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今川寮、築二十年。四畳半一間。共同炊事場、共同トイレ、風呂なし。何より目を引いたのは、家賃が一万円ということだった。これ以上に安い下宿は一件しかなかった。(でも、その家賃九千円の寮は今年いっぱい怪談映画のロケに使われるとのことで、入居は無理だった)学生課の相沢さんは「気をつけて」という言葉をくれた。「どういう意味ですか?」そう訊いたんだけど、慈悲溢れる笑顔を見せるだけで、何も答えてくれなかった。そして、快人が入居することになったのは今川寮の一○五号室。「どうして、一階の一番いい部屋が空いているんですか?」という質問には、「・・・」大家さんの答えがない。「やっぱり、出るんですね」「・・・」答える代わりに大家さんがツバをゴクリと呑む。幽霊が出るという寮で快人が出会ったのは、幽霊と同じくらい変な入居者たちと幽霊よりもおかしな先輩で・・・。 「僕と先輩のマジカル・ライフ」は、地元の国立大学・M大学に入学することになった主人公の井上快人が同じくM大学に進学した幼馴染みの川村春奈とともに謎だらけの長曽我部先輩に誘われていかがわしさ満載の「あやかし研究会」に入会することになり、おかしな事件に次々と遭遇することになっていくというストーリーです。科学では説明できない超常現象を全く信じない快人と幽霊が見えるという霊能力がある春奈。全くかみ合いそうにない二人ですが、腐れ縁もあり色々と文句を言い合いながらも仲良しです。快人は超常現象は信じていないものの、「春奈が嘘を言うわけがない」と思っています。そんな二人の前に年齢不詳・所属学科不明・全身幸運グッズのあやかし研究会幹部・長曽我部真太郎先輩が現れて強引に様々なトラブルへといざなうことになるのです。 今川寮の幽霊騒動、自縛霊が原因で起こると噂される不可解な交通事故、大学のプールに現れる河童、そして京洛公園の下に埋まっているらしい死体、あやかし研究会幹部・長曽我部先輩の周りではいつも摩訶不思議な事件が起こります。超常現象を頑なに信じまいとする快人はそんな先輩に振り回され、快人にくっついて巻き込まれる春奈とともに奇妙な事件を解決するため頑張ることになります。とにかく頭が固くオカルトを全く受け付けず異常なほど「健全」にこだわる快人、そんな快人を放っておけない春奈、存在自体が超常現象よりも不可解な長曽我部先輩、それに今川寮に住む変人たち、彼らが巻き起こす愉快な大騒動・爆笑の大学生活の様子がとても楽しくて大変面白かったです。それにしても長曽我部先輩はいったい何者なのか?気になって仕方ありません。 ジャンルは超常現象変人大学ミステリー。ミステリーが好きな人にお薦めです。<終>
2010年01月25日
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いつも能天気な弟がそのときばかりは真顔で言った。自分は太陽の下でも平気だし、十字架も恐くないし、ニンニクもへっちゃらな上、お風呂が大好きだ。兄者とは何もかも正反対だ、と不思議そうに。不安そうに。兄弟なのに何でと尋ねるので、兄弟だからですよと彼は答えた。兄弟だからこそ互いの欠点をかばい合えるように、互いに助け合って生きていけるように、二人の闇の母(ナイト・マム)が知恵を絞ってくれたのだと。「頼りにしてますよ」彼はそう言って弟の頭を撫でた。弟は彼の答えに満足そうに笑ってくれた。おそらくはもう長くない、残りわずかな時間。最後まで嘘を吐き通そうと、そのときに決めた。怒るのだろうな。そう思うと、少し、可笑しかった。そして・・・。 「BLACK BLOOD BROTHERS」シリーズは、人間と吸血鬼がひそかに共存する町・特区に移住するためにやって来た主人公の吸血鬼兄弟ジローとコタロウがカンパニーに所属する調停員(コンプロマイザー)葛城ミミコらとともに特区を狙う吸血鬼グループ「九龍の血統」(クーロン・チャイルド)と戦うことになっていくというストーリーです。十年前、香港で「九龍の血統」たちが戦争を起こし、世界中の人間と吸血鬼を「九龍の血統」にしようとする事件「九龍ショック」が起きました。この事件により、「吸血鬼は実在する」「吸血鬼は危険」という認識が世界中に広がってしまいます。そんな中、吸血鬼たちのトラブルを人間の立場から秘密裡に解決する組織「カンパニー」は、人間と吸血鬼の共存を目指すため、横浜に人間と吸血鬼が共存する「特区」を作り、自分たちの夢を実現しようと頑張っていました。しかし、「九龍の血統」たちは九龍王を復活させて再び世界に宣戦布告するため特区に侵入することになり、「特区」を舞台に「カンパニー」VS「九龍の血統」の壮絶な戦いが始まることになるのです。 完結編です。このシリーズでは、基本的に吸血鬼に血を吸われた人間が吸血鬼化するのではなく、吸血鬼の血を飲んだ人間が吸血鬼化します。例外は、世界の意志に選ばれた人間が天意により始祖(ソース・ブラッド)という特別な吸血鬼になることです。始祖は世界の要望と始祖になる人間の想いが合致した時に生まれるもので、始祖は自らの血を分け与えた血族たちとともに「血の導き」に従い生きていくことになります。例えば、ジローが所属するアリス・イヴを始祖とする「賢者イヴ」の血統は「平和・共存」という血の導きに従っています。吸血鬼たちは「自分個人の気持ち」と「血の導き」を大切にして生きているのです。一方、「九龍の血統」は「乱を起こし、変革する」という血の導きを持っており、噛んだ人間や吸血鬼を「九龍の血統」に転化するという特性を備えています。「九龍の血統」たちは自らの血の導きに従って行動しているわけですが、他の血統の「血の導き」を否定したり人間を無理矢理吸血鬼化する特性があるので人間・吸血鬼双方から忌み嫌われているのです。「血の導き」に従って人間よりも誇り高く純粋に生きる吸血鬼たちとそんな吸血鬼たちに関わる人間たちの紡ぐストーリーは、純粋な思いがぶつかり合ったり交差したり感動的で大変面白かったです。 ジャンルは吸血鬼アクション・ファンタジー。アクションやファンタジーが好きな人にお薦めです。<終>BLACK BLOOD BROTHERSシリーズ短編集シリーズやDVDもあります
2010年01月18日
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「この街にね、妖精みたいに綺麗な女の子が住んでいるらしいのよ!」「そうですか。見つかると良いですね」それが誰のことを言っているのか即座に直感したマルクは、簡単に相槌を打つとアイシャの手を引き脇目も振らずに立ち去ろうとする。その妖精が住まう屋敷はすでに目視できる距離にある。しかし、それを見逃してくれるクリスでもなく、ガシッと襟首を掴まれてしまった。「だからね。あんたその妖精さんのことをなんか知らないかしらって訊いてんのよ」「全くもって存じません」「そうそう何だか不思議なお屋敷に住んでるって話なのよ。蜃気楼の屋敷って言ったかしら?」真っ赤な口紅にドレス、明るい茶髪は縦ロールというド派手な出で立ちの女装変態兄貴クリス。女好き過ぎて変態なクリスには「今この瞬間が一番幸せだ」という女性の笑顔を見るためならば、どんな恐ろしいことでもする趣味があるのです。弟のマルクは変態兄貴からお嬢様を守ることになって・・・。 「影執事マルクの手違い」シリーズは、正体不明の強力な能力を持つ「蜃気楼の屋敷」の当主・エルミナお嬢様を主人公のマルクが守ることになるというストーリーです。影を操る殺し屋だったマルクは、ターゲットだったエルミナに簡単に敗北して(あまりにも実力差がありすぎてエルミナには「戦闘をした」という認識すらありませんでした)、エルミナに絶対服従を誓い執事として仕えることになります。蜃気楼の屋敷は「季節はずれの花が咲き乱れる」「壊れた物はひとりでに修復される」「目的を持って来た者にしか見ることができない」など奇妙な場所で、その当主・エルミナは無表情な人形めいた謎の美少女。そしてエルミナは「超越者」と恐れられる正体不明の能力を持っており、ギャングや異能者や宣教師たちはエルミナの能力を狙って刺客をドンドン送り込んでくるのです。執事となったマルクは仲間の使用人たちと一緒にエルミナお嬢様を守るため奮闘することになっていきます。 「見たものを灰に変える」能力を持つ侍女のアイシャは何やら様子がおかしく、「心を読むことができる」心優しい大男の庭師アーロンはギャングや宣教師たちと秘密の相談、上司の家令ドミニクは相変わらずとらえ所がなく、エルミナお嬢様は何故か変態兄貴のクリスを気に入ってしまい、何が起ころうとしているのか?理解できないマルクは最近雇われた重症を負った剣の達人カナメにエルミナの護衛を頼むことになってしまいます。今回はマルクのお兄さんが登場するとともに仲間の使用人、ギャング、宣教師たちがそれぞれの考えに従い大騒動を巻き起こしていく展開でした。謎めいた仲間たちや知り合いの意外な過去や意外な一面、それぞれが抱えている事情が少しずつ明らかになっていく過程が大変面白かったです。それにしてもマルクの兄クリスはインパクト抜群でものすごい存在感でした。 ジャンルは、不思議異能力陰謀アクション・ファンタジー。アクションやファンタジーが好きな人にお薦めです。<終>影執事マルクシリーズ
2010年01月11日
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シャーネという名前は、母親がつけたと聞いたことがある。顔も見たことがない母親だが、その名前だけが唯一のつながりと信じて今まで母の存在をうっすらと感じていた。母親にこがれることはなかったが、この名前は自分にとっては大事なものだ。父が呼んでくれる名前だから。私と父さんのつながりを証明してくれる言葉だから。感謝はしている。父さんに名前を呼んでもらえるだけで嬉しかった。構ってもらえるだけで嬉しかった。私には・・・父さんの他に何も存在しなかったのだから。それは今でも同じことだ。私の世界には父さんの他には何もない。何も要らない。閉じられた世界で私は充分幸せだった。それなのに・・・あの男は、私の殻にあっさりと穴を開けて入り込んできた。幼い頃に父に読んでもらった童話の中に出てくる存在のように。白馬の王子というよりも・・・どんな反則もやってのける邪悪な魔法使いのように。シャーネとクレアの奇妙なラブストーリーは・・・。 「バッカーノ!」シリーズは、「錬金術師が悪魔を呼び出して作った不老不死になる」酒を飲んでしまったギャングやテロリストやマッドサイエンティストやバカップルたちが何百年にも渡ってバカ騒ぎを繰り広げることになるというストーリーです。シリーズ通しての主人公は存在しておらず、大勢の主要登場人物たちが入れかわり立ちかわりストーリーを進めていくことになります。今回の中心人物は口をきくことができない美女シャーネ・ラフォレット。本気で世界を滅ぼそうとしていたテロリストの父親ヒューイに育てられた彼女は、自分を実験動物としてしか見ない父親を助けるため健気に頑張ります。そんな彼女の前に現われたのが常識を超える強さを持った最強の殺し屋クレア・スタンフィールド。惨劇の豪華列車で運命的に出会った二人は普通では考えられない恋愛をすることになっていきます。 1931年、アメリカを横断する豪華列車フライング・プッシーフット号で起こった異常な惨劇。アルカトラズ刑務所に送られる予定の父ヒューイを救おうとしていたシャーネは、鉄道ジャックを計画して列車に乗り込みました。しかし、その列車にはヒューイのテロ組織以外にもギャング集団や殺し屋たちが大勢乗っていて、そんな中でシャーネは圧倒的な強さを誇る殺し屋クレアと出会うことになったのです。鉄道ジャックを阻止したクレアにリベンジを誓うシャーネは「マンハッタンで待ちます」という書き置きをクレアに残します。一方、シャーネの書き置きを見たクレアは「シャーネがクレアのことが好きで会いたい」のか「シャーネがクレアを殺したいから会いたい」のか分からず悩みながらも「シャーネに俺のことを好きにさせてみせる」と決意してマンハッタンでシャーネを捜すことになるのです。シャーネは基本的に無口で無表情なので何を考えているのか分からないキャラクターです。また、クレアもあまりに常識はずれ過ぎて理解し難い人物です。そんなシャーネとクレアの目を通して見る「バッカーノ!」の世界はいつもよりも常識外れ満載でとても面白かったです。特に喋ることができないシャーネの心情が綴られるシーンは新鮮でした。 ジャンルは不死者バカ騒ぎアクション・ラブストーリー・ファンタジー。アクションやラブストーリーが好きな人にお薦めです。<終>バッカーノ!シリーズコミックもあります
2010年01月03日
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