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いよいよ普門館への第一歩を踏み出したハルタやチカたち。まずは地区予選から。弱小吹奏楽部はいったいどこまで歩を進めることができるのか・・・ 『退出ゲーム』『初恋ソムリエ』に続くシリーズ第3弾。なんでも「ハルチカシリーズ」という名前がついているそうですが。●「ジャバウォックの鑑札」 高価な大型犬チベタン・マスティフ。迷い犬となったこの犬に飼い主だと名乗り出たのはふたり。本物は・・・迷い犬の飼い主を断定するだけ。それだけですが、秘められたものが心を打つ一編です。●「ヴァナキュラー・モダニズム」ハルタのアパート探し。見つかった物件は間取り図に存在しない五部屋目があり、幽霊が出るという・・・ここまでするか、と思わされる執念。ですが、これもまた心の暖かさが伝わってくる作品です。ちょっと想像できてしまったのが残念でした。●「十の秘密」 県大会の有力校清新女子高。ギャル集団の彼女たちには十の秘密があった・・・1から10までの並べ方が、ストーリーとうまくかみ合わされ、きれいに消化されています。とくに出だしが効いていました。●「空想オルガン」 振り込め詐欺組織の一員の男は、上司からの指示もあってある人物を騙しにかかった・・・「ジャバウォックの鑑札」からの流れをきれいに引き継ぎ、まとめあげています。意表を突くラストには驚かされました。 まずは地方予選から始まった普門館への道。それにしたがって進む連作短編集です。 非常におもしろくハルタやチカの活躍と成長を読んだのですが、読み終えて、ミステリ的、謎解き的な部分でのおもしろさが薄く感じられます。シリーズが進むにつれ、その傾向が強くなっている気がします。また、シリーズの既読者向けに見えるのも残念でした。 反面、リーダビリティは高く維持され、さくさくとテンポよく楽しませてくれる仕上がりです。シリーズ既読者であれば読んで損はしないはず。次のステップも楽しみです。収録作:「ジャバウォックの鑑札」「ヴァナキュラー・モダニズム」「十の秘密」「空想オルガン」関連作:『退出ゲーム』『初恋ソムリエ』2010年12月2日読了
2010.12.31
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七海西高校の文化祭の最中、校舎屋上からの墜落事件が起きた。美術部の展示が行われていた屋上へ上がった人物は数名に限られている。わたしは、春、夏、初秋、晩秋に起きたいくつかの出来事を振り返りながら、屋上ではいったい何が起きたのか、考えていこうと思う・・・ 第18回鮎川哲也賞受賞作『七つの海を照らす星』の続編。ですから、未読の方にはまず『七つの海を照らす星』からお読みいただきたい。その方が、きっと楽しめるから。 諸々の事情で親元を離れなければならない子どもたちが集う児童養護施設の性格上、七海学園では様々な出来事が起こります。春、夏、初秋、晩秋の4つの出来事を遡る合い間に、文化祭での出来事を解き明かす構造になっています。●「春の章―ハナミズキの咲く頃―」 春菜が担当する界は、時々暴力を振るう。彼が保護されたとき、母親は近くの崖で亡くなってらしい。界は、母親に殺されそうになったと語る・・・母親がどうしてそんな行動に出たのか。意外な人物が語りだす内容が母親のおかれた状況の厳しさと同時に行政の問題点をあぶりだします。●「夏の章―夏の少年たち―」 施設対抗のサッカー大会。応援の女の子たちは城青学園目当てだが、彼らは試合後の混乱の中、姿を消してしまった・・・春に続き、またしても児童養護と行政が抱える問題が明らかに。選手消失の謎と巧みに絡められています。●「初秋の章―シルバー―」 樹里亜が大切にしていた寄せ書きがなくなった。瞭は真相に気づいているようで、開けられないCD-ROMの謎を解いたら話すという。そのCD-ROMは・・・どこでもあり得る悪意とそれに対応しようとする善意。それぞれについては目を惹くような謎解きとは感じませんでしたが、背景、舞台といったものとの組み合わせが絶妙。●「晩秋の章―それは光より速く―」 服役していた望の父親が出所したという。彼は刑務所からも望の状況に干渉していたのだ。夜になって、娘に会わせろという男がやってきて・・・春菜の奮闘劇。望の父親が出した答が非常に納得のいくものでした。 収録されている4つのエピソードがそれぞれ墜落事件の真相への伏線としてうまく機能しています。それぞれの出来事の中で重要なカギを握る部分が、全体としても二重に機能している感じです。相変わらず子供たちにはあたたかい視線が注がれ、同時に大人の醜さのようなものを浮き彫りにしています。 前作『七つの海を照らす星』と同じような形式をとっていますが、ミステリとして今回の方が出来栄えがよいのは確実でしょう。非常に高い技術が読者を待ち受けています。各エピソードので提示された謎の解決はもちろんですが、最後に明らかになる事実は厳しく非情で、そして衝撃的でした。 後の展開が非常に気になる結末で、読者としては3冊目の刊行が待ち望まれるところです。あまり間を空けず、読むことができたらうれしいなあ。収録作:「春の章―ハナミズキの咲く頃―」「夏の章―夏の少年たち―」「初秋の章―シルバー―」「晩秋の章―それは光より速く―」「冬の章 1~6」関連作:『七つの海を照らす星』2010年12月2日読了
2010.12.19
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古典の授業中、教師に鞭で打たれた本間香葉子は、そのショックで平安時代にタイムスリップしてしまった。しかも、「源氏物語」の作者・紫式部の身体に宿ってしまったのだ。とんでもない出来事に対応できず、紫式部として過ごす香葉子だが、四阿で時の権力者藤原道長が殺害されたことから、香葉子も巻き込まれ・・・ こちらも講談社ノベルスの「女子高生ミステリー」フェアの一冊。香葉子とともに、このシリーズのメインヒロイン、麓うららが登場します。シリーズとしては7作目ですね。 同じように紫式部や「源氏物語」を扱ったミステリでは『小袖日記』や『千年の黙』などを読んできたのですが、そのふたつとは異なり、今回は紫式部として道長殺人事件の謎を解くという今までとはちょっと異なるアプローチが興味深いものでした。 さて、肝心のミステリ部分ですが、密室やダイイングメッセージを用いているのですが、その全体像はいたってシンプル。シンプルというといかにも物足りなく感じられそうですが、それを補うのが真相の意外性ではないでしょうか。その意外な真相がこの時代と登場人物にしっかりと絡められているところもポイント。ここが一番の見どころかな。 また、紫式部や藤原道長だけではなく、清少納言や和泉式部、藤原伊周、源俊賢、一条帝といった歴史上の有名な人物も豪華に登場し、史実とされていない殺人事件に挑みます。ユーモアを効かせたミステリでありながら、単純に史実をなぞるのではなく、しっかり活かしているような印象を持ちました。 鯨統一郎、意外とやるじゃん、というのが結論ですね。ちょっと見る目が変わりました。作家も作品も意外でした。2010年11月29日読了
2010.12.14
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5人の女子高生の死体が、左脚と左腕が切断された状態で一ヶ所で発見された。彼女たちの共通点は誕生日。やがて同じように再び5人の死体が発見されるが、そのうち1人も前の5人と同じ誕生日。ユリ、ミリア、仁美そして石崎のミステリィ研究会は、殺人鬼からの避難という名目で、招待された新潟の孤島、深角姿島へ渡った・・・ 「女子高生ミステリー」フェアの一冊。もちろん、櫻藍女子学院高校のミステリィ研究会が登場です。 第18回メフィスト賞を受賞した『日曜日の沈黙』から始まるこのシリーズ、7作目ですが石崎作品自体初めて読みました。ユーモアあふれる本格ミステリを書くタイプだと思っていたのですが、結論から言うと非常に楽しめました。 ユーモアと言ってもその中身はユリ、ミリアというふたりの女子高生と石崎との漫才のような会話が中心。最初は面食らう部分もあったのですが、彼女らのペースに慣れてしまえばどうということはありません。まあ、多少しつこいかな。 もちろん、中心にあったのは女子高生連続殺人事件、とりわけその動機。連続殺人を犯すシリアルキラーの動機がきれいに全体を結びつけていて、それでいて意外性も持ち合わせて秀逸。突拍子もないと言ってしまえばそれまでですが、これが実際の事件にはないミステリの楽しさではないでしょうか。 また、孤島に渡るということは当然次に起こることが想像できるのですが、そちらの方もまたなかなか意外な動機が用意されていて、一粒で二度おいしい感じ。もっとも、「意外」というのは「むりやり」とか「強引」というのと紙一重のような気もしますが。 強引といえば、動機よりもこの二つの事件の結び付け方だとか、そもそも深角姿島へ渡る過程の方が余程強引。それを批判するのは理解できるのですが、ただ、その強引な部分も苦笑いで済ませてしまいたい気分でした。 ということでこのシリーズ、これ以前に6作あるんですよね。徐々に読もうかなあ。2010年11月26日読了
2010.12.11
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古賀の「生きる目的」のために「ゼロ年代探偵小説研究部」として復活した完全犯罪研究部。表の名前は変わっても、部室がせまくなっても、やることに変わりはない。裏活動として様々な事件に首を突っ込むうち、またしてもとんでもない状況に行き着いてしまい・・・ 「女子高生ミステリー」フェアの一冊。対象は杉野二号ですね。 意外なほどに以前の事件を引きずらなかった完全犯罪研究部。あまりにあっさりしていて驚きました。あれだけの大立ち回りを見せたあとなのに。 言動の節々から彼らの本気具合が読み取れます。本気で遊ぶのです、彼らは。読んでいる分にはおもしろいのですが、身近にいたらかなりイヤな面々です。 この物語のおもしろさのひとつは彼らの持つ二面性にあります。ひとつは単なるミステリおたくのようで、その知識や技術を活用して悪人を始末する仕事人的な面。もうひとつはエスカレートして歯止めが利かなくなったときの狂気。似て非なるこの二面性のギャップが大きく感じられるほど、読み手を次のページへと強く誘うのです。 また、簡単に真似できそうなギミックも目を惹きます。いくら「よい子はくれぐれも真似をしないように!」と書いても、そういったものが身近に感じられるというのは、やはりちょっとしたわくわく感を誘うじゃないですか。 ポイントは、立場の変わったゆりっぺをどう捉えるか。これが評価の分かれ目かも。その点だけを考えれば、教師という本来無茶のできないはずだった前作の方が上のような気がします。 「THANATOS」シリーズとの緩やかなリンクも保ったままだった今作。完全犯罪研究部の面々があちらに登場する機会もあるのでしょうか。やはり「THANATOS」シリーズも読まねば。関連作:『完全犯罪研究部』2010年11月18日読了
2010.12.06
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