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喫茶店に勤める女性、山田真野。彼女とは痴話げんかの乱闘騒ぎに巻き込まれたことをきっかけに言葉を交わし、献血ルームで再開した。だが、誘いの言葉に返されたのは左手の薬指に輝く指輪。彼女は、結婚し子供もいるのだ。それを承知したうえで、朝日奈くんは彼女との距離を狭めてゆく・・・ 『百瀬、こっちを向いて』で話題になった中田さんの第二作。今回も短編集です。●「交換日記はじめました!」 圭太と始めた交換日記。ところが、別の人がそこに加わってきたことから、交換日記は思わぬ方向へ・・・今でもあるんですねえ、交換日記。他人が読むという前提でここまで自分のことをつまびらかに書くものかどうか若干疑問に思いましたが、展開と真相のおもしろくてよかったです。●「ラクガキをめぐる冒険」 忘れられない初恋の同級生、遠山真之介。卒業後連絡が取れない彼と、彼にまつわるエピソード・・・とても細かい伏線が後から効いてきます。何かをともに成し遂げるということ、あるいはふたりだけの秘密というのは恋への近道ですよね。●「三角形はこわさないでおく」 親友になったツトムが恋した小山内さん。いつしか廉太郎も彼女に惹かれてゆく・・・ツトムと廉太郎の友情もいいのですが、なんといっても今回は小山内さん。不器用な三人がこのあとも三角形を壊さずにいけたのでしょうか。●「うるさいおなか」 おなかが発した音に気づかれたことで学生服のボタンをもらい損ねたこともある私は、極端に耳がいい春日井君に気づかれ・・・「させるか!」そりゃそうでしょう。何にせよ、悩み事を話せる人がいるというのはいいことです。●「吉祥寺の朝日奈くん」 喫茶店で言葉を交わし、献血ルームでも出会った彼女。だが、彼女は結婚していて子供もいる・・・単純な不倫ものかと思えば、まったく違う展開に驚き。ただ、最後ここまで書くべきだったか判断に迷うところ。 今回もミステリ仕立てな部分が目立つ短編集。特に気に入ったのは「ラクガキをめぐる冒険」と「吉祥寺の朝日奈くん」の二編。どちらも終盤で明らかになる真相には驚きを隠せません。そこに至るまでの伏線の配置も見事。きっと普通に探偵もののミステリなどを書いてもおもしろいものを書かれるのではないでしょうか。 また、視点人物を男性に置くことでヒロインが見えてくる「三角形はこわさないでおく」も好きですね。どれだけ親しくなっても変わらない小山内さんの硬質な口調がまた印象的でした。 これから先、この人はどんな方向へ進むのでしょうか。できることなら、今までのような淡く、そしてかわいらしい恋愛をいつまでも書き続けてほしいものです。収録作:「交換日記はじめました!」「ラクガキをめぐる冒険」「三角形はこわさないでおく」「うるさいおなか」「吉祥寺の朝日奈くん」2010年2月18日読了
2010.02.23
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ひたすら地味。存在感がなく他人に気付かれない少女小春原日和。貧乏アパート桜乃日和荘に暮らす彼女は、管理人である僕に言うのだ。「わたしを…おにーちゃんの手で…“おとなのじょせい”に、して、ほしいんです…っ」と。そこには、名門お嬢様学校に入りたいという彼女の夢があったのだが、その道のりは限りなく険しく・・・ 『乃木坂春香の秘密』シリーズの五十嵐さんの新シリーズ。五十嵐さんの物語は初めて読んだのですが、思っていた以上にコメディタッチでした。 そもそも、他人に気付かれないという小春原日和の性質自体がコメディそのものなのですが、そのほかの登場人物もなかなかのもの。特に桜乃日和荘に住む三人の住人はいい具合にダメです。 もっとも、こんな登場人物の中で一番目立っているのは、あまりに平凡で桜乃日和荘唯一の普通の人、主人公の佑介だったりします。この辺がなんとも不思議なところです。 ただ、お嬢様学校を目指すというストーリーはいいのですが、実際読んでみるとコメディの割に地味で、可もなく不可もなく感じてしまうのが残念でしょうか。やはりストーリーがベタベタだからでしょうか。気付かれないわけではないでしょうが、日和同様目立たない作品のような気がします。決しておもしろくないわけではありませんが、ちょっと微妙かな。期待が大きすぎたかな。 新シリーズと銘打つ割にこの1冊である程度の区切りを迎えてしまい、はたしてこの後どういった展開につなっていくのか、少々不安ではあります。おばあちゃんの数珠の件があったり、新たな友人ができたことからも舞台はあちらに移っていくのでしょうが。いずれ『黄昏色の姫君』とか『姫乃宮の最終兵器』なんて呼ばれるのですから、そこまで楽しませてほしいですね。2010年2月16日読了
2010.02.22
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恋には二タイプあるそうだ。気付いたら落ちているタイプと、出会った瞬間、一発で落ちるタイプ。女子と接することが苦手だった陽介は、そういった経験をすることは一度もなかった。だが、ちょっとしたことをきっかけに、彼には二つの出会いがもたらされ、運命は変わっていく・・・ 第1回GA文庫大賞優秀賞受賞作。あまり詳しく表現できないけれど、いわゆるやり直しもの。ただ、かなり序盤で結末が想像できてしまうのが痛かったです。 想像さえできなければ、どうなるんだろうとワクワクしながら読めたのではないでしょうか。構成自体は悪くなく、タイトルにもなっているリセットを巧みに活用した、印象的な作品に仕上がっていた気がします。しかしながら、気付いてしまうと構成を生かした大きな魅力のひとつを失ってしまい、輝きが薄れてしまいます。これは残念でした。伏線が少々あからさますぎました。もっとも、伏線に気づかなければ唐突すぎるオチという印象を受けたかもしれませんが。 おそらく三度同じようなことを繰り返すためでしょうが、一回に費やす紙幅がどうしても少ない気がします。それゆえに、物語もややかけ足で、ちょっともの足りない印象。とくに女子と接することが苦手だった陽介がなぜかそれを克服したあとの行動や、あるいは各話に登場する女子が彼に対して心を開いていく過程でそれを強く感じました。構造面から見れば、もう少し深く掘り下げるためにも複数巻で語るべき内容だったかもしれません。 ただ、女性キャラはなかなか魅力的で、書き分けもうまくできていてよかったように思います。もしかしたら、純粋にラブコメでいったほうが合っているのかもしれません。次はそういうものを読ませてほしいと思います。2010年2月11日読了
2010.02.17
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天使になり、「ユーロランド」で働く奈々。ただしここは普通のテーマパークではなく、天使たちの研修地である。遼一や美穂が訪れたその日、「ユーロランド」ではクーデターが勃発し、天使たちの姫が奪われてしまう。奈々と遼一はキサラギと組んでアトラクションに仕掛けられたゲームに挑むことに・・・ 今回も遼一と奈々がゲームに取り組むシリーズ3巻。ただ、今までが奈々が天使になるための試験だったのに対し、今回は奈々だけでなく遼一の生死がかかっているだけに、より真剣というか切迫感が伝わってきました。 いつもどおりゲームはおもしろいのですが、それよりも伝わってくるのはクーデターを鎮圧しようとするお姉様側の天使たちのいやらしさ。操られた人間たちは彼女たちにとって明らかにコマであり壁。代替が効くものなのです。だから、どれだけ犠牲が出ても構わないのです。その考え方はとても不快。そして、お姉様側にも何やら魂胆がありそうで、これもまた不快。 でも、考え直せばゲームってそういうものかもしれません。それが画面の中で行われているか、それとも実際の誰かが傷ついたり命を落としたりするのかという違いで。 読者としては、信じられるのは遼一と奈々の絆だけという状態。このふたりとお姉様たち鎮圧側との距離はあまり近く感じないし、遼一なんてどんどん離れて行っているのがはっきりしているし。ともに三人組を組むことになったキサラギとはわかりあえたことや、ジェシカのように遼一のことを考えてくれる天使もいることが救いかな。 そして、えーっ、そこで終わるの、という幕引きにちょっとした驚き。不穏な空気と緊迫感が最高潮に達したところから、4巻は始まるのですね。これは楽しみ。ふたりはこの危機をどうやって回避するのでしょうか。関連作:『ラプンツェルの翼』『ラプンツェルの翼 2』2010年2月8日読了
2010.02.11
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人生を「ロード」することができるサカキキヨト。彼はその命を絶つことで、「セーブ」した時点へ戻ることができるのだ。今日も「ロード」するために身を投げたキヨト。だが、アスファルトに墜落する直前に目にしたのは、反対のビルから身を投げた幼なじみの由衣の姿。どうして・・・ なぜか最近多い気がする時間もの。いや、単純にそればかり読んでいるということかも。 楽しめました。楽しめただけに、なんだか安直に感じてしまいました。 いったん死ぬことで、ある一定の場所へ戻ってやり直すことができる。それ自体、あまり珍しい設定ではないでしょう。オーソドックスです。ただ、このやり直しに関するルールに少々の引っ掛かりがあり、サカキキヨトが犯す失敗の種類を多くの読者が予想できたのではないかと思うのです。問題は失敗のタイミングだけで。 もうひとつ、ラストで発覚する真相は以外でいいのですが、そこにいたる動機が拍子抜け。あまりにとってつけたかのようで、もう少し納得しやすいものにしてほしかったと思わざるをえません。 もっとも、新人さんらしくパワフルで勢いがあり、一気に持っていくような力強さを感じました。 また、常盤先輩の素気なく、それでいて熱いキャラクターがいいですね。もう少し彼女が万能であってもいい気もしますが、そうするといちいちロードしなおす理由がなくなってしまうのかな。 とにかく、次を楽しみにさせてくれる作品だったことは間違いありません。積んだままの2巻も間をおかず読むでしょう。 2010年2月6日読了
2010.02.09
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風景印はご存知ですか? 郵便物に押されている、ちょっと大きな鳶色(赤茶色)のスタンプ。観光地の記念スタンプのようなイラストが入っていますが、これ、れっきとした消印なのです。 さて、この本は著者の古沢さんが一年かけて東京23区内の風景印を使用している郵便局375局を回った、一種の紀行文。素晴らしいのは、そこに彼のこだわりが色濃く出ていることです。 風景印の記念押印をするだけではなく、風景印にデザインされた風物(行事、建造物、名所、植物など)をも目で確認していること。 風景印にあった日を選んで訪局していること。 風景印と使用する切手のデザインをあわせていること。 例えば、東京都庁内局であれば都民の日である10月1日に訪局、切手は風景印に描かれた銀杏、そしてもうひとつ風景印にデザインされた都庁舎は「都庁内局」ですからもちろん見ているという具合です。ほかにも局員さんや近所の方と風景印にデザインされた石碑や松の木を探したりと、大変そうですがおもしろそうでもあります。 単純に集めるだけなら、郵頼(郵送で押印を依頼すること)でもできます。もちろんそれではあまり意味を成さないわけで、そのへんが郵趣家のこだわりであり、楽しみでしょうか。 また、訪局に関することだけでなく、風景員にまつわるおもしろい情報もコラムで記載されています。郵政省内局→郵政事業庁内局→日本郵政公社内局→千代田霞が関局→千代田霞が関局(図案変更)と、7年で5種類という風景印の変遷。あるいは局員さんについての裏話なども。 圧巻だったのは桜をモチーフにした風景印。3月4月はかなりの部分を費やして桜の風景印をめぐっています。さくら並木が描かれたものから外枠に使われているものまで、こんなにもたくさんあるのかというほどです。 残念ながら、一般の勤め人にはこれだけ平日を使って訪局するなんて真似できません。例えば、旅行にでかけたときなどに、その記念として押印してもらうのもひとつの楽しみ方かなあと思います。 減少傾向にあるらしいですが、まだまだ全国各地で使われている風景印。これからも新しいものになっていくはずです。まだまだ楽しみ方はあるはず。僕自身、以前風景印を集めていたのですが、これを機会にまた集めだそうかなあ。そう思わせてくれる一冊でした。 ちなみに、コラムにもありましたが再来週の月曜日は2が5つ並ぶ平成22年2月22日。こんな日の記念に押すのもいいかもしれませんよ。2010年2月5日読了
2010.02.09
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人間とヒトデナシが共存する世界。宿敵・無謀が逮捕されたと聞き、夏原ホテルへ向かった秋津と望。そこはヒトデナシが憑いたことで「夢境ホテル」とも呼ばれ、望は選ばれた者しか入れないホテルが見る夢=夢の一週間へ。ひとりホテル探偵となった望だったが、そこで殺人が・・・ シリーズ第2弾。復活した探偵秋津承一郎とその助手古村望の物語です。しかしながら、今回の中心はまぎれもなく望。ホテル探偵として夢の一週間での事件に対峙します。 おそらくは昭和初期ぐらいのパラレルワールドと思われた前作と比較すると、随分その雰囲気は薄れました。中心となる舞台はホテルが見た夢の中。しかも日ごとに異なるテーマに彩られたテーマパークのような「夢の一週間」。 前作はオーソドックスなミステリでしたが、今作はミステリはミステリでもファンタジー色の強いミステリ。前作と同じイメージを想定していると面食らうかもしれません。 シーンごとに視点が異なり、登場人物も決して少なくありません。しかし、登場人物やその状況がしっかり書き込まれていることで一瞬の混乱もすぐ薄れます。むしろ三探偵のひとりである近松独善の登場シーンを多くすることで、より世界が広がっている気がしました。 残念ながら秋津の登場シーンはわずか。でも、そのわずかなシーンではやはり存在感があります。もう少し彼が活躍するシーンを見たい気はしますが、自作ではどうでしょうか。 早くも三作目の告知がされ、最終盤ではそれにあわせた引きもあったのですが、今度はどんな作品になるのか。新たなヒトデナシが登場することで、きっとまた変わった雰囲気の作品になるのでしょう。今から楽しみです。関連作:『無貌伝 ~双児の子ら~』2010年1月26日読了
2010.02.02
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