占い師のような暗い眼差しだ。藤崎は低くうめくように「俺が榛原を怪物にしてしまったように、今度はケイが怪物になる」、藤崎の言わんとするところを響生は必死で探った。「共演者殺しなんて生易しいもんじゃないよ。皆殺し・・・いや虐殺・・・」冷徹な藤崎の声にこめられた不吉な響きにゾッとした。「・・・俺は、やはりケイを指導してはいけなかったのかもしれない・・・」藤崎の恐ろしい予言。そして、最も凶暴な榛原憂月の狂気を身に宿したケイは「舞台の神様がいる場所に確実に近づいている。舞台を完全に支配した快感が忘れられない。両腕を広げて睥睨すると劇場に君臨している気がした」と演じることで何にでもなれる限りない全能感に酔う。鬼気迫るケイの凶器の演技は毒のように徐々に確実に共演者たちを追い詰めていって・・・。 「赤の神紋」シリーズは、小説家兼劇作家をしている主人公の連城響生が天才劇作家にして演出家でもある榛原憂月のあまりの才能に衝撃を受け一時創作活動を断念するものの、役者を目指す青年・葛川蛍(通称・ケイ)と出会い再び執筆を決意し復活することになるというストーリーです。「赤の神紋」とは榛原憂月が創作した「天才と凡才」をテーマとした舞台劇のことです。この舞台劇に天才である榛原憂月と凡才の自分を重ね合わせてしまった連城は打ちのめされて自らの創作ができなくなります。役者を目指して頑張っているケイと出会い、彼を愛することで壁を乗り越えようとする連城でしたが、ケイの演劇の道は榛原へと繋がっておりいっそう苦悩することになるのです。そして、連城はケイを監禁したり榛原を解剖台に乗せたり暴走することになっていきます。 シリーズ最終章です。藤崎晃一の演技指導によって「最も純度の高い榛原の狂気」を身につけてしまったケイは、その狂気を再現しすぎた演技で次々と共演者たちを追い込み舞台を崩壊させていきます。一方、ケイのライバル・来宮ワタルはまともな演技ができなくなった共演者たちを立ち直らせることで大きな存在感を示します。そんな中、ケイ本来の演技を復活させるため連城はケイの元へ向かうことになるのです。どの世界にも「天才」と呼ばれる人がいて普通の人間にはできない活躍をしたりします。しかし、「赤の神紋」の演劇の世界のような大勢の人々が何か一つのものを作っていく場合は、時に「孤高の天才」一人が力を発揮するより「人間と人間が関わって力を合わせる」方が素晴らしい結果を生むことがあるのです。「赤の神紋」シリーズは、演劇の情熱溢れる登場人物たちの力を合わせて一つの舞台を完成させていく様子が大変感動的でとても面白かったです。ただ、情熱が溢れすぎて犯罪行為をする人も多かったように思います。 ジャンルはボーイズラブ演劇ロマン・ストーリー。ボーイズラブや演劇ストーリーが好きな人にお薦めです。<終>赤の神紋シリーズ(この他番外編が二冊あります)
2009年07月20日
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子供の頃は、勇者になりたかった。悪い奴らをやっつける正義の味方になって、皆から褒め称えられるような、そういう人になりたかった。だが現実には、そんなにはうまくいかない。「くああ、・・・」まだ幼さの残る兵士のあくびの音が何もない荒野に響いた。その土地は「冷めないスープ」と呼ばれている。熱くて飲めない、だからまだ誰も手を出したくないが、しかし一番おいしいのは飲めるギリギリの熱さになった瞬間だから、その時を今か今かと待っている・・・そういうとことから来ているのだという。その広大な地帯の片隅でミモス二等兵は「くああ・・・」と大きなあくびをした。この土地に派兵されて三ヶ月だが、地平線を眺めながら見張っていても何もないので「こちら北東B哨戒地点より司令部、定時連絡異状なし」と決まり文句を口にするばかりだ。そんな日常に黒ずんだ紫に染まった全身異様な怪人・残酷号が突如飛び出してきて・・・。 「事件」シリーズは、竜や魔法が存在するファンタジー世界を舞台に主人公の仮面の戦地調停士エドワース・シーズワークス・マークウィッスル(通称・ED)が友人であり英雄でもある風の騎士ヒースロゥ・クリストフ少佐とともに普通ではありえないような怪事件を次々と解決していくことになるというストーリーです。死ぬはずのない不死身の竜が殺害される事件、時空を超えて戦っている魔女たちの城で起きる事件、無敵の海賊がいる要塞で起きる完全密室殺人、など通常では起こりえない事件の数々を卓越した頭脳を持つEDが鋭い洞察力と常識に捕らわれない発想力で解決していくことになります。ストーリーの舞台はファンタジー世界なので「不死身の竜が被害者」だったり、予想できないことばかりですが、ミステリーとしても楽しめるものになっています。 二千人もの命を犠牲にした兵器開発が失敗した結果生まれた正義の怪人・残酷号、裏社会でなんでも屋を営む出自不明の少年ロザンとその相棒の死人兵ネーティス、謎の人物ロードマンに率いられた報酬を一切受け取らず人々を守る無敗の軍団「完全なる覇軍」、国を乗っ取り人々を殺し狂気の計画を進めるレギューン・ツィラス准将。誰が無敵の力を奮う怪人・残酷号を生み出したのか?そして、残酷号が向かう未来とは?EDは酷薄なる運命に弄ばれる正義の怪人の謎に挑むことになっていきます。残酷号は無敵の防御力と国家レベルの戦闘能力を持っていますが、ただひたすら正義のために戦うことしかできません。一方、敵であるレギューンは剣の達人というだけでなく狡猾な頭脳を持ち残酷号の弱点を狙ってきます。圧倒的不利な状況で正義のために敢然と立ち向かう残酷号の活躍がとても面白かったです。また、意外な事実や人間関係が後半怒涛のごとく明らかになっていくミステリー的展開も良かったと思います。 ジャンルは、謎の怪人アクション・ミステリー・ファンタジー。アクションやミステリーやファンタジーが好きな人にお薦めです。<終>事件シリーズ
2009年07月06日
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