偐万葉田舎家持歌集

偐万葉田舎家持歌集

2020.02.19
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カテゴリ: 万葉
​( 承前 ​)
 前頁の続編です。
 雪の万葉歌全111首 (但し、短歌に限る。) ​のうち第1巻~第10巻所収のもの73首は前頁の「雪の万葉歌(上巻)」に掲載しました。
 本頁では第11巻~第20巻所収の残り38首を以下に掲載します。
 まあ、自身の「資料用」みたいな記事ですから、ご訪問いただいたお方には、「単なる万葉集の歌の羅列に過ぎないではないか。」と失望させてしまう内容ですが、お赦しを。
 雪の写真などで誤魔化して置きましょう(笑)。

(京都・小塩山での雪。古い写真<2012年2月17日>の再掲です。)
<参考> 小塩山登山  2012.2.27.

第11巻​​
(なし)
第12巻

み雪降る 越の 大山 ( おほやま )  行き過ぎて
        いづれの日にか  ( ) が里を見む (巻 12-3153

第13巻

み雪降る 吉野の ( たけ ) に  ( ) る雲の
        よそに見し児に 恋ひわたるかも (巻 13-3294

第14巻

筑波嶺 ( つくばね ) に 雪かも降らる  ( いな ) をかも
       かなしき児ろが  ( にの ) 乾さるかも (東歌 巻 14-3351

第15巻 (なし)
第16巻​

ぬばたまの 黒髪濡れて  沫雪 ( あわゆき )
      降るにや来ます ここだ恋ふれば (娘子 巻 16-3805

第17巻

園生 ( そのふ ) の  百木 ( ももき ) の梅の 散る花し
( あめ ) に飛び上がり 雪と降りけむ (大伴家持 巻 17-3906

降る雪の  白髪 ( しろかみ ) までに  大君 ( おほきみ )
        仕え ( まつ ) れば  ( たふと ) くもあるか (橘諸兄 巻 17-3922

( あめ ) の下 すでに ( おほ ) ひて 降る雪の
         光を見れば 貴くもあるか (紀清人 巻 17-3923

山の ( かひ )  そことも見えず  一昨日 ( おとつひ )
昨日 ( きのふ ) 今日 ( けふ ) も 雪の降れれば (紀男梶 巻 17-3924

( あらた ) しき 年の初めに 豊の ( とし )

     しるすとならし 雪の降れるは (葛井諸会 巻 17-3925

大宮の 内にも外にも 光るまで
    降れる白雪 見れど飽かぬかも (大伴家持 巻 17-3926

庭に降る 雪は 千重 ( ちへ ) 敷く  ( しか ) のみに
      思ひて君を  ( ) が待たなくに (大伴家持 巻 17-3960

立山 ( たちやま ) に 降り置ける雪の  常夏 ( とこなつ )
     見れども飽かず  ( かむ ) からならし (大伴家持 巻 17-4001

立山 ( たちやま ) に 降り置ける雪の  常夏 ( とこなつ )
( ) ずてわたるは  ( かむ ) ながらとそ (大伴池主 巻 17-4004

婦負 ( めひ ) の野の すすき押しなべ 降る雪に
       宿借る今日し 悲しく思ほゆ (高市黒人 巻 17-4016

立山 ( たちやま ) の 雪し ( ) らしも  延槻 ( はひつき )
       川の渡り ( ) ( あぶみ ) ( ) かすも (大伴家持 巻 17-4024

第18巻

雪の ( うへ ) に 照れる 月夜 ( つくよ ) に 梅の花
     折りて送らむ  ( ) しき児もがも (大伴家持 巻 18-4134

第19巻

わが園の  ( すもも ) の花か 庭に降る
     はだれのいまだ 残りたるかも (大伴家持 巻 19-4140

この雪の  ( ) 残る時に いざ行かな
( やま ) ( たちばな ) の 実の照るも見む (大伴家持 巻 19-4226

ありつつも  ( ) したまはむそ 大殿の
     このもとほりの 雪な踏みそね (三方沙弥 巻 19-4228

( あらた ) しき 年の初めは いや年に
       雪踏み ( なら ) し 常かくにもが (大伴家持 巻 19-4229

降る雪を 腰になづみて 参り来し
( しるし ) もあるか 年の初めに (大伴家持 巻 19-4230

なでしこは 秋咲くものを 君が家の
      雪の ( いはほ ) に 咲けりけるかも (久米広縄 巻 19-4231

雪の 山斎 ( しま ) ( いはほ ) に植ゑたる なでしこは
     千代に咲かぬか 君がかざしに (蒲生娘子 巻 19-4232

うち 羽振 ( はぶ ) き  ( かけ ) は鳴くとも かくばかり
      降り敷く雪に 君いまさめやも (内蔵縄麻呂 巻 19-4233

鳴く ( かけ ) は いやしき鳴けど 降る雪の
     千重に積めこそ  ( ) が立ちかてね (大伴家持 巻 19-4234

白雪の 降り敷く山を 越え行かむ
       君をそもとな 息の緒に思ふ (大伴家持 巻 19-4281

( こと ) ( しげ ) み  ( あひ ) ( ) はなくに 梅の花
     雪にしをれて うつろはむかも (石上宅嗣 巻 19-4282

梅の花 咲けるが ( なか ) に  ( ふふ ) めるは
       恋ひや ( こも ) れる 雪を待つとか (茨田王 巻 19-4283

大宮の 内にも ( ) にも めづらしく
      降れる大雪 な踏みそね ( ) し (大伴家持 巻 19-4285

園生 ( そのふ ) の 竹の林に うぐひすは
     しば鳴きにしを 雪は降りつつ (大伴家持 巻 19-4286

うぐひすの 鳴きし 垣内 ( かきつ ) に にほへりし
       梅この雪に うつろふらむか (大伴家持 巻 19-4287

( ) にも 雪は降れれし 宮の内に
        千鳥鳴くらし  ( ) む所なみ (大伴家持 巻 19-4288

第20巻

松が ( ) の  ( つち ) に着くまで 降る雪を
     見ずてや妹が  ( こも ) ( ) るらむ (石川内命婦 巻 20-4439

高山の  ( いはほ ) ( ) ふる  ( すが ) の根の
      ねもころごろに 降り置く白雪 (橘諸兄 巻 20-4454

( ) 残りの 雪にあへ照る あしひきの
( やま ) ( たちばな ) を つとに摘み ( ) な (大伴家持 巻 20-4471

初雪 ( はつゆき ) は 千重に降りしけ 恋ひしくの
       多かる ( われ ) は 見つつ偲はむ (大原今城 巻 20-4475

み雪降る 冬は 今日 ( けふ ) のみ うぐひすの
     鳴かむ春へは  明日 ( あす ) にしあるらし (三形王 巻 20-4488

( あらた ) しき 年の初めの  初春 ( はつはる )
今日 ( けふ ) 降る雪の いやしけ 吉事 ( よごと )  (大伴家持 巻 20-4516

 以上、38首。
  第1巻~第10巻 73首
第11巻~第20巻 38首 合計111首
 雪の万葉歌の数は、梅のそれよりもやや少なく、桜のそれよりもずっと多い、ということが分かりました。






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最終更新日  2020.02.19 10:51:46
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Re:雪の万葉歌(下巻)(02/19)  
偐山頭火 さん
雪シリーズ取りあえず走り「見」していました。

沫雪系が多いのかな、歌が多く詠まれた西日本特有のべた雪でしょうか。パウダースノー系と見て取れる歌もあったのかも知れませんが気付きません。しっかり読んで、雪質まで・・・とも思いますが。

雪質・積雪の分類は万葉集的では無いかな。大変面白き企画でした。 (2020.02.19 19:02:46)

偐山頭火さんへ  
けん家持  さん
  >雪シリーズ取りあえず
   走り「見」していました。
 雪道は「ペンギン歩き」が基本、走るのは転倒ののもととなりますので、ご注意を(笑)。
  >沫雪系が多いのかな・・雪質まで・・・
   とも思いますが。
   雪質・積雪の分類は万葉集的では無い
   かな。
 仰る通りで、スキーなどのウインタースポーツもなく、パウダースノウの北海道や奥羽などは大和朝廷の圏外にて、雪質云々は万葉人には無い視点ですな。雪の歌と言っても「雪」そのものを詠っているわけではなく「雪景色」或は、雪にかこつけての「思い」を詠っているに過ぎませんから、仰る通り、非万葉的な話です。
 大伴旅人の822番歌、小野国堅の844番歌や大伴家持の3906番歌などは、梅の花の散るのを雪に見立てて詠んでいますから、雪でさえも無い歌であります。
(2020.02.19 22:36:04)

Re:雪の万葉歌(下巻)(02/19)  
>手許の万葉集をパラパラとめくって調べてみると111首ありました。

そんなにあるのですか
良く調べられましたね。

万葉の時代でも、やはり雪は特別のものだったのでしょうね。
関西に住むボクたちにとっては、暖冬で雪がすくなったとはいえ
やはり雪は珍しい存在で、積雪を見れば興奮します。

最近では、時折訪ねる雪国の景色が楽しみです。

でも雪と一言で言ってしまえばそれまでですが
雪質のことなど考えれば、雪も様々という気がします。
(2020.02.20 20:31:06)

ビッグジョン7777さんへ  
けん家持  さん
  >そんなにあるのですか
   良く調べられましたね。
 「雪」という言葉が出て来る歌を見つけてはその歌番号をメモするというやり方で拾い出しました。消え残りのまだらな雪を「はだれ」と言いますから、これも拾いだいましたが、雪に比べて「はだれ」は見つけにくいですから見落としがあるかもしれません。番号を書き出した時は109首でしたが、その歌番号に従って当該歌をPCに書き出すという作業をしている中で、見落としていた歌2首を新たに見つけ、全部で111首となりましたが、これで全部とは断言できないのが正直なところです(笑)。
  >万葉の時代でも、やはり雪は特別のもの
   だったのでしょうね。
 そうでしょうね。大伴家持は越中に赴任していて奈良とは違って沢山の雪にも出会っていると思いますが、越中での雪の歌は左程には多くありませんね。
 万葉集も第7巻から、〇〇を詠める歌〇首というような形で編集されているスタイルが登場しますが、第7巻には「雪を詠める」という項目がそもそもありません。第10巻になって初めて「雪を詠める9首」、「雪に寄する12首」というのが漸く登場します。雪月花と言われますが、月や花に比べて雪が詠われるようになるのは遅かったということを示しているのかもしれません。
  >やはり雪は珍しい存在で、積雪を見れば
   興奮します。
 そうですね。同感です。景色をたちまちにして見違えるものに変えてしまうのが降雪・積雪ですから、それが興奮を呼ぶのでしょうね。
 毎日が雪景色の雪国の冬とは違う世界に住む人間の感性・DNAですね。
(2020.02.20 21:29:43)

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