2026
2025
2024
2023
2022
2021
2020
2019
2018
2017
2016
2015
2014
2013
全9件 (9件中 1-9件目)
1
![]()
残業を終えた前原は妻からの電話を受けた。早く帰ってきてほしいと。帰宅した彼を待ち受けていたのは、妻、自室にこもった息子、認知症を患う母、そして見知らぬ少女の死体だった。息子が殺したという事実に突き当たった彼は、その死体を遺棄するとともに、ひとつのおぞましい計画を頭に描く・・・ 倒叙の形で描き出す、家族の絆の物語。本当に大切なもの、大切なことは何なのか。 かなり重いテーマを扱った、加賀恭一郎シリーズの一冊。もともとは90年代に書かれた短編だったようですが、それを長編として改稿したものです。もとはどんな作品だったのか、ちょっと読んでみたい気もします。 前原家にとっては、本当に地獄のような出来事。でも、その原因を作ってしまったのは自分たち。それぞれが互いにそっぽを向いているようなこの家族にとっては、やり直すラストチャンスだったのでしょう。彼らはこの危機にどんな行動をとるのか、試されていたのです。それなのに逃げてしまって。 こういった犯罪者側の心理をより書き出すためには、やはり倒叙形式があっているようです。事件を知ってからその対応を決め、実行に移す過程での心の動きや考え方がよくわかります。 前原家と対峙するのはもちろん加賀恭一郎。加賀刑事は今回も切れ者振りを発揮します。今回は従弟の松宮修平が捜査一課の刑事として登場。父親の見舞いにも行かない加賀に対して、彼がおもしろくないのも理解できます。ああ、彼はこれからも登場するのかなあ。 あっと驚くトリックや心を震わす感動のストーリーを期待すると物足りないのかもしれませんが、殺人事件の関係者になってしまった男の心を追った佳作でした。家族を思う形には様々なものがあることを示してくれました。関連作:『卒業 雪月花殺人ゲーム』『眠りの森』『どちらかが彼女を殺した』『悪意』『嘘をもうひとつだけ』『新参者』2010年5月9日読了
2010.05.26
コメント(0)
![]()
高校に入り、放送部に所属した米村真弓子。夏合宿で失敗したものの、「米村の声は胸に響く」と言ってくれた大河原くんに片思いしている。だが、彼はいつのまにか後輩にとられてしまい、失意の日々。犬のベンジャミンだけは彼女を見守っていてくれるのだが。SMAPがまだ6人で、ドリカムが3人だったころのこと・・・ うーん、やられたなあ。 表向きは真弓子が大河原くんに片思いしてから失恋までの5年間の恋愛です。好きになっても告白できない真弓子。純粋で不器用で鈍感、そして不運な彼女。だからこそ、応援したい気持ちになるのに、運命の女神は皮肉にも彼女に微笑みかけない。大河原くんを後輩の蔦岡るいにとられ、藤枝美咲にはなぜかライバル視され、おまけに大河原くんは東京の大学に行ってしまうのでは、本当にやりきれないでしょう。まあ、青春ですけどね。 ただ、隠されたようにもう一つのテーマがあり、それが真弓子と飼い犬ベンジャミンとのやり取りです。小学五年生のときにペットショップで購入して以来の関係。このベンジャミンが合いの手のように挿む言葉が、思わずにやりとしたくなるほどいいタイミングで絶妙なのです。飼い主とペットのベストマッチングとでもいうべき関係です。 そしてこれを前提にしてのラストシーンがまた泣かせます。少々あざとい気もしますが、ベンジャミンの独白。ふたり(1人と1匹)の関係、積み重ねを知っているからこそ、このシーンにグッときます。 大河原くんへの思いや、友情へと変化していった藤枝とのライバル関係も青春小説としておもしろかったのですが、なんといってもベンジャミンだったなあと思うのです。2010年5月7日読了
2010.05.24
コメント(0)
![]()
〈あなた〉と〈わたし〉。名前など必要としないふたりの物語。暴力を振るう恋人直樹ととともに暮らす〈私〉は、母からの金の無心などに耐えかね、何度か手首を切ったことがある。そんなときに出会った、年上で結婚間近の〈あなた〉に心惹かれていく・・・ 島本さんの作品を読むのは随分久しぶり。それは、何か新しいもの、そして変化を求めた作品のように見えました。 〈私〉と〈あなた〉。誰もがふたりのことを名前では呼ばず、名前は最後までついに明らかにされません。そのことが、本来社会で多数の他者に囲まれているはずのふたりをより狭い空間に閉じ込め、緊密な関係として描き出します。また、選ばれた言葉のひとつひとつが濃密な空気をつくり、ふたりを包んでいるかのようでした。 そんな空間が存在し、その中にいることをどのように捉えるのか。 登場する人たちは誰も彼も少しずつ歪みをもっており、それをお互いに是認しているような印象がありました。もちろん、人にはそれぞれの生き方があり、同じようにそれぞれ違った形の恋愛もあるでしょう。これもまたその形のひとつ。動き出したことを感じさせるラストシーンが印象的でした。 二度、三度と読み返すと印象が変わってくる気がします。少し時間をあけて、読み返してみます。 この本は「ブクログ」のゲラ本プレゼントでいただきました。ありがとうございます。2010年5月5日読了
2010.05.21
コメント(0)
![]()
中部日本エアラインで墜落事故が発生した。その搭乗者名簿には「モガミ ケイイチ」の名が。彼から「うさぎ」と呼ばれていた義妹の美月リツ子は、音響技術者だった彼が残した音源に「うさぎ」と名づけられたフォルダがあることを知った。その音源には不審な点があり、彼の「伝えたかったこと」を知るために、リツ子は調べだした・・・ 1月に急逝した北森さんの遺作。 環境庁(環境省)が選定した「残したい“日本の音風景100選”」に託されたメッセージを探るという、なんとも魅力的な謎があります。予見できない事故死であった圭一が、あらかじめ音に託していたというのが非常に新鮮でした。横浜港の汽笛や水琴窟、SLやまぐち号など、ひとつひとつの謎は音風景の持つ雰囲気が巧みに描写され、そこに人の思惑が絡められています。 しかしながら、全体を見るとまとまりのなさと結末の唐突さが目立ってしまいます。北森さんのことを考えると、書き急いだのかと想像するほどに。少し強引で、らしくない印象です。前半が音風景に関係する謎を追うものであったのに対し、後半は圭一の行動に関係する謎解きともいうべきものでしたが、その組み合わせもイマイチでした。ミステリとして放置された部分が多かった気がします。 また、圭一という人物に関しては理解に苦しむ部分が目に付き、不自然な印象は拭えませんでした。 「生きているのは死ぬまでの暇つぶし」・・・そんな言葉が作中人物の人生観として紹介されます。これが北森さん自身の人生観だったのかわかりませんが、きっと「死」を強く意識されていたのでしょう、「生」と「死」に関する部分がやたらと気になる作品でした。 今後に期待、そんな言葉を書けないのは非常に残念ですが、これからは未読の作品で楽しませていただきたいと思います。2010年5月3日読了
2010.05.19
コメント(0)
![]()
悲劇は、「N」のために。同じアパート「野バラ荘」に住み、床上浸水に遭遇したことで始まった杉下希美、安藤望、西崎真人の関係。だが、彼らと野口夫妻が出会ったことで、状況は少しずつ変化していく。希美は同級生の成瀬を巻き込んで、野口奈央子を元気づけるパーティーを発案した・・・ 今回も作品全体の構成を生かし、複数視点によるモノローグで真相が明らかになっていく形です。 すべての登場人物のイニシャルが「N」。誰もがそれぞれの「N」のために行動した結果の出来事。 タイトルや登場人物のイニシャルから、誰かが「N」のために殺人を犯したことは容易に察しがつきます。ただ、どの「N」がどの「N」のために行動したのかがポイント。まさかここまで複雑な様相を呈するとは思いもしませんでした。そういった点は予想外。構成は非常に巧みでした。 もっとも、最終的にはっきりする真相には驚きがなく、想定できるものだったと言わざるを得ません。この点が弱く、高く評価しにくい部分です。 また、構成上仕方ないかもしれませんが、登場人物たちが二面性を持っています。それが読者として登場人物に感情移入しにくく、結果として若干の読みにくさに繋がったように思えました。周囲の人物の壊れ方にも妨げられ、読むのにイマイチ時間を要しました。 話題になったデビュー作『告白』から数えて4作目。その『告白』だけは読んでいないのですが、同じ傾向の作品が並べられた印象を強く持ちました。この路線を極めるのもいいのですが、『Story Seller 3』に収められた「楽園」のような作風も捨てがたく、そうしたものに挑戦してもよい気がします。2010年4月28日読了
2010.05.17
コメント(0)
![]()
【読み応えは長篇並、読みやすさは短篇並】の『Story Seller』も3回目。そしてラスト。【面白いお話、またまた売ります。】●沢木耕太郎「男派と女派 ポーカー・フェース」 旅先ではじめて体験する出来事、そこからはじまるストーリー・・・出会いというものは、人間に変化をもたらすものなのだと改めて思い知りました。前回の「マリーとメアリー」よりも今回の方が好きです。●近藤史恵「ゴールよりももっと遠く」 チーム・オッジのエースとして活躍する石尾。アクシデントの裏にあるものは・・・決して気分が晴れるわけではありませんが、少しは溜飲を下げることができました。企業スポーツの負の一面ですね。●湊かなえ「楽園」 雪絵が突然姿を消した。彼女が行った先は遠く海の向こう、トンガだった・・・今までの湊さんからは想像もできないような作品。今度はこういう路線の長編でもいいのではないかと。●有川浩「作家的一週間」 作家は編集者とメールで連絡を取り合った。二日間で17回も。その内容は・・・ご本人の言葉どおりの脱力系。でも、半ばブラックユーモアのようで実際にありそうな不条理さ、怖さを抱えています。●米澤穂信「満願」 出所したことを報告してきたのは、かつて弁護を請け負った女性。そして学生時代の下宿の奥さんだった・・・何を大切に思うか、その価値観は人それぞれ。最後の落とし方が見事でした。●佐藤友哉「555のコッペン」 相席した女性が持っててきたものは、骨片が詰められた壺と警察による追跡だった・・・シリアスとユーモアがうまい具合に共生した物語。なんだかはぐらかされた気もしますが、このコンビがこれで終わってほしくないですね。●さだまさし「片恋」 事故死した男が持っていたのは、免許証と名刺、そして私の連絡先だけ。でも私には心当たりがない・・・100ページ余りの中編。その中にいろいろなものを詰め込みすぎて、消化不良の感も。本筋がぼやけてしまった気がします。 唐突にラストを迎えた『Story Seller』。最大の収穫は予想できなかった「楽園」でしょうか。強烈なインパクトを残した「作家的一週間」、静かに鋭い「満願」もお気に入りです。 また違った形でも、こういった企画をやってもらえるとうれしいです。収録作:沢木耕太郎「男派と女派 ポーカー・フェース」/近藤史恵「ゴールよりももっと遠く」/湊かなえ「楽園」/有川浩「作家的一週間」/米澤穂信「満願」/佐藤友哉「555のコッペン」/さだまさし「片恋」関連作:『Story Seller』『Story Seller 2』2010年4月25日読了
2010.05.12
コメント(0)
![]()
ユーロランドで一部の天使による反乱に巻き込まれた遼一と奈々。人質となった姫を救出するため、ふたりはキサラギとともにゲームに参加した。だが、最後に待ち受けていたのはクリアのために他人を殺さなければならないという状況。残り時間はあとわずか。彼らの選択は・・・ いよいよ4巻です。 3巻で、お姉さまやその周囲の天使たちの考え方があまりに不快でいやらしく感じたのですが、それが効いて今回は納得の展開でした。 今までの流れから考えれば、奈々がとった行動は当然とも思えるもの。決してミズホたちクーデター側の手口には共感できませんが、求めるところはおそらく同じ。天使と人間の関係としてはきっとこれが理想形ですよね。別種としてどのような形で共生していけるのか。 ただ、ゲームとして見るとどうでしょうか。今まで見られたゲームとしてのおもしろさは少々薄れていたのではないでしょうか。ゲームからストーリーへシフトしたようにも見えます。きれいにまとまってはいたものの、大きな盛り上がりになったとも思いにくく、少し物足りなく感じました。この場合はもう少しゲーム性に重きを置いてもよかった気がします。それが土橋作品の売りですから。 ユーロランド編完結とのことですが、ここから新しい展開が始まるのでしょうか。またトランクを開いてしまうのでしょうか。『ツァラトゥストラの階段』も続けてほしいのですが。関連作:『ラプンツェルの翼』『ラプンツェルの翼 2』『ラプンツェルの翼 3』2010年4月24日読了
2010.05.12
コメント(0)
![]()
“魔女”十叶詠子からの忠告は「“見えない狗”に、気をつけて」だった。一笑に伏した木戸野亜紀のもとには呪いのFAXが届くようになり、それは毎晩深夜二時。やがて彼女の周囲では獣の臭いが漂い、異様な傷が増えていく。それは、見えない狗が彼女を襲っていることを意味していた・・・ シリーズ2巻。随分濃い話になりました。今回は呪いの手紙ならぬ呪いのFAXです。 前回は顔見せ的な内容に感じられたのですが、今回はさすがに本筋に入ったようなおもしろさを感じました。何といっても違いは緊迫感です。空目が姿を消したとはいえ、さほどの緊迫感は感じなかった前作。対して今回は亜紀が日に日に歪み、傷ついていく姿が強い緊迫感を誘います。今回の方が怖く感じたのもその辺の影響でしょうか。 もちろん直接的な描写も巧みで、血生臭さが漂ってくるようです。それに獣の匂いも。描写といえば、蛆虫は本当に勘弁してほしいほど気持ち悪いものでした。 はっきりしていなかった登場人物のキャラクターも、今回は少しずつ個性が出てきた模様。特に亜紀は彼女が持つ二面性がはっきりと表現されていて、まさに“ガラスのケモノ”という言葉がぴったりでした。空目、亜紀とメインキャラクターが替わっているので、次はまたほかの誰かに変わるのでしょうね。それもまた楽しみです。関連作:『Missing 神隠しの物語』2010年4月21日読了
2010.05.07
コメント(0)
![]()
魔王陛下。畏敬を込めてそうあだ名される男が姿を消した。彼、空目恭一はまるで神隠しにあったかのように姿を消したのだ。カギを握るのは、空目が「彼女ができた」として紹介して回っていた少女。彼女はいったい何者なのか。残された文芸部の仲間たちは、彼を救うために動き出した・・・ もう結構前のことですが、怖い物語だと噂に聞いていた作品。サブタイトルでもわかるように、各巻ごとに扱っている内容が異なっているようですが、今回は神隠しを扱っています。 正直なところ、思っていたほど怖い物語ではなかったような気がします。もちろん、怖くないからおもしろくないということではなく、お披露目的な雰囲気を持ちながらも十分に楽しませてくれました。 神隠しにあったという非現実的な結論にたどりつくことが少々不自然な気がしますが、それ以外の流れは特に引っかかる部分もありませんでした。 ただ、登場人物のキャラクターがいまいち安定していないように思われ、人によって呼び方も異なるので誰が誰なのか時々わかりにくく感じたりしました。空目恭一を周囲は「空目」「魔王陛下」「恭の字」「影君」と呼ぶのです。呼ぶ側の書き分けの一種かもしれませんが、これは複雑でした。 空目の過去はかなりミステリアスなようで、それが明らかになるにはおそらくずっと先でしょう。まだまだ先が長い物語。このまま最後まで飽きることなく楽しませてほしいと思います。2010年4月19日読了
2010.05.02
コメント(0)
全9件 (9件中 1-9件目)
1

