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遠く九州から大学進学のため上京した横道世之介。東京での生活は思いもよらないことばかりだが、その中で彼はいろいろな人に出合う。成り行きでサンバサークルに入ったり、コンパで世間知らずなお嬢様と出会ったり。彼の一年間、そして二十年後は・・・ 正直、序盤は少し退屈でした。何か劇的なことが起こりそうもなく、世之介もごく平凡な大学生ですし。しかし、終盤まで読むと思わず目頭が熱くなるほど引き込まれました。世之介の人となりが心に深く浸み込んでくるのです。 物語は、大学一年の世之介の一年間の中に、二十年後の世之介に関するエピソードが縦糸と横糸のように綴られます。 縦糸になる世之介の大学生活は、はっきり言ってどこにでもあるようなものです。僕自身とは少々世代が違うのですが、典型的なバブル世代の学生生活のようです。しいて言えば、世之介自身が頼りない、あるいはちょっと地に足がつかないような人物であるためか、周囲の人物がみんな少しずつ普通じゃない点が変わっているでしょうか。交際した祥子は世間知らずでずれているお嬢様、入学してすぐ知り合った倉持と唯はできちゃった結婚で退学するなど、世之介よりもよほど物語になりそうな人物が揃っています。ただし、世之介と彼らのつきあいを見ることで、世之介その人が知らず知らずのうちに浸み込んできます。 一方、横糸となる二十年後はその周囲の人たちの物語です。彼らにとって世之介とはどんな人物なのか、彼らと世之介をつなぐエピソードから強く感じられます。「いろんなことに、『YES』って言ってるような人だった」 (P374)「……もちろん、そのせいでいっぱい失敗するんだけど、それでも『NO』じゃなくて『YES』って言ってるような人……」 (P374) 祥子のこの言葉が、世之介をあらわす最高の表現だった気がします。 平凡な人物だけれども、心に残る何かがある。そんな物語でした。おすすめ。2010年3月18日読了
2010.03.31
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八重樫太一が部室で聞いた話は、俄かには信じられないもの。前の晩に青木義文と桐山唯の人格が一度入れ替わったというのだ。青木は熱弁するが、桐山ですら半信半疑。だが、人格の入れ替わりは文研部の五人の間でランダムで起きるようになり、信じざるを得なくなる。その状況をはじめは楽しんでいたかのような太一たちだったが・・・ 第11回エンターブレインえんため大賞〈特別賞〉受賞作。これはおもしろい入れ替わりものでした。 入れ替わりものの定番は、入れ替わることによるトラブルやどたばたとした騒動に重きを置き、その部分で楽しさを見せるものだったように思います。周囲が不審を覚えたり、ひたすら隠し続けることによる弊害が発生したりということ。もちろん、元に戻る方法の発見もあります。 この作品はそういう部分ではなく、入れ替わることによってわかる他人の奥深いところにある悩み、問題の解決という面に中心があります。その点に一歩踏み込んだような感覚を覚えました。入れ替わることで他人を見つめ、そして自分を見つめているのです。 当然そこには入れ替わることで自分を知られてしまうこと、相手を知ってしまうことへの葛藤があります。白日のもとにさらされた事実は、それを認め、受け入れなければ永遠に道は開けない。それはそうかもしれませんが、ちょっと上手くいきすぎじゃないですか。そんなに簡単に解決へ進めるのなら、ここまで問題として抱えていないのでは? まあ、良くも悪くも青春ですね。 女性三人がそれぞれにクローズアップされる中で、残されたもうひとり青木がいまいち影が薄かったでしょうか。彼にもきっと他人に話せないようなことがあったのではないでしょうか。残されてしまいかわいそうに。 おもしろかった中で一点腑に落ちなかったのは、どうして入れ替わったのかということでしょうか。もちろん科学的にではありませんが、ここがもう少しきっちり説明されていれば、言うことはなかったかなあ。 ともかく、おもしろい入れ替わりものでした。5月の次回作、仮題だけ見ると続編ですか?2010年3月14日読了
2010.03.29
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サハラ砂漠を横断するキャラバンに取材のため斉木は同行した。目的地へ着いた一行は、ラクダに岩塩を載せ帰路につく。だが、キャラバンからはひとり、またひとりと人が減っていく。そう、砂漠の真ん中での連続殺人だ。一行にはいったい何が起こっているのか(「砂漠を走る船の道」)・・・ 第5回ミステリーズ!新人賞受賞作「砂漠を走る船の道」を含む連作短編集。傑作。●「砂漠を走る船の道」 砂漠の真ん中で起きた連続殺人。誰が、何のために・・・まさに受賞にふさわしい短編。砂漠という舞台と殺人の論理的な動機が密接に結びつき、この舞台でしか成り立たないものになっている、非常に完成度が高い本格ミステリ。●「白い巨人(ギガンテ・ブランコ)」 巨大な風車に逃げ込んだはずの兵士が消えた。どんな方法で。斉木たちは伝説の謎解きを・・・人間消失もの。伝説と体験の二重構造が思ってもみない方向、思ってもみない現実へ展開していくことに驚かされます。気持ちの良い作品でした。●「凍れるルーシー」 生前の姿を留める遺体、不朽体。ロシア正教の聖人信仰の取材に訪れた斉木が見たものは・・・「砂漠~」同様、動機に感服。ラストもまた世界が変わる様をこの舞台にふさわしく見せてくれます。●「叫び」 アマゾンの奥深く、少数民族の村でエボラ出血熱と思しき疫病が発生。滅びに瀕する村で不可解な連続殺人が・・・村の惨状は目を覆いたくなるものですが、披露される殺人の論理がまさに悲劇的。残されるものは絶望でした。●「祈り」 ゴア・ドアはなぜゴア・ドアと呼ばれるのか。森野はクイズを出した・・・祈りの洞窟。続編がほしいという僕の祈りは通じるでしょうか。その祈りを跳ね除けるような美しい締め方です。 ミステリーズ!新人賞にふさわしい作品集。物語の舞台がこれほどまで活かされた作品集も少ないのではないでしょうか。その土地だからこその論理が強い説得力を持ち、読み手をうならせます。全体に見せ方の巧さが光り、受賞作以外の作品も非常に高い水準にあります。あまり詳しく語れないのが残念。 また、作品には異郷におけるロマンがあふれていて、ロジックだけでなく物語としての読みごたえも十分。二度三度と読み返すとより味わいを噛みしめられるかも。ミステリなんて、というような方にも読んでほしい短編集です。大きな声でオススメ。収録作:「砂漠を走る船の道」「白い巨人(ギガンテ・ブランコ)」「凍れるルーシー」「叫び」「祈り」2010年3月10日読了
2010.03.23
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波河久則は近くの高校に通う三条有亜に一目ぼれした。だが、親密になるにつれ有亜の様子が変わっていく。なぜなら、久則が以前有亜にいたずらで未来の彼氏を装い、電話したことがあったのだ。自分たちが付き合うことで事件や事故を引き起こし、殺人まで犯してしまうと。ふたりの周囲では電話の内容通りの事件や事故が続いていく・・・ 嘘が現実になってしまうライトサスペンス。おもしろい方向へ進んでいただけに、少々残念でした。 前半からおもしろかったのは久則と有亜の気持ちのずれでした。なんとか恋を進展させたい久則と事件を食い止めたい有亜。そのずれが久則の気持ちの空回りにつながっていくのです。かわいそうといえばかわいそうなのですが、自業自得ですよね。一番の原因は自分がかけたいたずら電話ですから。 登場人物は、イタ電をかけた久則もその件以外は印象も悪くないですし、有亜もヒロインとして好感が持てました。でも、いちばんいいキャラだったのは久則の従兄の正臣。いわゆる優等生っぽいのですが、久則を小馬鹿にしながらもちゃんと久則と有亜につきあって事件を食い止めようとします。頼りになる従兄なのです。 後半は少々残念な展開。嘘が次々に現実化されていく原因というのはこの物語のひとつの見所で期待していたのですが。なんだかすかされたというか、うまく逃げられたというか。もちろん、しっかり辻褄が合う形ではあったのですが、この点はちょっと期待はずれでした。 2冊読んでみて、いろいろなアイデアを盛り込んでおもしろくしていくタイプという印象を持ちました。期待を大きく持って、次回作を待ちます。2010年3月10日読了
2010.03.22
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家庭の事情で、隣家の乙太郎さんとナオの家に厄介になる高三の友彦。乙太郎さんは事故で妻を、さらにそれがもとで長女を亡くしている。白蟻駆除の仕事について行った先で友彦が見かけたのは、乙太郎さんの長女サヨによく似た女性だった。その女性が忘れられない友彦は、家の床下に忍び込んだ。彼女の情事を盗み聞きするために・・・ なんとも奇妙な作品でした。非常にミステリ的でありながら、結果としてミステリではない、そんな複雑な感じです。 たとえば白蟻駆除に出かけた先で起きた火災、あるいはキャンプ先での火災、サヨの死、そして智子の行方。どれも積極的に調べるわけではありませんが、友彦だけでなく読者にも、大きな引っかかりをもたらします。大きな誤解と小さな嘘の積み重ねがミステリとしては魅力的な題材に見せますが、この作品においてはこれらの出来事が中心ではないのです。 突き詰めれば、中心になるのは友彦の心理ではないでしょうか。数々の事件の真相に近づき、責任を感じ、時には嘘や隠しごとをしてきた友彦。それによって傷つけてしまった人もいるし、彼自身も新たな真相にめぐり合うたびに傷ついていく。その繰り返しなのだけれど、衝撃は波のように大きくなっていくように感じました。 自業自得といってしまえばそれまで、しかしほんの小さな出来事がどんどん大きくなって我が身に帰る。友彦の受けた衝撃はどれほどだったでしょうか。今までの作品と比較すると、読者に対しては特別に大きなどんでん返しはないでしょう。ただ、友彦にとっては相当に大きなどんでん返しの繰り返しだったに違いありません。 また、終始一貫して友彦の味方であったナオですが、友彦にとって大きな岐路で存在感を示します。また、友彦の行動が多分に利己的であったのに比較して、ナオの嘘が疑われる行動はすべて友彦のための行動とも解釈できるのはポイントでしょう。 これをミステリかと訊かれれば、自信を持ってミステリであると答えることはできません。しかしながら、ミステリ的な手法を用いた傑作であるとは言えると思っています。ストレートなミステリもいいですが、またこういった味わいの作品も読んでみたいです。2010年3月10日読了
2010.03.16
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二.・二六事件の翌年、「わたし」は前田侯爵邸の小間使として奉公することになった。5歳になる令嬢の緑子は人形のようにかわいらしく、いたずら好き。だが、突然不審な行動を見せることがあった。見えない誰かを見つめたり、話しかけたりするのだ。そのことに気付いてしまった「わたし」は・・・ 中編、といってしまえる程度の長さの物語。前田侯爵邸という洋館を舞台としているだけで何やら幻想的な雰囲気を出しているのですが、そこに緑子の不審な行動、さらには「わたし」の前任者ゆきのの顛末なども絡んで、その雰囲気をより濃くしています。 「わたし」が緑子を思う気持ちには並々ならぬものがあり、それが「わたし」と読者を実際の出来事なのかそれとも妄想なのか判断できない世界へと誘います。それは平穏だった屋敷を少しずつ覆っていく暗雲のよう。日中戦争へと突き進んでいく日本の世相とも重なって見えるというのは考えすぎでしょうか。 重なるといえば、「わたし」と二・二六事件の青年将校たちとの重なりも圧巻でした。「君側の奸」を排除し昭和維新を成し遂げなければならないと考える青年将校。緑子にポゼス(憑依)した幽霊を取り除こうとする「わたし」。その心のリンクと時代性の組み合わせが、何とも言えない緊迫感を出しています。 はたして、どこまでが現実でどこからが妄想なのか。そもそも妄想があるのか。ただでさえ幻想的でその境界がわからない物語でしたが、最終盤で「わたし」と読者はさらに混乱の渦に巻き込まれます。あのささやきは何を意味しているのでしょうか。 幻想的で美しく、そしてなんとも魅惑的な物語。静かに語る「わたし」が、あなたを駒場コートへと誘います。2010年3月8日読了
2010.03.16
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特殊能力者たちが集まる街・咲良田。三日間だけ時間をリセットできる春埼美空と、記憶を保持する能力を持つ浅井ケイのふたりは、予知能力を持つ「咲良田最強の能力者」魔女と会う。彼女は自分の死期を予知し、その死に際してひとつの計画を目論んでいた・・・「私がリセットを使えなくなったとして。私と貴方の関係性は、何か変化しますか?」 この問いが、そして返事がこの物語のすべてだったのと同時に、ふたりの関係がいかに不安定なものであるか表現していました。 確かに、ケイと春埼の関係は記憶保持とリセットという2つの能力の活用にしか見えない部分がありました。単体では大した役に立たない能力ですからなおさら。そして、人格ではなく能力でしか評価されない、すなわち「春埼美空」=「リセット能力」という評価しか与えられないことが、そのまま春埼の不安として問いにつながったように思います。普段あまり感情的に見えない春埼だけに、強く印象に残りました。 さて、今回新たに登場したのは、未来を予知する能力を持った「魔女」と、写真の世界に入る能力を持つ男・佐々野、そして赤い目の少女岡絵里。人物と同時に新しい能力も登場しますが、その能力の使いこなし方や対立具合がおもしろかったです。中でも前作で登場した村瀬の使い方が抜群でした。この組み合わせが今後に大きく影響しそうで、ますます楽しみなのですが。 また、魔女や佐々野に関するエピソードも切なくていいのですが、気になるのは岡絵里とケイの関係。顕わになるケイの過去は、この物語が長く続くようであればいずれどこかで重要なカギを握る部分になりそうな気がします。 切なく、はかなく、そして脆く美しい、まるで桜の花のような物語でした。タイトルや街の名前から影響を受けていることは否定できませんが、それでも表紙の桜が、そして桜色があまりにも物語のもつイメージと一致していたのです。願わくば、その色があまり暗い方向に変わらないことを。関連作:『サクラダリセット』2010年3月7日読了
2010.03.15
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香織に真実を隠したまま、強豪福岡南高校へと転校した早苗。だが、そこでの剣道は東松学園でのそれとはまったく異なるものだった。戸惑う早苗。一方香織は村浜たちが抜け戦力ダウンした東松で悪戦苦闘。そこへ中学の同級生清水が厄介ごとを持ち込み・・・ 『武士道シックスティーン』の続編。『武士道シックスティーン』ではラストに早苗と香織の再会シーンがあったのですが、その前後が詳細に描かれています。進級と早苗の転校が絡んでふたりを取り巻く環境は大きく変化しています。 特に早苗の場合は転校を機会に、黒岩伶那の目指す剣道のスポーツ化というもの、あるいは福岡南での剣道というものに違和感を抱きます。試合に勝つためなら何でもする剣道。そこでの早苗の葛藤は深く、そして険しいもの。それまで持っていた、武道としての剣道という考えを否定されるかのようなものですから当然でしょう。前作がどちらかといえば香織の心情を深く掘り下げたのに対し、今回は早苗の揺れる心に迫った感じです。 一方香織は以前とは異なり、河合とともに東松の一員、屋台骨としての立場をわきまえた言動が目立ちました。丸くなったというよりも、大人になったというか東松での居場所を見つけたいうか。その背景にはやはり田原美緒の存在が大きかったことは否定できないでしょう。また、清水を守ろうと実力行使に出たのは一見軽率なようにも思えますが、彼女の中の武士道に従えば当然の行為だったのでしょう。 神奈川と福岡ということで遠く離れてしまったふたりですが、距離に負けず心は通じ合っていました。ふたりをつなげていたのは武士道。決して勝つことが目的ではないこの武士道を通して相手を見、そして自分を見たからこそ、進むべき道を見失うことなく成長したのではないでしょうか。 さらに続く『武士道エイティーン』では何らかの形でふたりは対決するのでしょう。そのときがいつなのか、どんなかたちなのか、そしてふたりは何を思うのでしょうか。楽しみでなりません。関連作:『武士道シックスティーン』2010年3月4日読了
2010.03.13
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全中2位。輝かしい実績を引っ提げ、横浜市民秋季剣道大会に臨んだ磯山香織。負けるはずのないこの大会で、香織はまさかの敗北を喫してしまう。相手は無名の甲本早苗。打倒甲本を目指し彼女と同じ東松学園へ進学した香織だが、そこには甲本という少女はいなかった・・・ なんだかミステリのようなあらすじになってしまいましたが、決してそんな内容ではありません。正反対のふたりの少女がしのぎを削る青春エンターテインメント小説です。今まで読んだ誉田作品のイメージとはかけ離れています。 早苗と香織は正反対。早苗は剣道歴三年、経験の少なさをセンスでカバーするタイプ。日舞の身のこなしが独特の動きにつながっています。一方香織は剣道一家で、幼いころから剣道一本にストイックに取り組んできたエリート。勝利にかける思いは並外れていて、まさに剣道の鬼です。 こんな対照的なふたりの物語ですから、おもしろくないわけがありません。時にぶつかりあい、また時に檄を飛ばして互いに一歩ずつ進んでいく、そんなふたりの関係がとても輝いて見えます。もちろんそこには挫折もあり、それを乗り越えることで成長していくのです。 共感できるのは、比較的普通な感じの早苗でしょうか。剣道に取り組む姿勢だとか、考え方だとかが理解しやすいのです。それゆえ、読んでいてどこかしら早苗の視点を常に意識していた気がします。反対に香織は少々エキセントリックでとっつきにくい部分があり、東松の剣道部員ならずともなかなか相手をしにくいことでしょう。こんなふたりの視点が短く交互に繰り返される構成になっているのですが、香織視点の章でハラハラして不安になり、早苗視点の章でホッと安心することの連続でした。もっとも、早苗もときに大胆な行動をするので無条件に安心はできませんが。 相容れないように思えたふたりでしたが、「武士道」という言葉のもとに互いに認め合い、切磋琢磨してきました。それだけに最後の出来事はさびしく感じられます。でもこれはふたりの第二章の幕開け。また違った状況での活躍を期待させてくれます。 剣道に関しての知識がなくても、十二分に楽しませてくれるエンターテインメント。この春、映画化されるだけに読むなら今、かな。2010年3月2日読了
2010.03.09
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探偵・花咲太郎は犬猫捜索専門。そしてロリコン。当然殺しや誘拐なんてものには無縁のはずであり、そんなものの犯人捜しなんてする気もない。だが、彼と共に暮らす小学生のトウキはなぜか事件を呼び寄せてしまう。閃かないダメ探偵・花咲太郎はそのたびに事件に巻き込まれ・・・ 「探偵」なんてタイトルにくっついてますが、ミステリを期待しちゃだめな作品ですね、これは。 閃かないだけに、推理の過程もとにかくショートカット。そちら方面の醍醐味は期待できないのです。 では、この作品の売りは何なのか、と考えると、正直一体なんだろうと頭を捻ってしまいます。 ミステリではない。 涙するような人情話でもない。 驚愕するような展開もない。 うらやむようなラブストーリーでもない。 腹を抱えるほどのコメディでもない。 しいて言えば、くすっと笑ってしまう程度の小ネタ話、といったところでしょうか。「推理は省いてショートカットしないとね」なんて言葉は、むしろミステリのパロディととれなくもありません。 もっとも、ストーリーにはミステリのガジェットも盛り込まれ、楽しませてくれるものには違いありません。探偵が出てくれば殺し屋も出てくる、なかにはちょっとした驚きをもたらすようなものも。ただ、犯人はわかっても、事件の真相がわかるようなものばかりではありませんがね。 入間人間ならではの、ゆるくコミカルな部分とグロテスクな部分が同居した作品。これ以上コミカルだと2つの部分が相容れない気もするし、それならいっそコミカル路線に走ったほうがいいもします。どちらにしろ、続編がどんななのか、気になる作品です。2010年2月26日読了
2010.03.03
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エカ、マル、オズ、さらにシバ。女子四人だけの放送部の面々は高校三年生になった。虚構と真実に揺れる春、他者との距離に悩める夏、自らに変化を求めた秋、そして次の道へ続く冬。季節は移ろい、四人だけの楽園は終わりへと向かっていく・・・ 「人喰い三部作」の紅玉さんの新作。レーベルが変わったためか、抱いていたのとはまったく異なるイメージの作品でした。 登場するのはちょっとくせがある少女たち。文通相手や周囲のウソにだまされたふりをし続けるお人好しのエカ、刹那的な恋愛を続けるマル、少女であるということにコンプレックスを持っていて変わろうとするオズ、親の価値観を押し付けられ心を痛めるシバの四人。 彼女たちはこの年頃にありがちなのか、四人そろって不安定。その要因は学校内ではなく、ほかのところにあります。だからこそ、彼女たちにとっての放送部は楽園、花園でありえたのです。放送するしないにかかわらず、他人に干渉されることなく勝手気ままに過ごすことができる放送室。そういった、逃げ道ともとれるような場所こそが、彼女たちを救う細い糸だったのではないでしょうか。 前記のとおり、四人の少女たちはそれぞれにくせがあるだけでなく、異なる状況に置かれています。それがひとりひとりを主役にした4つの物語。ゆえに、読み手の状況や性格などによって、おのずと共感できる人物が変わってくることでしょう。僕の場合はシバだったでしょうか。いや、別に受験であれほどの勉強をしたりプレッシャーをかけられたりという経験はありませんが、理解できる気がします。たとえ大切なものであっても、 彼女たちは失ってしまったものと同じ楽園を再び手に入れることはできません。ただし、失ってしまったものの大切さに気付き、また新しい楽園を見つけることはできるはずです。2010年2月20日読了
2010.03.02
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