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2007年06月09日
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「探偵狂想曲」

 #15 盗まれたもの


 魔法アイテムが保管されていたという博物館地下二階の一室。
 分厚い鋼鉄製の扉に守られている(ただ今は壊されひしゃげている)部屋は、一辺が5メートルくらいの正方形の部屋で、中央に石を積んで作られた台座が置かれていた。
 そんな部屋に12人もの人間が集まると、かなり狭い。
 ちなみにパピーが入るとさらに窮屈になるので、彼には外で待ってもらっている。

「例のものは、ここに置かれていたのか?」
 台座を見てオレは、レイに尋ねた。
 台座には今は何も乗っていないが、つい最近までそこに何かが乗っていた痕跡は、「何か」を固定するために用いられた鎖が引き千切られている点など、はっきりと残っていた。

 レイがいうと、オレと一緒にヒューも頷く。
「あー、そういえば勢いだけでここに着たからなぁ」 
「そーそー」
「・・・あいかわらずな、いい加減ぶりねぇ」
 ぼそっと後ろでアイリーンが、ため息混じりに何か言ったが、今は無視する。
「それで、魔法アイテムって何ですか?」
 とファラ。
「うむ、ファラや坊やも、この町が昔は大きな魔法王国の一部であったことは知っているだろう?」
 レイがそういうと、プリシラが元気よく手を上げた。
「プリシラ知ってるわ! 特にこの町があった場所は、王都と呼ばれていたところだったんだよぉ~!」
「ふふ、さすがは魔法少女、よく知っているな」 

 レイに褒められて(?)機嫌をよくするプリシラ。
「そのくらいこの町に住む人間の常識だって・・・」
 オレは面白くなさそうに(いや、本当に面白くなかったんだけど)言ったのだが――、
「あら、そうでしたっけ?」
 と若干一名わかっていない人間(エルフ)がいたりする。

 脱力気味にオレはファラに言った。
「はい、お願いしますシャトルさん」
「レイ続けてくれ」
「うむ、では・・・マシンという言葉に聞き覚えは?」
「マシン?」
「およ、マシン・・・、機械装置のことかなぁ?」
 と自称科学者のダイアナが首を傾げると、レイは首を横に振る。 
「ちょっと違う。それもマシンには違いはないが。私が言っているのは、魔法装置のことだ」
「魔法装置・・・マシン、それって『魔神(マシン)』のことでしょうか?」
 ソーニャが少し興奮した口調でそういうと、レイは彼女を見て頷いた。
「そうだ。そのマシンだ。丁度いい、詳しく知らないものもいるだろうから。ソーニャ、この場で簡単に説明してくれるか?」

 図書館通いが日課の物知りな文学娘にレイに促されて、ソーニャは一度頷いてから口を開く。
「わかりました。そもそもは、この町が巨大な魔法王国の一部であった時代の話です。当時、この世の中で随一といわれた魔法技術を誇っていた王国は、国民が安定した生活を送れるよう、数十年という長い年月をかけ、国民に供給する魔力を永久に生み出す装置を作り出しました。当時、魔力は人の営みに欠かすことの出来ないもので、魔力供給装置を作り出したことで、魔法王国はその後、千年以上も栄えることになったのです。その魔力供給装置が、俗に魔神(マシン)と呼ばれているのです」
「そうだったんですか」
 ファラが感心したように呟くと、隣りでプリシラが面白くなさそうな顔をした。
「そのくらいプリシラだって知ってるもん」
「・・・しかし、その魔神って壊れたんだろう?」
 と腕組をして壁に寄りかかっていたロヴィンがいうと、ウィルが口を開く。
「ええ、所詮は人の作ったもの。永久に維持する装置を作るなんてこと自体が無理な話。千年以上もの長い時間、故障一つしなかった魔神は、突如暴走し。そしてそれが原因で王国は間もなく滅亡したそうです」
「なかなかうまくは行かないものだなぁ・・・」
 マリノは、話を聞き飽きたのか、あくびをしながらいった。 
「えっと、それじゃあ。この台座にはその壊れた魔神の残骸が置いてあったっていうの?」
 アイリーンがいうと、レイは頷く。
「正確には、全てではなくパーツの一つがな。館長は『魔神のカケラ』と呼んでいたが・・・」

「魔神のカケラ・・・そんなものが、オレたちの町にあったなんて・・・」
「いや、案外この町だからなんじゃないか? なにせ、ここは王都だったんだろう?」
 オレの呟きに、ヒューがいった。
「ボク、暴走した魔神は、七人の英雄たちによって打ち砕かれ、世界に四散したって、お母さんに話してもらったことがあるよ」
 とジオ。
 魔神と英雄たちの話は、この町だけじゃない他の地でも語られているわりと有名な物語である。ジオだけじゃなく、オレもまた母親にその話は聞かされた記憶があった。

「んでも、なんでそのカケラを奪っていったんだ? そんな壊れたものじゃなく、もっと金目ものが、いくらでもここにあるんじゃないか?」
 マリノがいうと、レイは神妙な顔をして首を振る。
「いや・・・、魔神のカケラの中には、ここにある美術品に匹敵するほどの価値があるものもある。それは魔神にとっても要となる部分で、特にその部分を指して『コア』とも呼ばれている。これは他のカケラとは異なり、現在もなお昔ほどではないが微量な魔力を発生させているのだそうだ。微量といっても、この建物を維持するくらい容易なほどの魔力をな」
「それじゃあ・・・」
 オレが言い終える前に、レイや(既に話を聞いていたのだろう)ウィルがやはり神妙な顔をして頷いた。

 ――ここに、あったものが『コア』の一つだったんだな。

 とオレは、事態の深刻さを受け止めるようにしてその言葉を呑んだ・・・。





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最終更新日  2007年06月09日 11時48分37秒
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