2026
2025
2024
2023
2022
2021
2020
2019
2018
2017
2016
2015
2014
2013
全2件 (2件中 1-2件目)
1
この躯【カラダ】に、千年の雪が降る。ずっと忘れていた感覚だ。美しく、そして何よりこの躯を震わす“モノ”。ゆるやかに、そして幽かに掠れる吐息を吐き出す。暖かい火の燈る自室の襖を開け放ち、外に面する濡れ縁の、ひやり、と冷たい床に素足をヒタとつける。そのまま傍らの柱に凭れ、氷翠王【シャナオウ】は清闇から降りてくる雪をひたと見据えた。「・・・・・・・・、何処に。何処に行けば・・・・・・・。」真率な、まるで殺気さえ籠めるようなひたむきな声が氷翠王の唇から発される。自覚のなかったその言葉に目を伏せ、己の手指に視線を落とす。その手に何を感じたのか、氷翠王の目は苦痛に絶えるように細められた。「現実から逃げたツケを払うのは、やはりこの躯か。」研ぎ澄ました心の刃にはもう、臆病という名の錆が浮き出ているというのに。壊れていく絆を繕う術はもうないというのに。擦り付け合う愚かな争いに、再びこの躯を置けと言うのか。今、こんな時になって“月”の一人が眼前に現れたのはそのためか。未だ年端もいかない少女の身体は、けれど温かに脈打って確かに生を感じさせて重かった。「・・・・・・・・・・・・。」静まり返った夜気の底に、冷謐な雪が撫でるように頬を凍らせる。思うさまその冷気に自分の躯を切らせながら、執行猶予のない痛手に、自分の命を枯らし続けたこの十数年を思う。そして、これからを。「この先に道はあるのか・・・・・・・。」何処に行けば夜が明ける。勝ち続けなければならない。一人立ち続けなければならない。何に縋ってはならない。振り返ってはいけない、決して。血反吐を吐き、途方もない孤独に躯を震わせながらも、一人立ち続けてきた。贖罪はない。過ちの言い訳は許されない。苦しいこの世界を“愛”さなければならなかった。この先に道はない。けれど歩み続けなければならない。だから壁を叩き続ける。血反吐を吐くような苦しみも努力も、怒涛のような祈りも苦痛と悲痛の涙も、突き上げるような渇望の祈りも渦も確かに自らの内にあるのに、その存在は認めることを否定された。求めることが罪なのか。では、死とは己の免罪符か。心は、歪む自らの存在と脅迫にいつしか、他人に尽くし上げられたひずんだハコに自分を注ぎ入れて、密やかに腐敗していく。・・・・・・・・・疲れた。もう、疲れたのだ。酷い寒さが氷翠王の身体を襲う。それは本当に純粋な寒さ故か、自分の考えへの悪寒故だったのか判らない。そんなことはどうでもよかった。眠れればいい。今夜は、悪夢を呼ぶことなく、ゆるりと。(また無理なことを。)氷翠王は思わず自分の考えに苦笑した。怨讐に執り付かれ、その念を宿す自分の朱金の瞳は夢を使ってこの躯を取り込もうとする。今夜も生きながらの地獄を見るだろう。人骨踏みしめ、わずかに開いた唇から人血啜り、己の躯を喰らう神に呪われた怨念を動かぬ身体で目だけで阻みながら。疲れたように、最後に思う。(それも、いい。)その狂夢の間は、何も考えずにすむだろう。意味無い方向に空回る思考を止め、氷翠王の意思を一片も含まず恐ろしいほどの憎念の血の赤に輝く瞳を閉じる。けれど、その瞳の中にも氷翠王自身の、眩暈がするほどの灼熱の意思の光が宿っていたが、氷翠王は気づかない。それは酷く綺麗に、燃え立つ。が、いずれ消えた。冬の夜気の寒さに、氷翠王は自分の身体を両腕でゆるく抱き凭れていた柱に頭を傾げ凭せ掛けた。「寒い、な・・・・・・・・・・・・寒い・・・・・・。」繰り返す凍えた言葉は、誰かに届く間もなく堕ちて、・・・・・・砕け散った。
2006年02月28日
コメント(0)
一片の罪無きは彼の言葉・・・・・・・・ ただ、 「愛してるよ。」 ・・・・・・・・・嘘つき。
2006年02月27日
コメント(0)
全2件 (2件中 1-2件目)
1
![]()

